読切小説
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甘々病み気味ラミアさん
「んぅ…眠いけど日課は継続しないとな…」

昨日はついつい、本を読んで夜更かしをしてしまった。
そのせいで、何時もより遅く目覚めた上に、眠気も中々覚めないが…朝からの自主訓練をやめるわけにはいかない。
この街を守る職務につく、己に課した日課なのだから。
欠伸をしながら、玄関の扉を開ける。

「ふふ…おはようございます、スライさん」

家を出ると、聞き慣れた声が隣の家の方から聞こえる。
振り向くと、隣人であるラミアのアイリーさんが、窓から身を乗り出して、微笑みながら、こちらに手を振っている。

透き通るような琥珀色の髪、褐色寄りの肌。
垂れ目気味で、その瞳は、深い紫色をしている。
ラミアの中でもかなり長身なその身体は、胸もお尻も大きく、全体的にむっちりと肉感的だ。
そして、彼女はいつも微笑みを浮かべていて…その長身にも関わらず、おっとりとした、おとなしい印象を持つ人だった。

「あ、おはようございます、アイリーさん」

「今日も自主訓練ですか?」

彼女は魔法薬屋を営んでいる。仕込みやら何やらで、彼女も早起きらしい。
そのおかげで、毎日こうして顔を合わせているわけだ。

「はい。日課ですし、欠かすわけにはいきませんから」

「…朝ご飯は食べないといけませんよ?
それと、夜更かしも駄目です」

「…バレちゃいました?」

アイリーさんは小首を傾げながらそう言って、僕の顔を覗き込む。
その内容は、まさに図星だ。
おっとりとした雰囲気に反し、洞察力に優れているのか、勘が良いのか、アイリーさんはこうして僕の事をピタリと言い当てる事がある。
給料日前に、粗末な食事をしていたのがバレたり…二日酔いがバレたり…不摂生の類は殆どだ。
風邪を引いて朝から寝込んだ時も、家から出てこないという理由で押し掛けて、看病してくれたっけ。

「うふふ…お姉さんは何でもお見通しです。
自主訓練の前に、朝御飯、食べていってください」

そして、僕が不摂生をする度に、こうして世話を焼いてくれる。嫌な顔一つせず、微笑んだままで。
粗末な食事をしていた所に夕食をご馳走してくれたり、二日酔いの時に薬をくれたり、風邪を引けば、朝から看病してくれたりと…彼女の優しさには、頭が上がらない。

「それなら、お言葉に甘えて…お邪魔します」

彼女の家の玄関、準備中の札の掛かった扉。
その取っ手を掴み、がちゃりと開く。
カランカラン、とベルの音が鳴る。

アイリーさんの善意に甘え過ぎるのは申し訳無い。そう思って、断ろうとした事も何度かあったのだけれど…
その度に、彼女は微笑みを崩して、じとっ…と、拗ねたような、責めるような、疑うような視線を向けてくるのだ。
彼女のそれは、いつも浮かべている微笑みとのギャップのせいで、非常に罪悪感を覚えるもので。
結局、こうして僕は、いつものように、アイリーさんの好意に甘えてしまう。

…自主訓練、また少し遅れそうだなぁ…まあ、いいか。
アイリーさんもこうして笑っていてくれるんだ。



「はい、スープとパンです。ちゃんと、ぬるめにしておきました…猫舌ですものね」

アイリーさんの家にお邪魔した僕は、店のスペースとは仕切られたリビングの中、少し大き目のテーブルに座っていた。
エプロン姿のアイリーさんがやってきて、僕の目の前に、食器を並べていく。
その家庭的な姿は、とても素敵だ。
スライスされ、皿に盛られたパンと、透き通ったスープ。
スープに至っては、朝食にするには贅沢なぐらいに、美味しそうな匂いだ。
しかも、丁寧な事に、猫舌な僕に合わせて、熱々ではなく、ぬるめ。
そういった細かい部分にも気を配れるのも、素敵な所だ。
美人で、優しく、料理上手。
様々な魔法薬に関する知識を備える程頭も良くて、家事もこなせるし、面倒見も良い。
それに、がつがつしていない、と言うべきだろうか。
親切にしてくれるけど、恩を着せるわけでも無く、対価も求めない。
襲われたりだとか、惑わされたりだとか、そういった事も無かった。
だからこそ、安心して傍に居れる。信用出来る。
そんな彼女は、いつもこうして僕によくしてくれる。

アイリーさんが、僕の事を好いていてくれたらいいな…などと思った事は数え切れない程ある。
いや、自意識過剰なんだろうけど、好いていてくれるのかも知れない。
それで、僕は彼女の事を異性として好きかと言われれば好きだし、アイリーさんが恋人だったら幸せだろうな、とは思うけど、彼女に惚れているのかと言われると、そう断言は出来ない。
きっと、恋人みたいにずっと一緒に居たら、それはそれで、僕は彼女に遠慮してしまうだろうし。
出会った頃から思い続けている事だけど、今のところは、今の距離感が一番だ。
あの頃に比べて随分と打ち解けたな、とは思うけれども、それも、気がついたら近づいていた…
というもので、無理の無い、自然な歩み寄り方だったわけだし。
だから、まあ、僕とアイリーさんの関係というのは…
今の所、仲の良い隣人であって、恋人未満…そういう事なんだろう。


「あ、わざわざどうも…それじゃ、頂きます」

両手を合わせて、一礼。
アイリーさんの作る料理は、いつも美味しい。
だから、朝食を食べず家を出た事に下心が無いと言えば、嘘になってしまう。
最近は、僕が起きて、着替え終わるぐらいの時間に、アイリーさんがやってきて、朝ご飯に誘ってくれる事も、たまにある。
だが、今日はそれが無く、残念に思っていたのだ。
正直、こうしてアイリーさんの料理にありつけるのは、とても嬉しかった。

「スクランブルエッグも作りますから、少し待っていてくださいね…」

そう言って微笑みながら、アイリーさんは再び台所へと戻って行く。


「あ、はい。ありがとうございます」

台所は、食卓から見通せる位置にあって。
エプロンをつけた後ろ姿を眺めながら、パンをスープに浸して食べ始める。
薄目の味付けだというのに、パンに浸しても、その旨味がしっかりと合う。
毎日食べても食べ飽きないような、そんな味だった。
そして、アイリーさんのエプロン姿も、見飽きる事がなかった。



「出来上がりました。ふわふわですよ、はい、どうぞ…」

スープとパンを平らげた頃、アイリーさんがスクランブルエッグを運んできてくれた。
目の前に置かれたそれは、見るからにふんわりとしていて、実に美味しそうだ。

「頂きます…ふーっ…ん…」

フォークでスクランブルエッグを一切れ分けて、息を吹きかけ、口に運ぶ。
出来たての温かく、ふわふわとした食感。
卵の旨味を僅かな塩味が引き立てて、とても美味しい。
美味しいものを食べているからか、自然と頬も緩んでいた。
卵と塩だけ、それも僕がパンとスープを食べている間のうちに、此処まで美味しい物が出来るのは、いまだに驚きだ。

「ふふ…美味しいですか?」

「はい、美味しいです…あの、あまり食べてる所をそんなに見られても恥ずかしいんですけど…」

テーブルに両肘をついて、手を両頬に添えて、微笑むアイリーさん。
その視線は、僕の口元に向けられていて…
見守るような、年上らしいそれは決して嫌では無いのだけれど、やはり、じっくり見られると恥ずかしい。
アイリーさんの家で朝食を頂く時は、大抵いつもこうなるのだが、いまだに慣れる事は無い。

「美味しそうに食べてる所を見るのが、作る側の楽しみの一つなんです…」

「それは分かってます。だから、ダメとは言いませんけど…恥ずかしいものは恥ずかしいんですからね」

美味しい朝食をご馳走になっている以上、ダメと言うわけにもいかないし、食べてる所を見て楽しんでくれるのなら…とも思う。嫌では無いのだし。

「ふふふ…」

にこにこと微笑むアイリーさんに見られながら、スクランブルエッグを口に運ぶ。
恥ずかしくとも、美味しいものは美味しいからやめられない。







「ご馳走様でした。それじゃ、行って来ます。いつもありがとうございます、本当に」

朝食を食べ終え、両手を合わせ、アイリーさんに一礼する。
後始末はアイリーさんが、いつもやってくれる上に、手伝わせてもくれない。

玄関の扉の前まで歩き、取っ手を掴む。
最初は、朝食だけ頂いて出て行くのも悪いような気がしていたのだけれど、いつもの事なので、すっかり慣れてしまった。

「いってらっしゃい、スライさん…いえ、いいんですよ、好きでやってるんですから」

その声を聞き終え、扉をガチャリと開け、外に出る。
横を見れば、アイリーさんが、窓から身を乗り出して、手を振ってくれていて。
僕は手を振り返しながら、練兵場へと向かうのだった。









遠くに見える愛しい人が、角を曲がり、見えなくなったのを見届け、手を振るのをやめて、窓を閉めます。

「うふふ……今日も朝から素敵でした……」

愛しのスライさんは、親魔物領となって比較的新しいこの街に、引っ越して来て、兵士の仕事についています。
職務を全うする為に毎日鍛錬を続けていて…頑張り屋さんな、そんな所や、真剣な眼差し……それに心を奪われてしまいました。

有事の際は、魔王軍から部隊が派遣されたり、この街には、勇者に匹敵する力を持つような方々などに任せる事になるのでしょうが、それは問題ではありません。
街を守ろうとする、その努力と、志が重要なのです。
それに、街の周辺の治安維持には、確かに貢献しているのですから。

尤も、私がスライさんを愛している理由は、スライさんだからという事に他ならないのですけど。

「ふふ……今日も早起きした甲斐がありました」

愛しい人に、朝ご飯を振る舞い、美味しそうに食べるその姿を眺める……とても素敵な朝の時間。
そのためには、スライさんより早く起きて、ご飯の準備をしなければなりません。
それだけで無く、今日みたいに、スライさんが寝坊したのに気づけるよう、スライさんがいつ起きたかも、しっかりと把握しています。

二階にある、スライさんの寝室は、私の家の側にあるので、窓から様子が覗けるのです。
しかも、朝日を浴びて起きるのを好むスライさんは、カーテンを滅多に閉めません。
おかげで、早起きすれば、可愛らしい寝顔も、着替えも見放題。
覗きはイケナイ事ですが、愛しい人を見ていたい欲求には逆らえず、私は毎日、スライさんの部屋を覗いてしまっているのです。
むしろ、イケナイ事だからこそ、やめられないのかもしれません。
この背徳感は、少なからず私を興奮させるのですから。

「はぁ…………」

頬に手を当て、今朝、窓から覗いた光景を反芻します。

寝返りを打ち、もぞもぞと起き上がり、目を擦るスライさん。

寝ぼけた横顔を思い出すだけで、胸が高鳴ります。
いつか、正面から、間近にあの顔を見て、おはようのキスをしてあげたいものです。

そして、朝食の用意を進めた後、再び覗いた時の、あたふたしながら着替るスライさんの姿。

引き締まった身体と、子供みたいで、母性を擽られる仕草のギャップが、堪りません。
しかも、パンツの中の物は、見事に朝勃ちしていて……
あの逞しい物に処女を捧げ、童貞を奪い、スライさんを我が物とする日が待ち遠しくて仕方ありません。
このまま、アプローチを続ければ、きっと、スライさんも私の事を大好きになってくれて、そうすれば……お互いを想いあった、素敵な、「初めて」が……
ああっ、想像するだけで、うっとりとため息が漏れてしまいます。


「さて……堪能しちゃいましょう……」

目の前には、スライさんが朝ご飯を食べた後の食器。
スープを入れたカップ、それを飲むのに使ったスプーン、スクランブルエッグを食べるのに使ったフォーク……先程スライさんが使用したばかり、口に含んだばかり、スライさんの唾液がついたばかりの、まだ乾いてすらいない、そんな品。

休日は基本的に、スライさんを家に誘って、食事を振る舞っているのですが、平日の、しかも朝になると、たまにしか、ご飯に誘えません。
スライさんが寝坊してくれた幸運に感謝しながら、カップを手に取ります。

「…………はむ……ふふ……」

スライさんが、カップの何処に口を付けたのかは、勿論把握済み。
唾液のついた部分を唇で挟み込み、スライさんの唾液を拭い去ります。
まだ、唾液を味わってもいないのに、間接キスをしているという事実だけで、胸がときめいて仕方有りません。

「ぺろっ……んっ……れろぉっ……ん……」

唇についたスライさんの唾液を、舌先で舐めとっていけば、ほんの少しだけですが、とても甘美な精の味を感じる事が出来ます。
愛しくて愛しくて堪らない人の味。
どんな食べ物も、スライさんの味には敵いません。

唇で拭いきれず、カップにうっすらと残ったままの唾液も、カップに舌を這わせて、丹念に舐め取ります。
そして、目を閉じ、意識を味覚に集中させ……
舐めとったスライさんの唾液が、私の唾液と混ざり、薄まって、分からなくなってしまう、その最後の瞬間まで味わい尽くします。

「んふふ……あーん……」

ついには味が消えてしまって、物足りなく感じてしまいますが、間接キスをした事は、スライさんの唾液を口にした事実は、消えません。
愛しい人との間接キスは、当然嬉しくて。
物足り無いだとか、本当は今すぐスライさんの元に駆け付けて押し倒して犯してしまいたいだとか、そういう事は頭の片隅に追いやります。
今は、素敵な事だけを考え、純粋にこの間接キスを楽しみたいのですから。
スプーンを手に取り、目を閉じ、愛しいスライさんが、『あーん』してくれているのを想像しながら、スプーンをぱくり。

「んっ……ちゅぷ……あぁ……スライさん……」

咥えたスプーンに舌を這わせ、再び唾液を味わいます。
そして、指先を服の内に潜り込ませて……今日も私は、甘美な妄想に耽っていきます。







うふふ…スライさん…まだですか…?

あの後、私は仕込みを終え、お店を開けて、昼までお仕事をして…
丁度の時間を見計らった上で、スライさんのお昼休みを見守りに、練兵場の近くまで来て、魔法具で透明になりながら、練兵場からスライさんが出てくるのを待っています。
単にスライさんの姿を眺めていたいも理由の一つですが、私以外の女性の影が無いか、しっかりと見守るのが目的です。
本当は四六時中見守っていたいのですが、家事は勿論、結婚後の生活に向けて貯金をするため、仕事もしなければなりません。
そのため出来るだけ、休憩時間やお昼休みに合わせて動くようにしています。
他の女が寄ってくるなら、仕事外。そう考えてのことです。
ともかく、これが、私の昼の日課なのでした。

「あっ………」

闘技場然とした、練兵場の建物から、二人の男性が出て来ます。
片方は、一目でスライさんと分かりました。
見間違えることなんて万に一つもありません。待っていましたよ。
そして、もう一人は、スライさんの友人のマーカスさんでしょうか。

…これは期待出来ます。

「そりゃ、おっぱいは男の浪漫だろ…そういうお前は何処が好きなんだよ」

他の女が居ない事に安堵しながら二人の会話に耳を傾けると、何やら面白そうな話題をマーカスさんが振りました。期待通りです。
恥ずかしさからか、スライさんは、私に向かってこういう話はしてくれません。
しかし、友人であるマーカスさんに対しては、よくこういった話をしています。
男同士だから、気兼ね無いのでしょう。
他の女が近づかないかだけでなく、こういった話を聞いて、スライさんの事をもっと知るために、私はスライさんの事を遠巻きに見守っています。

ともかく、今日も素敵な話を引き出してくれてありがとうございます、マーカスさん。

スライさんの一言一句を聞き逃さないように、しっかりと聞き耳を立てます。イヤリングの魔法具にそっと触れて、それに込められた、遠耳の魔法も起動させて、準備万端。

スライさん…何処が好きなんですか…?
おっぱいですか?唇ですか?お尻ですか?それとも蛇の下半身?
何処も私自慢の箇所ですよ?

「………太股…かな」

少し考え込んだ後、スライさんが発したのは、私の期待を打ち砕くような言葉。
ラミアである私には、太ももはありません。無いのです。
スライさんが好きなのは、私に無い部位だった。
言い知れない悲しみと、焦燥感が、私を襲います。

酷いですっ…酷いですよ…スライさん…
私のものなのにっ…そんな…太股なんてっ…

「な…貴様、マニアックな…」

脳天気に驚くマーカスさん。
その姿が恨めしいです。

私は驚くどころじゃないんですよ…!

「むちむちすべすべの太股に膝枕されたいと思わないのか、お前は…」

悲しみに暮れる私の耳に、再びスライさんの言葉が飛び込んできます。
少し熱の入ったその言葉の内容は、私に幾らかの希望を抱かせてくれる物でした。

スライさんは膝枕が大好き…それなら…私がこの蛇の身体で膝枕をしてあげて、さらに愛情たっぷりに、ぎゅっと巻いてあげれば…
太股なんかより、私の身体の方が素晴らしいと、わかってくれるはずです。
晩ご飯に誘って、一杯美味しいものを食べさせてあげて、お腹いっぱいになって眠たくなった所に、膝枕をしてあげて…完璧です。
きっと、スライさんはそのまま眠ってしまうはずですから、可愛い寝顔も見れます。それに、いつものように、こっそりと寝顔を見るのとは違って、堂々とスライさんの寝顔を堪能出来て…ああ、素敵…
眠っているスライさんのほっぺをふにふにしたり、頭を撫でてあげたり…唇を触ったりして、眠りから起こしてしまっても、何の問題もありません。なんと素晴らしいことなんでしょうか…

「あり…だな。むちむちすべすべの太股に膝枕されながらはちきれんばかりのおっぱいを見上げる…贅沢だ。セーター地のおっぱいだと最強だな。フィットして美しいラインが…」

そしてさらに、マーカスさんの何気ない言葉。

…それです。
おっぱいには自信があります。そして、スライさんは何だかんだ言っておっぱいも好きなはずです。
胸の開いた服を着れば、谷間をチラチラと見ては目を逸らして、可愛い事この上無いのですから。

「だろ…?それじゃ、飯、行こうぜ」

スライさんもマーカスさんの言葉に賛同しました。これは、きっと手応えが在るでしょう。
家に帰ったら、セーター地の服に着替えないと…それも、少しサイズを小さめにして…ふふ…楽しみにしててくださいね、スライさん…
私の事をもっと好きになって…いつか、スライさんから、私を求めて…うふふ…

でも、やっぱり、太股が好きと言うのは許せません。
私が居るというのに、太股なんて…浮気とは言いませんけど浮気のようなものじゃないですか。他の女にしか無い部分が好きだなんて…
これでも太股の方が好きなようなら、無理矢理にでも、私の蛇体の良さを教え込んであげないといけません。


そして、気がつくと、スライさん達の姿は、随分遠くになっていて。
急いで、気付かれないようについていきます。

そうして今日も、二人がお店に入るのを見届けるまでついていって…それから、家に戻るのでした。




「っと…アイリーさん、こんばんは」

何時もの時間に仕事を終えて、今まさに帰宅しようという時、隣の家の窓が開く音。
振り向きながらに、アイリーさんに挨拶をする。

「……」

振り向いた先には、じとっ…と半目で僕を見つめるアイリーさんの姿。
いつもは、窓から身を乗り出し、微笑みながら手を振ってくれるというのに、窓の縁にちょこんと手を置いて、窓の向こう側から、恨めしそうな、物言いたげな、哀しそうな、怒ったような…
彼女の善意を断ろうとした時と、似て非なる表情を向けてくる。

「アイリー…さん?」

アイリーさんの発する負のオーラに気圧されながら、意味も無く、名前を呼び直す。
何か悪い事をしてしまったのだろうか。
拗ねる事はあれど、怒っているような表情なんて、これが初めてな気さえする。

「晩御飯、食べていきますよね?」

そしてそのまま、アイリーさんは言う。
まるで、食べていくのが当たり前であるかのように。
そして、食べていかなければ…という言外の意味を含んでいるようにさえ見える。
断ったらどうなるのか、想像がつかないが、とにかく恐ろしい。

「…頂きます」

そんな中、僕に断るという選択肢は存在しなかった。
いつも、断るという選択肢は有って無いような物だけれど、今回は本当に、断れない。
尤も、断る理由も、殆ど無いと言えば無いのだけれど。

夕食を頂くと答えて、アイリーさんの家の玄関まで歩いていく。


「…上がってください」

そうして、ようやくアイリーさんが、いつもの表情に戻る。
優しい微笑みを湛えた、穏やかな表情に。
だが、そう思ったのも束の間、その瞳は相変わらずだという事に気付き、ぞくり、と背筋が震える。

「お邪魔します」

閉店の札がかけられた扉を開けた。
やはり、アイリーさんの様子に関して、身に覚えは無い。
何が有ったのだろうか…?



「はい…今日はマカロニグラタンです」

「…はい」

家に入り、テーブルに着くなりしてすぐに運ばれてきたのは、程よく温かいグラタン。一人で食べ切れるであろうけど、結構な量だ。
こんがり焦げ目がついていて、美味しそうだ。
僕がこの時間に帰ってくる前提で作っていたのだろうか。
それは嬉しいのだけれど、アイリーさんの様子が様子のため、緊張してそれを受け取る。
目が合うが、表情は笑っていても目は笑っていない。
悲しんでいるような、怒っているような…

「いただきます。たっぷり食べてくださいね?」

対面の椅子に腰掛けて、僕を覗き込んで、そう言うアイリーさん。
その微笑みには、有無を言わせない圧力が滲み出ている。

「いただきます…ん…」

妙に食べにくい雰囲気の中、手を合わせてからグラタンを口に運ぶ。美味しい。
そして、もう一口。美味しい。自然に口元が緩む。
いつも通りの、美味しい手料理。
そこらの店では太刀打ち出来ない程だというのに、日に日に美味しくなっていくような気さえする…
少なくとも、一ヶ月前との差が分かる程には上達しているのだから、恐ろしい。

「ふふ…いつも美味しそうに食べてくれますから、作り甲斐があります」

そう言って微笑みかけてくるアイリーさんの目は、いつものように優しい眼差しに戻っていて。
怒ってるように見えたのも、妙な圧力も、僕の気のせいだったのかもしれないと、そう思ってしまう。
仮に怒っていたのだとしても、どうやら機嫌はひとまず良くなってくれたようだし、あんまり考える事もないか。
折角アイリーさんが作ってくれた美味しい料理があるんだ、素直に楽しもう。
そう考えて、僕はまた一口、グラタンを口にした。




「ご馳走様でした」

結局、ぺろりとグラタンを平らげ、両手を合わせる。
丁度良い具合にお腹が膨れ、身体も暖かくなってきて、すぐに眠気が襲って来そうだ。少し寝不足気味でもあるし。

「お粗末様でした…あちらで、ソファにでも座っていてくださいね」

一足早く食べ終えていたアイリーさんが、僕の食器を片付ける。
後ろ姿を見ると、尻尾の先が何処か上機嫌に揺れているように見える。
やはり、何故不機嫌だったのか不思議だ。

「そうですね。そうさせてもらいます」

食卓を離れ、リビングへと歩く。

「ええ、どうぞ」

勝手知ったる他人の家、とでも言うのだろうか。
アイリーさんがそう言うのを聞きながら、いつものように、リビングのソファに腰掛ける。
ラミアであるアイリーさんの蛇体が乗せられるような、長めのソファで、それと同じ物が、シックなテーブルを挟んだ向かい側にも置かれている。

「ふぁぁ…」

柔らかい背もたれに体重を預けると、途端に眠気が襲ってくる。
脱力したせいか、見回りと訓練の疲れも、一気に押し寄せて来た。
欠伸をしながら、ぼーっと、アイリーさんを待つ。

「あらあら…おねむですか?」

そう言って、台所の方からやってきたアイリーさん。
どうやら、洗い物は後にしたらしく、丁度、欠伸をした瞬間を見られていたようだ。

「お腹が一杯になると、つい…」

生理現象なので仕方ないとは言え、少し恥ずかしい。
何処か言い訳じみた言葉を口にする。

「いいえ、夜更かしするからです」

「ははは、それもそうですね…」

他愛の無い会話をしながら、アイリーさんは僕の隣りに腰掛ける。

「ふふふ……」

そして、微笑みながら、その蛇体の、人間なら太股に当たるであろう位置を、ぽんぽんと叩く。

「………」

膝枕をするから横になれ、という事なのだろうか。
何故か、今日のアイリーさんは、積極的というか、距離感がいつもより近いというか…
ともかく、膝枕…いや、蛇腹だから腹枕なのだろうか…をして貰えるのは、嬉しい事なのだけれども、少し恥ずかしい面もあって。
そもそもそういう意図じゃなかったら、僕の勘違いだったらどうしようか…
などと考えていると、自然と口が止まってしまい、何処か気まずい。

「横になってください…膝枕、してあげますから」

再び、ぽんぽんと蛇体を叩くアイリーさん。

「あ、はい…それじゃ…お邪魔します……」

靴を脱ぎ、ソファに横になって、ゆっくりと、恐る恐る、蛇体に頭を近づける。
なんせ、母以外の女性に膝枕をしてもらうなど、生まれてこの方始めてなので、緊張してしょうがない。
でも、膝枕をされる、というのは、憧れでもあったので、期待も混じっている。
やっぱり自分は何だかんだ言って甘えたがりな部分が有るらしい。
相手がアイリーさんなら尚更だ。
蛇体にそっと頬を置き、頭を預けると、思っていたより柔らかい。
そして、むっちりとしていて、鱗特有のすべすべ感が堪らない。
思わず頬ずりしたくなってしまう感触だ。
きっと、太股より魅力的だ。太股に触れた事が無いから分からないんだけども。
しかも、密着しているだけあって、アイリーさんの甘く優しい香り…
恍惚としそうな、それでいて安らいだ気分にさせてくれる、魅惑の香りが、息を吸う度に僕を満たす。幸せだ。

「うふふ…疲れているでしょうし…」

そして、そんな僕の身体を、床に投げ出されていた蛇体が絡め取り、巻きついて行く。
僕の頭の位置はそのままに保ちながら、器用に、背や脚、肩、腰を持ち上げ、その下に蛇体を滑り込ませて…

「えっ……あの……?」

狼狽している間に、僕はアイリーさんにぐるぐる巻きにされて、蛇枕をされていた。
蛇体の作る管の中に、仰向けに収まる形。
肩から下が、すっぽり収まっていて、腕と頭だけが出ているような状態だ。
ただし、脚は右脚だけが、蛇体の中で、左脚は、そのままソファの上に投げ出されている。
隙間なく密着した、アイリーさんの蛇体は、僕が頭を置いている所と同じように、柔らかく、むちむちで、すべすべだ。
視線の先には、僕を覗き込む、アイリーさんの微笑み。

「マッサージ、してあげますね…」

それに見惚れるや否や、僕を包む蛇体がきゅっと締まる。
アイリーさんの言葉通りに、まるでマッサージするかのようにうねり始める。
まずは、蛇体に包まれた右脚から。
足先から太股までを、締め付けとうねりが往復していく。

そして、視界の隅で目を引くのが、ノースリーブのセーターに包まれた、アイリーさんの豊満な胸。
チラッと目をやれば、伸縮性に優れたセーターには、乳袋と形容出来る程にぴったりと、胸のラインが浮き出ていて…その胸は服に隠されているはずなのに、隠し切れない存在感を放っている。
それを下から、しかも間近に見上げるのだから、最早圧巻とも言うべき眺めで。
しかも、今見て気づいたのだけれど、セーターに、うっすらと乳首が浮いていて…

「あっ…あぁ…ありがとうございます……」

劣情を誘うその光景に、股間に熱が集まって行くのが分かる。
このまま見続けていては、密着した状態で勃起するという恥ずかしい事になりかねない。
なので、慌てて目を逸らすのだか…やっぱり僕は男で、目の前に実った果実の誘惑に、完全には抗えず…時折、アイリーさんの視線が僕の顔以外に向いている時に、チラチラと、胸の方に目をやってしまう。
抱き着きたい。頭を預け、顔をうずめ、思う存分甘えたい。そう思わせる、魔性の胸。
アイリーさんの事だから、狙ってやっているわけでは無いだろうし、気付いてもいないみたいだけど…反則級だ。

そして、足先から太股へ、そして、太股から足先へ。
最初は弱く、徐々に強く。
疲れを絞り出すような、撫でさすられるような感覚に、思わず息が漏れる。
性的な快感とはまた別の快感。
心身共にリラックス出来る。
そのせいか、股間の方も、あんまり反応しないで済んでいる。正直、有難い。

「あ…無理に起きようとしなくても良いですよ…楽にして、目を閉じて…眠くなったら眠って構いませんから…」


そう言って、アイリーさんは僕の右腕を取り、二の腕から手首まで、そして肩を、両手で揉みほぐし始める。
しっかりと力を込められているが、それがまた心地良い。
剣を振って疲れ、凝った筋肉が、解きほぐされていく。
そして、それと同時に、右脚を包む蛇体が、ぐにゅぐにゅと、揉み解すように蠢き始める。
普通のマッサージでは味わえないような、脚全てを一斉に揉み解される感覚。
少し敏感な内腿から、心地よいくすぐったさを感じる。

「あ…はい……あぁ、それ、気持ち良い…」

言われた通りに、眼を閉じる。
でも、折角眼福な光景が目の前にあるのだから、完全に目を閉じてしまうのは勿体ない。
なので、時々目を開ける事にしよう。
我ながら邪だな、とは思うけれども、男だから仕方ない。

蛇体に包まれ、密着して、アイリーさんの身体の温もりが、余す事無く伝わって来て、とても暖かい。
その上さらに、マッサージによって右脚と右腕がぽかぽかとしてきている。
左脚と胴もマッサージされ、全身がぽかぽかとするのを想像するだけで、眠たくなってしまう。
想像するだけで眠くなるのだから、実際にそうなったら、あっさり眠ってしまいそうだ。

「ふふ…」

右腕と右脚から、それぞれアイリーさんの手と蛇体が離れて行く。
そして、左腕、左脚にそれぞれ添えられ、巻き付けられる。

「はぁ………」

右側と同じようにマッサージ。
心地良さに溜息を漏らしている間に、左腕、左脚も、だんだんとぽかぽかしてくる。
意識が、微睡みの中に落ちて行く。





「うふふ…はい、次は、腰や背中ですね…」

「ぅぁ……」

アイリーさんの声に、微睡みから引き戻される。
どうやら、少し意識が飛んでいたようだ。

既に左脚、左腕のマッサージも済んだのか、両脚が纏めてアイリーさんの蛇体に包まれている。
頭がぼーっとする。すごく眠い。気持ち良い。

「あっ…起きちゃいました…?」

しまった、といった感じの声が聞こえる。

「ぇ…ぁ…ふぁい…」

ぼーっとした頭で返事をする。

「ふふ…まだおねむみたいですね…いいですよ、眠ってください…」

声とともに、全身を包む蛇体が蠢き、足先から胸までを、優しく揉みほぐす。
そして、アイリーさんのしなやかな指が、僕の頭を撫でる。

「おやすみなさい……」

マッサージをされた後の、浮遊感にも似た身体の火照り。
揉み解されている全身は、心地良さに、だらりと脱力、弛緩していて。
密着し、包まれて感じる、アイリーさんの体温。そして、アイリーさんの香り。
慈しむように、頭を撫でられる。
それは、安心感を与えてくれて。
微睡みの中、なんとも言えない幸福感が胸を満たす。
そして、アイリーさんの言葉に導かれるように、意識はすとん、と深い所に落ちていった。





「ふふふ……」

私の身体をベッドにして、ぐっすりと眠るスライさん。
蛇体で体重を受け止めているので、苦しさは全然ありませんが、少しだけ重いと言えます。
ですが、その重みは、スライさんの存在をより近くに感じられる物で、むしろ、重みが有るからこそ、良いと言えます。
肩から下を隙間無く巻く蛇体から、余す事無く伝わってくるのはスライさんの体温。
それは、私の身体にじわりと染み込み、心身共に暖めてくれるもので。

おまけに、密着する胸からは、とくん、とくんと、スライさんの胸の鼓動が伝わって来て…

この温もりも、重みも、鼓動も…

「へぁ…」

そして、この表情も、声も…

きゅっ、と優しく蛇体で締め付けてあげると、スライさんは、脱力した、気持ち良さそうな声を漏らしながら、その表情を幸せそうに、にやけさせます。

全部、全部…私の物…私だけのスライさん…

「んぅ………」

頭を撫でてあげれば、安心しきった寝顔を見せてくれて。

「うふふ……」

人見知りで、遠慮がちだったスライさんが、こんなにも密着した状態で、こんなにも無防備で、こんなにも安心した、緩み切った状態でいてくれて…
それだけの信頼を育んだのだと思うと、喜びはひとしおです。
それに、さっきは、おっぱいをあんなにわかりやすく見て…
気付かないふりをしていたら、はっと思い出したかのように、目を逸らして、それでも、欲望に耐え切れないで、チラチラと…ああ、今思い出しても、可愛らしくて仕方ありません。

膝枕が好きで、おっぱいが好きで…スライさんは甘えん坊なんでしょう。

「愛してますよ…んっ……」


上体を倒し、スライさんの頬に片手を添え、顔を少し横に向かせます。
そして、耳元で愛を囁いてから、健康的な頬に、唇を近づけて…

「ちゅぅっ………」

唇に触れる、ふにふにと柔らかい頬の感触。
その頬に、愛しさをたっぷりと込めて、吸い付いて…

「んぅ…」

悩ましげな声をあげて、ぴくりと身じろぎをするスライさん。
掠れた、色っぽい声。
そんな声を耳元で出されるのですから、ぞくぞくして堪りません。

「んっ…ふふふ…」

キスマーク、付けちゃいました…

愛しさ故に、ついつい強く吸い付いてしまった唇を離すと、頬には、私の愛の印がくっきりとついていました。
独占欲を満たされた私の顔は綻んでいるでしょう。

本当は唇にキスをしたかったのですけれど、スライさんの知らない間にファーストキスを済ませてしまうのもどうかと思いますし…
唇同士のキスをしてしまったら、そのまま我慢出来ずに、スライさんを襲ってしまうでしょう。
愛している人と交わり、満たされた『初めて』を記憶に留められる私はそれで良いのかも知れませんが、スライさんはそういう訳には行きません。
此処でスライさんを襲って、幸せにしてあげる自信は有ります。
それでも、スライさんの方から私を求めてくれるまでになってから…
互いに愛し合っての方が、お互いにとって、より幸せで素晴らしい『初めて』になるのは、当然のことです。
それに、快楽だけでなく、お互いの愛も有るのですから、
その分、それからの二人の結び付きは、他の女の入る余地の無い、完全な物になる事でしょう。
きっと、より一層、私から離れられないようになるはずです。
物事は最初が肝心と言う事でもありますし。
だから、今は、我慢、我慢…
ゆっくりと信頼を築いて、スライさんの恋心を、愛を育ててあげて…そして、二人で幸せになるのですから。

もっとも、今この場で襲ってしまうのに比べて、他の女に割り込まれたりする可能性が有りますが…
スライさんの日々の生活を覗き、調べ上げた限り、そういった事とも無縁です。
職場の女性は、既婚の魔物が殆どですし、友人付き合いも男性のみ。
私が、私だけが、仲の良い女性だと言える状況ですので、殆ど安心です。
懸念すべきは、何かの拍子に、スライさんが他の女を惚れさせる事ですが…
スライさんのためにも、それを気にして今此処で襲いかかるというのは、我慢すべき事です。



「さて…ほっぺたも…ふにふにですね…」

ともかく、スライさんにバレてしまったら…寝てる間についたのだと、そう言っておきましょう。
嘘ではありません。それに、ちょっと天然さんな所も有りますから、きっと誤魔化せるはずです。

そう思いつつ、キスマークのついた頬を手で優しく摘まんでみたり、突ついてみたり、押し撫でてみたり…
単なる柔らかさなら、当然自分の頬の方が柔らかいですけど、何と言っても、愛しいスライさんの頬です。
感触よりもまず、スライさんの頬に触っているという事実が、私の心を弾ませます。

「…あっ…少し乾燥しちゃってますね……」

そして、頬の次は、唇。
人差し指で、下唇をすっと撫でてみると、少しカサカサしていて…
このまま放っておいては、そのうち唇がひび割れてしまいます。
大切なスライさんの唇がそんな状態になるのは耐えられません。
後で、前もって作っておいたクリームをプレゼントしてあげましょう。

「はぁ……」

ああっ…幸せです…

もう片方の手で、髪に手櫛を入れてあげつつ、息がかかる距離の、スライさんの寝顔を、じっくりと堪能します。
僅かな表情の変化、息遣い…
職場の方でシャワーを浴びたのか、汗の匂いが薄まっているのは残念ですが…それでも、魔物の嗅覚は敏感です。
息を吸い込めば、スライさんの体臭が、身体から滲み出る精の甘い香りが、頭を一杯にします。
愛しい人の匂いというものは、堪らなく甘美な物で…
蛇体に伝わる温もり、指の隙間を流れる髪、唇の柔らかさ。
穏やかな寝息、視界一杯の可愛らしい寝顔とあいまって、思わず、幸福感に、うっとりと溜め息を漏らしてしまいます。

「ふふふ…」

スライさんが起きるまで、頭を撫でたり、全身を蛇体でぎゅっと抱き締めたり、耳たぶを指で弄くったり…
思う存分に、この状況を楽しむのでした。






「んっ……」

ゆっくりと浮き上がる意識。
朧げな中、心地良さに満たされている。
意識が鮮明になるにつれて、心地良さがはっきりとしてくる。
香りも、温もりも、頭を撫でる感触も、全てアイリーさんの物だ。

「あっ…おはようございます。よく眠れましたか?」

目を開けると、いつものように微笑んで、アイリーさんが僕を覗き込んでいる。

「はい…とても…っと…」

伸びをしようと、何も考えずに起き上がろうとするが、蛇体に包まれていて、上体が動かせない。忘れていた。
気が付けば、部屋に差し込む光は減って、部屋の中も、それなりに暗くなっている。

そろそろ帰るべき時間かな…
別に一人暮らしなので門限が有るわけでは無いけど…夜遅くまで女性の、それも魔物の女性の家に居るという事の意味が分からない僕では無い。
こうして膝枕をされて、蛇体で包まれて、頭を撫でられたりするのは、とても心地良いのだけれど、ずっとそうしているわけにもいかないという事だ。

「あっ…遠慮しなくて良いですよ…?」

どうやら、起き上がろうとしたのを、遠慮しているのだとアイリーさんは思ったらしい。

「いや、あの…少し、伸びをしたかっただけで…」

ちょっとだけ寂しそうにそう言ったアイリーさんに、つい罪悪感を感じてしまう。
僕が悪いわけでも無いのだけれど、つい、言い訳じみた感じの言葉になってしまう。

「それなら、はい、どうぞ……」

きゅっと身体を包んでいた蛇体が、しゅるしゅると緩められていく。
確かに手足を動かし、伸ばす余裕は出来たが…
これは、伸びをしたら、また蛇体が締まるんじゃ無いんだろうか。
膝枕に、蛇体のベッド。これを続けてくれようとしているのは嬉しいのだけれど、そうすると僕は、帰るタイミングを失ってしまう。

「あの…解いてくれると…もう暗くなってきので、帰らないと…」

申し訳なく思いながらもそう言って、ソファに手をつき、動かせる範囲で上体を起こす。
名残惜しいのだけれど…やっぱり、恋人でも無いのに、あまり夜遅くまで居るものじゃない。
それに、職場でシャワーは浴びて着替えたとは言え、仕事帰りのままで、未だに家に帰ってすらいない。
家事やら何やらもしなければいけないわけだし、今日はまだ、裏庭で型の練習をしていない。

「あら…もうそんな時間に…そうですね…もう夜ですものね…」

身体に巻きついた蛇体が、するりと解かれていく。
蛇体のベッドの代わりに、ソファが、僕の身体を受け止める。
此処で強引に引きとめないのが、アイリーさんの良さだ。
だからこそ、僕はこうして、安心して近くに居られる。
残念そうにされると、それはそれで困るのだけれど。

「んぅっ…あっ、そうだ…重くありませんでした?」

身体を起こしきって、ぐっと伸びをする。
マッサージのおかげか、寝起きにも関わらず、身体が軽いような気がする。
そして、先程まで全体重を預けていた事に、今になって気づく。
気持ち良かったりしたせいで、つい失念していた。

「実は、ちょっとだけ。でも…それが良いんです。遠慮しないで下さいね、いつでもしてあげますから…。
それに…好きでやってるんですから」

そう言って微笑むアイリーさん。
どういう意味で「良い」のかはともかく、満足気な様子だ。

「そうですね。それなら、またお願いします。とても気持ち良かったので…それじゃ、もう帰ります。」

脱いであった靴を履きなおし、床に立つ。
笑みを返しながら、床に纏めて置いたあった荷物を担ぐ。

「あっ…帰る前に、渡そうと思っていた物が…」

アイリーさんは、僕が帰ろうとしたのを見て、薬棚から何かをごそごそと取り出している。
特に身体の調子が悪いわけでも無いし、何が渡されるのだろうか。

「はい、プレゼントです。唇が乾いてきているようなので…私特製のリップクリーム、使ってくださいね」

薬棚から広口の小瓶を取り出したアイリーさんは、それを僕に手渡す。
その中には、乳白色の軟膏のような物。

「あ、どうも…ありがとうございます、本当にいつも…」

確かに最近、少しだけ唇が乾いて来たかな、とは思っていた。
ただ、見た目にはあまり変わりが無い。
それに気づくとは、なんというか、本当に鋭い女性だ。
素直に感心しながら、有難くリップクリームを受け取る。
アイリーさんのぷるぷるの唇の秘訣はこれなんだろうか…
ともかく、折角貰ったんだし、明日から使ってみよう。
これで唇のひび割れとはおさらば出来るに違いない。アイリーさんのくれる薬は、いつも効果てきめんだ。


「それじゃ、帰りますね」

小瓶を懐に仕舞い、玄関へ向かう。

そう言えば、アイリーさんの機嫌、すっかり直ってるな…
結局、何が原因だったんだろうか。

「ふふ…今日も楽しかったですよ…」

扉の前までついてくるアイリーさん。
家を出る時はいつもこうして見送ってくれる。律儀だ。

「ははは…僕もです。お邪魔しました、また明日」

扉の取っ手を握り、がちゃりと開く。

「おやすみなさい、スライさん…」

家の外へ一歩踏み出しながら振り返ると、アイリーさんがゆっくりと手を振っている。

「おやすみなさい、アイリーさん」

その微笑みは、僅かに寂しそうに見えなくも無い。
手を振り返しながら、扉の取っ手から手を離す。
少しだけ後ろ髪を引かれるような思い。
扉が閉まりきるまで手を振り返してから、隣の我が家に向かって歩く。
歩きながら横を向けばアイリーさんが窓から手を振っていて…
結局、家に入るまで、ずっと手を振り返す事になった。








「うふふ…こんばんは…」

魔術を使って鍵を開けた私は、音を立てずに、スライさんの部屋にお邪魔しています。
勿論、スライさんの部屋の明かりが消えてしばらくして、眠りについたのを確認してからです。
今日は私が朝注意したように、夜更かしをしなかったのか、早めに眠ってくれました。
これなら、スライさんに余計な遠慮や気遣いをさせる事もありません。
イケナイ事だとは分かっていますけど、それでも、こうしてお部屋に忍び込むのはやめられません。
好きで好きで、一緒に居たくて、もっともっと知りたくて、見ていたくて、堪らないのですから。

さて、まずはスライさんの寝間着姿と寝顔を堪能しましょう…

暗闇に慣れた目で足元に注意しながら、ゆっくりとベッドに向かって這い寄ります。
そして、ベッドの側まで辿り着いた私は、すっと、宙に指でルーンを描いて、弱い光を生み出します。
少しだけ部屋が明るくなり、黒の濃淡だけだった視界に、色が着きます。
これで、スライさんの寝顔も堪能出来るというものです。
そして、肝心のスライさんですが、ベッドには布団の盛り上がりが有るだけで、スライさんの姿は見えません。

今日も、お布団の中ですね…?

いつものように、そっと布団を捲ると、そこには、枕に抱き付いて眠るスライさんの姿。
いかにも甘えん坊といった様子です。
スライさんにぎゅっと抱かれている枕が羨ましくて仕方有りません。

私がその位置に居るなら、下半身でぐるぐる巻きにして、肉布団ならぬ肉寝袋になってあげて…
スライさんは、私のおっぱいに顔を埋めて、ぎゅうっと抱き付いて、甘えて来て…頬擦りされたり、おっぱいに悪戯されたり、赤ん坊みたいにちゅうちゅう吸われたり…
ああっ、想像するだけで、胸がきゅんと疼いてしまいます。

そして、スライさんの格好は、子供っぽいデザインをした、水色に白のストライプのパジャマで…
しかも、頭には、同じ色をした、円錐型のナイトキャップ。いわゆる、サンタ帽のデザインです。
ただでさえ、子供っぽくて可愛らしいパジャマを着ているのに、このキュートなナイトキャップ…
落ち着いた、控えめな印象を持つスライさんがこの格好をしているこのギャップもあいまって、もはや垂涎とも言うべき可愛らしさを醸し出しています。
そんな格好で枕を抱いて、すやすやと寝息を立てながら、穏やかな寝顔をしていて…

この至福の光景を間近にじっくりと堪能するのが、私の夜の日課でした。毎日見ても飽きません。
いえ、日に日にこの幸せは膨れ上がっていると言っても良いくらいです。
熟睡を妨げるのは忍びないので、あくまでも見るだけに留めていますが、それも、スライさんが私を大好きになるまでの辛抱。
ああ、楽しみです。
勿論、他の女がスライさんに近づいたのなら、なりふり構わっている暇は無いのですけど。


「はぁっ…ご馳走様でした…」

うっとりと息を吐きながら、小声で呟いて、スライさんにお布団を被りなおさせてあげます。

さて…寝顔も堪能し終えましたし、今日は、最後の場所で、大本命の本棚を調べてみましょう。

何処かにえっちな本が置いてないか、毎晩少しずつ、隠し場所を探しているのですが、一向にみつかりません。
結局、残す所は、本棚のみ。
本棚に近づいた私は、音を立てないように一冊一冊、本を本棚から抜き取り、本をチェックしていきます。

本当は、朝や昼間の、スライさんの居ない時に行う方が楽なのですけど、その時間帯は、お店のお仕事をしたり、スライさんに悪い虫がつかないか、見守らなければならないので、そういうわけにもいきません。

スライさんはどんな事が好きなんですか…?

心の中で問い掛けながらチェックを続けます。




「…ふぅ」

小さく息を吐いて、最後の本を棚に戻します。
結果は、何も無し。えっちな物は何も見つかりませんでした。
本棚の中身は、真面目な本と、スライさんの趣味のチェスに関する本のみ。
スライさんの好みが分からなくて、残念に思う反面、えっちな絵やら文章にスライさんが興奮している光景を想像したらしたで、私に欲情して貰いたいと、嫉妬の感情が湧き上がってくるので、これはこれで良しとします。
オカズになるような物が無いとなれば、スライさんは私の事を考えながらシてくれてるのでしょう。

「ふふ……うふふ……」

スライさんから漂う精の残り香から、スライさんのオナニー周期は既に把握済みです。
そして、予定通りなら、スライさんは明日、オナニーをするはずです。
明日、スライさんの部屋の、開けっ放しのカーテンが、不自然に閉め切られた時、私がオカズにされる……
想像するだけで、嬉しくて、興奮して、ゾクゾクして、待ち遠しくて堪りません。

明日は、スライさんと同じ時間にオナニーをして、お互いをオカズにしあって……うふふ……

「ふぁぁ……んぅ……」

とても素敵な想像の最中でしたが、時間も時間であるせいで、ついつい欠伸が出てしまいます。
得意の魔法も、本職では無い私にとってはそれなりに体力を使いますし、流石に眠たくなってきてしまいました。
明日もスライさんと過ごすのですから、日記を書いて寝る事にしましょう。

「おやすみなさい…」

最後に布団を捲り、スライさんの寝顔をもう一度だけ見てからそう告げて、部屋を後に、家を後にするのでした。



「うふふ…」

自分の部屋に戻った私は、机に向かい、日記にペンを走らせます。
今日あった出来事を思い出して、忘れないうちに書き留める。
特に、スライさんの事については、詳細に書き綴ります。
むしろ、日記の体をとっていますが、実質はスライさん記録記と言っても差し支えが無いでしょう。

例えば、今日、スライさんにグラタンをご馳走した時、何の具から食べていたか、何をよく食べていたか…表情はどうだったか…
これは、日記の食事の好みに関する中の、そのほんの一例に過ぎませんが、それらの情報をこうして纏め、書き綴り、過去にまとめた内容と照らし合わせ考察する事で、スライさんがどんな食べ物が好きか、その傾向や順位を知るのです。
そして、それらを元に、明日はよりスライさんに喜んで貰える料理を作って…
勿論、料理だけに限った事では無く、全てにおいて、スライさん好みの女になるための、そのための日記。
これを大変だと思った事はありません。むしろ、楽しいくらいです。
そう、スライさんの事が好きでやっているんですから。


「んぅっ……」

書き終えた日記をパタンと閉じ、卓上の明かりを消し、そのままベッドに潜り込みます。
ベッドの中の抱き枕にぎゅっと抱きつき、下半身でぐるぐる巻き。

「スライさん……」

抱き枕はスライさんの代わりには到底なり得ませんが、想像の手助けにはなってくれます。
今日はあえて、私がスライさんに甘えるというシチュエーション。
たまには甘えられてみたいと言うスライさんの胸に頭をおいて、抱き締めるのではなくて、抱き着くように、スライの身体に巻き付いて、両腕を回して…
そして、スライさんの胸に頬擦りをすると、くすぐったそうにしながらも、頭を優しく撫でてくれて…

そんな、とても甘美な想像は、一日の最後のお楽しみで。
今日も、愛しい人の事を想いながら、眠りにつくのでした。









「っ……!」

練兵場の中心、剣をぶつけ合う、男と女。
片方は軽薄そうな雰囲気の、糸目男。
もう片方は、緑色の鎧に身を包んだ、理知的な瞳をした女。
緑色の鱗に覆われた手脚、そこから伸びる鋭い爪。
ヒレのような耳に、トカゲの尻尾。リザードマンだ。

「はぁっ…!」

「くっ…!」

鈍い金属音、剣と共に、跳ね上げられる男の腕。
首筋に、女の剣が突きつけられる。

「私の勝ちだな」

勝ち誇った表情で、リザードマン…確か、名前はネィナさん…が宣言する。

道場破り、というわけでも無いが、旅人であるらしい彼女はこの練兵場にやって来た。
それで、独身の男達に勝負を挑んでいる。
自分を打ち負かした男に求婚する習慣を持つ彼女にとっては、婿探しの旅でもあるわけだろうし、独身の男を相手に選ぶのは当然か。

親魔物領となって日が浅いため、あまり数の多くない魔物の同僚達も、気になっている男が彼女の相手に選ばれない限りは、戦いを見守っていた。
むしろ、男の側を応援して、新しいカップルが成立しないかと、楽しみにしている風ですらある。
案外お節介焼きが多いのかも知れない。

そもそも、独身で無い男達は、今は此処には居ないわけだけれど…

重役出勤というわけでも無いが、彼等は気紛れに現れて、しばらくすると、妻の待つ家へと帰ってしまう。
妻とのデートがてらに、見回りの仕事をしてくると言ったと思えば、僕の担当する地区の路地裏で事に及んで居た人すら居た。
既婚の魔物も似たような物だった。魔王軍のような状態だ。

ともかく…マーカスも負けたし、次は誰が指名されるんだろうか。

汗を拭いながらこちらに向かってくる友人と、早くも次の相手を探し、男達を値踏みするように眺めるリザードマンの姿を見ながら、そんな事を思っていた。








「いやー、負けちまった負けちまった。強いなぁ、流石はリザードマンだ。こりゃ、もうちょい真面目に訓練するか、お前みたいにさ」

こちらに戻ってきては、へらへらと笑う、友人マーカス。
こんな奴だが、言った事はしっかり実行に移したりするのは確かだ。


「ハハハ…しかし、旅人だけあって場数が違いそうだね。実践慣れしてるというか」

彼女と同僚達の試合を見ていた所、彼女の戦い方は、型に囚われない動きが多々あった。
それでいて的確だから、やはりこれは、実践経験の賜物なんだろうと、そう思う。

「いや、俺の見たところ、彼女といい勝負するんじゃないか?お前。
旅そのものって、結構手間取られるしさ。案外訓練に時間は割けないだろうし。多くの相手と戦えるのは大きいだろうがさ。
あーしかし、ああいうクールな子も堪らん。勝ったら嫁になってくれてたんだろうか、やっぱり」

二人して、壁にもたれ、話し込む。

「お前、いっつもそれだよなぁ」

「いやぁ、褒めんなよ。俺は来る者拒まず、お前とは違うのよお前とは。あの子が嫁になってくれるならそりゃもう、嬉しいね」

親しい友人では有るのだけれど、どうにも、女性関係の意見はあまり合致しない。
誰彼構わず嫁にしたいというのは、僕には真似出来ない。

「その癖、口説いたりはしないんだ」

「口説くとなると、魔物はみんな魅力的で目移りしちまうからな…」

「そういうものなのか」

「そういうものだ。」






「お…どうやらお誘いみたいだぜ」

「そこの貴方。私と勝負していただきたい」

座り込んでいた僕達に向かって、近づいてくる女性。
先程マーカスに試合を挑んで勝利した、リザードマンのネィナさんだ。

「あっ…僕…ですか?」

あまり、自分が試合を申し込まれる事を考えていなかったせいか、ぎこちない対応となってしまう。

「ああ。スライ殿、貴方だ」

そんな事は構わず、僕に一歩詰め寄ってくる彼女。
押しが強い。見るからにそう感じさせる顔立ちをしている。
あまり、得意な人柄では無い。

「はぁ…何故、僕を…」

試合そのものは良いのだけれど…やはり、勝ってしまうと面倒な事になるわけで。
初対面の女性に求婚されて、はいそうですと言う訳にもいかないし、魔物は一度決めた相手には、とことん一途で、有る意味しつこいと言われているからには、僕が根負けするまで押し通し続けられるんだろう。
実際、リザードマンに勝ってしまった人達は、そういった事になるらしいし…。
かといって、試合にわざと負けるのも、それはそれで侮辱と取られても仕方の無い行為だから、彼女達を怒らせる事に繋がりかねない。
よって、その気が無い限りは、大人しく試合そのものを断るのが一番ベターだ。
とはいえ、直接断るのも気が引けるし、恐らく、この人も食い下がってくるだろう。
結果、こういった遠回しな言い方になってしまう。
やんわりとお断りな空気を出しながら、僕以外の人に目をつけてもらうための口実を探すのだ。

「よく鍛えられた腕をしている。脚もだな。鍛錬を怠っていないのだろう。此処に居る中で、一番期待出来そうなのが君だった。
君の友達には失礼だが、準備運動の相手になってもらったよ」

自然な動きで、しかしがっちりと僕の手首を掴み、そう言う彼女。
一瞬振り払うかどうか迷ったけど、流石に失礼なので、やめておくが、とても居心地が悪い。距離が近いせいだ。
そもそも、振り払えたのかすら怪しい。大した力だ。

…まずい、逃げられない。
なんとか他の人に相手をして貰いたいが…完全に狙われている。困る。非常に困る。

「おお、本命だってさ、シルちゃんよ。羨ましいね」

そんな僕の心境を知ってか、ニヤつきながら、横から茶化すマーカス。

お願いだ、代わってくれ。助けてくれ。

「あ、いや、あの、僕は…あんまり気が乗らないというか…その…すみません」

目を逸らし、半ばしどろもどろで、はっきりとしない断りの言葉を発する。
初対面の女性を相手にするのは、アイリーさんと話すのとはワケが違う。ゆっくりと縮まった距離故の安心や信頼がそこには無い。
アイリーさん相手でも、何かを断るのは苦手だというのだから、初対面なら尚更だ。

「そこをなんとか頼む、お願いだ」

流石に、お断りの意思は察してくれたようだけれど、それでも引き下がらない彼女。
逸らしていた視線を戻すと、真摯な眼差しと目が合う。
真面目だからこそ、中々にタチが悪い。強く断りづらい。

「あー……」

堂々巡りになるのは嫌なので、どうやって納得して貰おうか、先に手を離して距離を取って貰おうか、などと考えるが、うまく纏まらない。
不適切な距離が、思考を言葉にする枷になっている、そんな気がする。
ああ、やっぱりこういう人は苦手だ。

「あぁ、こいつシャイボーイだから。そうやって詰め寄られるのも苦手だし、勝った時に求婚されるってなると凄く困っちゃうんだって。
 あ、俺はいつでも求婚OKだけどさ。
 ともかく、こいつには優しくしてあげなきゃダメだぜ、うん」

そんな僕に代わって、流暢に横槍を入れる友人。
何だかんだで、僕の言いたい事は理解してくれているらしい。
ふざけながらも、何だかんだ助け舟を出してくれる。

「…あぁ、はい。そんな所です。一言余計ですけど」

友人に感謝しながら、その言葉を肯定する。

「…私に女としての魅力が無いという事だろうか」

そして、何かズレた言葉が、目の前の女性から返ってくる。
どういう理屈でそういう結論に至ったのかは分からない。


「いや、そういうわけじゃなくて…」

ただまあ、客観的に見て、魅力的な女性では有ると思うので、正直に彼女の言葉を否定する。
一拍置いて、魅力的でも求婚されるのは困る、と続けようとするが…

「なら、受けて頂きたい」

即刻、割り込まれる。
手首を離して欲しい、距離を離して欲しいとマーカスに代弁してもらったはずなのに、まるで、聞いていない。

「あ、あの…」

横目でマーカスに助けを求めようとするが、ニヤニヤとして、手を振りながら、僕達から離れていく。
口パクで、ごゆっくり、と言っている。
完全にこの状況を傍観して楽しむつもりだ。
あわよくば、勝ってくっつけとまで考えているに違いない。

頼った僕が馬鹿だった…

「ダメだろうか」

真面目な顔で、まくし立てる目の前の女性。
悪気は無いのだろうけど、本当に勘弁だ。

「いや、あの…」

ああ、つまり、彼女の中では、男は魅力的な女性になら求婚されても構わないという図式が出来ているのだろう、多分。
なるほど、だからさっきはあんな事を言って…
幾ら魅力的でも、さっき見知った程度の女性に求婚されて困らないはずが無いのだが、なんというか、常識が食い違っているようだ。世間知らずなのか?
アイリーさんに求婚されたとしても僕は、対応に困ると言うのに…ああもう、これは今関係ない。何を考えてるんだ僕は…

断らなきゃいけないのに、思考は有らぬ方向に飛んでいき、収拾がつかない。
僕は早くも、試合を断る事を諦めたくなってしまっていた。




「…………分かりました」

最終的に、求婚だとかそういった事は棚上げに、ひたすら頼み込む彼女と、それを断る僕の、根気勝負となり…僕が折れる形で、試合の前の勝負は決着した。


「ありがとう、スライ殿。さあ、勝負」

試合を取り付けて、満足気な笑みを浮かべる、リザードマン。

なんというか、こういった押し切り方に慣れているんじゃ無いんだろうか、この人は。

「……はぁ」

やるからには全力で相手をしよう。わざと負けては失礼だ。
勝ってしまった時は仕方ない、今度こそ全力で断って、諦めてもらうしか…

試合前から疲労感を覚えつつ、装備を取りに向かおうとした、その時。



「その勝負、絶対に認めません」

背後から聴こえる、聞き慣れた声。
いつもの優しい調子ではなく、刺々しい雰囲気を醸し出している。
声の主は、アイリーさんだ。

「え…?」

何故こんな所にアイリーさんが、と思いつつ後ろを振り向くと、何も無い空間がぼやけ、そこに色が滲んでいったと思うと、半透明なアイリーさんの姿が現れ、段々と不透明になっていき…最後には、そこに確かにアイリーさんが存在していた。

何時の間に?そもそもなぜ此処に?

「む…透明化か?」

何故か冷静なネィナさんの声。
透明化していたのは分かったけど、何が起きているのかはまだまだわからない。

「単刀直入に言います。スライさんは私の物です。誰にも渡すつもりは有りません」

唯ならぬ気迫を纏って、まるで威嚇するかのような声色で、僕の後ろのリザードマンに喋りかけるアイリーさん。
その表情は、笑顔をなんとか取り繕っている、といった風なものだ。有り体に言えば、怖い笑顔。
それでいて、体高もかなり高いのだから、威圧感が物凄い。
唯ならぬ空気が、二人の間に流れていた。

「えっ…あっ…ど、どういう…」

事情が飲み込めないまま、取り敢えずはアイリーさんの元に歩み寄る。
怒っているなら、宥めないといけないという考えもあったし、聞きたい事も一杯有る。
僕を混乱させている張本人だという事は、今はどうでも良かった。

ともかく、いつも優しいアイリーさんが、何故か職場に現れて、僕とリザードマンのネィナさんとの勝負を辞めさせようとして…それで、僕はアイリーさんの物だって…待て待て、そういう関係じゃ無かったはずなんだけど、僕達は…

思考はそれなりに巡っているが、上手く言葉に纏まらない。

「ああ、成る程。貴女が理由でスライ殿は…これは申し訳無い事をしてしまった。済まない」

そして、平然とアイリーさんの言葉に応え、頭を下げるネィナさん。
僕を介さずに、話が進んで行く。蚊帳の外だ。

あれ…これは勝負せずに済むんだろうか。
でも、これって僕はアイリーさんの物だって事に…え…?あれ?

「いえ、分かってくれればそれでいいんです。
スライさん…話は、家でゆっくりとしましょうね…」

一瞬、どこか安心したかのような表情を浮かべるアイリーさん。
次の瞬間には、いつものにこやかな笑顔に戻って、僕に向き直っていて。
そして、さも当然といった様子で、僕の腕に抱き付く。

「えっ……は、はい…………」

抱きつかれた腕には、しっかりと柔らかい物が押し当てられていて。
いつもはこんなに強引では無いアイリーさんが、身体を寄せ、腕とはいえ抱きつき、胸まで当ててくるのだから、もう、どうすればいいかわからない。
結果、半ば反射的に、彼女の提案に肯定の意を示してしまう。

「ふふふ…ちょっと勿体無いですけど…これで…」

おもむろに懐をがさごそと探り、何かを取り出すアイリーさん。
見てみると、どうやら小さな水晶玉のようだ。

なんですか、それ…
と言おうとした瞬間、水晶玉が音を立てて割れ、中から淡い光の玉が現れる。

「ふふふ、帰りましょう…」

彼女がそう言うや否や、淡い光の球が膨らみ、僕達を包んで…視界が、一瞬、白く染まる。




「お帰りなさい、スライさん」

次の瞬間、目に入ってきたのは、すっかり見慣れた、アイリーさんの家の応接間の光景だった。
そして、当然のように、アイリーさんはおかえりなさい、と僕に言う。

「あ…ただいま…」

此処はアイリーさんの家なのに、何故…と思いながらも、ついつい反射的に、ただいまと返してしまう。お邪魔します、と言うべきだったのに。

「飲み物、取ってきますね…ソファでゆっくりしていてください」

僕に抱き付いていた腕を離し、キッチンに向かうアイリーさん。
さっきから話が急過ぎて、ついていけない。

「あ、はい………はぁ………」

とりあえず、言われるがままに、ソファに腰掛ける。背もたれに体重を預けると、どっと疲れが押し寄せてきたが、同時に、落ち着いた。

「えーと…」

一度、一連の流れを思い出して、何があったのかを把握する。

まず、僕はリザードマンのネィナさんに試合を挑まれて、渋々受ける事となった。此処まではいい。
それで、武具を取りに行こうとしたら、透明になっていたと思われるアイリーさんが現れて…なんで透明になってそこに居たんだ?
それで、アイリーさんが、試合を認めないと言って…あの時は怖かったなぁ。
で、アイリーさんが、試合を認めない理由として、僕はアイリーさんの物だから、手を出すな、と…
この、アイリーさんの物っていうのは…恋人関係、だよなぁ…
で、ネィナさんは、それに了承して謝って…これは、他人の男に試合を挑んだ事か。
負ければ求婚するのだから、他人の恋路に割り込む事になるわけだ、うん。
それで、僕は今、アイリーさんに魔術道具か何かで連れてこられて、此処に居ると。すごく手際が良かった。

つまり、事の大元は、アイリーさんが僕とネィナさんの試合を止めさせようとした事にある。
何故止めさせようとしたかを考えると…後の会話からして、僕がネィナさんに勝った場合、ネィナさんが僕に求婚する事になるのが嫌だったから…という事…で良いんだろうか。

つまり…僕を取られたく無かった…?

凄く自意識過剰な結論に至ったのだけれど、これで合ってる…んだよね。惚れられてるって事なんだけど…
ああ、単に困ってる僕を助けようとした方便かも知れない…でも、演技にしては…あんなアイリーさんは始めてだったしなぁ。

「はい、飲み物ですよ…」

そんな思考を繰り広げる僕の横に、アイリーさんが腰掛け、僕にグラスを手渡す。

「は、はいっ…」

先程まで考えていた内容が内容なので、否が応でも緊張してしまい、グラスを受け取る手がぎこちない。
一度落ち着いてしまったせいで、逆にまた、慌てる種が出来てしまっていた。

「さて…何処から話しましょうか…」

にこにこと、しかし、何処か吹っ切れたような、嬉しそうな、残念そうな、複雑な、感情の入り混じった笑みを浮かべるアイリーさん。
元々僕の身長が低目だというのもあって、長身のアイリーさんが隣に座ると、随分な威圧感を受ける。いつもは笑顔のおかげでそういった事は無いのだけれど、今のアイリーさんの笑顔は含みがあって、安心出来ない。身の危険を感じる、というわけではないけど、ぞくぞくとしてしまう。

「……………」

とりあえずは落ち着くために、手渡されたグラスの中の、ぶどうのジュースに口をつけ、ゆっくりと飲み干す。
心臓がバクバクしていて、味も香りもよく分からないけど、それでも少し、気が休まった。

「そうですね…スライさん、今の私は内心穏やかではありません」

気がつけば、蛇体が遠巻きに僕を囲んでいる。
ソファの右側にはアイリーさんが居て、そこからソファの左端までに、アイリーさんの蛇体が横たわっている。
まるで、僕を逃がさないように。
そんな状態で、アイリーさんは、ゆっくりと目をつむって、そう言う。その内容通り、言葉の端々には怒りのような感情が滲み出ていた。

「…はい」

そんなアイリーさんを前に僕は、まるで母親に説教をされる子供のように返事をする事しかできなかった。
自分の心臓の鼓動が、はっきりと聞こえる。
異性に対する鼓動のような、素敵な物ではない。
緊張に、身体が硬くこわばる。思考もおぼつかない。
蛇に睨まれた蛙とは、まさにこの事か。

「あのまま試合をしていて、もし勝ったらどうするつもりだったんですか?あのリザードマンに求婚されて…」

「…断るつもりでした」

僕を責めるように、言葉を続けるアイリーさん。
それに、言葉を選びながら、正直に、語弊の無いように返す。
僕が悪いかそうでないかは別として、そんなアイリーさんの姿が、まず胸に刺さる。
普段は殆ど怒る事の無いアイリーさんが怒っている。それが辛いし、正直怖い。それに、そうさせてしまったという、罪悪感が僕を苛む。
そして、アイリーさんの言葉は、僕の痛い所をついてくる。

「でも、求婚され続けたらいつかは根負けしちゃいますよね?それに、誘惑だって…」

「………」

答えは、はい。だ。
実際、試合をする事において根負けしてしまったし、断り続けても実力行使される可能性も有るわけで…少なくとも、貞操を守れる自信は無い。
しかし、これを口にするのは、憚られた。
僕を問い詰めるアイリーさんの声には、いつもの余裕が無い。思いつめている。
きっと、いいえと言って欲しいのだろうけど、嘘はつきたくないし、ついてもアイリーさんにはバレてしまうだろう。
だから、僕は沈黙で肯定した。

「スライさんが悪いとは言いませんけど…少し、迂闊ですよね?私が居なかったら…」

「……はい。割り込んで勝負を無しにしてくれた事は…ありがとうございます。助かりました」

確かに、アイリーさんの言うとおり、迂闊だった。
やはり、あの時は、何としてでも、逃げてでも試合を断っておくのが最善の方法で…あの場にアイリーさんが居なければ、後々面倒な事になっていたかもしれないのだから。
代わりにこうやってお説教を受ける事にはなっているけど、もし勝ってしまった時の事を考えると、アイリーさんの行動は素直に感謝すべき事で。ゆっくりと頭を下げる。

「あ…別にいいんですよ…好きでやってるんですから」

『好き』にアクセントを置いた、穏やかな声とともに、頭に優しく手が置かれ、ゆっくりと、僕の頭を撫でる。
それだけで、さっきまでの、心地の悪い緊張が、また別の緊張に塗り替えられていくのが分かった。

「……あの…その…それで…あの時言っていた事って……それと…なんで、あの場に…」

ひとまずお説教は終わったようなので、頭を撫でられたまま、大きな二つの疑問について、質問する。
アイリーさんが、僕はアイリーさんのものだと宣言した事と、透明になってあの場所に居た事だ。


「あの時言った事は本気、ですよ…?
スライさんは…私の物です。
そして…誰にも渡すつもりはありません。
大好きです。愛していますよ、スライさん…
ふふふ、こうしてちゃんと聞いて貰うのは初めてです…」

僕の頬に手を添え、そう言うアイリーさん。
いつもより素敵な笑顔で、ほんのりと頬を染めていて、その瞳は真っ直ぐに僕に向けられている。
そして、それが当たり前であるかのように、独占欲の覗く告白の言葉を、唇が紡いでいく。


「っ…あのっ…ほんのちょっとだけ…時間を…」

人生で始めてされた告白。
胸の高鳴りは苦しいほどに達していて、思考はぐるぐると回る。
こうなったからには、自分の気持ちを正直に伝えなければいけないというのに、上手く言葉が出てこない。
仕方なく、少しだけ時間を貰う事にする。

「…はい」

ゆっくりと頷くアイリーさん。
少しだけ、表情に不安の色が混じる。

「………」

落ち着いて、ゆっくりと、自分の気持ちを、頭の中で言葉にしていく。
アイリーさんの事を意識していなかったわけでは無いので、答えは頭の中に有るも同然なのだが、なかなか言葉にならない。

「…………好きだって、愛してるって言ってくれたのは嬉しいですし、僕もアイリーさんの事は好きです。
でも…」

長く感じた沈黙の後、頭の中でまとめ上げた、僕の、アイリーさんへの正直な想いを告げていく。

「スライさんの好意は、愛してると言い切れる程大きいわけでも無い…そういう事ですよね。
そして、あまり一方的に好意を向けられても、それはそれで困ってしまう事も…分かっています」

その途中に、僕の言葉を遮るように、喋り出すアイリーさん。
それは、僕が言おうとしていた事、そのままだった。
僕がアイリーさんに向けているのは、恋愛感情なのかは分からない、漠然とした、異性に対する好意だ。
そして、こういう風に告白されて、僕の中で適切に保たれていた距離を、いきなり縮められても、嬉しくないわけではないけど、やはり、どう接すればいいかが分からなくなってしまう。
心が見透かされているようで、ぞっとする反面、僕の事を理解してくれているという、喜びも感じてしまう。

「…はい。愛してるとは言い切れませんから…アイリーさんの物、と言われても…すみません。勿論、そういう風に想ってくれているのは嬉しいんですけど…」

アイリーさんの言葉を肯定し、言おうとしていた事を続ける。
申し訳なさは有るけど、それでも、自分の思いの丈以上の事を無責任に言えはしないし、それに、自分の物だと宣言する程の強い好意を受けて、どうすればいいのかわからない。
結果として、その好意に全て応える事は出来ないと、そう答える事になった。

「…きっと、そう言うと思いました。そういう所も含めて、好きですから。
でも…これだけは譲れないんです。
スライさんは、絶対に、誰にも渡しません」

少しだけ伏し目がちになりながら、ゆっくりと、強く、宣言しなおすアイリーさん。
その姿に何処か、危うい物を感じてしまう。
そして、気づけば何時の間にか、手首が、がっちりと掴まれている。

「あ、あの…恋人同士でも無いのに、そんな事を言われても…付き合う所から始める…それで、今までのように、ゆっくりきょり…をちぢめて…それじゃ…ダメです…か…ぁ…?」

まさか、このまま、僕を襲うつもりじゃ…

逃がさないと言わんばかりの行動に慌てながらも、早口に、僕がアイリーさんとどうしたいかを伝えていく。
アイリーさんはとても魅力的だから、僕としてもきちんとお付き合いしたいし、その上で、お互いの事をよく知ってから、しっかり覚悟して、責任を取るつもりでそういう事をするなら、全然構わないのだけれど、今すぐする覚悟は全然無いのだから。

そして、半ば説得するように喋っている、その途中。
突然に、身体の力が抜けていく。
いきなりの出来事、何が起きたのか分からない。
四肢に力を込めようとするが、自分の身体だというのに、全くいう事を聞かない。
首もかくんと垂れ下がってしまう。

「ふふふ…それじゃ…ダメですよ」

へたり込み、前に向かって倒れていく僕の上体。
それを支えるように、アイリーさんの腕が、僕を引き寄せ、抱き寄せて、視界の流れる方向が変わる。
逃れる事も出来ず、流され、勢いのままに、むにゅりと、着弾。
やけに艶っぽく、危うさを含んだアイリーさんの声が、背筋を擽る。

「え…ぁ…なに…これ…」

横向きに上体を預け、胸に頬を当てる姿勢。
頭に手が添えられ、肩に回された腕は、背中に移動して。
頭に添えられた手に、控えめに力が込められ、柔らかな感触が押し当てられる。
しかし、その柔らかな感触よりも、僕の身体に起きた異変、そして、背筋をざわめかせる、悪寒とも快感ともつかない何か…それが、問題だった。


「私特製、愛情たっぷりのお薬…こういう時のために、スライさんの事を想いながら、毎日毎日、じっくりと作っておいたんです…
効き目、抜群ですね、ふふふ…
お話の続きはベッドでゆっくりと…えいっ」

「っ…そんな事…する人だなんて……」

アイリーさんにやんわりと抱かれ、頭を撫でられる。
息を吸い込めば、アイリーさんの胸元の、母性に満ちた甘い匂い、安心をもたらすような匂いが、肺を満たす。
頭を撫でる手のひらも、つい目を細めてしまいそうな、そんな優しい手つき。
しかしそれらは、耳に入ってくる言葉の内容とかけ離れていて。
うっとりと、期待に満ちた、艶かしく、弾んだ声。
僕に薬を盛ったという事を、とても楽しそうに語る。
出会ってから、いつも優しく僕の面倒を見てくれた女性とは思えないその行動。
こういった、強引な、僕の気持ちを考えないような手段とはかけ離れた人だと思っていたのに。
その豹変ぶりに、今まで築いて来た信頼を傷付けられた僕は、憤りや怖れではなく、まず最初に悲しさを感じていた。
そんな中、僕の脚の下に潜り込んでいく蛇体。
そのまま掬い上げるように抱き上げられ、僕の身体は持ち上げられてしまう。
お姫様抱っこに近いような格好。
相変わらず、僕の頭は抱かれて、頬にはむにゅむにゅと、柔らかな胸が押し当てられている。
苦もなく僕を抱き上げたアイリーさんは、そのままソファを後に、奥の部屋…今まで僕も入った事の無い、アイリーさんの寝室に向けて進んでいく。

「本当は、こんな事をするつもりはなかったんですよ?
もっと、ゆっくりと、私の事を好きになってもらおうと…スライさんのために、我慢してたんです。
でも…一度あんな事があったからにはもう…スライさんとの間に、誰かが入り込むかも知れないと考えただけで…我慢出来なくて…」

僕を覗き込みながら、アイリーさんは話を続ける。
ラミアであるアイリーさんにとって、愛している人を独占出来ないという事は、本当に我慢ならないのだろう。
独占欲を露わにしたその言葉からは、嫉妬だけではなく、不安や恐れが感じ取れ、僕を抱く腕には、縋りつくように力が込められていた。

「……」

その姿を見ていると、胸がしめつけられる思いで…アイリーさんを責める気にはなれなくなってしまう。
アイリーさんの行動を非難する事も肯定する事も出来なくて、沈黙してしまう。

「こうして側に居る間は、そんな事を考えないで済みます。
それでも、やっぱり、離れたら、寂しいですし、不安になっちゃいます。
私以外の女が手を出さないよう、私の匂いをしっかり染み付けておかないと…いえ、それでも、心配なんです。
幾ら私の匂いを染み付けさせても、スライさんが私だけを求めていても、本当に気に入ったなら、そんなのはお構い無しなのが、私達魔物です。
私が居ない時…そういった事が無いとは、言い切れませんよね…?」

伏し目がちに、言葉を続けていくアイリーさん。最後に、問を投げかける。

「…それは…そうです…けど…それって…」

アイリーさんの言葉を聞いて、アイリーさんが僕に求めている事を誤解していた事に気づく。
求められていたのは、この先アイリーさんがしようとしている事は、僕と既成事実を作り、恋仲になる事だけでは無かった。
恋仲では不十分…いや、夫婦になっても不十分だと、アイリーさんが言っている事はそういう事だ。
アイリーさんの言う、『私の物になる』とは、恋仲や夫婦を指しているのではなくて、もっと、直接的な…
四六時中、僕を目の届く所に置いておく事だと、言ってしまえば、監禁、軟禁だと理解する。
それに気づいてしまった途端、心臓がバクバクと鳴りだし、不快な緊張が走る。
優しかったアイリーさんが見せた、行き過ぎた一面。少なからず感じている恐れを、隠すことが出来ない。

「はい…ずっと傍に…傍に居て欲しいんです。私から離れず、いつも、傍に」

四六時中ずっと、離れず一緒に居る。一人の時間を許さないという事だ。
それを、普通の恋人、夫婦のする事であるかのように、はにかみながら言うアイリーさん。
状況が状況でなければ、心奪われてしまいそうな、とても素敵な表情。
だが、唇から紡がれる言葉とのアンバランスさに、危ういものを感じてしまう。

「……そういう…わけには…」

ともかく、四六時中ずっと傍に居ろ、と言われても無理な話だ。
一緒に暮らす、ならまだしも、僕には、衛兵の仕事が有るし、仕事以外の時間はアイリーさんと過ごす事が多いとは言え、友人付き合いなども有る。勿論、どちらも切り捨てられる物では無い。
使命なんて大それた物では無いにせよ、街を守るこの仕事には、誇りと責任を持って臨んでいる。
友人付き合いに関しては、アイリーさんも一緒に来てもらえば良いかも知れないけど、仕事の場合、賊が出れば、それを捕まえたりで、どうしても危険になるわけで。
仕事に関しては、一緒に居るわけにもいかず。勿論、辞めるわけにも行かない。
一人の男として、自立して、食べていける、そして将来には、妻となる女性と、その間に産まれる子供を食べさせていけるだけの事はしなければならない。
これは、男としての矜持の問題だ。妻に働かせたりするような、そんな男は、どうしても情けなく思えてしまい、そうなりたくないのだ。


「確かに、お仕事をしているスライさんは素敵ですけど…私は構いませんよ?
私が好きなのは、スライさんであって、衛兵の仕事をしている人では有りませんから。
スライさんだから、好きなんです。愛してるんです。
ふふふ…ですから、喜んで養いますよ。愛してますもの」


がちゃりと扉を開けながら、僕が言葉を言い終える前に、その先を読み取るアイリーさん。
まるで、僕の心を見透かしているか、知り尽くしているかのようで。
背筋に、ぞくりとしたものが走る。
そして、僕の存在を全肯定するような、愛の言葉。盲目的な響きは、素直に喜べるものでは無い。

「勿論、養うだけじゃありません…沢山愛して、満足させてあげます。
スライさんが、本当は甘えんぼさんなのも、知っているんですから。
こういう風に、身体を預けて…ぎゅっと抱き締められたいんですよね?」

僕を抱いたまま、アイリーさんは、ベッドに寝転がる。
正面から、アイリーさんに身体を預け、胸枕をされる形。
脱力した身体は重力には逆らえず、肉付きの良いアイリーさんの身体が、それを柔らかく受け止めている。
そのまま、背に回された腕は、しっかりと僕を抱き締め、頭に置かれた手は、ゆっくりと動き、僕を撫で始める。
そして、アイリーさんの問いかけとともに、恐怖に傾きつつあった僕の心を、ぐらりと揺らす。
魔力を込めた、誘惑の声。陶酔してしまいそうな程に甘く、頭の中に響き渡る。
魔力による物だと分かっていても、僕の身体を受け止める、柔らかく心地良い感触、優しい匂いが、抵抗心を奪っていく。

「ぁ………」

アイリーさんの言葉通り、僕は、こういう風にされたかった。
元々甘えたい願望があるのは自覚していたし、アイリーさんの胸を近くで見たり、それを思い出すたびに、抱きついて甘えてみたくなったり、それを想像したり…
こうされている事に恥ずかしい気持ちも相応にあるけど、逃げる事も抵抗も出来ない。
とっさに否定の言葉を口にする、なんて事も僕には出来ず。
そうなると、恥ずかしがっても意味が無いからか、必然的に、心は誘惑の側に傾いてしまう。
そこに、甘い声が響き渡り、追い打ちをかける。
僕はあっという間に、アイリーさんに身を任せてしまいそうになっていた。

「気持ち良いんですよね…?」

「…………き、気持ち…良い…です…」

僕が恥ずかしがっているのを見透かしてか、少しだけ意地悪に、それでいて優しく、問いかけを続けるアイリーさん。
心の中では当然、気持ち良いと認めている。それでも、声に出して言うのは、やはり恥ずかしい。
それに、気持ち良いと言葉にしては、僕の意思に関係なく抱き締められている、そして強姦すら仄めかされている、この状況を受け入れそうになってしまう予感がして。
それが、声に出して認める事に、抵抗を抱かせる。
そんな僕の頭の中を反響していく、甘い響き。
反響のたびに、恥ずかしさが削り落とされ、溶かされていく。
そして、僕はあっさりと、問い掛けに応えてしまった。

「そうですよね…気持ち良いんだから…こうしていたいですよね…?ふふふ…」

「はい…こうしていたいです……でも…まだ…聞いてないことが…
 なんで…あそこに…居たんですか…」

気持ち良いと認めると、次の質問を繰り出すアイリーさん。料理や、マッサージを褒めた時より、もっともっと嬉しそうな声。
どこか恍惚としていて、艷めいてすらいる。
僕の身体の自由を奪っておいて、こんなに嬉しそうにしているのはどうかと思ってしまう。
だが、アイリーさんの嬉しそうな声自体は、とても魅力的で、もっと聞きたい、喜んでくれて嬉しい、と思ってしまう自分も居て。
しかも、嬉しそうな上に、僕の思考を熱っぽくさせ、思考の端から、とろとろに蕩けさせようとしていくのだから、堪らない。
そして、一度、気持ち良いと言ってしまったからか、次の質問を声に出して認めるのに、さっきほどの抵抗も無く。
実際、こうして抱かれていたい気持ちがあるのは本当だ。本当の事を口にすれば、アイリーさんが喜ぶ声を聞かせてくれるのだから、言わない理由が無い。
そうして、僕は、アイリーさんの言葉に頷く。

そんな中、『何故アイリーさんが透明になって練兵場に居たのか』という疑問が、思考の片隅で消えかけていた事に気づく。
この疑問を忘れてしまってはマズイ。そう直感した僕は、それが消えてしまう前に、アイリーさんに問いを投げかける。
正直、あまり答えを聞きたく無いが、それでも、聞かなければならない。

「……スライさんに悪い虫がつかないように…お昼休みに様子を見にいったら…リザードマンが試合を挑みに来ているという事を知って…
それで、いつでも止めに入れるように、あの場所に…」

すこし躊躇った後、ゆっくりと話していくアイリーさん。
その言葉に甘い響きは無く、真剣味を帯びている。
頭の中で響いていた声が、段々と薄れていき、蕩けていた思考が、段々と固まり、元に戻っていく。

「っ…いつも…僕のことを…つけてたんですか…」

その内容は、質問した時点でなんとなく予想はしていたものの…正直、当たってほしくなかった。
この言い方だと、定期的に、昼休みに僕を見ていた、もしくは僕の会話を聞いていた、という事になるわけで。
今までずっと僕の知らないまま、行動を監視されていた…そう思うと、こうして抱かれ、甘い声をかけられたことで、薄れかかっていた恐怖感が、再び襲いかかってくる。
意識から押し流されかけていた、アイリーさんの行き過ぎた部分。
それは、少し、という形容で済まない物だと理解する。

いいえ、と答えて貰いたい。
そう思いながら、僕は、アイリーさんに問い続ける。

「…はい」

僕の頭を撫でながら答えるアイリーさん。神妙な声だ。
此処ではぐらかそうとしないのは、僕の知っているアイリーさんらしかったけれども、それは大した慰めにはならなかった。

「ストーカーじゃないですか…そんなの…」

アイリーさんが認めたことは、紛れも無いストーカー行為で。
甘い声から解放された思考は、記憶を探り、思い当たる節を見つけ出す。

僕の不摂生を見破ったりしていたのは、勘が良いのではなく、全て見ていたから…
僕が寝坊した事も、朝食を抜いた事も、夜更かしをした事も…僕は、朝から夜まで、アイリーさんに見られていた。
風邪をひいた時に、朝から看病してくれたり…他にも、数えきれない程の気遣いをしてくれて、そのどれもが、嬉しかったし、有難かった。
でも、それは、僕を監視していた上での行動。
そう考えると、恐ろしい執念めいた物を感じてしまう。
だが、僕の事を想ってくれていて、僕のためにしてくれた行動だというのもまた事実で。
やり場の無い、複雑な気持ちが、胸を締め付ける。

「スライさんを取られたくなかったんです。それに…スライさんの事がもっと知りたくて…
 好きになればなるほど、傍に居て、スライさんを見ていたくなって、我慢できなくなって…
 それに、スライさんを見ているのは、とっても幸せで…やめられなくて…
 でも、ずっと一緒に居るのは、スライさんが困っちゃいますし…強引な手段で虜にするのも…
 本当は、時間をかけて、ちゃんと、私のことを好きになってもらいたかったんです」

「我慢…出来なかったん…ですか…」

魔物というのは、男に向ける愛情に比例して、欲望も膨れ上がる。僕が聞く限りは、そうらしい。
欲望を抑えつけ、僕に合わせてくれていた…その結果の行動。
アイリーさんは、こういう事になるまで、切羽詰まるまで、僕を襲わないよう、我慢してくれていたわけで。
その我慢の捌け口に、僕を監視していたのだと考えると、アイリーさんの好意に応えられなかった僕にも原因が有るように思えて、責める事は出来なかった。

「……はい」

「アイリーさんが悪いとは…言いませんけど…
 でも…そういう事をされたら…嬉しく…ありません…
 嫌いになったわけじゃないけど…どうすればいいか…わからなくなります…」

申し訳なさそうにして、応えるアイリーさん。
罪悪感を煽ってしまった事に、僕もまた、申し訳なくなってしまう。
あれだけ優しかったアイリーさんが、我慢出来なかった…というのだから、それは本当に、仕方なかったのだろう。
でも、仕方ないからと言って、それを受け入れる事は、僕には難しく。
出来る事なら受け入れてあげたいという気持ちはあるけれども、だからと言って、四六時中見られているというのに耐えられる自信は無い。
アイリーさんの事は好きだけれども、その行動はまた別なのだから。
だから、無責任な安請け合いは出来ない。
結局、出来るだけアイリーさんを傷つけないように、僕を監視していた事には、やんわりと拒絶するしか無かった。

「………そう、ですよね。
 でも、私はもう、スライさんが居ないと、ダメなんです」

「……」

嫌いになっていないという言葉に安心し、行動に対する拒絶に声を暗くするアイリーさん。
僕が居ないとダメ…その言葉は、真剣そのもので。そして、何処か追い詰められていて、それでいて、うっとりとしていて。
異様な雰囲気に、僕はまた、何も言えなくなってしまう。

「……スライさん、私のお料理は、好きですか?」

沈黙する僕に、アイリーさんは再び、甘い声で語りかけてくる。
思考が再び、声に塗りつぶされ、質問に対する受け答え以外の事が、段々と薄れていく。
アイリーさんが僕をストーキングしていた事や、僕が自由を奪われている事を忘れたりするわけではない。
ただ、それについて考えるより、質問に答えないといけない。甘い声が、その魔力が、僕をそうさせていた。

「…はい。とても…美味しくて……」

声に促されるがままに、今までアイリーさんにご馳走してもらった料理を思い出す。
そのどれもがとても美味しく、そうだというのに、最近になればなるほど、上達してさらに美味しくなっていて。
とても僕好みの味付けで、あまり好きじゃなかった食べ物も、アイリーさんの料理なら、美味しく食べられて…

「ふふふ…そうですよね。
 毎日、毎食、食べたいですよね?」

「…食べたいです…けど…」

最近では、アイリーさんの手料理以外の食事に、物足りなさを感じていて。
そんな僕の事を、しっかりと分かった上で、いいえと答えられない質問を投げかけてきている。
アイリーさんの手料理を食べたいかと言えば、間違いなく食べたい。
勿論、手料理を食べさせてくれるからと言って、四六時中一緒に居る事が許容出来る訳ではない。
でも、食べたいかと訊かれたら、食べたいに決まっている。
だから、僕は、正直に肯定する。
甘い声の前では、否定は勿論、沈黙する事も出来なかった。

「じゃあ…膝枕は、マッサージはどうでしたか?
気持ち良かったですよね?また、されてみたいですよね?」

「…気持ち良かった…です。また…して欲しいです」

アイリーさんに頭を預けるのも、身体を蛇体に巻かれ、あちこちを揉み解されるのも、とても素敵だった。
声に促されるままに、本心を口にしていく。

「なら…一緒に居てくれたら…美味しい料理も、好きなだけ食べさせてあげられて…こうして、ぎゅっと抱き締めたりして、沢山甘えさせてあげられます。
マッサージだって、もっとじっくり、丁寧に…
スライさんのために、今までよりも、もっと、もっと、いろんな事をしてあげられるんです。
一緒に居る時間は全部、私が満足させてあげます。愛してあげます。
それは…とっても素敵な事ですよね?」

段々と熱に侵されてきた思考。
アイリーさんの言葉に浮かぶのは、甲斐甲斐しく僕の世話をしてくれるアイリーさんの姿。
満面の笑みを浮かべながら、美味しい手料理を、僕の口に運んでくれていたり…
抱きつく僕を、腕を広げ、その胸に受け止め、蛇体を巻きつけ、僕を包み込んで、愛情たっぷりに抱き締めてくれたり…
そのまま、優しく頭を撫でてくれて、何度も何度も、繰り返し、丁寧に、蛇体で僕をマッサージしてくれたり…
ベッドの上でも、僕をリードして、とても気持ち良くしてくれたり…
身体を預け、眠りにつく僕を、母性に満ちた表情で見つめ、添い寝してくれたり…

自ずと膨らんでいく、甘美な妄想。
きっと、それだけでなく、僕の思いもつかないような事もして、アイリーさんは僕を満たしてくれる。
そう思うと、それがまた、妄想を掻き立てる。

「素敵……です……でも、僕には……仕事が……」

甘い妄想に支配されかけた理性が、ギリギリで踏み止まり、僕のやらなければいけない事を思い出す。
僕には、街を守るという大切な仕事があって、万が一の時には、この街の人々の命を背負うわけなのだから。
生まれ持った才能、資質が無いからこそ、そのために努力をしなければいけない。

「…お仕事をサボって、夫婦で愛し合ってる人なんて、スライさんの周りに、沢山居ますよね?
それでなんとかなっているんですし…別に問題なんてありません。本当に、万が一の時は…魔王軍や、いわゆる高位の魔物の方達がなんとかしてくれますもの」

少し躊躇うようにして、言葉を紡ぐアイリーさん。

「そう…かもしれませんけど…何もせず養われるなんて…ダメな男じゃないですか…」

アイリーさんの言う通り、僕が居なくても、この街の平和は保たれるだろう。曲がりなりにも組織であるし、僕より優秀な人は幾らでも居るのだ。
それは、自覚し、納得していた事だけれども、他人に言われるとまた別だ。
そういう事を言いたいのでは無い事は分かっていても、僕の努力が無駄だと言われているようで、落ち込んでしまいそうにもなる。
また一つ、アイリーさんと一緒に居ない理由が崩されていく。
だが、仕事をしているのは、街の人のためだけでなく、自分のためでも有って。
仕事もせず、アイリーさんに養われ、甘やかされていれば、僕は怠惰な、情けない人間になっていくだろう。それも怖い。
それに、そういう、ダメな男になってしまっては、一緒に居るアイリーさんにも申し訳無い。
これもまた、本心だった。

「スライさんが一緒に居てくれると、甘えてくれると、それだけで私は、とっても幸せになれるんです。
ダメな男なんかじゃありません。私を幸せにしてくれるんですもの…とっても立派な旦那様です。
それに、どうしてもそう思うのなら…此処で、二人で一緒にお仕事をしましょう。それなら、問題無いですよね?」

一緒に居るだけで幸せ。僕の存在そのものを肯定する言葉。
先程の言葉に少なからず落ち込んでいた僕には、それが、とても甘く、優しく響く。
慈しむように僕の頭を撫でるその手が、この言葉に嘘はないと、確信させてくれる。
アイリーさんが言っている事は、間違いない。
アイリーさんがそれで幸せなら、申し訳なく思う必要は無い。
アイリーさんを幸せにしているなら、負い目を感じる必要も無いし、情けなくも無い。
ただ、僕の男としての矜持、意地が、養われるという事を認められない…ダメな物はダメ、と叫んでいるだけだ。

「問題…無いです……」

そんな僕の心をアイリーさんはよく分かっていて。
僕がそれを口にする前に、一緒に仕事をするという、僕のプライドを納得させる提案までしてきて。
これなら、養われているわけでは無い。お互いに助けあっているのだから、アイリーさんの言うとおり、問題無い。
これ以上、アイリーさんと四六時中一緒に居られない理由は思い浮かばず。
僕は、アイリーさんの甘い声に、すっかり言いくるめられてしまっていて。
後はもう、僕がアイリーさんと四六時中一緒に居たいかどうか…その問題だった。

「でも……一緒にいたいけど……やっぱり……四六時中ずっとは……」

やはり、アイリーさんの行き過ぎた部分に対する抵抗は残っていて。
それもあって、一人の時間を許してくれないというのは、受け入れ難かった。
しかし、僕の事を想ってくれているのは嬉しいし、一緒に居る事自体はとても魅力的で。
薬の効果が切れて、身体を動かせるようになるまで、こうして抱かれていたい…そう思う程には。

「ふふふ……それなら、今はそれでも構いませんよ……」

「あ…むぅ……」

嬉しそうな声とともに、僕の身体に、緩やかに蛇体が巻きつけられていく。
そして、アイリーさんは僕ごと、ごろりと横に転がって。
蛇体に巻きつかれたまま、アイリーさんに覆いかぶさられる姿勢。
思いっきり、顔面にアイリーさんの胸が押し当てられる。
気持ち良いのだけれど、息苦しい。なんとか息を吸おうとすると、先程よりも濃い、アイリーさんの甘い香りが、僕の頭を満たして、くらくらとさせる。

「あっ……すみません……」

「はぁっ……」

はっと気づいたように、少しだけ身体を起こすアイリーさん。
柔らかな感触、甘い香りが離れていくのが惜しいけど、息苦しさから解放される。

「ともかく……ふふふ……素敵な身体です……」

「ぁ……あ、アイリーさん……ダメです……」

そして、アイリーさんはおもむろに、僕の服に手をかけ、捲り上げて…そのまま、バンザイをさせられ、上半身を裸に剥かれてしまった。
僕の身体を眺めるアイリーさんの、熱っぽく、ねっとりと舐め回すような視線に、羞恥に身悶えしてしまいそうだ。
垂れ下がった、琥珀色の長い髪が、僕の胸板をさわさわと撫でる。くすぐったくありつつも、気持ち良い。
この先、僕がされようとしている事は、甘い声に侵された頭でも、簡単に理解できる。
さっきアイリーさんに言ったように、決心も出来ていないのに、責任も取れない半端な心でそういう事をするわけにはいかない……残された理性が、男としての意地が、そう叫んでいた。

「ぺろっ……んっ……ふふふ……スライさん……キス……したいですよね?」

「っ……し…したいですけど……だ、ダメぇ……」

僕を覗き込み、見せつけるように、僕の眼前で舌なめずりをするアイリーさん。
赤く、唾液でぬらぬらとした、細長い舌が、褐色がかったピンク色をした、瑞々しく、ぷるぷるの唇を撫でる。唾液で濡れて、とても艶かしい。
それだけでなく、濡れた唇を、しなやかな人差し指で、淫靡になぞっていって…その光景に、目が釘付けになってしまう。
唇から離れた指は、そっと僕の唇に触れ、指についた唾液を塗りつけるように、唇を撫でて。蠱惑的な間接キス。心臓が、どくん、と跳ねる。
そして、間髪入れずに、魔性の声で、甘く囁いてきて。

あの魅惑の唇に、口付けて貰いたい。貪られたい。
湧き上がる衝動に嘘はつけず、素直な答えを口にしてしまうが、すんでの所で理性が持ち堪える。
身体を動かせたなら、既に自分から唇を奪われにいっていた程に、危うかった。
キスだけなら…と、甘い考えが浮かぶが、そんな事をしてしまえば、確実に僕の理性は陥落してしまう…
そこまで分かっているのに、その考えを振りきれない。
必死に衝動を抑えるが、限界を迎えつつあって。
もはや、声に拒絶の色すら乗らない。
僕の理性が出来たのは、形だけの拒絶、最後の悪あがきだった。

「でも……私の唇も……舌も……こんなに気持ち良いんですよ……?
あーん……ちゅっ…ちゅぱ……ちゅぅっ…」

「あっ…っ……ぁぁ……」

形だけの拒絶も気に入らないのか、アイリーさんは、さらなる追い打ちをかける。
弛緩したままの僕の手を、口元に運び、人差し指を、根本までぱくりと咥えて。
早くも身体を火照らせ始めた、アイリーさんの体温が、直に伝わる。
そして、アイリーさんは、ちゅぱちゅぱと、いやらしい音を立て、咥えた指をしゃぶり始めて。
指の根本で感じる、アイリーさんの唇の柔らかさ。
指先までが、熱くぬるぬるとした口腔に包まれて。
音を立てて吸い付かれるたびに、指が口腔と密着して、その間を強引に、細長い舌が這いまわる。
ついには、細長い舌が指に、巻き付いてきて、吸い付く圧力とともに、ぐにゅぐにゅと蠢き、指を責め立ててきて。

その甘美な感触に、キスへの期待は膨れ上がり……限界だった僕の理性はあっけなく陥落してしまっていた。
もう、アイリーさんを拒む言葉は出てこず。
指をしゃぶられるその光景を目に焼付け、甘美な感触に、意識を傾ける。

「ちゅぷ……れろぉっ…んっ……ふふ……美味しかったです……」

「はぁ……ぁ……」

何度も何度もしゃぶられた後、ようやく、指が口から引き出される。
ただし、指には、舌が巻き付いたままでいて。
ぐにゅぐにゅと、艶かしく動く舌に、視線を奪われる。
僕にその姿を見せつけると、舌は、しゅるしゅると、アイリーさんの口に戻っていき、人差し指が残されて。
性的な快感とは程遠い場所で有るはずの人差し指は、甘い熱に侵され、なんとも言えない気持ち良さに支配されていた。
キスへの期待を込め、アイリーさんを見つめれば、その深い紫色の瞳の奥には、情欲の炎が燃え上がっていて。
おっとりとした微笑みと、捕食者の笑みが入り混じった笑顔。見据えられるだけで、ぞくぞくとして、堪らない。

「はぁっ……ふふ……お耳も……
ふぅっ……」

「ひぁ……」

僕が陥落してしまったのを、キスして欲しいのを分かった上で、アイリーさんは、僕の耳元に口を寄せてくる。
息を吹きかけられるだけで、気持ち良さに、声が漏れてしまう。

「はむっ…んむっ…ちゅるっ……じゅるっ……」

「ぁっ…はぁ……うぁ……」


続いて、耳たぶが唇で、はむはむと、何度も挟み込まれる。
唇の柔らかさにうっとりとしていると、今度は、耳がぱくりと食まれ、そのまま、吸いつかれて。
ちゅるちゅる、じゅるじゅると、耳にしゃぶりつく、淫らな音が、僕の頭に、間近に送り込まれる。
それは、アイリーさんの甘い声と一緒に、僕を昂らせる。

「じゅるっ…ふぅっ……れろっ……れるっ……」

「うぁ…あぁっ……ひぁぁ……あ、アイリーさぁん……」

さらに、僕の耳の、アイリーさんの口内に捕らえられた部分に、二股の舌が近づいてきて…ねっとりと舐めまわし始める。
耳から背筋にかけて、ぞくぞくと、甘い痺れが走り、僕は、情けなく、上ずった声をあげてしまう。
そして、一通り舐め回すと、また耳の別部分に吸い付き、舐め回し始める。
隅々まで舐め回されたと思いきや、耳の穴に唇が押し付けられる。
そこから、耳の穴の中までに、舌の先端が侵入してきて。
敏感なそこを、舌が這いまわり、舐め回される快感は、耳をしゃぶられる事の比でなく。
耳腔の中で奏でられる水音は、頭の中で鳴り響いてるかのように錯覚してしまう程、近く、鮮明で。
僕の情欲を掻き立て、思考をぐちょぐちょに掻き乱し、とろとろにさせていく。
そんな中、僕は、半ば懇願するように、ねだるように、アイリーさんの名を呼んでいた。

「ちゅぅっ…!っ…ぷはっ……」

「ひぁっ……ぁぁ……」

一際強く吸い付いて、アイリーさんは、僕の耳から口を離す。
耳はじんじんと、甘い痺れに満たされていて、とても気持ち良い。

「 どうです……?気持ち良かったですよね……?
でも……お口とお口でキスをしたら、これよりもっと気持ち良いですよ……?
キス、したいですよね……?ダメなんかじゃありませんよね……?」

「は……はぃ……キス……して……くださぃ……」

口を離したアイリーさんは、再び僕に囁きかけてきて。
耳元で囁かれる甘い誘惑。それを聞いているだけで、夢見心地だった。
アイリーさんの言うとおり、指をしゃぶられるのも、耳をしゃぶられるのも、とても気持ち良く。
特に、耳は、ずっとしゃぶり続けられたら、それだけで射精してしまうのではないかと思うほどで。
そして、アイリーさんの言葉に、、口と口でキスをして、口内を、舌を、唾液を貪られるのは、もっと気持ち良いのだと、確信めいた物を得て。
募り募った欲望のままに、甘い声に促されるがままに、僕は、アイリーさんのキスをねだる。
キスをしてはダメだとか、そういった事は既に頭の中には無く、ただただ僕は、アイリーさんにキスをして欲しかった。

「ふふふ……愛してますよ……」

唇が耳孔に触れる程近くで、ゆっくり、ねっとりと、愛を囁かれる。
僕がキスをねだったせいか、声を弾ませてはいないものの、とても上機嫌で。
僕が今までに聞いた中で、一番嬉しそうで、幸せそうな声。
それは、囁かれている方まで嬉しさ、幸せが込み上げてくる、底無しの魅力を備えていて。
もっと嬉しそうな、幸せそうな声が聞きたい。快感への欲望とは違った、また別の欲望が、僕の中に渦巻いていく。
そして、その愛の言葉には、目一杯の魔力が込められていたのか、僕の頭の中で甘く反響を続けて、消える様子が無い。
反響のたびに、幸福感が湧き上がらせて、僕の頭の中を、とろとろに、甘く、優しく、熱く溶かしていく。

「ふふ…………」

「ぁ………」

耳元から唇が離れていき、両頬に、しなやかな指が添えられる。
目の前には、褐色よりの頬を赤らめ、幸せそうに微笑むアイリーさんの顔。
潤んだ紫色の眼、うっとりと垂れ下がる目尻。
蛇を思わせる、縦長の瞳孔。その奥には、燃え上がる情欲の炎。
尖った耳の先まで、僅かに赤みがかっている。琥珀色の透き通るような髪は、重力のままに垂れ下がって、僕の肩や耳、頬にかかって、視界の端を覆う。
そして、唾液に濡れ、艶かしく光を反射する、肉感的な唇。その間からは、甘い吐息が吹きかかる。
それらに見蕩れていると、ゆっくりと、アイリーさんの唇が近づいてきて。
視線が、アイリーさんの瞳に吸い込まれていき、逃れられない。逃れようとも思えない。

「ちゅっ、ちゅぅっ……あむっ……」

「んっ……んぅっ………んんっ……」

そして、唇が触れ合う。
そう思いきや、すぐさま、啄むように吸い付いてきて。
触れ合うだけでなく、唇と唇を重ね合わせるキスに変わっていく。
吸い付きを強め、離れる事はしないまま、アイリーさんの唇が、あむあむと、僕の唇を貪るように動いて。
初めてなのに、とても濃厚で、甘いキス。
ぷるぷるの唇の、柔らかく、とても魅惑的な感触に心を奪われた僕は、為されるがままだった。

「んっ……れるっ……れろぉっ……」

「っ……ふぅっ……ぁ……ぁぁ……」

合わさった唇から、細長い舌が口内に侵入してくる。
たっぷりと唾液を絡めたその舌は、僕の舌に巻き付く。
そして、僕の舌を引っ張り出そうと、まるで、手繰り寄せるかのように舌が蠢いて。
強制的に、舌を目一杯突き出した格好にされてしまう。
僕の舌先は、アイリーさんの唇に挟まれ、吸い付かれていた。

「ちゅぅっ……ぷは……んっ……」

「っ……ふぁ……はっ……ふぅっ……」

一際強く吸い付いた後、唇が離れていく。
しかし、離れたのは唇だけで、アイリーさんの細長い舌は、相変わらず僕の舌に絡み付き、巻きつき、締め付けてきていて。
唇は離れても、まだまだキスは終わらず、舌を引っ張り出されたまま、半開きの口で呼吸をする事になってしまう。
唇の間から舌を伸ばしたアイリーさんは、そんな僕の姿を見て、淫靡な笑みを浮かべて。
そのまま、口を開き、舌伝いに、どろりとした唾液を流し込んでくる。
巻き付いたアイリーさんの舌は、僕の舌に唾液を擦り込むように、ぐにゅぐにゅと蠢いて。
揉みしだかれ、絡み付き、擦れ合う、舌と舌。
指や、耳をしゃぶられるのとは、比べ物にならない気持ち良さ。
段々と、頭が、思考が、甘く蕩かされていく。
そして、是が非でも味わわされてしまう、アイリーさんの唾液。
その味は、比喩では無く、本当に甘い。
しかし、決してくどくなく、むしろ、幾ら味わわされても、そこには僅かな物足りなさが残っていて。
いつまでも求め続けてしまいそうな、病み付きになりそうな味だ。

「はっ……んくっ……んぅ……」

「んふ……とってもかわいいれす……」

とめどなく送り込まれる、アイリーさんの唾液。
あっという間に口内に溜まり、溢れ、零れてしまいそうで。

こんなに甘くて、美味しいのに、零すのは、勿体無い。
でも、唾液を飲むのは、変態的で、恥ずかしい。
飲ませようとするアイリーさんも、変態だ。

そう思いながらも、アイリーさんのその変態性すらも魅力的に思えてしまって。
恥ずかしく思いながらも、喉を鳴らして、アイリーさんの唾液を飲み込む。
最早、視姦と言っていい程に僕を見つめるアイリーさんは、舌を蠢かせたまま、呂律が回らないながらも、嬉しそうに喋る。


「ふぁ、ぁっ……はぁっ……っ……んむっ……んぅっ……」

「んっ……もっと……のんでくらふぁいね……あむっ……ちゅっ……ちゅぅぅっ……」

飲み込んだ唾液が、胃に落ちる。
そうすると、身体の内から、染み渡るように、じんわりとした、心地良い火照りが湧き上がっていく。
脱力しきった身体で感じるその火照りは、身体が内側から蕩けていくような、甘い感覚を伴って。
それが、僕をまた欲情させていく。
そして、アイリーさんはまたもや僕の唇を貪り始める。
情熱的に吸い付きながら、絡めた舌を解くと、今度は、口内の隅々、舌の付け根や、歯の裏側までもを、舌で舐め回してきて。
舌を絡めるのとはまた別の、ぞわぞわとした快感。
とても性感帯とは思えない場所だというのに、気持ち良くなってしまう。

「んっ……ちゅぅ……あむっ……」

「んっ……くっ……んんっ……」

一瞬だけ唇の吸い付きが緩まったと思いきや、口移しに、大量の唾液が流し込まれる。
きっと、僕の口内に舌を這わせている間、ずっと溜め込んでいたのだろう。
流し込まれた唾液を飲み干せば、さらに身体の火照りは増していく。
そして、すぐさまに、唇は強く吸い付き直し、僕の舌に、アイリーさんの舌が絡みついてきて。
情欲の丈を、僕に注ぎ込むような、そんなキスが続く。
僕が予想していたのに比べ、何倍も激しく、情熱的なそれに圧倒されてしまい、完全に受け身になってしまっていた。
しかし、舌が絡み合い、擦れ合う、その気持ち良さも、予想以上で、堪らない。
未だに、囁かれた愛の言葉は、僕の頭の中で反響を続け、幸福感をもたらす。
そして、アイリーさんに、熱烈に求められているという事が、純粋に嬉しくて。
僕は、されるがままを選び、愛の言葉の中、アイリーさんのキスを受け止めていった。





「ちゅぅぅっ……ぷはぁ……」

「ふぁ……ぁ……はぁ……」

最後に、熱烈に吸い付いて、アイリーさんの唇が離れる。
どれだけの時間が経ったかは分からない。ただ、とても長かった。
頭の中に響いていた、甘い愛の言葉も、既に薄れ、消え去ってしまっている。
絶え間なく貪られた舌は痺れきっていて、擦り込まれたキスの快感と、甘い唾液の味のみが、舌の感覚を支配している。
溺れてしまいそうな程に注ぎ込まれた唾液を全て飲み干したせいか、身体中が、とろけそうな程に熱く火照っている。
アイリーさんに飲まされた薬の効果は切れている気がするのだけれど、全身が弛緩してしまっていて。
それは、薬によって強制的に脱力させられたのとは違って、とても心地良い。
アイリーさんの、濃厚極まるキスによって、僕の思考はとろとろに溶かされていた。

「うふふ……スライさんの唇……ふふ……
奪っちゃいました……やっと……私のモノに……
初めてのキスなのに……こんなにたっぷり……うふふ……
キスだけで……こんなにとろとろになって……
あぁっ……とっても可愛くて、素敵ですよ……」

焦点がズレて、ぼやけた視界に、ゆっくりピントが合っていく。
そこには、舌をだらりと垂れ下げながら、とろんとした眼で、僕を見つめるアイリーさんが居て。
アイリーさんは、うわ言のように、うっとりと呟き始める。
その表情は、感極まっていると言えるほどに、恍惚に満ちていて。
アイリーさんが抱き続けた僕への想い、欲望が垣間見える。
それは、何処か病的な物すら感じてしまう程に、深く、大きく、執拗で。その中でも、独占欲は、一際大きい。

「ぁ……」

だが、既に僕は、その病的さを恐れる事はなくなっていた。
むしろ、それだけ深く、僕は想われて、愛情を向けられているのだと思えて、ぞくぞくとした快感が背筋を駆け抜けていく。

「ふふ……私にファーストキスを奪われて……
唇だけじゃなくて、お口の中まで舐めまわされて……
私の唾液まで、あんなに沢山飲んで……
とっても……気持ち良かったですよね……?」

「ふぁ……はぃ…………」

ゆっくりと上体を起こしながら、ねっとりと僕に問いかけるアイリーさん。
僕の初めてのキスは、アイリーさんに奪われてしまった。それも、ファーストキスとは思えない程の、激しく、濃厚で、長いキスによって。
アイリーさんの問いに素直に答える事は、その事実を再確認する事で。
そして、その事実に、喜びを感じてしまう。

「うふふ……私も気持ち良くて……」

アイリーさんの指先が、蛇体と上半身の境目辺りに添えられる。
アイリーさんが着ているのは、身体の線がはっきりと浮き出る薄手のワンピース。
それの、指の添えられた位置を中心に、びしょびしょに濡れて、染みが広がっている。
それを見せつけられた僕は、その下がどうなっているか……それを見たくて仕方が無くなってしまって。

「キスだけで……嬉しくて、幸せで……イっちゃったんですよぉ……?」

そんな僕の欲望を見透かし、応えるように、アイリーさんは片手でワンピースをたくし上げていく。
露わになる蛇体と上半身の境目、アイリーさんの秘所。
毛一つ無く、ぴっちりと閉じた秘裂は、慎ましさ、貞淑さを感じさせるというのに、成熟した女性の妖艶さを備えていて。
透明の、どろりとした液体が今も流れ出し、蛇体を伝っている。

「ふふ……もっと、よく見てくださいっ……
処女なのに、こんなに濡れちゃって……」

褐色の秘裂にアイリーさんの指が添えられ、左右に割り開かれていく。
その中は、綺麗なピンク色をしていて。
露出した膣口は、肉襞に狭められていて、その隙間から、ごぽりと粘液が零れ出ている。
その上には、いやらしく、淫らにひくつく尿道口までもが見えていて。

「もう、我慢なんて出来ませんっ……
クリトリスも、乳首も、こんなに勃っちゃってるんですっ……」

尿道口のさらにその上には、真っ赤に充血したクリトリス。
そしてアイリーさんは、片手でワンピースをするりと脱ぎ捨て、上半身を露わにして。
惜しげもなく晒される、褐色の豊乳。
身動ぐたびに揺れて、僕を誘うように形を変える。
その先端は血色よく赤みがかっていて、見るからにピンと勃っている。

「……はぁ……ぁ……」

甘い声に促されるがまま、アイリーさんの裸体に魅入る。
僕があのクリトリスに、乳首に触れ、弄くり回したら、アイリーさんはどんな風に反応するのだろうか……そんな想像をすると、下半身にまた血が集まっていく。
だが、一番に僕を掻き立てるのは、アイリーさんの秘裂で。
あの中は、どれだけ気持ち良いのだろうか……それが、気になって、知りたくて、味わいたくて堪らない。
最終的に僕の視線は、アイリーさんの、粘液の溢れ出る膣口に釘付けになっていた。

「あぁっ……そんなに見つめてっ……
私のナカに挿れて、気持ち良くなりたいんですね……?」

僕の視線に気付き、歓喜の声をあげるアイリーさん。
胸に燻る僕の欲望を見抜いて、甘く尋ねてくる。

「いれたい……ですっ……
気持ち良く……してください……」

アイリーさんが歓喜の声をあげるのと同時に、膣口から溢れ出る愛液は量を増して。
その様子を食い入るように見つめながら、僕はアイリーさんに欲望をさらけ出す。

「そうですよね……ふふふ……うふふ……
今から私、スライさんの童貞を奪っちゃうんですね……
私に童貞を捧げてくれるんですねっ……」

「ぅゎ……ぁっ……」

アイリーさんは、僕の言葉を聞くや否や、尻尾の先を引っ掛け、蛇体を巧みに使い、僕のズボンを降ろしていく。
言質は取ったと言わんばかりに、強引に、素早く。
アイリーさんらしくない横着なやり方。それに戸惑う反面、それだけ僕を求めているかと思うと、嬉しくもある。

「あはっ……あは、うふふっ……これが、スライさんの……」

裸に剥かれ、外気に晒された肉棒は、濃厚過ぎるキスと、アイリーさんの痴態によって、これ以上無く硬く張り詰めていて。既に、腰の辺りにじんわりとした痺れがこみ上げてすらいる。あのままキスを続けられていたら、それだけで射精していたかも知れないぐらいだ。

そんな僕のモノに、獣のようにぎらつく視線を注ぎながら、アイリーさんは、無邪気な少女のように笑う。

「うふふっ……いただきまぁすっ……」

「あっ……」

服を脱がされ、気付いた時には既に、僕の肉棒の根元は掴まれ、アイリーさんの腰は、肉棒の真上に位置していて。
もう片手で濡れに濡れた秘裂を押し広げ、肉棒を待ち構えている。
情欲に塗れた笑顔は、とても綺麗だ。
そして、その光景に見惚れる間もなく、アイリーさんは、まるで叩きつけるように、勢い良く腰を落として……


「ひぅ――っ!?」

熱く、狭く、複雑でぬるぬるした物が、肉棒を包み、勢いよく擦りあげる。
心の準備も出来ていないままに味わわせられる、神経が焼け付いてしまいそうな快楽。
頭が真っ白になり、甲高い叫び声をあげてしまうが、抑える事も出来ない。むしろ、あまりの気持ち良さに、声が掠れてしまう。

「ぁん――っ!?」

そして、肉棒の先端が、柔らかく、弾力に満ちた物に受け止められて。
それと同時に、アイリーさんの声にならない声が聞こえた。

「ぁ、ぁはっ、はぁっ…ぁぁっ……スライさんの、どーてぃっ……おいしいですよっ……」


突然の快楽に真っ白になった頭が、ようやく働き始める。
先程の一瞬で、僕の肉棒がアイリーさんに呑み込まれた事を理解する。
アイリーさんは、僕の上で腰をぐりぐりと押し付け、ピンと背を反らせながら、何度も身体を痙攣させていて。
感極まったかのように甘い声をあげ、うわ言のように呟く。
その瞳は、虚空に焦点を合わせていて、目尻はとろんと垂れ下がり、口元はだらしなく緩んでいる。

「はぁ、ぁ、ぅぁぁっ……」

アイリーさんの中は、隙間なくびっしりと肉襞がひしめいていて。
膣全体が、うねり、蠕動し、
アイリーさんが身体を震わせるのに合わせて、強烈に締まり、僕の肉棒を咥える。
そして、肉棒の先端には、肉厚で、弾力に満ちた子宮口がぐりぐりと押し当てられている。
挿入の時とは違う、ねっとりとした快感。
締まりが強くなるのと同時に、与えられる快楽も強くなり、その度に肉棒がびくびくと跳ね、急速に、腰のあたりの熱が、痺れが高まっていく。

「ぁぁんっ、イっちゃってるのにっ、ナカでびくびくするなんてっ、気持ちよすぎますぅっ……」

肉棒が跳ねれば、それを感じ取ったアイリーさんはさらに身体を震わせ、甘い声をあげる。
そこでようやく、アイリーさんが絶頂している事実に気づくと、アイリーさんの姿が、何倍も淫らな物に見えてしまい、さらに興奮は募っていく。
アイリーさんが身体を動かすたびに、その豊満な胸が、ぷるんと揺れ弾み、僕の目を楽しませてくれる。

「ぁ、アイリーさんっ……!で、でるっ……!」

今まで味わった事のない快感、かつてなく高められた興奮。
キスで気持ち良くなっていたとはいえ、挿入したばかりだというのに、腰に溜まった射精衝動は、あっという間に決壊を迎えてしまう。
アイリーさんのナカがもたらす快楽をしっかり味わう暇も無く、僕は絶頂に追いやられ、射精を始めようとしていた。

「あはぁっ……我慢しないで、たっぷり出してくださいねぇっ……?」

そんな僕に対し、アイリーさんは期待に満ちた笑みを向けて。
覆い被さるように上体を倒し、僕の後頭部に手を伸ばす。
アイリーさんが身体を倒せば、褐色の果実が眼前に迫って来て……

「んむっ……んっ、ぅっ……!?」

後頭部に腕が回され、ぎゅっと抱き寄せられる。
僕を押し潰す、魅惑の感触。
アイリーさんの胸の感触は勿論、口も鼻も塞がれ、息が出来ない事すらも、快感を増大させて。

僕は、アイリーさんに促されるがまま、精を放ち始めていた。

「ぁぁっ……!?」

僕が精を放った瞬間、アイリーさんはびくりと身体を跳ねさせ、嬌声をあげる。
それと同時に、僕の肉棒に、強烈な締め付けが襲いかかって。

「ぅっ……ふぅっ……!っ……んぅっ……!」

「あん、はぁんっ、ぁぁぁっ!あぁぁぁんっ!?」

肉棒が脈動し、精液を吐き出すたびに、アイリーさんの身体は跳ねて。
それと同時に、豊満な胸が僕の顔に擦り付けられ、艶に満ちた、淫らな叫び声が僕の聴覚を埋め尽くす。

脈動に合わせ、膣が蠢き、肉棒を締め付けてくる。
最奥の子宮口も、精液を逃さないように、亀頭に吸い付いてきて。
豊満な胸に押し潰され、顔面をパイズリされ、甘い香り、魅惑の感触を堪能する。
魔性の膣に促され、搾り取られるがままに、何度も、何度も、精液を放つ。
そんな事はこれが初めての僕にとって、押し寄せる快楽の奔流はあまりにも気持ち良く、どうにかなってしまいそうだった。


「ぁぁ……あはっ……はぁん……」

「っ……んっ……むぅ……」

僕が射精を終えると同時に、アイリーさんも絶頂を終えたらしく、うっとりと息を吐く。
対する僕は、射精の余韻に浸り、半ば放心状態。
そして、快楽で塗り潰されていた、胸に押し潰される息苦しさが、徐々に鮮明になってきて。

「ぁんっ……あぁ…………」

「っは……はぁっ……はぁ……」

それを察してくれたのか、僕を抱いたまま転がって、上下を入れ替えてくれる。
繋がったままアイリーさんに抱かれ、胸に頭を預ける形。

「あはっ…………スライさんっ……どうでした……?」

ようやく呼吸が出来るようになり、胸の谷間で息を吸っていると、アイリーさんは蕩けた声をあげ、嬉々とした様子で感想をねだってきて。

「はぁっ……いきなりで、気持ちよすぎて……もう……なにがなんだか……」

それに応えようとするが、気持ち良過ぎて訳が分からないまま瞬殺されてしまった、という拙い感想しか出てこない。

「うふふっ……私も……こんなに気持ち良いだなんて、思ってなくて……とっても、凄かったです……
挿れただけでイかされて、精液びゅるびゅる注がれて、またイかされちゃうなんて……
それに今も……スライさんのおちんちんも精液も、美味しくてっ……気持ち良くて……とっても素敵です……」

そんな僕の拙い感想を聞いて、さらに嬉しそうにするアイリーさん。
反芻するかのように、蕩けそうな声で、うっとりと言葉を紡いでいく。
未だ、射精の余韻に浸っている僕は、ぼーっとしながら、それを聞いていた。


「あっ……ぎゅっ、ってしてあげますね……
本当はこうしてから、中出しして貰うつもりだったんですけど……
気持ち良過ぎて、ぐるぐる巻きにするどころじゃなったので……
私にとっては嬉しい誤算でしたけども……うふふっ」

「んっ……ぁ……はぁ……」

喋り続けていたアイリーさんは、突然、何かに気づいたように声をあげると、再び、僕の頭を抱いて、胸に押し付ける。
僕を受け止めるアイリーさんがもぞもぞと動いたと思うと、足先、ふくらはぎ、太ももと順番に、すべすべとした感触が絡み付いてくる。
艶かしい蛇体の感触は、僕の身体を下側から覆っていき、ついには僕の肩までに達して。
アイリーさんに抱かれたまま、繋がったまま、長い蛇の胴で、ぐるぐる巻きにされていた。

「うふふ……スライさんの身体、包みこんで、ぎゅうぎゅうです。
私の肉布団……どうですか……?」

アイリーさんは、僕の頭を撫でながら、甘く囁く。
その声にはまた、魔力が篭っていて、僕の思考をくらくらに揺さぶり、心地良く蕩けさせていく。

「温かくて……すべすべで……柔らかくて……良い匂いで……最高です……」

他のラミアと比べても長い蛇の下半身は、アイリーさんの上体ごと、僕に巻きついていて。
足先から、背中、肩までをすべすべとした感触が隙間無く包む。
肉付きの良い、むっちりとしたアイリーさんの上半身は、僕の上半身を、柔らかく受け止めてくれて。
まさに肉布団と言うべきもので。吸い付くような肌の感触も堪らない。

また、蛇体は絶妙な力加減で、僕の全身をぎゅうぎゅうに締め付け、アイリーさんと僕を隙間無く密着させる。
僕を包むすべすべの蛇体の感触、吸い付くような肌の感触の両方は、より鮮明に感じられるようになって。
アイリーさんの火照った身体、その体温が余す事なく伝わり、僕の身体を火照らせる。
暑い、などという事は決して無く、アイリーさんの体温は心地いい熱を伝えてくれる。

そして、大柄なアイリーさんと、小柄な僕の身長差のおかげで、繋がり巻きつかれ、身体を密着させながらも、僕の頭はちょうど、アイリーさんの胸に受け止められていて。
先程の顔面パイズリの時は、快楽で一杯一杯で、じっくり堪能できなかったアイリーさんの胸の感触。
ぷるぷると弾力に満ちているのに、むにゅりと柔らかく変形して、僕の顏を包み込む。確かな手応えがあるのに、何処までも沈み込んでいきそうに、ふわふわで。
すべすべなのに、吸い付くような肌触り。
与えられる感触の全てが、気持ち良い。
そして、胸の谷間で息を吸い込めば、 溺れてしまいそうな程に濃厚な甘い匂い。
その甘さは僕を興奮させ、恍惚とさせながらも、僕を優しく満たし、安らぎをもたらしてくれる。

極上のベッドの虜となった僕は、甘い声に導かれるがまま、うわ言のように応える。

「最高だなんて……うふふっ……
これからは思う存分甘えてくださいねっ……遠慮なんてしなくていいんですよっ……
スライさんに甘えられるの、大好きなんですっ……とっても幸せなんですっ……」

頭を抱かれ、胸枕にむにゅむにゅと押し付けられる。
甘く蕩けた言葉は、染み込むように、僕の思考に受け入れられる。

「はぃ……っ……すぅ……はぁ……ぁぁ……すぅ……はぁ……」

自分から甘える事に対する羞恥心はあるけども、アイリーさんの胸は、抗い難い魅力を持っていて。
あっさりと催促に負けてしまった僕は、自分からアイリーさんの胸に顔を埋める。
それと同時に、僕を抱き込む腕の力はより強くなり、同時に、腕で胸を寄せあげるようにもなっていて。
正面からも左右からも、僕の顔を押し潰さんばかりに柔肉は押し付けられる。
そして、その中でさらに、上下左右にぐりぐりと、頬ずりをするようにしながら、なんども深呼吸。

「あんっ……はぁっ……
あぁっ……そんな所も、可愛くて、大好きですよぉっ……」

自分から求め、堪能する、アイリーさんの胸の柔らかさ、肌触り、甘い匂い。
アイリーさんの悦ぶ声、受け入れられているという確信、その心地良さ。
僕はすっかりと、自分から甘える事の味を覚えてしまっていた。

「っはぁ……んむっ……あむっ……」

胸に甘えながら吸える空気だけでは足りず、僕が息継ぎしようとすると、アイリーさんの腕は僕の頭を解放してくれて。
一旦、胸元から顔を離し、息を吸い込む。
そして、僕の目の前では、褐色の豊乳がぷるんと揺れ、その先端は充血し、物欲しげに、ぷくりと膨れ勃っていて。
僕は、その光景に誘われるがまま、アイリーさんの胸に甘えるようにしゃぶりつき始める。

「あ、ぁっ、あぁんっ……スライさんのお口、すごくイイですっ……」

大きく口を開けて吸い付き、唇で乳肉をあむあむと食んで、その柔らかさを堪能する。
首の力を抜けば、アイリーさんのおっぱいは、僕の頭の重みを再び受け止めてくれる。
そのまま、舌を突き出し、思うがままに乳輪と乳首を舐め回せば、アイリーさんは甘く嬌声をあげる。
それと同時に、僕の肉棒を包み込んでいる、アイリーさんの膣内がきゅっと締まり、ゆっくりとうねる。
先ほど射精に導かれた時と比べて、緩やかで優しい刺激。甘く蕩けそうな快楽が肉棒に刷り込まれる。

「んっ……ふぅっ……ちゅぅっ……」

肉棒からの快楽、甘える心地良さに目を細めながら、
口を窄め、乳首に吸い付く。
まるで赤ん坊みたいだけれども、それでも僕は、アイリーさんの乳首に吸い付きたくて堪らなくて。
それ程までに、アイリーさんの母性は、僕を誘惑する。
そうしながら視線を上に向ければ、蕩けた表情のアイリーさんと目が合って。
目元はとろんとしていて、口元は緩み、頬は紅潮している。
そして、優しげな、それでいて情欲に満ちた瞳に吸い込まれそうになってしまう。

「あんっ……はぁっ……おっぱい吸いながら、上目遣いでっ、そんな気持ち良さそうな顔してっ……とっても素敵でっ……どうにかなっちゃいそうですっ……」

僕と目が合うと、アイリーさんは、満面の笑みを浮かべる。
幸福を孕んだアイリーさんの表情、言葉はとても魅力的で。その幸福を向けられるだけで、僕まで幸せな気分になってしまう。

「はぁっ……あんっ……うふふっ……
私、スライさんのおちんちん、ずっとずっと前から、食べたくて食べたくて、しょうがなかったんですよぉっ……?

念願のスライさんのおちんちんですもの……
心ゆくまで、下のお口でしゃぶって、ぐちゅぐちゅにして、じっくりたっぷり味わわせてもらいますからねっ……」

僕の頭を撫でながら、すっと眼を細めるアイリーさん。
蛇のような縦長の瞳孔、その奥に滾る、どろりとした情欲は、捕食者を思わせる。
情欲の丈を伝える言葉はとても甘く、その激しい情欲のままに僕を貪るという宣言には、深い愛情が篭っていて。
ゾクゾクとした快感が背筋を這うのを感じながら、僕は、貪られる事に、快楽が与えられる事に期待してしまっていて。

「っ……んっ……んぅっ……」

その期待に応えるように、アイリーさんの膣内がゆっくりと蠢き、僕の肉棒を責め立て始める。
アイリーさんの中は、肉襞がびっしりとひしめいていて。
膣が蠢くたびに肉襞が絡み付き、まるで無数の舌先に舐め上げられているようで、ゆっくりとした動きなのにとても気持ち良く、アイリーさんの乳首に吸い付きながらも、思わず鼻声が漏れてしまう。

「あんっ……んっ……はぁんっ……うふふっ……
スライさんのおちんちん、私の奥にっ……」

腰周りに巻き付いた蛇体が蠢き、僕の腰を締め付け、お尻を押し上げてきて。
その結果、僕は、アイリーさんと腰を密着させ、肉棒を目一杯突き込む体勢にされて。
アイリーさんもまた、自分から腰をぐりぐりと押し付け、僕の肉棒を深く咥え込もうとしてくる。

「うふふっ……私のものですっ……離しませんからねっ……」

そして、これ以上なく深く繋がった状態で、腰回りの蛇体がキツく締めあげてきて、僕の腰はがっちりと固定されてしまう。
それだけでなく、アイリーさんの膣全体が、僕の肉棒を吸い込むように蠢いて。
最奥に達した感触は確かだというのに、肉棒がずぷずぷと沈み込んでいくかのように錯覚してしまう。
アイリーさんのナカは、まるで底なし沼のように、貪欲に僕の肉棒を咥え込み、離そうとしない。

「んっ……はぁんっ……こうして、なでなでしてあげると……
ふふっ……とっても気持ち良いですよねっ……?」

アイリーさんのナカに呑み込まれた敏感な亀頭は、ぷるぷるの子宮口に押し付けられ、吸い付かれている。
深く繋がった分、子宮口から与えられる快感は鮮烈で。
膣がうねり、亀頭に吸い付いた子宮口に、尿道口の周りを撫で回されるたびに、肉棒の先から下半身までをぞわぞわとした甘い快楽が走り、腰砕けになってしまう。

「っ……ちゅっ……んぅっ……あむっ……んんぅっ……」

「んっ……はぁんっ……ひゃぁんっ……
ぁぁっ、はぁっ……」

気持ち良い、と答える代わりに僕は、アイリーさんの目を見つめながら、甘えるように乳首に吸い付き続ける。
その度に、アイリーさんのナカが、きゅっと締め付けて来て、心地良い。
そして、おもむろに乳首を甘噛みすれば、アイリーさんのナカは一際大きな反応を返してくれて。
その分、より大きな快感が肉棒に刷り込まれる。

「ぁはっ……軽くイっちゃいましたぁ……ぁんっ……
やっぱり、スライさんにされるの、とっても気持ち良くてっ……もう、自分の指なんかじゃ満足出来ませんっ……スライさんじゃなきゃダメですっ……」

ぴくんと身体を震わせながら、蕩けた言葉を紡ぐアイリーさん。
僕じゃなきゃダメ、という言葉に、充足したものを感じて、僕の中に、アイリーさんへの独占欲が芽生え始めている事に気付く。
独占欲は、自覚と同時にどんどん膨れあがっていくが、アイリーさんの、まるで僕だけしか見えていないかのような眼差しや、僕を包む身体の温もり、唇から紡がれる甘い言葉が、それを満たしてくれて。
アイリーさんの眼差し、温もり、言葉が、僕にとってより素晴らしい物になっていく。
膨れあがる独占欲を抑えるなんて事は考えられなかった。

「んっ……ふふっ……えっちなスライさんには、もーっと気持ち良くなって貰いますからっ……」

アイリーさんが悪戯っぽい表情をすると同時に、アイリーさんのナカが、キツく締まり始める。
それだけで無く、肉棒をぐちゅぐちゅと咀嚼するかのように、ぐにゅぐにゅと蠢いて。
膣のうねりは絡みつくようで、大きく、激しくなっていく。
それでいて、奥へと吸い込まれるような、あの感覚はそのままなどころか、さらに強くなって。

「ほぅら……ぐにゅぐにゅでっ、ぐちゅぐちゅでっ……弱点だって分かってますものっ……堪らないですよねっ……?
ぁはっ……先走り、だらだら出てて、とっても美味しいですっ……」

無数の肉襞が、肉棒の根元から亀頭までを、執拗に舐めあげ、僕の身体の芯に、快楽の電流を走らせる。
膣の蠢きは、まるで肉棒が揉み解されるかのような、蕩ける快楽を与えてくれて。
激しいうねりは、決して飽きる事の無い、不規則で多彩な快楽を生み出す。
そして、アイリーさんのナカの、僕の亀頭を包む部分は、一際強く締め付けてきて。柔らかな肉襞がカリ首に密着し、食い込み、離れない。
そのまま膣内がうねれば、カリ首が肉襞のリングに擦られ、亀頭全体が柔肉にこねくり回されて。
敏感で、弱点とも言うべき所が責められているにも関わらず、与えられる快楽は、身を委ねたくなってしまうもので。

「んっ……んぅっ……ふぅっ……」

アイリーさんのナカがもたらす、魔性の快楽。
激しく、鮮烈だというのに、甘く優しく、肉棒が蕩けていくようだ。
僕は、すっかり夢見心地になりながら、その快楽に浸り、アイリーさんの乳房に吸い付く。
そして、腰回りには、熱い痺れが、どんどん渦巻き始めて。それは、あっという間に高まり、限界に近づいていく。

「ぁぁっ……おちんちんビクビク震えてっ……イっちゃうんですねっ……?
精液びゅるびゅる出してくれるんですねっ……?
良いですよっ、スライさんの美味しい精液、私の子宮に、たっぷり飲ませてくださいっ……
大好きですっ、愛してますっ……」


期待に満ちた表情のアイリーさんに見つめられ、乳房に吸い付いたまま、僕は射精に押し上げられていく。
そして、絶頂を迎えるその直前。
魔力と愛情がたっぷり篭った、甘い愛の言葉が、僕の頭をぐらりと揺らす。
底なしに甘いその言葉は、反響を続け、僕の思考を埋め尽くし、上下の感覚すら希薄になるような深い恍惚、陶酔に僕を誘う。
それを引き金に、溜まり溜まった快楽の堰は、決壊を迎えて。

「っ……ふぅ、んうぅ、んぅぅぅ……」

「ぁぁん、あはぁっ、はぁぁぁ……すらいさぁぁん……!」

肉棒が脈動し、尿道を精液が通っていく快楽。
それは、腰回りが全て、どろどろに蕩けるかのように錯覚してしまうほどの物で。
射精の快楽だけでなく、射精中で敏感になった肉棒には、アイリーさんのナカによって、より鮮烈な快楽が送り込まれていて。
そして、僕の肉棒から精液が放たれ、子宮に注がれたその瞬間、膣内は更に貪欲さを増す。
射精を促し、精液を搾り出すかのように、根元から先端へと膣内が蠕動を始め、子宮口は尿道口にぴったりと吸い付き、熱烈にキスされているかのようだ。
それは、玉袋から子宮へと、直接精液が吸い上げられるかのような感覚をもたらして。ただでさえ気持ち良い射精の快楽は、何倍にも膨れ上がる。

僕を見つめるアイリーさんの表情は、みるみるうちに蕩けていき、同じぐらいに蕩けた、甘い喘ぎ声をあげる。
そして、全身で僕をきゅっと抱きしめ、幸福に満ちた笑顔で僕を見つめながら、蕩け切った声で僕の名前を呼んでくれて。それが、僕の胸をどうしようもなく暖かく満たす。
そうして僕は、アイリーさんの温もりに包まれ、アイリーさんの甘い言葉に優しく揺られ、何度も何度も精液を放ち、至福の快楽を余す事なく味わい、心を蕩かされていった。

「っ……はぁぁぁ……ぁぁ……」

とても長かったように思えた甘美な射精は、終わってみれば、一瞬の出来事で。
射精の脈動は収まってしまい、疲労感と脱力感が身体を支配する。
半ば放心状態で、乳首を吸う事をやめた僕は、再び、一番楽な、胸の谷間に頭を預ける姿勢になって。
射精の余韻と、アイリーさんのナカがもたらす快楽に、うっとりと息を漏らす。

「ぁぁ……あはぁ……ふぁぁ………
すらいさんのせーえき……また、ナカに……
うふふふ……さっきより、沢山で、気持ちよくて、美味しくてっ……とってもしあわせですっ……」

妖しくも幸せそうな含み笑いが、僕の中に反響する。
僕の射精を受け止めた直後のその声は、とても蕩けていて。
性欲を満たされるのとは違った、暖かな満足感を僕に与えてくれる。

「でも……うふふっ……とってもしあわせですけど……
これだけじゃ、全然足りなくてっ……
もっともっと、スライさんのせーえきが欲しくて欲しくて欲しくて欲しくて、子宮がきゅんきゅん疼いてたまらないんですっ……
全部ですっ……あまくて濃くて、気持ちよくてとろとろになっちゃうスライさんのせーえきっ……
沢山気持ちよくしてあげて、ぜぇんぶ、いただいちゃいますからねっ……」

それも束の間、幸福に蕩けた声には、どろりとした深い欲望が浮き上がって。その丈を語り、欲望のままに僕を搾り尽くすと宣言する。
それでも、その声からは、確かな、深い愛情が感じられて。求められている事を、嬉しくすら感じてしまう。

「ぅぁ……はぁ……ぁぁぁ……アイリー……さん……」

そして、僕を気持ちよくし、精液を搾り出すため、宣言通りに、アイリーさんのナカは、射精直後の敏感な肉棒を責め立て始める。
肉棒に送り込まれる甘い快楽。
先程の射精の、至福の快楽が、脳裏によぎる。

あんな風にされるなら、空になるまで搾られても構わない……いや、搾られてしまいたい……

そうして僕は、アイリーさんの声に耳を傾けながら、されるがままに、アイリーさんの欲望を受け入れ、愛情を注がれていった。


「ぁぁ……すらいさんのせーえきで……いっぱい……
ぜぇんぶ、わたしのもの…………
わたしの…………わたしのすらいさん……ふふ……」

長い長い快楽の末、何度も何度も、数えきれない程、僕は絶頂を迎えて。アイリーさんの宣言通り、僕は、最後の一滴まで、空になるまで、精液を搾り取られてしまっていた。

アイリーさんのナカは、僕の肉棒を優しく包み、労うかのように、ゆったりと穏やかに蠢いて、僕の肉棒を萎えさせない。
射精直後の敏感な状態は終わっていて、癒やすような心地良さが与えられ続けている。

そして、精魂尽き果てるまで搾られた僕の体力は、とうに限界で、強烈な疲労感と眠気が僕を支配している。

そして、搾り取られ、疲れれば疲れた分だけ、脱力感が僕の身体に満ちている。
だが、くったりと脱力した身体は、アイリーさんの肌の感触、温もりを、これ以上無く敏感に感じとれて。
アイリーさんの身体に包まれる感覚は、搾り取られる前に比べて、格段に鮮明だ。
僕にとっては、この疲れすら、心地良く、素晴らしいものになっていた。

「うふふ……おやすみなさい……スライさぁん……あいしてますよぉ……んっ……ふぅ……れろぉ……」

「ん……ぅ…………」

極度の疲労から生み出される眠気、その微睡は極上の物で。全ての重さから解放されたかのような、ふわふわとした浮遊感の中に、意識は漂う。
そんな中、僕の両頬に優しく手が添えられて。
丁寧に、僕の頭が持ち上げられる。

ぼんやり目を開けると、目の前には、この上無く幸せそうな笑顔を浮かべるアイリーさん。
今まで見てきた中で、一番魅力的で、惹きつけられる表情。

幸福に蕩け切った声で、愛おしげにおやすみなさいと言い、僕の名前を呼び、愛を囁いて。
幸せな声は、僕の頭の中を幸せに染め上げながら、響き続ける。

そしてアイリーさんは、長い舌を伸ばし、僕の口内に差し入れ、優しく、労わるように舌を絡めてきて。
愛情たっぷりの、おやすみのキス。
自然と目は閉じてしまい、舌がとろとろになってしまいそうなその気持ち良さを味わう。

そして、アイリーさんは、くったりと脱力した僕の全身を優しく受け止め、抱き締め、巻き付いて、包みこんでくれている。
身体の芯までに達するアイリーさんの温もり、母性溢れるアイリーさんの甘い匂いに、心の底から安心感を得ていて。

そうして僕の意識は、幸福とアイリーさんの温もり、愛情の中に、深く、深く沈んでいった。



「んぅ……」

眠りの淵に沈み込んでいた意識が、ふっ……と浮き上がる。
朧げな意識で感じるのは、身体を包む、柔らかさと温もり、優しい匂い。心地良さと安心感が僕を満たしている。

「ふふ……お目覚めですか……?スライさん……」

微睡みの中、呼びかけてくる、穏やかな声。
さわさわと、頭が撫でられる。
僕を満たす感覚、感触がアイリーさんのものだと、アイリーさんに抱かれているのだと、なんとなく理解する。

「んぅー……」

うっすらと目を開けると、辺りが明るい事が分かる。
もう起きなければいけない……ぼんやりとしながらも、そう思う。
しかし、それ以上に、アイリーさんに包まれながら、そして、甘えながらの微睡みを味わいたくて。
お目覚め、という言葉を否定するように声をあげて、再び目を閉じる。

「ふふ……二度寝でしたか……
あ……そうです……先に朝ご飯、用意しておきます……?」

そんな僕に、再び優しい声は尋ねてきて。

「うん……」

何も考えずに、肯定の返事。
美味しい朝ご飯は食べたい。
優しい声に、心地良く従う。

「それじゃあ……ちょっと失礼しますね……?」

「だめ……」

その声とともに、僕を包む感触が不意に緩む。
温もり、柔らかさ、優しい匂いが遠ざかりそうになる。
もっと、包まれていたい、甘えていたいのに、アイリーさんが離れていきそうになる。
朧げな思考でも、それだけは分かって。
我慢出来ない、離れてはいけない、と、胸に顔を押し付けながら、甘えるように、抗議の声をあげる。

「あら……うふふ……離れたりなんかしませんから、安心してくださいね……」

抗議の声は届いたらしく、僕を包む感触は、再びきゅっと締まって。
離れない、と約束するアイリーさんの言葉、再び僕の頭を撫でる、アイリーさんの手。


「ん……すぅ……」

取り戻された、心地良さと安心感。
ゆっくりと首を動かし、顔、頬を押し付け、擦り付け、むにゅむにゅふわふわとした柔らかさに甘えながら、
ゆっくり息を吸い、アイリーさんの匂いで胸を満たして。
アイリーさんに甘えながら、怠惰ながらも甘美な、二度寝の幸福を味わっていった。






「んっ…………」

「ふふふ……今度こそ、お目覚めですか……?」

微睡みから引き上げられる意識。優しく頭を撫でられる。
ゆったりとしたアイリーさんの声は、未だ眠気が支配する頭に、染み込むように、すんなりと入り込んでくる。うるささは微塵も無く、眠気を妨げる事も無く、寝起きの僕に、とても心地良い。

「ん……おはよう……ございます……」

「おはようございます……
よく眠れましたか……?」

アイリーさんの顔を見るために、重たい頭を上げようとする。
すると、僕の両頬に手が添えられて、重たい頭を優しく持ち上げてくれて。
目の前には、母性的な笑みを浮かべるアイリーさん。

「うん……」

ぼんやりとアイリーさんの目を見つめ、問いに頷く。
空になるまで搾られて、とても疲れたけども、その分、とてもぐっすり眠る事が出来た気がする。
普段はしない二度寝までして、とてもよく眠れた。


あぁ……普段は……起きて……そうだ……仕事に行く時間はとっくに……

「それでは改めて……朝ご飯にします……?お風呂にします……?
それとも、私……?」

ぼんやりと考える僕に、アイリーさんは再び問いを投げかけてくる。
美味しい朝ご飯と、お風呂、そして、アイリーさん。
それらの前に、さっきまで考えていた事はもうどうでもよくなってしまう。

「んぅ……アイリーさん……ぎゅっ、て……」

僕を受け止め、包み込む、アイリーさんの身体の温もり、柔らかさ。
今の僕は、それをもっと感じたくて。
そして、心地良い眠気に浸ったまま、アイリーさんに甘えたい。

そんな欲求のままに、アイリーさんの胸に顔を押し付け、甘えた声をあげて、アイリーさんの抱擁をねだる。

「うふっ……ぎゅっ……ぎゅっ……ぎゅーっ……」

「はぁ……あぁ……ぁ……」

僕のねだった通りに、アイリーさんは、僕を蛇体でぎゅっと抱き締めてくれて。
締め付けを緩め、強め、緩めて、また強める。
腕も、それに合わせて僕の頭を抱き締めて。
何度も、何度も繰り返される、愛情たっぷりの抱擁。
緩急をつけた分、温もりも、柔らかさも新鮮で心地良くて、僕はうっとりと息を漏らしてしまう。

「うふふ……昨日は……とっても素敵でしたね……
スライさんの童貞、貰っちゃって……
私の処女も、スライさんに捧げて……ふふっ……
お互いに初めてだなんて……うふふっ……ふふ……」

抱擁を繰り返しながら、昨夜の出来事に触れるアイリーさん。


僕をストーキングしていた事、薬を盛って僕の自由を奪った事……
事の最中の僕は、欲情と快楽、甘い声に思考を蕩かされ、それらを受け入れてしまった。

しかし、今の僕は、アイリーさんが僕にした事を理解出来る。
確かに、キスされてからは僕は乗り気になってしまっていたけれども……
それは、酒に酔わせて、その隙に襲ったり、寝込みを襲ったりするのと、何ら変わらない。

「……はい……あんなに気持ち良いなんて……
凄く疲れたけど……
アイリーさんの身体、暖かくて、柔らかくて……
疲れてるのに、心地良くて……」

だが……頭ではそう理解していても、僕は、アイリーさんを責めようとは思わなかった。

事に至るまでは、僕の意思を無視するような強引な方法だった。
けれども、今、改めて思い返しても、ああいった風にされて、アイリーさんに童貞を奪われて良かったと思えてしまう。それ程までに、アイリーさんとの初体験は、愛情と快楽に満ちた、とても甘美な物だった。

また、今のアイリーさんが、とても幸せそうだというのも理由だった。
やはり、アイリーさんは幸せそうにしているのが、一番素敵で魅力的で。
此処まで幸せそうにされると、負の感情が一切洗い流されてしまうようだった。

結局、事の最中と結論は変わらず、僕はアイリーさんを受け入れていた。

「ふふ、それは良かったです……
私も、精液たっぷり注いで貰って……今までで一番気持ちよくて、どんな物より美味しくて、何度も何度もイっちゃって……
うふふっ……もう、スライさんに病み付きになっちゃいました……」

僕の内心を知ってか知らずか、満足気な様子のアイリーさん。
単に昨夜、心ゆくまで僕を搾り取ったからかも知れない。何度射精したか覚えていないけども、少なくとも、十回は超えているだろう。
今思えば、僕が飲まされた薬には、精力絶倫になるような物が入っていたのかも知れない。

「んう……ぁ……あの……
やっぱり、お腹……空いてたみたいで……
朝ごはん……食べたい……です……」

そして、起きてからしばらく経ったせいか、徐々に空腹感が気になり始めてきてしまって。
素直に、朝ご飯が欲しいと、胸に頬ずりしながら、アイリーさんに告げる。

「あら……ふふっ……
あんなに沢山出してくれたんですもの、お腹が減って当然です……それじゃあ……
名残惜しいですけど、朝ご飯にしましょうか…………」

「ぁっ……」

僕を包んだまま、アイリーさんはごろりと横を向いて。
しゅるしゅると、蛇体を解いていく。
心地良い密着感、温もりが失われていき、とても名残惜しいのだけれど、空腹には抗えない。

「寂しいですけど、抜いちゃいますね……
んっ……あんっ……」

そして、アイリーさんはゆっくりと腰を引いていく。

「はぁっ……ひぁっ……」

先程まで、繋がりっぱなしで、僕の肉棒を優しく包み込んでくれていた、アイリーさんのナカ。射精させるための快楽では無く、ゆったりとした、心地良いと言える感覚を与えてくれていた。

そんなアイリーさんの膣内は、僕の肉棒が引き抜かれる時になると、引き止めるように絡みついてきて。
カリ首に食い込む肉襞を、強引に掻き出すその快楽に、甲高い声をあげてしまう。

「うふっ……あむっ……ちゅぅっ……じゅるっ……じゅるるっ……」

「んむっ……!?んぅっ……ふぅっ……」

そして、肉棒を引き抜いたアイリーさんは、すぐさま僕の頬に手を添え、唇を奪ってきて。
突然のキスに目を白黒させているうちに、あっという間に、僕の口内に細長い舌が入り込んできて、僕の口内を舐め回す。
そのまま、じゅるじゅると音を立てながら、アイリーさんは僕の唇に、熱烈に吸い付いてきて。
甘く艶かしい舌の感触に溢れ出す唾液は、アイリーさんの口内へと啜り取られていく。

「ぢゅうぅぅっ……んくっ……ぷはぁっ……」

「んぅぅっ……っはぁ……ふぁぁ……」

そして、僕の唾液をたっぷり吸い出したアイリーさんは、最後に一際強く吸い付くと、舌を引っ込め、喉をこくりと鳴らし、僕の唇を解放する。


「うふふっ……ふふっ……
スライさんと、おはようのキス……」

僕の唾液を飲んで、アイリーさんは蕩けた笑みを浮かべる。
おはようのキス。ロマンチックというか、ベタベタな恋人のような振る舞い。
ベタなんだけれど、その分ストレートな愛情表現。

「ふぁ……いきなりなんて……びっくりするじゃないですか……」

「あら……嫌でした……?」

「……良かった……です」

貪るようなキスだったけれども、それも、アイリーさんが僕を愛している証で。
いきなりで驚いてしまったけど、不意討ちでされる良さという物は、それはそれで確かにあって、結局、とても気持ち良いキスである事に変わりはなかった。

「ふふふっ……愛してますよ、スライさん」

「はぃ……」

そして、間髪いれずに、耳元での甘い愛の囁き。
キスの余韻も抜けないまま、ねっとりと頭の中を反響する愛の言葉。
目は覚めたというのに、僕は再び夢心地で。

「それでは……はい、これが着替えです。
お風呂の場所は分かりますね?
それじゃあ、私は、朝ご飯を作ってきますから……
あ、もう、お昼でした……
ともかく、楽しみにしていてくださいっ……」

「あっ……うん……」

そして、アイリーさんは、ベッドの側の棚に手を伸ばすと、バスケットを取って、僕の枕元に置いて。

中身を見ようと上体を起こした僕を、抱き締めた後、
朝食を作るために、寝室を後にしてしまう。

「ぁ…………」

寝室で一人になった僕は、バスケットの中身を覗き込む。
バスケットの中身はバスタオルに着替え一式、そしてバスローブ。下着の柄は、いつも使っているのと同じで、バスローブは、寝間着と同じ、水色に白のストライプ。

用意周到だな、と思いつつも、今頃になって、身体が愛液、唾液、汗まみれになっている事に気づく。
お風呂場を借りて、さっぱりしてしまえば良いのだろうけど、一人で汗を流す気にはなれなかった。

「ん……アイリーさん……」

僕は、昨日の交わりからさっきまでの間、ずっと、アイリーさんに巻きつかれ、抱き締められ、まさに温もり漬けというべき状態にされていて。

そのせいで、アイリーさんの温もりを感じていない、今の状態は、やけに落ち着かず、寂しい。

料理があるから、抱きしめて貰うのは無理にせよ、
せめて、アイリーさんの姿を見て、寂しさを紛らわしたい。

バスローブを羽織り、遅れてアイリーさんを追いかけ、台所へと向かった。






台所では、フリル付きの純白のエプロンだけを身につけたアイリーさんが、料理の用意をしていて。
大きな、ぷりんとした桃尻が、僕の目を惹く。

「あら……お風呂、勝手に使ってても良かったんですけども……」

僕に気づき、振り向き、微笑むアイリーさん。
はちきれんばかりの爆乳は、ギリギリ乳首が見えないぐらいにしか、エプロンに覆われていない。逆に言えば、乳首より側面、そして谷間は、見事に露わになっていて。それも、エプロンの布地が小さいわけではなく、アイリーさんの胸が大き過ぎるせいだ。

「その……後にしようかなって……」

男の憧れである裸エプロン。
それは、僕にとっても例外ではなくて。
胸の谷間に、エプロンから零れ出るかのような横乳。
僕のために手料理を作ってくれている、その甲斐甲斐しさ。
まるで新婚のお嫁さんのような、アイリーさんの微笑み。
アイリーさんの裸エプロン姿は、想像以上に素敵で、見惚れてしまう。寂しさも吹き飛んで、幸せな気分だ。
これ以上の眼福は、そうそう無いだろう。


「……うふふっ、私の裸エプロン姿、見にきてくれたんです……?」

「っ……はい……確かに……見たかったのもあります……
とても……素敵です。想像以上でした」

アイリーさんの言うとおり、僕は、アイリーさんの裸エプロンを期待していて。
それは、一人でお風呂場に行かなかった理由の一つでもあった。
図星を突かれ、たじろぎながら、答える。
内心が見透かされてるようで、少し恥ずかしく、目を逸らしてしまう。

「ふふっ……嬉しいですっ……
恥ずかしがらないで、もっとじっくり見ても良いんですよ……?
それと……他の理由はなんですか……?
気になっちゃいます……」

アイリーさんは、腕で胸の谷間を寄せあげながら、前屈みになって。
逸らしたはずの僕の視線は、抗いようもなく、谷間の魅力に吸い込まれていく。

「それは……その……後で……」

一人でお風呂場に向かわなかった、他の理由。

交わりの最中、その後、巻き付かれ、包まれ、抱き締められ続け、アイリーさんの甘く優しい匂いが、僕の身体には染み付いていて。

たとえ身体が多少べたつこうとも、それを一人で洗い流してしまうのは勿体無い。
身体を洗うなら、アイリーさんと一緒が良い。
アイリーさんに身体を洗ってもらって、その後でまた抱き締めて貰って、改めてアイリーさんの匂いを染み込ませて貰いたい。僕は、そう思ってしまっていた。

しかし、一旦、アイリーさんから離れたせいか、今の僕は多少頭が冷え、羞恥心もそれなりに芽生えていて。
アイリーさんに抱き締められ、温もりに浸りながら……だったのなら、素直に答えていたんだろうけども、
今は、恥ずかしくて答えられない。

アイリーさんが居ないと寂しい、一緒にお風呂に入りたい、というのを面と向かっていうのも恥ずかしいし、それ以上に、アイリーさんの匂いを身体に染み付いたままにしておきたい、だなんて変態的な事を言うのは、もっと恥ずかしい。

「約束ですよ……?ふふっ……」

「は、はい……」

そう言って、再び台所に向かうアイリーさん。

後で、と言ってしまったのは失策だったな、と思いながら、僕は食卓につく。
そして、料理をするアイリーさんの後ろ姿を眺め、頬を緩ませる。
一瞬、仕事の事が頭に浮かんだけれども、それはすぐにどうでも良くなってしまった。




「ふふっ……出来上がりました……沢山愛を込めましたからね……」

「ぁ……はぁ……
ありがとうございます……」

アイリーさんは、出来たてのシチューの入った器と、薄切りにしたパンの載った皿、葡萄のジュースのコップを食卓に置いて、僕の座る長椅子に腰掛ける。
そして、身体をぴったり寄せ、僕の腰から下を蛇体でぐるぐる巻きにしてきて。
アイリーさんの温もりと匂い、そして、腕に押し当てられる胸の感触に、ついうっとりしてしまう。

「ふーっ……はい、あーん……」

「あ、あーん……んむ……んくっ……」

アイリーさんはパンをちぎると、シチューにつけて、息を吹きかけて冷ます。
そして、身長差もあり、僕の顔を上から覗き込むような形になりながら、口をあけるよう催促してくる。
背の高いアイリーさんと目を合わせるために、僕は自然と顔を上に向けていて。
僕が口を開けると、シチューに浸されたパンが僕の口元に運ばれて。
それをぱくりと咥え、味わい、咀嚼して、呑み込む。

「お味はいかがですか……?」

「美味しいです……」

まるで、餌を与えられる雛鳥になったかのようで。
アイリーさんに食べさせて貰う料理は、また格別だ。

「ふふふっ……私が、食べさせてあげたからですか……?」

「はいっ……」

そして、アイリーさんはまた、図星をついてくる。
だけれど、それは、それだけ僕の事を分かってくれているのだと思うと、何となく嬉しくなってしまう。

「じゃあ……私にも、美味しく食べさせてくださいっ……
あーん……」

「分かりましたっ……はい、あー…」

そして、今度はアイリーさんが、口を開ける。
アイリーさんがおねだりすると、普段の母性溢れる様子とのギャップもあり、とても可愛らしくて。
僕は、意味も必要も無いのに張り切って、パンをちぎり、シチューにつけて、アイリーさんの口元に運ぼうとする。

「あむっ……ちゅっ……ちゅぱ……ちゅうっ……」

すると、アイリーさんは、パンが運ばれるのを待たずに、僕の指ごと咥えてきて。
パンを無視し、僕の指にしゃぶりつき、舌を這わせ、美味しそうに目を細める。

「んっ……ぁ……アイリーさん……」

アイリーさんが僕の指を味わうたびに、ぞわぞわとした感覚が背筋を走る。
指にしゃぶりつくアイリーさんの姿は、妖しい魅力を放っていて、僕はそれに見惚れ、されるがままになってしまう。

「ぷは……ん……んむっ……んっ……んくっ……
うふふっ……とっても素敵な味でしたっ……」

僕の人差し指と親指を、ひとしきり舐め回してから解放するアイリーさん。
そうしてから、改めてパンを味わい始める。
パンを飲み込むと、悪戯な笑みを浮かべ、上機嫌に僕を見つめてきて。

「もう……お行儀わる「はい、あーん……」

「あーん……」

指をしゃぶった事をたしなめたら、アイリーさんはどんな顔をするのか。
ふと気になった僕は、その言葉を紡ごうとするが、その途中で、アイリーさんは、僕の口元にパンを運んできて。
僕は、半ば反射的に、雛鳥のように口を開けてしまうのだった。



「ご馳走様でしたっ……」

「ご馳走様でした……」

結局、何度も指をしゃぶられながら、僕達は昼食を終えて。アイリーさんは、ご満悦の様子だ。

「さて……さっきの理由ですけど……
約束通り……聞かせてくれませんか……?」

昼食を終え、両手が空くなり、アイリーさんはその豊満な胸に、僕を抱きこんできて。蛇体も、改めて僕に巻きつく。
そして、魔力の篭った甘い声で、ねっとりと、僕の白状を促す。

「ぁっ……はぁ……アイリーさんと……一緒に……お風呂に入りたかったんです……」

アイリーさんの胸に抱かれ、甘い声に誘惑された僕にとって、羞恥心は意味をなさなくて。
抱擁の心地良さにうっとりし、自分からもアイリーさんに抱きつきながら、素直に、
一人でお風呂に入らなかった理由を白状していく。

「ふふ……やっぱり、待っててくれたんですねっ……
じゃあ……一緒に入って……そのあとはどうします?」

どうやら、アイリーさんは、聞くまでもなく、この事を分かっていたらしい。
その上で、わざわざ僕の口から言わせたのは、きっと、僕の口から聞きたかったのだろう。そんな些細な事も、嬉しく感じてしまう。

「……洗いっこが……したいです……」

そして、アイリーさんの次の問い。

あの時は、単に、アイリーさんに身体を洗って貰いたい、と思っただけだった。
でも今は、それだけでなく、アイリーさんの身体を、自分から堪能したくて。
そんな欲望が丸見えの答えを口にする。

「うふっ……洗いっこですねっ……
ふふ……泡まみれのまま、スライさんの全身にぎゅうぎゅうに巻き付いて……そのまま全身を、蛇体でにゅるにゅる洗って……
うふふ、そうですね……おっぱいも沢山擦り付けて……むにゅむにゅっ……てしてあげます。
ああ……スライさんの好きなマッサージもしてあげますね……

その後は……指、尻尾、おっぱい、お口……
うふふ、最低四回分は、おちんちん、隅々まで、ぴかぴかになるまで洗っちゃいます……

ふふっ……スライさんは……どういう風に、私の身体を洗ってくれますか……?」

アイリーさんは、そんな僕の欲望を聞いて、嬉しそうに、洗いっこで、僕をどうしてくれるかを語っていく。
そのどれをとっても、想像するだけで気持ち良さそうで、僕の期待を高めていく。

そして、アイリーさんは、僕の頭を撫でながら、今度は優しく甘く尋ねてきて。

「……おっぱいと……お尻を……揉み洗いしたり……
抱きついて、色んな所を……ほっぺたや……身体で擦って……」

アイリーさんの豊乳を、桃尻を、思う存分揉みしだきたい。
そして、抱きつきながら、アイリーさんに頬擦りしたり身体を擦り付けたりして、思う存分甘えたい。

アイリーさんの胸の谷間に、むにゅむにゅと頬擦りしながら、欲望を晒け出していく。

「ふふっ……揉み洗いに、ほっぺただなんて……期待してますからっ……」

僕が欲望を晒け出すと、やはり、アイリーさんは嬉しそうにしてくれて。

「それと……お風呂の後も……アイリーさんと……一緒にいたいです……
アイリーさんが居ないと、寂しくて、落ち着かなくて……
それで、抱き締めて貰って……もう一度、アイリーさんの匂いを染み付かせて貰って……

その後も、ずっと……一緒に……傍に……一緒に……暮らしたいです……
たっぷり、アイリーさんに甘えたいです……」

アイリーさんが、僕を受け入れてくれているという確信。
それを得た僕は、アイリーさんへ、さらなる欲望、欲求をぶつける。
どんどん深みに嵌って行くのが自覚出来たけど、心地良くて、やめられない。
僕は、アイリーさんと一緒に、ずっと一緒に居たくて、堪らなくなっていた。

「うふふっ……勿論、ぎゅーっ、ってしてあげますし、ずっと側に居ますし、喜んで、一緒に暮らしますよ……?

私は、身も心もスライさんの物ですもの……
どんな時でも、好きなだけ甘えて良いんです。
いえ、甘えて欲しいんです……スライさんに甘えられるの、とっても幸せですからっ……


それに……スライさんは私の物ですから……
ずっと……私の傍に居てもらいます。
お料理の時も、お店のお仕事の時も、私の目の届くところに居るか、私に巻きつかれてて貰いますから……
ふふっ……外に出る時は、ぜーんぶ私とのデートにしちゃいます……
夜も、たくさんたくさん、精液、注いで貰いますからねっ……?
どんな時でも、ずーっと、一緒です。
絶対に、離したりなんか、逃がしたりなんかしませんよ……?」

一緒に暮らしたい、という僕の言葉に、アイリーさんは、恍惚めいた、幸福を孕んだ声色になって。
堪らなく魅力的なその声は、僕に幸福を返してくれる。

僕はアイリーさんの物で、アイリーさんは僕の物。
四六時中一緒の、二人の生活。
アイリーさんの語るそれは、とても甘美に頭に響く。
剥き出しの独占欲も、それは深い愛情の裏返しで。
好きなだけアイリーさんに甘えても良い。
僕が甘えれば、アイリーさんは幸せになってくれる。
四六時中一緒なら、もっと、もっと幸せそうにしてくれるだろう。

「うふふっ……ふふふっ……
愛してますよっ、私のスライさんっ……」

胸に抱きついたまま、首を動かし、上を向けば、アイリーさんは、今まで見た中で、一番幸せそうな表情をしていて。
感極まったかのような愛の言葉も、それに勝るとも劣らない幸福を僕に伝えてくれて。
それは、やはり僕を、素晴らしく幸せにしてくれる。

そして、僕の中には、もっと幸せなアイリーさんを見たい、もっとアイリーさんを幸せにしたい、という衝動が芽生えていて。
それは、間違いなく、愛と断言できる物だった。

「はぃっ……愛してます……僕のアイリーさん……」

僕が衝動のままに、愛の言葉を返せば、アイリーさんの表情は、先程よりももっと、幸福に染まり、蕩けていって。アイリーさんは、さらに魅力的になっていく。
そして、それに見惚れる僕の心もまた、幸福に蕩けていって。
こうして、僕達は、一緒に幸せになっていくのだった。
14/03/02 10:34更新 / REID

■作者メッセージ
CGIの方では半年ぶりとなります、REIDです。
合同誌「堕落の花嫁」を宜しくお願いします(ステルスじゃないマーケティング

今回は、ヤンデレ気味なラミアさんを書いてみました。
また、図鑑絵のイメージとは違った、おっとりラミアさんです。
おっとりおねーさんも大好物です。
女性の方が大きい身長差セックスでしたが、それも僕の趣味です。
おねショタとかじゃなくて、普通の身長差が好きです。大きい女性が好きです。
繋がりながら、おっぱいに顔を埋めたいです。
そして甘々に搾られたい。

また、ラミアさんの魔声の設定を今まで活用できてなかったので、
今作ではそれも意識して書いてみました。甘々な感じで。これが難しい。
魔声を多用すると、重複表現避けるのが非常に。非常に難しい。

また、どうでも良い事ですが
She Loves Youの頭文字を取ってSly→スライ
I Love You の頭文字を取ってIly→アイリー
というネーミングでした。


次に執筆するのは、恐らくエロフさんになります。
今までとはちょっと違ったお話の運び方の予定。
ただし、いつも通り、女性上位なのは変わりませんが。

もしかしたら、その前に、ドッペルゲンガーちゃんや、新刊のあの方や、ヴァンパイアさんになるかも?

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