読切小説
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彫刻家と蛇女
吹き荒れる砂嵐。
もう丸一日、止まない砂嵐の中をさまよっている。
バックパックの中には地図と商売道具と空の水筒だけ か…

「なんで…こんな事に…」
体が重い。足が動かない。熱で意識が朦朧とする。
目の前が霞んで…















「ぅ…」

あれ…生きてるのか…?

「目が覚めたみたいね。私はリトリア。ラミアよ。アナタ、名前は?」
若い女性の声に目を開く。

金髪の美しい、妖艶な女性がこちらを覗き込んでいた。歳は、25歳ぐらいだろうか。
視界の端には、確かに蛇の胴体が見える。
どうやら、彼女に助けられたみたいだ…

「ジェイク、です…」

「ジェイクね。体の調子はどうかしら?」

喉の渇き、脱力感、空腹感。
相当酷いな…

「あまり良くないみたいね」
気取られた。

「パンと水を持ってくるわ、待ってなさい」
と言い、部屋を出て行ってしまった。


「とりあえず、部屋の中でも見渡すか…」
上半身を起こす。

今、寝ているベッドのすぐ側には、テーブルがある。
他に、これといったものは無い。
部屋も狭いし、どうやら寝室っぽさそうだ。

「外は…おぉ」
窓から外を覗く。
暮れつつある太陽。小さなオアシスとその周りに生える植物。
道理で砂漠にしては涼しいのか。

「大したものじゃないけど、食べなさい」

彼女が部屋に入ってきて、テーブルに、パンと水の入ったコップを置く。

「十分過ぎます、リトリアさん」

「リトリア、で良いわ。あと、敬語もやめて頂戴」

「…十分過ぎるよ、リトリア」

「よろしい。 はい、お水」
コップを差し出された。

「どうも」
一気に飲み干す。

「っはぁ…」

生き返った…
ただの水が、美味い。
胃が動いてるのがはっきりと分かる。
それほど、胃が空だったのか…

「いい飲みっぷりね。まあ、砂漠で倒れてたんだから当然と言えば当然かしら。
ほら、もう一杯飲みなさい」
コップに水が注がれる。
「どうも」
また飲み干す。
「はい、パンよ。ナツメヤシのジャムは好きかしら?」
今度はパンを差し出された。
甘い香りがするジャムらしきものが塗ってある。
「食べたことが無いんで何とも… いただきます」

パンを口に運ぶ。
甘酸っぱい味が口に広がり、食欲を刺激する。
「美味い…」
思わず呟く。


「はい、もう一つ」

「あ、どうも」
またパンを差し出された。

うん、美味い。



あっという間に食べ終わってしまった。
空腹は最高の調味料とは正にこの事だなぁ…

「ご馳走様でした」

「お粗末さまでした。しかし、なんで砂漠で倒れていたのかしら?」

ああ、そういえばまだ説明してなかったな。

「東の村に行く途中、あの酷い砂嵐に遭って、丸一日砂嵐の中をさまようハメに…
 砂嵐なんて滅多に、ましてや1日じゅう吹き荒れることなんて無いと聞いていたんだけどね
 まさか、片道3時間の距離でああなるとは思いもよらなかったよ」

まったく、運が悪かった…

「東の村?随分逸れたわね。 ここ、砂漠の真ん中よ?」
床に置いてあった俺のバックパックから地図を取り出し、砂漠の真ん中のあたりを指差す彼女。
どうやら、地図にここのオアシスは載っていないみたいだ。

「これまた随分逸れた方向に…」

「まったく、ね。 しかし、私が拾ってあげなかったら、間違いなく野垂れ死にしてたわよ?」

「面目無い……ふぁぁ…」

大きな欠伸をする。
腹が膨れたら眠くなってきたなぁ。
日も暮れた、未だ疲れも酷いし、寝たい…

「眠たそうね。まだ疲れてるだろうし、寝た方が良いわよ?」


「それじゃあ、お言葉に甘えて眠らせてもらおうかな」
そう答えて、ベッドに横たわる。

「ええ、おやすみなさい」



明日は、彼女にお礼をしないといけないか。
まあ、とにかく寝よう。疲れた…






















「んぅ…」

目が覚めた。
体を起こし、伸びをしてみる。

体の調子は、本調子とはいかないにしても、まあまあかな。



「あら、おはよう。よく寝てたわね。丁度お昼の用意が終わったところだわ」

声のした方に振り向くと、食べ物が用意されたテーブルが見える。

「ん、おはよう… って昼…?」

「ええ、もうお昼よ? 本当に疲れてたのね」

「かたじけない…」
ジャムを塗ったパンと、ナツメヤシのジュース、サンドイッチ。
挟んであるのは、塩漬け肉とチーズか?

「昨日とあんまり変わらないけど、文句は言わせないわよ? 
 里に食材を調達しに行こうと思ったらアナタが倒れていたんだから」

「申し訳ない…」

「まあ、とにかく食べなさい。お腹、空いてるでしょう?」

「それじゃあ、有り難くいただきます」
ベッドから降り、椅子に座る。

「ええ、いただきます」







「ご馳走様でした。サンドイッチ、美味しかったよ。
 チーズと干し肉って、結構合うね」

「お粗末さまでした。私も好物なのよ、コレ」


「さて、商売道具は っと…」
昼食を済ませ、床に置かれたバックパックの中の、彫刻道具と木材を確認。

「さて、一宿一飯、そして命を助けられた恩義に人形を彫りますか…」
呟いて、木材を手に取る。

「人形って、あなた、彫刻家なの?」

「旅がてら、これで食い扶持を稼いで」

「あら、そうだったのね。それで、私の人形を彫ってくれるのかしら?」

「他に彫って欲しいものが無いなら、そうさせてもらおうかな」

「それじゃあ、お願いしようかしら。綺麗に頼むわよ?」
ベッドに上がり、とぐろを巻く彼女。

「女神に嫉妬されても知りませんよ?お客さん」
冗談を言い、彫刻刀を手にとり、木材を大まかに削っていく。

「それにしても、アナタは私に物怖じしないのね…。
 魔物の私に、そうして冗談を言ってくれたのも、アナタが初めてだわ」
微笑みを返してくれた。

「旅をしていれば、魔物と人間が共存する街に滞在することも、少ないながらあるわけで、
『魔物が人を殺し、喰らう』なんてのが教団の嘘だってことぐらい分かるさ。
 そもそも、現にこうして助けられてるわけだしね」
 
「そうでも無いわよ?
 私が今まで会った人間が私を見るなり発した言葉が『化物』。
 酷いと思わない? アナタのように砂漠で倒れていた所を助けてあげた時も よ?
 あまりにも不愉快だったから、身ぐるみ剥いで、街の近くに捨ててやったわ」

怖いことを仰る…

「それ、余計に恐れられるんじゃあないか…」

「そうかも知れないけど、取って食われるとでも思ってるのかしら?馬鹿馬鹿しい」

明らかな怒りと悲しみの色が見える声。
化け物扱いされ続けてるんだ、怒るのも仕方無いだろう… 

「この辺の町は反魔物体制だったかな… ああ、北のほうは親魔物だったか。
 ともかく皆、『魔物が人を殺し、喰らう』と信じてるらしいからタチが悪い。
 あ、背面を彫るから後ろ向いてもらっていいかな」

あまり楽しい話題じゃない、話を切り上げよう。

「ええ、構わないわよ?」

向きを変え、さっきと同じ姿勢をとる彼女。

「話は変わるけど、この辺で美味しい食べ物って何があるんだろうか?
 旅をするからには、やはりその地域ごとの………  














「よし、これで大まかな形は出来た…」
単なる木材だった物が、人形と呼べるような代物になった。
まあ、人じゃないんですがね。

「また、向きを変えてもらっていいかな」

「もう形になったの?早いのね」

彼女がこちらに向き直る。

「今から細かい部分を彫り込むんだ。まあ、ここからが本番かな」

小さい彫刻刀に持ち替え、彼女をじっくりと見る。

腰にまで達する美しい金髪、少し釣り上がった、黄水晶のように透き通っている目。
小さくもふっくらとした艶やかな唇に、ほんの少し朱に染まっている頬。
シミ一つ無い肌、豊満な胸、完成された腰のくびれ。それを見せつける服装。
妖しく光を反射する鱗は、それが滑らかな感触であることを思わせる。

しかし、一目見た時から綺麗な人だと思っていたが、こうじっくり見ると… 
魔性の美しさというか、人間離れした…

うん、綺麗だ…











「手、動いてないわよ?」

「え?あ、ああ…」
しまった、つい見惚れて…

「ふふっ… 見惚れていたのかしら?」

「面目無い…」
止まっていた手を動かす。

「もっと見惚れてくれて良いのよ。 こうして見惚れてくれたのもアナタだけなんだから…」
返答に困るな…
いや、まあ、悪い気はしないんだけどさ。
どうも、好意を寄せられることが苦手というかなんというか…
まあ、旅ばっかりで色恋沙汰は皆無なんだ、致し方ないか。

「はぁ…さいですか。
 そういえば、『里』ってのは?」

とりあえず話題を変えよう、うん。

「私達ラミアが住む里よ。
 私みたいに里の外で生活する子もいるけど、
 大抵の場合、特に夫持ちの場合は里で生活してるわ。
 そうね…人間の足ならここから大体2時間、私達ラミアなら、1時間もせず着くかしら」

「…近いね」

「ええ、今すぐにでも行ける距離よ?」

意味有り気な笑み。

『ラミアは気に入った男を里に連れ帰る』 か…
多分、本当なんだろう。恐らく、気に入られている。

このままでは貞操と自由の危機だ。


さて、どうしたものか…
いくら彼女が美しくても、持ち帰られるのは流石に困る。
下手したら、一生里の中で生活 なんて事も有りうるワケで。
少なくとも、旅を続けることは出来ないだろうな…

とはいえ、彼女が助けてくれなかったら野垂れ死にしてたのは事実なわけで、
人形1つ作ってサヨナラじゃ、恩知らずと言わざるを得ないか…

「どうしたの?険しい顔をして」

「ちょっと考え事を…」

ああ、顔に出てたのか…
とりあえず、人形を彫り終わってから考えよう。

礼は、しなきゃならない。


「そういえば、アナタは何故彫刻家になったの?」

「俺、捨て子だったところを師匠に拾われてさ、
 ガキの頃から彫刻の技術をみっちり叩き込まれたんだ。
 彫刻家として育てられた と言うべきかな」
 
「あ、ゴメンなさい…」

「いや、謝らなくても良いと思うんだ。
 俺は気にしてないわけだしさ。 
 
 でもって、15歳まで師匠と一緒に旅をしてたんだけど、
 『お前はもう一人で食っていけるはずだ、精進しろよ』と言われてそれからは一人旅。
 餞別として、この彫刻刀と金を渡されたんだ。
 それからは、旅がてらに彫刻品を売ってたんだけど、
 生活費と旅費を稼ぐのが精一杯で、とても師匠のようにはいかなかったね。
 二十歳の今になって、余裕が出てきたかな… って感じさ。
 餞別に貰った金は、まだ手をつけて無くてさ、
 それを元手に、貿易街に自分の店を構えたいんだ」


「自分の店、ね…」

「まあ、店を構えるには未だ未熟なワケですが」

「未熟って…こんなに巧いじゃない」

「師匠に比べれば児戯に等しいさ。
 あの人が1日で仕上げた作品は、俺が一ヶ月かけて仕上げた作品に優るんだからね…
 本当に人間かと疑いたくなるよ。

 …さて、本腰入れますかね。
 申し訳ないけど、集中するから、できれば話しかけないでくれるとありがたいかな」

「ええ、分かったわ」

無心に、彫り続けよう。






「………」
俺のつま先から頭のてっぺんまで、蛇のように、全身に視線を這わせ、満足気な笑みを浮かべる。

会話をやめてから、彼女はずっとそれを繰り返している。
「………」

こうもじっくり見られると…
なんだろう、彼女の所有物になったような気が…

って何考えてるんだ俺。
彫ることに集中だ、集中。
礼は、きっちりとしようか。



















「よし、これで…完成だ」
最後の仕上げを終える。


うん、ここ最近で一番と言っていいぐらいの出来だな。

しかし、もう日が暮れたのか…


「命を救われておいて、これじゃ不足だろうけど、お礼として」
彼女に人形を手渡す。

「ふふっ… 良い物貰っちゃった… こんな素敵なプレゼントをしてくれるなんて…」
うっとりとした目で人形を眺める彼女。

「はあ、どうも…」

喜んでくれるのは嬉しいんだけどさ。

気に入られれば気に入られるほど、彼女が俺を逃してくれる事は無くなるわけで…


「そうね… アナタの人形ってあるかしら?」

何か考えるような仕草をした後、尋ねてきた。

「俺の人形? ああ、見本用のが…」

「じゃあ、それも貰っていい?」

「ああ、別に構わないよ。また彫ればいいだけの事だしさ」

バックパックから自分の人形を取り出し、彼女に渡す。

「アナタの人形って、コレ一つだけ?」

「ん、そうだけど?」

「なら、新しいのを彫っちゃダメよ?アナタの人形はコレ1つだけにしなさい」

「はぁ…、さいですか」

「ふふっ… 私だけのモノ…」
自分の人形のとぐろの中に、俺の人形を置いてご満悦の彼女。

もう開放されることは無いだろうな、人形の俺よ。
出来れば、俺の身代わりになってもらいたい…

「さ、もう日も暮れたし、晩ご飯にしましょう。
 立ってるのもなんだから座ってなさい」

そう言い、部屋を出る彼女。


とりあえず、ベッドに座る。

夕食の後、か…

この間に外へ逃げるか?

いや、どうせ追いつかれる。

いったい、どうすればいいんだ…

「はい、サンドイッチ」

そんな事を考えている間に、彼女が戻ってきた。
テーブルにサンドイッチの乗った皿が置かれる。

「あ、どうも」

うん、美味そう。
とりあえず、ご馳走になろう。

「それじゃあ………いただきます!」

「のわぁっ!?」
彼女が不意に跳びかかってきた。
ベッドに押し倒され、蛇の下半身に四肢の自由を奪われる。

「これじゃ、サンドイッチ食べられないわよね…?
 私が食べさせてあげるわ。
 はい、あーん」
口元に運ばれるサンドイッチ。

「え、あ、いや」
甘い髪の香り、肌の柔らかさと温もり、押し当てられた胸。

サンドイッチどころじゃない。

「照れなくても良いのよ?ほら、あーん」

「あ、あーん…」
サンドイッチを一口かじる。

恥ずかしい…

「ふふっ、可愛いわね… ほら、もう一口…」
もう一口かじる。
やはり恥ずかしい…

「恥ずかしいんだけど…」

「それが良いんじゃない。はい、あーん…」






「…ごちそうさま」
最後のサンドイッチを食べ終えた。

恥ずかしかった…

「美味しかったでしょう?」
満足気な笑み。

「…美味しかった。ごちそうさまです」

「お粗末様でした」



「ね、ジェイク… この後どうするか分かってるわよね?」


「………」

「嫌、かしら?」

「…そうだね、俺は旅を続けたい。
まあ、これを言ったとしても離してくれはしないんだろうけどさ…」


「ええ、勿論。
 化物呼ばわりせずに接してくれて、
 ましてや私に見惚れてくれて、
 あんな素敵なプレゼントまで…
 離す道理が無いわ…」
耳元で囁かれる。


『化物呼ばわりせずに』か… 
化物呼ばわりすれば愛想つかして開放され…

何を考えてるんだ、俺。
彼女を傷つけるじゃないか。
ああ、チクショウ、最低だな。

「……今、『化物呼ばわりすれば開放される』って思ったでしょう」

「っ…」

「図星、ね。
 思ったけど言わなかったって事は、私の事を気遣ってくれたんだ…
 やっぱり優しいのね、ジェイク…」


「…気を失うまで絞めつけられるのが怖かっただけだよ」

「気遣ってくれたくせに、素直じゃないのね… まあいいわ。
 
 それじゃあ、まずは上から脱いでもらおうかしら…」

「あ…」

拘束されたまま、腕、そして尻尾で服を剥ぎとられていく。
抵抗する間もなく、上半身を裸にされてしまった。

肌に触れる彼女の胴体はすべすべしていて気持ち良く、そして温かい。

「素敵ね、アナタ…」

「…っ!」

首筋と背中を淫靡な手つきで撫でられ、背筋を走る快感に思わず声を上げてしまう。

「あら…撫でられただけで感じちゃったの?
 本当、可愛いんだから…
 もしかして、初めてなのかしら?」

「……女性と付き合ったことすら、無いよ」

情けないことに、20になっても ね。

「それなら、キスもしたこと無いのかしら?」

「…そう、だね」

「それじゃあ、正真正銘私のものね…
 ファーストキスも、童貞も、私が奪って、そして、アナタを離さないわ…」

蛇の下半身と人間の上半身で、強く、抱き絞められる。
ほんの少しで唇が触れそうな、甘い吐息がかかるほどの距離。
熱のこもった黄水晶の瞳で見つめられ、強制されたかのように彼女の眼から視線を外せない。

「ふふっ… ファーストキス、貰っちゃうわね」

「んっ…」
唇を塞がれ、先が二股の蛇の舌が、強引に口の中に侵入してくる。

「んっ… んちゅ…… んんぅっ…! ちゅ…んぅん…!んぅっ!」
長い舌が口内を這い回り、俺の舌を絡めとっていく。
甘い唾液と、隅々まで口内を犯す舌。
今までに経験したことの無い快感に襲われた俺は、抵抗することも、息苦しさも忘れ、
彼女にキスをされるがままに…


「っはぁ…! ああ…」
彼女の舌と唇から開放され、長く、甘く、激しいファーストキスを終える。

キスって、気持ち良い…

「…ふぅ。 これで、ファーストキスは私のものね…
 そんなに蕩けた顔をしちゃって…気持ち良かったでしょう?」

「あぁ………うん………気持ち良かった…」

「それじゃあ、今度は… 童貞を奪っちゃうわよ?」
腰の辺りの絞めつけが緩まり、ズボンが脱がされていく。
キスの余韻に浸り終えた頃には、既に全身の服が脱がされていた。

「こんなに立派になっちゃって… 早く気持ち良くしてほしいのよね?
 ねぇジェイク、アナタ、何日分溜まってるのかしら?」
キスで堅く張り詰めた俺の肉棒を見て、尋ねる彼女。

「…3週間」

「そんなに溜まっているのなら、さぞかし濃いんでしょうね…
 たっぷりナカに出してもらうわよ…?」

彼女の腰に巻かれた布が取り払われる。
あらわになった濡れた秘所。
そして、彼女は一気に腰を落とし、蜜壷に俺の肉棒を突き入れた。
「あぁ…」
ヒダがひしめく彼女の蜜壷。
ただ挿入させられただけでヒダが擦れ、快感を与えられる。

「さあ、キモチ良くしてあげるわ…」
肉壁がうごめき、ねっとりとヒダが絡み付いてくる。
そして、亀頭をちゅぷちゅぷと吸い上げる子宮口。

「っ…!? あぁぁぁぁ…!」
今まで味わったことの無い、とろけそうなほどの快感。
呆気無く、俺は彼女の中で果ててしまった。

「ふふっ… 童貞も奪っちゃった…
 どう?気持ち良かったでしょう?」
蜜壷での責めが止んだ。

「ぁぁ……気持ち…良かった……」
快感にとろけた意識で、答える。

「気持ち良かったのね?
 それじゃあ…まだまだ出してもらうわよ…」
俺の手足を胴体で拘束しながら、腰を激しく、何度も打ち付ける彼女。

「ぁぁぁぁあぁぁぁぁぁああぁああ!?」
彼女が腰を落とすたびに、絡みつくヒダが肉棒を擦り、コリコリした子宮口が亀頭にぶつかる。
そして、彼女が腰を浮かすたびに、離れていく肉棒を逃がさないように、
子宮口が吸盤のように亀頭に吸い付き、吸い付き… 無理矢理引き抜かれ…
彼女の魔性の膣の責めを受け、まるで壊れた蛇口のように、俺は精液を吐き出し続けていた。

「やめてぇ…!気持良すぎておかしくっ………」

「そんな可愛い声を出して… たっぷりナカに出してもらうって、言ったはずよ?」
恍惚の笑みを浮かべる彼女は、懇願する俺を容赦なく犯し続ける。

「ぁぁああああぁぁあぁあああぁぁ!」
ただひたすらに、彼女の中で、絶え間なく絶頂させれられ…
限度を超えた快楽に、俺は気を失った。








 










「ぅぅ…」
……寝よう…

「やっと起きてくれた… やっぱり、昨日は少しヤり過ぎちゃったみたいね」
リトリアの声。

「ぅぁ…」
声にならない呻き声。

「寝ぼけてるの?ほら、起きなさいっ」
身体を揺すられ、不明瞭だった意識が徐々にはっきりとしてきた。

ああそうだった…俺、気を失って…

「もう少し寝かせて…」
身体が重い… 

「もう… とにかく起きなさい」
またもや揺すられる。
寝かせてくれないなんてひどい…


「寝る…     ん…?」
今着てる服、俺の服じゃ無いよな…?
それにこのベッド、彼女の家のベッドと感触が…

目を開いてみると、白いベールの向こうに彼女の顔が見えた。
視線を動かすと、純白のウェディングドレスを着ている彼女。
え、ウェディングドレス…?
でもって、俺が着ているのは…タキシード?

「え…? なんで? なんでそんなの着てるんだ? なんで俺タキシードなの?ココ何処?」
予想外の状況に飛び起き、
うわずった声で彼女に質問を投げかけていた。

「結婚式よ。アナタと私の、ね。
 あ、ココは私達の里よ。
 アナタが眠っているうちに運ばせてもらったわ」

「もう一回言ってくれないか…?」
結婚式って聞こえたんだが… 

「あら、聞こえなかったのかしら。
 アナタと私の結婚式、よ」
耳元で囁かれる。

「いや、ほら、 会ってからまだ3日じゃないか、もっとお互いの事を知ってから…」

「ねぇ、ジェイク。 私のこと、嫌いかしら?」

「いや、嫌いってわけじゃなくて…むしろ、好きな方だけど……」

「好きなら何も問題は無いじゃない。
 ほら、行くわよ?」

「のわぁ!?」
彼女はその細腕に見合わぬ力で俺を抱き抱え、いわゆるお姫様抱っこの状態にする。

「ふふっ… 私のジェイク…」
目を細め、俺を見つめる彼女。

「あ、いや、降ろして!?」

そして、彼女に抱き抱えられたまま家を出ると…広場に出た。


「あ、やっと来た来た」

「遅いわよ、リトリアー」

「へぇ…あれがリトリアの婿かぁ…」

「やっと登場したのね?待ちくたびれたわよ」

「おお、お仲間だ」

「受け入れれば、幸せになるぞ青年」

「お姫様抱っことは、お熱いねぇ」


広場に出た途端、俺達を取り囲むように、人が集まってくる。
10人ほどのラミアと、5,6人ほどの男達。
1人だけ、祭服を着たラミアが居る。

「リトリア、降ろしてくれないか?」
お姫様だっこされたまま、これだけの視線に晒されるのは、恥ずかしい。

「仕方ないじゃない、さっきまで彼が寝てたんだから」
とリトリア。
無視しないで…

「静粛に、今より式を執り行います」
祭服を着たラミア、恐らく女牧師の言葉に場が静まる


「…リトリア、彼を降ろしましょう」

「あ、そうね。 もう少し抱いていたかったんだけど…」
お姫様抱っこから開放された。

「…恥ずかしかった」
眼でも訴える。

「それが良いんじゃない」
一蹴された…

「準備はよろしいですか?」
と牧師。

「ええ、問題ないわよ」
とリトリア。
俺の都合は…どうやら聞いてくれなさそうだ。

「それでは、早速ですが誓いの言葉を…

 汝リトリアは、この男ジェイクを夫とし、良き時も悪しき時も、富める時も貧しき時も、
 病める時も健やかなる時も、共に歩み、他の者に依らず、死が二人を分かつまで、
 愛を誓い、夫を思い、夫のみに添うことを、誓いますか?」

「誓います」
牧師の問いに、一片の迷いもなく誓う彼女。
そして、その黄水晶の瞳を俺に向ける。

『諦めなさい』

眼がそう言っている。


「汝ジェイクは、この女リトリアを妻とし、良き時も悪しき時も、富める時も貧しき時も、
 病める時も健やかなる時も、共に歩み、他の者に依らず、死がふたりを分かつまで、
 愛を誓い、妻を思い、妻のみに添うことを、誓いますか?」


「こうなったら、潔く か。 …誓います」

どうせ、足掻いてもどうにもならないんだ、仕方ない。
潔く、彼女の夫になることを受け入れよう。

「それでは、誓いのキスを」

「ジェイク、目を瞑って…」

言われた通りに、目を瞑る。

彼女が巻き付いてきて、顔に吐息がかかる。
肩に手が置かれ、唇に柔らかい物が触れ…そして離れた。

「新たなる夫婦に、幸有らんことを」
牧師の声。

「これで夫婦ね…
 もう逃がさないわよ、私のジェイク…」

目を開いた先には、幸せに満ちた笑みを浮かべるリトリア。
言葉通りに俺を強く抱き絞めて離さない。


これで『夫婦』か… 
旅、もう少し続けたかったんだけどなぁ…
まあ、こうして彼女に抱きしめられるのも、彼女の笑顔を見るのも、悪くはない、な。

「………幸せにしてくれよ」
諦観と期待の入り交じった声で応える。




こうして、俺は彼女の夫になった―――













「ありがとうございましたー」

「ありがとう、ジェイク殿」

「お幸せになー」

人形を片手に店を出て行くリザードマンと、その夫を見送る。

「今日はこれで店じまいだな」
外に出て、扉に『閉店』の札を掛ける。

太陽はまだ沈んでいないけど、これでも遅いぐらいか。

二階に上がり、寝室に、彼女の元に向かう。

「遅い、待ちくたびれたわよ」
寝室に入ると、彼女が出迎えてくれた。

「そんな事言う割には、素敵な笑顔じゃないか」
思った通りのことを伝えて、ベッドに座る。
彼女も俺の横に座り、身体を寄せる。

「結婚記念日なんだから当然でしょう?」

「そうだな… あれから一年、早いもんだな」

「いろいろな事があったわね…」

「結婚式の後、渋るお前を拝み倒してこの街に引っ越して、店を構えて、さ」

「住んでみたら、良い街だったのよね、これが。
 活気に溢れているし、なにより、食べ物が美味しいんだもの。
 砂漠に住んでいたら、新鮮なお魚を食べる機会なんて無かったでしょうね。

 ただ… 私だけを見つめていて欲しいのに、
 アナタが他の女の相手をするのはいただけないわね。
 特に最近、客が多いじゃない」

「彫刻は仕事であり、趣味なんだ、許してくれよ。
 それと、店が繁盛するのは素直に喜んでくれないか?」

「まあ、あなたが浮気しないことはよく分かってるわよ。 
 なんせ、私に抱き絞められないと寝付けないんだものねぇ…?
 喧嘩をした日の夜、
 『独りは寂しいんだ…抱き絞めて…』
 って言ってきたあなたの顔は忘れられないわ…
 本当に、可愛かったわよ」

「喧嘩したのは、悪ふざけで俺の腕を折りかけたお前のせいだったんだけどな。
 俺が謝る道理は無いはずなのに、何故か俺が謝ってさ…
 うん、理不尽だった」

「理不尽だと思うなら、独りで寝たらどうかしら?」

「…ずるいよ、リトリア」

「寂しがり屋なアナタが悪いのよ」

「寂しがり屋にさせたのはお前じゃないか…」

「だから責任をとって、毎晩毎晩、愛してあげてるじゃない」

「…そうだな。

 
 少し、待っていてくれないか?すぐ戻るから」

「あら、どうしたの?」

「ちょっと、ね」


寝室の扉を開け、自室に向かう。

「よし…」

机の引き出しから小箱を取り出し、寝室に戻る。
そして、先程と同じく、彼女の横に座る。

「…1年遅れで悪いけど、結婚指輪だ」
小箱を開け、一対の結婚指輪を彼女に見せる。
黄水晶が埋め込まれたプラチナの指輪には、蛇をモチーフにした装飾が施されている。

「ジェイク……」
少し潤んだ眼で見つめてくる彼女。

「…手、出してくれ」

「ええ…」

前に出された彼女の左手。
その細い薬指に、そっと指輪をはめる。

そして、彼女にもう1つの指輪が入った小箱を渡し、左手を前に出す。
「…はい」
彼女の手によって、薬指に指輪がはめられた。


「………」
無言で見つめ合った後、彼女を抱き寄せ、そっと唇を重ねる。

「愛してる、リトリア」

「私もよ、ジェイク…」

そのままベッドに倒れ込み、彼女を抱きしめる。
彼女も、俺に巻きつき、抱き絞める。

暖かな幸せに包まれながら、改めて思う。


『身も心も、彼女に捕らえられたんだな…』 と。
12/02/04 22:37更新 / REID

■作者メッセージ
夏休みの作文で毎年泣いていた自分がSSに挑戦してみました。
駄文極まりないでしょうが、楽しんでいただけたならば幸いです。

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