ノースビレッジを発って３日目。トーマ達はそのまま南東の方角へ下り、次の町へたどり着こうとしていた。
　辺りは相変わらず草原と林が広がり、緩やかな勾配が続いていた。
　いつもより小刻みに休憩をはさんでいるとはいえ、フィアは野宿や歩きによる長距離の移動にも根を上げることなく付いて来ていた。
　勾配の先、小高い崖の上に来ると、眼下には町が広がっていた。
「やっと見えたな」
　トーマが町を見下ろしながら一息つく。
「ええ。フィア、大丈夫？」
「うん、平気」
　一行は再び歩を進め、道なりに崖を下り町に入った。
「うわ…魔物の人たちがたくさん…」
　フィアは初めて見る多くの魔物たちに少々困惑気味だ。とはいっても、サキュバスやワーキャットなど、人里に馴染んでいる種族がほとんどで、種族として種類が当別多いわけでもない。
「そうね。アルシュフォード領内でも、この辺りは中の方だから」
　ストリートを進み、宿を探しているその最中もフィアは擦れ違う魔物たちをつい目で追っていた。

　そうしている内に宿が見つかり、一行はチェックインすると一まず同じ部屋に集まった。
「今日と明日はここで体を休めて、明後日の午前中に出発しよう。みんな、それでかまわないか？」
　トレアがそう言うと、キャスがそっと手を挙げた。
「キャス、どうした？」
「急で悪いんだけど、今日と明日僕とお兄ちゃん別行動を取るよ」
「おや、お２人とも何か用事でもあんの？」
「うん。今晩都合のいいことに黒ミサがあるんだ。ちょっと行ってこようと思って」
「ああ、そういうこと」
「なるほど」
　ミラとノルヴィだけが納得し、残りの３人はその意味を得られずにいた。
「あ〜…約３名ほど意味が解ってないっぽいけど、まあそういうことだから」
「ほな、そゆことで♪」
　と言ってキャスとフィムの２人は部屋を出て行った。

　トーマはミラに訊ねた。
「なぁ、黒ミサって言うのは…？」
「えっと…そうねぇ…定期的に開かれる…そう、集会みたいなものね」
　ミラは奥歯に物が挟まったような口調でそう言ったのだが、その理由は言わずもがな。乱交パーティーチックな物なのだからしょうがない。
「集会ね…でも、どうして都合がいいの？」
　そう言いつつ、フィアはベッドに腰を掛けた。
「バフォメット様がいらっしゃるのよ」
「ああ、そう言うことか」
　トレアはここでようやく合点が言ったようだ。
「バフォメット様？…って誰？」
　フィアが訊ねると、ノルヴィが解説を始める。
「まぁ簡単に言えばバフォメットってなぁ、あのちびっ子たちの親玉みたいなもんさ。
　バフォメットってのは種族名で、本当はそれぞれ名前があるらしいんだが彼女たち自身があまりそれを表に出さないらしい」
「バフォメット様は魔物の中でも上位で、ドラゴンやエキドナと並んで強い魔力を持つわ。もしこれから起こる戦争に手を貸してもらえるならこれほど心強いことはないわ」
　トーマとフィアはその話を聞いて、どのような人物なのだろうと想像していた。

　−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

　その街から遠く離れた、多くの人が場所を知らぬ泉の畔にキャスとフィムはいた。キャスの魔術で転送されてきたのだ。
「暗ッ…」
　フィムの第一声。
　辺りは真っ暗で、薄く光が届くほどしかない。辺りは歪な形の木々が並ぶ森で、しんと凪いだ丸い泉が目の前にあった。
「なんや…まるで夜みたいやなぁ…」
「ここは常夜の森っていうんだ。だから、みたいじゃなくて夜なんだよ」
　キャスはそう言いつつ杖を出現させる。
　フィムは不思議そうな顔で彼女に訊ねた。
「常夜て…要はずっと夜ゆうことやろ？魔法か何かか？」
「ううん。この森は、周りを岩に囲まれてるんだ。それもぐるっと３６０度。だからむしろ薄明るい方が魔法だよ、木々自体がかすかに魔力で光ってるんだ」
　彼女はそう言うと、泉に近づき呪文を唱える。

「エルアグア　コモラヴェリハ　チェラダ・アキエスエル　ラパルエダ・アグランダ　ラマネラ…」

　呪文に呼応するように泉は青白く光り、蒸発でもしてしまっているかのように水が徐々に無くなり始めた。
　泉は透き通っていて、泉の底も見ることができていた。だが、先程までは底にはなかったアーチが水が消えるとともに姿を見せた。
「キャス…これは…？」
「ミサの会場の入り口。さっき唱えたのは特別な呪文なんだ」
　キャスは足元から続く階段を下りていく。それに付いてフィムも階段を下り、アーチをくぐった。

　アーチをくぐると景色は一変した。大きく広い屋敷のエントランスのような空間が広がり、魔女たちと彼女たちの『おにいちゃん』となった男性たちがいた。
　すると、魔女の１人が２人に気付き声をかけてきた。
「あら…ずいぶん色気のない格好ね？どうしたっていうの？」
　キャスの今の格好は目深に被った帽子にローブというもの。対してここに居る多くの魔女やその他の魔物たちは一様に、可愛くも露出が多い淫らさを感じさせる物だ。
「僕が何を着てたって僕の勝手だよ…」
「あら、あなたボクっ子なのね。おにいさんっていい趣味してるのねぇ♪」
　彼女はニカッと笑いながらフィムに言った。
「ん？…お、おう。まあな…」
　さすがのフィムも困惑しつつそう返した。
　その時また１人の魔女が２人の元にやってきた。
「あなたがキャサリン？」
「そうだよ。僕だ」
「バフォ様がお呼びよ」
　それはキャスの予想通りだった。自分が来たことなど彼女には手に取るようにわかるはずだ、と彼女は思っていた。
　キャスはその呼び出しに応じることにした。
「…そう…わかった。けど、フィムは…？」
「フィムにい様は、バフォ様とキャサリンの要件が済むまでこちらで『お楽しみ』ください…」
　その魔女の笑みはどことなく何かを含んだ笑顔だ。まぁ、どういう意味かはフィムにもわかっている。
「俺のことやったら気にせんでええわ。行ってきぃ」
「…うん」
「こっち、付いて来て」
　そう言うとその魔女とキャスは奥の大階段を上って行った。

　キャスが案内されたのはバフォメットの執務室兼自室だった。
　キングサイズの天蓋が付いたベッドとデスクやソファーが置かれた広い部屋に入ると、案内してきた魔女は「では」とデスクに座るバフォメットに一礼して席を外した。
　部屋の中にはバフォメットの魔力が充満していた。

「大よそ５０年ぶりかのぉ、キャサリン…」
　ドアがバフォメットの意思により閉じられる。
　そして彼女はゆっくりとその高い椅子から飛び降りるように降りると、ゆっくりキャスに近寄った。
「そうだね…僕が魔女になった時以来だから…」
「まぁ掛けるがよい」
　キャスはソファーに腰掛け、バフォメットも向かい側に腰掛けた。
「お前がここに来るというのは、サバトの思想に同調したということかの？」
「まさか…。僕はあくまで魔力と時間が欲しくて魔女になった。それは変わらないよ」
「ならば何故かのぉ？」
　バフォメットは薄ら笑みを浮かべながら訊ねた。
「大切な用があってきたんだけど、でもまさか、こんなに早く謁見できるとは思ってなかったよ」
「久しく見ておらん顔じゃったからのぉ…嬉しくて堪らなかったのじゃよ」
　明らかに嫌味だと思いつつも、キャスは話を切り出そうとする。
「そう。それでその用だけど…」
「まぁ待て、キャサリン…」
　バフォメットはそう言って立ち上がった。
「なに…？」
「お主…まさか忘れたわけではなかろう？いや、今もそうじゃ。ワシが貴様を魔女に変えたというのに、一向に眷属にならずにおる。あの時もワシを出し抜き、姿を消した…」
　彼女はそういいながらキャスに近寄り、座っているキャスの顎に手を添えた。

「っ…!?」
　そしてそこでキャスは気付いた、体の自由がきかないことに。
「僕に何を…」
「薬じゃよ。この部屋に撒いておいた神経毒じゃ。ワシは魔法で守られておるが、魔力が充満したこの部屋ではそれに気づかなかったようじゃのぉ？」
　バフォメットはキャスの帽子を取り、脇に置いて髪を撫でた。
「………」
「きれいな髪じゃな…それに大きく綺麗な目をしておる…あの頃のままじゃ。じゃというのに、快楽に染まることなくお主は我の前から消えた。
　お主は、このバフォメットの我に傷を付けたのじゃ…」
　彼女はそう言いながら魔法でローブの結び目を解き、キャスの体から取り去った。
　そこには見た目相応の格好をしたキャスが、バフォメットから目線を外せずに座っているだけ。
「クク…確かに可愛らしい格好じゃが、ちと色気が足りんの？」
　バフォメットは意地悪い笑みを浮かべた。
「…何を…」
「決まっておるじゃろ？今度こそお主を我が眷属に、サバトの一員に引き込むのじゃ。そのために…」
　彼女が指を弾くと、キャスの着ていたシャツのボタンとサスペンダーが外れ、小さな胸が露わになった。
「…もう一度快楽をその身に知らしめる…」
　薄い桃色のキャスの乳首にバフォメットはキスするように吸い付いた。
「ひゃぅッ―」
「くくく…ずいぶんと可愛らしい声を挙げるようになったものじゃのぉ…（ヂュルル…）」
「ぅあッ、やッ…ィやぁッ…」
　ヂュルヂュルと音を立てながら綺麗な薄ピンクの乳首を吸い舐める度、キャスは身を震わせ甘い抵抗の声を漏らした。
　だが所詮、その声もバフォメットの嗜虐心を刺激するだけなのだ。
「どれ…こちらだけでは物足りんじゃろ？」
　片手をもう一つの乳首に宛がう。
　指先、つま先で小さな突起をコロコロと転がし、クネクネとこねくり、キュッと優しくつまみ上げた。
　キャスの背筋は仰け反り、刺激を与えるたびにビクンッと跳ね、口からは喘ぎを漏らした。
「前に会うた時よりも良い声で啼くではないか」
　バフォメットが上目づかいでにたりと笑った。
「う…うるさ―ンッ、そんなことッ―」
　口の端から微かに涎を伝わせながら否定をするキャスだが、バフォメットの言うことが事実であることは自分がよくわかっていた。
（なん…で…こんな…に……気持ちいいんだよぉ…？）
「うわっ―」
　キャスはソファーの上に押し倒された。
　そして足元に座ったバフォメットが意地悪く笑う。
「さて…こっちもそろそろ良い頃合いかのぉ？」
　彼女はキャスのズボンに手を掛け、スルスルと脱がせた。下着にはすでに大きくシミができ、シミとして吸収できなかった粘液がズボンの裏側にも付いてしまっている。
「ほほぅ、見事に濡れておるのぉ…」
「うぁっ…だめッ…」
　濡れた部分をバフォメットが人差し指で押すと、キャスの体がびくりと震え、布をすり抜け愛液が溢れた。
「こんなにしおって…そんなに良かったかの？」
「そッ…んなことッ…ぁンッ―」
　体に電気が走ったような感覚がキャスを襲う。
　バフォメットが秘部の上の方を軽く引っ掻いたのだ。
　彼女は反応を見てまた笑い、「ほれ、ほれ♪」と言いながら何度も掠るように引っ掻いた。
「ぅあッ…ンッ…あンッ…」
　秘部から突き抜けるような甘い強い快感を感じるたび、キャスの体はビクンと跳ね、目尻から涙が零れそうになった。
　やがてバフォメット指を揃えてキャスの恥丘に置き、親指でその固くなったクリトリスを下着の上から優しく押しつぶすように円を描き動かす。
「ぅあッ、あッ…ダメッ…あッ…ンアッ―」
　一際大きな媚声をあげ、ものの数秒でキャスの体が大きく跳ねる。目は少々虚ろで、ソファーの生地を握りしめていた手からは力が抜けている。
「はぁ……はぁ……」
　彼女は息を荒げたままバフォメットの様子を窺った。するとそこには頬を紅潮させ、うっとりとした様な目で自分の秘部を見つめるバフォメットがいた。
（…え…なに…？）
　そうキャスがバフォメットの様子に疑問を抱いた直後、彼女は言葉を漏らした。
「…お主ばかり…ズルいのぉ…」
「え…？」
　
　バフォメットはおもむろに秘部を隠す小さな布に手を掛けた。装飾ごと脱いでいくと、ワレメが当たっていた場所には大量の愛液が溜まっていて、布が吸収しきれなかった分が脇から滴り落ちる。
　それを床の上に投げ捨てた彼女はキャスの片足を両腕で抱えるように持ち上げると、既にネッチョリと粘液を纏った割れ目をキャスの割れ目にくっつけた。
「っ…」
　キャスは自分の秘部にバフォメットの体温とヌメりを感じ、戸惑い思わず息を呑んだ。秘部から伝わる体温は熱く、微細にヒクついているのが分かった。
　バフォメットはゆっくりと腰を前後に振り始める。
「あッ…やッ…あンッ…」
「んッ…んふぅ…んンッ…」
　お互いの愛液がローションのような役割を果たし、同時にクチュクチュと厭らしい音を立てる。
（あぁ…やだぁ…こんなのぉ…）
　キャスはそう思いながらも、体も動かせず、ただただこの理性を追いやる快楽を受け入れるしかなかった。そして、この快楽を求めつつある己に気付き始めていた。
「ひゃンッ―」
「あぅンッ―」
　２人の体が同時に跳ねるように震えた。
　彼女たちの思えた強い刺激、それは２人の固く勃起したクリトリス同士が触れ合ったからに他ならない。

　体勢が少し変わったキャスにバフォメットが不意に視線を向けたとき、ふと彼女の腰の左後ろのところに薄くなったタトゥーのようなものを見つけた。
（これは…ほぉ…なるほどのぉ…）
「キャサリン…お主、快楽を弱めるルーンを刻んでおったな？」
「え…？」
「くくく…図星じゃの？それで以前はのまれなかった様じゃが…今回はそうは行かぬぞ？」
「どういう…こと？」
「ルーンが薄くなっておる…確かに経年劣化もあるやもしれんが、これは簡潔に言えば…お主、いつぞやか抱かれることを望んだであろう？」
「っ…!?」
　顔を赤面させ、キャスは絶句した。思い当たる節はいくらでもあった。
　フィムと共に脱走した日の夜も、その後の数日の内のいくらかも、フィムに、大好きな『おにいちゃん』に抱かれることを望んだ。
　それらの欲が魔女の魔力を後押しし、本能的に邪魔な物の効力を弱めていたのだ。それが薄くなったルーンが表すところである。
「照れるな照れるな、それは喜ばしいことじゃぞ…」
「ちがっ…僕は…ただ…」
「まだ認めようとせぬか…ならば、そんな分からず屋には仕置きがいるのぉ？」
「ひゃうンッ―」
　バフォメットは秘部を少し強く押し当てながら腰を動かした。さっきと同じようにクリトリス同士が擦れて強い快感を生んだ。
　自身もノッてきているバフォメットは至極楽しそうに腰を淫らに、艶やかに、激しく動かした。
「あンッ♪んンッ♪アッ♪」
　その口から漏れる喘ぎ声のどれもが、喜楽の物にしか聞こえない。対してキャスの発するものは、必死に堪えている様が見え見えだ。
「ほれほれ…ンッ♪…いい加減…あンッ♪…観念せぃ…♪」
「あッ…やッ…だァッ…ンッ…くふンッ…ああッ…やッ、やッ…来ちゃうぅッ…！」
「良いぞ♪ワシももうイきそうじゃ…んアッ♪」
　唐突にキャスも絶頂の快感を求め腰を振り出した。当然２人がオーガズムに達するまでそう時間は掛らなかった。
「あッ…アッ、アぁッ―」
「きゃンッ♪…ひゃぅッ♪んアァッ―」
「｢イィッッ―――♪｣」
　２人とも声にならない声を出しながら体中を駆け巡る快感を受け入れ、口からは涎がだらしなく滴り、体は暫くビクビクと痙攣し震えていた。



　肩で息をするキャスを見つめながら、バフォメットは覆いかぶさるように自分の顔をキャスの顔に近づけた。
「はぁ…はぁ…」
「気持ち良かったじゃろぉ？」
「うるさぃ………」
「…まだ素直にならんか、じゃがまだまだこれから―」
　いきなり後ろから誰かに抱き上げられた。
「な、何じゃ…!?」
　振り向けばそこにはフィムの顔があった。
「主はキャサリンのッ―」
　バフォメットが驚いているとフィムが口に何かを突っ込んだ。緑色をした小さな瓶だ、そして中から出てきた何かの液体を彼女は思わず飲み込んでしまった。
　フィムはバフォメットを慣れた手つきで縛り上げてその場に下ろし、キャスの方に近寄るとソファーに座って膝の上に彼女を乗せた。
「自分がバフォメットか。俺の『いもうと』をかわいがってくれたみたいやなぁ？」
「フィム…」
　キャスは頭を撫でられてうっとりしつつ彼の名前を呼んだ。
「お主、どうやってこの部屋に入ったのじゃっ!?いや、それ以前にミーナはどうしたのじゃ、奴には主の監視を任せたはずじゃぞッ！」
「やっぱりせやったか。あの子やったら今頃…」

　その頃、ある部屋の中では
「ひゃうぅんッ―！」
　縄で縛られ、口にはギャグボールを噛まされたミーナが、新作魔法道具『羞恥快楽我慢セット（媚薬、快感付与下着上下）』によって攻め続けられていた。
「ふぁッ（だッ）…ふぁえッ（だめッ）…ふゃあぁぁぁッ―」

「てな感じちゃうかなぁ？」
　フィムは笑顔でミーナの今置かれているであろう状況を説明した。
　そう言う彼の膝の上で何とも言えない表情をしているキャス。
（…誘ってるふりをして引っかけて縛った上に、その辺にあった魔導具使って放置プレイって……えぐいことするなぁ…）
「いやぁ、にしても、おもしろいモンめっちゃあんなぁ、ここ。あ、何個かもらっとくで？」
「なんじゃとっ!?…魔法道具や薬を置いておる部屋は施錠してあったはずじゃっ!?」
「え？ほら、そこは俺泥棒やしぃ…魔法で結界も張ってないから余裕やったかな、これで」
　フィムはポーチから細い針金や鉤爪等の道具を取り出して見せた。
「…そうであったか、今度からセキュリティを見直すとしようかの。じゃが、ここへはどうやって入ったのじゃ？
　錠印魔法をかけておったし、部屋中に薬を揮発性の撒いておるというのに…」
「ん〜、色々あるけど、企業秘密っちゅーことで♪」
「企業秘密とは…しょうがないのう…」
　３人の間に沈黙が流れる。フィムはキャスをかかえて笑みを浮かべ、キャスは膝に乗せて抱っこされてうっとりしている、そしてバフォメットはその様子を眺めている。のだが…
「………」ﾆｯｺﾘ…
「………」ｳｯﾄﾘ…
「………」…ﾓｼﾞ…ﾓｼﾞﾓｼﾞ…
　バフォメットは手を後ろ手に縛られ、足首も縛られ、さらに膝を曲げた状態で腿と脛も縛られている。彼女はその自由を奪われた足を擦り合わせ始めた。
（…ええい…このような時に…）
「ふふっ…」ﾆｯｺﾘ
（っ…！）
　彼女は何かに気付いたように血相を変えた。
「お、お主、一体さっき何を飲ませたのじゃッ!?」
「あー、気ぃついた？えっとなー…利尿剤？」
「なっ―！」
　それを聞いて言葉を失ったバフォメットだったが、転がっている瓶を見てさらに追いやられることとなった。
「っ…！主、もしや一階の西側の一番奥の部屋の南側の左から４つ目の棚の上から２段、右から１２個目の薬じゃなかろうなッ!?」
「そうやけど？」
「これはそもそも１００倍に希釈して使う薬じゃッ！取説が一緒にあったであろうッ！」
　説明するとこの薬、魔女とその相手がまんま『幼児プレイ』をする中で使うために作られた利尿剤なのだ。
　正しい使用方法は『適量（１ミリグラム）を１００倍に希釈』して服用する。効果は利尿と括約筋の持久力の低下。要するに漏らしやすくなるということなのである。
　ただそれを原液のまま飲んでしまったのだから大変なことだ。
「うぁ…たの…む…縄を…」
「解いてほしいて？」
　バフォメットはコクコクと首を縦に振った。
「ほな、１個だけ条件があるわ」
「なに…早く…」
「俺、キャスが男であろうが女であろうが、他の奴に好き勝手されんの嫌やねん。言いたいことわかるやろ？」
　フィムが言いたいのは、つまりは『さっきまでみたいな事禁止』ということ。ただ、そうなるとバフォメットのプライドというものがなくなる。
「…で、でも…そういう訳には…」
「あ、じゃあ縄解かへん」
「えっ…でも…でも…ッ〜〜〜〜、わかったのじゃ〜、じゃから早くぅ〜〜〜！」
「しゃ〜ないな〜」

　フィムが縄を解くと、バフォメットは風のように部屋を飛び出して行った。
「フフン♪」
　フィムはキャスの顔を覗きこんで笑う。
「な…何？」
「ほな、俺も黒ミサを満喫させてもらおかな♪」
「え…でも…」
「平気やって、バフォメットは当分戻ってけぇへんから」
「んっ…」
　フィムはキャスにキスをすると、ソファーの上に押し倒した。
　

■作者メッセージ
百合ﾋｬﾎｰｲ(ﾉﾟ∀ﾟ)ﾉ　
ﾛﾘﾋｬｯﾎｰｲ(ﾉﾟ∀ﾟ)ﾉ

と、いうわけで次から本編進めます。
ﾏﾀｰﾘ更新は相変わらずなので、気長にお待ちくださいｍ(_ _)ｍ