連載小説
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5章
「このバカちんがっ!」

酒の入った瓶を割れるくらいの力で置くテ・キーラ、その目の先には海流の流れに負けたガレノアの姿があった。

「め、面目ねぇです・・・」

しゅんと落ち込むガレノア。

「という事は今あの荒れた海の中に彩登君が!」

駈け出し背中の翼を広げるカラステングのリニッシュ。
しかし一本のタコ足を使いリニッシュの足首を持つ。

「は、離してください!」

「バカを言うんじゃないよ!あんな荒れたあんな天候でもし雷に打たれたらどうするんだい!」

「それは、その時です!」

一向に行こうとするリニッシュ、しかしそれに負けじと両足首にタコ足を絡めていく。

「全くあんたみたいなバカは嫌いじゃあないよ?でもねもし彩登が帰ってきてあんたが居なかったらどうするんだい!?きっと彩登はあんたを探しに行くよ絶対!」

「う・・・そ、それは・・・」

彩登の性格を考えて、一番説得のある言葉を出したテ・キーラ。

「だから・・・今は待つんだわかったね?」

「・・・はい」

背中の翼をしまいとぼとぼと甲板の隅っこに座るリニッシュ。

「オラァ海に潜れるやつは海に潜りな!!・・・死ぬんじゃないよ彩登」

心配しつつ人魚の海を見つめるテ・キーラ。

※ ※ ※                         ※ ※ ※

それはまだ、彩登とリニッシュがケンタウロスバスに乗り込む前。

「おい、これに乗らなきゃマジでダメなのか?」

「ええ、多少揺れますが1日で着くんですよ?ケンタウロスバスは」

「絶対に多少じゃないよなこれ?」

完全に疑いの目でリニッシュを見る彩登。

「まぁ細かい事はいいじゃないですかさぁ乗りましょう♪」

なんだか嬉しそうな顔でバスに乗り込もうとすると。

「あ、彩登様〜ま、待ってくださいだ〜」

ふと乗り込むのをやめ自分の名を呼んだ方を見ると、河童娘のオトネが走ってこっちに向かってくる。

「お、オトネどうしたんだ」

「ど、どうしたんだじゃないっぺひどいべ一言言ってくれればお見送りしたのに」

「わ、悪い急いでたんだ」

「急いでいったぺかそれなら仕方ないっぺ・・・でも彩登様に渡したい物があるっぺ」

オトネは自分の首に着けていた首飾りを外し彩登に渡すオトネ、その首飾りには犬笛のような小さい笛が付いていた。

「こんな豪華な首飾りもらっていいのか?」

見た目はとても高価な物に彩登は見えた、しかしオトネは首を横に振る。

「いいんだこれはオラの先祖が海鈴様を呼ぶために使ってたらしいけんど今じゃもう使う事がないんだ・・・だから彩登様にが持っててくれ」

彩登の手にギュッと持たせるオトネ。

「すみません、そろそろ出発したいんですけど」

一人のケンタウロスの女性が上半身を曲げ彩登に話す。

「あ、ごめんなさいじゃあこれもらっとくぜオトネ」

「はいだ!彩登様道中気を付けて」

バスに乗り込み、リニッシュの隣に座ると同時にケンタウロスバスは一気に走りだした。

「・・・海鈴様・・・どうか彩登様を守ってけろ・・・」

※ ※ ※                         ※ ※ ※

「・・・ん・・・あ、あれ・・・」

目が覚めたら鍾乳洞の様な所にいた。

「・・・お、俺生きてる・・・」

身体に異常がないか、顔、身体、腕、足を触る。

「・・・異常なし・・・ってかここは何処だ」

幸い中は明るく1本道の様に先に続いていた。

そしてその場で胡坐(あぐら)をかいて考え始める。

「さてと・・・Q君は潰れてなくなったし、後ろには多分海に続いてるんだろうけど戻る事は出来ない・・・って事は道は一つしかないな」

立ち上がり決心して歩き始める。

「さて何が出るかな・・・」

ガサガサ・・・ガサガサ・・・

「・・・」

歩いてすぐに付けられているのがわかりさらに。

「うふふ、気づいてないみたい私って尾行の天才かも」

明らかにばればれなくらいな声を出しているので彩登は一旦立ち留まり。

「???あ、ぎ、擬態しなきゃ」

謎の少女は擬態とか言って擬態するが、彩登は一目散に走り出す。

「あ、えちょっと待ってよぉぉぉぉ、あ」

ズべぇぇぇ・・・っと豪快にこける。

「・・・う、こけた・・・痛いよぉぉぉぉぉうえーーん」

「・・・はぁ・・・」

走るのをやめ、歩いて謎の少女に近づく彩登そしてしゃがんで少女を見る。

「おい、大丈夫か?立てるか」

「うぇぇーん」

「おいおい泣くな泣くな・・・ほらこけたとこ見せて」

「う・・・ぐすん、う、うん」

立ち上がり擦り剥いたところを見せる。

「なんだよこんくらいで泣くなよ?よし俺が痛みが無くなるおまじないをしてやるよ」

「お、おまじない?」

「ああ、いいか痛いの痛いの・・・飛んでけーーー!!」

「あれ、い、痛くないよ!凄い凄い!!」

マジかよっと思いながら少女を見る彩登。

「よかったな・・・で、お前はなんだ?」

「え・・・あ!」

気づいたのか少し離れ岩に擬態する。

「いやいやもう遅いし・・・」

「うう・・・私とした事がぁ・・・尾行に気づかれるなんて・・・」

「尾行も何も最初からわかってたからな」

「えーーー」

ガガーーーンっというショックと驚く顔をする少女。

「そうとう自信があったのかよ・・・まぁいいや、俺急ぐからじゃあな」

「ま、待ってください」

力強い言葉で彩登を引きとめる少女。

「な、なんだよ俺は急いでるんだけど?」

「あ、貴方・・・人間という種族なんですよね?」

「!?な、なんでそれを」

いきなり自分の正体を知られ少し驚く彩登。

「わ、私の祖母が言ってましたから・・・付いて来てください」

彩登の前を通る少女。

「貴方に合わせたい人がいます」

「合わせたい人・・・」

「はい、きっと貴方の探している人ですよ」

「ほ、本当か!?」

「ええ、あ私はデイズ、カリュブディズです」

「俺は香澄彩登」

「彩登さんですねでは行きましょうか」

デイズに案内を任せついていく彩登。

「君は・・・俺が人間だってなんでわかったんだ?」

「それはですね、彩登さんの首に掛けている勾玉でわかりました」

「勾玉?これの事か」

首に付けている勾玉をデイズ見せる。

「それです、その勾玉を付けた人間は私達魔物と認証させる効力があります」

「そうだったのか・・・それで会わせたい人ってのは?」

「ここです」

気づけば鍾乳洞の中に不自然な扉があった。

「じゃあ入りましょうか」

率先して扉のを開けるデイズ、勝手に入っていいのか?と思いつつとりあえず後に続く彩登、扉の中は鍾乳洞の中とは思えないほど本、本、本の山だった。

「こんにちはーフキセさーん」

本棚の一列、一列を確認しながら進んでいくデイズ一方の彩登は本の多さに目を疑いながら、ゆっくりと歩いて行く。

「あれーいないのかなー・・・?フキセさーーーん!!」

大きな声で名を呼ぶデイズすると、何処からがさがさという音が鳴る。

「な・・・なんじゃやかましいふぁぁぁ・・・」

すると少し歩いたところに床にあった大量の本の山から、人が起きあがる。

「あ〜フキセさんまた本の中で寝て、風邪ひいちゃいますよ?」

歩み寄り本を踏まないように近づくデイズ。

「仕方なかろう、儂(わし)にとって本は命と同等の価値がるんじゃ」

「でもこんなところで寝るのはダメだと思います」

「五月蝿い儂の勝手じゃろうが阿呆小娘がっ!!」

「う・・・ひどいですぅぅぅ」

するとデイズの目から涙が出てくる。

「!?お、おい泣くな!泣くでないぞ」

「う・・・うぇぇぇぇーーーーーーーーん」

大きな声で再び泣きだすデイズ、そしてそのすぐ横にいたフキセは耳を抑える。

「しまった・・・儂とした事が」

すると泣き声を聴こえた方へ向かって慌てて走ってデイズが泣いているを見た彩登、そして睨むようにフキセを見つめる。

「・・・」

「な、なんじゃその人を哀れむ目は!やめい小童」

「あ、ごめんなさい」

つい謝ってしまう彩登、そして泣きながら彩登に近づくデイズ。

「彩登ぉぉぉさぁぁぁん」

彩登を抱きしめるデイズ、そしてその頭を撫でる彩登。

「よしよしいい子いい子」

「なんじゃ儂が、儂が悪いのか!?」

「そりゃ・・・な」

「ええい、わかった儂が悪かった、謝るから泣くのをやめぇぇぇい」

※ ※ ※                         ※ ※ ※

デイズが泣き止み床に落ちた本の片づけを手伝う二人。

「これ小童それはそっちではないぞ!」

「え、違うのか」

「その本の上から3番目、1番右端から2つ目のところじゃ」

フキセの言われた通りの場所に行く彩登。

「っていうか俺この世界の字読めないしそもそもフキセさんに会いに来たんですけど!?」

「ぬ、そうなのか・・・まぁ本を本棚に片付くまで手伝え」

「そ、そんな」

渋々本の整理整頓をしていくと約2時間で片づけは終わった。

「お、終わった」

「終わりましたね」

「ふむ、助かったぞデイズに小童、じゃあ適当にテーブル席に座ろうかの」

少し歩き、椅子とテーブル席のあるところで座る3人。

「さてと・・・小童、名は確か彩登と言ったか?」

「は、はい」

「そういえばまだ名を名乗ってなかったのう、儂はネレイスのフキセじゃ小童は儂に会いたかったんじゃろう?」

「あ、ああここなら俺がいた世界に戻る方法があると思って来たんだ」

「そうか・・・」

言うか言わないか迷う表情を見せるフキセ。

「そんなに難しいのか?元の世界に戻るのは」

「ああ、難しいのう・・・そもそも小童、この世界にどうやって来た?」

「え・・・た、確か家の物置小屋で色々と物置から出してたんだそんで、なんか光る鏡を拾って・・・そしたらこっちの世界に」

「やはりな・・・まさか小童の世界にあったとはな・・・」

???完全に話の意図がわからない彩登。

「こほん、順に話すとのうおぬしが拾った鏡は反魔の手鏡と呼ばれる鏡でな、それはこの世界と小童の世界を繋ぐ、いわば通行道具だ」

「通行道具・・・なんでそんなもんが爺ちゃんの物置小屋に?」

「それは儂もしらん、それで反魔の手鏡は今は何処にあるんじゃ?」

「え・・・」

何言ってるんだこの人?と言わんばかりの反応をする彩登。

「え、ではない反魔の手鏡持ってるじゃろう」

「・・・」

「まさか・・・小童よ・・・無くした、とは言わんじゃろうな?」

身体が固まり目をそらす彩登。

「・・・この・・・」

すぅぅぅぅぅっと空気を吸うフキセ、そして慌てて耳をふさぐデイズ。

「愚か者がァァァァァァァァァァ!!!!」

大声で叫ぶフキセ、その声の大きさに彩登も耳をふさぐ。

「小童!よいか反魔の手鏡でこの世界に来た、つまり帰りも必要になるじゃろうが!このバカ者がぁぁ!!」

「んなこと言われても・・・」

「なんじゃまだ文句あるのか?」

「いえありません」

これ以上反論すると怖いので、ひとまず文句はないとアピールする。

「あのぉ・・・思ったんですけど」

そして若干忘れていたデイズに目を向ける、彩登とフキセ。

「結局彩登さんはどうやって帰るんです?」

「そうだよ、百歩譲って手鏡がいるのはわかったでもまだどうやって帰るかを聞いてないぜ?」

「・・・そうじゃな・・・こほん」

咳払いをして冷静さを取り戻すフキセ。

「よいか、小童があっちの世界に戻る方法はたった1つ4大精霊の力を借りるしかない」

「4大・・・精霊?」

「そうじゃ」

「ってなんだ?」

「4大精霊というのは火の元素、水の元素、風の元素、土元素に生命が宿った方達の事です」

「そうじゃ火の精霊イグニス、水の精霊ウンディーネ、風の精霊シルフ、土の精霊ノームそれぞれの精霊から力を借りるしかない」

「借りるしかないか・・・で?」

「で?」

「どうやって4大精霊に会うんだ?」

「知らん」

きっぱり答えるフキセ、そしてデイズを見ると明らかに知りませんという顔をしていた。

「おいおいこんな前途多難なのは勘弁して欲しいんだけど・・・」

はぁとため息が出てしまう彩登。

「せっかくここまで来たのに情報が手に入れただけかよ・・・」

どうかしてやりたいフキセとデイズ、そして頷き合い立ち上がる。

「小童よ、4大全ての精霊は無理じゃが・・・水の精霊、ウンディーネには会わせられるかもしれん」

「え・・・本当か?」

「はい、私達の力と、彩登さんの力があれば・・・多分」

「ただしやる、やらないは小童自身が決める事じゃぞ?」

「そんなの答えは決まってる、やるに決まってるじゃないか」

「ふ・・・その心意気やよし、付いて来い」

自分たちの力と、彩登の力でどうやってウンディーネに会うのか・・・次回に続く。









「・・・あれ私の出番・・・なし!?」

続く
12/04/18 05:45更新 / さわ
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■作者メッセージ
やっと・・・やっと・・・出来ました
さて恒例行事行きましょうか
12人目カリュブディズ、デイズ正直名前に困りました・・・
13人目ネレイス、フキセ口調は儂というちょっと変わった喋り方のネレイスにしてみました、もしイメージ合わないと思った方はごめんなさい><
今回はここまでですが大変お待たせしてしまい本当に申し訳ありません

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