閑話 滝の畔で
誘拐事件を解決してからすでに2つの町を過ぎていた。町自体は近く、実際は滞在時間を含めて2週間弱の時間が過ぎていた。
さて、普通なら今頃一行は次のボナルフという町に到着したはずなのであるが、一行は今ほぼ真北の方向を向いて、川のそばの道を歩いている。町はそこから東の方角である。
なぜ彼らがそんな場所を歩いているのかというと、ここ2日間この一帯は雨が降りつ続いた。そのため、前の町とボナロフとの間にある南北流れる川の水が増加し、橋が流されてしまったのだ。川幅も広く、水深も深い上に水かさも増しているため
途中で渡るようなこともできず、仕方なく上流を通って迂回してくることにしたのだ。
ただ上流と下流なら上流の方が近いのだが、どちらにしろかなり遠い。夕方近くなっても半分強の距離しか進めていなかったのだ。
と、そんな大変な事態もあるのだが、もう1つだけいつもとは違うことがあった。
朝早くに町を出てからトーマもトレアも気にかかっていることがあった。
「もうそろそろ半分も過ぎたか?」
「さぁな。ミラ、そろそろ半分か?」
と、トレアがミラに訊ねたのだが。
「・・・・・」
「ミラ?」
「えっ?ええ…そうね…」
2度目の呼びかけにやっと気づいたミラは慌ててそう答えた。
「どうした、今日はおかしいぞ?」
「体調でも悪いのか?」
「う、ううん、平気、大丈夫よ…」
ミラはそう言い張るが、2人はどうかしたのでは?と内心心配していた。
「ちょっと…ゼェ…お3人さん…ハァ…そんなスタスタと…ヒィ…先行かないで…」
トーマ達3人の後ろ15メートルほどで息を切らしながら、おっさんが1人荷車を牽いていた。
「ノルヴィ、いつもよりバテるのが早いぞっ」
「いつもより荷物が多いんだものッ!」
「…だから私は昨日少し買い過ぎじゃないかと言ったんだ」
昨日町を出る準備をしたのだが、良い品物が定価よりも安く売っていたため買い込んだのだ。それは日用品から、旅の必需品、武器や魔導具にまで及んだ。
「あのな…自分のこと棚に上げて何言ってんだよ…昨日買った荷物の中で一番重量と量(かさ)稼いでんのはテメェの武器だろうがッ!」
と、ノルヴィは反論したが、実際その通りである。正確に言うと、トレアが次の町は旅人や、戦士志願の者たちも通るため武器もあれば売れるだろうと言い、他の3人がOKしたのを良いことに買い込んだのだ。
「いや、そっ……そもそも、お前自身に体力がなさすぎるのが悪いんだ、この辺でトレーニングもしていろ!」
完全にごまかしである。
「ひぃ…もう無理。腕も足もパンパン…死ぬ、四肢が千切れ飛んで血反吐吐いて死ぬ…トーマくーん、交代してくれー…」
ノルヴィは足を止めてぼやいた。
「…まぁ、今日は仕方ないな…」
トーマはそう言ってノルヴィと車を牽く役を後退した。
「やぁ〜〜、助かったわ少年!マジであのトカゲ娘の暴挙に殺されるかと思ったわ…」
「ふんっ…!」
トレアは腕を組んでふてくされた様に目を逸らせた。
「…もう膝笑ってるし、大爆笑っ。ミラっちちょっとで良いから乗っけて…」
「あ、ばかっ!」
とノルヴィはミラの獣身の背に触った。
「ッ…!」
「うわ〜、ゴメンッ!冗談だから…っ!」
ノルヴィはそう言いながら慌てて飛んでくるであろう蹄鉄と弓に備えた。トレアもそう言う反応があると思っていたのだが。
「あ、あれ?」
「どうした、ミラ?」
ミラは硬直し、暫く静止していた。トレアがどうしたのかと訊いてやっと動いたのである。
「う、ううん…ノルヴィ、次やったら怒るわよ…?」
「は、は〜い…」
「行きましょ…」
ミラはスタスタと歩き始めた。
「・・・・・」
トレアもそれに続いて歩いていき、その後を眺めるようにノルヴィはミラを見ていた。やがて彼も歩き出し、トーマも荷車を牽いた。
〔…ホントに重たい…〕
トーマはノルヴィが心から気の毒になった。
彼もそろそろ疲れが見えたころ、一行は河原で一夜を過ごすことになった。ただ、テントは近くの草原の上に張った。河原の石の上ではごつごつしてとても眠るどころでないのは目に見えている。
「飯も食ったし、そろそろ寝るかぁ〜」
「そうだな」
「俺ももう寝るとするか…」
「私は番をしてるわ」
と3人は火を焚いたまま番のミラを残してテントに向かった。戻ろうとするノルヴィにミラが声をかけた。
「…ノルヴィ」
「あん?どったの?」
「…後でまた来てくれない?」
「なんでまた?」
「いいから…でないと、あの事件の時の事ばらすわよ?」
「ぇっ…!?」
あの事件とは、前章の件のことだ。あの時ノルヴィはミラに弱みを握られたのを皆さん覚えておられるだろうか?
ミラのミラらしくない脅迫にノルヴィは「ぁ…はぃ…」と正直疲れているのだが従う以外の選択肢はなかった。
「待ってるわ…」
その言葉を聞いて、ノルヴィはテントに入って仮眠を取った。
2時間経ったころ、少し慌てたノルヴィがテントから出てきた。トーマもトレアもぐっすり眠っているようで、それぞれのテントから出てくる様子はなかった。
「遅いわよ…」
「いやぁ…ごめんごめん、ちょっとよく眠れちゃってね…ははは…」
笑ってごまかそうとするノルヴィにミラはゆっくりと近づいた。
「…ねぇ…ノルヴィ、昼間に…」
「はい…?」
唐突な切り出しだった。
「昼間に…私の体に…触った、わよね…?」
「あ…」
ノルヴィはそこでてっきり、これから俺はみっちり絞られると思った。
「ああ、その、あれは冗談で…」
「冗談…?」
焚火の逆光で顔は見えず、それがさらに恐かった。
「あ、いや、そのっ…」
やばい、怒らせた。彼は一瞬たじろいだ。
「…ちょっと来てっ…」
「は、はい…」
ミラに付いていくと、草原を歩いて川沿いに道を進んだ。森の中に入り、また川に沿って歩くとそこには滝が轟音を響かせていて、至近距離でも少し声を大きくしなければ聞こえないほどだった。確かに、静かな夜にはその轟音はテントまでかすかに聞こえていた。
「え、えっと…ミラさん?こんなところで…何を…?」
ミラは突然振り向き、人身部分を少しかがめてノルヴィに迫った。その両手は彼の肩をしっかり、痛みのない程度に握っている。
「!?」
ノルヴィは驚き、声も出なかった。
「…さっき…」
「ハイッ!?」
顔を引きつらせて彼は返事をした。ほぼ条件反射的だった。
「…さっき…冗談って…そう言ったわよね?」
「はい…いいました」
「…その冗談で…私が大変だったの…あなたに分かる?」
「大変…といいますと…?」
「ノルヴィ…」
その時風が吹いて木の葉が揺れると、月光が差して彼女の顔を照らした。
「私…もう治まらないのッ…」
「なっ…!?」
そのミラの顔は、普段の凛として優しいものからは想像もさせない、紅潮して目がトロンとした艶やかしい表情だった。
普段全くと言って見ることのない彼女の初めての顔に、ノルヴィは内に湧き上がるものを感じていた。だが、彼は平静を装ってこう続けた。
「治まらないっていうのは…何がですかねぇ?」
「…だ、だから…その……」
ミラは吐息を交えてその言葉を押しだした。彼女にすれば十分辱めに値する行為だったが、そこにノルヴィはとどめを刺す。
「…馬並みの性欲?」
「////ッ――――!」
彼女は思わず絶句した。
「…だ…だって…今日起きたらムラムラしてて…発情期なのを忘れてて…あなたが触るから…もう…がまんできなくなっちゃったのよぉッ!!」
ミラの獣身はもう内股気味で、もう『どちら』も十分に濡れてしまっていた。
「…もう…だめっ―!」
「んッ―!?」
ミラが突然ノルヴィを抱き寄せ、唇を奪った。当然貞操観念が強いケンタウロスの彼女にとって、これがファーストである。なかなかディープな大人のキスであった。
そして器用に彼のズボンを脱がせると、露出させた固くなった性器を手でスラストし始めた。
「な…ミラッ?!」
ノルヴィは驚いて退こうとするが、いつの間にか木が真後ろにまで迫っていて逃げることはできなかった。
ミラは息も荒いまま、足を折るように座り、その口で性器を包み込んだ。
「んっ…やべぇ…」
生暖かい感触と下と口内の滑り、さらには腰をマウントしている腕の暖かさ、柔らかさに加えての彼女の鼻息がノルヴィを興奮させていく。
スンスンというミラの息遣いは滝の轟音にかき消されて聞こえない。いや、それだけでなく、もしここでミラが大声で叫ぼうと、滝の音がすべての音をその音源のごく近距離でかき消すのだ。それがミラがここにノルヴィを連れて来た理由だった。
彼女はあの野宿の場所に近づいてきた瞬間から、その並外れた聴覚で滝の音を感じ、ここにノルヴィを連れてくることだけを考え、興奮を高鳴らせていたのだ。
「はぁ…はぁっ…はぁっ…」
「んっ…んふぅ…、くふぅ…ふぅ…」
二人の荒い息が交じり合い、とても淫靡なデュエットを成していた。この距離であればまだ息音も聞こえる。
「ミラッ…」
「へほう(出そう)?いいは、はひへ(いいわ、出して)…」
「ッ―!」
「ンッん―!」
ノルヴィの性器は強く脈打ち、勢いよくミラの口内へ通常の3倍近くの白濁液を放出した。
「ゴクンッ―」
ミラはそれを喉音を立てて飲み干し、ノルヴィの尿道に残った精液も吸い、性器や指に付いた分も残すところなく舐めとった。そして彼女は立ち上がり、呼吸を荒くしたノルヴィを愛おしそうに見つめ、
「おいしかった…」
と言ってまた激しく長いキスを交わした。
「ぁンッ―!?」
ミラがビクッと体(人身)を反らせ、唇を離し声を漏らした。なぜならノルヴィが背中に腕を回し、それぞれ背中と、体と獣身の境を指でツツツとなぞったからだ。
「…ノルヴィッ…」
「はぁ…俺は攻める方がどちらかというと好きなんだが…な」
というとノルヴィは今度はミラに迫り抱き締めると、唇を奪いながら服の留め具を一つずつ外した。
さらっという小さな音を立てて服は下の草の上に落ちた。既に胸と前の性器は完全に露出しているが、それだけでなく獣身に巻いていた布の留め具も外してしまった。
「うぁぅ…」
とうとう生まれたままの姿になってしまった彼女は、恥ずかしさで呻くような声を出した。
「さて…」
唇を離してノルヴィはそう呟くと、軽い身のこなしで彼女の獣身の上にまたがり、自分と彼女の体を密着させるように羽交い絞めにした。
「なっ…いやっ…ノルッ―!」
一瞬パニックに陥った彼女は思いっきり後ろ足で立ち上がった。
「うおぅっ、あっぶないじゃないのよ?!」
ノルヴィはそれに耐え、彼女は落ち着きを取り戻した。
「だ、だめッ、そんなに近づいたらッ…」
「何言ってんのよ…」
ノルヴィはそう耳元でささやき、こう続けた。
「近づくだけなわけがないだろう?」
「あッ、やぁッ…ダッ…ひゃうッ、んッ、あンッ―」
ノルヴィは右手を彼女の左胸の乳首へ、左手を前へ回し性器へ、口を彼女の首筋、背中へ当て、愛撫を始めた。
乳首をつねったり、引っ張ったりするたびに肩がビクッと後ろへ動き、膣腔に入れた指をクイクイッと動かすたび腰が逃げようとし、陰核を親指がコリッと優しく押し潰して越えるたびに膝がガクッと一瞬力を無くす。首筋や背骨のあたりを唾液を纏った舌が滑らかに通り過ぎれば背中は仰け反り、ミラはもう木の枝にしがみ付く様にしなければ立っていられない状況だった。
「あッ、ひゃあッ、ぅアッ、はぅっ、んくぅッ―!」
「だんだん下の方がヒク付いて来たぞ?」
「あッ、だっ…てぇっ…! あッ、やあァッ、ダメッ! イく、イクッ、イぃッ―――!」
ガクガクとミラの体が大きく揺れ、膣の入り口がビクビクと収縮を繰り返した。
ねっとりとして少し白濁した液がノルヴィの手とミラの性器をグチョグチョに濡らし、彼女の体は余韻で未だ震えていた。
2人はもう何も言わずともお互いがどうしたいのかを自ずとわかっている気がしていた。
ノルヴィはミラから降りると前方にまわり、ミラの濡れに濡れきった性器へ自分の陰茎を挿入した。
「んんッ―」
ノルヴィの陰茎から彼の脳に、暖かく柔らかい感触とその肉壁が締めつけ、潤滑油によって滑らかに滑る感触が伝わる。
ミラの膣からも彼の陰茎の熱く固く、強く脈打つ感覚が流れ込む。
どちらからともなく抱きしめ、ノルヴィは腰を動かしていた。ミラから漏れ出たすべての喘ぎ声、水音は全て滝の音が消してくれた。誰にも気兼ねすることなく、2人はキスを繰り返し、互いを抱きしめ、互いを求めた。
「ノルッ…ヴィッ、激しッ―!」
ミラの目にはこの大きな快感のために涙が浮かび、口からはだらしなくよだれが滴っていた。
「ひひひ…好きなくせにっ…!」
「あッ…またッ…イッちゃ―!」
「良いぜ…俺もそろそろだ…」
「あッ…ンッ、ンッ〜〜―――!!」
ミラが先に果て、遅れてその余韻を後押しするようにノルヴィが精を注いだ。
「はぁ…はぁ…」
「ぜぇ…はぁ…」
2人ともその場に力なくヘタれこんだ。
「どうよ…冷静になったか…?」
「………ええ」
「洗って来なよ…それに、顔も真っ赤よ?」
「ッ―! そ、そうするわ…」
ミラは水に入り、体に付いた粘液と体の火照りを取った。冷静になればなるほど、今しがたしていた行為がとても恥ずかしくなって、言いようのない感覚に襲われた。
「…ミラっち…」
「なッ、なにかしら?!」
「責任は…この場合どっちがとるの?」
そのノルヴィの言葉に、ミラは彼を見つめていることしかできなくなった。
ノルヴィがとても嬉しそうに微笑んでいて、その顔がミラには抜群の効果を発揮したのだ。
「ぉ…が…ぉ…に…」
「あんだって?」
「お、お互いがお互いに取り合えばいいのよッ!」
ミラの顔はまた赤くなった。そこにはまだ凛とした表情は戻っていない。
「シシシ…」
ノルヴィはひときわ嬉しそうに笑った。
「俺も入っていいかねぇ?」
「…ええ」
月明かりが反射される美しい滝の滝つぼの淵に、美しいケンタウロスが1人の男に手を引かれて立っている、それはとても幻想的な光景だった。
翌日。
朝に出発した一行は、折り返し地点の滝の北側へと来た。
「にしても、さっきの滝は見事だったな」
「ああ、俺の世界じゃああいうのは中々実物を拝むのは難しいからな」
「そうなのか。ミラもさっきの滝はよかったと思うだろ?」
「え?え、ええ。そうね、素敵だったわ」
「俺たちは昨日もっといいもん見たけどな」
「え、なんだノルヴィ?」
「!!」
「いやぁ、なんでもないよ。ただの独り言だって」
「そうか、そんなことより大丈夫なのか?」
「何が?」
「いや、昨日あんなにバテてたじゃないか」
「大丈夫よぉ、まだ歩き出したばっかりだし」
「そうよ」
ミラが立ち止まって言った。
「だって、彼が疲れたら、今度は私が引くもの」
さて、普通なら今頃一行は次のボナルフという町に到着したはずなのであるが、一行は今ほぼ真北の方向を向いて、川のそばの道を歩いている。町はそこから東の方角である。
なぜ彼らがそんな場所を歩いているのかというと、ここ2日間この一帯は雨が降りつ続いた。そのため、前の町とボナロフとの間にある南北流れる川の水が増加し、橋が流されてしまったのだ。川幅も広く、水深も深い上に水かさも増しているため
途中で渡るようなこともできず、仕方なく上流を通って迂回してくることにしたのだ。
ただ上流と下流なら上流の方が近いのだが、どちらにしろかなり遠い。夕方近くなっても半分強の距離しか進めていなかったのだ。
と、そんな大変な事態もあるのだが、もう1つだけいつもとは違うことがあった。
朝早くに町を出てからトーマもトレアも気にかかっていることがあった。
「もうそろそろ半分も過ぎたか?」
「さぁな。ミラ、そろそろ半分か?」
と、トレアがミラに訊ねたのだが。
「・・・・・」
「ミラ?」
「えっ?ええ…そうね…」
2度目の呼びかけにやっと気づいたミラは慌ててそう答えた。
「どうした、今日はおかしいぞ?」
「体調でも悪いのか?」
「う、ううん、平気、大丈夫よ…」
ミラはそう言い張るが、2人はどうかしたのでは?と内心心配していた。
「ちょっと…ゼェ…お3人さん…ハァ…そんなスタスタと…ヒィ…先行かないで…」
トーマ達3人の後ろ15メートルほどで息を切らしながら、おっさんが1人荷車を牽いていた。
「ノルヴィ、いつもよりバテるのが早いぞっ」
「いつもより荷物が多いんだものッ!」
「…だから私は昨日少し買い過ぎじゃないかと言ったんだ」
昨日町を出る準備をしたのだが、良い品物が定価よりも安く売っていたため買い込んだのだ。それは日用品から、旅の必需品、武器や魔導具にまで及んだ。
「あのな…自分のこと棚に上げて何言ってんだよ…昨日買った荷物の中で一番重量と量(かさ)稼いでんのはテメェの武器だろうがッ!」
と、ノルヴィは反論したが、実際その通りである。正確に言うと、トレアが次の町は旅人や、戦士志願の者たちも通るため武器もあれば売れるだろうと言い、他の3人がOKしたのを良いことに買い込んだのだ。
「いや、そっ……そもそも、お前自身に体力がなさすぎるのが悪いんだ、この辺でトレーニングもしていろ!」
完全にごまかしである。
「ひぃ…もう無理。腕も足もパンパン…死ぬ、四肢が千切れ飛んで血反吐吐いて死ぬ…トーマくーん、交代してくれー…」
ノルヴィは足を止めてぼやいた。
「…まぁ、今日は仕方ないな…」
トーマはそう言ってノルヴィと車を牽く役を後退した。
「やぁ〜〜、助かったわ少年!マジであのトカゲ娘の暴挙に殺されるかと思ったわ…」
「ふんっ…!」
トレアは腕を組んでふてくされた様に目を逸らせた。
「…もう膝笑ってるし、大爆笑っ。ミラっちちょっとで良いから乗っけて…」
「あ、ばかっ!」
とノルヴィはミラの獣身の背に触った。
「ッ…!」
「うわ〜、ゴメンッ!冗談だから…っ!」
ノルヴィはそう言いながら慌てて飛んでくるであろう蹄鉄と弓に備えた。トレアもそう言う反応があると思っていたのだが。
「あ、あれ?」
「どうした、ミラ?」
ミラは硬直し、暫く静止していた。トレアがどうしたのかと訊いてやっと動いたのである。
「う、ううん…ノルヴィ、次やったら怒るわよ…?」
「は、は〜い…」
「行きましょ…」
ミラはスタスタと歩き始めた。
「・・・・・」
トレアもそれに続いて歩いていき、その後を眺めるようにノルヴィはミラを見ていた。やがて彼も歩き出し、トーマも荷車を牽いた。
〔…ホントに重たい…〕
トーマはノルヴィが心から気の毒になった。
彼もそろそろ疲れが見えたころ、一行は河原で一夜を過ごすことになった。ただ、テントは近くの草原の上に張った。河原の石の上ではごつごつしてとても眠るどころでないのは目に見えている。
「飯も食ったし、そろそろ寝るかぁ〜」
「そうだな」
「俺ももう寝るとするか…」
「私は番をしてるわ」
と3人は火を焚いたまま番のミラを残してテントに向かった。戻ろうとするノルヴィにミラが声をかけた。
「…ノルヴィ」
「あん?どったの?」
「…後でまた来てくれない?」
「なんでまた?」
「いいから…でないと、あの事件の時の事ばらすわよ?」
「ぇっ…!?」
あの事件とは、前章の件のことだ。あの時ノルヴィはミラに弱みを握られたのを皆さん覚えておられるだろうか?
ミラのミラらしくない脅迫にノルヴィは「ぁ…はぃ…」と正直疲れているのだが従う以外の選択肢はなかった。
「待ってるわ…」
その言葉を聞いて、ノルヴィはテントに入って仮眠を取った。
2時間経ったころ、少し慌てたノルヴィがテントから出てきた。トーマもトレアもぐっすり眠っているようで、それぞれのテントから出てくる様子はなかった。
「遅いわよ…」
「いやぁ…ごめんごめん、ちょっとよく眠れちゃってね…ははは…」
笑ってごまかそうとするノルヴィにミラはゆっくりと近づいた。
「…ねぇ…ノルヴィ、昼間に…」
「はい…?」
唐突な切り出しだった。
「昼間に…私の体に…触った、わよね…?」
「あ…」
ノルヴィはそこでてっきり、これから俺はみっちり絞られると思った。
「ああ、その、あれは冗談で…」
「冗談…?」
焚火の逆光で顔は見えず、それがさらに恐かった。
「あ、いや、そのっ…」
やばい、怒らせた。彼は一瞬たじろいだ。
「…ちょっと来てっ…」
「は、はい…」
ミラに付いていくと、草原を歩いて川沿いに道を進んだ。森の中に入り、また川に沿って歩くとそこには滝が轟音を響かせていて、至近距離でも少し声を大きくしなければ聞こえないほどだった。確かに、静かな夜にはその轟音はテントまでかすかに聞こえていた。
「え、えっと…ミラさん?こんなところで…何を…?」
ミラは突然振り向き、人身部分を少しかがめてノルヴィに迫った。その両手は彼の肩をしっかり、痛みのない程度に握っている。
「!?」
ノルヴィは驚き、声も出なかった。
「…さっき…」
「ハイッ!?」
顔を引きつらせて彼は返事をした。ほぼ条件反射的だった。
「…さっき…冗談って…そう言ったわよね?」
「はい…いいました」
「…その冗談で…私が大変だったの…あなたに分かる?」
「大変…といいますと…?」
「ノルヴィ…」
その時風が吹いて木の葉が揺れると、月光が差して彼女の顔を照らした。
「私…もう治まらないのッ…」
「なっ…!?」
そのミラの顔は、普段の凛として優しいものからは想像もさせない、紅潮して目がトロンとした艶やかしい表情だった。
普段全くと言って見ることのない彼女の初めての顔に、ノルヴィは内に湧き上がるものを感じていた。だが、彼は平静を装ってこう続けた。
「治まらないっていうのは…何がですかねぇ?」
「…だ、だから…その……」
ミラは吐息を交えてその言葉を押しだした。彼女にすれば十分辱めに値する行為だったが、そこにノルヴィはとどめを刺す。
「…馬並みの性欲?」
「////ッ――――!」
彼女は思わず絶句した。
「…だ…だって…今日起きたらムラムラしてて…発情期なのを忘れてて…あなたが触るから…もう…がまんできなくなっちゃったのよぉッ!!」
ミラの獣身はもう内股気味で、もう『どちら』も十分に濡れてしまっていた。
「…もう…だめっ―!」
「んッ―!?」
ミラが突然ノルヴィを抱き寄せ、唇を奪った。当然貞操観念が強いケンタウロスの彼女にとって、これがファーストである。なかなかディープな大人のキスであった。
そして器用に彼のズボンを脱がせると、露出させた固くなった性器を手でスラストし始めた。
「な…ミラッ?!」
ノルヴィは驚いて退こうとするが、いつの間にか木が真後ろにまで迫っていて逃げることはできなかった。
ミラは息も荒いまま、足を折るように座り、その口で性器を包み込んだ。
「んっ…やべぇ…」
生暖かい感触と下と口内の滑り、さらには腰をマウントしている腕の暖かさ、柔らかさに加えての彼女の鼻息がノルヴィを興奮させていく。
スンスンというミラの息遣いは滝の轟音にかき消されて聞こえない。いや、それだけでなく、もしここでミラが大声で叫ぼうと、滝の音がすべての音をその音源のごく近距離でかき消すのだ。それがミラがここにノルヴィを連れて来た理由だった。
彼女はあの野宿の場所に近づいてきた瞬間から、その並外れた聴覚で滝の音を感じ、ここにノルヴィを連れてくることだけを考え、興奮を高鳴らせていたのだ。
「はぁ…はぁっ…はぁっ…」
「んっ…んふぅ…、くふぅ…ふぅ…」
二人の荒い息が交じり合い、とても淫靡なデュエットを成していた。この距離であればまだ息音も聞こえる。
「ミラッ…」
「へほう(出そう)?いいは、はひへ(いいわ、出して)…」
「ッ―!」
「ンッん―!」
ノルヴィの性器は強く脈打ち、勢いよくミラの口内へ通常の3倍近くの白濁液を放出した。
「ゴクンッ―」
ミラはそれを喉音を立てて飲み干し、ノルヴィの尿道に残った精液も吸い、性器や指に付いた分も残すところなく舐めとった。そして彼女は立ち上がり、呼吸を荒くしたノルヴィを愛おしそうに見つめ、
「おいしかった…」
と言ってまた激しく長いキスを交わした。
「ぁンッ―!?」
ミラがビクッと体(人身)を反らせ、唇を離し声を漏らした。なぜならノルヴィが背中に腕を回し、それぞれ背中と、体と獣身の境を指でツツツとなぞったからだ。
「…ノルヴィッ…」
「はぁ…俺は攻める方がどちらかというと好きなんだが…な」
というとノルヴィは今度はミラに迫り抱き締めると、唇を奪いながら服の留め具を一つずつ外した。
さらっという小さな音を立てて服は下の草の上に落ちた。既に胸と前の性器は完全に露出しているが、それだけでなく獣身に巻いていた布の留め具も外してしまった。
「うぁぅ…」
とうとう生まれたままの姿になってしまった彼女は、恥ずかしさで呻くような声を出した。
「さて…」
唇を離してノルヴィはそう呟くと、軽い身のこなしで彼女の獣身の上にまたがり、自分と彼女の体を密着させるように羽交い絞めにした。
「なっ…いやっ…ノルッ―!」
一瞬パニックに陥った彼女は思いっきり後ろ足で立ち上がった。
「うおぅっ、あっぶないじゃないのよ?!」
ノルヴィはそれに耐え、彼女は落ち着きを取り戻した。
「だ、だめッ、そんなに近づいたらッ…」
「何言ってんのよ…」
ノルヴィはそう耳元でささやき、こう続けた。
「近づくだけなわけがないだろう?」
「あッ、やぁッ…ダッ…ひゃうッ、んッ、あンッ―」
ノルヴィは右手を彼女の左胸の乳首へ、左手を前へ回し性器へ、口を彼女の首筋、背中へ当て、愛撫を始めた。
乳首をつねったり、引っ張ったりするたびに肩がビクッと後ろへ動き、膣腔に入れた指をクイクイッと動かすたび腰が逃げようとし、陰核を親指がコリッと優しく押し潰して越えるたびに膝がガクッと一瞬力を無くす。首筋や背骨のあたりを唾液を纏った舌が滑らかに通り過ぎれば背中は仰け反り、ミラはもう木の枝にしがみ付く様にしなければ立っていられない状況だった。
「あッ、ひゃあッ、ぅアッ、はぅっ、んくぅッ―!」
「だんだん下の方がヒク付いて来たぞ?」
「あッ、だっ…てぇっ…! あッ、やあァッ、ダメッ! イく、イクッ、イぃッ―――!」
ガクガクとミラの体が大きく揺れ、膣の入り口がビクビクと収縮を繰り返した。
ねっとりとして少し白濁した液がノルヴィの手とミラの性器をグチョグチョに濡らし、彼女の体は余韻で未だ震えていた。
2人はもう何も言わずともお互いがどうしたいのかを自ずとわかっている気がしていた。
ノルヴィはミラから降りると前方にまわり、ミラの濡れに濡れきった性器へ自分の陰茎を挿入した。
「んんッ―」
ノルヴィの陰茎から彼の脳に、暖かく柔らかい感触とその肉壁が締めつけ、潤滑油によって滑らかに滑る感触が伝わる。
ミラの膣からも彼の陰茎の熱く固く、強く脈打つ感覚が流れ込む。
どちらからともなく抱きしめ、ノルヴィは腰を動かしていた。ミラから漏れ出たすべての喘ぎ声、水音は全て滝の音が消してくれた。誰にも気兼ねすることなく、2人はキスを繰り返し、互いを抱きしめ、互いを求めた。
「ノルッ…ヴィッ、激しッ―!」
ミラの目にはこの大きな快感のために涙が浮かび、口からはだらしなくよだれが滴っていた。
「ひひひ…好きなくせにっ…!」
「あッ…またッ…イッちゃ―!」
「良いぜ…俺もそろそろだ…」
「あッ…ンッ、ンッ〜〜―――!!」
ミラが先に果て、遅れてその余韻を後押しするようにノルヴィが精を注いだ。
「はぁ…はぁ…」
「ぜぇ…はぁ…」
2人ともその場に力なくヘタれこんだ。
「どうよ…冷静になったか…?」
「………ええ」
「洗って来なよ…それに、顔も真っ赤よ?」
「ッ―! そ、そうするわ…」
ミラは水に入り、体に付いた粘液と体の火照りを取った。冷静になればなるほど、今しがたしていた行為がとても恥ずかしくなって、言いようのない感覚に襲われた。
「…ミラっち…」
「なッ、なにかしら?!」
「責任は…この場合どっちがとるの?」
そのノルヴィの言葉に、ミラは彼を見つめていることしかできなくなった。
ノルヴィがとても嬉しそうに微笑んでいて、その顔がミラには抜群の効果を発揮したのだ。
「ぉ…が…ぉ…に…」
「あんだって?」
「お、お互いがお互いに取り合えばいいのよッ!」
ミラの顔はまた赤くなった。そこにはまだ凛とした表情は戻っていない。
「シシシ…」
ノルヴィはひときわ嬉しそうに笑った。
「俺も入っていいかねぇ?」
「…ええ」
月明かりが反射される美しい滝の滝つぼの淵に、美しいケンタウロスが1人の男に手を引かれて立っている、それはとても幻想的な光景だった。
翌日。
朝に出発した一行は、折り返し地点の滝の北側へと来た。
「にしても、さっきの滝は見事だったな」
「ああ、俺の世界じゃああいうのは中々実物を拝むのは難しいからな」
「そうなのか。ミラもさっきの滝はよかったと思うだろ?」
「え?え、ええ。そうね、素敵だったわ」
「俺たちは昨日もっといいもん見たけどな」
「え、なんだノルヴィ?」
「!!」
「いやぁ、なんでもないよ。ただの独り言だって」
「そうか、そんなことより大丈夫なのか?」
「何が?」
「いや、昨日あんなにバテてたじゃないか」
「大丈夫よぉ、まだ歩き出したばっかりだし」
「そうよ」
ミラが立ち止まって言った。
「だって、彼が疲れたら、今度は私が引くもの」
12/06/11 02:00更新 / アバロンU世
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