馴れ初め
雪によって銀世界へと変えられた森。その中に建つ鬼灯色の屋根もその雪の中が積もり隠され、雪が崩れ落ちた端の方にその面影を僅かにうかがえた。
「まっこと、恩に着るっ!」
青白い髪の男が胡座で座り、両手を拳にして前に付き頭を下げてそう言った。
頭を下げている相手は黒髪の男と三尾の妖狐。男はファーの付いたコートを着ており、長めの髪の毛を後ろで束ねていた。
「いいえ、依頼だったし。こっちも色々やりたいこともあったから。
あの後別れたから名前聞いてなかったわね?」
「失敬、俺は幟狼(シロウ)。聞いたと思うが『十六夜の銀狼』の頭だ。
この度はこの命を救ってもらった上に、あんなことまでしてもらって…」
『あんなこと』とは龍瞳と魅月尾が幟狼を助けた晩まで話を戻さなくてはならない。
あの夜、6人は屋敷から逃走し町まで下りてきた。町まで着た6人はそのあとの事と幟狼の手当ての事を考え、そこで別れることとなった。
乎弥たち四人はそのまま町を出て拠点の一つへと去り、龍瞳と魅月尾は町の闇へ姿を眩ました。
その夜、町を巡回していた保安の一人は路地裏から延びる白い腕を見つけた。
「なんだ?」
と保安は剣の柄を掴みながらその白い腕が引っ込んだ路地裏に近づき、一気に覗き込んだ。
しかしそこには人影はなく、その路地裏の地面の上に何枚かの髪が重ねられ、小石で重しをされていた。保安の騎士はその紙の一枚を手にとって驚いた。
その一番上に置かれた紙には次のように書かれていた。
『これ、すなわちステンリン伯爵の非人道の行いを示す物。
麻薬、劇薬を不正に売りさばき、また魔物を奴隷として売りさばいた証拠である。
これを信ずるなら屋敷へ行かれるがよし。
十六夜の銀狼の協力者』
コレを見た保安はその書類を抱え、詰め所へ駆けていったのである。
それを屋根の上から見ていた龍瞳を魅月尾は互いに顔を見合わせて微笑み合った。
「この事が切っ掛けで、今日ステンリンの屋敷へハウラント領主が自ら赴いたそうだ。
他の領主や国との合同で捜査が進んでるらしい、奴隷になってた魔物達、まだ捕まっていた魔物達も近々開放されるだろう。
本当に、何から何まで…」
「そう、よかったわ。これでこそ私も行った甲斐があったってところね」
魅月尾はフフフと笑った。
「にしても、まさかあんたがな…」
龍瞳は意外そうに言った。龍瞳と幟狼が思い出すのは、夏になる前のあの日、靄の中に沈んだ森の中ですれ違ったあの時。
「あの時は、俺たちの偽物がいるって言うんでな。まぁちょいと懲らしめに行ったんだが…
着いてみれば気ぃ失ってる奴とか、斬られて動けない奴とか…まぁやられてたって事だ。それもあんただろ?」
「ああ。仕事の依頼でな」
「二人がその時擦れ違っただけだとしても、会っていたのは運命かもね」
「運命、かどうかは知らねぇが…俺は偶然ってのを信じない主義でね」
「『全ては人の成す結果…』」
「『変えること可能なれど、変えられること神すら少なし』」
龍瞳は幟狼のその言葉を聞いて驚いた。
「知ってるのか?」
「ああ。まぁな」
「…なんだか僕も運命を信じたくなったよ」
「ふふふふ…」
「ははは…」
「にっひひ…」
三人は自然と笑い、誰から言い出したのか分からないが『飲もう』と言うことになった。
三人は雪景色の見える二階へ上がり、少し温めた酒を丸いガラスの椀に注いだ。障子を開ければその枠の中には白と青の世界が続いていた。
「〜っ、うまいっ」
「ほんとねぇ〜。
あ、そうだ、一応依頼だったから報酬貰わないといけないんだけど…」
魅月尾が思い出していった。
「あ〜、そっか…
じゃあ今度コレより良い酒持ってくるってのは?」
「期待してるわね」
「おう、任せとけ」
幟狼は親指を立てた。
やがてみんな酔いが回ってきて、どこからどういう話になったのか幟狼の仲間の話になった。
「乎弥ちゃんて何歳なの?」
「乎弥か?たしか今年で15になったんだったかな…仲間に入ったのは六年前だから九つの時か…」
「どこで会ったんだ?」
「乎弥と会ったのは俺たちの仕事の帰りだ。
…雨が酷い日でな、土砂が崩れやすくなってたんだろう…土砂崩れに巻き込まれた乎弥と、乎弥の両親を見つけたんだ。
俺たちは乎弥と両親をスラムの病院まで運んだんだ。まぁスラムとは言ってもちゃんとした医者はいるからな。
けど両親は酷い状態でな…手術が終わって危険な状態が続いて、そう、三日四日ぐらい意識が無かった。
目が覚めるや否や虫の息で、二人揃って『娘を頼む』って一言言って…」
「亡くなったのね…」
魅月尾はそう言った。彼女も龍瞳も話に聞き入っていた。そして幟狼は酒を一口飲むとまた続けた。
「ああ。乎弥も割と重傷で、歩けるようになるまでに半年かかった。
俺たちは酷だとは思ったが、変に隠すのも悪いと思って乎弥にその事を伝えた。
まぁ結果は当然、ショックを受けて大号泣だよな。側にいた俺も、晶孝とボルトスも辛かったわな…
落ち着いたとこで、俺たちが義賊だってのを伝えてどうするかは乎弥自身が決めることだって言ったんだ」
「…それで?」
「歩けるようになった時に、俺たちの所に来てな。何にも言やぁしなかったけど、言いたいことは分かったよ。
それで乎弥の治り具合に合わせて色々なことを教えてやったよ、ホントに色々、な。
するとビックリしたことによ、あいつは体内で魔力を操るのが天才的だった…」
「体内で?」
「だから、人であったもあそこまでの身体能力があるのね」
「どういう事だ?」
龍瞳は魅月尾に訊ねた。
「魔力を上手く操れば身体能力を飛躍的に上げることが出来るわ。龍瞳様も私の近くにいて身体能力が上がったでしょ?それも魔力が細胞を活性化させている結果よ。
龍瞳様と乎弥ちゃんの違うところは、龍瞳様は常に活性化が行われているけれど、乎弥ちゃんは意識しない限り身体能力は全くの人並みってことね」
「そういうことだ。まぁコレはしめしめと思って、乎弥にあった戦い方も調べてな。ジパング地方にいる『忍』って奴らの戦闘方が合うみたいだった。
まぁそれからずっと一緒な訳だ。
晶孝とボルトスも最初から知り合ってた訳じゃないが、今じゃ昔からの馴染みも同然な感じだ」
「そう、それがあなた達の馴れ初めね」
魅月尾は酒をクイッと飲んだ。それに続いて二人も酒を飲み干し、ふぅと一息。
「それで?二人の馴れ初めは」
「ん、僕たちの?」
「…私と龍瞳様が出逢ったのは今年の春の下旬頃よ。雨の日の夜だったわ…」
「そう、僕が雨宿り出来るところを探してたら、ここの家の灯りが目にはいったんだ。それが始まりさ…
その晩はここに止めて貰うことにしたんだけど、妖狐だって言うのに気付いてなかったから、襲われかけたっけな?」
「…そうなんだぁ…失敗しちゃったけど。
逆に襲われちゃって…」
「ほう、逆に?」
「詳しく聞くか?」
「ちょ…っ!」
魅月尾は慌てて龍瞳に飛びかかった。
「ダメだから、ぜっっったいダメだからねっ!」
「わ、分かってるよ。冗談だって…」
「ヒッヒッヒッ…」
幟狼は面白そうに笑った。
その時、窓の外に広がる白い世界で何かが動いた様子があった。三人はそれに気づき、魅月尾が気配を探った。
「…噂をすれば、ね」
「ボス、なにやってるんですか?!」
乎弥が窓の外の屋根に着地し、幟狼を見るなり言った。
「なにって…飲んでるんだけど?
乎弥も飲むか?」
「何言ってるんですか、そろそろ戻ってください」
「え〜〜」
「え〜〜、じゃなくてっ!」
乎弥は窓から中に身を乗り出した。
「…はぁ、わかったよ。二人とも、本当にありがとう、邪魔したな」
「ああ、今度は手見上げ楽しみにしてるよ」
「おう」
幟狼は一回へ下りると、玄関に向かった。
「では、おじゃましました。また、何かあったらお願いできますか?」
「ええ。依頼は喜んで受けるわ。まぁ、そうじゃなくても遊びに来てね」
「はいっ」
乎弥は笑顔で返事をした。そして下に飛び降りようとした瞬間、乎弥は見事に足を滑らせた。
「きゃあっ!」
どさっと、積もった雪の上に尻餅を付いた。
「あ〜あ…」
「いったたたた…」
龍瞳は下を覗いた。すると、玄関から出てきた幟狼がお尻をさする乎弥をお姫様抱っこで持ち上げていた。
「えっ?あ、ぼ、ボス?!」
「じゃあな、二人とも」
幟狼は二階を見上げて挨拶した。
「ああ、また」
「またね、二人とも」
龍瞳と魅月尾は二人に手を振った。
幟狼は彼女を抱えたまま森の中へ向かって跳んだ。
「あ、あの、ボス…」
「ん?」
「こ、このままですか?」
「いや?」
「いえ…」
乎弥は少し顔を赤くした。
その夜、魅月尾と龍瞳は身体を重ねていた。
「…龍瞳様…」
「…ん?」
「私を初めて見た時…どう思いました?」
「え?」
「私と初めて会った時、なんて思いました?」
龍瞳は少し考えて、自分の胸に頭を置く魅月尾を一層抱き寄せた。
「…綺麗な人だと思った。どういう意味でっていうのはなくて、単純に」
「じゃあ…」
魅月尾は龍瞳の顔を見上げた。
「ありのままの私と、変化した私、どっちが好きですか?」
「…変化した君は清楚でいいし、ありのままの君はとても魅力的だ…
どっちが好きかって言うと…」
「んっ…」
魅月尾は突如唇を塞がれた。
「…どっちもかな」
「…ずるい」
龍瞳は魅月尾のボディラインを撫で上げた。すると、魅月尾はくすぐったいのか、それとも感じているのか、恍惚な表情を浮かべた。
「君の身体よりマシだろ?」
「やぁんっ!」
「なんだ?…内股を少しなぞっただけだぞ?」
「分かんないけど…いつもより………お酒のせいかな?んっ―」
龍瞳は突然キスをした。
「―はぁ、さぁね。で、魅月尾は僕の身体目当てだった?」
「違うっ、それだけじゃないっ!」
「へぇ、じゃあなんなの?」
「それは…」
魅月尾はあの日のことを思い出していた。
その日は朝から雨の降りそうな雲行き。夜になるや、とうとう降り始めてしまった。
魅月尾は湯船の湯が沸くまでの間、雨音に耳を澄ませて、情緒に浸るのもいいと思った。彼女は玄関の隣の部屋で壁にもたれ掛かって目を閉じていた。
すると雨音に混じってバシャバシャ、たまにカランコロンという音が聞こえてくる。
(足音…下駄、かしら…)
足音はだんだんと近づいて来て、やがてとても近いところで足音は止んだ。外に人の気配を感じて、魅月尾は変化して障子をそっと開けた。
龍瞳は、障子を開けてすぐに声をかけてきたと思ってるだろうが、事実は違う。
魅月尾はそっと障子を開けて覗き、そこにいた人にしばらくの間見入ってしまった。
しっとりとした美しい黒髪。たくましさを感じさせながらも、どこか女性を思わせるような美しい顔立ち。彼は掌でまだ服に染み込んでいない水玉を払っていた。
魅月尾は彼に一目で惚れてしまった。魔力で人を虜にするはずの魔物が、人の、魔力とは違う何かの虜になってしまった。
「どなたですか?」
この一言にこれほどまでに勇気が要ったことはなかった。
「はっきりとは…分かりません…。けど一目見た瞬間から、胸が苦しくて、ドキドキして…」
「…一目惚れ?」
「…はい」
「…ねぇ」
「はい…?」
「一回呼び捨てにしてよ」
「え?」
「ね、いいから…」
魅月尾は少し黙ってから
「り、龍…瞳…」
と、初めて呼び捨てにして呼んだ。
「…魅月尾」
「んっ―」
龍瞳は魅月尾を抱きしめキスをした。そして唇を離すと、魅月尾の秘部の穴に陰茎をゆっくりと突き入れた。
「んんっ…あんっ…やぁっ、やんっ、いやぁっ、だめっ―」
龍瞳の腰の動きはだんだんと激しくなっていった。
「そんな…激し…突いた…らぁあぁんっ―!」
「魅月尾っ、僕はっ…!」
「龍瞳っ、龍瞳っ…私…」
「魅月尾っ、僕は魅月尾が…」
「ふぇっ…?」
「好きだ、大好きだ。ずっと僕の側にいてほしい…!」
「私も…私も好きっ、龍瞳とっ、一緒にいたいっ!」
「魅月尾…」
「ああっ!ダメッ、もう、イッちゃうッ!」
「魅月尾…愛してるっ!」
「んああぁンッ―!」
魅月尾は身体を揺らし、龍瞳の精を受け止めた。
「ハァ…ハァ…龍瞳様…、私も愛してます…」
「魅月尾…」
二人は熱いキスを交わした。
「まっこと、恩に着るっ!」
青白い髪の男が胡座で座り、両手を拳にして前に付き頭を下げてそう言った。
頭を下げている相手は黒髪の男と三尾の妖狐。男はファーの付いたコートを着ており、長めの髪の毛を後ろで束ねていた。
「いいえ、依頼だったし。こっちも色々やりたいこともあったから。
あの後別れたから名前聞いてなかったわね?」
「失敬、俺は幟狼(シロウ)。聞いたと思うが『十六夜の銀狼』の頭だ。
この度はこの命を救ってもらった上に、あんなことまでしてもらって…」
『あんなこと』とは龍瞳と魅月尾が幟狼を助けた晩まで話を戻さなくてはならない。
あの夜、6人は屋敷から逃走し町まで下りてきた。町まで着た6人はそのあとの事と幟狼の手当ての事を考え、そこで別れることとなった。
乎弥たち四人はそのまま町を出て拠点の一つへと去り、龍瞳と魅月尾は町の闇へ姿を眩ました。
その夜、町を巡回していた保安の一人は路地裏から延びる白い腕を見つけた。
「なんだ?」
と保安は剣の柄を掴みながらその白い腕が引っ込んだ路地裏に近づき、一気に覗き込んだ。
しかしそこには人影はなく、その路地裏の地面の上に何枚かの髪が重ねられ、小石で重しをされていた。保安の騎士はその紙の一枚を手にとって驚いた。
その一番上に置かれた紙には次のように書かれていた。
『これ、すなわちステンリン伯爵の非人道の行いを示す物。
麻薬、劇薬を不正に売りさばき、また魔物を奴隷として売りさばいた証拠である。
これを信ずるなら屋敷へ行かれるがよし。
十六夜の銀狼の協力者』
コレを見た保安はその書類を抱え、詰め所へ駆けていったのである。
それを屋根の上から見ていた龍瞳を魅月尾は互いに顔を見合わせて微笑み合った。
「この事が切っ掛けで、今日ステンリンの屋敷へハウラント領主が自ら赴いたそうだ。
他の領主や国との合同で捜査が進んでるらしい、奴隷になってた魔物達、まだ捕まっていた魔物達も近々開放されるだろう。
本当に、何から何まで…」
「そう、よかったわ。これでこそ私も行った甲斐があったってところね」
魅月尾はフフフと笑った。
「にしても、まさかあんたがな…」
龍瞳は意外そうに言った。龍瞳と幟狼が思い出すのは、夏になる前のあの日、靄の中に沈んだ森の中ですれ違ったあの時。
「あの時は、俺たちの偽物がいるって言うんでな。まぁちょいと懲らしめに行ったんだが…
着いてみれば気ぃ失ってる奴とか、斬られて動けない奴とか…まぁやられてたって事だ。それもあんただろ?」
「ああ。仕事の依頼でな」
「二人がその時擦れ違っただけだとしても、会っていたのは運命かもね」
「運命、かどうかは知らねぇが…俺は偶然ってのを信じない主義でね」
「『全ては人の成す結果…』」
「『変えること可能なれど、変えられること神すら少なし』」
龍瞳は幟狼のその言葉を聞いて驚いた。
「知ってるのか?」
「ああ。まぁな」
「…なんだか僕も運命を信じたくなったよ」
「ふふふふ…」
「ははは…」
「にっひひ…」
三人は自然と笑い、誰から言い出したのか分からないが『飲もう』と言うことになった。
三人は雪景色の見える二階へ上がり、少し温めた酒を丸いガラスの椀に注いだ。障子を開ければその枠の中には白と青の世界が続いていた。
「〜っ、うまいっ」
「ほんとねぇ〜。
あ、そうだ、一応依頼だったから報酬貰わないといけないんだけど…」
魅月尾が思い出していった。
「あ〜、そっか…
じゃあ今度コレより良い酒持ってくるってのは?」
「期待してるわね」
「おう、任せとけ」
幟狼は親指を立てた。
やがてみんな酔いが回ってきて、どこからどういう話になったのか幟狼の仲間の話になった。
「乎弥ちゃんて何歳なの?」
「乎弥か?たしか今年で15になったんだったかな…仲間に入ったのは六年前だから九つの時か…」
「どこで会ったんだ?」
「乎弥と会ったのは俺たちの仕事の帰りだ。
…雨が酷い日でな、土砂が崩れやすくなってたんだろう…土砂崩れに巻き込まれた乎弥と、乎弥の両親を見つけたんだ。
俺たちは乎弥と両親をスラムの病院まで運んだんだ。まぁスラムとは言ってもちゃんとした医者はいるからな。
けど両親は酷い状態でな…手術が終わって危険な状態が続いて、そう、三日四日ぐらい意識が無かった。
目が覚めるや否や虫の息で、二人揃って『娘を頼む』って一言言って…」
「亡くなったのね…」
魅月尾はそう言った。彼女も龍瞳も話に聞き入っていた。そして幟狼は酒を一口飲むとまた続けた。
「ああ。乎弥も割と重傷で、歩けるようになるまでに半年かかった。
俺たちは酷だとは思ったが、変に隠すのも悪いと思って乎弥にその事を伝えた。
まぁ結果は当然、ショックを受けて大号泣だよな。側にいた俺も、晶孝とボルトスも辛かったわな…
落ち着いたとこで、俺たちが義賊だってのを伝えてどうするかは乎弥自身が決めることだって言ったんだ」
「…それで?」
「歩けるようになった時に、俺たちの所に来てな。何にも言やぁしなかったけど、言いたいことは分かったよ。
それで乎弥の治り具合に合わせて色々なことを教えてやったよ、ホントに色々、な。
するとビックリしたことによ、あいつは体内で魔力を操るのが天才的だった…」
「体内で?」
「だから、人であったもあそこまでの身体能力があるのね」
「どういう事だ?」
龍瞳は魅月尾に訊ねた。
「魔力を上手く操れば身体能力を飛躍的に上げることが出来るわ。龍瞳様も私の近くにいて身体能力が上がったでしょ?それも魔力が細胞を活性化させている結果よ。
龍瞳様と乎弥ちゃんの違うところは、龍瞳様は常に活性化が行われているけれど、乎弥ちゃんは意識しない限り身体能力は全くの人並みってことね」
「そういうことだ。まぁコレはしめしめと思って、乎弥にあった戦い方も調べてな。ジパング地方にいる『忍』って奴らの戦闘方が合うみたいだった。
まぁそれからずっと一緒な訳だ。
晶孝とボルトスも最初から知り合ってた訳じゃないが、今じゃ昔からの馴染みも同然な感じだ」
「そう、それがあなた達の馴れ初めね」
魅月尾は酒をクイッと飲んだ。それに続いて二人も酒を飲み干し、ふぅと一息。
「それで?二人の馴れ初めは」
「ん、僕たちの?」
「…私と龍瞳様が出逢ったのは今年の春の下旬頃よ。雨の日の夜だったわ…」
「そう、僕が雨宿り出来るところを探してたら、ここの家の灯りが目にはいったんだ。それが始まりさ…
その晩はここに止めて貰うことにしたんだけど、妖狐だって言うのに気付いてなかったから、襲われかけたっけな?」
「…そうなんだぁ…失敗しちゃったけど。
逆に襲われちゃって…」
「ほう、逆に?」
「詳しく聞くか?」
「ちょ…っ!」
魅月尾は慌てて龍瞳に飛びかかった。
「ダメだから、ぜっっったいダメだからねっ!」
「わ、分かってるよ。冗談だって…」
「ヒッヒッヒッ…」
幟狼は面白そうに笑った。
その時、窓の外に広がる白い世界で何かが動いた様子があった。三人はそれに気づき、魅月尾が気配を探った。
「…噂をすれば、ね」
「ボス、なにやってるんですか?!」
乎弥が窓の外の屋根に着地し、幟狼を見るなり言った。
「なにって…飲んでるんだけど?
乎弥も飲むか?」
「何言ってるんですか、そろそろ戻ってください」
「え〜〜」
「え〜〜、じゃなくてっ!」
乎弥は窓から中に身を乗り出した。
「…はぁ、わかったよ。二人とも、本当にありがとう、邪魔したな」
「ああ、今度は手見上げ楽しみにしてるよ」
「おう」
幟狼は一回へ下りると、玄関に向かった。
「では、おじゃましました。また、何かあったらお願いできますか?」
「ええ。依頼は喜んで受けるわ。まぁ、そうじゃなくても遊びに来てね」
「はいっ」
乎弥は笑顔で返事をした。そして下に飛び降りようとした瞬間、乎弥は見事に足を滑らせた。
「きゃあっ!」
どさっと、積もった雪の上に尻餅を付いた。
「あ〜あ…」
「いったたたた…」
龍瞳は下を覗いた。すると、玄関から出てきた幟狼がお尻をさする乎弥をお姫様抱っこで持ち上げていた。
「えっ?あ、ぼ、ボス?!」
「じゃあな、二人とも」
幟狼は二階を見上げて挨拶した。
「ああ、また」
「またね、二人とも」
龍瞳と魅月尾は二人に手を振った。
幟狼は彼女を抱えたまま森の中へ向かって跳んだ。
「あ、あの、ボス…」
「ん?」
「こ、このままですか?」
「いや?」
「いえ…」
乎弥は少し顔を赤くした。
その夜、魅月尾と龍瞳は身体を重ねていた。
「…龍瞳様…」
「…ん?」
「私を初めて見た時…どう思いました?」
「え?」
「私と初めて会った時、なんて思いました?」
龍瞳は少し考えて、自分の胸に頭を置く魅月尾を一層抱き寄せた。
「…綺麗な人だと思った。どういう意味でっていうのはなくて、単純に」
「じゃあ…」
魅月尾は龍瞳の顔を見上げた。
「ありのままの私と、変化した私、どっちが好きですか?」
「…変化した君は清楚でいいし、ありのままの君はとても魅力的だ…
どっちが好きかって言うと…」
「んっ…」
魅月尾は突如唇を塞がれた。
「…どっちもかな」
「…ずるい」
龍瞳は魅月尾のボディラインを撫で上げた。すると、魅月尾はくすぐったいのか、それとも感じているのか、恍惚な表情を浮かべた。
「君の身体よりマシだろ?」
「やぁんっ!」
「なんだ?…内股を少しなぞっただけだぞ?」
「分かんないけど…いつもより………お酒のせいかな?んっ―」
龍瞳は突然キスをした。
「―はぁ、さぁね。で、魅月尾は僕の身体目当てだった?」
「違うっ、それだけじゃないっ!」
「へぇ、じゃあなんなの?」
「それは…」
魅月尾はあの日のことを思い出していた。
その日は朝から雨の降りそうな雲行き。夜になるや、とうとう降り始めてしまった。
魅月尾は湯船の湯が沸くまでの間、雨音に耳を澄ませて、情緒に浸るのもいいと思った。彼女は玄関の隣の部屋で壁にもたれ掛かって目を閉じていた。
すると雨音に混じってバシャバシャ、たまにカランコロンという音が聞こえてくる。
(足音…下駄、かしら…)
足音はだんだんと近づいて来て、やがてとても近いところで足音は止んだ。外に人の気配を感じて、魅月尾は変化して障子をそっと開けた。
龍瞳は、障子を開けてすぐに声をかけてきたと思ってるだろうが、事実は違う。
魅月尾はそっと障子を開けて覗き、そこにいた人にしばらくの間見入ってしまった。
しっとりとした美しい黒髪。たくましさを感じさせながらも、どこか女性を思わせるような美しい顔立ち。彼は掌でまだ服に染み込んでいない水玉を払っていた。
魅月尾は彼に一目で惚れてしまった。魔力で人を虜にするはずの魔物が、人の、魔力とは違う何かの虜になってしまった。
「どなたですか?」
この一言にこれほどまでに勇気が要ったことはなかった。
「はっきりとは…分かりません…。けど一目見た瞬間から、胸が苦しくて、ドキドキして…」
「…一目惚れ?」
「…はい」
「…ねぇ」
「はい…?」
「一回呼び捨てにしてよ」
「え?」
「ね、いいから…」
魅月尾は少し黙ってから
「り、龍…瞳…」
と、初めて呼び捨てにして呼んだ。
「…魅月尾」
「んっ―」
龍瞳は魅月尾を抱きしめキスをした。そして唇を離すと、魅月尾の秘部の穴に陰茎をゆっくりと突き入れた。
「んんっ…あんっ…やぁっ、やんっ、いやぁっ、だめっ―」
龍瞳の腰の動きはだんだんと激しくなっていった。
「そんな…激し…突いた…らぁあぁんっ―!」
「魅月尾っ、僕はっ…!」
「龍瞳っ、龍瞳っ…私…」
「魅月尾っ、僕は魅月尾が…」
「ふぇっ…?」
「好きだ、大好きだ。ずっと僕の側にいてほしい…!」
「私も…私も好きっ、龍瞳とっ、一緒にいたいっ!」
「魅月尾…」
「ああっ!ダメッ、もう、イッちゃうッ!」
「魅月尾…愛してるっ!」
「んああぁンッ―!」
魅月尾は身体を揺らし、龍瞳の精を受け止めた。
「ハァ…ハァ…龍瞳様…、私も愛してます…」
「魅月尾…」
二人は熱いキスを交わした。
10/06/26 00:09更新 / アバロンU世
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