永い、永い眠りから目覚める。
目を開くと、そこには司祭の男性がいた。


「おお……アーク様、よくぞお目覚めになられました」


アーク。そう、僕の名前はアークだ。
永い眠りは、自分の名前すら曖昧にさせてしまう。


「僕が眠ってから、どのくらい経った？」

「1000年ほど、でございます」


なかなか眠っていたようだ。
しかし、1000年経っても主神の司祭服は変わらないんだなぁ。


「そうか……ッ！ちょっと気分が悪い……」


瞬間、僕は強い感情に襲われた。
なにはともなく、
この男を斬りたいと思った。
間違いない。これは魔剣の作用だ。


「そうですか。きっとまだ体が目覚めきっていないのですね。おい、お前たち！アーク様を部屋に案内しろ！」

「はっ」


僕は主神教の信者たちに、それなりに大きな城の、豪華な一部屋に連れてこられた。
その間、僕は魔剣のもたらす衝動を抑えるのに必死だった訳だが。


「それではまた明朝、お迎えに上がります」

「待ってくれ。結局なんで僕は封印を解かれたんだ？」

「近頃、魔族が領域を拡大しておりまして、その対策であります」


また僕は戦うことになるのか……
そう思うと憂鬱だったが、僕は勇者だ。
別に勇者じゃなかったんだけど、
いつの間にかそういうことになっていた。


「……分かった」

「失礼します」


そう言って彼は部屋を後にした。
僕は一人ベッドに腰掛けて、
物思いに耽る。
その昔、僕は大切な人々を守るため魔物と戦った。
だが、守れなかった人々もいた。
毎日彼らが夢に出てきて、苦しかった。
僕はさらなる力を求め、魔剣を手にした。
それでもいつしか戦い続けるのに嫌気が差して、自らを魔法で封印したのだった。


「……また、こいつと付き合わなければならないのか」


ため息を吐きながら、魔剣の鞘を抜く。
窓から差す月光を反射して、蒼く妖しく光っていた。


「ご不満ですか？」


突如、魔剣から煙が立ち上った。
それどころか、次の瞬間にそれは______美少女になっていた。
長い黒髪の、全裸の女性だった。
胸は大きく、身長も高い。僕が自分を封印したのは大体14歳のころだったから、仕方ないことかもしれない。


「だっ、誰だ！？」

「分かりませんか？あなたの魔剣、『セイリオス』ですよ」

「お前が……？」

「なんだかムカついてきました。人のこと疎んじたり判別付かなかったり。あなた、私とどのぐらい一緒にいたと思ってるんですか？」

「ごめん……」

「別にいいですよ。あなたが良くも悪くも正直なのは、私もよく知ってますからね」


僕はなんと言ったらいいのか分からなくて、
あんまり裸体を見るのも下品だから、
ただ黙って窓の外を見ていた。


「……別に、戦ってやる必要なんてないんじゃないですか？私は魔剣なので、誰か斬れないと困りはしますが」

「そうかなぁ？」

「あなたにとって大切だった人々は、みな朽ち果てていきました。あなたに______『勇者』としてのあなたではなく______ただ一人の人間としてのあなたに、守るべき人は今、いますか？」


その問いかけに、僕ははっとした。
折角目覚めたのだから、自分の人生を歩みたい。
みんなを守るのは大切なことだったけど、
それが絶対僕でなければならない理由はもはやない。


「……そうだね、ありがとう」

「存分に感謝してください。所有者にこんな優しいアドバイスする魔剣、他にいませんからね」


そう言い残して、彼女はまた剣に戻った。
僕は彼女を鞘にしまうと、窓を勢い良く開け放った。
強く冷たい風が差し込んでくる。
だが、僕は自由の扉へと飛び込んだ。夜の闇へとその身を投げ出し、知らないどこかへ旅をするのだ。
……人を斬るつもりはないので、魔剣は置いていった。





それから一月ほど経っただろうか？
少なくとも、教団の人々は僕の居場所を知らない。
僕の存在を魔物に察知されるのを怖れたのか、僕の情報は機密らしく、民間から僕の情報を集めることもできていないようだ。


「……これでいいかな？」

「ええ、十分です。こちら報酬です」

「感謝します」


僕は地方の商業都市で冒険者をやっていた。
元勇者として地力は十分にあったし、危険な場所での素材集めなども無理なくこなせていた。


「お前さん、なんでもうまくいくじゃないか。やはり知恵か？それとも力か？」


と酒場のマスターは僕に問う。答えづらい質問だが、隠すこともないので答えることにした。


「力と、あとは運だね。僕、あんまり頭よくないからさ」

「へぇ」

「剣の扱いには自信があってね、まぁ最近は動物ぐらいしか斬ってないけど……」

「魔物にはやっぱり勝てないか？」

「いや、大抵の奴は一睨みしたら逃げていくよ。たまに決闘を申し込んでくる奴もいるけど、大体勝てる」


僕がそう言うと、
マスターは驚いた顔をする。
そう、大体勝てるのであって、負けたこともある。
なぜ僕が無事なのか、不思議なのだろう。


「……いや、なんかさ。すごい強い武道家みたいな魔物に負けたことがあるんだけど、すごい『匂い』が付いてる、みたいなこと言われて食われずに逃げられたんだ」

「はっはっは！冒険続きで臭かったんだろうよ！」

「やっぱり、そうなのかな……魔物とはいえ、見た目は女の子だからさ、そう言われると悲しいっていうか……」


そんな他愛もない雑談をマスターとしていると、
カウンターの僕の隣に、何かが置かれた。
そちらを見ると、手紙があった。しかも宛先は僕だった。
いつの間に？


「……それ、お前さん宛じゃないか」

「ラブレターかな」

「きっとお相手は臭いフェチだぜ」

「はっはっはっはっは！」


若干傷付いたが、
ジョークとしてはなかなかいい。
どうせ酒で忘れてしまうのだから問題ない。
それよりも手紙だ。
僕は便箋から紙面を取り出し、読む。


「……！？」

「マジでラブレターか！？」

「いや、これは……果たし状だ」





僕は裏通りの開けた空き地にやってきていた。
今夜、ここで待つという。
僕は恨まれるようなことをした覚えはないし、
教団の人々ならこんな小細工を使うまでもないだろう。
恐らく、ただ単純に戦闘を行いたいだけの相手だ。
手紙をよこすぐらいにはしっかりした相手なので、
あまり心配はしていない。


「来ましたね」

「お前は……！？」


そこに居たのは、黒髪の美少女______間違いない、こいつは『セイリオス』だ。


「今からあなたを斬ります。いいですね」


彼女の右腕がよく見知った魔剣の形状に変化する。


「抵抗するけど？」


僕はにやりと笑って鉄剣を抜き放つ。


「……はああぁっ！！」

「でりゃあああっ！！」


金属音が響き渡る。
骨の随まで揺さぶられるようなパワー。
これがセイリオスの力だった。
だが______


「おっと！？」

「力みすぎだろう」


僕はその太刀をいなし、横に抜ける。
そして、こちらからもう一太刀仕掛ける。


「ぐっ……！」

「諦めろ」


セイリオスは咄嗟に身を翻し、剣を受け止める。
しかしその動きも姿勢も無理あるものだ。
実際、さらにその一撃でバランスをまた崩している。
それなら、転倒するまで叩き斬りつけるだけだ。


「ッ！」

「もう一発ってところかな」


彼女はもうふらふらで倒れかけだ。
曲芸のように受け止めているが、あと一撃で倒れるのは明白だった。
僕はすかさず、一撃を叩き込む______


「うりゃぁぁぁぁっっ！！」

「っ！！！」


しかしその瞬間、破れかぶれな反撃が飛んでくる。
それを受け止めたので、当然彼女は完全に転倒する。
僕は彼女の喉元に剣先を……あれ？


「ふ……」

「そんな……」


あまりにも強すぎるその太刀筋によって、
僕の剣は根元から折られてしまっていた。
当然魔剣は折れるはずもないので、力任せに叩いていれば、技量で負けていてもいずれは剣を折って勝てる腹積もりだったようだ。


「……では、私の勝ちでよろしいですか？」

「……そう、だね」


不本意だが、負けは負けである。
僕は身を投げ出した。
しかし、彼女は斬り付けてこない。


「宿に行きますよ。アークの部屋で良いです」

「え？宿の人に迷惑じゃない？」

「魔剣がそんなことを気にすると思いますか？」





僕は、彼女に言われるがまま、セイリオスを部屋に招いた。
ここで死ぬのか、と思うと悔いが残るが、悪いことばかりではなかっただろう


「そこに直って下さい」

「はい」


僕はベッドの側に立たされる。そして、彼女は右腕を魔剣に変化させ______


「せいっ！！」

「ぐっ！」


僕を斬りつけた。
その衝撃で、僕は後ろのベッドに倒れる。


「………………あれ？」


なぜか痛みがない。服は裂かれているが、傷もない。
不思議に思って彼女の方を見ると…………


「……ふふっ♥️どうされました？」


彼女の身体が、なにより魅力的に見えた。
気にするべきことはそんなことではないと理性が警鐘を鳴らすが、沸き出す性欲と、セイリオスの美しさが理性を壊してしまう。


「せ……セイリオスっ！」

「わっ♥️」


僕は彼女に抱き付き、そのままベッドに引きずり込んだ。
そして押し倒し、マウントポジションを取る。
今はただ、この極上の雌に種付けをすることしか考えられなかった。


「挿れるよ……っ！！」

「来て下さ……ぁ……♥️」


僕のいつの間にか最高硬度にまで高められていたペニスを、容赦なくその秘裂に突き入れる。
中はふわふわのとろとろで、ひだが優しくペニスに触れて甘やかしてくる。
セイリオスに抱き着いた僕はノータイムで腰を振り始める。


「はぁっ……はぁっ……セイリオス……っ！セイリオス……！！」

「ああっ♥️アークさん……もっと……♥️」


一突きごとに腰が抜けるような快楽に襲われ、セイリオスはその度に魔剣らしい凝り固まった表情がうっとりと解れていく。
その顔にさらに興奮し、さらにピストンが早まる。


「セイリオス……！セイリオス……好き……っ！！」

「はっ♥️はひぃ♥️私も好きです♥️アークさん♥️♥️」

「ナカに出していい！？」

「もちろんです♥️」


セイリオスは両足で僕の体をホールドし、さらなる快楽の沼へと引きずり込む。
僕はそうとも知らずにただ孕ませることだけを考えて腰を叩きつける。
そして、ついに射精した。


「はぁー……はぁー……」

「たくさん射精ましたね♥️」

「こんなの……初めて……」

「……私、必要ありませんでしたか？」


真剣な表情に戻って、セイリオスは僕に問う。
なんのことを言われているのか、よく分からない。


「どういう、こと？」

「私を置いていったじゃないですか……」

「人を斬りたくはない」


僕はそう告げた。間違いなく本心だ。


「大丈夫です……アークさんも斬られましたが……怪我しませんでしたよね？」

「そうだけど……」

「むしろ、良いことなんですよ。相手を素敵な魔物に変えてしまうんですから……」

「ま、魔物に！？それはダメじゃない！？」


なんだか合意できそうな流れだったが、爆弾が投げ込まれた。流石に同意できない。


「魔物になれば、ヒトのように苦しむことはなくなります。みな、丈夫ですから」

「でも……」

「それに、私と交わったときのような快楽があなたにも伝わるんですよ」

「そ……そんなに……？」


僕は唾を飲み込んでしまう。
先程の行為は、あまりに気持ち良かった。人生のあらゆる物事を超越していた。


「私は魔剣ですので、魔物です。……そして、私に斬られたあなたも最早……」

「そうなんだ……」

「お気付きでないかもしれませんが、あなたのおちんちん……また硬くなってますよ？」

「えっ！？……本当だ」


全く無意識のことだった。そもそも、行為の直後にまた勃つなんてありえない。だから感じ取れなかったのかもしれない。


「あなたは魔物ですから、何度でも、繰り返し性行為を行うことができます。何度も何度も……さっきの快楽を味わえるのです」

「う、うぅ……」


それは素晴らしいことだと、思ってしまった。
何度も性交の快感を得られる。そう思っただけで僕のモノはぴくぴくと跳ねて期待を露わにしている。


「……では、実際に体験♥️してみましょう♥️」


セイリオスは逆に僕を押し倒し、ちんぐり返しの状態で挿入を行う。


「あああっ！」

「ほらほら、どうですか……♥️」


セイリオスは激しく腰をグラインドさせ、僕のペニスを中でいじめる。
控えめな快感を与えていただけのひだが、完全に凶器と化していた。
自分が主導のセックスでは得られない、暴力的な快楽が浴びせられる。


「おぅっ、ひぃっ、あっ、これはやばっ……！」

「お顔、トロトロですよ♥️」

「こんなの、耐えられないっ……も、もう射精るっ！」


と、挿入から30秒ほどであっさり果ててしまった。
なんとも情けないが、そんなことを考える余裕すらなかった。


「お早いのですね♥️」

「ご、ごめ……んっ！」


突如肉体に激しい快感が伝わる。
自分の体を見ると、セイリオスが爪を立てて僕の腹をスライド______斬っていた。


「とりあえず、アークさんにも魔物の快楽を知ってもらうために……朝まで交尾しますからね♥️」

「しょ、しょんなっ、あっ！」


またセイリオスは腰を動かし始めるが、抵抗できない。
マウントポジションを取られているからというのもあるが、彼女が爪で僕の体を切り裂く度に、頭がチカチカするような快感が与えられる。
それにより、僕はただ彼女の下で悶えるだけの早漏肉バイブにさせられてしまっていたためだ。


「もう二度と、私を離さないで下さいね……♥️」


結局、朝が来ても解放されることはなく、
大体２日ほど交わり続けることになった。
宿屋の主人からは、大分怒られた。

■作者メッセージ
セイリオスちゃんが剣を叩き壊す戦法を取ったのは技量の差を埋めるためではなく、アークくんが自分じゃない剣を持っているのがとても気に入らなかったためです。