死を受け入れた少年とバンシーの慰め
仕方のない事だ。
そう自分に言い聞かせながら少年は暗い森を歩いてた。
彼の家は貧しかった。兄弟ばかりが多く、一日の食事もまともに取れないことが頻繁にあるほどだった。そんな家庭の中で重い病にかかった自分が悪いのだ。医者に見せる金も薬を買う金もない。だから自分が口減らしに捨てられるのは仕方のない事だ。そう自分に言い聞かせた。
まだ背も伸びきっていない、声も少年のままの彼が自分の絶望的な境遇を受け入れていた。これほどの悲劇があるのだろうか。それでも少年は誰に恨みを向けるでもなく、高熱でふらつく足を動かし、全身を襲う痛みに耐え、凍える夜の寒さと体の奥底から湧き上がる寒気に身を震わせながら森の奥へ奥へと進んでいった。
自分が死んでしまった後に誰かに病気がうつったらいけない。自身の死の際でさえそんなことを考え行動する純真さを少年は持って生まれていた。
「あ……っ！」
少年は木の根に足をかけて転んでしまった。立ち上がろうとするが既に全身に力を入れる事すらできなくなっていた。少年は立ち上がるのをあきらめて仰向けになった。頭上には木々が深く生い茂っており、空は見えなかった。
少年の吐く白い息は熱く震えていたが、体温は次第に下がっていった。体の熱を取り戻そうと震えていた体も、かちかちと勝手に鳴っていた歯も、その動きを止めていた。あれほど高い熱を発していた体は芯から冷えていった。
まるで内側から凍り付いていくような感覚に、少年はこのまま自分は死ぬんだろうとぼんやりと考えた。これは仕方のない事だ、最期まで誰かのために行動したからこうして静かに死ねるんだ、オオカミに襲われたりするより何倍もマシな死に方じゃないか。そうやって自分を慰めて死に近づいていく。
（さいごにお月さま、見たかったなあ……）
幼い少年は夜空に光る月に慰めを求めた。
だが、深い森の奥ではそれもかなわなかった。
彼は死を完全に受け入れた。
だが、そんな彼の視界に人影がうつった。
血の気のない白い肌に黒い衣を身にまとっている。衣服のところどころに人間の頭蓋骨のような装飾品も見える。少年が頭の中に真っ先に思い浮かべたのは『死神』という言葉だった。
だが、その美しい死神の頬には涙が伝っていた。小さく美しい嗚咽を漏らしながら死神は静かに泣いていた。自分のせいで泣いているのか、少年は最後の力を振り絞った。
「なか、ないで……」
少年がかすれた声でそう言うと、死神はそっと少年を抱き上げた。死神の体は少年の想像とは違い、温かく柔らかかった。久しく感じていなかった人の温もりに包まれ、少年の頬にも一筋だけ涙が伝った。
「あり、がとう……しにがみ、さん……」
少年は死神の腕の中で穏やかに息を引き取った。
◆
（……？）
少年は奇妙な感覚にとらわれた。見えない何かに自分の意識――魂が引っ張られるようなそんな感覚だった。痛みや恐怖はなかった。ただ、今まで体験したことのない感覚に戸惑っていた。
輪郭がぼやけて滲み、ふわふわと浮いているような少年の意識にある音が響いた。これはなんの音だったか。そうだ、死の際に聞いた小さく美しい声だ。少年がそう気が付くと同時に、少年の意識が肉体と結びついた。まだ視界も思考もぼんやりとしたままだったが、確かに少年の魂は体に戻ってきていた。
少年は粗末な小屋の小さなベッドに寝かされていた。ベッドの上でぼんやりと目を開いている少年を死神が――バンシーと呼ばれる魔物が見下ろしていた。
「う……」
「ああ、よかった……」
少年が意識を取り戻したことを確認すると、バンシーはまた涙を流して小さな嗚咽を漏らした。その声を聞いた瞬間、少年は体にくすぶる熱を感じた。少年は冷たい体に熱が戻って来たのを実感したが、体は動かずぼやけた視界を動かすことしかできなかった。
「んっ……」
「ぐす…ああ、ごめんね……すぐに始めるからね」
何を始めるのだろうかと少年が疑問に思っていると、ぼやけた視界にバンシーの顔が映った。白い肌に尖った耳は彼女が人間ではないことを証明していた。だが、その顔立ちは美しく、その視線は慈愛に満ちていた。貧しく、汗と埃にまみれた大人の男たちと働く事しかしてこなかった少年は、産まれて初めて恋をした。
「あ…う……」
「大丈夫、ぐす…すぐに動けるようになるからね……」
バンシーは静かに涙声でそう言うと、少年の唇に口付けをした。少年は驚き目を見開いたが、動けない体で出来ることはなく、バンシーの優しい口付けの感触に襲われるだけだった。優しく触れては離れ、その度に美しいバンシーと目が合う。それだけで少年は恥ずかしくてくすぐったいようでどうにかなってしまいそうだった。
触れるだけだった口付けは徐々に深くなっていき、バンシーの舌が少年の冷たい口内へと侵入した。彼女の舌が触れたところはまるで命が戻ったかのように熱が生まれた。彼女は何かを擦り込むように、少年へ生命を与えるように少年の小さな口隅々まで舌を這わせていく。
「あっ…んん……」
「んっ、ちゅ……んれ……」
口内に這う舌がぴちゃぴちゃと鳴る音が、脳内に響き渡る。バンシーの舌のぬめついた感触と唾液の温かさが、少年の視界をはっきりとさせていく。それに伴ってバンシーの美しい顔が鮮明になり、少年は顔に熱が集まるのを感じた。
「んっ、ちゅっ、ちゅるう……」
「はっ、あっ……ふぁ……」
「はむ、んんっ、ぷあ……ぐす、もういいかな？」
バンシーは唇を離し、衣服の上から少年の股間に手を触れさせた。少年は自覚していなかったが、既にそこは硬く張り詰め、ぼろのズボンを押し上げ先走りで濡らしていた。バンシーに触れられ、少年も自分の興奮を実感した。
「はあ、あっ……！」
「ぐすっ、くるしそうだね……すぐ楽にしてあげるからね……」
バンシーは少年の頭をなでながら、ゆっくりと彼の衣服を脱がしていった。少年はまだ体を動かすことができず、されるがままだった。動かせるようになった首を振ってみると、バンシーの体が目に映った。
薄く透けた衣服の向こう側に見える豊満な白い体は、性に耐性のない少年の欲情を煽るのに十分すぎるものであった。バンシーが薄い衣服を脱ぎ去り裸体を晒すと、少年のモノはますます硬さと大きさを増し、先走りがあふれ出た。
「こんなにして…ぐす、嬉しい……」
彼女は反り立つ少年のモノを見て、歓喜の涙を流した。バンシーという魔物の特性であるが、彼女の涙は少年の劣情を更に煽った。バンシーは少年の興奮を感じ取り、更に涙を流すと、ゆっくりと少年に馬乗りになった。それから少年の小さいが硬く張り詰めたモノを握り、彼女の秘部に押し当てた。
「うあ、あ……っ！」
「入れ、るね……」
「あっ…ああぅっ……！」
「んんっ……♥」
つぷ、と少年の先端が彼女の中に入ると、バンシーは一気に腰を落とした。根元までしっかりと咥えこむと、バンシーは快感の涙を流した。自身のモノを包み込むぬるついた柔肉の感触と、ぽろぽろと零れ落ちるバンシーの快感の涙が少年の欲を煽りたて、少年は射精した。
「あうっ、ううう〜ッ……！」
「はあっ、あっ、ぐすっ、イっちゃったね……♥」
「あっ、んんっ…んうぅ……！！」
「でもまだ……ぐす、おいで……？♥」
「あっ、ああっ！」
バンシーは少年を抱き起こし、ぎゅっと抱き締めて腰を打ち付け始めた。少年の顔は大きく柔らかな二つの膨らみに挟み込まれてしまった。両の頬を優しく柔らかく圧迫され、少年は息を荒げた。腰を打ち付けるバンシーの体から立ち上る彼女の匂いが鼻腔に注ぎ込まれ、少年は何も考えられずに喘ぐだけだった。
「あっ、あううぅっ、んっ、んああっ」
「ううっ、ぐすっ、気持ちいい……？」
「きもちい、いっ……！」
「ぐすっ、嬉しいよぉ……♥」
「わぷっ、んんっ、〜〜〜〜ッ！！」
さらに強く抱きしめられ胸で顔を圧迫され、彼は柔らかで真っ暗な視界の中で二度目の射精を迎えた。どくどくと精を彼女に注ぎ込んでいるはずなのに、何かを彼女から受け取っているような妙な感覚であり、それがこれ以上ない快感につながっていた。
「んむ、んんんっ、んむうっ」
「はあ、ぐすっ、二回目だね……♥」
「ん、んんっ……！」
「あっ……」
いつの間にか動かせるようになっていた腕を、少年はバンシーの背に回した。気が付けば、少年はかつてのように体を動かせるようになっていた。
「動けたね、ううっ、よかったねえ」
「しにがみ、さん……」
「よかった、本当によかったぁ……！」
ぎゅっと抱き締められ大きな嗚咽を漏らすバンシーに、少年の瞳にも涙が溜まり始めた。少年はすがるように強くバンシーの体に抱き着いた。
「しにがみさん、死神のお姉さんっ……！」
「ううっ、ぐす、どうしたの……」
「う……うわああああんっ！！」
死ぬ直前の絶望を思い出し、少年は大声を上げて泣いた。仕方ないと言い聞かせていたのは現実から目を背けるための手段だった。死の絶望を味わい、そして解放された今、少年の抑え込んできた感情が爆発した。
繋がったまま少年は大声を張り上げて泣いた。バンシーは少年と同じだけ涙を流しながら、しゃくりを上げて泣きじゃくる彼の小さな頭をあやすように撫でた。
「怖っ、かった、怖かったっ、よお！！」
「ああ……そうだよね、ぐす、怖かったよねえ」
「寒っ、くて…痛くてっ……暗くて、怖かった……！」
「うん、うん……」
「怖かった、本当にっ、怖かったよぉ……！」
「そうだね、ぐすっ、そうだよね…でも……」
ぼろぼろと大粒の涙を流す少年をさらに強く抱きしめ、バンシーも少年と同じように泣きながら口を開いた。
「ぐす、もう大丈夫だからね？」
「おねえ、さん……ッ！」
「ほら、もっとあったまろう……？♥」
バンシーの笑顔に心の底から安堵した少年は、今度は彼女の嗚咽や頬を伝う涙に煽られた劣情に襲われた。少年は泣きはらした顔を真っ赤に染め、息を荒げながらバンシーに強く抱き着き、激しく腰を振り始めた。
「あっ♥ ふぁっ♥ ぐす、んぁっ♥」
「おねえさん、おねぇさん……ッ♥」
「あ♥ んんっ♥ そうだよ、たくさん動いてあったまろうね……♥」
「おねえさんはあったかくて、優しくてっ、綺麗でっ」
「ふあっ、あっ、そんなこと……♥」
「ぼくのことぎゅっとしてくれてっ、きもちよくしてくれてっ」
「あう、ぐすっ、んぁあ……っ♥」
「すき、おねえさん、すき……っ♥」
「あああっ♥ ううっ♥ 嬉しいよぉ……♥」
少年が口にする愛の言葉に、バンシーは歓喜の涙を溢れさせた。その涙の雫と喜色にあふれた嗚咽の声が、少年を煽りたて、射精へと導いていく。
「あっ、おねえさっ、出る、出ちゃう……っ！」
「いいんだよ、ひうっ♥ たくさん出して、あったかく気持ちよくなっていいんだよ♥」
「あっ、うあっ、んんっ……――――！」
二人は一部の隙間もなくしっかりと抱き合うと、同時に絶頂を迎えた。少年の小さなものがドクンと跳ねて精を吐き出すたびにバンシーは体を震わせた。少年も一度精を放つごとにより深くバンシーとつながるような気がして、快感と安堵と幸福感に全身を浸していた。
「はぁっ、あっ……おねえ、さ……♥」
「はあ、はあ……ぐす、はあぁ……♥」
長く、長く抱き合ったまま静かに呼気を吐き出していた二人だったが、やがてバンシーがそっと体を離した。弾みでずるりと少年のモノが引き抜かれ、その大きさからは考えられないほどの多量の精液がバンシーの秘部からあふれ出た。
少年は離れていくバンシーに不安げに手を差し伸ばしたが、すぐにその手は彼女の手に包み込まれ、そっと唇が触れ合った。お互いの温かさを伝え合うような優しい口付けだった。
「ん、は……♥」
「んんっ、んっ……♥」
静かに唇が離れると、じわりと温かいものが二人の胸の奥から滲んだ。劣情とは違ったあたたさを感じながら、バンシーは少年を後ろから抱き締めた。押し当てられた柔らかな感触に僅かに昂ぶりを感じたが、少年はそれよりも愛情を感じ取り、安堵の息を吐いた。
ふと、少年の目に月が映った。
死の直前、見たいと願った月が傷だらけの窓ガラスの向こう側に見えた。少年がじっと月を見ていると、バンシーもそれに気が付いて外に目を向けた。
しばらくそうして外を見ていた二人だったが、耳元で聞こえるバンシーの嗚咽に少年のモノはまた硬くなり始めていた。慌てて隠そうとした少年の腕はバンシーに掴まれてしまった。
何かを弁明しようと振り向いた少年の口はバンシーの唇でふさがれ、少年はそのまま押し倒されてしまった。すぐに少年とバンシーの交わる嬌声が、月夜のしじまに小さく響いた。
もう少年が月に慰めを求めることはないだろう。
愛と快感で、永遠に慰めて続けてくれる存在が居るのだから。
そう自分に言い聞かせながら少年は暗い森を歩いてた。
彼の家は貧しかった。兄弟ばかりが多く、一日の食事もまともに取れないことが頻繁にあるほどだった。そんな家庭の中で重い病にかかった自分が悪いのだ。医者に見せる金も薬を買う金もない。だから自分が口減らしに捨てられるのは仕方のない事だ。そう自分に言い聞かせた。
まだ背も伸びきっていない、声も少年のままの彼が自分の絶望的な境遇を受け入れていた。これほどの悲劇があるのだろうか。それでも少年は誰に恨みを向けるでもなく、高熱でふらつく足を動かし、全身を襲う痛みに耐え、凍える夜の寒さと体の奥底から湧き上がる寒気に身を震わせながら森の奥へ奥へと進んでいった。
自分が死んでしまった後に誰かに病気がうつったらいけない。自身の死の際でさえそんなことを考え行動する純真さを少年は持って生まれていた。
「あ……っ！」
少年は木の根に足をかけて転んでしまった。立ち上がろうとするが既に全身に力を入れる事すらできなくなっていた。少年は立ち上がるのをあきらめて仰向けになった。頭上には木々が深く生い茂っており、空は見えなかった。
少年の吐く白い息は熱く震えていたが、体温は次第に下がっていった。体の熱を取り戻そうと震えていた体も、かちかちと勝手に鳴っていた歯も、その動きを止めていた。あれほど高い熱を発していた体は芯から冷えていった。
まるで内側から凍り付いていくような感覚に、少年はこのまま自分は死ぬんだろうとぼんやりと考えた。これは仕方のない事だ、最期まで誰かのために行動したからこうして静かに死ねるんだ、オオカミに襲われたりするより何倍もマシな死に方じゃないか。そうやって自分を慰めて死に近づいていく。
（さいごにお月さま、見たかったなあ……）
幼い少年は夜空に光る月に慰めを求めた。
だが、深い森の奥ではそれもかなわなかった。
彼は死を完全に受け入れた。
だが、そんな彼の視界に人影がうつった。
血の気のない白い肌に黒い衣を身にまとっている。衣服のところどころに人間の頭蓋骨のような装飾品も見える。少年が頭の中に真っ先に思い浮かべたのは『死神』という言葉だった。
だが、その美しい死神の頬には涙が伝っていた。小さく美しい嗚咽を漏らしながら死神は静かに泣いていた。自分のせいで泣いているのか、少年は最後の力を振り絞った。
「なか、ないで……」
少年がかすれた声でそう言うと、死神はそっと少年を抱き上げた。死神の体は少年の想像とは違い、温かく柔らかかった。久しく感じていなかった人の温もりに包まれ、少年の頬にも一筋だけ涙が伝った。
「あり、がとう……しにがみ、さん……」
少年は死神の腕の中で穏やかに息を引き取った。
◆
（……？）
少年は奇妙な感覚にとらわれた。見えない何かに自分の意識――魂が引っ張られるようなそんな感覚だった。痛みや恐怖はなかった。ただ、今まで体験したことのない感覚に戸惑っていた。
輪郭がぼやけて滲み、ふわふわと浮いているような少年の意識にある音が響いた。これはなんの音だったか。そうだ、死の際に聞いた小さく美しい声だ。少年がそう気が付くと同時に、少年の意識が肉体と結びついた。まだ視界も思考もぼんやりとしたままだったが、確かに少年の魂は体に戻ってきていた。
少年は粗末な小屋の小さなベッドに寝かされていた。ベッドの上でぼんやりと目を開いている少年を死神が――バンシーと呼ばれる魔物が見下ろしていた。
「う……」
「ああ、よかった……」
少年が意識を取り戻したことを確認すると、バンシーはまた涙を流して小さな嗚咽を漏らした。その声を聞いた瞬間、少年は体にくすぶる熱を感じた。少年は冷たい体に熱が戻って来たのを実感したが、体は動かずぼやけた視界を動かすことしかできなかった。
「んっ……」
「ぐす…ああ、ごめんね……すぐに始めるからね」
何を始めるのだろうかと少年が疑問に思っていると、ぼやけた視界にバンシーの顔が映った。白い肌に尖った耳は彼女が人間ではないことを証明していた。だが、その顔立ちは美しく、その視線は慈愛に満ちていた。貧しく、汗と埃にまみれた大人の男たちと働く事しかしてこなかった少年は、産まれて初めて恋をした。
「あ…う……」
「大丈夫、ぐす…すぐに動けるようになるからね……」
バンシーは静かに涙声でそう言うと、少年の唇に口付けをした。少年は驚き目を見開いたが、動けない体で出来ることはなく、バンシーの優しい口付けの感触に襲われるだけだった。優しく触れては離れ、その度に美しいバンシーと目が合う。それだけで少年は恥ずかしくてくすぐったいようでどうにかなってしまいそうだった。
触れるだけだった口付けは徐々に深くなっていき、バンシーの舌が少年の冷たい口内へと侵入した。彼女の舌が触れたところはまるで命が戻ったかのように熱が生まれた。彼女は何かを擦り込むように、少年へ生命を与えるように少年の小さな口隅々まで舌を這わせていく。
「あっ…んん……」
「んっ、ちゅ……んれ……」
口内に這う舌がぴちゃぴちゃと鳴る音が、脳内に響き渡る。バンシーの舌のぬめついた感触と唾液の温かさが、少年の視界をはっきりとさせていく。それに伴ってバンシーの美しい顔が鮮明になり、少年は顔に熱が集まるのを感じた。
「んっ、ちゅっ、ちゅるう……」
「はっ、あっ……ふぁ……」
「はむ、んんっ、ぷあ……ぐす、もういいかな？」
バンシーは唇を離し、衣服の上から少年の股間に手を触れさせた。少年は自覚していなかったが、既にそこは硬く張り詰め、ぼろのズボンを押し上げ先走りで濡らしていた。バンシーに触れられ、少年も自分の興奮を実感した。
「はあ、あっ……！」
「ぐすっ、くるしそうだね……すぐ楽にしてあげるからね……」
バンシーは少年の頭をなでながら、ゆっくりと彼の衣服を脱がしていった。少年はまだ体を動かすことができず、されるがままだった。動かせるようになった首を振ってみると、バンシーの体が目に映った。
薄く透けた衣服の向こう側に見える豊満な白い体は、性に耐性のない少年の欲情を煽るのに十分すぎるものであった。バンシーが薄い衣服を脱ぎ去り裸体を晒すと、少年のモノはますます硬さと大きさを増し、先走りがあふれ出た。
「こんなにして…ぐす、嬉しい……」
彼女は反り立つ少年のモノを見て、歓喜の涙を流した。バンシーという魔物の特性であるが、彼女の涙は少年の劣情を更に煽った。バンシーは少年の興奮を感じ取り、更に涙を流すと、ゆっくりと少年に馬乗りになった。それから少年の小さいが硬く張り詰めたモノを握り、彼女の秘部に押し当てた。
「うあ、あ……っ！」
「入れ、るね……」
「あっ…ああぅっ……！」
「んんっ……♥」
つぷ、と少年の先端が彼女の中に入ると、バンシーは一気に腰を落とした。根元までしっかりと咥えこむと、バンシーは快感の涙を流した。自身のモノを包み込むぬるついた柔肉の感触と、ぽろぽろと零れ落ちるバンシーの快感の涙が少年の欲を煽りたて、少年は射精した。
「あうっ、ううう〜ッ……！」
「はあっ、あっ、ぐすっ、イっちゃったね……♥」
「あっ、んんっ…んうぅ……！！」
「でもまだ……ぐす、おいで……？♥」
「あっ、ああっ！」
バンシーは少年を抱き起こし、ぎゅっと抱き締めて腰を打ち付け始めた。少年の顔は大きく柔らかな二つの膨らみに挟み込まれてしまった。両の頬を優しく柔らかく圧迫され、少年は息を荒げた。腰を打ち付けるバンシーの体から立ち上る彼女の匂いが鼻腔に注ぎ込まれ、少年は何も考えられずに喘ぐだけだった。
「あっ、あううぅっ、んっ、んああっ」
「ううっ、ぐすっ、気持ちいい……？」
「きもちい、いっ……！」
「ぐすっ、嬉しいよぉ……♥」
「わぷっ、んんっ、〜〜〜〜ッ！！」
さらに強く抱きしめられ胸で顔を圧迫され、彼は柔らかで真っ暗な視界の中で二度目の射精を迎えた。どくどくと精を彼女に注ぎ込んでいるはずなのに、何かを彼女から受け取っているような妙な感覚であり、それがこれ以上ない快感につながっていた。
「んむ、んんんっ、んむうっ」
「はあ、ぐすっ、二回目だね……♥」
「ん、んんっ……！」
「あっ……」
いつの間にか動かせるようになっていた腕を、少年はバンシーの背に回した。気が付けば、少年はかつてのように体を動かせるようになっていた。
「動けたね、ううっ、よかったねえ」
「しにがみ、さん……」
「よかった、本当によかったぁ……！」
ぎゅっと抱き締められ大きな嗚咽を漏らすバンシーに、少年の瞳にも涙が溜まり始めた。少年はすがるように強くバンシーの体に抱き着いた。
「しにがみさん、死神のお姉さんっ……！」
「ううっ、ぐす、どうしたの……」
「う……うわああああんっ！！」
死ぬ直前の絶望を思い出し、少年は大声を上げて泣いた。仕方ないと言い聞かせていたのは現実から目を背けるための手段だった。死の絶望を味わい、そして解放された今、少年の抑え込んできた感情が爆発した。
繋がったまま少年は大声を張り上げて泣いた。バンシーは少年と同じだけ涙を流しながら、しゃくりを上げて泣きじゃくる彼の小さな頭をあやすように撫でた。
「怖っ、かった、怖かったっ、よお！！」
「ああ……そうだよね、ぐす、怖かったよねえ」
「寒っ、くて…痛くてっ……暗くて、怖かった……！」
「うん、うん……」
「怖かった、本当にっ、怖かったよぉ……！」
「そうだね、ぐすっ、そうだよね…でも……」
ぼろぼろと大粒の涙を流す少年をさらに強く抱きしめ、バンシーも少年と同じように泣きながら口を開いた。
「ぐす、もう大丈夫だからね？」
「おねえ、さん……ッ！」
「ほら、もっとあったまろう……？♥」
バンシーの笑顔に心の底から安堵した少年は、今度は彼女の嗚咽や頬を伝う涙に煽られた劣情に襲われた。少年は泣きはらした顔を真っ赤に染め、息を荒げながらバンシーに強く抱き着き、激しく腰を振り始めた。
「あっ♥ ふぁっ♥ ぐす、んぁっ♥」
「おねえさん、おねぇさん……ッ♥」
「あ♥ んんっ♥ そうだよ、たくさん動いてあったまろうね……♥」
「おねえさんはあったかくて、優しくてっ、綺麗でっ」
「ふあっ、あっ、そんなこと……♥」
「ぼくのことぎゅっとしてくれてっ、きもちよくしてくれてっ」
「あう、ぐすっ、んぁあ……っ♥」
「すき、おねえさん、すき……っ♥」
「あああっ♥ ううっ♥ 嬉しいよぉ……♥」
少年が口にする愛の言葉に、バンシーは歓喜の涙を溢れさせた。その涙の雫と喜色にあふれた嗚咽の声が、少年を煽りたて、射精へと導いていく。
「あっ、おねえさっ、出る、出ちゃう……っ！」
「いいんだよ、ひうっ♥ たくさん出して、あったかく気持ちよくなっていいんだよ♥」
「あっ、うあっ、んんっ……――――！」
二人は一部の隙間もなくしっかりと抱き合うと、同時に絶頂を迎えた。少年の小さなものがドクンと跳ねて精を吐き出すたびにバンシーは体を震わせた。少年も一度精を放つごとにより深くバンシーとつながるような気がして、快感と安堵と幸福感に全身を浸していた。
「はぁっ、あっ……おねえ、さ……♥」
「はあ、はあ……ぐす、はあぁ……♥」
長く、長く抱き合ったまま静かに呼気を吐き出していた二人だったが、やがてバンシーがそっと体を離した。弾みでずるりと少年のモノが引き抜かれ、その大きさからは考えられないほどの多量の精液がバンシーの秘部からあふれ出た。
少年は離れていくバンシーに不安げに手を差し伸ばしたが、すぐにその手は彼女の手に包み込まれ、そっと唇が触れ合った。お互いの温かさを伝え合うような優しい口付けだった。
「ん、は……♥」
「んんっ、んっ……♥」
静かに唇が離れると、じわりと温かいものが二人の胸の奥から滲んだ。劣情とは違ったあたたさを感じながら、バンシーは少年を後ろから抱き締めた。押し当てられた柔らかな感触に僅かに昂ぶりを感じたが、少年はそれよりも愛情を感じ取り、安堵の息を吐いた。
ふと、少年の目に月が映った。
死の直前、見たいと願った月が傷だらけの窓ガラスの向こう側に見えた。少年がじっと月を見ていると、バンシーもそれに気が付いて外に目を向けた。
しばらくそうして外を見ていた二人だったが、耳元で聞こえるバンシーの嗚咽に少年のモノはまた硬くなり始めていた。慌てて隠そうとした少年の腕はバンシーに掴まれてしまった。
何かを弁明しようと振り向いた少年の口はバンシーの唇でふさがれ、少年はそのまま押し倒されてしまった。すぐに少年とバンシーの交わる嬌声が、月夜のしじまに小さく響いた。
もう少年が月に慰めを求めることはないだろう。
愛と快感で、永遠に慰めて続けてくれる存在が居るのだから。
18/12/27 17:38更新 / TakoTako