読切小説
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ある日、森の側、未来の嫁に、出会った
 柔らかな春の日差しと、鳥の囀りで、俺は大きく柔らかいベッドの上で目を覚ました。貧しい家庭に生まれ、生きていく為に兵士になるしか無かった俺にとっては非常に贅沢なベッドだ。
 今が魔物達との戦争中で無く、さらに、俺が重要な伝令を任されている最中でなければ、最高の目覚めだろう。
 気を失っていた間抜けな俺の名前はサジ、反魔物領のしがない兵士だ。

 俺が一体どれだけの時間、気を失っていたか分からないが、少しでも早く状況を把握し、任務に復帰しなければならない。
 まず運の良い事に、気を失っている最中に身包みを剥がされているような事は無く、重要な指令書も取られてはいなかった。
 次に、自分の身体に異常が無いか、確認を始める。全身の、特に背中側に鈍痛を感じるが、何処かの骨が折れているような事も無く、なんとか歩けそうではある。
 後頭部に大きなタンコブがあるのは気になるが、今は任務を成す事が優先だろう。

 俺は痛みを堪えながらも、人が寝るには大きすぎる、普通の3倍の大きさはあるかも知れないベッドから降りようとする。
 だが、ベッドから降り終える前に、これまたやけにでかいドアがゆっくりと開き、俺が大きなタンコブを作った原因がゆっくりと姿を現した。やつが突然現れたせいで俺は落馬し、地面で頭を打ったのだ。
 昆虫型の魔物、人間が手に持つ武器では傷をつけれない程の硬い外骨格を持ち、手に持った大きな盾で俺たち人間を容赦無く蹴散らす化け物。

「シールドビートル…」

 搾り出すようにその名を呟くのが精一杯だった。
 呆然と見つめる俺を無視するかのように、シールドビートルは器用に足でドアを閉めると、俺に向かって少しずつ近寄って来る。
 部屋に入って来たシールドビートルは、今はその両手に、盾の代わりに何かお盆のような物を大事そうに運んでいた。
 仕返しをするには良い機会だと、思う奴がいるかも知れない。しかし、いくら奴が、最大の武器であり防具でもある、その特徴とも言える大きな盾を持っていないとはいえ、彼我の戦力差は余りにも大きい。
 仮に俺が武器を持っていたとしても、奴には歯が立たないだろう、俺の剣の腕は一般人に毛が生えた程度だ。体格差もある、俺が腕に自信のある勇者だったとしても、素手では絶対に勝てない。
 
 ここは、無駄に抵抗して押さえつけられるよりも、従順なふりをし、隙を見て逃げ出すほうが、まだ現実的だろう。
 俺はわざとらしく両手を上にあげて、抵抗する意思が無い事をアピールする。そんな俺の様子を見て少し警戒を和らげたのか、奴の歩く速度が少し速くなった様な気もする。
 奴が近づいて来ると共に、奴が大事そうに運んでいる物もはっきりと確認する事が出来た。暖かそうな湯気を出したスープ、見るからに柔らかそうなパン、色鮮やかな野菜を使ったサラダ。思わず涎が垂れそうになり、慌てて口元を拭い、涎を飲み込む。
 そうこうしている内に、奴は俺の目の前で止まり、盆に乗った食事を差し出してくる。

「お、お俺の分の食事なのか…?」

思わぬ展開に驚き、言葉は噛み、声は上ずった散々な俺の問いかけに、奴は2度、重厚な見た目にそぐわぬ、可愛らしい仕草で頷いた。





 俺が、奴から差し出された食事を綺麗さっぱり平らげるのに、左程時間は掛からなかった。
 思えば、伝令の任を受け出発した日からまともに食事をした覚えが無い。食べた物と言えば、精々馬上でも食べられる、生臭さが残る干肉くらいだ。
 それに引き換え、今平らげた料理の美味しさには驚かされる。見た目通りにパンは柔らかく、野菜は新鮮そのもの、スープには香辛料まで使われていた。お湯の中に細切れの野菜が浮いていた下っ端兵士の食事とは雲泥の差だ。
 食事をした場所も、窓辺から春の柔らかい日差しが射し込む場所に机が置いてあり、まるで貴族にでもなったかの様な気分だ。
 唯一不満があるとすれば、食事中ずっと奴が俺を見つめていた事くらいか。
 だが、美味しい食事を食べさせて貰って、礼も言えない程度の人間にはなりたくは無い。

「ご馳走様、美味しかったよ。」

 ちゃんと目を見て、失礼の無い様に、人間相手に普通に礼を言う様に、自然に言葉を出す事が出来た。
 さらに驚いたのは、奴が俺の礼に対して返答をして来た事だ。

「ドウイタシマシテ」

 少したどたどしい感じはするが、きちんと聞き取れる声で、しかも思ったより可愛らしい声が奴の口から紡がれる。
 目は昆虫のように見えるので少し不気味だが、顔は良く見ると、人間基準で考えれば可愛らしい女の子のような顔をしている。
戦場で見かける奴らの顔をしっかりと見る機会は無いに等しいし、顔が見える所まで近づかれた仲間は、まず帰って来ないのだから、今俺は非常に貴重な体験をしているのかも知れない。



 俺に見つめられて恥ずかしいのだろうか、奴は俺の目線から逃れるように、俯いてしまった。
 その仕草が思ったより可愛らしく、俺まで恥ずかしくなってくる。たしかに、いくら相手が魔物とは言え、女の子をじっと見つめるのは非常に無作法だった。
 一人で勝手に反省し、天井を向いて頷いていると、急に股間に何かが触れる感触がした。俺は天井から慌てて股間へと視線を戻し、そこにいた思わぬ奴にさらに驚いてしまった。
 さっきまで俯いていたはずのシールドビートル、奴がいつの間にか俺の股間に顔を近づけて、匂いをくんくんと嗅いでいるのだ。
 俺は思わず飛びのこうとするが、それよりも速く奴の両手が俺のふとももを抑え、身動きが取れなくなってしまう。

「は、離せ! 俺に何をする気だ!」

 突然の奴の行動に対処が遅れたが、このまま好きにさせるのは非常に危ない。
 俺はやつの頭を両手で押さえると、股間から引き離す為にありったけの力を込める。
 奴は俺の行動を気にもせず股間の匂いを嗅いでいたが、少しずつ股間から引き離されてくると、まるで俺に抗議するかのように顔を上げる。
 その表情はまるで、大好物を前にお預けをされた子どもがする様な、頬をパンパンに膨らませ、頬をピンク色に染めた以外なものだった。
 俺が奴の表情に面喰らっていると、奴は思わぬ言葉を口にしだした。

「私ハ貴方ニ食事ヲ与エタ、ダカラ今度ハ、貴方ガ私ニオ返シスル番」

 最初は奴が言っている事の意味が分からなかった。だが、先程の奴の行動を思い出すと合点がいった。
 魔物の中には人の精液を主食とする者もいる。さらに、他に食べれる物もあるのだろうが、精は格別なご馳走という魔物もいる。
 つまり、奴はこう言いたいのだ。俺にご馳走を振舞った分、私にもご馳走を振舞ってくれ…と。

「世ノ中ハ、ギブアンドテイク」

 まるで俺の考えていた事を肯定するかのように、奴が呟きながら再度股間に向けて顔を近づけ始める。
 先程と同じだけ力を込めているのに、今度は全く動きが止められない。先程は手加減されていたみたいだ。
 こうなったら、もう抵抗は無意味なのだろう。奴の頭から両手を離し、降参だと言わんばかりに両手を上げる。
 俺の抵抗が止んだ事を不審に思ったのか、奴がまた顔を上げ、今度は不思議そうに俺を見つめる。
 俺はわざとらしくため息をつくと、せめて相手の名前を聞こうと思い、名を尋ねた。

「シルビー」

 奴は、シルビーは俺の問いに至極端的に答えると、さっさと顔を俺の股間へと戻してしまった。
 



 もうシルビーを止める手段は無く、俺の着ていた汚いシャツやズボンは乱暴に引き裂かれ、あっという間に素っ裸にされてしまった。
 もしかしたら指令書も一緒に破られてしまったかも知れない。
 俺の逸物もさぞや乱暴に扱われるのだろうと思っていると、やけに柔らかく湿った、温かい何かが俺の逸物を撫でる。
 視線を股間に向けると、シルビーはまるで人間の女が普通にする様に、俺の逸物を優しく掴み、舌を使って丁寧に愛撫していた。
 恐怖で縮み上がっていた筈の俺の逸物は、シルビーの丁寧で慈しむような舌使いによってあっという間に勃たされてしまった。
 このまま一気に咥えるのかと思いきや、奴は舌を俺の逸物に這わせながら、俺を見つめる。その表情はまるで、俺の了承を待っているかのような、優しく従順な妻の様に見えるものだ。
 
「うっ…うわ! ああ………」

 見つめながら舐められたせいなのか、思わぬシルビーの表情で気が緩んでしまったのか、俺の逸物は我慢する事が出来ず、彼女の顔一杯に精を吐き出してしまう。
 何日も溜まっていたせいか、それともシルビーの舌がそれ程気持ちよかったのか、自分で抜いていた時よりも遥かに多い精液が、彼女の顔に降り注ぐ。
 長い、長い吐精が終わる頃には、彼女の顔と前髪は白く染まっていた。
 あまりの気持ち良さに、射精後しばらく、荒く息をつきながら天井を眺めていたが、彼女の顔にかけてしまった事を謝ろうと視線を彼女へと向ける。

「ワァ…コンナニ、沢山」

 シルビーは顔にかかった精液まるで気にしていないどころか、嬉しそうに手で掬い、音をたてながら掬った精液を舌で舐め取っている。
 美味しそうに俺の精液を舐める彼女の姿に、俺の逸物は小さくなるどころか、先程よりも硬く反り返ってしまった。
 顔や前髪についた精液を綺麗に舐め終えたシルビーは、未だに収まらない俺の逸物を視界に納めると、その頬をさらに紅に染めた。





 シルビーの表情に俺は我慢が効かなくなってしまったのだろうか、気づいたら彼女の口元へ逸物の先端を自ら押し付けていた。そのまま、彼女が抵抗しない事をいいことに、少しずつ彼女の口の中、奥深くへ逸物を納めていく。
 根元まですっぽりと彼女の口の中へ逸物を納めると、器用に彼女が舌を嬉しそうに逸物に絡めてくる。
 彼女の行為を了承と取った俺は、彼女の頭に優しく両手を添えると、自ら腰を前後に動かし始めた。
 俺が自ら彼女に快楽を求めたのが余程嬉しかったのか、俺の逸物を咥えたまま、顔を見上げるシルビーの瞳が熱を帯びているように感じる。
 恐怖の対象だったシールドビートルに咥えさせている事に興奮しすぎてしまったのか、先程と同様あっという間に俺は射精しそうになってしまう。
 そんな俺の気配を感じ取ったのか、ほぼされるがままだったシルビーが急に自ら動き出す。
 俺の腰の動きに合わせた、彼女の前後運動に、我慢など出来るはずが無い。

「だ、ダメだ…我慢出来ない!」

 慌てて腰を引こうとする俺の身体を、シルビーの両手が俺の腰の後ろに素早く回りこみ、俺の身体は容赦無く彼女へと引き寄せられる。
 その動きが決定打になったのか、俺は彼女に導かれるまま、口の中の奥深くでだらしなく射精してしまう。
 精液を直に飲み込みながらも、シルビーは咽て吐き出す事も無く、最後には、俺の精液は一滴残らず吸い出されてしまった。
 連続で2回も射精した俺の体力は限界を迎え、力無く背もたれに寄りかかる。

「ゴ馳走様デシタ、美味シカッタヨ」

 ご馳走へのお礼を述べる彼女に返事を返す気力も無く、ただただ俺は力なく頷くだけだ。
 そんな俺の身体をシルビーは両手で持ち上げると、あの柔らかくて大きなベッドへと運ぶ。
 





 俺の事をベッドへと運び終えた後、しばらくしてもシルビーはベッドの側から離れず、まるで俺を守るかのように居座り続けている。
 休憩して少し体力に余裕が出てきた俺は、まだ自分の名前を伝えていなかった事を今頃になって思い出した。

「いまさら遅いかも知れないが、俺の名前はサジだ」

 急に声を掛けられて驚いたのだろうか、心なしか眼を見開いて固まっていたシルビーだったが、しばらくすると、俺の名前を何度か呟きだした。
 呟く事で俺の名前をインプットでもしているのだろうか。彼女の行為の意味を考えていると、ふと視線の合ったシルビーに、全く想像していなかった事を言われた。

「サジ、コレカラハ、私ノ夫」

「明日カラハ、子作リモ頑張ル」

 彼女の言葉に現実逃避をしたくなった俺は、寝たら夢も覚めるだろうと、ゆっくりと目蓋を閉じた。
 次に目が覚めた時には、彼女に早速子作りをさせられたのだから、全く逃避した甲斐は無かったのだが…。
17/04/04 02:31更新 / アルプの少女?

■作者メッセージ
子どもは2人出来たそうな。

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