刷毛を振るい、容赦なく女に真水をふりかけた。
「きゃうっ!!」
女が甲高い声をあげた。
冷たかったからではない。驚いたからでもない。…いや、驚いたというのは間違っていないのだが。
彼は続けざまに刷毛を振るって水をかける。
「ふぁっ!ひゃっ!んあっ!」
先程の凄みを利かせた声が嘘のような、艶のある声が石造りの部屋に響いた。
男は器に刷毛を戻し、刷毛に水を含ませた。
「こ……こんなこと…貴様…」
荒い息をつきながら、女が弱々しい抗議をする。その顔は紅潮しており、目も潤んでいる。だが、それが痛みが生んだ物ではない事は、乳首が頭をもたげ始めていることからわかる。
女の下半身がもじもじと動き始めていた。
「どうしました?痛くはないでしょう?痛くは、ね」
男はこの場に不釣り合いなほど爽やかな笑みと共に、容赦なく刷毛を振るった。
「やっ!あっ!あぁっ!っ!」
突然、男は手を止めた。
「………?」
「…ふぅむ」
単調なのは少しつまらない。趣向を変えてみよう。
彼はそう考えた。
刷毛に水を含ませながら女に歩み寄る。彼女から立ちのぼる濃厚な女の香りが、彼の鼻孔をくすぐった。
「な…なにを……」
「大丈夫です。貴女を傷つけやしません」
彼は嬉しそうに笑いながら女の首筋に一筋、刷毛で見えない線をゆっくりと描いた。
「あ…うああああああああ!!!」
それだけの事なのに彼女は目をむき、絶叫と共に体を震わせた。
男が刷毛を肌から離しても、その痙攣はしばらく止まることはなかった。肺の中身を絞り出すように叫んだためか、がっくりと項垂れて苦しげな呼吸を繰り返す。
乳首が先程よりも自己主張を強めていた。痙攣が治まっても、腰のもじもじが止まらない。太腿と太腿をすり合わせ、切なげに震える。
更に男は女の背後に回り、自身の人差し指を水に浸けてからそのまま女の背筋をすっとなぞった。
「あぁぁあうっ!」
短い悲鳴と共に女の体が美しい曲線を描いた。
「おやおや?吸血鬼のお嬢さんは随分とコレがお気に入りのようですね」
「…誰が…」
「そうですか?」
男が脇の下から胸に直接手を回す。白い肌にじっとりとにじんだ汗が男の手と乳房を隙間なく密着させる。全体を優しく撫で、下からたぷたぷと揉みあげると、乳房はより一層熱を帯びた。
「っ〜〜…んっ…くぅ……」
女は屈辱と快感を唇を噛んでこらえる。乳首をつままれ、ころがされると、苦しげに首を振った。
「お固いなぁ。大丈夫ですよ、誰も聞いてない。素直になればいいじゃないですか」
「…げっ、下賤な毛無し猿め……。妾の体に…触れ…るな…っ!」
「あぁ、そうか。気高いお嬢様はこちらの方が好みなんですね」
男は再び銀の器を手に、女の前に立つ。刺すような女の視線を気にも留めず、刷毛を手にした。
「こっちで触られた方が良いですよねぇ」
湿った馬の毛が、僅かに右の乳首に触れた。女があっと鋭い悲鳴をあげた。続けて乳輪をなぞるように動かされると女の背筋に甘い刺激が走り、食いしばった歯の隙間から悦びの呻きが漏れた。乳房の先端が痛いほどに充血していた。
「片っぽだけってのも、ね」
「や、やめ…!」
左の乳首の先に、刷毛が近づく。
「あぁ…」
女の唇から甘い声が漏れた所で、男は手をひっこめた。
「え……?」
なんで、という言葉が口から出そうになり、女は慌てて口をつぐむ。だがそんなこともお見通しの男は意地悪げな笑みをうかべた。
「ん?言われた通り止めたんですが?」
「…っくぅ………」
「こっちにとっちゃ、道具を使うのは味気ないんですよ」
そう言うと男は真水を少量口に含み、女の乳首に顔を近づける。そのまま口の水が漏れないようにしながら、女の充血したそれに吸いついた。
「やっやめろ!離れ…あ、ぐ、うぅぅぅ」
真水を舌で塗り込むようにねっとりと乳首を舐め、ころころところがす。先程とは違う甘い刺激に、女も思わず抗議を止めてしまった。それに気を良くした男は軽く歯で噛んでしごき、ちゅうちゅうと音をたてて吸った。
「だめぇ…かんじゃぁ……。んっ、あっ…すう、なっ…あぁ…」
その声はもはや抵抗ではなく、悦びを語るものでしかなかった。
男はそう確信し、手探りで女の腰を探す。くびれの部分からラインに沿って撫で下ろすと、甘い吐息と共に女が震えた。だが男の手が股の間の蜜壺に触れると、弛緩しきった身体にも緊張が走った。
僅かに溢れた蜜を男の指が拭った所で、女は慌てて腰を引いた。
「だめっ!止めろっ!そこは…そこはだめだ!」
「もう、うるさいなあ。さっきからダメとか止めろとかそればっかりじゃないですか」
男は一旦女から離れると、台に置いてあった布を一枚持ってきた。
布から漂う匂いが女の鼻をくすぐった。彼女は一度だけ嗅いだ事がある。ニンニクの臭いだった。布にはニンニクがしみこませてあるらしい。
「吸血鬼のおしゃぶりには、やっぱりコレですよねぇ」
にや、と男が楽しそうに笑った。
猿轡にするつもりなのだと気付き、女は戦慄した。
確かに、臭いを嗅いだだけで女の内股には一筋の透明な線が出来ていた。子宮のあたりも疼きを伴って熱くなっている。
もしあれをされたら、一体どうなってしまうのか。
それは恐れであり、期待でもあった。
「さ、口を開けて下さい」
「ふっ…ふざけるな!この淫乱猿っ!」
女は歯を食いしばる。だが、男が刷毛で素早く彼女のわき腹をなぞると、その抵抗も無意味である。あっと悦びの声をあげた瞬間、女は差し出されたそれを咥えてしまった。
口の中に嫌な臭いが満ちた途端に女の目がとろりと蕩ける。
「んん…んふぅ……」
ぶるりと身体が悦びに震え、全身が弛緩してしまう。もはや自分の足で立つこともかなわず、縄に身体を預けてぐったりしてしまった。
蜜壺からは触れてもいないのにとくとくと愛液が溢れ、陰唇が切なげにひくひくと震えた。身体は爆発しそうなくらい熱くなり、まるで溶けた金属が身体を廻っているようだ。火照った身体には鼻から入る空気が冷たく感じ、その心地良さで達しそうになる。
「よしよし。大人しくしてえらいですねー」
満足げな男が女の頬を撫でる。それだけで、
「んん!!んぐ、んんん〜〜〜〜〜っ!!」
女の脊髄を暴力的な快感が走り、達してしまう。
塞がれた口の代わりに鼻が酸素を求め、荒い呼吸を繰り返すが逆効果。その呼吸が新たな快楽の波を生み出し、悦びの震えを長引かせる。
にこにこと笑いながら男は蜜壺から愛液をすくいとり、女の眼前につき付ける。
「ほら、見て下さい。貴女のいやらしい蜜が、こんなに」
「ん………ふぅ……ふぅ……」
「しかし、蜜というのは言い得て妙ですねぇ。ほら」
ぬるぬると愛液に塗れた指をすり合わせる。ぱっと指を離すと、二本の指を繋ぐ銀糸がかかった。
「切ないでしょう?もっとして欲しいですか?」
恥丘を軽く押すと、とぷりと愛液があふれた。
女は迷わず首を縦に振った。このままにされたら、きっと狂い死んでしまう。
「…でも、こっちにはもうしてあげません」
その言葉に、女の目が哀願に染まった。
猿轡さえなければ今度は確実に口にしていただろう。なんで、と。
「さっきダメって言われちゃいましたし」
女はぶるぶると首を振った。
「でも、代わりに…」
男が腰が引けた女の尻たぶに優しく触れた。
「こっちをしてあげます」
女にはその言葉が飲み込めなかった。困惑する女を無視し、男が背後に回り込む。
「ある国ではこちらでも性交をするそうです。『下等性交』と言われましてね、畜生にも等しいと蔑まれるんです」
脱力した女の内股をつたう愛液をすくい取り、尻たぶを僅かに広げ、その中心にある窄みをつんつんとつつく。猿轡の効果によって尻穴は既に柔らかくほぐれており、男の指が触れるたびに物欲しげに蠢いた。
「ん!ふっ、ふぅ!ふぅ!」
未知の感覚に女は首を振る事しかできない。
男の指が窄みに僅かに押し込まれ、入口をなぞるように動くと、がくがくとその身体が震えた。
「『下等性交』。どういう事か、わかります?」
ずっぷりと指が根元まで入り込み、腸の粘膜をなでる。先程のどの快楽をもしのぐ感覚が、女の脳を犯した。そのまま男は腸内をこねまわし、無遠慮に腸壁を擦り上げる。いやいやと女は首を振るが、尻はさらなる責めを望むかのように男につきだしている。自ら感じる部分を探すように尻をもじもじと動かしているようにも見える。
彼女の身体と心は、既に尻穴から送られる快楽にどっぷりと浸けられ、ぐちゃぐちゃにされていた。
「ぐっ!んぐぐっ!んぐぅっ〜〜〜〜!!」
かり、と男の指が粘膜を引っ掻いた時、ふいに女の背筋がぐっと反りかえった。
腸壁が指を潰さんばかりにぎゅうっと締め付ける。
「あっはっはっはっはっは!もしかして、お尻でイっちゃいました?」
「んふ……ふっ…ふっ…ふぅっ……」
達しはした、が…まだ物足りない。
「いつも人間を蔑んで、貴族だなんだと威張り腐っているのに…ねぇ?」
そんなの、もう関係ない。もっと、もっと弄ってほしい。もっと中を掻いてほしい。なのに…。
ぬぽっ、と音を立てて指が引き抜かれた。
「ん…?ふんん?ふんん?!」
口を塞がれているために、言葉はわからない。だが代弁するかのように、尻穴がひくひくと物欲しげに口を広げていた。
「よろしければ、もっと太いものを入れてあげますよ」
男はそう言うと、パンパンに膨れた下半身を女の尻に擦りつけた。
尻の谷間に感じる、指とは全く違うそれの熱量と質量に女は切なげな吐息を漏らした。
男はそのままの体勢で懐から小刀を取り出し、女を縛る縄を切った。両手が自由になる。
「でも、物を頼むにはそれなりの礼儀ってものがありますよねぇ」
猿轡が解かれ、ぱらりと石造りの床に落ちた。
彼女を縛るものは、もう何もない。『陽光の灯』こそあるものの、隙をつけば彼の喉笛に噛みつけるかもしれない。
だがそれなのに、自由になれる筈なのに、女は壁に手をついて男の方に尻を突き出した。
自ら尻たぶを片方広げ、湧き上がる恥辱や屈辱をも跳ねのけて叫んだ。
「おねがいします!もっとおおきいのください!いっぱい、いっぱい、つっこんでください!!」
「あっはっはっは!あっはっはっはっはっはっはっは!」
男は怒張しきったペニスをズボンの拘束から解放し、外気にさらす。先走りの溢れるそれを尻穴にあてがいながら、女の耳元で囁く。
「良いんですか?こっちでするという事は、畜生に堕ちるという事ですよ。それでも良いんですか、吸血鬼のお嬢様」
「いい…。いいからぁ…!いれて、きゅうけつきのおしり、ほじってぇっ!!」
「そこまで言ってくれるなんて…」
男がぐっと体重をかけると、にゅるりと亀頭が滑り込む。
「あ…あぁ……」
「よくできました」
そのまま、一気に根元まで押し込んだ。
全体が柔らかな粘膜にみっちりと包まれ、根元が括約筋によってひくひくと断続的に締め付けられる。
かと思うと、腸内がペニスを食い千切らんばかりに締め付け始めた。
「んああぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
悦びの声をあげながら、女が今日何度目かもわからない絶頂に達したのだ。
目の奥でバチバチと白い火花が散り、立っていることもままならなくなるが、男がそれを許さない。
尻たぶをつかんで尻を持ち上げ、そのまま激しく責め立てる。
「うっ、あっ、あぁっ…ああぁあっ…」
女の口はだらしなく開かれ、涎と気の抜けた喘ぎ声しか出てこない。
ずっ、ずちゅっ、ぐちゅぐちゅっ…。
ペニスがかき出した腸液が飛び散り、淫らな音を奏でる。
一突きごとに女の身体を極上の快感が走り抜け、男が壁越しに子宮を擦るたびに最奥から愛液が溢れだした。
意識がとぎれとぎれになってゆく。膝をつき、尻を高々とあげたままぺしゃりと床に崩れ落ちた。
冷えた石が乳首に触れぴりぴりとした刺激を感じるが、彼女はそれを気にすることなく荒い息をついていた。
「おや?もう限界ですか?じゃあ…」
男が一旦自身を引き抜き、女から離れた。
何事かと振り向きたいのだが、身体の自由が利かない。目の端でだけ男が何かを手にしているのが分かる。
男がそれを手にしたまま、女の股に手を回す。
「あ…あに……?」
それが女の陰核に触れた瞬間、絶叫が木霊した。
「あがあぁぁぁぁぁぁっ!」
目をむき、背骨が折れんばかりに身を反らす。すかさずその身体を男が支え、後ろから抱き締めるような体勢をつくった。
ガックリと頭を垂れた女の目に、男の手に握られたそれがハッキリとうつった。
刷毛である。真水をたっぷりと含ませたそれが、陰核に触れたのである。
「ほーら、元気になった」
「あ…あめへ……ふるっひゃう………」
「んー?はっきり言ってくれないと、分かりません…よっと!」
「うあぁあっ!!」
再び男が尻穴を貫き、責めを再開した。
「あ…あぁあ…!………ひ!あ!うあぁ!」
腸壁の中でペニスが滅茶苦茶に動き回り、体内をかき回す。
体中に真水がまぶされ、気が狂いそうな疼きが全身を襲う。
「ん……………あきゃあぁぁぁああぁぁぁぁぁ!!!」
意識が飛ぶと陰核から電撃が走り、逃げる事を許さない。
女は髪を振り乱し、顔を涙と涎でぐちゃぐちゃにしながら、全身から怒涛の勢いで押し寄せる快楽に揉まれた。
「あ、うあ、お、おおきく…なっれるぅ!」
男のペニスが腸内ではち切れんばかりに肥大化し、射精が近い事を女に知らせる。と、そこでぴたりと男が動きを止めた。
彼は手に持った刷毛を放り投げ、自身の人差し指の先を軽く噛み切り、女の目の前に持っていった。
「さ、どうぞ」
「………ふぇ?」
紅い液体がぷっくりと膨らみ、自らの重さに耐えられなくなり、女の目の前で滴り落ちた。
独特の鉄の香りが彼女の鼻孔をくすぐり、無意識のうちにごくりと喉を鳴らさせた。
「飲んで下さい」
「れ、れも……」
飲んでしまったら、タダでは済まない。猿轡の呪縛が薄れてはきているものの、今の吸血の快感は確実に絶頂を呼ぶ…。
そうか、と女は気がついた。
「多分、飲まれると僕は射精しちゃいますよ」
「…そうら」
「でもきっと、貴女もイっちゃいますね」
「………うぅ…」
「誇り高い吸血鬼なのにお尻におちんちん突っ込まれ、射精されながらだらしない顔晒して、イっちゃいますね」
そう言うと、男は円を描くようにゆっくりと腰を動かした。
「んん…あ、あふぁ………」
じんわりとした快感を女に送るが、物足りない。達するには足りない、煮え切らない快感だった。
「ね?でも、僕はそれが見たいんです。だから…」
男の甘い声に促されるように、女は恐る恐る指を口に含んだ。
舌にのせるだけで痺れるような悦びがもたらされる。必死に吸いつき、舐めとり、自分の唾液と混ぜ合わせて飲み下すと、内臓全体が歓喜に震えた。
「ん…ちゅう…ちゅう……んくっ……ちゅう…」
狂ったように男の指をしゃぶる。
少量の血では即座に達することはなかったが、喉を鳴らすごとに快楽が身体に蓄積されていくのがわかった。
「ん…んぐ……ん……ちゅ……」
風船が膨らむようにその感覚がどんどん大きくなる。
それにしたがって腸内でもうねりが激しくなっていった。射精をせがむようにペニスを揉みしだき、時折食い千切らんばかりに締め付ける。更に女がくねくねと腰を躍らせ、ペニスは粘膜の中で弄ばれていた。
だが、男は動かない。
「ん…んああぁ…ああぁぁあ!」
風船が臨界点に達する。絶頂が目前に迫ってきている。
その時、男が腰を引いて雁首までペニスを引き出した。
「お、おおぉぉっ!」
内臓が引きずり出されるような感覚に吠えるような声をあげる女。男はそれを無視して入口を少しこね回してから、一気に奥まで貫いた。
ぱん、と女の中で何かが爆ぜた。
「あああああぁーーーーーーっ!!!」
びゅくっ、どぷどぷどぷっ!びゅぐっ、びゅぐっ!
溶岩が流し込まれているようだった。
腸内が精液で満たされ、尻が焼けるように熱い。だが、それが最高に心地よかった。
「ああ…あついぃ……あついよぉ………」
最後の一滴まで逃さないように腸全体がペニスを締め付け、ぐいぐいと扱く。まるで女の身体がもっと出せと駄々をこねているような、そんな動きだった。
その要望に応えるように一滴残らず精液を注いでから、男は固さを失っていないペニスを引き抜いた。腸内はそれに凄まじい抵抗を示し、亀頭が括約筋の制止を振り切った時にはぽんっと栓を抜いたような音がした。ぱっくりと開いたそこは女の呼吸に合わせてパクパクと喘ぎ、時折白濁液をごぽっと漏らした。
精液が逆流する感覚に身を震わせながら、女は尻を持ち上げたまま崩れ落ちた。
「吸血鬼のお嬢様、起きて下さい。ほら」
「あ……?…ん…なに?」
女が顔を起こすと、男が手に何かを持っていた。細長い、管のようなもの。
「…なに…?……それ」
「お嬢様のお腹の中を綺麗にするんですよ。これでお尻からお腹の中に…」
真水を流し込んでね。
ぶるりと身を震わせる女を見て、男はニヤリと笑った。
「さ、お尻をこっちに見せて下さい」
「…はい」
力の入らない身体を引きずり、床を這いながら女は男に背を向ける。
そして四つん這いになると上体は床に預け、躊躇うこと無く両手で尻たぶを広げて見せた。
「おねがいします…ごしゅじんさまぁ……」
女の顔には、恍惚とした笑みが浮かんでいた。
「また『猟犬』が仕留めたのか」
「ああ。『没落貴族』10人相手に無傷で帰ってきたんだそうだ」
「…奴は本当に人間か?」
「犬は犬でも、我らが領主の犬は地獄の番犬『ガルム』だな…」
周囲の家臣たちが、小声で彼の業績を称える。それを聞いても彼は顔色一つ変えず、主人に傅いている。
鈴のような声が、彼の名を呼んだ。顔をあげよ、とその声は言う。
目の前には漆黒のマントを羽織った主が腕を組んで立っていた。
「此度の働き、誠に見事であった」
「ありがとうございます、お嬢様」
「…妾から、直々に褒美を授ける」
彼が僅かに目を見開くと、主が妖艶に微笑んだ。
「いつもの部屋に…後で来るように」
「はっ」
再び頭を下げる男。
その顔を見る者があれば、喜びに歪んでいたのがわかった筈である。
女が甲高い声をあげた。
冷たかったからではない。驚いたからでもない。…いや、驚いたというのは間違っていないのだが。
彼は続けざまに刷毛を振るって水をかける。
「ふぁっ!ひゃっ!んあっ!」
先程の凄みを利かせた声が嘘のような、艶のある声が石造りの部屋に響いた。
男は器に刷毛を戻し、刷毛に水を含ませた。
「こ……こんなこと…貴様…」
荒い息をつきながら、女が弱々しい抗議をする。その顔は紅潮しており、目も潤んでいる。だが、それが痛みが生んだ物ではない事は、乳首が頭をもたげ始めていることからわかる。
女の下半身がもじもじと動き始めていた。
「どうしました?痛くはないでしょう?痛くは、ね」
男はこの場に不釣り合いなほど爽やかな笑みと共に、容赦なく刷毛を振るった。
「やっ!あっ!あぁっ!っ!」
突然、男は手を止めた。
「………?」
「…ふぅむ」
単調なのは少しつまらない。趣向を変えてみよう。
彼はそう考えた。
刷毛に水を含ませながら女に歩み寄る。彼女から立ちのぼる濃厚な女の香りが、彼の鼻孔をくすぐった。
「な…なにを……」
「大丈夫です。貴女を傷つけやしません」
彼は嬉しそうに笑いながら女の首筋に一筋、刷毛で見えない線をゆっくりと描いた。
「あ…うああああああああ!!!」
それだけの事なのに彼女は目をむき、絶叫と共に体を震わせた。
男が刷毛を肌から離しても、その痙攣はしばらく止まることはなかった。肺の中身を絞り出すように叫んだためか、がっくりと項垂れて苦しげな呼吸を繰り返す。
乳首が先程よりも自己主張を強めていた。痙攣が治まっても、腰のもじもじが止まらない。太腿と太腿をすり合わせ、切なげに震える。
更に男は女の背後に回り、自身の人差し指を水に浸けてからそのまま女の背筋をすっとなぞった。
「あぁぁあうっ!」
短い悲鳴と共に女の体が美しい曲線を描いた。
「おやおや?吸血鬼のお嬢さんは随分とコレがお気に入りのようですね」
「…誰が…」
「そうですか?」
男が脇の下から胸に直接手を回す。白い肌にじっとりとにじんだ汗が男の手と乳房を隙間なく密着させる。全体を優しく撫で、下からたぷたぷと揉みあげると、乳房はより一層熱を帯びた。
「っ〜〜…んっ…くぅ……」
女は屈辱と快感を唇を噛んでこらえる。乳首をつままれ、ころがされると、苦しげに首を振った。
「お固いなぁ。大丈夫ですよ、誰も聞いてない。素直になればいいじゃないですか」
「…げっ、下賤な毛無し猿め……。妾の体に…触れ…るな…っ!」
「あぁ、そうか。気高いお嬢様はこちらの方が好みなんですね」
男は再び銀の器を手に、女の前に立つ。刺すような女の視線を気にも留めず、刷毛を手にした。
「こっちで触られた方が良いですよねぇ」
湿った馬の毛が、僅かに右の乳首に触れた。女があっと鋭い悲鳴をあげた。続けて乳輪をなぞるように動かされると女の背筋に甘い刺激が走り、食いしばった歯の隙間から悦びの呻きが漏れた。乳房の先端が痛いほどに充血していた。
「片っぽだけってのも、ね」
「や、やめ…!」
左の乳首の先に、刷毛が近づく。
「あぁ…」
女の唇から甘い声が漏れた所で、男は手をひっこめた。
「え……?」
なんで、という言葉が口から出そうになり、女は慌てて口をつぐむ。だがそんなこともお見通しの男は意地悪げな笑みをうかべた。
「ん?言われた通り止めたんですが?」
「…っくぅ………」
「こっちにとっちゃ、道具を使うのは味気ないんですよ」
そう言うと男は真水を少量口に含み、女の乳首に顔を近づける。そのまま口の水が漏れないようにしながら、女の充血したそれに吸いついた。
「やっやめろ!離れ…あ、ぐ、うぅぅぅ」
真水を舌で塗り込むようにねっとりと乳首を舐め、ころころところがす。先程とは違う甘い刺激に、女も思わず抗議を止めてしまった。それに気を良くした男は軽く歯で噛んでしごき、ちゅうちゅうと音をたてて吸った。
「だめぇ…かんじゃぁ……。んっ、あっ…すう、なっ…あぁ…」
その声はもはや抵抗ではなく、悦びを語るものでしかなかった。
男はそう確信し、手探りで女の腰を探す。くびれの部分からラインに沿って撫で下ろすと、甘い吐息と共に女が震えた。だが男の手が股の間の蜜壺に触れると、弛緩しきった身体にも緊張が走った。
僅かに溢れた蜜を男の指が拭った所で、女は慌てて腰を引いた。
「だめっ!止めろっ!そこは…そこはだめだ!」
「もう、うるさいなあ。さっきからダメとか止めろとかそればっかりじゃないですか」
男は一旦女から離れると、台に置いてあった布を一枚持ってきた。
布から漂う匂いが女の鼻をくすぐった。彼女は一度だけ嗅いだ事がある。ニンニクの臭いだった。布にはニンニクがしみこませてあるらしい。
「吸血鬼のおしゃぶりには、やっぱりコレですよねぇ」
にや、と男が楽しそうに笑った。
猿轡にするつもりなのだと気付き、女は戦慄した。
確かに、臭いを嗅いだだけで女の内股には一筋の透明な線が出来ていた。子宮のあたりも疼きを伴って熱くなっている。
もしあれをされたら、一体どうなってしまうのか。
それは恐れであり、期待でもあった。
「さ、口を開けて下さい」
「ふっ…ふざけるな!この淫乱猿っ!」
女は歯を食いしばる。だが、男が刷毛で素早く彼女のわき腹をなぞると、その抵抗も無意味である。あっと悦びの声をあげた瞬間、女は差し出されたそれを咥えてしまった。
口の中に嫌な臭いが満ちた途端に女の目がとろりと蕩ける。
「んん…んふぅ……」
ぶるりと身体が悦びに震え、全身が弛緩してしまう。もはや自分の足で立つこともかなわず、縄に身体を預けてぐったりしてしまった。
蜜壺からは触れてもいないのにとくとくと愛液が溢れ、陰唇が切なげにひくひくと震えた。身体は爆発しそうなくらい熱くなり、まるで溶けた金属が身体を廻っているようだ。火照った身体には鼻から入る空気が冷たく感じ、その心地良さで達しそうになる。
「よしよし。大人しくしてえらいですねー」
満足げな男が女の頬を撫でる。それだけで、
「んん!!んぐ、んんん〜〜〜〜〜っ!!」
女の脊髄を暴力的な快感が走り、達してしまう。
塞がれた口の代わりに鼻が酸素を求め、荒い呼吸を繰り返すが逆効果。その呼吸が新たな快楽の波を生み出し、悦びの震えを長引かせる。
にこにこと笑いながら男は蜜壺から愛液をすくいとり、女の眼前につき付ける。
「ほら、見て下さい。貴女のいやらしい蜜が、こんなに」
「ん………ふぅ……ふぅ……」
「しかし、蜜というのは言い得て妙ですねぇ。ほら」
ぬるぬると愛液に塗れた指をすり合わせる。ぱっと指を離すと、二本の指を繋ぐ銀糸がかかった。
「切ないでしょう?もっとして欲しいですか?」
恥丘を軽く押すと、とぷりと愛液があふれた。
女は迷わず首を縦に振った。このままにされたら、きっと狂い死んでしまう。
「…でも、こっちにはもうしてあげません」
その言葉に、女の目が哀願に染まった。
猿轡さえなければ今度は確実に口にしていただろう。なんで、と。
「さっきダメって言われちゃいましたし」
女はぶるぶると首を振った。
「でも、代わりに…」
男が腰が引けた女の尻たぶに優しく触れた。
「こっちをしてあげます」
女にはその言葉が飲み込めなかった。困惑する女を無視し、男が背後に回り込む。
「ある国ではこちらでも性交をするそうです。『下等性交』と言われましてね、畜生にも等しいと蔑まれるんです」
脱力した女の内股をつたう愛液をすくい取り、尻たぶを僅かに広げ、その中心にある窄みをつんつんとつつく。猿轡の効果によって尻穴は既に柔らかくほぐれており、男の指が触れるたびに物欲しげに蠢いた。
「ん!ふっ、ふぅ!ふぅ!」
未知の感覚に女は首を振る事しかできない。
男の指が窄みに僅かに押し込まれ、入口をなぞるように動くと、がくがくとその身体が震えた。
「『下等性交』。どういう事か、わかります?」
ずっぷりと指が根元まで入り込み、腸の粘膜をなでる。先程のどの快楽をもしのぐ感覚が、女の脳を犯した。そのまま男は腸内をこねまわし、無遠慮に腸壁を擦り上げる。いやいやと女は首を振るが、尻はさらなる責めを望むかのように男につきだしている。自ら感じる部分を探すように尻をもじもじと動かしているようにも見える。
彼女の身体と心は、既に尻穴から送られる快楽にどっぷりと浸けられ、ぐちゃぐちゃにされていた。
「ぐっ!んぐぐっ!んぐぅっ〜〜〜〜!!」
かり、と男の指が粘膜を引っ掻いた時、ふいに女の背筋がぐっと反りかえった。
腸壁が指を潰さんばかりにぎゅうっと締め付ける。
「あっはっはっはっはっは!もしかして、お尻でイっちゃいました?」
「んふ……ふっ…ふっ…ふぅっ……」
達しはした、が…まだ物足りない。
「いつも人間を蔑んで、貴族だなんだと威張り腐っているのに…ねぇ?」
そんなの、もう関係ない。もっと、もっと弄ってほしい。もっと中を掻いてほしい。なのに…。
ぬぽっ、と音を立てて指が引き抜かれた。
「ん…?ふんん?ふんん?!」
口を塞がれているために、言葉はわからない。だが代弁するかのように、尻穴がひくひくと物欲しげに口を広げていた。
「よろしければ、もっと太いものを入れてあげますよ」
男はそう言うと、パンパンに膨れた下半身を女の尻に擦りつけた。
尻の谷間に感じる、指とは全く違うそれの熱量と質量に女は切なげな吐息を漏らした。
男はそのままの体勢で懐から小刀を取り出し、女を縛る縄を切った。両手が自由になる。
「でも、物を頼むにはそれなりの礼儀ってものがありますよねぇ」
猿轡が解かれ、ぱらりと石造りの床に落ちた。
彼女を縛るものは、もう何もない。『陽光の灯』こそあるものの、隙をつけば彼の喉笛に噛みつけるかもしれない。
だがそれなのに、自由になれる筈なのに、女は壁に手をついて男の方に尻を突き出した。
自ら尻たぶを片方広げ、湧き上がる恥辱や屈辱をも跳ねのけて叫んだ。
「おねがいします!もっとおおきいのください!いっぱい、いっぱい、つっこんでください!!」
「あっはっはっは!あっはっはっはっはっはっはっは!」
男は怒張しきったペニスをズボンの拘束から解放し、外気にさらす。先走りの溢れるそれを尻穴にあてがいながら、女の耳元で囁く。
「良いんですか?こっちでするという事は、畜生に堕ちるという事ですよ。それでも良いんですか、吸血鬼のお嬢様」
「いい…。いいからぁ…!いれて、きゅうけつきのおしり、ほじってぇっ!!」
「そこまで言ってくれるなんて…」
男がぐっと体重をかけると、にゅるりと亀頭が滑り込む。
「あ…あぁ……」
「よくできました」
そのまま、一気に根元まで押し込んだ。
全体が柔らかな粘膜にみっちりと包まれ、根元が括約筋によってひくひくと断続的に締め付けられる。
かと思うと、腸内がペニスを食い千切らんばかりに締め付け始めた。
「んああぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
悦びの声をあげながら、女が今日何度目かもわからない絶頂に達したのだ。
目の奥でバチバチと白い火花が散り、立っていることもままならなくなるが、男がそれを許さない。
尻たぶをつかんで尻を持ち上げ、そのまま激しく責め立てる。
「うっ、あっ、あぁっ…ああぁあっ…」
女の口はだらしなく開かれ、涎と気の抜けた喘ぎ声しか出てこない。
ずっ、ずちゅっ、ぐちゅぐちゅっ…。
ペニスがかき出した腸液が飛び散り、淫らな音を奏でる。
一突きごとに女の身体を極上の快感が走り抜け、男が壁越しに子宮を擦るたびに最奥から愛液が溢れだした。
意識がとぎれとぎれになってゆく。膝をつき、尻を高々とあげたままぺしゃりと床に崩れ落ちた。
冷えた石が乳首に触れぴりぴりとした刺激を感じるが、彼女はそれを気にすることなく荒い息をついていた。
「おや?もう限界ですか?じゃあ…」
男が一旦自身を引き抜き、女から離れた。
何事かと振り向きたいのだが、身体の自由が利かない。目の端でだけ男が何かを手にしているのが分かる。
男がそれを手にしたまま、女の股に手を回す。
「あ…あに……?」
それが女の陰核に触れた瞬間、絶叫が木霊した。
「あがあぁぁぁぁぁぁっ!」
目をむき、背骨が折れんばかりに身を反らす。すかさずその身体を男が支え、後ろから抱き締めるような体勢をつくった。
ガックリと頭を垂れた女の目に、男の手に握られたそれがハッキリとうつった。
刷毛である。真水をたっぷりと含ませたそれが、陰核に触れたのである。
「ほーら、元気になった」
「あ…あめへ……ふるっひゃう………」
「んー?はっきり言ってくれないと、分かりません…よっと!」
「うあぁあっ!!」
再び男が尻穴を貫き、責めを再開した。
「あ…あぁあ…!………ひ!あ!うあぁ!」
腸壁の中でペニスが滅茶苦茶に動き回り、体内をかき回す。
体中に真水がまぶされ、気が狂いそうな疼きが全身を襲う。
「ん……………あきゃあぁぁぁああぁぁぁぁぁ!!!」
意識が飛ぶと陰核から電撃が走り、逃げる事を許さない。
女は髪を振り乱し、顔を涙と涎でぐちゃぐちゃにしながら、全身から怒涛の勢いで押し寄せる快楽に揉まれた。
「あ、うあ、お、おおきく…なっれるぅ!」
男のペニスが腸内ではち切れんばかりに肥大化し、射精が近い事を女に知らせる。と、そこでぴたりと男が動きを止めた。
彼は手に持った刷毛を放り投げ、自身の人差し指の先を軽く噛み切り、女の目の前に持っていった。
「さ、どうぞ」
「………ふぇ?」
紅い液体がぷっくりと膨らみ、自らの重さに耐えられなくなり、女の目の前で滴り落ちた。
独特の鉄の香りが彼女の鼻孔をくすぐり、無意識のうちにごくりと喉を鳴らさせた。
「飲んで下さい」
「れ、れも……」
飲んでしまったら、タダでは済まない。猿轡の呪縛が薄れてはきているものの、今の吸血の快感は確実に絶頂を呼ぶ…。
そうか、と女は気がついた。
「多分、飲まれると僕は射精しちゃいますよ」
「…そうら」
「でもきっと、貴女もイっちゃいますね」
「………うぅ…」
「誇り高い吸血鬼なのにお尻におちんちん突っ込まれ、射精されながらだらしない顔晒して、イっちゃいますね」
そう言うと、男は円を描くようにゆっくりと腰を動かした。
「んん…あ、あふぁ………」
じんわりとした快感を女に送るが、物足りない。達するには足りない、煮え切らない快感だった。
「ね?でも、僕はそれが見たいんです。だから…」
男の甘い声に促されるように、女は恐る恐る指を口に含んだ。
舌にのせるだけで痺れるような悦びがもたらされる。必死に吸いつき、舐めとり、自分の唾液と混ぜ合わせて飲み下すと、内臓全体が歓喜に震えた。
「ん…ちゅう…ちゅう……んくっ……ちゅう…」
狂ったように男の指をしゃぶる。
少量の血では即座に達することはなかったが、喉を鳴らすごとに快楽が身体に蓄積されていくのがわかった。
「ん…んぐ……ん……ちゅ……」
風船が膨らむようにその感覚がどんどん大きくなる。
それにしたがって腸内でもうねりが激しくなっていった。射精をせがむようにペニスを揉みしだき、時折食い千切らんばかりに締め付ける。更に女がくねくねと腰を躍らせ、ペニスは粘膜の中で弄ばれていた。
だが、男は動かない。
「ん…んああぁ…ああぁぁあ!」
風船が臨界点に達する。絶頂が目前に迫ってきている。
その時、男が腰を引いて雁首までペニスを引き出した。
「お、おおぉぉっ!」
内臓が引きずり出されるような感覚に吠えるような声をあげる女。男はそれを無視して入口を少しこね回してから、一気に奥まで貫いた。
ぱん、と女の中で何かが爆ぜた。
「あああああぁーーーーーーっ!!!」
びゅくっ、どぷどぷどぷっ!びゅぐっ、びゅぐっ!
溶岩が流し込まれているようだった。
腸内が精液で満たされ、尻が焼けるように熱い。だが、それが最高に心地よかった。
「ああ…あついぃ……あついよぉ………」
最後の一滴まで逃さないように腸全体がペニスを締め付け、ぐいぐいと扱く。まるで女の身体がもっと出せと駄々をこねているような、そんな動きだった。
その要望に応えるように一滴残らず精液を注いでから、男は固さを失っていないペニスを引き抜いた。腸内はそれに凄まじい抵抗を示し、亀頭が括約筋の制止を振り切った時にはぽんっと栓を抜いたような音がした。ぱっくりと開いたそこは女の呼吸に合わせてパクパクと喘ぎ、時折白濁液をごぽっと漏らした。
精液が逆流する感覚に身を震わせながら、女は尻を持ち上げたまま崩れ落ちた。
「吸血鬼のお嬢様、起きて下さい。ほら」
「あ……?…ん…なに?」
女が顔を起こすと、男が手に何かを持っていた。細長い、管のようなもの。
「…なに…?……それ」
「お嬢様のお腹の中を綺麗にするんですよ。これでお尻からお腹の中に…」
真水を流し込んでね。
ぶるりと身を震わせる女を見て、男はニヤリと笑った。
「さ、お尻をこっちに見せて下さい」
「…はい」
力の入らない身体を引きずり、床を這いながら女は男に背を向ける。
そして四つん這いになると上体は床に預け、躊躇うこと無く両手で尻たぶを広げて見せた。
「おねがいします…ごしゅじんさまぁ……」
女の顔には、恍惚とした笑みが浮かんでいた。
「また『猟犬』が仕留めたのか」
「ああ。『没落貴族』10人相手に無傷で帰ってきたんだそうだ」
「…奴は本当に人間か?」
「犬は犬でも、我らが領主の犬は地獄の番犬『ガルム』だな…」
周囲の家臣たちが、小声で彼の業績を称える。それを聞いても彼は顔色一つ変えず、主人に傅いている。
鈴のような声が、彼の名を呼んだ。顔をあげよ、とその声は言う。
目の前には漆黒のマントを羽織った主が腕を組んで立っていた。
「此度の働き、誠に見事であった」
「ありがとうございます、お嬢様」
「…妾から、直々に褒美を授ける」
彼が僅かに目を見開くと、主が妖艶に微笑んだ。
「いつもの部屋に…後で来るように」
「はっ」
再び頭を下げる男。
その顔を見る者があれば、喜びに歪んでいたのがわかった筈である。
10/04/10 16:47更新 / 八木
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