図鑑世界童話全集より 掌編集
ウサギとカメ
昔々、ある草原にワーラビット達が住む集落がありました。そして、その集落では海和尚という種族の子供が1人、ワーラビットに混ざって暮らしていました。
海和尚は本来、ジパングという遠い国の海で暮らしている魔物娘なのですが、その海和尚は幼い頃に両親とはぐれ、どういうわけか故郷から遠く離れたこの国にある草原の近くを流れる川に迷い込んでいたのです。
ワーラビットは子供の海和尚を自分達の種族と同じように育て、特にこの海和尚より少し年上のあるワーラビットの子供は、海和尚を自分の妹のようにかわいがりました。
しかし、ワーラビットのお姉さんは、夫となる男性を求めて野山や人里を駆け回る年齢になると、この妹分の事が心配になってきました。
大きな甲羅を背負った海和尚は、陸地を速く走る事ができません。それでも頑張って男の人を捕まえようとする気概を見せてくれればとお姉さんは考えるのですが、海和尚は魅力的な男の人を見かけても、ワーラビットとは違ってその目には飢えた獣の眼差しが宿る様子が無いのです。
ある日、お姉さんは海和尚に発破をかけるために、この妹分に勝負を提案しました。
「これからどっちが先に男の人を捕まえるか競争しよう。夫にしろとまでは言わない。取り押さえるだけで充分だ」
そう言うが早いか、ワーラビットのお姉さんは1番近い人里に向かって走り出しました。海和尚もがんばって後ろを付いていこうとしますが、その差はどんどん開き、ワーラビットの後姿が見えなくなると、近くの草むらに座り込んでしまいました。
「私がお姉ちゃんに足の速さで勝てるわけないのに。足が速いのってそんなに偉いの? 私はそんなに焦って男の人を探すより、原っぱでゆっくり甲羅干ししていたいよ」
海和尚は仰向けに寝転がると、そのまま眠りこけてしまいました。本来亀の甲羅干しはうつ伏せで行うものですが、ワーラビットに育てられたこの海和尚はそれをよく理解しておらず、誤って仰向けで甲羅干しを行う癖があるのです。重い甲羅のせいで1度倒れると起き上がるのが難しく、股を隠すような物は身に付けていないにも関わらず、大胆にも脚を大きく広げ、胸を隠す前掛けも風にはためいてその下の胸がちらちらと見える無防備な姿勢です。それどころか、自分がここで無防備に寝ているぞと周囲に知らせるような大きないびきまでかき始めました。
夕方。ワーラビットのお姉さんはぶつぶつと文句を言いながら戻ってきました。男の人を1人も捕まえる事ができなかったからです。
お姉さんが向かった場所では、だいぶ前からすぐ近くにワーラビットの集落があるため、男性達もワーラビットの習性をよく知っていました。そのためお姉さんが友好的な態度で近づいていっても、みんな一目散に逃げだしてしまうのです。
しかし、お姉さんにとって自分が男性を捕まえる事は、今回の主目的ではありません。それ以上に、海和尚が付いてきてくれなかった事はお姉さんをよりがっかりさせました。
最初から、本当に競争するつもりなんて無かったのです。時間がかかってでも海和尚が人里までちゃんと来てくれたなら、男の人を捕まえるコツを教えたり、なんだったら自分もその手伝いをしてあげようとワーラビットのお姉さんは考えていました。
「まさかあの娘があんなに腑抜けだったなんて。こんな調子じゃ、いつまでたっても夫を捕まえる事なんてできやしないぞ」
その時、ワーラビットのお姉さんは道の側にある草むらが何やら騒がしい事に気づきました。
「俺が悪かった。謝る。だから頼む、離してくれ!」
「やーだー。ヌくのはいいけど抜いちゃやー」
なんと、仰向けに寝転がった海和尚が屈強そうな男の人をその脚でしっかりと捕まえていたのです。
実はワーラビットのお姉さんが戻ってくる少し前、海和尚が眠っている近くの道を1人の猟師が通りかかりました。大きないびきに気づいてその方向へと足を進めた猟師は、大胆にもこちらを誘惑するような格好で眠る海和尚の姿に惹かれ、気が付くとズボンを脱いで彼女に覆いかぶさっていたのです。しかしその時、海和尚が目を覚ましました。猟師は慌てて腰を引こうとしますが、おマンコからおちんちんが完全に抜けて行く感触を本能的に嫌がった海和尚は、寝ぼけ眼のまま脚で猟師の腰をがっちり捕まえたのでした。
しかも猟師の周りには、海和尚の優しい性格を知る草原や川の魔物娘や大人のワーラビット達がいつの間にか集まり、「逃げるな卑怯者!」「襲うんだったら責任取って結婚しろ!」等と大声でヤジを飛ばす始末で、とても逃げられる状況ではありません。
こうして、海和尚はワーラビットのお姉さんが提案した勝負に鮮やかに勝利し、それどころか夫を得る事ができたのでした。
・編者あとがき
このお話は「他の種族の者を自分の種族の価値判断で勝手に推し測ってはいけない」という例えとして有名なお話です。
また、反魔物領では海和尚を捕らえようとした猟師に寝ぼけた海和尚が噛み付き、動けなくなった猟師が集まってきた魔物達に食い殺されてしまうという内容で「真正面から襲い掛かってくるのみが魔物の脅威ではない」という警告として語られています。
子供たちが夫婦ごっこをした話
これは、ある仲睦まじい姉と妹の身に起きたお話です。その姉妹が住む地域は、反魔物領と親魔物領のどちらにも属さない中立地帯とされ、一応魔物娘も住人として受け入れていましたが、どちらかというと主神教団の教義に寄り添う文化を持っていました。
ある日、姉妹のお母さんが市場で買い物をして帰ってきたのですが、お母さんは家に着くと子供達にろくに姿も見せようとせずに部屋に籠ってしまいました。
「お母さんは風邪をひいたみたいだから、おまえ達はお母さんの部屋に近づいてはいけないよ。風邪がうつってしまうからね」
お父さんはそう言って子供達をお母さんの部屋から遠ざけ、食事を部屋に運んだりするのも全てお父さんがやっていました。
数日後の事です。妹は夜中にトイレに行きたくなって目を覚ましましたが、この娘はまだ夜中に1人でトイレに行けませんでした。そのため、同じ寝室で眠っている姉を起こして付いてきてもらいます。
無事にトイレを済ませた姉妹が寝室に戻る時、2人は何日も顔を見ていないお母さんが心配なのでこっそり部屋を覗いてみることにしました。すると、お母さんはお父さんと裸で抱き合って何やら楽しげな声を上げています。頭に短い角のような物が生えていたりと、自分達の知る姿と少し違いますが、あれは確かに姉妹のお母さんです。
実はお母さんは市場で狸のような姿をした商人が売っていたお菓子を買い、帰る途中で1つつまみ食いしたところ、身体がレッサーサキュバスに変わってしまったのでした。姉妹の両親はこの事を子供達にどう説明するのか悩み、とりあえずお母さんを部屋に隠して子供達が魔力の影響を受けるのを抑えるために子供達を部屋から遠ざけたのです。
「お母さん何しているんだろ」
姉の方は寝室の中をじっと見つめ、顔を真っ赤にしながら呟きます。
「わかんない。でも気持ちよさそう……んっ」
妹の方はというと、左手でネグリジェをめくり上げ、右手をドロワーズの中に突っ込んでいました。両親の行っている事を見て、そこを刺激すると気持ちよくなるという事を直感的に悟ったのです。
「ちょっと。あんた何やってんの」
「だって、お母さんっ、あんなに、楽しそう、なんだもん、んんっ」
妹がひと際大きく震えると、ドロワーズの股の所に小さな染みが広がりました。それから、妹は荒い息を吐いて姉にこう提案します。
「お姉ちゃん、私達も、お父さんとお母さんが、やってる事、真似してみない?」
姉の方も、両親がやっている事を見てからお腹の下の方に熱い物がこみ上げるのを感じていました。自分もお母さんみたいにしたらどれだけ気持ちいいのだろうかと考えてしまいます。でも、お父さんとお母さんはあの遊びを子供達には秘密にしていました。それを子供が勝手にやっていいのか、とも姉は考えます。
「で、でもお父さん役は誰がするの? おちんちんが無いとできないみたいよ?」
すると、妹はこう答えました。
「お兄ちゃんにやってもらえばいいよ」
この家の子供達は3人きょうだいで、姉から見れば弟、妹から見れば兄に当たる真ん中の男の子がいたのです。今までまともな性知識を与えられず、目の前で繰り広げられている衝撃的な光景に対して一切の免疫を持っていなかった姉妹は、寝室の中から漂ってくるレッサーサキュバスの魔力に頭をすっかり支配されていました。夢遊病にかかったようにふらふらと、兄弟の寝室へと歩いていきます。
両親はその後もしばらくの間激しく交わっていましたが、突然廊下の方から子供達の泣き叫ぶ声が聞こえてきました。慌てて声がする方に走るとそこは息子の寝室で、内側からドアが開かないようにされています。力づくでドアをぶち破ったお父さんは、中から漂ってくる異臭に顔をしかめ、目に入ってきた光景に驚愕しました。
部屋の中では夫婦の娘達が泣き叫び、寝室の主である息子が呆然としていました。娘達の妹の方はベッドの上に仰向けで、姉は近くの床にうつぶせで横たわり、息子は姉の腰を抱えた状態で密着しています。3人とも衣服を一切身に付けていません。ベッドのシーツは乱れて赤黒い染みが付き、その上で脚を広げた姿勢で横になっている妹のおマンコからは白い液体と赤い液体が混ざった物が流れだしていました。そして何より、姉の方のおマンコにはお父さんが見た時も彼女の実の弟のおちんちんが深々と突き刺さっていたのです。はっと気が付いた息子がゆっくりと腰を引くと、姉のおマンコからも妹と同じ液体が流れだしてきました。
両親は子供達がやってしまった事を悟り、すっかり青ざめてしまいます。魔物娘は生態としても一般的な価値観としても、近親間で子供を作る事を忌避しません。兄や弟の子供を妊娠したとか、娘を甘やかしすぎた父親が妻だけでなく娘からも襲われたなんて事態になっても、他の魔物娘は祝福こそすれ咎める事は無いのです。
しかし、子供達はまだ人間です。人間同士が血の繋がったきょうだいで子供を作るという事は、今の時代でも大きな声で語る事はできないタブーです。形式上は中立とはいえ、主神教団の影響を受けているこの土地でそんな事になってしまったと周囲に知れたら家族は、そしてもしできてしまったなら生まれてくる赤ちゃんは、どのような扱いを受けてしまうのでしょうか。
その時、ふと何かを思いついたお父さんは、台所にある物を取りに行ってすぐ戻ってきました。その右手には子供達に与えようと買ってきたリンゴが、左手には自分達でこっそり食べようと買ってきた虜の果実が2個ずつ握られています。
お父さんはそれを娘達に見せ、こう言いました。
「どちらか食べてみたいと思う方の果実を1つ取りなさい」
すると、娘達は迷わず虜の果実を手に取りました。リンゴは何度も食べた事がありますが、このハートの形をした果実は今まで市場で見かけても決して食べさせてもらえなかったからです。それを見たお父さんはお母さんにこう言いました。
「この娘達は人間の食べ物ではなく魔物娘の食べ物を選んだ。おそらく俺達の知らない所で魔物娘になってしまっていたんだろう。そう思う事にするんだ」
「でもあなた、この子達は私と違ってどう見てもまだ人げ――」
「魔物になったんだ! 人間にしか見えないのは、この娘達がきっと魔女か何かだからだ。そう思う事にするんだ。ほら、もう遅いからみんな寝よう」
お父さんは強引にお母さんを引っ張って息子の寝室を後にしました。虜の果実を食べ終えた娘達は、さっきまで破瓜の激痛に泣いていた事をもう忘れてしまったかのように、熱に浮かされたような顔をしてワーウルフのような目で息子の方を見ていますが、お父さんはそれも何かの見間違いだと自分に言い聞かせます。
その日から、両親は市場で買ってきた魔界の食べ物を毎日のように娘達に食べさせました。その甲斐もあって、娘達は母親と同じレッサーサキュバスに変化します。魔物娘への変化が出産前に間にあったので、それぞれのお腹にいる赤ちゃんも変化して、一家は「魔物化した娘が兄や弟と結婚したよくある家庭」としてどうにか事なきを得ました。実際には妹が産んだ赤ちゃんはインキュバスでしたが、そう思う事にしましょう。
・編者あとがき
禁欲を美徳とする主神教団では、子供達には大人になるまで性知識を与えるべきではないという意味の「寝た子を起こすな」という言葉がありますが、このお話はそれに対する風刺として書かれた物だと言われています。
また、主神教団では同様に子供達の欲求を性的ではない方法で昇華する事を推奨している場合もあり、このお話で父親が娘達に見せたリンゴはその隠喩だと考えられます。
昔々、ある草原にワーラビット達が住む集落がありました。そして、その集落では海和尚という種族の子供が1人、ワーラビットに混ざって暮らしていました。
海和尚は本来、ジパングという遠い国の海で暮らしている魔物娘なのですが、その海和尚は幼い頃に両親とはぐれ、どういうわけか故郷から遠く離れたこの国にある草原の近くを流れる川に迷い込んでいたのです。
ワーラビットは子供の海和尚を自分達の種族と同じように育て、特にこの海和尚より少し年上のあるワーラビットの子供は、海和尚を自分の妹のようにかわいがりました。
しかし、ワーラビットのお姉さんは、夫となる男性を求めて野山や人里を駆け回る年齢になると、この妹分の事が心配になってきました。
大きな甲羅を背負った海和尚は、陸地を速く走る事ができません。それでも頑張って男の人を捕まえようとする気概を見せてくれればとお姉さんは考えるのですが、海和尚は魅力的な男の人を見かけても、ワーラビットとは違ってその目には飢えた獣の眼差しが宿る様子が無いのです。
ある日、お姉さんは海和尚に発破をかけるために、この妹分に勝負を提案しました。
「これからどっちが先に男の人を捕まえるか競争しよう。夫にしろとまでは言わない。取り押さえるだけで充分だ」
そう言うが早いか、ワーラビットのお姉さんは1番近い人里に向かって走り出しました。海和尚もがんばって後ろを付いていこうとしますが、その差はどんどん開き、ワーラビットの後姿が見えなくなると、近くの草むらに座り込んでしまいました。
「私がお姉ちゃんに足の速さで勝てるわけないのに。足が速いのってそんなに偉いの? 私はそんなに焦って男の人を探すより、原っぱでゆっくり甲羅干ししていたいよ」
海和尚は仰向けに寝転がると、そのまま眠りこけてしまいました。本来亀の甲羅干しはうつ伏せで行うものですが、ワーラビットに育てられたこの海和尚はそれをよく理解しておらず、誤って仰向けで甲羅干しを行う癖があるのです。重い甲羅のせいで1度倒れると起き上がるのが難しく、股を隠すような物は身に付けていないにも関わらず、大胆にも脚を大きく広げ、胸を隠す前掛けも風にはためいてその下の胸がちらちらと見える無防備な姿勢です。それどころか、自分がここで無防備に寝ているぞと周囲に知らせるような大きないびきまでかき始めました。
夕方。ワーラビットのお姉さんはぶつぶつと文句を言いながら戻ってきました。男の人を1人も捕まえる事ができなかったからです。
お姉さんが向かった場所では、だいぶ前からすぐ近くにワーラビットの集落があるため、男性達もワーラビットの習性をよく知っていました。そのためお姉さんが友好的な態度で近づいていっても、みんな一目散に逃げだしてしまうのです。
しかし、お姉さんにとって自分が男性を捕まえる事は、今回の主目的ではありません。それ以上に、海和尚が付いてきてくれなかった事はお姉さんをよりがっかりさせました。
最初から、本当に競争するつもりなんて無かったのです。時間がかかってでも海和尚が人里までちゃんと来てくれたなら、男の人を捕まえるコツを教えたり、なんだったら自分もその手伝いをしてあげようとワーラビットのお姉さんは考えていました。
「まさかあの娘があんなに腑抜けだったなんて。こんな調子じゃ、いつまでたっても夫を捕まえる事なんてできやしないぞ」
その時、ワーラビットのお姉さんは道の側にある草むらが何やら騒がしい事に気づきました。
「俺が悪かった。謝る。だから頼む、離してくれ!」
「やーだー。ヌくのはいいけど抜いちゃやー」
なんと、仰向けに寝転がった海和尚が屈強そうな男の人をその脚でしっかりと捕まえていたのです。
実はワーラビットのお姉さんが戻ってくる少し前、海和尚が眠っている近くの道を1人の猟師が通りかかりました。大きないびきに気づいてその方向へと足を進めた猟師は、大胆にもこちらを誘惑するような格好で眠る海和尚の姿に惹かれ、気が付くとズボンを脱いで彼女に覆いかぶさっていたのです。しかしその時、海和尚が目を覚ましました。猟師は慌てて腰を引こうとしますが、おマンコからおちんちんが完全に抜けて行く感触を本能的に嫌がった海和尚は、寝ぼけ眼のまま脚で猟師の腰をがっちり捕まえたのでした。
しかも猟師の周りには、海和尚の優しい性格を知る草原や川の魔物娘や大人のワーラビット達がいつの間にか集まり、「逃げるな卑怯者!」「襲うんだったら責任取って結婚しろ!」等と大声でヤジを飛ばす始末で、とても逃げられる状況ではありません。
こうして、海和尚はワーラビットのお姉さんが提案した勝負に鮮やかに勝利し、それどころか夫を得る事ができたのでした。
・編者あとがき
このお話は「他の種族の者を自分の種族の価値判断で勝手に推し測ってはいけない」という例えとして有名なお話です。
また、反魔物領では海和尚を捕らえようとした猟師に寝ぼけた海和尚が噛み付き、動けなくなった猟師が集まってきた魔物達に食い殺されてしまうという内容で「真正面から襲い掛かってくるのみが魔物の脅威ではない」という警告として語られています。
子供たちが夫婦ごっこをした話
これは、ある仲睦まじい姉と妹の身に起きたお話です。その姉妹が住む地域は、反魔物領と親魔物領のどちらにも属さない中立地帯とされ、一応魔物娘も住人として受け入れていましたが、どちらかというと主神教団の教義に寄り添う文化を持っていました。
ある日、姉妹のお母さんが市場で買い物をして帰ってきたのですが、お母さんは家に着くと子供達にろくに姿も見せようとせずに部屋に籠ってしまいました。
「お母さんは風邪をひいたみたいだから、おまえ達はお母さんの部屋に近づいてはいけないよ。風邪がうつってしまうからね」
お父さんはそう言って子供達をお母さんの部屋から遠ざけ、食事を部屋に運んだりするのも全てお父さんがやっていました。
数日後の事です。妹は夜中にトイレに行きたくなって目を覚ましましたが、この娘はまだ夜中に1人でトイレに行けませんでした。そのため、同じ寝室で眠っている姉を起こして付いてきてもらいます。
無事にトイレを済ませた姉妹が寝室に戻る時、2人は何日も顔を見ていないお母さんが心配なのでこっそり部屋を覗いてみることにしました。すると、お母さんはお父さんと裸で抱き合って何やら楽しげな声を上げています。頭に短い角のような物が生えていたりと、自分達の知る姿と少し違いますが、あれは確かに姉妹のお母さんです。
実はお母さんは市場で狸のような姿をした商人が売っていたお菓子を買い、帰る途中で1つつまみ食いしたところ、身体がレッサーサキュバスに変わってしまったのでした。姉妹の両親はこの事を子供達にどう説明するのか悩み、とりあえずお母さんを部屋に隠して子供達が魔力の影響を受けるのを抑えるために子供達を部屋から遠ざけたのです。
「お母さん何しているんだろ」
姉の方は寝室の中をじっと見つめ、顔を真っ赤にしながら呟きます。
「わかんない。でも気持ちよさそう……んっ」
妹の方はというと、左手でネグリジェをめくり上げ、右手をドロワーズの中に突っ込んでいました。両親の行っている事を見て、そこを刺激すると気持ちよくなるという事を直感的に悟ったのです。
「ちょっと。あんた何やってんの」
「だって、お母さんっ、あんなに、楽しそう、なんだもん、んんっ」
妹がひと際大きく震えると、ドロワーズの股の所に小さな染みが広がりました。それから、妹は荒い息を吐いて姉にこう提案します。
「お姉ちゃん、私達も、お父さんとお母さんが、やってる事、真似してみない?」
姉の方も、両親がやっている事を見てからお腹の下の方に熱い物がこみ上げるのを感じていました。自分もお母さんみたいにしたらどれだけ気持ちいいのだろうかと考えてしまいます。でも、お父さんとお母さんはあの遊びを子供達には秘密にしていました。それを子供が勝手にやっていいのか、とも姉は考えます。
「で、でもお父さん役は誰がするの? おちんちんが無いとできないみたいよ?」
すると、妹はこう答えました。
「お兄ちゃんにやってもらえばいいよ」
この家の子供達は3人きょうだいで、姉から見れば弟、妹から見れば兄に当たる真ん中の男の子がいたのです。今までまともな性知識を与えられず、目の前で繰り広げられている衝撃的な光景に対して一切の免疫を持っていなかった姉妹は、寝室の中から漂ってくるレッサーサキュバスの魔力に頭をすっかり支配されていました。夢遊病にかかったようにふらふらと、兄弟の寝室へと歩いていきます。
両親はその後もしばらくの間激しく交わっていましたが、突然廊下の方から子供達の泣き叫ぶ声が聞こえてきました。慌てて声がする方に走るとそこは息子の寝室で、内側からドアが開かないようにされています。力づくでドアをぶち破ったお父さんは、中から漂ってくる異臭に顔をしかめ、目に入ってきた光景に驚愕しました。
部屋の中では夫婦の娘達が泣き叫び、寝室の主である息子が呆然としていました。娘達の妹の方はベッドの上に仰向けで、姉は近くの床にうつぶせで横たわり、息子は姉の腰を抱えた状態で密着しています。3人とも衣服を一切身に付けていません。ベッドのシーツは乱れて赤黒い染みが付き、その上で脚を広げた姿勢で横になっている妹のおマンコからは白い液体と赤い液体が混ざった物が流れだしていました。そして何より、姉の方のおマンコにはお父さんが見た時も彼女の実の弟のおちんちんが深々と突き刺さっていたのです。はっと気が付いた息子がゆっくりと腰を引くと、姉のおマンコからも妹と同じ液体が流れだしてきました。
両親は子供達がやってしまった事を悟り、すっかり青ざめてしまいます。魔物娘は生態としても一般的な価値観としても、近親間で子供を作る事を忌避しません。兄や弟の子供を妊娠したとか、娘を甘やかしすぎた父親が妻だけでなく娘からも襲われたなんて事態になっても、他の魔物娘は祝福こそすれ咎める事は無いのです。
しかし、子供達はまだ人間です。人間同士が血の繋がったきょうだいで子供を作るという事は、今の時代でも大きな声で語る事はできないタブーです。形式上は中立とはいえ、主神教団の影響を受けているこの土地でそんな事になってしまったと周囲に知れたら家族は、そしてもしできてしまったなら生まれてくる赤ちゃんは、どのような扱いを受けてしまうのでしょうか。
その時、ふと何かを思いついたお父さんは、台所にある物を取りに行ってすぐ戻ってきました。その右手には子供達に与えようと買ってきたリンゴが、左手には自分達でこっそり食べようと買ってきた虜の果実が2個ずつ握られています。
お父さんはそれを娘達に見せ、こう言いました。
「どちらか食べてみたいと思う方の果実を1つ取りなさい」
すると、娘達は迷わず虜の果実を手に取りました。リンゴは何度も食べた事がありますが、このハートの形をした果実は今まで市場で見かけても決して食べさせてもらえなかったからです。それを見たお父さんはお母さんにこう言いました。
「この娘達は人間の食べ物ではなく魔物娘の食べ物を選んだ。おそらく俺達の知らない所で魔物娘になってしまっていたんだろう。そう思う事にするんだ」
「でもあなた、この子達は私と違ってどう見てもまだ人げ――」
「魔物になったんだ! 人間にしか見えないのは、この娘達がきっと魔女か何かだからだ。そう思う事にするんだ。ほら、もう遅いからみんな寝よう」
お父さんは強引にお母さんを引っ張って息子の寝室を後にしました。虜の果実を食べ終えた娘達は、さっきまで破瓜の激痛に泣いていた事をもう忘れてしまったかのように、熱に浮かされたような顔をしてワーウルフのような目で息子の方を見ていますが、お父さんはそれも何かの見間違いだと自分に言い聞かせます。
その日から、両親は市場で買ってきた魔界の食べ物を毎日のように娘達に食べさせました。その甲斐もあって、娘達は母親と同じレッサーサキュバスに変化します。魔物娘への変化が出産前に間にあったので、それぞれのお腹にいる赤ちゃんも変化して、一家は「魔物化した娘が兄や弟と結婚したよくある家庭」としてどうにか事なきを得ました。実際には妹が産んだ赤ちゃんはインキュバスでしたが、そう思う事にしましょう。
・編者あとがき
禁欲を美徳とする主神教団では、子供達には大人になるまで性知識を与えるべきではないという意味の「寝た子を起こすな」という言葉がありますが、このお話はそれに対する風刺として書かれた物だと言われています。
また、主神教団では同様に子供達の欲求を性的ではない方法で昇華する事を推奨している場合もあり、このお話で父親が娘達に見せたリンゴはその隠喩だと考えられます。
17/12/05 21:20更新 / bean