読切小説
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彼女の匂いに包まれて
「よし、と……」

 お湯を入れていた桶と石鹸を片付け、しっかりと体を拭く。衣類は身に着けず洗濯した下着だけになって椅子に座って待つ。それから時計を確認すると、午後5時を少し過ぎたところだ。ということは、そろそろ彼女が帰って来る。
 比較的静かだった巣の中がにわかに騒がしくなり始める。方々の扉が開かれる音がうっすらと聞こえ、それからすぐにいくつもの女の子の喘ぎ声が聞こえ始める。ああ、まだかな。早く帰ってきて――。

「ただいまぁ〜!!」
「リアさんっ!!」
 
 ぼくは椅子から飛び跳ねるように立ち上がり、リアさんに駆け寄った。大きく手を拾出てくれた彼女の胸に飛び込み、ぎゅっと抱きしめる。しっとりと汗に濡れた彼女のシャツの向こうにある体はぽかぽかと温かく、ぼくの体まであたためてくれるようだった。

「ただいまぁ〜!! ずっと会いたかったよぉ〜」
「ぼくも、ぼくもずっとリアさんの事考えてました……っ!」
「えへへ♥ 嬉しいなあ♥」

 リアさんもぼくをぎゅっと抱き締め返して、嬉しそうに黒い蟻の足をばたつかせる。リアさんはジャイアントアントという魔物娘さんだ。下半身は蟻のようだけど、上半身は人間の女の子と変わりない。

「あは、石鹸の良い匂い……」

 リアさんはぼくの頭に顔を押し付け、すんすんと匂いを嗅いた。ああ、ずるい。ぼくもリアさんの匂いを早く嗅ぎたい。ぼくは彼女を更にぎゅっと抱き締め、素肌に彼女の汗に濡れたシャツを擦りつけおねだりする。

「リアさん、はやく……」
「ん〜? せっかく綺麗にして石鹸の良い匂いになったのにいいの?」
「ぅう……いじわるしないで……」
「ごめん、ごめん! キミがあんまり可愛かったから……♥」

 リアさんはぼくの頭から顔を離すとぼくの顔を上に向かせて、ちゅっとキスをしてくれた。じっとこちらを見つめる青い瞳に、ぼくは胸のドキドキが抑えられない。

「私との約束、ちゃんと守ってくれたもんね?」

 そう、リアさんは帰ってきてすぐぼくとえっちする。だからすぐにできるようパンツだけで待っててと頼まれ、ぼくはその通りにした。だから早く、早く……!

「リアさん、りあさん……っ」
「ちゃんとご褒美あげるからそんなに切ない声出さないで?」

 リアさんはもう一度キスをしてから、ぼくから体を離した。それから上半身を少しそらしてシャツの裾を持ち上げる。むわぁ、と音が聞こえるかと思うほど蒸れたリアさんの肌がシャツの間からみえた。

「はい、おいでぇ♥」

 リアさんの言葉と同時に、ぼくはシャツの隙間に頭から体を押し入れた。おっぱいの辺りまで進み、むんむんと匂い立つリアさんのフェロモンを吸い込むと、ぼくは抑えきれないほどの興奮と、例えようもない幸福感に包まれた。
 普通の良い匂いとは違う、はっきりと体臭と分かる匂いだけど、いつまでも嗅いでいたくなるような匂い。可愛くて柔らかくてえっちなリアさんそのものを匂いにしたような、じっとりと甘い匂い。

「はぁあ……ふぁ、あぁ……♥」
「えへへ♥ もっとぎゅっとしよ……♥」

 サイズのそれほど大きくないシャツを二人で着るようなものだ、いやでもぴったりと体が張り付いてしまう。その上にリアさんは濡れたシャツ越しにぼくを抱きしめる。ぼくの後頭部を濡らすリアさんのシャツのぴっとりした感触に、また興奮してしまう。

「はふ、ふぁ……はぁ、はぁ……っ♥」
「ほら、もっとすーはーして、私の匂い嗅いで♥」

 柔らかなおっぱいの隙間で顔を埋め、擦りつけ、リアさんの匂いを顔全体で感じた。シャツの中で背中に回した腕がじっとりと汗で濡れる。ぷるぷるとぼくの顔を挟み込んでくれるおっぱいのあいだにたらたらと汗が流れ落ち、ぼくの鼻筋に伝う。
 むれむれの暗闇の中、嗅覚と聴覚だけが鋭敏になる。鼻の奥へ入り込む汗の匂い、それに混じった大好きなリアさんの体の匂い、ずりずりくちゅくちゅと音立てるリアさんの汗濡れのシャツの音、しっとりと柔らかく張り付いてくるリアさんの肌、大好きという気持ちで高鳴るぼくたちの鼓動。
 もう一つの感覚が欲しくなって、ぼくは滴る汗を舐めた。すっぱいような甘いような、ずっと舐めていたいような味に、ぼくは逆らえずに何度も何度も流れ落ちてくる汗をぺろぺろと舐め、何度もリアさんの体臭を吸い込む。

「んむ、れろ、すぅ、はぁ、ちゅ、れろ……すぅー……♥」
「んあっ、はぅっ……もう、いたずらっ子にはオシオキだよ♥」

 濡れた布越しにリアさんの声が聞こえ、ぼくの顔の両脇にむにゅむにゅと何度もおっぱいが押し付けられた。リアさんがシャツのうえからおっぱいをぎゅっぎゅと寄せているのだ。

「えい、えいっ♥」
「はぁっ、ふあ……すぅ、はぁ……すぅ、すぅう……♥」

 リアさんのおっぱいがむにゅむにゅと押し付けられる度に、シャツの中の匂いがかき混ぜられ、ねっとりと濃厚なものに変わっていく。やわらかなおっぱいの感触ともやのように濃いリアさんの匂いに、ぼくはただ彼女に抱き着いて匂いを嗅いでいる事しかできなかった。

「んしょ、んしょ……♥」
「はふ、はあっ♥ すぅ、すぅう〜……っ♥」
「えへへ♥ ……えい!」

 リアさんの掛け声と共にぼくは彼女のフェロモンのもやから出されてしまった。新鮮な空気を吸う間もなく、リアさんの唇が押し当てられる。呼吸しようと開けられたぼくの口の隙間から、リアさんの舌が差し込まれる。

「んふ、ちゅ、れろ、れろれろ、んれ……♥」
「ふぁ、んむ、ちゅう……んぅ、んん……♥」

 リアさんのキスは、まるで働きアリがせわしなく動くように舌をぺろぺろと動かす。舌や歯茎、歯列を休みなく舐めまわされ、ぼくは体の力が抜けた。リアさんに支えられながら、ぼくは目を閉じて彼女の舌の感触に集中した。

「んちゅ、んぅ……このままおパンツ脱がしちゃうね……♥」

 口の中から響く水音の隙間から、リアさんの声が聞こえた。応える間もなくぼくの下着がするりと脱がされ、痛いくらいに張り詰めたぼくのあそこが晒される。恥ずかしいという気持ちは興奮ですっかり誤魔化されてしまっていた。
 
「あは♥ これが好きなの……♥」

 リアさんはぼくのパンツを降ろすことに興奮するらしい。彼女曰く「これからえっちするぞ!」って気分になるからだそうだ。ぼくもこれが好きだ、これからリアさんと一緒に気持ちよくなれるから。

「リアさん、ぼくもう……!」
「あせらないで、すぐ挿入れるから……♥」

 ぴとりとぼくの先端がリアさんのあそこに押し付けられる。ぬるりと熱い感触にぼくが吐息を漏らすとリアさんは目を細めて笑い、そのままぼくの腰を抱き寄せるようにして挿入してくれた。
 ぬぷぷ、と熱くぬめったリアさんの中に入れた喜びと快感でぼくは頭が真っ白になった。中はあったかくて、蟻の大群のようなつぶつぶの肉ひだが気持ちよくて、根元まで挿入ったところでぼくは我慢できなくなってしまった。

「あぁっ、はっ……〜〜〜〜――――ッ!」
「あは、はぁん……♥」

 リアさんの匂いでたっぷりと興奮していたからか、ぼくの射精は長く続いた。びくびくとあそこが震えて精を放つたびに、全身をびりびりと快感が駆け巡る。立ったまま繋がり射精し続けるぼくを、リアさんは蕩けた顔でじっと見つめる。

「ああっ、はっ、うぁ……はぁあ……っ」
「びゅくびゅく沢山出たねえ……♥ そんなに気持良かった?」
「う、あ……は、はい……」
「えへへよかったぁ♥ でもまだできるよね?」

 リアさんはそう言うと長い手袋を外した。リアさんの腕の形そのままの手袋がぼくの目の前にくる。長い筒状の手袋の中は外気から遮断され、リアさんの匂いが充満しているだろうということが分かる。

「はぁい、どうぞ♥」
「んぶ、ぅ……っ」
 
 リアさんはぼくの鼻と口に被せるように手袋の穴を押し付けてきた。鼻から息を吸い込めばさっきよりも、もっともっと濃いリアさんの匂い。汗のにおいが強調された頭の芯まで震えるような匂い。

「んぅ、すぅ……うぅっ……っ♥」
「えへへ、どうかな?」
「はぁ、すぅ……はぁふ……すぅう〜……っ♥」
「聞こえてないかなぁ♥」

 嗅ぎたい、もっともっと嗅ぎたい。甘くてすっぱくてえっちで濃い匂い。大好きな人の大好きな匂い。吸えば吸うほど興奮してきて、ぼくのあそこはリアさんの中でむくむくと大きくなっていく。でも、吸えば吸うほど薄れていく。

「すぅ、はぁ、すぅう……あぅ……」
「そんな声出さないで、もうひとつあるよ♥」

 リアさんはもう片方の手袋もぼくにくれた。濃厚な匂いのおかわりに、ぼくの昂ぶりは抑えられなくなっていた。
 
「あはは♥ くんくんしながら腰へこへこ動いてるよ?」

 いつのまにか腰が動いていた。腰を引くとリアさんの中のつぶつぶがぼくのカリ首にひっかかり、ぞくぞくとした快感が背骨を駆けあがる。腰を押し付ければつぶつぶがぼくの亀頭をぞりぞりとなでて快感に体が震える。

「うぅ、すぅうう、はぁ、あぅっ……!」
「恋人の匂いくんくんして、腰へこへこして、幸せだね♥」

 こくこくとぼくが頷くと、リアさんが「かわいい……」と蕩けた声で呟く。匂いの薄れてきた手袋がどけられ、それの代わりにリアさんが上体を捻って腕を上げた。ぼくの眼前に汗に濡れた綺麗な腋が晒される。

「えへへ、ぺろぺろする?」

 リアさんに応える事もせず、ぼくは彼女の脇に舌を当てた。さっきまでの濃厚な匂いがそのまま舌の上に乗っかってきて、口の内側から鼻腔を彼女の匂いで満たす。ぼくはもう我慢ができなくなり、リアさんの腰に腕を回して、べろべろと彼女の脇を舐めまわしながら腰を激しく打ち付けた。

「ひぁっ、あっ、あは、はぁん! そんなに、興奮、したんだ♥」
「リアさんっ、リアさんっ!!」

 リアさんの中はさっきよりも密度を増して、まるでぬるついて柔い蟻の大群に襲われているかのようだった。痛みは全くなく、細かなつぶつぶがぼくのものをぎゅっと締め付けぞりぞりと擦れて、頭がおかしくなりそうな気持よさだった。
 腋を舐めながら必死に腰を打ち付けていると、リアさんの汗の味と匂いが変わっていく。舌にまとわりつくようなその味は、少ししょっぱいけどハチミツなんかより全然甘い。その匂いはこの世のどんな香水より香り高くていつまでも嗅いでいたい。

 リアさんが感じてくれている証拠。
 ぼくはこの味と匂いが世界で一番好きだ。

「あっ、んんっ、ぺろぺろしながらへこへこぬぷぬぷ……気持ちいいね♥」
「んれ……はい、はぃ……! きもち、よすぎて……!」
「私も、ぁっ♥ 私も気持ちいいよ♥ だからもっとへこへこしてぇ♥」

 ぼくたちのしっとりと濡れた肌が擦れ合い、ぼくの汗の匂いと体臭までもリアさんのそれと混ざり、また別の匂いが産まれる。ぼくとリアさんの混じりあった匂いに愛欲が止めどなく溢れる。
 愛欲に任せてぱんぱんと音立てて腰を打ち付ける。ぼくの唾液とリアさんの汗でとろとろになった腋をなおも舐め続ける。ぼくの腰の動きに合わせてリアさんの綺麗な黒髪が揺れ、その先端から汗のしずくがきらきらと飛び散る。

 ああ、なんて綺麗なんだろう。

「あぁっ、はぁん♥ んぅっ♥ ひぁ、ああっ♥」
「はぁっ、ああっ、うあぁっ……んっんっんっ♥」

 気持ち良くなりたい、気持良くしたい。頭の中にはそれしかなくて、腰をぱんぱん打ち付けて、ずりゅずりゅとまとわりついてくるリアさんの膣肉を擦り、少しでも気持ちよくなってもらいたい。でもぼくの頭を塗りつぶすように白い欲望が体の芯から湧き上がってくる。

「ああっ、でる、でちゃうぅ……っ!」
「出してっ♥ 濃いのびゅくびゅく♥ ってしてぇっ♥」
「あぅ、あっ、あ……あああぁあ——ッ♥♥♥」

 びりっとひときわ大きな快感が脳天にむけて駆けあがり、ぼくは射精した。それと同時にリアさんがぼくに唇を押し付け、ぬる、と舌が差し込まれた。肌と肌を触れ合わせ、口づけを交わしながら、ぼくは彼女の中に精を注ぎ込んでいく。
 ぼくが射精する度にリアさんがびくんと体を震わせる。リアさんもイッてくれていると実感出来て、射精の快感に幸福感が上乗せされる。差し込まれた舌は快感のあまりほとんど動かなかったけど、ぼくはそれで十分だった。
 ゆっくりと一定の動きで口内で絡まる舌の感触と味が、刺々しいまでの射精の快感を温かく柔らかなものに変えてくれる。長い長い射精を最後まで気持ちよく出させてくれたリアさんを、もっともっと好きになった。

「んむ、ぷあ……はぁっ、お疲れさま♥」
「リアさんも、おつか、れ……さ、ま……」
「えへへ、気持ちよすぎて足がくがくだよぉ……♥」

 ぴったりと密着したまま、リアさんが頭を撫でてくれる。射精後の時間を温かく優しく彩ってくれるその行動に、ぼくは頬がゆるむのを感じた。リアさんもぼくの顔をみてへにゃりと顔を崩した。

「今日もたくさん出してくれたね、ありがとう♥」
「ぼくのほうこそ……」
「よし、風邪ひく前にお風呂入っちゃおうか」
「う、うん……」

 リアさんとの今日のえっちはこれで終わりなんだと思うと少し寂しかった。まだまわりからはうっすらと喘ぎ声が聞こえ、別室の人たちはまだえっちしてるんだと分かり、それがなんだかずるいなんて思ってしまう。

「また明日も頑張ってお仕事して、汗だくで帰って来るから♥」

 ちゅっと軽くされた口づけでぼくはあっさりと説得され、リアさんのシャツの中から出てお風呂の準備を始めた。二人でお互いの汗を流して、ゆっくりと湯船につかってから夕飯、それから一日働いて疲れたリアさんの体をマッサージ。
 いつもの夜のルーティンを済ませて、リアさんに手招きされて一緒にベッドに入った。リアさんの下半身は大きいからベッドもそれなりの大きさだ。明日もリアさんはお仕事だから早く寝ないと。ベッドの真ん中で体を寄せ合って、ぼくたちは就寝した――。

「……はぁっ、ああっ、リアさんっ♥」
「もっとぉ♥ もっとしてぇ♥」

 ……つもりだったんだけれど、お布団の中に溜まったリアさんの香りでまたぼくは勃起してしまった。それを見逃すリアさんではなく、ベッドの中で布団をかぶったまま2回目のえっちが始まってしまった。

 暗闇の中、リアさんに覆いかぶさり腰を打ちつける。視覚が奪われている中で、嗅覚ばかりが鋭敏になる。ふんわりと外気と遮断されたお布団の中が、ぼくとリアさんの匂いで満たされる。
 ぼくが腰を打ち付ける度に、繋がった部分から甘くて濃い臭気が立ち上り、お布団の中がどんどんえっちな匂いで充満してく。嗅覚を蹂躙され、ぼくの理性はもやがかかったように機能しなくなる。

「ああっ♥ でるっ♥ またでちゃいますぅっ♥」
「何回でも出して♥ 全部私の中にだしてぇっ♥」

 彼女の言葉に誘われるまま、ぼくは射精した。腰を押し付け、彼女の一番奥に届くように精を放つとリアさんは大きな嬌声をあげて体を反らした。中に入っているぼくのアソコが跳ねるのに合わせるように、リアさんはびくびくと体を跳ねさせる。
 射精の勢いが収まると、リアさんは体を弛緩させてベッドにぼふんと体を沈ませた。その振動でお布団の中がリアさんが絶頂した後の体臭に満たされ、ぼくはすぐ興奮してしまう。その後もそれの繰り返しで、何発もリアさんの中に出してしまい、気絶するように眠りについた。

 そのせいでお布団がガビガビになり、翌日の洗濯は苦労した。
21/11/20 22:35更新 / TakoTako

■作者メッセージ
今回はフェチ感出したかったんですが、匂いを文章だけで表現するの難しいですね・・・

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