連載小説
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ホワイトデー 〜So sweet〜
「さてっと・・・」

自宅の台所前にて一人意気込む俺。目の前に並ぶのは
前もって用意してた生地やら容れ物やら
トッピングのクッキーやらクリームやらその他もろもろ・・・
これから作るのはいつもみたいなテキトーにぱぱっと
作りあげるメシとはちがう、気持ちのこめ具合が
出来栄えと同じくらいに大事なものなのだ、気合もそりゃあ入る。
一度台所を離れてリビングをちらり。

「・・・」むすっ

視界の先にいるのはあまりキゲンの良くなさそうな麗。先に言っておくと
ケンカをしましたとかそんなんじゃない。じゃあこの様子は何事なのか
あれはそうロリPOPでのさわぎの後、







「結局店で食べきっちまったな。それも、全部キスで・・・(赤)」

「ま、まだ欲しいのでしたらもう少しだけ待っててくださいね?
家に帰れば材料がまだ残っているはずですので(赤)」

「夕飯近いしまた今度でいいよ;あ、でも次は『あ〜ん』とか位にしてくれるか?
いや嬉しいとは言ったけど次もアレは、その、心臓がもたねぇよ;」

「そ、そうですか・・・少し、残念です。
また真っ赤な顔した太一君が見たかったのですが」くす

「麗だってまっかにして恥ずかしがってただろうが。
嬉しそうな顔してんなよなぁ;・・・ん?家の前なんかあるな?」

「あれは布袋、でしょうか?結構大きいですね」

「袋かぁ、麗がクリスマスにサンガルのカッコで来たの思い出すな」

「その略し方やめてくださいよ;誰かの忘れ物でしょうか?」

「なんか紙がはさんであるな・・・あれ、俺の名前が書いてある?」ちらっ

『太一君へ
クラス一同プラス学校のフレンズからのプレゼントで〜す♪
麗ちゃんと仲良く召し上がれ♥ 代表:平門 小遊』

「・・・中にはお菓子が入っていますね」

「今日のタイミングでってことはこれそうゆうことだよな?
ってか去年のと同じモン入ってるし・・・」

「・・・いただくんですか?」

「う、そりゃあ俺あてなわけだしだれかに流すとか失礼だろ?」

「まぁ、そうですね・・・」むすっ

「う、麗サン?」

示しはしたのですからしかけてくることはもうないと思っていたのに
まだこんなことを、虜の果実が使われたスイーツまであるじゃないですか、
これもお節介とやらのつもりでしょうかまったく・・・
」ぶつぶつ

「あ〜・・・麗がイヤだってんならみんなへのお返しはナシでも・・・」

「・・・ダメですよ?これだけのプレゼント、
ご好意をいただいたんです。何も返さないのは失礼ですよね?」ニッコリ

(め、目が笑ってない;)

「『去年と同じで』手作りでお返しするんでしょう?きっと喜びますね」

「あ、あはは・・・;」



・・・とまぁそんなこんなで迎えたホワイトデー当日、
ロリPOPの時の照れっぷりはどこへやらといった様子の麗さんでございます;
ああでも一ヶ月ずっとごきげんななめだったってわけじゃあなかったぜ?
最初はみんなが味を聞きにきてるのを見たときくらいだったんだが
一週間前くらいから、特に俺がお返しの準備してるのを見た時なんかは
むすっとした顔で見て来てさぁ、正直ちょっと可愛いと思ってたり
・・・ごほんっ、今の俺としては友チョコ的なつもりでやってんだけど
まぁ付き合ってる人が他の子からもお菓子もらっててその上それらに
手作りでお返ししようとしてるのを見てて気分が良いわけないわな。
でもそこで『私以外の人に作らないでください』とは言わないとこが
良い子というか健気というか・・・
何はともあれ今日この日をフキゲンなまま終わってもらいたくはない。
やはりここは思い出パワーを使わせてもらいますかっ!



〜無事完成〜

「お、お待ちどうさま、じゃないか;お待たせいたしました、おじょう様」

「ふふっ、太一君たら執事喫茶とかじゃないんですから」

「いっぺんやってみたかったんだよ(赤)似合わねぇってか?」

「いえいえ、いつかそれらしい服装でまた見てみたいです」

あれから特に失敗とかもなく無事完成したものを
麗の前へサーブ(で合ってるよな?)。出来上がったものは・・・

「まぁ、懐かしいですね」

「お、やっぱ麗にとっても思い出のあるモンだったか」

「それはもう、小学生の頃にたくさんいただきましたからね」

作ったスイーツはカップケーキ。ただ焼き上げただけじゃない、
クッキーやクリーム、フルーツも乗せたりとトッピングましましのひと品だ。
ん?俺がこんなシャレたスイーツ作ったのが意外そうか?
ふふん、何を隠そう俺は料理ができる系男子なのさ。
ガキの頃から親父たちがおそくなりがちってのもあって料理以外にも
色々できる様になっていってな。まぁ小学の頃に麗が遊びに来たついでに
教えてくれたってのがデカいんだけどな。このカップケーキだって
さっき言ってくれた様にたくさん作ったりもらえたりや食べあったり
をやり続けて上手くなったモンだ。まぁあの頃はこんなデカくはなかったんだけどな。
久しぶりに、それも恩人を前にってことではりきり過ぎたかな;
でもまぁ反応からして見た目でイヤってことはなさそうだ、さてお味の方は・・・?

「ん〜♪」

・・・聞くまでもないって感じだな。
翼をパタパタ、ニッコニコの笑顔でごきげんそうに食べてくれている。
ああでもやっぱクリーム盛りすぎだったな;鼻にクリームついてら。

「ほれ麗、鼻先にクリームついてんぞ?」すっ

「あらすいません、私ったらはしたない(照)
やはりと言いますか前より美味しくなっていますね?」

「お、マジ?『昔の方が良かった』とか言われてたらヘコんでたぜ」

「これだけ綺麗に仕上がっていて焦がしていたり
焼けきれていなかったりな頃の方が美味しかったら驚きですよ;」

「おいおい、そればっかってことは無かっただろ?
ちゃんとおいしくできてたモンもあったって;」

「ふふ、懐かしさのあまり色々と思い出したんですよ。
太一君からお願いしてきたのが始まりでしたよね?」

「ああ、あの時は俺だけじゃ上手く作れなかったからさ」

話を聞いていたら俺もなつかしくなってきたなぁ。
きっかけは確かおふくろからの誕生日プレゼントだったか。
作ってもらえたカップケーキがおいしくて、うれしくて、
自分も作ってみようってなったけど一人じゃ失敗ばっかりでさ。
遊びに来てた麗に頼んで教えてもらってもこがしたり
上手くふくらまなかったりと苦労したもんだが、
イヤな顔ひとつもせずに作ってみせたり教えてくれたおかげで
おふくろの誕生日を祝う頃には『おいしい』って言って
もらえるくらいには上手くなったんだよな。

「あん時はおふくろへのお返しのプレゼントだったけど、
今回は麗へのお返しになったんだな」

「『みんなへの』でもありますよね?明日には
皆の口にもこれが入ってしまうんですよね〜?」じと〜

「あ〜;そこばかりは、な?その分といっちゃアレだけど
今日は麗の言う事何でも聞いてやるからさ?」

「・・・今、何でもと言いましたか?」

何気なしに言った『何でもする』って言葉に麗が思ったより食いついてきた。
俺を見る目がキラキラしてるというかギラリとしたというか、
こういうの『目の色が変わった』って言うんだっけか?

「あ、えと、できればお金はかからないお願いで;」

「そんなことには使いませんっ(ぷくぅ)そうですねぇ、
それじゃあまずは『あ〜ん』で食べさせてください?」

急に雰囲気が変わって不安になったがリクエストを聞いて一安心。
まだ残っている内の一つを手にとって麗の口元に持っていく。
麗は鼻先や口まわりにクリームがつくのもかまわず大きな一口でパクリ。
う〜ん、やっぱりフォークとか持って来ときゃよかったかな;

「んふふ♪では私からも、はい太一君?」すっ

「あ、あ〜ん」むぐっ

「あらあら太一君もついてますよ?」ついっ

麗からもケーキを差し出されたので俺も一口・・・うん、うまい。
そして俺の方もクリームがついたみたいで麗が指でぬぐって自分の口にパクリ。
自分がされると結構むずがゆい感じするな;
ってか前に『あ〜ん』くらいにしてくれないかとか
言ったけどコレもコレで何かはずいな;
なんて思いながらも食べさせあいをしている内に
麗の方のケーキにトッピッングにと盛り付けたフルーツたちが
外されて皿に置かれていることにふと気がついた。

「なぁトッピング残してるけどどうしたんだ?もしかしていたんでた?」

「ああ、ちがいますよ?これはですね・・・」

言いながらサクランボを手に取り
口にくわえてこっちに顔を近づけてきて、
あれこれってまさか・・・

「ふむっ」

「むぐっ;」

バレンタインデーの衝撃再び;
サクランボといっしょに口先に当たるのはふにふにぷるりな麗の唇。
すぐ後にサクランボを押し込むようにぬるりと入り込んでくる麗の舌。
ちろちろと俺の歯の先や舌の先に当たってくる感触ががが・・・!

「(すっ)えへへ、お味はいかがでしたか?(真っ赤)」

「ト、トテモオイシカッタデス、ハイ(真っ赤)」

前にもあったなこのやりとり;いやだってホントこんなんされたら
ろくに味わかんないんだって。今回はサクランボだけだからまだわかったけど。
ああ、イキイキと次を用意しようとしてる;

「よくわからなかったのでしたらもう一度・・・」

「ちょ、ちょっとタンマ;あの時言ったじゃん、これは心臓がもたねぇって;」

「あらあら、ですがつい先程こうも言ってましたよね?
『何でもお願いを聞いてやる』って♪」にんまり

そう言いながら見せた麗の表情は彼女にしちゃめずらしい
何なら初めて見るくらいの意地悪そうなニンマリとした笑顔だった。
こいつこんな顔もできたんだな、やべぇ結構ドキッとした;

「そりゃ言ったけどさ・・・」

「・・・もっと、示さなきゃって思うんですよ」

「え?」

「皆さんからいただいたものって大体手作りだったじゃないですか?
もしかするとまだ諦めてないヒトがいるかもとそう考えずにはいられないんです」

「あぁ・・・なぁ麗、俺は・・・」

「わかっていますよ?杞憂かもしれませんし太一君も私を差し置いて
他の子にうつつを抜かす人ではないことはわかっているつもりです。
でもあんなの見せられたら、不安になるじゃないですか」むすっ

さっきまでのニンマリしてた笑顔から一転してむすっとした表情に戻った麗。
不安、か。そりゃそうだよな。仲良くしてるのを見てたって言ってたもんな。
まぁもしホントに俺のことが好きな子が他にいたら麗のあt、いやや気持ちに負けじと
想いを伝えてくるもんだと思うんだが。それにどっちにしても・・・

(あ、でもそういえば・・・)

「でも、やっぱり太一君の優しさにかこつけてヤキモチ押し付けるなんて
良くないですよね。すみません、やっぱりもう少し控えめに・・・(ぐっ)え?」

だきっ

「ふえっ!?た、太一君、どうしました?(赤)」

「それくらい俺のこと大好きってことだろ?
迷惑だなんて思ってない、うれしいよ。悪いのは俺の方だ。
ちゃんと気持ち伝えきってなかったよ、ゴメンな?
ここで言わせてくれ、もし本当に俺のことが好きな子が他にいたとしても
俺は麗一筋だってもう決めてる、俺のお嫁さんになるのは麗だけだよ」

「ふぁあ、そん、な、今、言ってくれる、なんて、あうう」ぷしゅ〜

湯気が出ちゃってるくらいにあたふたした
様子を見せる麗についくすりとしてしまう。
流石にいきなり過ぎたかな?でも気持ちは伝わったんだろう、
むすっとしてた顔が照れながらも笑顔になってる。

「はずかしくて日和ってたのもゴメン、もう一度言わせてくれ。
今日は麗のしたいこと言ってみてくれ?何でも聞くよ」

「えっと、それじゃあ、いえ、これよりは・・・」

ディープキスでも何でも来い!と思って言ったけど
麗は違うことを思いついたのかフルーツを一度皿にもどして
俺のふところに潜りこんできてすっぽりおさまる様に座りこんで・・・

「こ、これをお菓子の時だけじゃなくて晩御飯の時もお願いします。
あ、『あ〜ん』も続けてくださると、うれしいのですが?」ちら

っ!も〜う、こちとらさっきのを最後までってつもりだってのに
急にどしたんその可愛いお願い?イヤじゃないようれしいけどさぁ、
何だよそんな下から覗き込むようにおねだりとか仕草まで可愛らしすぎんよ?
あ〜もう今俺だらしない顔してない?してるんだろうなぁ、
見てる麗がニヤつくのをおさえようとしてる顔してるもん。

「も、もう、これでも真剣にお願いしてるんですよ?
そのニマニマした笑顔は何ですか?」ニマニマ

「え〜?そりゃ麗だっておんなじだろう?」ニマニマ

・・・まぁ何はともあれ麗の機嫌が直ってくれたようで良かった。
ムスっとした顔も、とか思ったけどやっぱり女の子は笑顔が一番だもんなっ!
24/03/14 22:38更新 / うたたねこっくりk
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■作者メッセージ
ここまで読んでいただきありがとうございました。
一度投稿しておきながら展開等に我ながら納得がいかず
結果大幅に書き直しをすることにしました。

本編に加えこれ以前のお話にあった『匂わせ』部分も省いて
ハーレムルートを取りやめ麗とのカップルストーリーとして
改めてお話を進めることといたしました。

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