蛇嫁の嫉妬 〜ラミア〜
とある日曜日。
「これで、チェックメイトだ。
悪いな、レアード」
黒のルークを前進させ、チェックメイト。
「ああっ…
急に強くなったなぁ、ジェイク」
頭に手を当てながら、レアードは言う。
「この前、お客のヴァンパイアとチェスをしてね。
それが強いのなんの。
でもって、ちょっとだけご教授願った訳だよ」
これで勝てなきゃ、俺は無能だ。
「リトリアさんは不機嫌だった と」
「オチを言うなよ」
ニヤりとして言うレアードにツッコミを入れ、
「「ハハハッ」」
二人して笑いあう。
「入るぞ、ジェイク」
カランカラン…
扉の鈴を鳴らし、誰かが家に入ってくる。
「レアードも一緒か、手間が省けた。
珍しく、嫁さん居ないな、ジェイク」
振り向くと、袋を手に持った我が友エーカー。
「お、エーカー。チェスはどうだ?
リトリアは、こいつの家でアップルパイの作り方を教わってるよ。
それで、俺たちはチェスをして待ってる」
楽しみだな、りトリアのアップルパイ。
『美味しいアップルパイ、作ってあげるわよ?』
だなんて、夫冥利に尽きるね。
「良いねぇ、お前ら。
相変わらず、色恋沙汰には無縁な彫金師だ、俺は。
なんでお前らみたいにモテないのかねぇ…
それはさておき、良い物を持ってきた」
袋の中身を、机に広げだすエーカー。
「お、なになに…?」
机の上に身を乗り出す。
「ホルスタウロスの牛乳とチーズだ。
品薄なのが、幸運にも手に入った。
俺も食べたことは無いんだが、とにかく美味いらしい。
で、せっかくなんで、お前らにも分けてやろうって訳だよ。
一本と一切れずつしかないんだけどな。
ほれ、飲め、食え」
渡されたのは、牛乳瓶とチーズ。
牛乳瓶に巻かれている、デフォルメされたホルスタウロスのラベルが可愛らしい。
「なあ、エーカー。
嫁がラミアだって事、分かってるよな…?」
大げさに、呆れた仕草。
「勿論。
飲んでみたいのに、飲めなかったんだろ?
乳製品好きだもんな、お前」
したり顔で、エーカー。
「…よく分かってるじゃないか」
流石は我が友。
「いぇーい」「うぃーす」
ハイタッチを交わす。
「バレたら大目玉だなぁ…
まあ、俺には関係ないけどね。リーシャは優しいから」
…案外、分からんぜ?
いくら優しいとは言え、エキドナだ。
まあ、そう思うんならそう思っておいて貰おうか。
口は出さない。
「嫁自慢も大概にしろ。
せっかくの精力剤も、相手が居ない俺はだな…
お、美味い、美味い」
チーズを口にして、エーカー。
『何かが違う』と何人に言われたんだろうか。
まあ、少なくともリトリアとリーシャさんには言われた訳だが。
…顔も性格も、良い奴のはずなんだけどなぁ、こいつ。
これがどうして女にモテないのか…
さ、食おう。
手を合わせ、チーズを口に運ぶ。
「これは…
今までに食べたどのチーズよりも…美味い。
うん、ダントツだ…
これは、リトリアに隠れて食べる価値は有る。
断言できるね」
ホルスタウロスのチーズは、舌の上ですんなりと溶け、
濃厚な旨みと、仄かな甘味を感じさせる
そして、濃厚であるにも関わらず、後味は軽く、癖も無い。
正に、極上。
…エーカーには、指輪の件といい、これといい、貸しばかりだな。
今度は、自分で買って食べよう。
リトリアには内緒で。
「いただきます。
…これは、美味しいな。
今度売ってたら、リーシャと一緒に食べよう」
呑気な。
後悔する。8割方。
ああでも、結局イチャイチャして結果オーライになりそう。
1割か2割だな。
……やっぱり俺も、リトリアと食べたいなぁ…
勿論、バレないかビクビクせずに。
「それじゃ、牛乳を飲もうぜ」
全員がチーズを食べ終えた後。
牛乳瓶を手に取るエーカー。
「「そうしようか」」
レアードと共に、二つ返事。
「それじゃ、乾杯」
「「乾杯」」
妙な連帯感を感じながら、蓋を開けた牛乳瓶を口に当て、傾けると、
牛乳特有の甘味を濃くしたような味が、口の中に広がる。
味は濃いが、口当たりは爽やかで、何本でも飲めそうだ。
毎朝飲みたいな…リトリアが許せば。
そんな事を考えながら牛乳を味わっていると…
カランカラン…
扉の鈴が鳴る音。
「ジェイクー、アップルパイ出来たわよー!」
「レアードさん、アップルパイですよ…」
振り向くと、愛しの妻リトリアが、アップルパイが乗った皿を持ち、部屋に入ってくる。
そして、遅れてリーシャさん。
…え。
「「「「「……………」」」」」
牛乳を飲みつつ、それぞれの妻を見つめる俺とレアード。
牛乳を飲みつつ、撤収の準備を始めているエーカー。
俺達の顔を見た後、牛乳瓶を見つめる、蛇嫁二人。
牛乳を飲み干した俺とレアードは、動きを止めて…
いや、動きが止まっていた。
「ジェイク…何を、飲んでいるのかしら?」
ラベルを見て、ホルスタウロスの牛乳だと分かったリトリアは…
見るものを圧倒する空気、怒気を纏い、俺を問い正す。
怒っている顔も綺麗だけど、だからといって怖くないわけは無く。
「牛乳…です」
細々と、呟く。
リトリアが、こちらに這い寄ってくる。
「いいえ、それはホルスタウルスの『母乳』よ。
こっちに来なさい、ジェイク」
『母乳』の部分を強調して言うリトリア。
腕を、痛いほどの力で握られ、そのまま二階へと連れていかれる。
有無は言えなかった。
「…お開きか。
御邪魔しました」
後ろから、エーカーの声と、扉の鈴の音。
独身とは自由だと思うな、エーカー…
「レアードさん…家に、帰りましょう…
お話が有りますから…ね…?」
そして、リーシャさんの声も聞こえた。
その声には、怒りが篭っている。
リトリアに、勝るとも劣らない。
…お互い大変だな、レアード。
まあ、自業自得だ、仕方ないんだろう。
「他の女の母乳はさぞかし美味しかったでしょうねぇ、ジェイク?」
怒り心頭 といった表情で、俺を責めるリトリア。
俺は今、ベッドの上で、全裸で正座させられている。
そして、情けない事に、股間の愚息は元気。
ホルスタウロスの牛乳には、精力剤としての効果が、裏目に出ている。
それはもう盛大に。
「…母乳じゃなくて牛乳として飲「違うわよ!」
弁解に割り込む怒号。
その迫力に、ただただ萎縮せざるを得ない。
そう、蛇に睨まれた蛙のように。
「アレは、他の女の乳房から出た物よ?
母乳以外の何でも無いじゃない!
それを飲むなんて、許さないわよ、ジェイク…!」
じりじりと距離を詰めつつ、俺に怒りをぶつける。
「…ゴメンなさい。
でも、俺が愛しているのはリトリアだけだから」
その眼を見つめ、謝る。
「それに、あんなものを飲んで、そんなに興奮しているなんて、どういう事なのかしら?」
張り詰めた愚息を睨む彼女から、更にお怒りの言葉。
「…精力剤だから、仕方ないんだ。
許してください」
ただでさえ怒っているのに、これで余計機嫌を損ねて…
ああ、骨を折られたりしないよなぁ…?いや、リトリアがそんな事をするわけは……
「…いいえ、許さないわ」
既に、眼前にまで迫っている、彼女の綺麗な顔。じっとりとした視線。
「ひぅっ、あっ、あっ、やめてっ」
小気味いい音と共に、お尻に衝撃が走る。いつの間にか、リトリアの尻尾は俺の背後に回りこんでいて、その先端を振るわれ、ぺしん、ぺしんとスパンキングされてしまう。
「い、痛い……」
叩かれた部分に広がる、じんわりとした痺れ。涙目になりながら、彼女に訴える。
しかし内心では、その痺れが心地良く思えてしまっていた。
「当たり前よ。痛くしたもの。
ともかく、たっぷりお仕置きしないといけないわ…」
訴えを無視する彼女。
引きつった笑みを浮かべつつ、身体を俺に巻きつけ、
ベッドに引き倒す。
「俺が悪かったから、勘弁してください…」
自由を奪われた俺に出来ることは、ただただ許しを乞うことだけだった。
「悪いという自覚が有ってやったなら、なおさらお仕置きが必要ね…
もう二度と、こんな事をしたくならないようにしてあげないと…」
「…お手柔らかにお願いします」
「お断りよ」
「――ッぅ」
股間を除いた全身が、尋常ではない圧力に包まれる。
ギリギリと俺を絞め上げる彼女。
胸も絞めつけられて、掠れるような息しか出ない。
それなのに、密着した彼女の肌から伝わる温もりに心地良さを感じていた。
「さて…この浮気者のおちんちんもお仕置きが必要ね…?」
締め付けを緩めず、固く張り詰めた肉棒を手に取り、舌なめずりする彼女。
「そうね、まずは…」
彼女の長く、細い舌が亀頭に巻きつき、唾液でぬるぬるにする。
そして、唾液でぬめる亀頭を、巻きついた舌が蠢き、激しく擦り上げる。
それ単体では射精へと繋がらない、強い快感に襲われ、下半身が弛緩する。
胸を絞め付ける力は未だに強く、息苦しさに、ロクに喋ることすらできない。
「ぃ……ぉ………ぃ………ぁ……」
声にならない声で、彼女の名を呼ぶ。
彼女は、嫉妬に駆られた目で俺を見据える。
「これだけで済むと思ったら、大間違いよ」
「ぅぁ………!」
彼女の二股の舌先が、尿道口の近くを撫でる。
舌先が尿道口に押し当てられ…
捩じ込むように、尿道口に侵入してくる。
尿道口を押し拡げられる苦痛と、それを超える未知の快感。
たまらず身悶えしようとするが、それすらも許されない。
「まだまだ…」
容赦なく、彼女は尿道に舌を捩じ込み、
肉棒の中を犯していく。
亀頭責めと相まって、射精できない、
出口のない快感が高まっていき、意識を蝕む。
そして、肉棒の中ほどまで、その舌が入り込んだその時。
いきなり、乱暴に、舌が引き抜かれる。
尿道を引きずりだされるような、
排尿のそれを何十倍にしたような快感。
それもやはり、射精には結びつかず、
『射精したい』という欲望を募らせる。
「イきたいわよねぇ…?
でも、ダメよ。これはお仕置きだもの…
あなたが悪いのよ、ジェイク。
ほら…ほら…!」
「――――!」
さっきよりも乱暴に、激しく、舌が尿道に侵入し…
引きぬかれ、挿し込まれ…
容赦ないピストン運動で、彼女は尿道口からを犯す。
同時に、亀頭を責める舌の動きもさらに激しさを増し、
亀頭を削り取るかのように、執拗に、舌が絡みつく。
尿道と亀頭。それらに与えられる、度の過ぎた快感に、身体を絞め付けられる息苦しさは既に意識の外。
全身を痙攣させ、金魚のように口を動かし。
呼吸すらもままならないまま、快感に苛まれ、射精という出口を、終わりを求める
しかし、愛しい人にお仕置きされるこの状況は、確かに被虐的な、倒錯的な悦楽を伴っていて。
内心何処かで、このままずっといじめられ続けたい、という気持ちもあったのだった。
「…そろそろイかせてあげようかしら
ねえジェイク、イきたいわよね?」
不意に、彼女は呟く。
絞め上げが緩み、尿道を責めていた舌は、彼女の口の中へと戻っていく。
疲労に気付き、顔をしかめつつも、息を取り戻した俺は、空気を大きく吸い込む。
時間間隔は麻痺し、あの時間は数秒にも、数分にも、数時間にも思える。
だが、そんな事はどうでもよく、『射精できる』という事に思考が支配される。
「ぁ、あ……はぁ……イかせて…」
一刻も早く、出口に、終わりに向かいたい。
その一心で、彼女に懇願する。
「…………今後一切、あんな物を口にしないと誓いなさい」
「は、はぃ……誓いますっ……」
耳元に響く、ラミアの魔声。サディスティックな、支配的な響きが頭の中を犯していく。
反響する声が、ぞくぞくとした快楽を与えてくれる。
愛情の裏返しのお仕置き。いつしか俺は悦びを感じてしまっていた。
しかし、お仕置きが嬉しいからといって、二度とホルスタウロスのミルクを飲むつもりもない。
「よろしい。ふふ……お望みどおり、イかせてあげるわ」
「んむっ……ぅ……」
突然に、頭を抱かれ、彼女の胸に埋められ、押し付けられる。
顔面を覆い密着する、柔らかな感触。口も鼻も覆われ、息ができない。
「オシオキしてたのに悦ぶような変態さんは……ふふふ、ほら、ほら……おっぱいで窒息しながらっ……イきなさいなっ……」
人間離れした腕の力で押さえつけられた俺の頭は、万力で固定されたように、彼女の胸に捕らえられてしまう。
肉棒もまた、尻尾の先端でぐるぐる巻きにされ、ぎちぎちに絞めあげられて。
擦り切れそうな程に激しく、すべすべの尻尾に扱き上げられてしまう。
お仕置きに相応しい、肉棒が焼け付きそうな程の快楽。気持ちいいのに、激しすぎておかしくなってしまいそう。
胸に埋もれて息も出来ず、徐々に朦朧とする意識。
次第に息苦しさが消え、意識がすっと闇に落ちていく。
落ちつつある意識の中なのに、肉棒に込み上げる熱さが、快楽が、リトリアのぬくもりが、胸の柔らかさが、やけにはっきりと感じられる。そして、快楽の高まりが頂点になり、吐き出される。そのはずだった。
「でも、精液は出させてあげないっ……ナカに出さなきゃ勿体ないもの……うふふ」
絶頂を迎え、射精が始まるその瞬間、絡みついた尻尾は、その絞め付けをよりいっそう強くして。その絞め付けのあまり、肉棒を通り抜けるはずの精液はせき止められてしまって。
絶頂感はあるのに、射精感を味わう事は出来ず。息苦しさも快楽を増幅させるけど、その行き場の無く、快楽の圧力は高まっていき、狂おしいほどに灼かれていく。
跳ねる肉棒をぎちぎちに抑えこまれて、結局、一滴の精液も出せないままの、窒息絶頂を迎えてしまうのだった。
「ぷはっ……はぁっ……はぁっ……」
絶頂を終えた直後、その柔らかな胸による甘美な窒息から開放される。
呼吸を許され、息絶え絶えになりながらも、意識は急浮上する。
折角気持ちよくイけると、尻尾で扱かれながら射精出来ると思っていたのに、不完全燃焼。
「……うふふ、いつもよりビクビクしてた。へんたい。
そんなに精液出したかったの……?」
「っ……はぁ……だし、たかった……も、っかい、イかせて……出させて……なんでもするからっ……」
絶頂させてはくれたけど、精液を放てなかったせいで、むしろ、もどかしさはさらに膨れ上がってしまって。
さっきよりも必死に、リトリアに慈悲を懇願する。
「ふふふ…………何でもするって言ったわね。
じゃあ……私の気が済むまで……好きな時に、好きなように……アナタを好きにしちゃうし……シて欲しい事、なんでもシて貰おうかしら……♪」
「す、好きにしていいからっ……」
段々と上機嫌になりつつあるリトリア。此処ぞとばかりに、要求を突きつけてくる。
その要求は、リトリアの言いなりになれという物。しかし、俺の欲望を満たしてくれるのがリトリアだけである以上、決して逆らえない。俺を気持ちよくイかせてくれるのは、リトリアだけなのだ。
むしろ、俺を手中に収めたいがために、此処まで焦らしてくれたのだとさえ思えてしまう。愛おしい。
「うふふ、ふふふ……じゃあ、手始めに……三日三晩は犯してあげるわっ……お望み通り、ナカでイかせてあげて、子宮に精液びゅるびゅる出させてあげてあげるっ……途中で音をあげても、容赦してあげないんだからっ……」
嫉妬と同じく、情欲の炎を燃え上がらせるリトリア。三日三晩、という言葉に嘘偽りはないと確信させるものがあって。しかも、三日三晩犯されて、まだ手始め。この先どうされてしまうのだろうか、と末恐ろしい物がある。
しかし、嫉妬の情を燃え上がらせるその姿は確かに愛おしく、裏返しの愛情を感じて。決して、酷いようにはされないという確信があった。
そしてリトリアは、覆いかぶさるようにしながら、俺を押し倒してきて。ぺろりと舌なめずり。
そして、俺は、蛇に睨まれた蛙のように、肉棒を丸呑みされる瞬間を心待ちにするのだった。
「これで、チェックメイトだ。
悪いな、レアード」
黒のルークを前進させ、チェックメイト。
「ああっ…
急に強くなったなぁ、ジェイク」
頭に手を当てながら、レアードは言う。
「この前、お客のヴァンパイアとチェスをしてね。
それが強いのなんの。
でもって、ちょっとだけご教授願った訳だよ」
これで勝てなきゃ、俺は無能だ。
「リトリアさんは不機嫌だった と」
「オチを言うなよ」
ニヤりとして言うレアードにツッコミを入れ、
「「ハハハッ」」
二人して笑いあう。
「入るぞ、ジェイク」
カランカラン…
扉の鈴を鳴らし、誰かが家に入ってくる。
「レアードも一緒か、手間が省けた。
珍しく、嫁さん居ないな、ジェイク」
振り向くと、袋を手に持った我が友エーカー。
「お、エーカー。チェスはどうだ?
リトリアは、こいつの家でアップルパイの作り方を教わってるよ。
それで、俺たちはチェスをして待ってる」
楽しみだな、りトリアのアップルパイ。
『美味しいアップルパイ、作ってあげるわよ?』
だなんて、夫冥利に尽きるね。
「良いねぇ、お前ら。
相変わらず、色恋沙汰には無縁な彫金師だ、俺は。
なんでお前らみたいにモテないのかねぇ…
それはさておき、良い物を持ってきた」
袋の中身を、机に広げだすエーカー。
「お、なになに…?」
机の上に身を乗り出す。
「ホルスタウロスの牛乳とチーズだ。
品薄なのが、幸運にも手に入った。
俺も食べたことは無いんだが、とにかく美味いらしい。
で、せっかくなんで、お前らにも分けてやろうって訳だよ。
一本と一切れずつしかないんだけどな。
ほれ、飲め、食え」
渡されたのは、牛乳瓶とチーズ。
牛乳瓶に巻かれている、デフォルメされたホルスタウロスのラベルが可愛らしい。
「なあ、エーカー。
嫁がラミアだって事、分かってるよな…?」
大げさに、呆れた仕草。
「勿論。
飲んでみたいのに、飲めなかったんだろ?
乳製品好きだもんな、お前」
したり顔で、エーカー。
「…よく分かってるじゃないか」
流石は我が友。
「いぇーい」「うぃーす」
ハイタッチを交わす。
「バレたら大目玉だなぁ…
まあ、俺には関係ないけどね。リーシャは優しいから」
…案外、分からんぜ?
いくら優しいとは言え、エキドナだ。
まあ、そう思うんならそう思っておいて貰おうか。
口は出さない。
「嫁自慢も大概にしろ。
せっかくの精力剤も、相手が居ない俺はだな…
お、美味い、美味い」
チーズを口にして、エーカー。
『何かが違う』と何人に言われたんだろうか。
まあ、少なくともリトリアとリーシャさんには言われた訳だが。
…顔も性格も、良い奴のはずなんだけどなぁ、こいつ。
これがどうして女にモテないのか…
さ、食おう。
手を合わせ、チーズを口に運ぶ。
「これは…
今までに食べたどのチーズよりも…美味い。
うん、ダントツだ…
これは、リトリアに隠れて食べる価値は有る。
断言できるね」
ホルスタウロスのチーズは、舌の上ですんなりと溶け、
濃厚な旨みと、仄かな甘味を感じさせる
そして、濃厚であるにも関わらず、後味は軽く、癖も無い。
正に、極上。
…エーカーには、指輪の件といい、これといい、貸しばかりだな。
今度は、自分で買って食べよう。
リトリアには内緒で。
「いただきます。
…これは、美味しいな。
今度売ってたら、リーシャと一緒に食べよう」
呑気な。
後悔する。8割方。
ああでも、結局イチャイチャして結果オーライになりそう。
1割か2割だな。
……やっぱり俺も、リトリアと食べたいなぁ…
勿論、バレないかビクビクせずに。
「それじゃ、牛乳を飲もうぜ」
全員がチーズを食べ終えた後。
牛乳瓶を手に取るエーカー。
「「そうしようか」」
レアードと共に、二つ返事。
「それじゃ、乾杯」
「「乾杯」」
妙な連帯感を感じながら、蓋を開けた牛乳瓶を口に当て、傾けると、
牛乳特有の甘味を濃くしたような味が、口の中に広がる。
味は濃いが、口当たりは爽やかで、何本でも飲めそうだ。
毎朝飲みたいな…リトリアが許せば。
そんな事を考えながら牛乳を味わっていると…
カランカラン…
扉の鈴が鳴る音。
「ジェイクー、アップルパイ出来たわよー!」
「レアードさん、アップルパイですよ…」
振り向くと、愛しの妻リトリアが、アップルパイが乗った皿を持ち、部屋に入ってくる。
そして、遅れてリーシャさん。
…え。
「「「「「……………」」」」」
牛乳を飲みつつ、それぞれの妻を見つめる俺とレアード。
牛乳を飲みつつ、撤収の準備を始めているエーカー。
俺達の顔を見た後、牛乳瓶を見つめる、蛇嫁二人。
牛乳を飲み干した俺とレアードは、動きを止めて…
いや、動きが止まっていた。
「ジェイク…何を、飲んでいるのかしら?」
ラベルを見て、ホルスタウロスの牛乳だと分かったリトリアは…
見るものを圧倒する空気、怒気を纏い、俺を問い正す。
怒っている顔も綺麗だけど、だからといって怖くないわけは無く。
「牛乳…です」
細々と、呟く。
リトリアが、こちらに這い寄ってくる。
「いいえ、それはホルスタウルスの『母乳』よ。
こっちに来なさい、ジェイク」
『母乳』の部分を強調して言うリトリア。
腕を、痛いほどの力で握られ、そのまま二階へと連れていかれる。
有無は言えなかった。
「…お開きか。
御邪魔しました」
後ろから、エーカーの声と、扉の鈴の音。
独身とは自由だと思うな、エーカー…
「レアードさん…家に、帰りましょう…
お話が有りますから…ね…?」
そして、リーシャさんの声も聞こえた。
その声には、怒りが篭っている。
リトリアに、勝るとも劣らない。
…お互い大変だな、レアード。
まあ、自業自得だ、仕方ないんだろう。
「他の女の母乳はさぞかし美味しかったでしょうねぇ、ジェイク?」
怒り心頭 といった表情で、俺を責めるリトリア。
俺は今、ベッドの上で、全裸で正座させられている。
そして、情けない事に、股間の愚息は元気。
ホルスタウロスの牛乳には、精力剤としての効果が、裏目に出ている。
それはもう盛大に。
「…母乳じゃなくて牛乳として飲「違うわよ!」
弁解に割り込む怒号。
その迫力に、ただただ萎縮せざるを得ない。
そう、蛇に睨まれた蛙のように。
「アレは、他の女の乳房から出た物よ?
母乳以外の何でも無いじゃない!
それを飲むなんて、許さないわよ、ジェイク…!」
じりじりと距離を詰めつつ、俺に怒りをぶつける。
「…ゴメンなさい。
でも、俺が愛しているのはリトリアだけだから」
その眼を見つめ、謝る。
「それに、あんなものを飲んで、そんなに興奮しているなんて、どういう事なのかしら?」
張り詰めた愚息を睨む彼女から、更にお怒りの言葉。
「…精力剤だから、仕方ないんだ。
許してください」
ただでさえ怒っているのに、これで余計機嫌を損ねて…
ああ、骨を折られたりしないよなぁ…?いや、リトリアがそんな事をするわけは……
「…いいえ、許さないわ」
既に、眼前にまで迫っている、彼女の綺麗な顔。じっとりとした視線。
「ひぅっ、あっ、あっ、やめてっ」
小気味いい音と共に、お尻に衝撃が走る。いつの間にか、リトリアの尻尾は俺の背後に回りこんでいて、その先端を振るわれ、ぺしん、ぺしんとスパンキングされてしまう。
「い、痛い……」
叩かれた部分に広がる、じんわりとした痺れ。涙目になりながら、彼女に訴える。
しかし内心では、その痺れが心地良く思えてしまっていた。
「当たり前よ。痛くしたもの。
ともかく、たっぷりお仕置きしないといけないわ…」
訴えを無視する彼女。
引きつった笑みを浮かべつつ、身体を俺に巻きつけ、
ベッドに引き倒す。
「俺が悪かったから、勘弁してください…」
自由を奪われた俺に出来ることは、ただただ許しを乞うことだけだった。
「悪いという自覚が有ってやったなら、なおさらお仕置きが必要ね…
もう二度と、こんな事をしたくならないようにしてあげないと…」
「…お手柔らかにお願いします」
「お断りよ」
「――ッぅ」
股間を除いた全身が、尋常ではない圧力に包まれる。
ギリギリと俺を絞め上げる彼女。
胸も絞めつけられて、掠れるような息しか出ない。
それなのに、密着した彼女の肌から伝わる温もりに心地良さを感じていた。
「さて…この浮気者のおちんちんもお仕置きが必要ね…?」
締め付けを緩めず、固く張り詰めた肉棒を手に取り、舌なめずりする彼女。
「そうね、まずは…」
彼女の長く、細い舌が亀頭に巻きつき、唾液でぬるぬるにする。
そして、唾液でぬめる亀頭を、巻きついた舌が蠢き、激しく擦り上げる。
それ単体では射精へと繋がらない、強い快感に襲われ、下半身が弛緩する。
胸を絞め付ける力は未だに強く、息苦しさに、ロクに喋ることすらできない。
「ぃ……ぉ………ぃ………ぁ……」
声にならない声で、彼女の名を呼ぶ。
彼女は、嫉妬に駆られた目で俺を見据える。
「これだけで済むと思ったら、大間違いよ」
「ぅぁ………!」
彼女の二股の舌先が、尿道口の近くを撫でる。
舌先が尿道口に押し当てられ…
捩じ込むように、尿道口に侵入してくる。
尿道口を押し拡げられる苦痛と、それを超える未知の快感。
たまらず身悶えしようとするが、それすらも許されない。
「まだまだ…」
容赦なく、彼女は尿道に舌を捩じ込み、
肉棒の中を犯していく。
亀頭責めと相まって、射精できない、
出口のない快感が高まっていき、意識を蝕む。
そして、肉棒の中ほどまで、その舌が入り込んだその時。
いきなり、乱暴に、舌が引き抜かれる。
尿道を引きずりだされるような、
排尿のそれを何十倍にしたような快感。
それもやはり、射精には結びつかず、
『射精したい』という欲望を募らせる。
「イきたいわよねぇ…?
でも、ダメよ。これはお仕置きだもの…
あなたが悪いのよ、ジェイク。
ほら…ほら…!」
「――――!」
さっきよりも乱暴に、激しく、舌が尿道に侵入し…
引きぬかれ、挿し込まれ…
容赦ないピストン運動で、彼女は尿道口からを犯す。
同時に、亀頭を責める舌の動きもさらに激しさを増し、
亀頭を削り取るかのように、執拗に、舌が絡みつく。
尿道と亀頭。それらに与えられる、度の過ぎた快感に、身体を絞め付けられる息苦しさは既に意識の外。
全身を痙攣させ、金魚のように口を動かし。
呼吸すらもままならないまま、快感に苛まれ、射精という出口を、終わりを求める
しかし、愛しい人にお仕置きされるこの状況は、確かに被虐的な、倒錯的な悦楽を伴っていて。
内心何処かで、このままずっといじめられ続けたい、という気持ちもあったのだった。
「…そろそろイかせてあげようかしら
ねえジェイク、イきたいわよね?」
不意に、彼女は呟く。
絞め上げが緩み、尿道を責めていた舌は、彼女の口の中へと戻っていく。
疲労に気付き、顔をしかめつつも、息を取り戻した俺は、空気を大きく吸い込む。
時間間隔は麻痺し、あの時間は数秒にも、数分にも、数時間にも思える。
だが、そんな事はどうでもよく、『射精できる』という事に思考が支配される。
「ぁ、あ……はぁ……イかせて…」
一刻も早く、出口に、終わりに向かいたい。
その一心で、彼女に懇願する。
「…………今後一切、あんな物を口にしないと誓いなさい」
「は、はぃ……誓いますっ……」
耳元に響く、ラミアの魔声。サディスティックな、支配的な響きが頭の中を犯していく。
反響する声が、ぞくぞくとした快楽を与えてくれる。
愛情の裏返しのお仕置き。いつしか俺は悦びを感じてしまっていた。
しかし、お仕置きが嬉しいからといって、二度とホルスタウロスのミルクを飲むつもりもない。
「よろしい。ふふ……お望みどおり、イかせてあげるわ」
「んむっ……ぅ……」
突然に、頭を抱かれ、彼女の胸に埋められ、押し付けられる。
顔面を覆い密着する、柔らかな感触。口も鼻も覆われ、息ができない。
「オシオキしてたのに悦ぶような変態さんは……ふふふ、ほら、ほら……おっぱいで窒息しながらっ……イきなさいなっ……」
人間離れした腕の力で押さえつけられた俺の頭は、万力で固定されたように、彼女の胸に捕らえられてしまう。
肉棒もまた、尻尾の先端でぐるぐる巻きにされ、ぎちぎちに絞めあげられて。
擦り切れそうな程に激しく、すべすべの尻尾に扱き上げられてしまう。
お仕置きに相応しい、肉棒が焼け付きそうな程の快楽。気持ちいいのに、激しすぎておかしくなってしまいそう。
胸に埋もれて息も出来ず、徐々に朦朧とする意識。
次第に息苦しさが消え、意識がすっと闇に落ちていく。
落ちつつある意識の中なのに、肉棒に込み上げる熱さが、快楽が、リトリアのぬくもりが、胸の柔らかさが、やけにはっきりと感じられる。そして、快楽の高まりが頂点になり、吐き出される。そのはずだった。
「でも、精液は出させてあげないっ……ナカに出さなきゃ勿体ないもの……うふふ」
絶頂を迎え、射精が始まるその瞬間、絡みついた尻尾は、その絞め付けをよりいっそう強くして。その絞め付けのあまり、肉棒を通り抜けるはずの精液はせき止められてしまって。
絶頂感はあるのに、射精感を味わう事は出来ず。息苦しさも快楽を増幅させるけど、その行き場の無く、快楽の圧力は高まっていき、狂おしいほどに灼かれていく。
跳ねる肉棒をぎちぎちに抑えこまれて、結局、一滴の精液も出せないままの、窒息絶頂を迎えてしまうのだった。
「ぷはっ……はぁっ……はぁっ……」
絶頂を終えた直後、その柔らかな胸による甘美な窒息から開放される。
呼吸を許され、息絶え絶えになりながらも、意識は急浮上する。
折角気持ちよくイけると、尻尾で扱かれながら射精出来ると思っていたのに、不完全燃焼。
「……うふふ、いつもよりビクビクしてた。へんたい。
そんなに精液出したかったの……?」
「っ……はぁ……だし、たかった……も、っかい、イかせて……出させて……なんでもするからっ……」
絶頂させてはくれたけど、精液を放てなかったせいで、むしろ、もどかしさはさらに膨れ上がってしまって。
さっきよりも必死に、リトリアに慈悲を懇願する。
「ふふふ…………何でもするって言ったわね。
じゃあ……私の気が済むまで……好きな時に、好きなように……アナタを好きにしちゃうし……シて欲しい事、なんでもシて貰おうかしら……♪」
「す、好きにしていいからっ……」
段々と上機嫌になりつつあるリトリア。此処ぞとばかりに、要求を突きつけてくる。
その要求は、リトリアの言いなりになれという物。しかし、俺の欲望を満たしてくれるのがリトリアだけである以上、決して逆らえない。俺を気持ちよくイかせてくれるのは、リトリアだけなのだ。
むしろ、俺を手中に収めたいがために、此処まで焦らしてくれたのだとさえ思えてしまう。愛おしい。
「うふふ、ふふふ……じゃあ、手始めに……三日三晩は犯してあげるわっ……お望み通り、ナカでイかせてあげて、子宮に精液びゅるびゅる出させてあげてあげるっ……途中で音をあげても、容赦してあげないんだからっ……」
嫉妬と同じく、情欲の炎を燃え上がらせるリトリア。三日三晩、という言葉に嘘偽りはないと確信させるものがあって。しかも、三日三晩犯されて、まだ手始め。この先どうされてしまうのだろうか、と末恐ろしい物がある。
しかし、嫉妬の情を燃え上がらせるその姿は確かに愛おしく、裏返しの愛情を感じて。決して、酷いようにはされないという確信があった。
そしてリトリアは、覆いかぶさるようにしながら、俺を押し倒してきて。ぺろりと舌なめずり。
そして、俺は、蛇に睨まれた蛙のように、肉棒を丸呑みされる瞬間を心待ちにするのだった。
14/05/11 20:30更新 / REID