闇堕ちアクターズ
「違ぁあーう!もっと媚に媚びた声をだせ!女っぽくだ『まぁおぉうさまぁ〜もぉっとお〜』 もう一回いってみろ!」
「あ……こう……?まぁおうさま〜もっt」
「違ァーうっ!!棒読みじゃないか!それにほら、お前も!もっと魔王らしく、奴を猫可愛がりしろ!」
「ホント、どういうことよ……」
椅子に腰掛けている男、つまり俺の膝上にリリムが腰掛けている、つまりは対面座位の姿勢でいる。その2人に映画監督のようにメガホンを持ち、怒声を浴びせて指導しているヴァルキリーというかなりシュールな絵面。
さて、ここで問題、俺達は一体何をしているでしょうか?
正解は『イメージプレイ』の予行演習である。イメージプレイといっても、普段ベッドの上でするごっこ遊びの延長線上のものではなく、まるで本格的な演劇のような、用意周到なプレイである。どうしてこうなってしまったのか。俺の境遇と共にその経緯を紹介するとしよう。
俺、大塚康之は2人の嫁がいる。リリムのメリナとヴァルキリーのヘリアだ。不真面目と生真面目、奔放と自律、陽気と冷静、快楽的と禁欲的、自分本位と他人本位、常識と非常識、等々性格は真逆な部分が多い2人だったが、俺への愛の強さは甲乙付けがたいものだった。
俺と彼女達の馴れ初めは2人が同時に俺に一目惚れしたことからだった。魔王の娘らしく、セックスアピール全開にして誘惑してくるメリナと神の使いらしく神がどうたらこうたらと変な理屈をつけて俺と関係を持とうとするとヘリアの争いだった。俺は二匹の猫の取り合いになっているネズミのおもちゃ並に振り回されたものだった。
最終的には文字通り2匹の猫によるキャットファイトにまで発展したが、結局決着はつかなかった。
優柔不断だった俺はどちらかを選ぶなんてことは当然できるわけなく、最後は2人共受け入れることにした。そもそも、2人同時にアプローチされるという願ってもいない状況に内心最初から喜んでいたものだ。
正反対の2人との三角関係はどうなるものかと不安な部分もあったが、意外にも事は上手く運んだ。
正反対な分、お互いの長所を称え合い、短所を補い合うという互いを認め合い、高めていく良きライバルのような関係になった。付き合う前はいがみ合ってばかりの2人だったが、今となっては俺の誘惑に百合キスを使ってくるぐらいには仲良しとなった。それでも些細な小競り合いは今でも時々発生しているが。
俺としても趣旨が正反対の2種類のプレイを味わえたり、正反対の2人に同時に襲われる刺激的な3Pも味わえたりできるので最高の出会いだったことには疑いない。特に天使と悪魔の相反誘惑プレイは最低でも週一でヤる程に病みつきになっている。
時間をちょっと戻して少し前、ソファーの上で雑誌を読みながらいちゃつく俺とメリナの前に突然仁王立ちしたヘリアがこんな提案を吹っかけてきたのだった。
「本格的な闇堕ちプレイをしようではないか!」
「「は?」」
得意げな笑みを浮かべている彼女と対照的に、俺とメリナは意味が分からず、呆れてぽかんと口を開けていた。ヘリアの主張を要約すると今回は魔王に連れ去られ、虜となってしまった嘗ての勇者に襲われているうちに快楽に目覚めてしまう闇堕ちを舞台や衣装等も含めて本格的に演出した上でやりたいとのことだった。そんな大掛かりなプレイなんて想像もつかないので、俺は得意げな様子のヘリアになんて返せばいいのか思い浮かばず、黙っていた。
「わからないか!?快楽に堕ちていく様を演じて、この身で味わってみたいのだ!!」
「ナニ言ってんのよアンタ……」
メリナ目をじっとりと細めて呆れ果てた様子だった。そんな彼女を他所にヘリアが演説じみた口調で力説し続けた。
「魔王の娘たる貴様ならわかるだろう!神の使いである高潔で麗しき戦乙女が魔物に屈し、堕落することで快楽に目覚め、貪るという背徳的行為が織りなす素晴らしさを!」
「知らないわよ!」
声を荒げるメリナを他所に俺は彼女の右手に握られているものが何かを突き止めた。俺が相当昔に買った闇堕ちを題材にしたエロ漫画だ。
モンスター娘が出ているから衝動で買ったものの、メリナ達魔物娘のいる世界では当然ご法度の女性が不特定多数の男とヤッてる描写が多いため、そもそも俺が元からそういうものが嫌いだったので、買って直ぐに本棚の肥やしになり、いつしか押入れの奥にしまったものである。どうして、そしてどうやってヘリアはそんなものを見つけ出してきたのだろうか……。
ただ、これの影響を受けたのは明白であろう。
そんなことを考えている間にも2人はまだ口論していた。
「わからぬか?先達のヴァルキリーたちは魔物と教団の争いの中で、勇者を育て上げている間知らぬ間に魔力に蝕まれ、魔物側に寝返ってしまう冒涜や、圧倒的な魔物の力の前に屈し、抗いながらも最後には快楽にも屈し愛欲に目覚めてしまう堕落といった非日常を味わって来ているのだ。こちらの世界は平和過ぎてそのような経験が味わえんだろ?貴様もそんな体験してみただろう?」
「まぁ気持ちは分かるわ。だってお姉様、例えばデルエラお姉様みたいに甘く淫らに誰かを堕としたとないからねぇ……ここは教団との戦乱もないし……」
そう、こちらの世界には教団のような分かりやすい敵組織もなければ(教団よりも悪い奴らはゴロゴロいるが)、彼らの救世主兼ヤラレ役の勇者もいない。だから、なかなかファンタジーのように闇堕ちといった展開を味わうことができないのである。こちらに移住してきた魔物娘たちの悩みの種の1つである。
因みにそんな彼女たちの悩み解消手段の1つとしてレスカティエをはじめとする暗黒魔界都市では堕落体験ツアーを実施したりしているとのこと。だがヘリアはそんなものに頼らずに自分たちの力でやりたいとのこと。
「そうだろう?そんな我らだからこそ、たまには非日常を味わって見たいものだろ?貴公もそう思うだろ?」
「普段の営みでするイメージプレイでいいじゃない……康くんはどう思うの?」
「うーん、たまにはいいんじゃないかな。ちょっとぐらい大胆なプレイも面白そうじゃん。」
と俺はその時思っていた心境を率直に応えた。確かにたまには思いっきり刺激的かつ非日常的なプレイを堪能するのも悪くない。
しかし後ほど俺はヘリアに肯定的な返答をしたことを後悔することになる。
「そうか!さすがは我が見込んだだけある!というわけでだ、我らの夫の了承も得られたわけだ、早速これを読むがいい」
そう言って、喜びに満ちた表情でヘリアはどこから取り出してきたのか、俺とメリナに一冊ずつ、冊子を手渡してきた。
「何よこれ……何であんたこんなことには用意周到なのよ……」
メリナが呆れながら捲っているその冊子はなんとヘリアお手製の台本だった。これは恐らく俺が買い集めている『吹替の帝王』付属の吹替台本冊子辺りの影響だろう。
試しにパラパラ捲ってみると、どうやら俺の役目と思しき堕落した勇者役のセリフが目に入った。それはそれは、言うのも憚られる恥ずかしいセリフばかりで今さっきヘリアに同意したのをひどく後悔させられるものだった。
「何だよこれ……こんな恥ずかしいセリフ言える訳ないだろ!やっぱ却下!」
「そうよそうよ!そもそも何でアンタのこんなことに付き合わなきゃいけないのよ?」
「期間限定コク旨プリン」
「「ゔっ……!!」」
ヘリアの唱えた呪文によって俺とメリナは固まってしまった。
それは一月程前、俺が偶然通りかかった洋菓子屋『ブリス』に立ち寄った時のこと。ショーケースの中にふと目に入ったのが『期間限定コク旨プリン』であった。だがショーケース内の残りは2つ。しかもこれで今期最後なのだという。3個じゃないのを恨みつつも、俺はメリナとヘリアのお土産にと2つの限定プリンを買ったのだった。
ところがその日の夕刻、一足早く返ってきたメリナが冷蔵庫の中の限定プリンをいち早く発見し、1個を平らげ、もう1つを俺に餌付けしてきた。俺はいつも何気なくいちゃつくときのように、メリナの「あーん」を受け入れて全て平らげてしまった。
当然、この事はヘリアには秘密にしようと思ったが、押し入れの奥の闇堕ち漫画を見つけてくるような彼女だ、隠すように捨てた空き瓶をあっさりと見つけられてしまった。
へリアは俺たち2人に1つ、彼女の言うことを何でも言うことをきく権利と引き換えにこの抜け駆けを許してくれた。最初は何に行使してくるかと、緊張していたところだったが、忘れた頃にこんな形で行使してくるとは思わなかった。
「あの時の罪はきっちりと償ってもらうからな!」
「はぁ……仕方ないわね……で、何時ヤるの!?」
「うむ!よくぞ聞いてくれた!決行は来週。場所は……」
半ばヤケクソ気味なっているメリナに対し、へリアは待ってましたと超ゴキゲンな様子で自身の立てた計画を説明した。
要約すると1週間後、メリナの母、つまり魔王が経営するラブホテル、『キャッスル・コラプション』の一室、『玉座の間』にて行うのだという。部屋はもう予約済みとのこと。
そして俺たちが演じるストーリーのあらすじは次のとおりである。
邪悪な魔王(メリナ)を倒すべく、旅を続けていた勇者(俺、康之)とその従者ヴァルキリー(ヘリア)。ある日、戦いに破れ、勇者が魔王軍に連れ去られてしまう。世界を救うため、そして自らが慕う勇者を取り戻すため、孤独な戦いを続けたヴァルキリー。遂に満身創痍になりながらも魔王城にたどり着くのだった。だが、玉座の間に入った彼女が見たのは玉座にて淫らに交わる魔王と勇者の姿だった……!
そして、その本番までの一週間、演技の練習をすることになるのだが、ここからが本当の地獄だった。ヘリアの妙なこだわりはこの演技指導にも波及していた。
待っていたのは昭和の名監督やハリウッドの奇才が裸足で逃げ出すようなダメ出しの連続とイマイチ理解に苦しむアドバイスの連発だった。きっとこの場に灰皿があったら俺たちに投げつけていたに違いない。
「違う!メリナ!お前魔王の娘だろう!?もっと威厳と妖艶さを兼ね備えた声を出せ!腹の底から!それを意識してもう一回!」
「はいはい…………ふふふ……彼女を堕としてやりなさい……」
「違ぁあう!!今度は媚が足りん!ほら、我を出し抜いて康之殿を誘惑しようとしたときを思い出せ!」
「なんて言ったかしら……?」
「『あらいいの……♡?あんなカタブツ天使なんかより、私とならエッチなコト・しましょ♡』って言っただろう!その時の声色をミックスしてみろ!」
「まだ根に持ってたのね……あの時のこと……」
「康之殿!貴様もなっとらん、もう少し無垢になれ!そして、正気を無くせ!無垢で狂気な人間になれ!」
「どうすればいいんだよ……」
「まず、目から光を無くせ!それから体力はあるのにダウン寸前のボクサーみたいにふらふら歩け!それから石◯彰みたいな艶のあるショタっぽい声を出せ!」
「無茶言うなよ!」
「できないって言うからできないんだ!先ずやってみろ!ほら言え!『ひどいなぁ……正真正銘、僕は貴方が育てて下さった僕ですよ……』はい、リピートアフターミー!」
「松◯修造かよ……」
因みに、へリアは練習しなくていいのかということだが、今作の考案者だ。自身のセリフ、動きは完璧に暗記済みとのこと。何ならアドリブも余裕とのこと。しかもリハーサルと称して彼女の演技をみせてもらったが、正直ドン引きするほど上手かった。セリフ回しといい動きといい、本当にここが魔王城であり、主神の僕たるヴァルキリーが絶望へと叩き込まれる光景(俺とメリナが演じる場面)が眼前に広がっているようだった。
絶望に打ちひしがれる表情、快楽に抗い苦悶する表情、そして堕落し、自らの抱いていた欲望に目覚め恍惚とする表情。余りにもリアルすぎてメリナと2人して変な笑いがでたものだった。
正直、宝塚なりハリウッドなりボリウッドなりでやっていけるんじゃないかと2人で感心したものだった。
だがそんな名演を俺達ができるはずもなく、自身と同レベルのクオリティを求めるヘリアの演技指導は熾烈を極めた。下手すると何処ぞの特殊部隊の訓練の方がまだ生ぬるいのではないのかと何度も思ったほどだった。しかし、限定プリンの件と引き換えのこれなので異議を唱えることはできなかった。
と、これ以上一週間の指導過程について語っても仕方ないのでここからはいよいよ俺たちの演じたプレイをお見せしよう。誤解を招く表現、描写等が予想されるため、逐一脚注もいれておくことにしよう。
…………………………
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………………
…………
……
戦乙女の堕落(西暦20XX年、魔王歴XXXX年作品)
監督・脚本・制作・演出:ヘリア(ヴァルキリー)
出演
ヴァルキリー:ヘリア(ヴァルキリー)
勇者ヤスユキ:大塚康之
魔王メリナ:メリナ:(リリム)
「はぁ、はぁ……やっと……たどり着いたぞ……待っておれ、魔王よ……この私が……貴様の首を……撥ねてやる!」
「待ってろ……ヤスユキ……絶対に……救い出してやるからな!」
満身創痍の身体を引きずりながら、長い魔王城の廊下を1人歩くヴァルキリー、ヘリア。高潔なヴァルキリーを象徴するその鎧は数多の戦いで傷付き、ボロボロになっていた。その下の衣装も剣や槍の傷で破れ、所々に生傷、痣ができ、赤黒く滲んでいた(※)。
(※)ダメージ仕様の衣装と鎧は全てヘリアの自前、当然、傷口もメイク)
だがそんな事は彼女にとって問題ではなかった。自身が育て上げた勇者を連れ去られるというヴァルキリー最大の恥辱を味わいながらも(※)、幾多の困難を乗り越え、立ちはだかる幾千もの敵をなぎ倒し(※)、この身1つで魔王の拠点まで辿りついた。彼女にとっては、最愛の勇者を連れ戻すこと、それが叶うのであれば如何なる艱難辛苦も耐えるに造作もなかった。
(※)実際のところは何がヴァルキリー最大の恥辱であるかは議論を呼ぶ話題である
(※)当然これは演技ですので誰も倒していませんし、魔物娘が敗北するなんて有りえません
廊下の最奥にそびえる玉座の間を隔てる巨大な鉄扉。彼女がその前に立つと、指一本も触れていないにもかかわらず、扉は軋む音を立てながらゆっくりと開いた。ヘリアも剣を構え、来るべき最終決戦へと覚悟を決めた。
「さぁ魔王よ!覚悟しろ!」
世界の運命の雌雄を決する戦いであると同時に、最愛の勇者を取り戻す最後のチャンス。開かれる扉の前には毅然とした態度で剣を構える彼女の表情はどんな世界中の英雄と並べても敵わぬ凛々しさと猛々しさで溢れていた。
だが扉を超えた彼女の眼前に広がっていた光景はどんな悪夢にも劣らぬ、目を疑う光景だった。
「はぁっはあっ!いかがですか?魔王様……?ああっ……ふわぁ!」
「ふふふ……その言い方は止せ……あん♡……貴様は私の夫だろう……んん♡」
「ごめんなしゃい……メリナ様……」
「だが素晴らしい腰つきだ、上手になったな……っはぁ♡……さっきから何回も軽くイッてしまったぞ……っくう……♡」
「はい!ありがとうございます!」
「どれ、キスしてやろう……」
「んん……」
最も忌諱すべき存在である魔王は男と対面座位の姿勢で交わっていた。魔王は玉座に男を座らせ、下から突かせていた。そして自身はその上に跨がり、卑しくくねらせながら腰を振っていた。ぐちょぐちょと湿った秘部と秘部が擦れ合う水音、2人の肉のぶつかり合う音が2人の嬌声と共にホール中にこだましていた。だが、その行為自体は彼女にとってはどうでもいいことに思えた。それは、この魔王の相手こそが彼女にとって受け入れがたい現実そのものだったからだ。
魔王の相手をしている男……それはヘリアが最も付き従い、逞しく育て上げた存在、今は恐らく亡き彼の両親よりも(※)、誰よりも彼を見てきた彼女だからこそわかった。
(※)康之の両親は今も元気に暮らしています
魔王の下で耳を塞ぎたく声で喘いでいる男、それは紛れもなく、ヤスユキだった。しかし、嘗て自分が鍛え上げた末の誠実さを投影したような凛とした表情の勇者の面影は全く無くなっていた。色欲に溺れ、快楽で蕩け、恍惚で溢れた淫靡な顔をしていた(※)。
(※)ヘリアの演技指導の賜物です。
へリアは言葉を失った。魔王がこちらを一瞥することもなくひたすら快楽を貪ることに名状しがたい侮辱を覚えていた。だが、それ以上に囚われの身となっていたヤスユキと最悪の形で再開することになったショックの方が大きかった。その衝撃で放心し、蝋人形になったかのように固まってしまった。
「嘘……だろ……」
彼女の顔からは先程の勇ましさは消え失せ、絶望が滲み出していた。力なく口は開き、身体全体がわなわなと震えていた。地面をしっかり踏みしめていた足も立っているのも朧気な状態だった。
「そんな……」
手にも力が入らず、握っていた剣が彼女の手からこぼれ落ちた。大理石の上(※)に落ちた金属の乾いた音がホール中に響き渡った。それと同時に彼女も膝から崩れ落ちた。
(※)ホテル・コラプションは床に大理石を採用した豪華仕様です。
「あら?誰か来たみたいね?」
「あっ!ヘリア様!……っあっ……やっと来られたのですね!……っぁ……」
行為に夢中になっていた2人は剣が落ちた音で漸くヘリアの存在に気がついた。経リアは自分をひと目見てわかったことは本来喜ぶべきことなのだが、この状況では何の感情も浮かばなかった。だが、目を逸らしたい現実を前にしながら、なんとか言葉を紡いだ。
「おい……ヤスユキ殿……何をしているのだ……?」
震えた声で話した彼女に対し、ヤスユキは幼い子供のように無邪気に答えた(※)。
(※)演じてる本人はめっちゃ恥ずかしがっていますが耐えています。
「見てわかりませんか?……ああっ……魔王様、いえ、メリナ様と愛し合っているのです。あっ……ふぁあ……」
羞恥に耐えない言葉をなんの躊躇いもなく発するヤスユキを前にヘリアは次の質問をする気力も失せてしまった。
「嘘だ……こんなの……」
1人項垂れるヘリア他所にヤスユキとメリナは再び2人だけの世界に没入していた。
「ああっ!メリナ様!もうイきます!出ちゃいそうです!」
「いいぞ……出せ……私の膣内に存分に吐き出せ……私の子宮をお前の白濁で満たせ!」
「はぁはぁ……イキましゅ!」
「――――くっ……」
眼前の光景から目背けていたヘリアの目からは止めどなく涙が溢れていた(※)。彼を守ってやれなかった悔恨、魔王を前にして何もできない無力感、そんな自分に対する悲憤、様々な感情にせめぎ、1人大理石の床を濡らしていた。
(※)ヘリアの演技力でガチ泣きしております。
「ああ!メリナ様ぁああああ!」
「くぅうううう……出ている……熱いのが出てるぞ……」
先程まで激しく腰を振っていた2人は、絶頂に達し、固く抱きしめ合いながら動きを止めた。魔王メリナのヴァギナはヤスユキのペニスを奥まで飲み込んでいた。暫くの静寂の後、2人の接合部の間隙から飲み込みきれなかった白濁が溢れ出していた(※)。
無言のまま絶頂の余韻に浸っていた2人だったが、暫くした後、ヤスユキの耳元でメリナが告げたのだった。
(※)射精に至るまでの描写も全てヘリアの演技指導の賜物です。
「ふふふ……彼女を堕としてやりなさい……」
「えっ?それって……」
「彼女も貴方の大切な人だったのでしょう?貴方の手で彼女を救ってやりなさい……」
「よろしいのですか!?」
「えぇ、勿論よ。それに、その方が賑やかでいいと思わない♡」
「はい!ありがとうございます!」
あまりのショックで放心状態となり、ただ目から涙を流す機械のようになっていたヘリアの耳に2人の会話は届かなかった。だがひたひたと大理石の上を裸足で歩く音が近づいて来るのに気がつき、我に返った。
そこにはヤスユキが生まれたままの姿でふらふらと覚束ない足取りでしかし真っ直ぐヘリアに向かって歩いてきた。
「ヘリア様……お久しぶりです」
「ひっ……!!」
ヤスユキはヘリアが最後に見たときと外見は殆ど変わらっていなかった。彼の存在にすぐ気づくことができたのはそれが理由である。だが、今の彼は子供のような無垢な笑みを浮かべ、目には見えないが何か名状しがたいオーラのような闇の気迫のようなものが感じられた。それに加え、男の象徴を屹立させていた。男を知らぬヘリアにはそれはとても悍ましいものに思えた。
百戦錬磨のヴァルキリーでも嘗て仕え、育て上げた男の変わりように恐怖を覚え、後ろに倒れ込んでしまった。
「止めろ!く、来るなぁあああああ!お前なんかヤスユキでは……」
「ひどいなぁ……正真正銘、僕は貴方が育てて下さった僕ですよ……」
力なく後ずさりするヘリア。そんな彼女にヤスユキは距離を縮めていった。へリアは咄嗟に辺りを見回すと先程落した剣が目に入った。
こうなってしまってはもう自分の手に掛けるしかない、とはいえ長年付き添った相手にそんな事をする覚悟は彼女にはなかった。剣の所までは辿り付いたものの、近づく彼に振りかざすかどうか逡巡していた。
「お前なんか……おまえなんか!うあああああ!」
「彼は私の知っているヤスユキではない」そう言い聞かせながらやっとの思いで剣を取ろうとしたその時だった。
「えっ…………!?」
へリアはヤスユキに両腕を捕まれ、そのまま押し倒されてしまった。
「そんな……バカな!?」
稽古では手加減をした時以外ではヘリアがヤスユキにねじ伏せられる事は一度も無かった。力でも彼女のほうがずっと強かった。しかし、今の彼は赤子の手をひねるかのようにいともたやすく彼女をねじ伏せてしまった。
「バカなっ!こんな筈が!」
出せる最大の力で抵抗したものの、押しのけることはできなかった。それに対し、ヤスユキは何事もないかのようにけろっとしていた(※)。
(※)実際はヘリアが力抜いているだけです。
「ほら、よく見てください、僕ですよ。貴方と共に旅してきた……」
「止めろ!放せ!」
へリアは子供のようにじたばたと暴れ、彼を振りほどこうとした。しかし、依然として彼の力が衰えることはなかった。
「んちゅ……」
「ん!?んーーー!!」
突然ヤスユキはヘリアの唇を塞いだ。自らの唇で。予想もしなかった彼の強襲に彼女は何もできぬまま受け入れてしまった。彼は舌で彼女の歯列をこじ開け、彼女の口内をかき回した。舌と舌が絡み合い唾液がねちょねちょと絡む音が両者の頭の中に響き渡る。彼はメリナとの交わりで何度も味わった感覚であったために手慣れた様子だった。一方のヘリアは初体験の感覚に身体を震わせていた。わけも分からず身体が火照りだすと共に、すっかり脱力してしまい、身体の方は完全に抵抗できなくなってしまった(※)。
(※)相変わらずヘリアの名演が光ります。
「ぷは……」
「き、貴様……何をしたのか……分かっておるのか!?」
そう、ヴァルキリーの間ではありとあらゆる不純異性交友は禁じられていた。セックスは当然、キスやその他、徒に情欲を煽る行為はご法度とされている。それは彼女が仕える勇者も同じで彼らは常に純潔で清純な関係でなくてはならないのだ。
「そんなお硬いこと言っちゃって……本当はこんなこと望んでおられたのでしょ?」
「う、うるさい!」
「本当にそうですか?だってここ……」
「ひっ!?ひゃうん!!」
ヤスユキはヘリアの纏っているインナーの間から彼女の性器へと手を差し入れ、表面を撫で回した。彼女はネコのような素っ頓狂な声を上げてしまった。
「ほら、こんなにも濡れてる……僕がメリナ様と交わっていたのが羨ましかったんですね……」
「ち、違……っくっひゃぁああ……」
更に彼の手は、彼女の膣内へと伸び、内壁をかき回した。股間が無意識の間に濡れる現象に気づかなかった彼女にとって、この感覚は耐え難いものであった。
「あぁぁぁぁぁぁ……」
声にも成らない喘ぎ声を紡いでいた。全身が痺れるような感覚、下半身から徐々に熱がこみ上げてくるような感覚、彼の刺激によって生み出される感覚全てに彼女は痛みや苦しみではない別の感覚を感じていた。苦しくはなく、むしろ心地よい、もう少し、感じていたい、強いほうが嬉しい……それは紛れもなく快楽であった。
「ぁっ……や……め……ろ……」
だがかき乱されつつある頭ののかで残った理性を振り絞り、抵抗の言葉を繋いだ。へリアは性的快楽などという俗物的なものを感じていた自分に激しい嫌悪感を懐いていた。だが意に反して身体はそれを求めているかのようによがってしまう。
「……えっ?」
ちゅるり、とヤスユキの指が彼女の秘部から引き抜かれた。へリアはどこか心残りがあるかのような嘆息の声を漏らしてしまった。
「えっ……そんな……」
「何、もっとやって欲しかったですか?」
「ち、違う!貴様の誘惑など……」
「じゃあ、次はこっちですね。」
「ひっ!」
と、ヤスユキが自らの男性器を見せびらかしてきた。青筋が浮き立ち、暴力的なまでに張り詰め、太く禍々しく猛っていた。
「これを挿れて、僕を介してメリナ様の魔力を注げば、貴方も魔物の仲間入りですよ。大丈夫、怖いのは最初だけですから……」
「嫌だ!我は魔物などになりたくない!いっそ、魔物になるくらいなら高潔な天使のまま死ぬことを選ばせてくれ!……殺せ……いっそ殺してくれぇ!」
まるで駄々をこねる子供のように喚き、暴れ、のたうち回るヘリア。ヤスユキはそんな彼女に優しく話しかけたのだった。騒ぐ我が娘をあやすように。
「そんなこと言ってはいけませんよ。自分の命を粗末にするなんて主神や教団の連中が許しても、僕は許しませんからね」
「黙れ……」
「それに、そんな連中の下にいたら、いつまで立っても幸せになれませんよ」
「うるさい!……私の目的は……」
と、先程から強く憤りを見せていたヘリアの口が止まった。
「私は……」
「魔王様を倒すなんて馬鹿げた理由は止めてくださいよ。魔王様や魔物娘が悪だなんてのは教団の一方的な固定概念ですからね。」
へリアは今までの自分を振り返った。
魔物との戦いとは言ったものの、魔物が人を食らう現場に遭遇したことはなかった。どんな悍ましい外見をしているのかとも思いきや人間の女性が所々異なる四肢を持っているぐらいの差異しかないものばかりだった。退けるのにも僅かばかり罪悪感を感じてしまっていた。
魔物は闇より出る存在であり、それを打ち倒すのが主神の使いである自分の使命。頭では分かっていても、疑問が彼女の頭を過ることが何度もあった。
そして、自分が彼の下に降臨した頃、周囲はヤスユキと自分を世界の希望だ、奇跡だと持て囃した。だが、貧民出身で親の顔を見ずに育った彼は周囲の自分への当たり方が180度変わったことに辟易していたという。だがそんな中でも彼は頑張った。彼女の厳しい訓練にも泣き言1つ言わずに耐え、遂には彼女の厳しい勇者修行を全て乗り越えた。そして勇者の使命でもある魔物、魔王退治への旅へと出発した。道中では勇者を神のように崇め奉ろうとする者もいれば、未だに魔物を倒せない軟弱者と罵る者もいた。しかし、そんな中でも彼は顔色を変えずに耐え抜いていた。そんな彼女は彼に対して何もできないことに憤りを感じていた。(※)
(※ここまで全てヘリアの脳内設定)
「もういいんですよ。そんなことしなくても……それに……」
「そんなはずは……」
「ここまで来たのって、魔王様を倒すためだけでした?」
「……それは……」
魔王を倒すため。それが最大の目標であるはずだった。だが、ヘリアにはヤスユキに対するある思いが募っていたのがわかった。だが、その思いの正体が何であるのか全く名状しがたいものであった。その思いは彼に付き添った頃からモヤモヤと心の中に付きまとっていた。それは日に日に強くなっていくばかりでもどかしくなるばかりだった。そして、それは勇者が魔王軍に連れ去られた後に更に強くなっていった。
そうだ、思い返せば、彼が連れ去られて以降、戦乙女の使命とか世界を救うとかそういったことは上辺だけでしか考えていなかった。彼女が何よりも考えていたことそれは……。
「ヤスユキ殿……貴殿は……我をどう思っておったのだ……?」
自分の抱いた思いと向かい合う前にヘリアはヤスユキに問い質した。
ヤスユキはニコリと慈悲に溢れた笑みを返し、答えた。
「ずっと好きでした。勇者だった頃はずっと打ち明けられなかったですが、僕を我が子のように付き慕ってくれたあなたが大好きでした。」
「ヤスユキ……」
恐怖や悲しみで強張っていたヘリアの表情が初めて穏やかになった。彼が自らを好いていたことに安堵した彼女は自身に正直になる後押しが得られたのだった。
「挿れてくれ……」
「はい?」
「もういい……挿れてくれ……もう天使などやめたい……魔物にしてくれ……」
ヘリアは小声で懇願した。その目を涙で滲ませながら。
「やっとわかったのだ……我は貴殿を好いておったというのに……くだらない理屈でそれを自ら抑圧しておった……だから……」
「だから?」
「もう主神の手先などやめて、柵を全て捨てて、貴殿と……愛し合いたいのだ……」
ヘリアはヤスユキに恋愛感情を抱いていた。不遇な境遇でも懸命に生き、勇者としての使命のため、鍛錬を積み、そして自らを慕い続けた彼を。しかし、自らは神の使い、そしてその使命は勇者となる者に付き従い、魔物を倒し、世界に平和をもたらすこと。それを果たすためにはそのような感情は不要だと内に秘め続けた。
だが、そんなことはもうどうでも良くなった。魔王にも屈服し、自身の欲望に忠実になった彼に羨望を抱いていた。そしてヤスユキが語った魔物の真相から自身や勇者の存在意義に疑問を抱いた。そして何よりも自分を偽り続けるのにもう疲れ果てたのだった。ヤスユキへの恋情、それは彼と離れることで強くなったがそれでも抑えつけていた自分が嫌になったのだった。
だからこそ、もう自分は神の使い、ヴァルキリーである必要はないのだ。ヘリアはそう心に決めたのだった。
それを自覚すると彼女は自身の身体の変化に気がついた。身体は熱く火照り、先程彼にほぐされた秘部が疼いていた。そして秘部の空洞が何かに満たされなくてはならないという寂寥感を感じていた。そしてそれは今自らに覆いかぶさっている彼を見るたびに高鳴っていった。
「やっと自身に正直になりましたね。だったらお望み通り……」
「あぁ……♡」
ヤスユキが自らの剛直を彼女の蜜口にあてがった。その蜜口からは大量の愛液が滴っており、彼の剛直と擦れる度にくちゅりと淫らな水音を奏でた。
「魔物にしてあげますよ……」
「ああ……頼む……」
ヤスユキの肉棒はヘリアの腟口を捉えるとゆっくりと奥へと入り始めた。
「くぅぅぅ……♡」
ヤスユキの肉棒がヘリアの肉襞をかき分けていく度、痛みのような快楽がじわりじわりとヘリアを駆け上がっていった。彼女は身体を捩らせながら掠れるような声で喘いでいた。
「うあっ!……つぅううう♪」
そして彼女の処女の証をぷつりと呆気なく引き裂いた(※)。それは出血を伴うような痛みであったが、彼を受け入れた証として感じられ、強い悦びとなった。処女膜のあった場所を越えると彼の肉棒は幾重にも続く肉襞を押し流すと彼女の子宮口へと到達した。
(※)彼女の処女膜はとっくの昔に破られております。これも演技です。
「ああ!ヤスユキがああ♡我の膣内にぃ!くぅううう♪」
「ヘリアっ……ヘリア様ぁああ!」
ヘリアの腟口から愛液と共に紅い液体も流れ出した。処女膜を破った際の出血である。痛みを伴うはずの衝撃だったがそれ以上に自身の腟内が愛しい人で満たされた悦びに上書きされ、快楽となっていた。
「はぁっ……♡名前だけで……ああっ♡……呼んでくれ……!あっ♡……ヘリアって……♡」
「ヘリア……ヘリアああ!!」
「ああっ!……いいぞっ……いいぞ♪」
ヘリアは歓喜で喘いでいた。意中の男と肉体的にも結ばれるという、自身の深層に封印していた欲望が再起し、現実になった悦びをその身で体現するように乱れていた。情欲が満たされる喜悦の表情で顔を歪ませる彼女に嘗ての凛とした戦乙女の面影は最早なかった。
「ああっ!セックスが……こんなにも気持ちいいなんて!」
「僕も……気持ちよすぎて……もう……」
魔王と何回も交わり、既にインキュバスと化していたヤスユキにとってセックスは慣れたはずであった。しかし、彼をを強く欲すヘリアの膣肉は強く彼の逸物を貪った。その膣の暴力的な蠕動は彼を一気に追い詰めていった。
「出せ……出せ……♡出せ……!!貴殿の白濁で我の肉壷を満たしてくれ!!我を魔物にしてくれ!!」
「わかりました……全部……受け取ってください!!うっ……あああっ!!!」
「ひゃぁああああああ!!!!」
2人は同時に絶頂へと達した。ヤスユキの肉棒が脈動し、白濁がびゅくびゅくと迸り、ヘリアの膣内を満たしていった。ヘリアの膣も飲み物をゴクゴクと鳴らして飲み込む喉のようにドクドクと蠕動していた。2人は互いに性器を通じて伝わる振動を受け止めていた。快楽の余韻に浸る2人の艶の混じった吐息のみが暫くの間響き渡っていた。
「愛しておるぞ……ヤスユキ……」
彼の脈動が収まりつつある感じたヘリアは、涙を浮かべながら嬉しそうに微笑を浮かべてながら彼の顔を手に取りながら呟いた。
「僕もです……ヘリア……」
ヤスユキは返答するとゆっくり彼女の唇を自らの唇で塞いだ。収まりつつあったペニスの脈動が再び強くなり、尿道に残った残りの精液も全て吐き出そうとしていたようだった。ここまでの間も、ヘリアの膣は彼の精液を全て飲み込むかのように蠕動を止めなかった。
「ちゅ……」
「んちゅ……じゅるる……」
互いの唇が触れると真っ先に舌を挿れたのはヘリアだった。初めてされたときは悍ましさを感じたキスだったが、その快楽に目覚めた今は口の中が彼の味で満たされる至福のひとときだった。彼の舌と絡ませ、唾液を余すことなく味わおうと彼女は愛しげに彼の口内を貪った。
「「ぷは……」」
2人が唇を離すと、その間には混じりあった2人の唾液が糸を引き、切れた。
「いいもの見させてもらったわぁ♡」
2人が絡み合っている間、その様子をずっと観劇しているように見ていた魔王・メリナが2人の下に歩み寄ってきた。
「魔王……様、私、本当に魔物になったんですか?」
2人を見下ろすように立っていたメリナにヘリアが質問した。実際、魔物になるとはいえ、彼女は神より授けられた当時のヴァルキリーの肉体そのままであったからだ。
「安心して、今のですっかり生まれ変わったわ。魔物の『ヴァルキリー』としてね。だからもう昔みたいに余計なことは考えられないでしょ?」
「あぁ……本当ですね……ありがとうございます、魔王様!」
ヤスユキとの性交で精液や魔力を注がれ、彼女の思考はぐちゃぐちゃにかき乱されていた。嘗て抱いていた戦乙女の挟持だとか主神への忠誠だとかそういった物は微塵も感じなくなっていた。今やヤスユキに対する愛と肉欲のことばかりが彼女の頭を埋め尽くしていた。
「メリナでいいわ。もう貴方も私達夫婦の一員よ♪それより、貴方たちを見ていたら私もしたくなっちゃったわ。混ぜてもらえるかしら?」
「その方が楽しいですしね。いいですよね?ヘリア?」
「そうそう、貴方には教えることがたっぷりあるわ……もっと気持ちよくなれる方法とか……楽しみにしてね♪」
「はい……お願いします♡」
こうして魔王による肉欲の宴は1人増え、更に淫靡さをましたのだった。今でも魔王城では3人の嬌声が止まぬ日はないのだという。
…………………………
……………………
………………
…………
……
「ふぅー今日は楽しかったぞ!!」
「「……」」
俺たち3人は玉座の間にある大ベッドで裸のまま川の字に寝ていた。中央に俺、彼の右手側にメリナ、左手側にヘリアがいた
顔をつやつやにしてご満悦のヘリアに対して俺とメリナは無言で石仏の用に固まっていた。
「な?こういうプレイも悪くないであろう!?」
「そうね……まだ私はセリフが少なかったからいいわ。後半まで空気だったし……だけど彼はね」
「……」
気怠げな口調で口を開くメリナ、そしてその横で俺は両手で顔を覆っていた。
「康之殿!貴殿の演技は素晴らしかったぞ!我の要望を的確に捉えた……」
「何も言わんでくだせぇ……メッチャ恥ずかしいんだよぉこっちは……」
俺はか細い声でヘリアを制止した。自分の演技を思い出し、羞恥に悶えているところだった。演じているときはノリでなんとかなった。しかしいざ、自分が慣れない言葉を口にすると共に普段の自分とは大きく異なるキャラを演じ、2人の前で披露したことは人生の中で最も恥ずかしい行為だったとつくづく思いふけっていたのだった。
「あぁ……もう表を歩けない……」
「大丈夫よ、別に記録に残したりしたわけじゃ……ないよね?」
俺の頭を撫でて慰めているメリナが険しい表情でそちらを向いた。端役だったとはいえ、あまり思い返したくないものであるから、そんなもの残しておきたくない気分であったのだろう。
「当たり前だ!美しい思い出は美しいままにしておくのがいいのだ!」
「そう、ならいいわ……」
「なぁ今度はどんなプレイがいいだろうか?今度は理性を失った……」
「もう当分イメージプレイはいいです……それより寝させて」
「私も疲れちゃったから今日は寝るわね」
「ちぇっ、連れない奴らだ……」
俺とメリナは真っ先に布団に潜り、眠りについた。ヘリアは1人取り残されたような気分になり、浮かない顔をしていた。
俺としてはイメージプレイは性生活のマンネリ化を防ぐ上ではいいかもしれないが、ここまで本格的なのはごめんだ、と思ったのだった。
END
…………………………
……………………
………………
…………
……
???「今回はいいものを魅せてもらったのう……ほれ報酬じゃ。」
ヘリア「おお!こんなにも!いいのか?」
???「いいんじゃ、リリム✕ヴァルキリーを題材とした作品はありそうで無かったからのう、オマケに堕落を題材にした作品はかなり人気作なんじゃ」
ヘリア「しかし……康之殿もメリナも恥ずかしがっていたからな……やっぱり良心の呵責が……」
???「なに、我らが来る前にわんさかおったえーぶい俳優などが絶滅した今じゃ、代わりにごく普通の夫婦がこうしたアダルト作品に出ることは珍しくなくなっておるのだ。むしろ、自分たちの最高のプレイを競い合う場にもなっておるのじゃ。別に恥ずべきことではない」
ヘリア「そうか、それなら良かった!」
???「所で、その金で一体何をするつもりじゃ?」
ヘリア「彼らを温泉旅行にでも連れて行くつもりだ、迷惑もいっぱいかけたしな」
???「そうか、それでよいだろう、大切につかうんじゃぞ」
ヘリア「ああ!そなたには感謝しておるぞ、こんなことで金がもらえるとは思わなかった」
???「いや、いいんじゃ、それよりお主の演技は群を抜いて追った。また次回もイメージプレイをする時は呼んでくれんかのう?」
ヘリア「うむ、考えておこう。では今日は失礼するぞ」
???「また来てくれのう」
???「ふふ、このホテルでイメージプレイをする者を撮ると本当に良い作品になるのう。高値で売れるわい。別にちゃんと本人の許可もとったから合意の上だから問題は無いしな。これを配信なりソフト化なりして売れば大儲けじゃ。ここの管理人を任せて下さった魔王様には感謝しきれんわ」
インキュバス、リリム、ヴァルキリーの3人が写った映像をみて1人の刑部狸がほくそ笑んでいた。
「あ……こう……?まぁおうさま〜もっt」
「違ァーうっ!!棒読みじゃないか!それにほら、お前も!もっと魔王らしく、奴を猫可愛がりしろ!」
「ホント、どういうことよ……」
椅子に腰掛けている男、つまり俺の膝上にリリムが腰掛けている、つまりは対面座位の姿勢でいる。その2人に映画監督のようにメガホンを持ち、怒声を浴びせて指導しているヴァルキリーというかなりシュールな絵面。
さて、ここで問題、俺達は一体何をしているでしょうか?
正解は『イメージプレイ』の予行演習である。イメージプレイといっても、普段ベッドの上でするごっこ遊びの延長線上のものではなく、まるで本格的な演劇のような、用意周到なプレイである。どうしてこうなってしまったのか。俺の境遇と共にその経緯を紹介するとしよう。
俺、大塚康之は2人の嫁がいる。リリムのメリナとヴァルキリーのヘリアだ。不真面目と生真面目、奔放と自律、陽気と冷静、快楽的と禁欲的、自分本位と他人本位、常識と非常識、等々性格は真逆な部分が多い2人だったが、俺への愛の強さは甲乙付けがたいものだった。
俺と彼女達の馴れ初めは2人が同時に俺に一目惚れしたことからだった。魔王の娘らしく、セックスアピール全開にして誘惑してくるメリナと神の使いらしく神がどうたらこうたらと変な理屈をつけて俺と関係を持とうとするとヘリアの争いだった。俺は二匹の猫の取り合いになっているネズミのおもちゃ並に振り回されたものだった。
最終的には文字通り2匹の猫によるキャットファイトにまで発展したが、結局決着はつかなかった。
優柔不断だった俺はどちらかを選ぶなんてことは当然できるわけなく、最後は2人共受け入れることにした。そもそも、2人同時にアプローチされるという願ってもいない状況に内心最初から喜んでいたものだ。
正反対の2人との三角関係はどうなるものかと不安な部分もあったが、意外にも事は上手く運んだ。
正反対な分、お互いの長所を称え合い、短所を補い合うという互いを認め合い、高めていく良きライバルのような関係になった。付き合う前はいがみ合ってばかりの2人だったが、今となっては俺の誘惑に百合キスを使ってくるぐらいには仲良しとなった。それでも些細な小競り合いは今でも時々発生しているが。
俺としても趣旨が正反対の2種類のプレイを味わえたり、正反対の2人に同時に襲われる刺激的な3Pも味わえたりできるので最高の出会いだったことには疑いない。特に天使と悪魔の相反誘惑プレイは最低でも週一でヤる程に病みつきになっている。
時間をちょっと戻して少し前、ソファーの上で雑誌を読みながらいちゃつく俺とメリナの前に突然仁王立ちしたヘリアがこんな提案を吹っかけてきたのだった。
「本格的な闇堕ちプレイをしようではないか!」
「「は?」」
得意げな笑みを浮かべている彼女と対照的に、俺とメリナは意味が分からず、呆れてぽかんと口を開けていた。ヘリアの主張を要約すると今回は魔王に連れ去られ、虜となってしまった嘗ての勇者に襲われているうちに快楽に目覚めてしまう闇堕ちを舞台や衣装等も含めて本格的に演出した上でやりたいとのことだった。そんな大掛かりなプレイなんて想像もつかないので、俺は得意げな様子のヘリアになんて返せばいいのか思い浮かばず、黙っていた。
「わからないか!?快楽に堕ちていく様を演じて、この身で味わってみたいのだ!!」
「ナニ言ってんのよアンタ……」
メリナ目をじっとりと細めて呆れ果てた様子だった。そんな彼女を他所にヘリアが演説じみた口調で力説し続けた。
「魔王の娘たる貴様ならわかるだろう!神の使いである高潔で麗しき戦乙女が魔物に屈し、堕落することで快楽に目覚め、貪るという背徳的行為が織りなす素晴らしさを!」
「知らないわよ!」
声を荒げるメリナを他所に俺は彼女の右手に握られているものが何かを突き止めた。俺が相当昔に買った闇堕ちを題材にしたエロ漫画だ。
モンスター娘が出ているから衝動で買ったものの、メリナ達魔物娘のいる世界では当然ご法度の女性が不特定多数の男とヤッてる描写が多いため、そもそも俺が元からそういうものが嫌いだったので、買って直ぐに本棚の肥やしになり、いつしか押入れの奥にしまったものである。どうして、そしてどうやってヘリアはそんなものを見つけ出してきたのだろうか……。
ただ、これの影響を受けたのは明白であろう。
そんなことを考えている間にも2人はまだ口論していた。
「わからぬか?先達のヴァルキリーたちは魔物と教団の争いの中で、勇者を育て上げている間知らぬ間に魔力に蝕まれ、魔物側に寝返ってしまう冒涜や、圧倒的な魔物の力の前に屈し、抗いながらも最後には快楽にも屈し愛欲に目覚めてしまう堕落といった非日常を味わって来ているのだ。こちらの世界は平和過ぎてそのような経験が味わえんだろ?貴様もそんな体験してみただろう?」
「まぁ気持ちは分かるわ。だってお姉様、例えばデルエラお姉様みたいに甘く淫らに誰かを堕としたとないからねぇ……ここは教団との戦乱もないし……」
そう、こちらの世界には教団のような分かりやすい敵組織もなければ(教団よりも悪い奴らはゴロゴロいるが)、彼らの救世主兼ヤラレ役の勇者もいない。だから、なかなかファンタジーのように闇堕ちといった展開を味わうことができないのである。こちらに移住してきた魔物娘たちの悩みの種の1つである。
因みにそんな彼女たちの悩み解消手段の1つとしてレスカティエをはじめとする暗黒魔界都市では堕落体験ツアーを実施したりしているとのこと。だがヘリアはそんなものに頼らずに自分たちの力でやりたいとのこと。
「そうだろう?そんな我らだからこそ、たまには非日常を味わって見たいものだろ?貴公もそう思うだろ?」
「普段の営みでするイメージプレイでいいじゃない……康くんはどう思うの?」
「うーん、たまにはいいんじゃないかな。ちょっとぐらい大胆なプレイも面白そうじゃん。」
と俺はその時思っていた心境を率直に応えた。確かにたまには思いっきり刺激的かつ非日常的なプレイを堪能するのも悪くない。
しかし後ほど俺はヘリアに肯定的な返答をしたことを後悔することになる。
「そうか!さすがは我が見込んだだけある!というわけでだ、我らの夫の了承も得られたわけだ、早速これを読むがいい」
そう言って、喜びに満ちた表情でヘリアはどこから取り出してきたのか、俺とメリナに一冊ずつ、冊子を手渡してきた。
「何よこれ……何であんたこんなことには用意周到なのよ……」
メリナが呆れながら捲っているその冊子はなんとヘリアお手製の台本だった。これは恐らく俺が買い集めている『吹替の帝王』付属の吹替台本冊子辺りの影響だろう。
試しにパラパラ捲ってみると、どうやら俺の役目と思しき堕落した勇者役のセリフが目に入った。それはそれは、言うのも憚られる恥ずかしいセリフばかりで今さっきヘリアに同意したのをひどく後悔させられるものだった。
「何だよこれ……こんな恥ずかしいセリフ言える訳ないだろ!やっぱ却下!」
「そうよそうよ!そもそも何でアンタのこんなことに付き合わなきゃいけないのよ?」
「期間限定コク旨プリン」
「「ゔっ……!!」」
ヘリアの唱えた呪文によって俺とメリナは固まってしまった。
それは一月程前、俺が偶然通りかかった洋菓子屋『ブリス』に立ち寄った時のこと。ショーケースの中にふと目に入ったのが『期間限定コク旨プリン』であった。だがショーケース内の残りは2つ。しかもこれで今期最後なのだという。3個じゃないのを恨みつつも、俺はメリナとヘリアのお土産にと2つの限定プリンを買ったのだった。
ところがその日の夕刻、一足早く返ってきたメリナが冷蔵庫の中の限定プリンをいち早く発見し、1個を平らげ、もう1つを俺に餌付けしてきた。俺はいつも何気なくいちゃつくときのように、メリナの「あーん」を受け入れて全て平らげてしまった。
当然、この事はヘリアには秘密にしようと思ったが、押し入れの奥の闇堕ち漫画を見つけてくるような彼女だ、隠すように捨てた空き瓶をあっさりと見つけられてしまった。
へリアは俺たち2人に1つ、彼女の言うことを何でも言うことをきく権利と引き換えにこの抜け駆けを許してくれた。最初は何に行使してくるかと、緊張していたところだったが、忘れた頃にこんな形で行使してくるとは思わなかった。
「あの時の罪はきっちりと償ってもらうからな!」
「はぁ……仕方ないわね……で、何時ヤるの!?」
「うむ!よくぞ聞いてくれた!決行は来週。場所は……」
半ばヤケクソ気味なっているメリナに対し、へリアは待ってましたと超ゴキゲンな様子で自身の立てた計画を説明した。
要約すると1週間後、メリナの母、つまり魔王が経営するラブホテル、『キャッスル・コラプション』の一室、『玉座の間』にて行うのだという。部屋はもう予約済みとのこと。
そして俺たちが演じるストーリーのあらすじは次のとおりである。
邪悪な魔王(メリナ)を倒すべく、旅を続けていた勇者(俺、康之)とその従者ヴァルキリー(ヘリア)。ある日、戦いに破れ、勇者が魔王軍に連れ去られてしまう。世界を救うため、そして自らが慕う勇者を取り戻すため、孤独な戦いを続けたヴァルキリー。遂に満身創痍になりながらも魔王城にたどり着くのだった。だが、玉座の間に入った彼女が見たのは玉座にて淫らに交わる魔王と勇者の姿だった……!
そして、その本番までの一週間、演技の練習をすることになるのだが、ここからが本当の地獄だった。ヘリアの妙なこだわりはこの演技指導にも波及していた。
待っていたのは昭和の名監督やハリウッドの奇才が裸足で逃げ出すようなダメ出しの連続とイマイチ理解に苦しむアドバイスの連発だった。きっとこの場に灰皿があったら俺たちに投げつけていたに違いない。
「違う!メリナ!お前魔王の娘だろう!?もっと威厳と妖艶さを兼ね備えた声を出せ!腹の底から!それを意識してもう一回!」
「はいはい…………ふふふ……彼女を堕としてやりなさい……」
「違ぁあう!!今度は媚が足りん!ほら、我を出し抜いて康之殿を誘惑しようとしたときを思い出せ!」
「なんて言ったかしら……?」
「『あらいいの……♡?あんなカタブツ天使なんかより、私とならエッチなコト・しましょ♡』って言っただろう!その時の声色をミックスしてみろ!」
「まだ根に持ってたのね……あの時のこと……」
「康之殿!貴様もなっとらん、もう少し無垢になれ!そして、正気を無くせ!無垢で狂気な人間になれ!」
「どうすればいいんだよ……」
「まず、目から光を無くせ!それから体力はあるのにダウン寸前のボクサーみたいにふらふら歩け!それから石◯彰みたいな艶のあるショタっぽい声を出せ!」
「無茶言うなよ!」
「できないって言うからできないんだ!先ずやってみろ!ほら言え!『ひどいなぁ……正真正銘、僕は貴方が育てて下さった僕ですよ……』はい、リピートアフターミー!」
「松◯修造かよ……」
因みに、へリアは練習しなくていいのかということだが、今作の考案者だ。自身のセリフ、動きは完璧に暗記済みとのこと。何ならアドリブも余裕とのこと。しかもリハーサルと称して彼女の演技をみせてもらったが、正直ドン引きするほど上手かった。セリフ回しといい動きといい、本当にここが魔王城であり、主神の僕たるヴァルキリーが絶望へと叩き込まれる光景(俺とメリナが演じる場面)が眼前に広がっているようだった。
絶望に打ちひしがれる表情、快楽に抗い苦悶する表情、そして堕落し、自らの抱いていた欲望に目覚め恍惚とする表情。余りにもリアルすぎてメリナと2人して変な笑いがでたものだった。
正直、宝塚なりハリウッドなりボリウッドなりでやっていけるんじゃないかと2人で感心したものだった。
だがそんな名演を俺達ができるはずもなく、自身と同レベルのクオリティを求めるヘリアの演技指導は熾烈を極めた。下手すると何処ぞの特殊部隊の訓練の方がまだ生ぬるいのではないのかと何度も思ったほどだった。しかし、限定プリンの件と引き換えのこれなので異議を唱えることはできなかった。
と、これ以上一週間の指導過程について語っても仕方ないのでここからはいよいよ俺たちの演じたプレイをお見せしよう。誤解を招く表現、描写等が予想されるため、逐一脚注もいれておくことにしよう。
…………………………
……………………
………………
…………
……
戦乙女の堕落(西暦20XX年、魔王歴XXXX年作品)
監督・脚本・制作・演出:ヘリア(ヴァルキリー)
出演
ヴァルキリー:ヘリア(ヴァルキリー)
勇者ヤスユキ:大塚康之
魔王メリナ:メリナ:(リリム)
「はぁ、はぁ……やっと……たどり着いたぞ……待っておれ、魔王よ……この私が……貴様の首を……撥ねてやる!」
「待ってろ……ヤスユキ……絶対に……救い出してやるからな!」
満身創痍の身体を引きずりながら、長い魔王城の廊下を1人歩くヴァルキリー、ヘリア。高潔なヴァルキリーを象徴するその鎧は数多の戦いで傷付き、ボロボロになっていた。その下の衣装も剣や槍の傷で破れ、所々に生傷、痣ができ、赤黒く滲んでいた(※)。
(※)ダメージ仕様の衣装と鎧は全てヘリアの自前、当然、傷口もメイク)
だがそんな事は彼女にとって問題ではなかった。自身が育て上げた勇者を連れ去られるというヴァルキリー最大の恥辱を味わいながらも(※)、幾多の困難を乗り越え、立ちはだかる幾千もの敵をなぎ倒し(※)、この身1つで魔王の拠点まで辿りついた。彼女にとっては、最愛の勇者を連れ戻すこと、それが叶うのであれば如何なる艱難辛苦も耐えるに造作もなかった。
(※)実際のところは何がヴァルキリー最大の恥辱であるかは議論を呼ぶ話題である
(※)当然これは演技ですので誰も倒していませんし、魔物娘が敗北するなんて有りえません
廊下の最奥にそびえる玉座の間を隔てる巨大な鉄扉。彼女がその前に立つと、指一本も触れていないにもかかわらず、扉は軋む音を立てながらゆっくりと開いた。ヘリアも剣を構え、来るべき最終決戦へと覚悟を決めた。
「さぁ魔王よ!覚悟しろ!」
世界の運命の雌雄を決する戦いであると同時に、最愛の勇者を取り戻す最後のチャンス。開かれる扉の前には毅然とした態度で剣を構える彼女の表情はどんな世界中の英雄と並べても敵わぬ凛々しさと猛々しさで溢れていた。
だが扉を超えた彼女の眼前に広がっていた光景はどんな悪夢にも劣らぬ、目を疑う光景だった。
「はぁっはあっ!いかがですか?魔王様……?ああっ……ふわぁ!」
「ふふふ……その言い方は止せ……あん♡……貴様は私の夫だろう……んん♡」
「ごめんなしゃい……メリナ様……」
「だが素晴らしい腰つきだ、上手になったな……っはぁ♡……さっきから何回も軽くイッてしまったぞ……っくう……♡」
「はい!ありがとうございます!」
「どれ、キスしてやろう……」
「んん……」
最も忌諱すべき存在である魔王は男と対面座位の姿勢で交わっていた。魔王は玉座に男を座らせ、下から突かせていた。そして自身はその上に跨がり、卑しくくねらせながら腰を振っていた。ぐちょぐちょと湿った秘部と秘部が擦れ合う水音、2人の肉のぶつかり合う音が2人の嬌声と共にホール中にこだましていた。だが、その行為自体は彼女にとってはどうでもいいことに思えた。それは、この魔王の相手こそが彼女にとって受け入れがたい現実そのものだったからだ。
魔王の相手をしている男……それはヘリアが最も付き従い、逞しく育て上げた存在、今は恐らく亡き彼の両親よりも(※)、誰よりも彼を見てきた彼女だからこそわかった。
(※)康之の両親は今も元気に暮らしています
魔王の下で耳を塞ぎたく声で喘いでいる男、それは紛れもなく、ヤスユキだった。しかし、嘗て自分が鍛え上げた末の誠実さを投影したような凛とした表情の勇者の面影は全く無くなっていた。色欲に溺れ、快楽で蕩け、恍惚で溢れた淫靡な顔をしていた(※)。
(※)ヘリアの演技指導の賜物です。
へリアは言葉を失った。魔王がこちらを一瞥することもなくひたすら快楽を貪ることに名状しがたい侮辱を覚えていた。だが、それ以上に囚われの身となっていたヤスユキと最悪の形で再開することになったショックの方が大きかった。その衝撃で放心し、蝋人形になったかのように固まってしまった。
「嘘……だろ……」
彼女の顔からは先程の勇ましさは消え失せ、絶望が滲み出していた。力なく口は開き、身体全体がわなわなと震えていた。地面をしっかり踏みしめていた足も立っているのも朧気な状態だった。
「そんな……」
手にも力が入らず、握っていた剣が彼女の手からこぼれ落ちた。大理石の上(※)に落ちた金属の乾いた音がホール中に響き渡った。それと同時に彼女も膝から崩れ落ちた。
(※)ホテル・コラプションは床に大理石を採用した豪華仕様です。
「あら?誰か来たみたいね?」
「あっ!ヘリア様!……っあっ……やっと来られたのですね!……っぁ……」
行為に夢中になっていた2人は剣が落ちた音で漸くヘリアの存在に気がついた。経リアは自分をひと目見てわかったことは本来喜ぶべきことなのだが、この状況では何の感情も浮かばなかった。だが、目を逸らしたい現実を前にしながら、なんとか言葉を紡いだ。
「おい……ヤスユキ殿……何をしているのだ……?」
震えた声で話した彼女に対し、ヤスユキは幼い子供のように無邪気に答えた(※)。
(※)演じてる本人はめっちゃ恥ずかしがっていますが耐えています。
「見てわかりませんか?……ああっ……魔王様、いえ、メリナ様と愛し合っているのです。あっ……ふぁあ……」
羞恥に耐えない言葉をなんの躊躇いもなく発するヤスユキを前にヘリアは次の質問をする気力も失せてしまった。
「嘘だ……こんなの……」
1人項垂れるヘリア他所にヤスユキとメリナは再び2人だけの世界に没入していた。
「ああっ!メリナ様!もうイきます!出ちゃいそうです!」
「いいぞ……出せ……私の膣内に存分に吐き出せ……私の子宮をお前の白濁で満たせ!」
「はぁはぁ……イキましゅ!」
「――――くっ……」
眼前の光景から目背けていたヘリアの目からは止めどなく涙が溢れていた(※)。彼を守ってやれなかった悔恨、魔王を前にして何もできない無力感、そんな自分に対する悲憤、様々な感情にせめぎ、1人大理石の床を濡らしていた。
(※)ヘリアの演技力でガチ泣きしております。
「ああ!メリナ様ぁああああ!」
「くぅうううう……出ている……熱いのが出てるぞ……」
先程まで激しく腰を振っていた2人は、絶頂に達し、固く抱きしめ合いながら動きを止めた。魔王メリナのヴァギナはヤスユキのペニスを奥まで飲み込んでいた。暫くの静寂の後、2人の接合部の間隙から飲み込みきれなかった白濁が溢れ出していた(※)。
無言のまま絶頂の余韻に浸っていた2人だったが、暫くした後、ヤスユキの耳元でメリナが告げたのだった。
(※)射精に至るまでの描写も全てヘリアの演技指導の賜物です。
「ふふふ……彼女を堕としてやりなさい……」
「えっ?それって……」
「彼女も貴方の大切な人だったのでしょう?貴方の手で彼女を救ってやりなさい……」
「よろしいのですか!?」
「えぇ、勿論よ。それに、その方が賑やかでいいと思わない♡」
「はい!ありがとうございます!」
あまりのショックで放心状態となり、ただ目から涙を流す機械のようになっていたヘリアの耳に2人の会話は届かなかった。だがひたひたと大理石の上を裸足で歩く音が近づいて来るのに気がつき、我に返った。
そこにはヤスユキが生まれたままの姿でふらふらと覚束ない足取りでしかし真っ直ぐヘリアに向かって歩いてきた。
「ヘリア様……お久しぶりです」
「ひっ……!!」
ヤスユキはヘリアが最後に見たときと外見は殆ど変わらっていなかった。彼の存在にすぐ気づくことができたのはそれが理由である。だが、今の彼は子供のような無垢な笑みを浮かべ、目には見えないが何か名状しがたいオーラのような闇の気迫のようなものが感じられた。それに加え、男の象徴を屹立させていた。男を知らぬヘリアにはそれはとても悍ましいものに思えた。
百戦錬磨のヴァルキリーでも嘗て仕え、育て上げた男の変わりように恐怖を覚え、後ろに倒れ込んでしまった。
「止めろ!く、来るなぁあああああ!お前なんかヤスユキでは……」
「ひどいなぁ……正真正銘、僕は貴方が育てて下さった僕ですよ……」
力なく後ずさりするヘリア。そんな彼女にヤスユキは距離を縮めていった。へリアは咄嗟に辺りを見回すと先程落した剣が目に入った。
こうなってしまってはもう自分の手に掛けるしかない、とはいえ長年付き添った相手にそんな事をする覚悟は彼女にはなかった。剣の所までは辿り付いたものの、近づく彼に振りかざすかどうか逡巡していた。
「お前なんか……おまえなんか!うあああああ!」
「彼は私の知っているヤスユキではない」そう言い聞かせながらやっとの思いで剣を取ろうとしたその時だった。
「えっ…………!?」
へリアはヤスユキに両腕を捕まれ、そのまま押し倒されてしまった。
「そんな……バカな!?」
稽古では手加減をした時以外ではヘリアがヤスユキにねじ伏せられる事は一度も無かった。力でも彼女のほうがずっと強かった。しかし、今の彼は赤子の手をひねるかのようにいともたやすく彼女をねじ伏せてしまった。
「バカなっ!こんな筈が!」
出せる最大の力で抵抗したものの、押しのけることはできなかった。それに対し、ヤスユキは何事もないかのようにけろっとしていた(※)。
(※)実際はヘリアが力抜いているだけです。
「ほら、よく見てください、僕ですよ。貴方と共に旅してきた……」
「止めろ!放せ!」
へリアは子供のようにじたばたと暴れ、彼を振りほどこうとした。しかし、依然として彼の力が衰えることはなかった。
「んちゅ……」
「ん!?んーーー!!」
突然ヤスユキはヘリアの唇を塞いだ。自らの唇で。予想もしなかった彼の強襲に彼女は何もできぬまま受け入れてしまった。彼は舌で彼女の歯列をこじ開け、彼女の口内をかき回した。舌と舌が絡み合い唾液がねちょねちょと絡む音が両者の頭の中に響き渡る。彼はメリナとの交わりで何度も味わった感覚であったために手慣れた様子だった。一方のヘリアは初体験の感覚に身体を震わせていた。わけも分からず身体が火照りだすと共に、すっかり脱力してしまい、身体の方は完全に抵抗できなくなってしまった(※)。
(※)相変わらずヘリアの名演が光ります。
「ぷは……」
「き、貴様……何をしたのか……分かっておるのか!?」
そう、ヴァルキリーの間ではありとあらゆる不純異性交友は禁じられていた。セックスは当然、キスやその他、徒に情欲を煽る行為はご法度とされている。それは彼女が仕える勇者も同じで彼らは常に純潔で清純な関係でなくてはならないのだ。
「そんなお硬いこと言っちゃって……本当はこんなこと望んでおられたのでしょ?」
「う、うるさい!」
「本当にそうですか?だってここ……」
「ひっ!?ひゃうん!!」
ヤスユキはヘリアの纏っているインナーの間から彼女の性器へと手を差し入れ、表面を撫で回した。彼女はネコのような素っ頓狂な声を上げてしまった。
「ほら、こんなにも濡れてる……僕がメリナ様と交わっていたのが羨ましかったんですね……」
「ち、違……っくっひゃぁああ……」
更に彼の手は、彼女の膣内へと伸び、内壁をかき回した。股間が無意識の間に濡れる現象に気づかなかった彼女にとって、この感覚は耐え難いものであった。
「あぁぁぁぁぁぁ……」
声にも成らない喘ぎ声を紡いでいた。全身が痺れるような感覚、下半身から徐々に熱がこみ上げてくるような感覚、彼の刺激によって生み出される感覚全てに彼女は痛みや苦しみではない別の感覚を感じていた。苦しくはなく、むしろ心地よい、もう少し、感じていたい、強いほうが嬉しい……それは紛れもなく快楽であった。
「ぁっ……や……め……ろ……」
だがかき乱されつつある頭ののかで残った理性を振り絞り、抵抗の言葉を繋いだ。へリアは性的快楽などという俗物的なものを感じていた自分に激しい嫌悪感を懐いていた。だが意に反して身体はそれを求めているかのようによがってしまう。
「……えっ?」
ちゅるり、とヤスユキの指が彼女の秘部から引き抜かれた。へリアはどこか心残りがあるかのような嘆息の声を漏らしてしまった。
「えっ……そんな……」
「何、もっとやって欲しかったですか?」
「ち、違う!貴様の誘惑など……」
「じゃあ、次はこっちですね。」
「ひっ!」
と、ヤスユキが自らの男性器を見せびらかしてきた。青筋が浮き立ち、暴力的なまでに張り詰め、太く禍々しく猛っていた。
「これを挿れて、僕を介してメリナ様の魔力を注げば、貴方も魔物の仲間入りですよ。大丈夫、怖いのは最初だけですから……」
「嫌だ!我は魔物などになりたくない!いっそ、魔物になるくらいなら高潔な天使のまま死ぬことを選ばせてくれ!……殺せ……いっそ殺してくれぇ!」
まるで駄々をこねる子供のように喚き、暴れ、のたうち回るヘリア。ヤスユキはそんな彼女に優しく話しかけたのだった。騒ぐ我が娘をあやすように。
「そんなこと言ってはいけませんよ。自分の命を粗末にするなんて主神や教団の連中が許しても、僕は許しませんからね」
「黙れ……」
「それに、そんな連中の下にいたら、いつまで立っても幸せになれませんよ」
「うるさい!……私の目的は……」
と、先程から強く憤りを見せていたヘリアの口が止まった。
「私は……」
「魔王様を倒すなんて馬鹿げた理由は止めてくださいよ。魔王様や魔物娘が悪だなんてのは教団の一方的な固定概念ですからね。」
へリアは今までの自分を振り返った。
魔物との戦いとは言ったものの、魔物が人を食らう現場に遭遇したことはなかった。どんな悍ましい外見をしているのかとも思いきや人間の女性が所々異なる四肢を持っているぐらいの差異しかないものばかりだった。退けるのにも僅かばかり罪悪感を感じてしまっていた。
魔物は闇より出る存在であり、それを打ち倒すのが主神の使いである自分の使命。頭では分かっていても、疑問が彼女の頭を過ることが何度もあった。
そして、自分が彼の下に降臨した頃、周囲はヤスユキと自分を世界の希望だ、奇跡だと持て囃した。だが、貧民出身で親の顔を見ずに育った彼は周囲の自分への当たり方が180度変わったことに辟易していたという。だがそんな中でも彼は頑張った。彼女の厳しい訓練にも泣き言1つ言わずに耐え、遂には彼女の厳しい勇者修行を全て乗り越えた。そして勇者の使命でもある魔物、魔王退治への旅へと出発した。道中では勇者を神のように崇め奉ろうとする者もいれば、未だに魔物を倒せない軟弱者と罵る者もいた。しかし、そんな中でも彼は顔色を変えずに耐え抜いていた。そんな彼女は彼に対して何もできないことに憤りを感じていた。(※)
(※ここまで全てヘリアの脳内設定)
「もういいんですよ。そんなことしなくても……それに……」
「そんなはずは……」
「ここまで来たのって、魔王様を倒すためだけでした?」
「……それは……」
魔王を倒すため。それが最大の目標であるはずだった。だが、ヘリアにはヤスユキに対するある思いが募っていたのがわかった。だが、その思いの正体が何であるのか全く名状しがたいものであった。その思いは彼に付き添った頃からモヤモヤと心の中に付きまとっていた。それは日に日に強くなっていくばかりでもどかしくなるばかりだった。そして、それは勇者が魔王軍に連れ去られた後に更に強くなっていった。
そうだ、思い返せば、彼が連れ去られて以降、戦乙女の使命とか世界を救うとかそういったことは上辺だけでしか考えていなかった。彼女が何よりも考えていたことそれは……。
「ヤスユキ殿……貴殿は……我をどう思っておったのだ……?」
自分の抱いた思いと向かい合う前にヘリアはヤスユキに問い質した。
ヤスユキはニコリと慈悲に溢れた笑みを返し、答えた。
「ずっと好きでした。勇者だった頃はずっと打ち明けられなかったですが、僕を我が子のように付き慕ってくれたあなたが大好きでした。」
「ヤスユキ……」
恐怖や悲しみで強張っていたヘリアの表情が初めて穏やかになった。彼が自らを好いていたことに安堵した彼女は自身に正直になる後押しが得られたのだった。
「挿れてくれ……」
「はい?」
「もういい……挿れてくれ……もう天使などやめたい……魔物にしてくれ……」
ヘリアは小声で懇願した。その目を涙で滲ませながら。
「やっとわかったのだ……我は貴殿を好いておったというのに……くだらない理屈でそれを自ら抑圧しておった……だから……」
「だから?」
「もう主神の手先などやめて、柵を全て捨てて、貴殿と……愛し合いたいのだ……」
ヘリアはヤスユキに恋愛感情を抱いていた。不遇な境遇でも懸命に生き、勇者としての使命のため、鍛錬を積み、そして自らを慕い続けた彼を。しかし、自らは神の使い、そしてその使命は勇者となる者に付き従い、魔物を倒し、世界に平和をもたらすこと。それを果たすためにはそのような感情は不要だと内に秘め続けた。
だが、そんなことはもうどうでも良くなった。魔王にも屈服し、自身の欲望に忠実になった彼に羨望を抱いていた。そしてヤスユキが語った魔物の真相から自身や勇者の存在意義に疑問を抱いた。そして何よりも自分を偽り続けるのにもう疲れ果てたのだった。ヤスユキへの恋情、それは彼と離れることで強くなったがそれでも抑えつけていた自分が嫌になったのだった。
だからこそ、もう自分は神の使い、ヴァルキリーである必要はないのだ。ヘリアはそう心に決めたのだった。
それを自覚すると彼女は自身の身体の変化に気がついた。身体は熱く火照り、先程彼にほぐされた秘部が疼いていた。そして秘部の空洞が何かに満たされなくてはならないという寂寥感を感じていた。そしてそれは今自らに覆いかぶさっている彼を見るたびに高鳴っていった。
「やっと自身に正直になりましたね。だったらお望み通り……」
「あぁ……♡」
ヤスユキが自らの剛直を彼女の蜜口にあてがった。その蜜口からは大量の愛液が滴っており、彼の剛直と擦れる度にくちゅりと淫らな水音を奏でた。
「魔物にしてあげますよ……」
「ああ……頼む……」
ヤスユキの肉棒はヘリアの腟口を捉えるとゆっくりと奥へと入り始めた。
「くぅぅぅ……♡」
ヤスユキの肉棒がヘリアの肉襞をかき分けていく度、痛みのような快楽がじわりじわりとヘリアを駆け上がっていった。彼女は身体を捩らせながら掠れるような声で喘いでいた。
「うあっ!……つぅううう♪」
そして彼女の処女の証をぷつりと呆気なく引き裂いた(※)。それは出血を伴うような痛みであったが、彼を受け入れた証として感じられ、強い悦びとなった。処女膜のあった場所を越えると彼の肉棒は幾重にも続く肉襞を押し流すと彼女の子宮口へと到達した。
(※)彼女の処女膜はとっくの昔に破られております。これも演技です。
「ああ!ヤスユキがああ♡我の膣内にぃ!くぅううう♪」
「ヘリアっ……ヘリア様ぁああ!」
ヘリアの腟口から愛液と共に紅い液体も流れ出した。処女膜を破った際の出血である。痛みを伴うはずの衝撃だったがそれ以上に自身の腟内が愛しい人で満たされた悦びに上書きされ、快楽となっていた。
「はぁっ……♡名前だけで……ああっ♡……呼んでくれ……!あっ♡……ヘリアって……♡」
「ヘリア……ヘリアああ!!」
「ああっ!……いいぞっ……いいぞ♪」
ヘリアは歓喜で喘いでいた。意中の男と肉体的にも結ばれるという、自身の深層に封印していた欲望が再起し、現実になった悦びをその身で体現するように乱れていた。情欲が満たされる喜悦の表情で顔を歪ませる彼女に嘗ての凛とした戦乙女の面影は最早なかった。
「ああっ!セックスが……こんなにも気持ちいいなんて!」
「僕も……気持ちよすぎて……もう……」
魔王と何回も交わり、既にインキュバスと化していたヤスユキにとってセックスは慣れたはずであった。しかし、彼をを強く欲すヘリアの膣肉は強く彼の逸物を貪った。その膣の暴力的な蠕動は彼を一気に追い詰めていった。
「出せ……出せ……♡出せ……!!貴殿の白濁で我の肉壷を満たしてくれ!!我を魔物にしてくれ!!」
「わかりました……全部……受け取ってください!!うっ……あああっ!!!」
「ひゃぁああああああ!!!!」
2人は同時に絶頂へと達した。ヤスユキの肉棒が脈動し、白濁がびゅくびゅくと迸り、ヘリアの膣内を満たしていった。ヘリアの膣も飲み物をゴクゴクと鳴らして飲み込む喉のようにドクドクと蠕動していた。2人は互いに性器を通じて伝わる振動を受け止めていた。快楽の余韻に浸る2人の艶の混じった吐息のみが暫くの間響き渡っていた。
「愛しておるぞ……ヤスユキ……」
彼の脈動が収まりつつある感じたヘリアは、涙を浮かべながら嬉しそうに微笑を浮かべてながら彼の顔を手に取りながら呟いた。
「僕もです……ヘリア……」
ヤスユキは返答するとゆっくり彼女の唇を自らの唇で塞いだ。収まりつつあったペニスの脈動が再び強くなり、尿道に残った残りの精液も全て吐き出そうとしていたようだった。ここまでの間も、ヘリアの膣は彼の精液を全て飲み込むかのように蠕動を止めなかった。
「ちゅ……」
「んちゅ……じゅるる……」
互いの唇が触れると真っ先に舌を挿れたのはヘリアだった。初めてされたときは悍ましさを感じたキスだったが、その快楽に目覚めた今は口の中が彼の味で満たされる至福のひとときだった。彼の舌と絡ませ、唾液を余すことなく味わおうと彼女は愛しげに彼の口内を貪った。
「「ぷは……」」
2人が唇を離すと、その間には混じりあった2人の唾液が糸を引き、切れた。
「いいもの見させてもらったわぁ♡」
2人が絡み合っている間、その様子をずっと観劇しているように見ていた魔王・メリナが2人の下に歩み寄ってきた。
「魔王……様、私、本当に魔物になったんですか?」
2人を見下ろすように立っていたメリナにヘリアが質問した。実際、魔物になるとはいえ、彼女は神より授けられた当時のヴァルキリーの肉体そのままであったからだ。
「安心して、今のですっかり生まれ変わったわ。魔物の『ヴァルキリー』としてね。だからもう昔みたいに余計なことは考えられないでしょ?」
「あぁ……本当ですね……ありがとうございます、魔王様!」
ヤスユキとの性交で精液や魔力を注がれ、彼女の思考はぐちゃぐちゃにかき乱されていた。嘗て抱いていた戦乙女の挟持だとか主神への忠誠だとかそういった物は微塵も感じなくなっていた。今やヤスユキに対する愛と肉欲のことばかりが彼女の頭を埋め尽くしていた。
「メリナでいいわ。もう貴方も私達夫婦の一員よ♪それより、貴方たちを見ていたら私もしたくなっちゃったわ。混ぜてもらえるかしら?」
「その方が楽しいですしね。いいですよね?ヘリア?」
「そうそう、貴方には教えることがたっぷりあるわ……もっと気持ちよくなれる方法とか……楽しみにしてね♪」
「はい……お願いします♡」
こうして魔王による肉欲の宴は1人増え、更に淫靡さをましたのだった。今でも魔王城では3人の嬌声が止まぬ日はないのだという。
…………………………
……………………
………………
…………
……
「ふぅー今日は楽しかったぞ!!」
「「……」」
俺たち3人は玉座の間にある大ベッドで裸のまま川の字に寝ていた。中央に俺、彼の右手側にメリナ、左手側にヘリアがいた
顔をつやつやにしてご満悦のヘリアに対して俺とメリナは無言で石仏の用に固まっていた。
「な?こういうプレイも悪くないであろう!?」
「そうね……まだ私はセリフが少なかったからいいわ。後半まで空気だったし……だけど彼はね」
「……」
気怠げな口調で口を開くメリナ、そしてその横で俺は両手で顔を覆っていた。
「康之殿!貴殿の演技は素晴らしかったぞ!我の要望を的確に捉えた……」
「何も言わんでくだせぇ……メッチャ恥ずかしいんだよぉこっちは……」
俺はか細い声でヘリアを制止した。自分の演技を思い出し、羞恥に悶えているところだった。演じているときはノリでなんとかなった。しかしいざ、自分が慣れない言葉を口にすると共に普段の自分とは大きく異なるキャラを演じ、2人の前で披露したことは人生の中で最も恥ずかしい行為だったとつくづく思いふけっていたのだった。
「あぁ……もう表を歩けない……」
「大丈夫よ、別に記録に残したりしたわけじゃ……ないよね?」
俺の頭を撫でて慰めているメリナが険しい表情でそちらを向いた。端役だったとはいえ、あまり思い返したくないものであるから、そんなもの残しておきたくない気分であったのだろう。
「当たり前だ!美しい思い出は美しいままにしておくのがいいのだ!」
「そう、ならいいわ……」
「なぁ今度はどんなプレイがいいだろうか?今度は理性を失った……」
「もう当分イメージプレイはいいです……それより寝させて」
「私も疲れちゃったから今日は寝るわね」
「ちぇっ、連れない奴らだ……」
俺とメリナは真っ先に布団に潜り、眠りについた。ヘリアは1人取り残されたような気分になり、浮かない顔をしていた。
俺としてはイメージプレイは性生活のマンネリ化を防ぐ上ではいいかもしれないが、ここまで本格的なのはごめんだ、と思ったのだった。
END
…………………………
……………………
………………
…………
……
???「今回はいいものを魅せてもらったのう……ほれ報酬じゃ。」
ヘリア「おお!こんなにも!いいのか?」
???「いいんじゃ、リリム✕ヴァルキリーを題材とした作品はありそうで無かったからのう、オマケに堕落を題材にした作品はかなり人気作なんじゃ」
ヘリア「しかし……康之殿もメリナも恥ずかしがっていたからな……やっぱり良心の呵責が……」
???「なに、我らが来る前にわんさかおったえーぶい俳優などが絶滅した今じゃ、代わりにごく普通の夫婦がこうしたアダルト作品に出ることは珍しくなくなっておるのだ。むしろ、自分たちの最高のプレイを競い合う場にもなっておるのじゃ。別に恥ずべきことではない」
ヘリア「そうか、それなら良かった!」
???「所で、その金で一体何をするつもりじゃ?」
ヘリア「彼らを温泉旅行にでも連れて行くつもりだ、迷惑もいっぱいかけたしな」
???「そうか、それでよいだろう、大切につかうんじゃぞ」
ヘリア「ああ!そなたには感謝しておるぞ、こんなことで金がもらえるとは思わなかった」
???「いや、いいんじゃ、それよりお主の演技は群を抜いて追った。また次回もイメージプレイをする時は呼んでくれんかのう?」
ヘリア「うむ、考えておこう。では今日は失礼するぞ」
???「また来てくれのう」
???「ふふ、このホテルでイメージプレイをする者を撮ると本当に良い作品になるのう。高値で売れるわい。別にちゃんと本人の許可もとったから合意の上だから問題は無いしな。これを配信なりソフト化なりして売れば大儲けじゃ。ここの管理人を任せて下さった魔王様には感謝しきれんわ」
インキュバス、リリム、ヴァルキリーの3人が写った映像をみて1人の刑部狸がほくそ笑んでいた。
20/04/22 17:21更新 / 茶ック・海苔ス