千匹皮(カテゴリ:ワーシープ、シリアス、微エロ)
昔々、ある反魔物領の国に美しい王妃様がおりました。この王妃様は貧しい者や身分の低い者にも心優しく、太陽のように輝く金色の髪は世界中のどんな人間にも負けないと言われるほどに美しく、夫である王様だけでなく国中の人々から慕われておりました。
ところが、そんな王妃様もある時重い病にかかってしまい、陽が沈むように静かに息を引き取ってしまいました。王様も王妃様の忘れ形見であるお姫様も、それどころか国中の人々が、喪が明ける頃になっても皆暗い顔をしています。
ある時、それにたまりかねた家臣が王様に進言しました。
「陛下。この状況を変えるには、陛下が新しい奥方様、新たな王妃となる方を迎える他にはないのでは」
しかし、これには王様も渋い顔をします。
「そうは申すが、私にとって死んだ妃に代わりうるような女性がそうそう見つかるとは思えない。あいつより美しく、あいつより輝く金色の髪をしている女性がいれば話は変わるかもしれんがな」
そんなわけで家臣達は条件に合いそうな女性を探していくつもの反魔物領の国へ赴きましたが、世界広しと言えども先の王妃様に敵い得るほど美しい女性はそうそう見つからず、見つかったとしても王様が納得するような美しい金色の髪ではありませんでした。
家臣達も困り果ててしまったある日、お城の庭園を散歩していた王様は、庭園の花々に水をやっていたお姫様を見て言いました。
「そうだ。ここにいるじゃないか。私の死んだ妻に負けないくらい美しく、あいつに負けないくらい輝く金色の髪をした女性が」
それを聞いた家臣の顔がさっと青くなりました。
「陛下、お気を確かに。血の繋がった実の父親と娘が結婚するなど、主神様の教えに反します。そのような事をなさればこの国に神罰が下り、たちまち滅びてしまうでしょう」
「そうは申すが、他に私にとって再婚相手として納得できるような女性がこの世に存在するとは思えない」
お姫様も王様に抗議します。
「お父様。私に婚約者がいるのをお忘れですか。隣の国の若い王様と結婚するという話だったはずです」
しかし、王様は聞く耳を持ってくれません。
「娘よ。妻だけでなくお前までもが、私を独りにする気か」
その日の夜、お姫様はご自分の寝室でベッドに突っ伏して泣いておりました。
「お母様がいなくなって寂しいのは私も同じよ。本当ならお父様がこんなに早く再婚相手をお探しになる事だって嫌なのに、私がその相手になれだなんて」
そして泣き疲れたお姫様がうとうとしておりますと、夢の中に褐色の肌と桃色の髪を持つ、お亡くなりになった王妃様に負けないくらい美しい女の人が現れました。その人はお姫様に語り掛けます。
――貴女が大切な人達への愛を護りたいなら、今から私の言う通りにするのです。しかし、これは貴女にとって到底生易しいとは言えない試練になるでしょう。
翌朝、お姫様は父親である王様に、昨夜夢の中で聞いたとおりの事を言いました。
「お父様。もしどうしても私と結婚したいと仰るなら、今から私が申しあげる4つの品をお作り下さい。お日様のような金色のドレス、お月様のような銀色のドレス、星のように輝くドレス、そしてこの国にいるあらゆる種類の獣全ての皮を少しずつ繋いだマントを」
いくら王様でもそのような物を作れるはずがない。これで思いとどまってくれるだろう。お姫様はそう考えておりました。しかし、愛する者を喪った悲しみに押しつぶされそうになっている王様の執念は凄まじく、お姫様が言った通りの物を本当に全て完成させてしまいました。そのために国庫のお金を半分以上も費やそうがお構いなしです。
それどころか、主神教団の聖職者に化けたラタトスクが王様を非難するふりをしながら「実の父娘で結婚するなど親魔物領の者がやることだ」と仄めかしますと、国をあっさりと親魔物領に転換させてしまう始末でした。
「千の獣の皮を繋げたマントも完成した。明日には結婚式の準備に入るぞ」
そう言われてもう説得する術はないと悟ったお姫様は、この国を抜け出すことにしました。王妃様の形見である、手のひらに収まる大きさながらどれだけの数のドレスもすっぽり収まる魔法の箱に3つのドレスを入れ、千の獣のマントを羽織って身を隠すと、婚約者がいる隣の国へと通じる深い森の中へ走ります。
「私が逃げ出したとお父様が気づけば、すぐに送れるだけの追っ手を差し向けてくるはずだわ」
お姫様はただでさえ歩き慣れない森の中を、重くて動きにくいマントを羽織りながら必死に進み続けます。朝も夜も休まず歩き続け、とうとう疲れ切って1歩も進めなくなると、大きな木のうろの中に隠れてその中で休む事にしました。
よっぽど疲れていたのでしょうか。お姫様はそのまま何日も何日も眠り続けていました。それどころか夢の中でも赤ん坊の頃に戻り、王妃様の腕の中ですやすやと眠っておりました。
「お母様……」
ある日、お姫様の本来の婚約者である隣の国の王様が、お供を連れて森で狩りをしにやってきました。すると、犬達が1本の木のそばでしきりに吠えます。王様の命令で木を調べた家来が報告しました。
「陛下。あの木の中には不思議な獣が隠れています。体中を千もの異なる色の毛皮が覆っているのです」
「異なる色の毛皮? それはひょっとすると、キマイラとかいう強力な魔物ではあるまいな」
反魔物領の国の王様としては、このまま放っておくわけにはいきません。家来達と共に木を取り囲んで様子を伺っておりますと、うろの中で眠っていたお姫様がもぞもぞと這い出します。王様も家来も武器を構えましたが、その目の前でお姫様は何歩か歩いたかと思うと地面の上にばったりと倒れて再び眠りこけてしまいました。その拍子にお姫様を覆っていたマントが外れ、その下からねじれた角と真っ白でもこもこの毛皮が現れます。お姫様が被っていたマントの毛皮には羊の魔物ワーシープの毛が混じっており、お姫様はワーシープに変わっていたのです。
王様は謎の獣がキマイラではない事に安心しましたが、目の前の魔物が自分の婚約者であった隣の国のお姫様であることに気付きませんでした。
「陛下。キマイラではないにせよ、魔物には変わりありません。今すぐ首を刎ねるべきでは」
家来が進言しますが、王様はそれを躊躇しました。この王様の国は一応主神教団に加わっておりますが、正式には主神教ではなくエロス教を国教としています。そのためガンダルヴァやアプラサス等一部の魔物娘については魔物ではなくエロス神の遣いとして丁寧に扱われます。もちろんワーシープはその範疇ではありませんが、こちらを攻撃してこない魔物の寝込みを襲うというのはさすがに気が引けていたのです。しかし、それでも反魔物領の国王である以上、魔物を発見しながら放っておくわけにはいきません。しばらく考えた後、王様は家来に言いました。
「こいつを生け捕りにできないかやってみよう。馬車に繋いで連れて帰るんだ」
ワーシープになったお姫様は隣の国の王様のお城に連れていかれ、そこで飼われることになりました。城のお庭で魔法を封じる特殊な結界を施した柵の中に閉じ込められ、一切外に出してもらえない状態での生活でしたが、お姫様は千匹皮と呼ばれて王様のペットとして大事にされ、ベッドも食事も上質なものが与えられました。
そうしてしばらく経ったある時、お城で年に1度のお祭りが開かれることになりました。お祭りの3日間は日が出ている間中ずっと城の門が解放され、この国の人なら身分に関係なくお城に入ることができます。そして大広間ではエロス神の遣いであるガンダルヴァがかき鳴らす音楽の音色に合わせ、アプラサスが美しい踊りを披露するのです。
お祭りの最初の日、千匹皮は食事を持ってきてくれた料理人に言いました。
「私も、神様の使いの踊りを見に行かせて貰えないでしょうか」
料理人は考えました。千匹皮を柵の外に出すことは固く禁じられています。しかし、千匹皮は今までも誰かに危害を加えようとすることもなく、いつも大人しく眠りこけていました。もし策の外に出しても人間に襲い掛かるとは想像できないし、仮にお城の外に逃げ出そうとしたとしても、今日はお祭りの日でお城の周りには兵士達がいつにも増して厳重に目を光らせているのですから、それを掻い潜って逃げ出すことはできないだろうと。
「よしわかった。俺が今から言う条件を守るなら、ちょっとだけ踊りを見に行かせてやろう。実は俺もアプラサスの踊りを見に行きたいんだが、今日は王様の夜食のスープを作る当番になっているからそれを作らなくちゃいけないんだ。30分以内に戻ってきて、俺の代わりに王様のスープを作ってくれるんだったら踊りを見に行かせてやろう」
「わかりましたー」
柵の外に出してもらった千匹皮は、マントを脱ぎ人化の術を使って元のお姫様の姿になると、魔法の小箱から太陽のように輝く金色のドレスを取り出しました。それを着て広間へ向かうと、お姫様の姿を見た人々も誰もがこの人はどこかの国の高貴な人に違いないと納得します。
王様もお姫様の顔を見て嬉しそうに近づいてきます。
「貴女の国とは連絡がつかなくなるし、貴女が失踪したという噂まで流れるしで心配していたのですよ」
「実は色々と事情があって、しばらく姿を隠していたのです」
王様がお姫様にそっと手を差し出すと、ガンダルヴァ達が美しい音色を奏で始めました。王様とお姫様はしばらくの間夢中で踊っておりましたが、お姫様は料理人に言われた時間が近づいていることに気付くとその場を立ち去ろうとします。王様は慌ててお姫様の手を掴むと、左手の薬指に金の指輪をはめました。これはこの国に伝わるお宝で、王妃の証となる大事な指輪です。
お姫様は王様にお辞儀をしてその場を立ち去ると、ワーシープの姿に戻って千の毛皮のマントを被りなおし、お城の台所に向かいました。
「お。やっと来たか。いいか。1本たりともスープに毛を落とすんじゃないぞ。そうなったら飯抜きだからな」
そう言って料理人が踊りを見に行くと、千匹皮はスープとパンを作り、それをお盆に乗せました。さっき王様がはめてくれた金の指輪を抜き取ると、スープの皿に落とします。
「魔物の音楽で一緒に踊ったとはいえ、私は魔物で貴方は反魔物領の王。貴方の妻となるわけには参りません」
そして千匹皮は柵の中に戻り、ベッドでぐっすりと眠りました。お祭りから戻ってきた料理人は千匹皮が作った料理のお盆を王様の元に運びます。
王様はスープとパンをおいしそうに召し上がりましたが、ふとスープの底にある物に気付くと、料理人に言いました。
「おい。このスープは誰が作った」
「もちろん私が作りました」
「それは違うな。このスープはいつもお前が作るものと味が違う。はっきり言って今日のはいつものより何倍もうまかったぞ」
「そんなあ」
料理人は観念して本当の事を言いました。
「実は、今日のスープは千匹皮に作らせました」
「なるほど。だったら千匹皮を急いで呼んで来い」
料理人は急いで千匹皮の所に向かい、彼女を叩き起こしました。
「お前、スープに毛を落としたんじゃないだろうな。そうだったら本当に明日は飯抜きにしてやるぞ」
千匹皮が王様の元に連れてこられると、王様はスープの底に見つけた金の指輪を千匹皮に示しました。
「おい、この指輪について何か知らないか」
「……………………」
しかし、千匹皮は何も答えません。
「どうした。お前の作ったスープになぜこの指輪が入っていたのか聞いているんだ。」
「……………………」
「千匹皮。なんでもいいから早く答えろ」
「……………………ぐぅ」
なんと千匹皮は立ったまま眠りこけているのでした。王様もこれには困り果て、料理人に命じて千匹皮を柵の中に戻させるのでした。
翌日、千匹皮はまた料理人に頼みました。
「今日も30分経ったら戻ってきてスープとパンを作るとお約束しますので、踊りを見に行かせて貰えませんか」
「いいぜ。王様はお前の作ったスープをえらく気に入ったようでな。今日もあれが食べたいとご所望なんだ」
そして柵の外に出してもらうと、昨日のようにお姫様の姿になり、今度は月のように輝く銀色のドレスを取り出しました。王様は今日も嬉しそうにお姫様の所に駆け寄ると、ガンダルヴァの音楽に合わせて一緒に踊り、お姫様の去り際にまた金の指輪を左手の薬指にはめます。
お姫様は昨日のように千匹皮の姿に戻り、スープとパンを作ると、金の指輪をスープの皿に落としました。
王様はまたスープの皿の底から金の指輪を見つけて千匹皮を問い詰めようとしましたが、やはり千匹皮はワーシープの眠りの魔法の力で眠りこけてしまっていて会話になりませんでした。
そしてさらに翌日、お祭りの最終日。千匹皮はまた料理人に頼みました。
「今日も30分経ったら戻ってきてスープとパンを作るとお約束しますので、踊りを見に行かせて貰えませんか」
そして柵の外に出してもらうと、昨日のようにお姫様の姿になり、今度は星のように輝くドレスを取り出しました。今日もお姫様は約束通り30分経つ前に戻るつもりでしたが、今日でお祭りが終わったらまた来年のお祭りまでお姫様に会えないかもしれないと思っていた王様は、ガンダルヴァ達にいつもより長い曲を演奏してもらうようにこっそり頼んでいました。そのため千匹皮は約束の時間より戻るのが遅くなってしまい、慌ててスープとパンを用意する事になったので、王様が指にはめた金の指輪を外すのを忘れてしまいました。
王様はスープの底に金の指輪が無い事を確かめると、急いでお城の庭に行き、千匹皮の柵の中へと向かいます。そして眠っている千匹皮の左手に金の指輪がはまっているのを確認すると、納得したように言いました。
「なるほど。こういう事だったのか。おい。毛刈り用の鋏を持って来い」
そして家来が鋏を持ってくると、王様は自分と千匹皮以外の者を全員柵の外に出して言いました。
「今からこの中で何があっても、私がいいというまで入ってくるんじゃないぞ」
王様は千匹皮のマントを剥ぎ取ると、その下の真っ白な毛皮を鋏でじょきじょきと刈り取っていきます。
「陛下、いけません。ワーシープは毛皮を刈られると狂暴化して人間に襲い掛かってくるという話だったはず」
しかし、王様は家来たちの言葉に耳を傾ける様子もなく作業を続けます。そしてあらかたの毛を刈り終わると、王様は納得した様子で千匹皮を見下ろしました。
そこには人化の術を使った時のように、元のお姫様に近い見た目に戻ったワーシープの姿があったからです。
「私の愛しい人は、ずっとこんなに近くにいたのか」
王様はそう言って裸になったお姫様を抱きしめます。
「へ、陛下。私は魔物になってしまった身。反魔物領の王である貴方と結婚するわけには……」
「構わん。丁度いい機会だ。この国は主神教団と手を切る事にする」
「そ、そんな事言われたら……もう我慢できません!」
そしてワーシープの獣の衝動を抑えていた毛皮を刈り取られたお姫様は、庭の芝生の上に王様を勢いよく押し倒すのでした。
「陛下。何を仰るのです」
「誰かあの2人を止めろ!」
一方、柵の外では家来たちが王様とワーシープのお姫様を止めに入るために慌てて柵を開けようとしていました。すると、彼らの元に何本もの黒や金色の矢が飛んできて突き刺さります。お祭りにやってきていたキューピッドがいつの間にか庭の隅で彼らに狙いを定めていたのです。そこにはキューピッドだけでなく、お祭りで音楽と踊りを披露したガンダルヴァやアプラサスもいました。
「――はっ。そうだ。俺は何をしていたんだ。家で愛する妻が待っているのに」
「あれは……前に森の中で助けてくれたキューピッドのお姉さん! また会えるなんて」
既に伴侶のいる者は黒い「鉛の矢」で射られて伴侶の元へ、独り身の者は黄金の「愛の矢」で射られて魔物娘達の元へと走っていきます。
そして、千匹皮に自分の代わりにスープを作らせた料理人はというと、アプラサスに押し倒されていました。
「3日間ずっと貴方の視線を感じながら踊っていたら、私のお腹のスープ鍋が熱くなってきちゃった。貴方の硬くてたくましい棒で私のスープ鍋をかき回して、貴方と私のミルクを混ぜ合わせて新しい命のスープを作ってちょうだい」
こうしてこの国も、ワーシープのお姫様が元いた国と同じように主神教団から脱退して親魔物領へと変わりました。王様はお姫様との盛大な結婚式を開き、そこではお祭りの時と同じようにガンダルヴァがかき鳴らす音楽に合わせてアプラサスが踊りを披露します。国中だけでなく他の親魔物領の国々からもたくさんの人々が招かれ、王様と新しい王妃との門出を祝うだけでなく自分達も物陰で伴侶との愛情を確かめ合ったり、独身の魔物娘達は新しい夫を捕まえて早速押し倒したりしていました。
そんな中、ワーシープの花嫁の目がある1人の招待客に留まりました。彼女に無理やり結婚を迫ろうとした実の父親です。ワーシープのお姫様は思わず顔をこわばらせてしまいましたが、花婿であるこちらの国の王様はそんな彼女を勇気づけるようにそっと腕を取りました。
「母さんだけでなくお前までいなくなって、やっと目が覚めたよ。私はとんでもない間違いをしていた。あれは母さんに対してもお前に対しても、酷い裏切りだったと」
そして、そんな父親の後ろから、1人のフーリーが現れてお姫様に告げました。
「エロス様の神託を告げます。『愛を持つ物には黄金の愛を。愛を壊す者には黒き鉛の喪失を』自分の伴侶への愛だけでなく家族への愛や娘の伴侶への愛も壊そうとしたこの男には、本来ならエロス様から厳しい罰が下る所でした。しかし、貴女はお父上に代わってエロス様の試練を乗り越え、エロス様は貴女の愛に免じてお父上の罪を赦すことになさいました」
「あなたは……」
そのフーリーの顔を見たワーシープのお姫様の顔が驚きに染まり、そしてその目から涙があふれてきます。
「そして、1人の女として、母親として言わせてください。私達夫婦の愛、私達親子の愛、私達家族の愛を守ってくれて本当にありがとう」
それを聞いたワーシープのお姫様は大声で泣きながら目の前のフーリーに抱き着き、母娘の再会を喜びました。
・編者あとがき
人間社会、特に主神教団の勢力圏における文化を魔物娘の文化と比べた場合の大きな相違点の1つとして、近親相姦を固く禁じているという点が挙げられます。
しかし、現在の砂漠地帯を治めるファラオの元になった古代の王達の中には人間だった頃から近親者と結婚して子を成している者も少なくなかったとする文献もあり、現在の主神教団に反感を持つファラオが多く存在するのはこのためであるとの説を唱える学者も存在します。
そしてこの童話も、原形となった話では動物に扮して逃げ出したお姫様が隣の国ではなく自分の元いたお城で働くことになり、実の父親と結婚するという結末になっています。それが主神教団の勢力下に伝わる事で近親婚を戒める内容へと改変され、更にエロス教を信仰する作家たちによって伴侶だけでなく家族への愛情を大切にする事を唱える教えを伝える現在の形になったようです。
ところが、そんな王妃様もある時重い病にかかってしまい、陽が沈むように静かに息を引き取ってしまいました。王様も王妃様の忘れ形見であるお姫様も、それどころか国中の人々が、喪が明ける頃になっても皆暗い顔をしています。
ある時、それにたまりかねた家臣が王様に進言しました。
「陛下。この状況を変えるには、陛下が新しい奥方様、新たな王妃となる方を迎える他にはないのでは」
しかし、これには王様も渋い顔をします。
「そうは申すが、私にとって死んだ妃に代わりうるような女性がそうそう見つかるとは思えない。あいつより美しく、あいつより輝く金色の髪をしている女性がいれば話は変わるかもしれんがな」
そんなわけで家臣達は条件に合いそうな女性を探していくつもの反魔物領の国へ赴きましたが、世界広しと言えども先の王妃様に敵い得るほど美しい女性はそうそう見つからず、見つかったとしても王様が納得するような美しい金色の髪ではありませんでした。
家臣達も困り果ててしまったある日、お城の庭園を散歩していた王様は、庭園の花々に水をやっていたお姫様を見て言いました。
「そうだ。ここにいるじゃないか。私の死んだ妻に負けないくらい美しく、あいつに負けないくらい輝く金色の髪をした女性が」
それを聞いた家臣の顔がさっと青くなりました。
「陛下、お気を確かに。血の繋がった実の父親と娘が結婚するなど、主神様の教えに反します。そのような事をなさればこの国に神罰が下り、たちまち滅びてしまうでしょう」
「そうは申すが、他に私にとって再婚相手として納得できるような女性がこの世に存在するとは思えない」
お姫様も王様に抗議します。
「お父様。私に婚約者がいるのをお忘れですか。隣の国の若い王様と結婚するという話だったはずです」
しかし、王様は聞く耳を持ってくれません。
「娘よ。妻だけでなくお前までもが、私を独りにする気か」
その日の夜、お姫様はご自分の寝室でベッドに突っ伏して泣いておりました。
「お母様がいなくなって寂しいのは私も同じよ。本当ならお父様がこんなに早く再婚相手をお探しになる事だって嫌なのに、私がその相手になれだなんて」
そして泣き疲れたお姫様がうとうとしておりますと、夢の中に褐色の肌と桃色の髪を持つ、お亡くなりになった王妃様に負けないくらい美しい女の人が現れました。その人はお姫様に語り掛けます。
――貴女が大切な人達への愛を護りたいなら、今から私の言う通りにするのです。しかし、これは貴女にとって到底生易しいとは言えない試練になるでしょう。
翌朝、お姫様は父親である王様に、昨夜夢の中で聞いたとおりの事を言いました。
「お父様。もしどうしても私と結婚したいと仰るなら、今から私が申しあげる4つの品をお作り下さい。お日様のような金色のドレス、お月様のような銀色のドレス、星のように輝くドレス、そしてこの国にいるあらゆる種類の獣全ての皮を少しずつ繋いだマントを」
いくら王様でもそのような物を作れるはずがない。これで思いとどまってくれるだろう。お姫様はそう考えておりました。しかし、愛する者を喪った悲しみに押しつぶされそうになっている王様の執念は凄まじく、お姫様が言った通りの物を本当に全て完成させてしまいました。そのために国庫のお金を半分以上も費やそうがお構いなしです。
それどころか、主神教団の聖職者に化けたラタトスクが王様を非難するふりをしながら「実の父娘で結婚するなど親魔物領の者がやることだ」と仄めかしますと、国をあっさりと親魔物領に転換させてしまう始末でした。
「千の獣の皮を繋げたマントも完成した。明日には結婚式の準備に入るぞ」
そう言われてもう説得する術はないと悟ったお姫様は、この国を抜け出すことにしました。王妃様の形見である、手のひらに収まる大きさながらどれだけの数のドレスもすっぽり収まる魔法の箱に3つのドレスを入れ、千の獣のマントを羽織って身を隠すと、婚約者がいる隣の国へと通じる深い森の中へ走ります。
「私が逃げ出したとお父様が気づけば、すぐに送れるだけの追っ手を差し向けてくるはずだわ」
お姫様はただでさえ歩き慣れない森の中を、重くて動きにくいマントを羽織りながら必死に進み続けます。朝も夜も休まず歩き続け、とうとう疲れ切って1歩も進めなくなると、大きな木のうろの中に隠れてその中で休む事にしました。
よっぽど疲れていたのでしょうか。お姫様はそのまま何日も何日も眠り続けていました。それどころか夢の中でも赤ん坊の頃に戻り、王妃様の腕の中ですやすやと眠っておりました。
「お母様……」
ある日、お姫様の本来の婚約者である隣の国の王様が、お供を連れて森で狩りをしにやってきました。すると、犬達が1本の木のそばでしきりに吠えます。王様の命令で木を調べた家来が報告しました。
「陛下。あの木の中には不思議な獣が隠れています。体中を千もの異なる色の毛皮が覆っているのです」
「異なる色の毛皮? それはひょっとすると、キマイラとかいう強力な魔物ではあるまいな」
反魔物領の国の王様としては、このまま放っておくわけにはいきません。家来達と共に木を取り囲んで様子を伺っておりますと、うろの中で眠っていたお姫様がもぞもぞと這い出します。王様も家来も武器を構えましたが、その目の前でお姫様は何歩か歩いたかと思うと地面の上にばったりと倒れて再び眠りこけてしまいました。その拍子にお姫様を覆っていたマントが外れ、その下からねじれた角と真っ白でもこもこの毛皮が現れます。お姫様が被っていたマントの毛皮には羊の魔物ワーシープの毛が混じっており、お姫様はワーシープに変わっていたのです。
王様は謎の獣がキマイラではない事に安心しましたが、目の前の魔物が自分の婚約者であった隣の国のお姫様であることに気付きませんでした。
「陛下。キマイラではないにせよ、魔物には変わりありません。今すぐ首を刎ねるべきでは」
家来が進言しますが、王様はそれを躊躇しました。この王様の国は一応主神教団に加わっておりますが、正式には主神教ではなくエロス教を国教としています。そのためガンダルヴァやアプラサス等一部の魔物娘については魔物ではなくエロス神の遣いとして丁寧に扱われます。もちろんワーシープはその範疇ではありませんが、こちらを攻撃してこない魔物の寝込みを襲うというのはさすがに気が引けていたのです。しかし、それでも反魔物領の国王である以上、魔物を発見しながら放っておくわけにはいきません。しばらく考えた後、王様は家来に言いました。
「こいつを生け捕りにできないかやってみよう。馬車に繋いで連れて帰るんだ」
ワーシープになったお姫様は隣の国の王様のお城に連れていかれ、そこで飼われることになりました。城のお庭で魔法を封じる特殊な結界を施した柵の中に閉じ込められ、一切外に出してもらえない状態での生活でしたが、お姫様は千匹皮と呼ばれて王様のペットとして大事にされ、ベッドも食事も上質なものが与えられました。
そうしてしばらく経ったある時、お城で年に1度のお祭りが開かれることになりました。お祭りの3日間は日が出ている間中ずっと城の門が解放され、この国の人なら身分に関係なくお城に入ることができます。そして大広間ではエロス神の遣いであるガンダルヴァがかき鳴らす音楽の音色に合わせ、アプラサスが美しい踊りを披露するのです。
お祭りの最初の日、千匹皮は食事を持ってきてくれた料理人に言いました。
「私も、神様の使いの踊りを見に行かせて貰えないでしょうか」
料理人は考えました。千匹皮を柵の外に出すことは固く禁じられています。しかし、千匹皮は今までも誰かに危害を加えようとすることもなく、いつも大人しく眠りこけていました。もし策の外に出しても人間に襲い掛かるとは想像できないし、仮にお城の外に逃げ出そうとしたとしても、今日はお祭りの日でお城の周りには兵士達がいつにも増して厳重に目を光らせているのですから、それを掻い潜って逃げ出すことはできないだろうと。
「よしわかった。俺が今から言う条件を守るなら、ちょっとだけ踊りを見に行かせてやろう。実は俺もアプラサスの踊りを見に行きたいんだが、今日は王様の夜食のスープを作る当番になっているからそれを作らなくちゃいけないんだ。30分以内に戻ってきて、俺の代わりに王様のスープを作ってくれるんだったら踊りを見に行かせてやろう」
「わかりましたー」
柵の外に出してもらった千匹皮は、マントを脱ぎ人化の術を使って元のお姫様の姿になると、魔法の小箱から太陽のように輝く金色のドレスを取り出しました。それを着て広間へ向かうと、お姫様の姿を見た人々も誰もがこの人はどこかの国の高貴な人に違いないと納得します。
王様もお姫様の顔を見て嬉しそうに近づいてきます。
「貴女の国とは連絡がつかなくなるし、貴女が失踪したという噂まで流れるしで心配していたのですよ」
「実は色々と事情があって、しばらく姿を隠していたのです」
王様がお姫様にそっと手を差し出すと、ガンダルヴァ達が美しい音色を奏で始めました。王様とお姫様はしばらくの間夢中で踊っておりましたが、お姫様は料理人に言われた時間が近づいていることに気付くとその場を立ち去ろうとします。王様は慌ててお姫様の手を掴むと、左手の薬指に金の指輪をはめました。これはこの国に伝わるお宝で、王妃の証となる大事な指輪です。
お姫様は王様にお辞儀をしてその場を立ち去ると、ワーシープの姿に戻って千の毛皮のマントを被りなおし、お城の台所に向かいました。
「お。やっと来たか。いいか。1本たりともスープに毛を落とすんじゃないぞ。そうなったら飯抜きだからな」
そう言って料理人が踊りを見に行くと、千匹皮はスープとパンを作り、それをお盆に乗せました。さっき王様がはめてくれた金の指輪を抜き取ると、スープの皿に落とします。
「魔物の音楽で一緒に踊ったとはいえ、私は魔物で貴方は反魔物領の王。貴方の妻となるわけには参りません」
そして千匹皮は柵の中に戻り、ベッドでぐっすりと眠りました。お祭りから戻ってきた料理人は千匹皮が作った料理のお盆を王様の元に運びます。
王様はスープとパンをおいしそうに召し上がりましたが、ふとスープの底にある物に気付くと、料理人に言いました。
「おい。このスープは誰が作った」
「もちろん私が作りました」
「それは違うな。このスープはいつもお前が作るものと味が違う。はっきり言って今日のはいつものより何倍もうまかったぞ」
「そんなあ」
料理人は観念して本当の事を言いました。
「実は、今日のスープは千匹皮に作らせました」
「なるほど。だったら千匹皮を急いで呼んで来い」
料理人は急いで千匹皮の所に向かい、彼女を叩き起こしました。
「お前、スープに毛を落としたんじゃないだろうな。そうだったら本当に明日は飯抜きにしてやるぞ」
千匹皮が王様の元に連れてこられると、王様はスープの底に見つけた金の指輪を千匹皮に示しました。
「おい、この指輪について何か知らないか」
「……………………」
しかし、千匹皮は何も答えません。
「どうした。お前の作ったスープになぜこの指輪が入っていたのか聞いているんだ。」
「……………………」
「千匹皮。なんでもいいから早く答えろ」
「……………………ぐぅ」
なんと千匹皮は立ったまま眠りこけているのでした。王様もこれには困り果て、料理人に命じて千匹皮を柵の中に戻させるのでした。
翌日、千匹皮はまた料理人に頼みました。
「今日も30分経ったら戻ってきてスープとパンを作るとお約束しますので、踊りを見に行かせて貰えませんか」
「いいぜ。王様はお前の作ったスープをえらく気に入ったようでな。今日もあれが食べたいとご所望なんだ」
そして柵の外に出してもらうと、昨日のようにお姫様の姿になり、今度は月のように輝く銀色のドレスを取り出しました。王様は今日も嬉しそうにお姫様の所に駆け寄ると、ガンダルヴァの音楽に合わせて一緒に踊り、お姫様の去り際にまた金の指輪を左手の薬指にはめます。
お姫様は昨日のように千匹皮の姿に戻り、スープとパンを作ると、金の指輪をスープの皿に落としました。
王様はまたスープの皿の底から金の指輪を見つけて千匹皮を問い詰めようとしましたが、やはり千匹皮はワーシープの眠りの魔法の力で眠りこけてしまっていて会話になりませんでした。
そしてさらに翌日、お祭りの最終日。千匹皮はまた料理人に頼みました。
「今日も30分経ったら戻ってきてスープとパンを作るとお約束しますので、踊りを見に行かせて貰えませんか」
そして柵の外に出してもらうと、昨日のようにお姫様の姿になり、今度は星のように輝くドレスを取り出しました。今日もお姫様は約束通り30分経つ前に戻るつもりでしたが、今日でお祭りが終わったらまた来年のお祭りまでお姫様に会えないかもしれないと思っていた王様は、ガンダルヴァ達にいつもより長い曲を演奏してもらうようにこっそり頼んでいました。そのため千匹皮は約束の時間より戻るのが遅くなってしまい、慌ててスープとパンを用意する事になったので、王様が指にはめた金の指輪を外すのを忘れてしまいました。
王様はスープの底に金の指輪が無い事を確かめると、急いでお城の庭に行き、千匹皮の柵の中へと向かいます。そして眠っている千匹皮の左手に金の指輪がはまっているのを確認すると、納得したように言いました。
「なるほど。こういう事だったのか。おい。毛刈り用の鋏を持って来い」
そして家来が鋏を持ってくると、王様は自分と千匹皮以外の者を全員柵の外に出して言いました。
「今からこの中で何があっても、私がいいというまで入ってくるんじゃないぞ」
王様は千匹皮のマントを剥ぎ取ると、その下の真っ白な毛皮を鋏でじょきじょきと刈り取っていきます。
「陛下、いけません。ワーシープは毛皮を刈られると狂暴化して人間に襲い掛かってくるという話だったはず」
しかし、王様は家来たちの言葉に耳を傾ける様子もなく作業を続けます。そしてあらかたの毛を刈り終わると、王様は納得した様子で千匹皮を見下ろしました。
そこには人化の術を使った時のように、元のお姫様に近い見た目に戻ったワーシープの姿があったからです。
「私の愛しい人は、ずっとこんなに近くにいたのか」
王様はそう言って裸になったお姫様を抱きしめます。
「へ、陛下。私は魔物になってしまった身。反魔物領の王である貴方と結婚するわけには……」
「構わん。丁度いい機会だ。この国は主神教団と手を切る事にする」
「そ、そんな事言われたら……もう我慢できません!」
そしてワーシープの獣の衝動を抑えていた毛皮を刈り取られたお姫様は、庭の芝生の上に王様を勢いよく押し倒すのでした。
「陛下。何を仰るのです」
「誰かあの2人を止めろ!」
一方、柵の外では家来たちが王様とワーシープのお姫様を止めに入るために慌てて柵を開けようとしていました。すると、彼らの元に何本もの黒や金色の矢が飛んできて突き刺さります。お祭りにやってきていたキューピッドがいつの間にか庭の隅で彼らに狙いを定めていたのです。そこにはキューピッドだけでなく、お祭りで音楽と踊りを披露したガンダルヴァやアプラサスもいました。
「――はっ。そうだ。俺は何をしていたんだ。家で愛する妻が待っているのに」
「あれは……前に森の中で助けてくれたキューピッドのお姉さん! また会えるなんて」
既に伴侶のいる者は黒い「鉛の矢」で射られて伴侶の元へ、独り身の者は黄金の「愛の矢」で射られて魔物娘達の元へと走っていきます。
そして、千匹皮に自分の代わりにスープを作らせた料理人はというと、アプラサスに押し倒されていました。
「3日間ずっと貴方の視線を感じながら踊っていたら、私のお腹のスープ鍋が熱くなってきちゃった。貴方の硬くてたくましい棒で私のスープ鍋をかき回して、貴方と私のミルクを混ぜ合わせて新しい命のスープを作ってちょうだい」
こうしてこの国も、ワーシープのお姫様が元いた国と同じように主神教団から脱退して親魔物領へと変わりました。王様はお姫様との盛大な結婚式を開き、そこではお祭りの時と同じようにガンダルヴァがかき鳴らす音楽に合わせてアプラサスが踊りを披露します。国中だけでなく他の親魔物領の国々からもたくさんの人々が招かれ、王様と新しい王妃との門出を祝うだけでなく自分達も物陰で伴侶との愛情を確かめ合ったり、独身の魔物娘達は新しい夫を捕まえて早速押し倒したりしていました。
そんな中、ワーシープの花嫁の目がある1人の招待客に留まりました。彼女に無理やり結婚を迫ろうとした実の父親です。ワーシープのお姫様は思わず顔をこわばらせてしまいましたが、花婿であるこちらの国の王様はそんな彼女を勇気づけるようにそっと腕を取りました。
「母さんだけでなくお前までいなくなって、やっと目が覚めたよ。私はとんでもない間違いをしていた。あれは母さんに対してもお前に対しても、酷い裏切りだったと」
そして、そんな父親の後ろから、1人のフーリーが現れてお姫様に告げました。
「エロス様の神託を告げます。『愛を持つ物には黄金の愛を。愛を壊す者には黒き鉛の喪失を』自分の伴侶への愛だけでなく家族への愛や娘の伴侶への愛も壊そうとしたこの男には、本来ならエロス様から厳しい罰が下る所でした。しかし、貴女はお父上に代わってエロス様の試練を乗り越え、エロス様は貴女の愛に免じてお父上の罪を赦すことになさいました」
「あなたは……」
そのフーリーの顔を見たワーシープのお姫様の顔が驚きに染まり、そしてその目から涙があふれてきます。
「そして、1人の女として、母親として言わせてください。私達夫婦の愛、私達親子の愛、私達家族の愛を守ってくれて本当にありがとう」
それを聞いたワーシープのお姫様は大声で泣きながら目の前のフーリーに抱き着き、母娘の再会を喜びました。
・編者あとがき
人間社会、特に主神教団の勢力圏における文化を魔物娘の文化と比べた場合の大きな相違点の1つとして、近親相姦を固く禁じているという点が挙げられます。
しかし、現在の砂漠地帯を治めるファラオの元になった古代の王達の中には人間だった頃から近親者と結婚して子を成している者も少なくなかったとする文献もあり、現在の主神教団に反感を持つファラオが多く存在するのはこのためであるとの説を唱える学者も存在します。
そしてこの童話も、原形となった話では動物に扮して逃げ出したお姫様が隣の国ではなく自分の元いたお城で働くことになり、実の父親と結婚するという結末になっています。それが主神教団の勢力下に伝わる事で近親婚を戒める内容へと改変され、更にエロス教を信仰する作家たちによって伴侶だけでなく家族への愛情を大切にする事を唱える教えを伝える現在の形になったようです。
19/01/30 00:04更新 / bean
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