灰色の思い出は色取り取りの美しき色に染まる
俺は海が好きだ。
だって過去に巡りあったあの女性のことを思い出せるから…
ガキのくせして年上の女性に一目惚れし告白をした。
顔はもう覚えてはいない。人間か、魔物か…それすらも覚えていない。
それでもいい、この思いでは俺にとっての宝だから。
これは俺にとっての思いでの欠けた欠片を掴む時までの話…
「君が大人になったときまた会えたなら、そして尚も私のことを…」
「よっ!どうした?難しそうな顔して…またあの女の人のこと思い出してんのか?ルイ」
「そんなとこだ」
「好きなんだなあ、やっぱり」
「お前はあそこの花屋やってるノームの」
「アキちゃん!」
「そうそう…そのアキちゃんが…テンションたけぇ」
「可愛いだろ!」
「それは認めるから落ち着け!ハゲ!死ね!」
「後半ただの罵倒だよね!?俺も悪かったけど!」
「早くしないと取られるぜ?」
「好感度みたいなものがあっだな…」
「高過ぎるとリアルじゃいい人になるぞ。しかもそれで終わるし」
「やめて!心折れる!」
「頑張れ!」
「お前もな」
「そうだなあ…」
「テンション下がりますね」
「何年も前だしほとんど覚えてねえからな」
「顔も名前もか?」
「顔も人間か魔物か…名前は確か聞いてなかったな」
「名前は聞くもんだろ…知らずに告白できるお前もすごいな」
「ガキの行動力を嘗めたらいけない」
「俺もそうだったしな」
「イタズラに費やしてたくせに」
「うっせ」
「また会えたらなあ…」
これが運命を呼び寄せたのだろう。
今は色のない思い出に色がつき始める。
「釣りいこうぜ!」
「ネレイスに襲われね?他にも襲われね?」
「あいつら彼女がいたり好きなやつがいると諦めてくれるくらいの自重さは持ってるだろ?そうじゃないやつには容赦ないが…」
「お前はいいよ?明確な好きな人がいるし?でも俺は思いで止まりで明確じゃないからヤバくね?」
「大丈夫だと思うけどな」
「もしそのまま襲われて持ってかれたらどうにかしてお前を殺しにいく」
「だだだいじょうぶだ」
「声震えんな、わかったよ行くか。久し振りに海を眺めるついでに」
「久し振りと言っても近くだし用事があっても暇を見つけて行ってるくせに?」
「遠目からしか見てないんだよ」
「近場によるのは久し振りと…」
「釣りが一ヶ月ぶりか?」
「それもあれば十分に久し振りだな」
「いくぞ」
「あいよー」
これが巡り合わせになったのだろう。
タイミングが合ったのかことによる運命か
それとも…必然なのか。
言えることはこの男はこのあと勘違いで逃げ回ることになる。
これだけである。
ただし勘違いが解けたとき…そのときは…
「俺はあっちが釣れそうだと思うんだけど?」
「いいや、俺はあっちだと思うぜ?ルイ」
「潮の流れ考えてる?」
「あっちも良いけど?」
「こっちの方がこの時間帯では一番良いと思うんだけど…」
「なら、どちらが沢山取れるか…勝負!」
「よろしい、ならば勝負だ!」
このとき別れたのが良かったのか悪かったのか…
確実に良い方に流れていたのだろ。
この男にとっては。
「ネレイスに気を付けつつやるか」
気を付けるに越したことはない。
「……………二十か」(ザザッ
「ん?」
「あの魔物は…クラーケン!?」
間違いない!あの足は!クソッ!何処に隠れる!
逃げ場は…海沿いの道…それと…道にされていない森!
あれは一応海の魔物、地に出ればどうにかなるか!
でも中には人の姿になれる奴もいるし…
「見つけました…」
見つかったし!考えてる暇はないか!
「待って!」
クラーケンの魔物の彼女は人の足をつけ追い掛けてくる。
それなりに人の足に慣れているようで足が早い。
(選択をミスしたか!?こうなると俺も森になれてないし厳しい…どうする!?)
「お願い!待って!」
彼女の方がどうやら慣れている。
まるで最初から逃げるものを森の中でも追いかけられるように…
徐々に間を詰められ右手が捕まれる。
それを合図に足がクラーケンのそれになり体を完全にホールドした。
「逃げないでくださいよ!」
「行きなり魔物に追い掛けられたら人間なら逃げるよ!」
「私のこと…覚えてないんですか?もしものこと考えて逃げられたときのことを考えて色々頑張った甲斐がありました…」
「はっ?」
「あなたが小さい頃に…」
「!」
「何でそれを…」
「全部忘れた訳じゃないみたいですね…よかった…」
「もしかしてあのとき俺が…」
「はい…覚えててくれてよかった…」
(じゃあこの人が?あっ…)
それに反応するようにルイの記憶が色付き始める
「お姉さん!俺と結婚してくれ!」
「えっ?」
「俺、お姉さんを初めて見たときから」
「ちょっと待って!」
「なんだよ〜」
「それがどういうことかわかってる?」
「それくらいわかる!」
「そう…でも私は君と結婚はできないの」
「何で!」
「君はまだ子供だから」
「そんな…」
「それに私はクラーケン、魔物よ?」
「好きになったんだ!魔物でも関係ない!」
「そんなに私のこと…それなら約束をしましょう」
(これは…)
「君が大人になったときまた会えたなら、そして尚も私のことを…」
(ああそうか…)
「好きでいてくれたなら…」
(俺、バカだなぁ…)
「結婚してあげる」
(こんな大事なこと忘れてるなんて…)
「それじゃダメかな?」
(こんなに綺麗な人を忘れてるなんて…)
「そんなに待てないよ…」
「忘れちゃいそうね」
「そんなこと…」
「人って忘れやすいのよ?逃げちゃいそうね?」
「もしそうだったら追い掛けて捕まえてよ、必ず思い出すから」
「そうね。またね、えーと」
「ルイ!ルイって言うんだ!」
「私は…」
「エミリ…」
「えっ?」
「エミリ…ごめんね。忘れてて…全部思い出したよ…」
「ルイくん?」
「好きだ。子供の時から今も」
「ルイくん…」
「くん、って年でもない。ルイって呼んでくれ」
「はい…」
「好きだ」
「はい…」
「結婚してくれ」
「はい…!」
エミリは泣いていた。
それは綺麗で美しく嬉しさを感じさせる涙だった。
(好きだよ、エミリ…)
思い出は美しい今を与えてくれる。
だって過去に巡りあったあの女性のことを思い出せるから…
ガキのくせして年上の女性に一目惚れし告白をした。
顔はもう覚えてはいない。人間か、魔物か…それすらも覚えていない。
それでもいい、この思いでは俺にとっての宝だから。
これは俺にとっての思いでの欠けた欠片を掴む時までの話…
「君が大人になったときまた会えたなら、そして尚も私のことを…」
「よっ!どうした?難しそうな顔して…またあの女の人のこと思い出してんのか?ルイ」
「そんなとこだ」
「好きなんだなあ、やっぱり」
「お前はあそこの花屋やってるノームの」
「アキちゃん!」
「そうそう…そのアキちゃんが…テンションたけぇ」
「可愛いだろ!」
「それは認めるから落ち着け!ハゲ!死ね!」
「後半ただの罵倒だよね!?俺も悪かったけど!」
「早くしないと取られるぜ?」
「好感度みたいなものがあっだな…」
「高過ぎるとリアルじゃいい人になるぞ。しかもそれで終わるし」
「やめて!心折れる!」
「頑張れ!」
「お前もな」
「そうだなあ…」
「テンション下がりますね」
「何年も前だしほとんど覚えてねえからな」
「顔も名前もか?」
「顔も人間か魔物か…名前は確か聞いてなかったな」
「名前は聞くもんだろ…知らずに告白できるお前もすごいな」
「ガキの行動力を嘗めたらいけない」
「俺もそうだったしな」
「イタズラに費やしてたくせに」
「うっせ」
「また会えたらなあ…」
これが運命を呼び寄せたのだろう。
今は色のない思い出に色がつき始める。
「釣りいこうぜ!」
「ネレイスに襲われね?他にも襲われね?」
「あいつら彼女がいたり好きなやつがいると諦めてくれるくらいの自重さは持ってるだろ?そうじゃないやつには容赦ないが…」
「お前はいいよ?明確な好きな人がいるし?でも俺は思いで止まりで明確じゃないからヤバくね?」
「大丈夫だと思うけどな」
「もしそのまま襲われて持ってかれたらどうにかしてお前を殺しにいく」
「だだだいじょうぶだ」
「声震えんな、わかったよ行くか。久し振りに海を眺めるついでに」
「久し振りと言っても近くだし用事があっても暇を見つけて行ってるくせに?」
「遠目からしか見てないんだよ」
「近場によるのは久し振りと…」
「釣りが一ヶ月ぶりか?」
「それもあれば十分に久し振りだな」
「いくぞ」
「あいよー」
これが巡り合わせになったのだろう。
タイミングが合ったのかことによる運命か
それとも…必然なのか。
言えることはこの男はこのあと勘違いで逃げ回ることになる。
これだけである。
ただし勘違いが解けたとき…そのときは…
「俺はあっちが釣れそうだと思うんだけど?」
「いいや、俺はあっちだと思うぜ?ルイ」
「潮の流れ考えてる?」
「あっちも良いけど?」
「こっちの方がこの時間帯では一番良いと思うんだけど…」
「なら、どちらが沢山取れるか…勝負!」
「よろしい、ならば勝負だ!」
このとき別れたのが良かったのか悪かったのか…
確実に良い方に流れていたのだろ。
この男にとっては。
「ネレイスに気を付けつつやるか」
気を付けるに越したことはない。
「……………二十か」(ザザッ
「ん?」
「あの魔物は…クラーケン!?」
間違いない!あの足は!クソッ!何処に隠れる!
逃げ場は…海沿いの道…それと…道にされていない森!
あれは一応海の魔物、地に出ればどうにかなるか!
でも中には人の姿になれる奴もいるし…
「見つけました…」
見つかったし!考えてる暇はないか!
「待って!」
クラーケンの魔物の彼女は人の足をつけ追い掛けてくる。
それなりに人の足に慣れているようで足が早い。
(選択をミスしたか!?こうなると俺も森になれてないし厳しい…どうする!?)
「お願い!待って!」
彼女の方がどうやら慣れている。
まるで最初から逃げるものを森の中でも追いかけられるように…
徐々に間を詰められ右手が捕まれる。
それを合図に足がクラーケンのそれになり体を完全にホールドした。
「逃げないでくださいよ!」
「行きなり魔物に追い掛けられたら人間なら逃げるよ!」
「私のこと…覚えてないんですか?もしものこと考えて逃げられたときのことを考えて色々頑張った甲斐がありました…」
「はっ?」
「あなたが小さい頃に…」
「!」
「何でそれを…」
「全部忘れた訳じゃないみたいですね…よかった…」
「もしかしてあのとき俺が…」
「はい…覚えててくれてよかった…」
(じゃあこの人が?あっ…)
それに反応するようにルイの記憶が色付き始める
「お姉さん!俺と結婚してくれ!」
「えっ?」
「俺、お姉さんを初めて見たときから」
「ちょっと待って!」
「なんだよ〜」
「それがどういうことかわかってる?」
「それくらいわかる!」
「そう…でも私は君と結婚はできないの」
「何で!」
「君はまだ子供だから」
「そんな…」
「それに私はクラーケン、魔物よ?」
「好きになったんだ!魔物でも関係ない!」
「そんなに私のこと…それなら約束をしましょう」
(これは…)
「君が大人になったときまた会えたなら、そして尚も私のことを…」
(ああそうか…)
「好きでいてくれたなら…」
(俺、バカだなぁ…)
「結婚してあげる」
(こんな大事なこと忘れてるなんて…)
「それじゃダメかな?」
(こんなに綺麗な人を忘れてるなんて…)
「そんなに待てないよ…」
「忘れちゃいそうね」
「そんなこと…」
「人って忘れやすいのよ?逃げちゃいそうね?」
「もしそうだったら追い掛けて捕まえてよ、必ず思い出すから」
「そうね。またね、えーと」
「ルイ!ルイって言うんだ!」
「私は…」
「エミリ…」
「えっ?」
「エミリ…ごめんね。忘れてて…全部思い出したよ…」
「ルイくん?」
「好きだ。子供の時から今も」
「ルイくん…」
「くん、って年でもない。ルイって呼んでくれ」
「はい…」
「好きだ」
「はい…」
「結婚してくれ」
「はい…!」
エミリは泣いていた。
それは綺麗で美しく嬉しさを感じさせる涙だった。
(好きだよ、エミリ…)
思い出は美しい今を与えてくれる。
14/02/11 03:33更新 / 幸せのためのキセキ