図鑑世界童話全集「桃太郎」
昔々、ある所におじいさんとおばあさんがおりました。
このおじいさんとおばあさんには1人の息子がおり、その名を太郎と言いました。
「俺、大きくなったらきっと立派なお侍さんになって、父様と母様に楽させてやるからな」
心優しい太郎はいつもそう話しておりました。
しかしある時、辺りの村々を恐ろしい流行り病が襲い、おじいさんと太郎は共に何日も高い熱に苦しみました。おばあさんの懸命な看病の甲斐もなく、太郎はそのままお侍になるという夢を叶える事無く死んでしまいます。
おじいさんはどうにか一命をとりとめましたが、その代わりなのかおじいさんの足腰はすっかり萎びてしまい、新たに子を成す事は望めそうもない身体になってしまいました。
それからまた更に数カ月経ち、おじいさんは山へ柴刈りに行けるようになるくらいには病から持ち直し、それを見て安心したおばあさんは溜まった洗濯物を抱えて川へ洗濯をしに行きました。
しかし、着る者を失った息子の服を見たおばあさんは、川辺に座り込んで泣きじゃくってしまいます。
「太郎。太郎やぁ……」
その時、川上からどんぶらこ、どんぶらこと不思議な音が聞こえてきます。おばあさんがそちらを見ると、川上から桃が流れてきました。拾って食べてみると、息子を失った悲しみに凍り付いていた心が不思議と温かくなってきます。
「そうだ。この桃をおじいさんにも食べさせてあげましょう。そうすればおじいさんも元気になるかもしれないわ」
おばあさんがそう言うと、さっきよりも更に大きな桃が川上からどんぶらこ、どんぶらこと流れてきました。
「苦い桃ならあっち行け。甘い桃ならこっちに来い」
そう歌うと、桃はおばあさんの方に流れてきたので、おばあさんはこれを拾って持って帰る事にしました。
柴刈りから帰ってきたおじいさんも、おばあさんの持ち帰った桃にはびっくりです。
「ほう。こんなでかい桃がこの世に存在するとは」
「おじいさん。これを食べれば、おじいさんの身体も元気になるんじゃないですかねえ」
「ありがとう。しかし、できる事なら、太郎にも食べさせてやりたかったなあ」
おじいさんとおばあさんは桃を半分に割り、その片方を庭に埋めた太郎のお墓にお供えし、残った半分をさらに2つに割って2人で分けて食べました。するとどうでしょう。身体がぽかぽかして、病に倒れてからずっとやせ細っていたおじいさんにも力がみなぎってきます。
「ばあさんや、見てくれ」
おじいさんが嬉しそうに袴を下ろすと、その下でずっと力なく垂れ下がったままになった物が、勢いよく褌を押し上げておりました。
「あらあら、おじいさん……」
おばあさんも顔を真っ赤にしながら、嬉しそうにそのおじいさんの身体をじっと見つめます。おじいさんとおばあさんはその日、久方ぶりに布団の上で朝日が昇るまで眠らずに過ごしました。これは、太郎が生まれる前の若い頃以来ついぞ無かった事です。
そして翌朝。おじいさんとおばあさんの家の戸を誰かが勢いよく開ける音がしました。
「おや。こんな早くから客人とは誰だろう」
2人は慌てて着物を着直し、玄関へと歩いていきます。そして、そこにいる人物を見た2人は思わずあっと声を上げました。
「お前、太郎じゃないか!」
そう。そこには死んだはずの太郎が立っていたのです。肌は青白く、身体は女子の体型に代わり、その一部は骨のような物がむき出しになっておりますが、その顔は紛れもなく、数カ月前に病で死んだはずの太郎です。
「父様、母様。お侍になる夢を果たせぬまま無念のうちに死の床についた私は、強い妖力に引き寄せられ、気が付けばこうして妖となって墓の下から這い出しておりました」
「強い妖力じゃと……そうか。昨日お供えしたあの不思議な桃のことじゃな」
「おじいさん。あの桃は、神様からの贈り物だったんじゃないんですかねえ」
ジパングでは無念のうちに死んだお侍さんの亡骸が、落武者という死霊(アンデッド)の妖として蘇る事があります。こうして落武者として蘇った太郎は、神様の桃により新たな生を授けられたという事で、この日から桃太郎と名乗るようになりました。
それから更に何年もの時が経ち、桃太郎も15歳になりました。胸や尻は桃のようにふっくらとふくよかになり、死霊の身体になった後も武士としての鍛錬を毎日欠かさず続けた事で、引き締まる所はきゅっと引き締まった魅惑的な女の体型に成長しています。病で1度命を落とす前は男子として生きていたはずの桃太郎ですが、不思議な事に今となっては女となった今の身体の方があるべき姿であるような気さえしているのでした。
そんなある日、桃太郎はおじいさんとおばあさんに言いました。
「父様、母様。私は仕えるべき主君となる人、私が子を産むべき夫にふさわしい人を見つけるためにこれから旅に出ようと思います。」
すると、おじいさんとおばあさんは涙ぐみながら言いました。
「ばあさんや。ついにこの時が来たんじゃなあ」
「きっと長く険しい道のりになるじゃろう。どれ、お前の好きなきび団子を作ってやろうかの」
こうして、桃太郎は腰に落武者の妖刀と、大好物であるおばあさんのきび団子がたくさん入った袋を提げ、夫探しの旅に出る事にしました。
桃太郎が山道を歩いていると、崖の下で1頭の犬が大きな岩に押しつぶされておりました。そこら中におびただしい量の血が飛び散っておりますが、よく見るとまだかすかに息があります。
「このまま苦しませるのは忍びないが、私には助ける術がない」
桃太郎はすまなそうに言うと妖刀を抜き出し、息も絶え絶えになった犬に突き刺しました。そしてせめてもの供養にと、腰の袋からきび団子を1つ取り出して犬の傍に置き、その日は夜が更けるまでこの犬の傍らで過ごしました(編注:ジパングでは人が亡くなった時、通夜と言って故人の家族や親しい者が夜通し亡骸の傍に付く風習があります)。
そして桃太郎はそのまま眠りこけ、山の中に朝日が昇ってきました。誰かが彼女に語り掛けてくる声が聞こえてきます。
「もし。そこのお方」
桃太郎がゆっくりと目を開けると、岩の下に潰されていた犬の亡骸とその傍に備えていたきび団子が消え、代わりに犬の妖が立っておりました。
「私はそこで岩の下に潰されて死にかけていた犬です。あと少しで命が尽きようとした時、お侍さんの刀から与えられた不思議な力により、こうして妖として蘇ったのです」
桃太郎は知りませんでしたが、斬った者を妖へと変える妖刀の力によって、この犬は西の国でクー・シーと呼ばれる犬の妖として蘇ったのでした。丁度桃太郎自身が不思議な桃の力で落武者として蘇ったように。
「私の命はお侍様がお与えくださったもの。私もお侍様の旅にお供させてください」
こうして桃太郎は、犬の妖を仲間として連れていく事になりました。
それから桃太郎と犬がいくつもの山を越え、その辺りでも特に険しい山の中を歩いておりますと、どこからか声が聞こえてきました。
「エイ。ヤー」
見回してみると、カラステングという烏の妖が木から木へと飛び移っています。烏は桃太郎と犬の姿に気付くと、その目の前に降りてきました。
「お2人さん、どこへ行くのです?」
すると、犬が答えました。
「私と桃太郎様は夫となるにふさわしい殿方を探して旅をしているのです」
「腰の袋に付けている物はなんですか?」
「これは私の母様が作った、この国で一番のきび団子だ」
「私にも1つくださいませんか。そうすれば私も旅にお供させていただきましょう」
桃太郎は烏にきび団子を与え、仲間として連れていく事になりました。
それから桃太郎と犬と烏がさらにいくつもの山を越え、ある街へと降りて行っきますと、桃太郎の頭の上からいきなり何かが降ってきて彼女を押し倒しました。
「ウキッ! 捕まえた……おや? 色男がいると思ってみれば、おなごじゃないか」
それは霧の大陸でカク猿と呼ばれる猿の妖でした。すると、街の人達が慌てて走ってきます。
「お侍さん! その猿を捕まえてくれ」
「俺達が干していた芋を盗みやがったんだ!」
「おっといけない」
猿はすばしっこい身のこなしで近くの家の屋根に飛び乗り、屋根から屋根へと飛び移って逃げようとします。
「ここまでおいでー」
するとどうでしょう。桃太郎は猿に負けない身のこなしで彼女を追いかけ、驚く猿の目の前に迫ったかと思うと居合切りでバッサリと斬り捨てました。
「ああっ!」
猿は命を落としたり怪我したりする事はありませんでしたが、妖力を注がれた事で絶頂を迎え、ほとから勢いよく潮を吹いて倒れます。そしてそのまま、街の人達の所へ引きずり出されました。
「さあ観念しろ性悪猿め」
「盗んだ分は働いて返してもらうからな」
「勘弁してくれよぅ。お腹がすいたけど食べ物を買うお金も無くて、ひもじくて仕方がなかったんだよ」
泣きじゃくる猿を見た桃太郎は、腰の袋からきび団子を取り出して言いました。
「腹が減っているならこのきび団子をやろう。その代わり、もう盗みはしないと約束しなさい」
「ありがとう。ありがとう」
猿は泣きながらきび団子を頬張り、街の人達から盗んだ食べ物の分を必死に働いて返しました。桃太郎達はその間も街に留まり、猿の働きを見守ります。そして町の人達から解放され、桃太郎達に旅の目的について聞いた猿は言いました。
「桃太郎さん。私もあんたについて行くよ。あんたならきっとたくさんの人を助けられるお侍になる。私はそれを手伝って、今まで町の人達に迷惑をかけた罪滅ぼしがしたいんだ」
こうして猿も、桃太郎の仲間として付いて行く事になりました。
犬と烏と猿を連れた桃太郎は、いくつもの山を越え谷を越え、川を越えて旅をしていきます。その道中で困っている者がいれば、それが人間であっても妖であっても分け隔てなく助けました。そして、4人はとうとう大きな海へとたどり着きます。烏は空へと飛び上がり、遠くの方まで見渡しました。
「桃太郎さん、沖の方に島が見えますよ。黒くて大きな岩がいくつも突き出た、不気味な島が」
そこで、桃太郎は近くを道行く村人に、烏が見た島について尋ねてみる事にしました。
「それなら鬼ヶ島の事でしょう。あの島には見た目は恐ろしくも心優しい鬼神様やその鬼神様に仕える神官達が住んでいて、私達の海での安全を見守ってくださっているという話です」
「なるほど。その島なら私がお仕えするにふさわしい主となる殿方が見つかるかもしれない」
桃太郎達は小さな船で険しい海を越え、鬼ヶ島へと渡りました。
鬼ヶ島にはアカオニやアオオニといった妖達が、人間達と共に暮らす小さな集落がありました。皆楽しそうに笑い、お酒を作ったり小さな畑を耕したり海で魚を採ったりと汗水たらして仲良く働いています。
桃太郎は鬼達が村の広場で酒盛りの準備をしている所に集まって尋ねました。
「私は仕えるべき主君となる殿方を探して旅をしている者です。この島の長をしている方にお目通りできないでしょうか」
すると、鬼達の中でも特にがたいの大きい1人のアカオニが進み出て言いました。
「アタシはこの村の鬼達を束ねる頭領の妻だ。私の夫は海神様の加護を受け、この海を守る使命のために特別な力を授かった神官。その力を試そうとするなら、まずはアタシを倒してからにするんだね」
桃太郎はアカオニと一騎打ちをすることになりました。集落の広場の真ん中で、互いの武器を構えて向かい合います。アカオニは自分の身体と同じくらい大きな金棒を軽々と持ち上げています。正面から打ち合えば妖刀などあっさりと折ってしまいそうです。
「せやあっ!」
アカオニは鋭い掛け声とともに勢いよく金棒を振り回してきました。
「ひゃあ。さすがの桃太郎様も、あれを受けてはひとたまりも」
犬と烏と猿は思わず目を覆ってしまいます。しかし、桃太郎はアカオニの激しい攻撃にも一切怯むことなく、素早い動きでひらりひらりと躱していきました。
「このおっ!」
怒ったアカオニが更に勢いよく金棒を振りかざしてきたその時、桃太郎はわずかに生じた隙を見逃さず、一気に相手の懐へと飛び込みました。妖刀の目にも留まらぬ一撃でアカオニを捉えます。
「あんっ」
アカオニは腰布の下から潮を吹きながら、酔っ払ったように顔を真っ赤にして倒れました。
「ウキッ! 桃太郎さんの勝ちだ!」
猿が大はしゃぎしておりますと、人ごみの中からアカオニに負けないくらい大きな体をした男の人が進み出てきました。
「まさか力比べで家内を打ち負かす者が現れようとは」
「ということは、貴方がこの島の頭領ですか。私の主君に、そしてこの身を捧げる夫となるにふさわしき者か、今一度その力を試させてもらいたい」
頭領はアカオニの奥さんが取り落とした金棒を軽々と拾い上げ、桃太郎に向き合いました。そしてアカオニよりも更に力強い動きで金棒を振りかぶります。
桃太郎はさっきと同じようにその攻撃をひらりひらりと躱しながら、相手の動きに決定的な隙ができるのを冷ややかに見定めようとしました。しかし、相手もさるもの。荒々しい中にも決定的な隙を見せないよう巧みに立ち回り、強引に踏み込もうとすればそこを狙いすました重い一撃で待ち構えてきます。
それでも桃太郎も負けてはいません。わずかでも隙が生じれば相手の近くへと踏み込み、反撃を躱し、いつ斬り込んでもおかしくない雰囲気で重圧をかけていきます。
そしてとうとう互いに手詰まりになり、最初と同じように互いに向き合ったまま動かなくなりました。
「ど、どうなるんだ……」
鬼ヶ島に住む妖や人間達も、犬と烏と雉も、かたずを飲んで見守ります。
「も、桃太郎さん、がんばれー!」
「お、お頭も、負けるなー!」
それぞれが大きな声を張り上げたその時、桃太郎は妖刀を鞘に納め、頭領の前に跪きました。
「貴方様のお力、しかと見届けさせていただきました。どうか私を貴方にお仕えさせていただけないでしょうか」
すると、頭領は桃太郎に手を差し伸べて答えます。
「俺もお前の力には感服した。これからはこの海を守るため、俺に力を貸してくれないか」
犬や烏や猿からも、そして鬼ヶ島の住人達からも大きな歓声が上がりました。
「祝いじゃ。祝いじゃ。早速婚礼のお祝いじゃ」
鬼達の間から声が上がります。
「私はこの島での作法を知りません。ここでは婚礼の祝いとして、何をするのです?」
桃太郎が尋ねると、頭領は大声を上げて笑いました。
「鬼の宴となればやる事は1つだろう。大いに食べて飲んで踊り、そして愛する者と大いに交わるのじゃ」
元々酒盛りの準備をしていたわけではありますが、妖も人間達もそれぞれにとっておきのお酒やおつまみを持ち寄って広場に集まります。桃太郎の腰に提げていた袋のきび団子は既に空になっておりましたが、彼女もおばあさんに教わったやり方で新しいきび団子をたくさん作ってふるまいました。
「母のようにこの国一番とは言えませぬが」
「いやいや、実にうまいきび団子だ」
「ああ。それに酒にもよく合う」
鬼ヶ島の住人達も犬や烏や猿も、桃太郎の作ったきび団子を肴にして祝いのお酒を楽しみました。烏は祝いの歌を歌い、それに合わせて犬が見事な宙返りを披露して鬼や人間達を驚かせたり、猿が面白い踊りを舞って笑わせたりしていきます。
そして宴もたけなわになった頃、鬼ヶ島の頭領が高らかに宣言しました。
「さあ。いよいよ夫婦(めおと)の契りを交わす時ぞ!」
頭領と桃太郎の前に盃が用意され、なみなみと注がれた酒をまず頭領が半分飲み、残りの半分を桃太郎が飲み干します。
「これで、私達は晴れて夫婦となったのですね」
桃太郎が感慨深そうに呟くと、頭領は桃太郎をそっと抱き寄せて言います。
「まだまだ。この島に住む者にとっての夫婦の契りの儀は、むしろこれからが本番だ」
そう言うと頭領は袴を下ろし、褌を勢いよく脱ぎ捨てました。金棒を構えて桃太郎と向き合った時のように、硬くそそり立った肉棒が勢いよく彼女を指します。
「これが、私に旦那様の子をもたらしてくださるのですね」
桃太郎は期待半分、恐れ半分といった様子でその肉棒を見据えます。
「ああ、だが、その前に準備をしなければならん」
頭領が桃太郎の胸に巻かれていたさらしを解くと、桃のように柔らかくたわわな乳房が勢いよくこぼれ出しました。彼は正座した桃太郎を後ろから優しく抱き寄せて片手で胸を揉みしだき、もう片方の手を袴の中に潜り込ませていきます。程なくしてその指が茂みの中に隠れた泉を探り当てました。そこは既に溢れんばかりに湧水を湛えています。
「んっ。旦那様。私の方が、旦那様に、ご奉仕する立場のはず。それなのに私ばかりが、気持ちよくしていただくなど」
桃太郎はようやく見つけた自分の主君に、そして夫になるべき男の手で揉みくちゃにされ、喘ぎ声を上げながら言いました。
「それは違うぞ。お前が俺の手でこうやって淫らに乱れる姿を見せてくれる事。それが俺にとって最高の奉仕だ。その証拠に、ほれ」
そう言って頭領は桃太郎の手を取り、自分の肉棒を握らせました。桃太郎は嬉しそうに呟きます。
「さっきよりも大きく、硬くなっている」
頭領は桃太郎の袴もすっかり脱がせると、彼女を横向きに寝かせ、上の方になった足を持ち上げて大きく股を開かせました。そしてその背中を優しく抱き寄せ、この時まで男を迎え入れた事の無かった泉をたくましい肉棒で一気に貫きます。
「あああっ!」
桃太郎は処女(おとめ)の証を勢いよく引き裂かれ、血を流しながら激しい痛みに喘ぎました。冷たい死霊の膣の中で、肉棒が温かさを伴ってびくりびくりと震え、その存在を主張します。
「ああ。旦那様の身体が私に孕めと、旦那様の子を産めと命じているのを感じます」
桃太郎が苦しさの中にも喜びを含んだ声で呟くと、頭領はそんな彼女の耳に唇を寄せて囁きかけます。
「そうだ。俺達はこれで晴れて夫婦に、共に子を作る仲になったのだ。ここにいる皆が証人だ」
彼女はその言葉にはっと目を見開きました。そうです。初めての交わりの緊張や痛みですっかり忘れておりましたが、ここは夫婦2人だけの寝屋ではありません。鬼ヶ島の住人達や桃太郎が連れてきた仲間達の集まる島の広場の真ん中なのです。桃太郎が慌てて周囲を見回すと、彼女と頭領以外のすべての者達の目が2人をしっかりと見据えておりました。
「お美しうございます、桃太郎様。いつも凛々しく冷静な桃太郎様が、あんなに乱れるなんて……」
犬は発情した雌の獣の匂いを振り撒きながらほとの泉から湧水を溢れさせ、それが太ももや尻の方にまで垂れて濡れた毛を張りつかせています。
「そんな姿見せられたら、こっちまで、ああっ」
猿は桃太郎の姿を見据えながらも、尻を真っ赤にして自らの股に手を伸ばし、桃太郎が貫かれる動きに合わせるようにして自分も指をさし入れています。
「……………………」
烏は女の子座りで地面にぺたりと腰を下ろし、顔を真っ赤にして黙りこくったまま、両手を自分の股の所に添えてもぞもぞと落ち着きなく体を揺らしておりました。
「そんな。私、みんなに見られて」
大事なきび団子を分け合った仲間達に自分の痴態を見られていた事を桃太郎が自覚すると、彼女の腹の底でじんと心地よい痺れが広がり、膣の中で多くの湧水が溢れ出し、破瓜の痛みを紛らわせていきます。
「お。締まりが良くなってきた。仲間に見られて興奮しているのか」
「ちがっ、あっ」
頭領も再び腰を動かし、最初はゆっくりと様子を探るように、そして大丈夫そうだと悟ると次第に大きく大胆に桃太郎の内側を突いて行きます。そして彼女の足を持ち上げているのとは反対の手を再び彼女の乳房に這わせて揉みしだき、その乳首をこね回していきました。
「最高だ、桃太郎。この胸も、突くたびにぶつかる尻も、ずっと持ち上げている太腿も、どれもが程よく柔らかい。それでいてこの内側の締まり、相当しっかりと鍛錬に励んできたと見える」
「あんっ。お褒め頂き、ありがとう、ございます」
桃太郎の胸の中で喜びの気持ちが広がると、その膣の中ではますます多くの水が湧き、自分を金棒のように激しくえぐる肉棒に対して精をねだるように細かいひだが絡みついていきます。さっきまで余裕たっぷりな様子だった頭領も、切羽詰まった声を漏らしました。
「これ以上、締められたら、もう」
そう呟くと頭領は両腕で桃太郎の両脚を抱え、自らの上半身を起き上がらせました。桃太郎は力強く抱え上げられ、下から肉棒で貫かれたそそを晒されます。その姿は彼女に妖としての新しい生を与えた大きな桃にそっくりでした。
「やあ。こんな、姿を見られるなんて、恥ずかし、ああっ」
桃太郎は喘ぎ声を上げながらも、ますます顔を真っ赤にして両手で顔を覆ってしまいます。しかし、その指の下に隠された目は、確かに悦びに潤んでおりました。
「そら、皆に見せてやるんだ。俺の子種を注がれる所を、そして、お前が、俺の子を孕む所を」
頭領が耳元で告げると、桃太郎は恥ずかしそうにしながらもしっかりとした口ぶりで答えました。
「はいぃ。出して、ください。旦那様の、赤ん坊を、私に――ああっ!」
周りの人達に晒される中、桃太郎を貫く肉棒が勢いよく震え、彼女の胎へとおびただしい子種が吐き出されました。
「ああっ、出てますっ! 旦那様の熱い、命の塊が!」
初めての交合で下から勢いよく突き上げられ、冷たい死霊の身体に温かい子種を注がれるのを感じながら、桃太郎は激しい絶頂に震えます。相手は桃太郎と交わる前から既に人神(インキュバス)となっていた身。桃太郎の絶頂がようやく治まってきた時になっても、胎の中におびただしい子種を注ぎ続けていました。
「ああ、すごい。まだ出てます。ふふっ、温かい」
桃太郎は両脚を抱え上げられたまま姿勢のまま、穏やかな笑みを浮かべます。彼女は神様の桃に新たな生を与えられた自分が、今度は新しい生を与える側になるという喜びに浸っておりました。
しかし、この頃には桃太郎と頭領の交わりを見ている者は殆どいませんでした。2人の交わりを見て昂った他の者達も、その殆どが自らも伴侶を誘って夢中で交わっていたからです。
犬と烏と猿もそれぞれに気に入った男の人と夫婦の契りを交わし、犬は四つん這いの姿勢で後ろから貫かれて、烏は座った姿勢の男の上に向かい合って座るような形で抱き合いながら、猿は威勢よく相手の男を押し倒しで馬乗りで、純潔を散らしながら悦びの声を上げておりました。
「旦那様。早く、私にもお情けをぉ……」
そして頭領のもう1人の奥さんであるアカオニは、激しく交わる頭領と桃太郎の隣で自らを慰めながら切なそうな声を上げておりました。今は桃太郎を妬んだりする余裕すらなく、とにかく自分も夫に身体の疼きをすぐにでも鎮めてほしいという事しか考えられなくなっています。
こうして、桃太郎は海に住む人々を守る鬼ヶ島の頭領の妻となり、普段は畑を耕して暮らしながら、海で溺れる者がいればすぐに駆け付けて引き上げ、退魔師や海賊が妖や人間を襲えばそれを追い払ったりしてたくさんの人を助けました。
そしてその桃のように柔らかくふくよかな尻と、鍛錬で引き締まった股(もも)からは、両親に似た元気で力強い赤ん坊が生まれてきたそうです。
・編者あとがき
このお話はジパングに住む「武士」と呼ばれる戦士や、無念の内に死した武士がアンデットとして蘇った魔物娘である落武者の価値観を大きく反映したものとして、ジパングでは昔話の中でも特に広く知られたお話しの1つとなっています。
このお話しでは桃太郎がクー・シー、カラステング、カク猿という魔物娘を仲間として連れていますが、これは落武者達が大切に思う3つの価値観が繁栄されており、飼い主と強い愛情で結ばれた飼い犬が魔物娘となったクー・シーは「主君への滅私奉公」、普段山の中で修行をしているカラステングは「死しても尚鍛錬を怠らない心」、特定の男性に好意を抱けば、交わっていなくても暇さえあれば自らを慰めたりすると言われているカク猿は「魔物娘として主君たる男性の精を求め、子を成す事を求める欲望」を現していると言われています。
また、このお話は先述した通りジパングで広く知られた話である事から地域によって様々な差異が見られ、桃太郎が落武者ではなく人間の男性として旅をして犬と烏と猿を妻に迎え、鬼ヶ島に渡ってそこの頭領をしていた落武者と結婚するという筋書きになっている事も多いです。
このおじいさんとおばあさんには1人の息子がおり、その名を太郎と言いました。
「俺、大きくなったらきっと立派なお侍さんになって、父様と母様に楽させてやるからな」
心優しい太郎はいつもそう話しておりました。
しかしある時、辺りの村々を恐ろしい流行り病が襲い、おじいさんと太郎は共に何日も高い熱に苦しみました。おばあさんの懸命な看病の甲斐もなく、太郎はそのままお侍になるという夢を叶える事無く死んでしまいます。
おじいさんはどうにか一命をとりとめましたが、その代わりなのかおじいさんの足腰はすっかり萎びてしまい、新たに子を成す事は望めそうもない身体になってしまいました。
それからまた更に数カ月経ち、おじいさんは山へ柴刈りに行けるようになるくらいには病から持ち直し、それを見て安心したおばあさんは溜まった洗濯物を抱えて川へ洗濯をしに行きました。
しかし、着る者を失った息子の服を見たおばあさんは、川辺に座り込んで泣きじゃくってしまいます。
「太郎。太郎やぁ……」
その時、川上からどんぶらこ、どんぶらこと不思議な音が聞こえてきます。おばあさんがそちらを見ると、川上から桃が流れてきました。拾って食べてみると、息子を失った悲しみに凍り付いていた心が不思議と温かくなってきます。
「そうだ。この桃をおじいさんにも食べさせてあげましょう。そうすればおじいさんも元気になるかもしれないわ」
おばあさんがそう言うと、さっきよりも更に大きな桃が川上からどんぶらこ、どんぶらこと流れてきました。
「苦い桃ならあっち行け。甘い桃ならこっちに来い」
そう歌うと、桃はおばあさんの方に流れてきたので、おばあさんはこれを拾って持って帰る事にしました。
柴刈りから帰ってきたおじいさんも、おばあさんの持ち帰った桃にはびっくりです。
「ほう。こんなでかい桃がこの世に存在するとは」
「おじいさん。これを食べれば、おじいさんの身体も元気になるんじゃないですかねえ」
「ありがとう。しかし、できる事なら、太郎にも食べさせてやりたかったなあ」
おじいさんとおばあさんは桃を半分に割り、その片方を庭に埋めた太郎のお墓にお供えし、残った半分をさらに2つに割って2人で分けて食べました。するとどうでしょう。身体がぽかぽかして、病に倒れてからずっとやせ細っていたおじいさんにも力がみなぎってきます。
「ばあさんや、見てくれ」
おじいさんが嬉しそうに袴を下ろすと、その下でずっと力なく垂れ下がったままになった物が、勢いよく褌を押し上げておりました。
「あらあら、おじいさん……」
おばあさんも顔を真っ赤にしながら、嬉しそうにそのおじいさんの身体をじっと見つめます。おじいさんとおばあさんはその日、久方ぶりに布団の上で朝日が昇るまで眠らずに過ごしました。これは、太郎が生まれる前の若い頃以来ついぞ無かった事です。
そして翌朝。おじいさんとおばあさんの家の戸を誰かが勢いよく開ける音がしました。
「おや。こんな早くから客人とは誰だろう」
2人は慌てて着物を着直し、玄関へと歩いていきます。そして、そこにいる人物を見た2人は思わずあっと声を上げました。
「お前、太郎じゃないか!」
そう。そこには死んだはずの太郎が立っていたのです。肌は青白く、身体は女子の体型に代わり、その一部は骨のような物がむき出しになっておりますが、その顔は紛れもなく、数カ月前に病で死んだはずの太郎です。
「父様、母様。お侍になる夢を果たせぬまま無念のうちに死の床についた私は、強い妖力に引き寄せられ、気が付けばこうして妖となって墓の下から這い出しておりました」
「強い妖力じゃと……そうか。昨日お供えしたあの不思議な桃のことじゃな」
「おじいさん。あの桃は、神様からの贈り物だったんじゃないんですかねえ」
ジパングでは無念のうちに死んだお侍さんの亡骸が、落武者という死霊(アンデッド)の妖として蘇る事があります。こうして落武者として蘇った太郎は、神様の桃により新たな生を授けられたという事で、この日から桃太郎と名乗るようになりました。
それから更に何年もの時が経ち、桃太郎も15歳になりました。胸や尻は桃のようにふっくらとふくよかになり、死霊の身体になった後も武士としての鍛錬を毎日欠かさず続けた事で、引き締まる所はきゅっと引き締まった魅惑的な女の体型に成長しています。病で1度命を落とす前は男子として生きていたはずの桃太郎ですが、不思議な事に今となっては女となった今の身体の方があるべき姿であるような気さえしているのでした。
そんなある日、桃太郎はおじいさんとおばあさんに言いました。
「父様、母様。私は仕えるべき主君となる人、私が子を産むべき夫にふさわしい人を見つけるためにこれから旅に出ようと思います。」
すると、おじいさんとおばあさんは涙ぐみながら言いました。
「ばあさんや。ついにこの時が来たんじゃなあ」
「きっと長く険しい道のりになるじゃろう。どれ、お前の好きなきび団子を作ってやろうかの」
こうして、桃太郎は腰に落武者の妖刀と、大好物であるおばあさんのきび団子がたくさん入った袋を提げ、夫探しの旅に出る事にしました。
桃太郎が山道を歩いていると、崖の下で1頭の犬が大きな岩に押しつぶされておりました。そこら中におびただしい量の血が飛び散っておりますが、よく見るとまだかすかに息があります。
「このまま苦しませるのは忍びないが、私には助ける術がない」
桃太郎はすまなそうに言うと妖刀を抜き出し、息も絶え絶えになった犬に突き刺しました。そしてせめてもの供養にと、腰の袋からきび団子を1つ取り出して犬の傍に置き、その日は夜が更けるまでこの犬の傍らで過ごしました(編注:ジパングでは人が亡くなった時、通夜と言って故人の家族や親しい者が夜通し亡骸の傍に付く風習があります)。
そして桃太郎はそのまま眠りこけ、山の中に朝日が昇ってきました。誰かが彼女に語り掛けてくる声が聞こえてきます。
「もし。そこのお方」
桃太郎がゆっくりと目を開けると、岩の下に潰されていた犬の亡骸とその傍に備えていたきび団子が消え、代わりに犬の妖が立っておりました。
「私はそこで岩の下に潰されて死にかけていた犬です。あと少しで命が尽きようとした時、お侍さんの刀から与えられた不思議な力により、こうして妖として蘇ったのです」
桃太郎は知りませんでしたが、斬った者を妖へと変える妖刀の力によって、この犬は西の国でクー・シーと呼ばれる犬の妖として蘇ったのでした。丁度桃太郎自身が不思議な桃の力で落武者として蘇ったように。
「私の命はお侍様がお与えくださったもの。私もお侍様の旅にお供させてください」
こうして桃太郎は、犬の妖を仲間として連れていく事になりました。
それから桃太郎と犬がいくつもの山を越え、その辺りでも特に険しい山の中を歩いておりますと、どこからか声が聞こえてきました。
「エイ。ヤー」
見回してみると、カラステングという烏の妖が木から木へと飛び移っています。烏は桃太郎と犬の姿に気付くと、その目の前に降りてきました。
「お2人さん、どこへ行くのです?」
すると、犬が答えました。
「私と桃太郎様は夫となるにふさわしい殿方を探して旅をしているのです」
「腰の袋に付けている物はなんですか?」
「これは私の母様が作った、この国で一番のきび団子だ」
「私にも1つくださいませんか。そうすれば私も旅にお供させていただきましょう」
桃太郎は烏にきび団子を与え、仲間として連れていく事になりました。
それから桃太郎と犬と烏がさらにいくつもの山を越え、ある街へと降りて行っきますと、桃太郎の頭の上からいきなり何かが降ってきて彼女を押し倒しました。
「ウキッ! 捕まえた……おや? 色男がいると思ってみれば、おなごじゃないか」
それは霧の大陸でカク猿と呼ばれる猿の妖でした。すると、街の人達が慌てて走ってきます。
「お侍さん! その猿を捕まえてくれ」
「俺達が干していた芋を盗みやがったんだ!」
「おっといけない」
猿はすばしっこい身のこなしで近くの家の屋根に飛び乗り、屋根から屋根へと飛び移って逃げようとします。
「ここまでおいでー」
するとどうでしょう。桃太郎は猿に負けない身のこなしで彼女を追いかけ、驚く猿の目の前に迫ったかと思うと居合切りでバッサリと斬り捨てました。
「ああっ!」
猿は命を落としたり怪我したりする事はありませんでしたが、妖力を注がれた事で絶頂を迎え、ほとから勢いよく潮を吹いて倒れます。そしてそのまま、街の人達の所へ引きずり出されました。
「さあ観念しろ性悪猿め」
「盗んだ分は働いて返してもらうからな」
「勘弁してくれよぅ。お腹がすいたけど食べ物を買うお金も無くて、ひもじくて仕方がなかったんだよ」
泣きじゃくる猿を見た桃太郎は、腰の袋からきび団子を取り出して言いました。
「腹が減っているならこのきび団子をやろう。その代わり、もう盗みはしないと約束しなさい」
「ありがとう。ありがとう」
猿は泣きながらきび団子を頬張り、街の人達から盗んだ食べ物の分を必死に働いて返しました。桃太郎達はその間も街に留まり、猿の働きを見守ります。そして町の人達から解放され、桃太郎達に旅の目的について聞いた猿は言いました。
「桃太郎さん。私もあんたについて行くよ。あんたならきっとたくさんの人を助けられるお侍になる。私はそれを手伝って、今まで町の人達に迷惑をかけた罪滅ぼしがしたいんだ」
こうして猿も、桃太郎の仲間として付いて行く事になりました。
犬と烏と猿を連れた桃太郎は、いくつもの山を越え谷を越え、川を越えて旅をしていきます。その道中で困っている者がいれば、それが人間であっても妖であっても分け隔てなく助けました。そして、4人はとうとう大きな海へとたどり着きます。烏は空へと飛び上がり、遠くの方まで見渡しました。
「桃太郎さん、沖の方に島が見えますよ。黒くて大きな岩がいくつも突き出た、不気味な島が」
そこで、桃太郎は近くを道行く村人に、烏が見た島について尋ねてみる事にしました。
「それなら鬼ヶ島の事でしょう。あの島には見た目は恐ろしくも心優しい鬼神様やその鬼神様に仕える神官達が住んでいて、私達の海での安全を見守ってくださっているという話です」
「なるほど。その島なら私がお仕えするにふさわしい主となる殿方が見つかるかもしれない」
桃太郎達は小さな船で険しい海を越え、鬼ヶ島へと渡りました。
鬼ヶ島にはアカオニやアオオニといった妖達が、人間達と共に暮らす小さな集落がありました。皆楽しそうに笑い、お酒を作ったり小さな畑を耕したり海で魚を採ったりと汗水たらして仲良く働いています。
桃太郎は鬼達が村の広場で酒盛りの準備をしている所に集まって尋ねました。
「私は仕えるべき主君となる殿方を探して旅をしている者です。この島の長をしている方にお目通りできないでしょうか」
すると、鬼達の中でも特にがたいの大きい1人のアカオニが進み出て言いました。
「アタシはこの村の鬼達を束ねる頭領の妻だ。私の夫は海神様の加護を受け、この海を守る使命のために特別な力を授かった神官。その力を試そうとするなら、まずはアタシを倒してからにするんだね」
桃太郎はアカオニと一騎打ちをすることになりました。集落の広場の真ん中で、互いの武器を構えて向かい合います。アカオニは自分の身体と同じくらい大きな金棒を軽々と持ち上げています。正面から打ち合えば妖刀などあっさりと折ってしまいそうです。
「せやあっ!」
アカオニは鋭い掛け声とともに勢いよく金棒を振り回してきました。
「ひゃあ。さすがの桃太郎様も、あれを受けてはひとたまりも」
犬と烏と猿は思わず目を覆ってしまいます。しかし、桃太郎はアカオニの激しい攻撃にも一切怯むことなく、素早い動きでひらりひらりと躱していきました。
「このおっ!」
怒ったアカオニが更に勢いよく金棒を振りかざしてきたその時、桃太郎はわずかに生じた隙を見逃さず、一気に相手の懐へと飛び込みました。妖刀の目にも留まらぬ一撃でアカオニを捉えます。
「あんっ」
アカオニは腰布の下から潮を吹きながら、酔っ払ったように顔を真っ赤にして倒れました。
「ウキッ! 桃太郎さんの勝ちだ!」
猿が大はしゃぎしておりますと、人ごみの中からアカオニに負けないくらい大きな体をした男の人が進み出てきました。
「まさか力比べで家内を打ち負かす者が現れようとは」
「ということは、貴方がこの島の頭領ですか。私の主君に、そしてこの身を捧げる夫となるにふさわしき者か、今一度その力を試させてもらいたい」
頭領はアカオニの奥さんが取り落とした金棒を軽々と拾い上げ、桃太郎に向き合いました。そしてアカオニよりも更に力強い動きで金棒を振りかぶります。
桃太郎はさっきと同じようにその攻撃をひらりひらりと躱しながら、相手の動きに決定的な隙ができるのを冷ややかに見定めようとしました。しかし、相手もさるもの。荒々しい中にも決定的な隙を見せないよう巧みに立ち回り、強引に踏み込もうとすればそこを狙いすました重い一撃で待ち構えてきます。
それでも桃太郎も負けてはいません。わずかでも隙が生じれば相手の近くへと踏み込み、反撃を躱し、いつ斬り込んでもおかしくない雰囲気で重圧をかけていきます。
そしてとうとう互いに手詰まりになり、最初と同じように互いに向き合ったまま動かなくなりました。
「ど、どうなるんだ……」
鬼ヶ島に住む妖や人間達も、犬と烏と雉も、かたずを飲んで見守ります。
「も、桃太郎さん、がんばれー!」
「お、お頭も、負けるなー!」
それぞれが大きな声を張り上げたその時、桃太郎は妖刀を鞘に納め、頭領の前に跪きました。
「貴方様のお力、しかと見届けさせていただきました。どうか私を貴方にお仕えさせていただけないでしょうか」
すると、頭領は桃太郎に手を差し伸べて答えます。
「俺もお前の力には感服した。これからはこの海を守るため、俺に力を貸してくれないか」
犬や烏や猿からも、そして鬼ヶ島の住人達からも大きな歓声が上がりました。
「祝いじゃ。祝いじゃ。早速婚礼のお祝いじゃ」
鬼達の間から声が上がります。
「私はこの島での作法を知りません。ここでは婚礼の祝いとして、何をするのです?」
桃太郎が尋ねると、頭領は大声を上げて笑いました。
「鬼の宴となればやる事は1つだろう。大いに食べて飲んで踊り、そして愛する者と大いに交わるのじゃ」
元々酒盛りの準備をしていたわけではありますが、妖も人間達もそれぞれにとっておきのお酒やおつまみを持ち寄って広場に集まります。桃太郎の腰に提げていた袋のきび団子は既に空になっておりましたが、彼女もおばあさんに教わったやり方で新しいきび団子をたくさん作ってふるまいました。
「母のようにこの国一番とは言えませぬが」
「いやいや、実にうまいきび団子だ」
「ああ。それに酒にもよく合う」
鬼ヶ島の住人達も犬や烏や猿も、桃太郎の作ったきび団子を肴にして祝いのお酒を楽しみました。烏は祝いの歌を歌い、それに合わせて犬が見事な宙返りを披露して鬼や人間達を驚かせたり、猿が面白い踊りを舞って笑わせたりしていきます。
そして宴もたけなわになった頃、鬼ヶ島の頭領が高らかに宣言しました。
「さあ。いよいよ夫婦(めおと)の契りを交わす時ぞ!」
頭領と桃太郎の前に盃が用意され、なみなみと注がれた酒をまず頭領が半分飲み、残りの半分を桃太郎が飲み干します。
「これで、私達は晴れて夫婦となったのですね」
桃太郎が感慨深そうに呟くと、頭領は桃太郎をそっと抱き寄せて言います。
「まだまだ。この島に住む者にとっての夫婦の契りの儀は、むしろこれからが本番だ」
そう言うと頭領は袴を下ろし、褌を勢いよく脱ぎ捨てました。金棒を構えて桃太郎と向き合った時のように、硬くそそり立った肉棒が勢いよく彼女を指します。
「これが、私に旦那様の子をもたらしてくださるのですね」
桃太郎は期待半分、恐れ半分といった様子でその肉棒を見据えます。
「ああ、だが、その前に準備をしなければならん」
頭領が桃太郎の胸に巻かれていたさらしを解くと、桃のように柔らかくたわわな乳房が勢いよくこぼれ出しました。彼は正座した桃太郎を後ろから優しく抱き寄せて片手で胸を揉みしだき、もう片方の手を袴の中に潜り込ませていきます。程なくしてその指が茂みの中に隠れた泉を探り当てました。そこは既に溢れんばかりに湧水を湛えています。
「んっ。旦那様。私の方が、旦那様に、ご奉仕する立場のはず。それなのに私ばかりが、気持ちよくしていただくなど」
桃太郎はようやく見つけた自分の主君に、そして夫になるべき男の手で揉みくちゃにされ、喘ぎ声を上げながら言いました。
「それは違うぞ。お前が俺の手でこうやって淫らに乱れる姿を見せてくれる事。それが俺にとって最高の奉仕だ。その証拠に、ほれ」
そう言って頭領は桃太郎の手を取り、自分の肉棒を握らせました。桃太郎は嬉しそうに呟きます。
「さっきよりも大きく、硬くなっている」
頭領は桃太郎の袴もすっかり脱がせると、彼女を横向きに寝かせ、上の方になった足を持ち上げて大きく股を開かせました。そしてその背中を優しく抱き寄せ、この時まで男を迎え入れた事の無かった泉をたくましい肉棒で一気に貫きます。
「あああっ!」
桃太郎は処女(おとめ)の証を勢いよく引き裂かれ、血を流しながら激しい痛みに喘ぎました。冷たい死霊の膣の中で、肉棒が温かさを伴ってびくりびくりと震え、その存在を主張します。
「ああ。旦那様の身体が私に孕めと、旦那様の子を産めと命じているのを感じます」
桃太郎が苦しさの中にも喜びを含んだ声で呟くと、頭領はそんな彼女の耳に唇を寄せて囁きかけます。
「そうだ。俺達はこれで晴れて夫婦に、共に子を作る仲になったのだ。ここにいる皆が証人だ」
彼女はその言葉にはっと目を見開きました。そうです。初めての交わりの緊張や痛みですっかり忘れておりましたが、ここは夫婦2人だけの寝屋ではありません。鬼ヶ島の住人達や桃太郎が連れてきた仲間達の集まる島の広場の真ん中なのです。桃太郎が慌てて周囲を見回すと、彼女と頭領以外のすべての者達の目が2人をしっかりと見据えておりました。
「お美しうございます、桃太郎様。いつも凛々しく冷静な桃太郎様が、あんなに乱れるなんて……」
犬は発情した雌の獣の匂いを振り撒きながらほとの泉から湧水を溢れさせ、それが太ももや尻の方にまで垂れて濡れた毛を張りつかせています。
「そんな姿見せられたら、こっちまで、ああっ」
猿は桃太郎の姿を見据えながらも、尻を真っ赤にして自らの股に手を伸ばし、桃太郎が貫かれる動きに合わせるようにして自分も指をさし入れています。
「……………………」
烏は女の子座りで地面にぺたりと腰を下ろし、顔を真っ赤にして黙りこくったまま、両手を自分の股の所に添えてもぞもぞと落ち着きなく体を揺らしておりました。
「そんな。私、みんなに見られて」
大事なきび団子を分け合った仲間達に自分の痴態を見られていた事を桃太郎が自覚すると、彼女の腹の底でじんと心地よい痺れが広がり、膣の中で多くの湧水が溢れ出し、破瓜の痛みを紛らわせていきます。
「お。締まりが良くなってきた。仲間に見られて興奮しているのか」
「ちがっ、あっ」
頭領も再び腰を動かし、最初はゆっくりと様子を探るように、そして大丈夫そうだと悟ると次第に大きく大胆に桃太郎の内側を突いて行きます。そして彼女の足を持ち上げているのとは反対の手を再び彼女の乳房に這わせて揉みしだき、その乳首をこね回していきました。
「最高だ、桃太郎。この胸も、突くたびにぶつかる尻も、ずっと持ち上げている太腿も、どれもが程よく柔らかい。それでいてこの内側の締まり、相当しっかりと鍛錬に励んできたと見える」
「あんっ。お褒め頂き、ありがとう、ございます」
桃太郎の胸の中で喜びの気持ちが広がると、その膣の中ではますます多くの水が湧き、自分を金棒のように激しくえぐる肉棒に対して精をねだるように細かいひだが絡みついていきます。さっきまで余裕たっぷりな様子だった頭領も、切羽詰まった声を漏らしました。
「これ以上、締められたら、もう」
そう呟くと頭領は両腕で桃太郎の両脚を抱え、自らの上半身を起き上がらせました。桃太郎は力強く抱え上げられ、下から肉棒で貫かれたそそを晒されます。その姿は彼女に妖としての新しい生を与えた大きな桃にそっくりでした。
「やあ。こんな、姿を見られるなんて、恥ずかし、ああっ」
桃太郎は喘ぎ声を上げながらも、ますます顔を真っ赤にして両手で顔を覆ってしまいます。しかし、その指の下に隠された目は、確かに悦びに潤んでおりました。
「そら、皆に見せてやるんだ。俺の子種を注がれる所を、そして、お前が、俺の子を孕む所を」
頭領が耳元で告げると、桃太郎は恥ずかしそうにしながらもしっかりとした口ぶりで答えました。
「はいぃ。出して、ください。旦那様の、赤ん坊を、私に――ああっ!」
周りの人達に晒される中、桃太郎を貫く肉棒が勢いよく震え、彼女の胎へとおびただしい子種が吐き出されました。
「ああっ、出てますっ! 旦那様の熱い、命の塊が!」
初めての交合で下から勢いよく突き上げられ、冷たい死霊の身体に温かい子種を注がれるのを感じながら、桃太郎は激しい絶頂に震えます。相手は桃太郎と交わる前から既に人神(インキュバス)となっていた身。桃太郎の絶頂がようやく治まってきた時になっても、胎の中におびただしい子種を注ぎ続けていました。
「ああ、すごい。まだ出てます。ふふっ、温かい」
桃太郎は両脚を抱え上げられたまま姿勢のまま、穏やかな笑みを浮かべます。彼女は神様の桃に新たな生を与えられた自分が、今度は新しい生を与える側になるという喜びに浸っておりました。
しかし、この頃には桃太郎と頭領の交わりを見ている者は殆どいませんでした。2人の交わりを見て昂った他の者達も、その殆どが自らも伴侶を誘って夢中で交わっていたからです。
犬と烏と猿もそれぞれに気に入った男の人と夫婦の契りを交わし、犬は四つん這いの姿勢で後ろから貫かれて、烏は座った姿勢の男の上に向かい合って座るような形で抱き合いながら、猿は威勢よく相手の男を押し倒しで馬乗りで、純潔を散らしながら悦びの声を上げておりました。
「旦那様。早く、私にもお情けをぉ……」
そして頭領のもう1人の奥さんであるアカオニは、激しく交わる頭領と桃太郎の隣で自らを慰めながら切なそうな声を上げておりました。今は桃太郎を妬んだりする余裕すらなく、とにかく自分も夫に身体の疼きをすぐにでも鎮めてほしいという事しか考えられなくなっています。
こうして、桃太郎は海に住む人々を守る鬼ヶ島の頭領の妻となり、普段は畑を耕して暮らしながら、海で溺れる者がいればすぐに駆け付けて引き上げ、退魔師や海賊が妖や人間を襲えばそれを追い払ったりしてたくさんの人を助けました。
そしてその桃のように柔らかくふくよかな尻と、鍛錬で引き締まった股(もも)からは、両親に似た元気で力強い赤ん坊が生まれてきたそうです。
・編者あとがき
このお話はジパングに住む「武士」と呼ばれる戦士や、無念の内に死した武士がアンデットとして蘇った魔物娘である落武者の価値観を大きく反映したものとして、ジパングでは昔話の中でも特に広く知られたお話しの1つとなっています。
このお話しでは桃太郎がクー・シー、カラステング、カク猿という魔物娘を仲間として連れていますが、これは落武者達が大切に思う3つの価値観が繁栄されており、飼い主と強い愛情で結ばれた飼い犬が魔物娘となったクー・シーは「主君への滅私奉公」、普段山の中で修行をしているカラステングは「死しても尚鍛錬を怠らない心」、特定の男性に好意を抱けば、交わっていなくても暇さえあれば自らを慰めたりすると言われているカク猿は「魔物娘として主君たる男性の精を求め、子を成す事を求める欲望」を現していると言われています。
また、このお話は先述した通りジパングで広く知られた話である事から地域によって様々な差異が見られ、桃太郎が落武者ではなく人間の男性として旅をして犬と烏と猿を妻に迎え、鬼ヶ島に渡ってそこの頭領をしていた落武者と結婚するという筋書きになっている事も多いです。
19/02/13 21:59更新 / bean