三夜目:ヘルハウンド(時々ドラゴン) 中編
「…なるほど、大体事情はわかった」
なみなみと注がれたビールを飲み干し、ローレットは空になったジョッキを置いた。普段から強い酒を水のように飲む彼女にとって、この程度は口を湿らせる程度にしかならないらしい。
場所は変わって、銀雪館から反対側の通りに位置するローレットお勧めの大衆食堂。夜も遅い時刻とあって、宿屋に近いこの店は多くの観光客や行商人達で溢れかえっており、かなりの喧騒に包まれていた。
そんな店内の隅っこに、マルク達の姿はあった。マルク、ローレット、クラウディア夫妻、グレアと五人でテーブルを囲み、美味な料理と酒を楽しみながら、昔話に華を咲かせているところであった。
しかし、約二名ほど、どことなく殺伐とした雰囲気も否めないが。
「つまり……あれだな。お前が一時期マルクを育てていたが、生活苦のあまり、知り合いだったクラウディアのところに泣き叫ぶマルクを無理矢理連れていき、身体で稼がせていたと……」
「何の話を聞いてたテメェッ!!」
グレアの手から鋭く放たれたナイフを、ローレットは人差し指と中指で挟み楽々とキャッチ。くるりと手にしたナイフの向きを変え、手元の皿に盛られた肉に突き刺した。
彼らが話していたのは、マルクがクラウディアの元へやって来ることになった経緯。親を亡くし、一人で暮らしていたマルクをグレアが見つけ、二年間ほど一緒に暮らした後、クラウディアに預けたのだという。
預けた理由は、グレアの生業にある。彼女は現在こそ大きな盗賊団の頭領となっているものの、マルクと出会った頃には一人でしがない野盗をしていた。当時幼いマルクを育てるにはあまりに環境が悪いと、やむを得ずクラウディアに預けたということであった。
彼らが夕方頃から食事を始めて、既に外は真っ暗闇。酒も進みに進み、良い感じにーーーいや、悪い感じに酒が回ってきた頃であった。
「おや、違ったか。確か……ああ、そうだ。お前の世話にほとほと疲れ果てたマルクが、共に暮らすよりはマシだと男娼の世界へと足を踏み入れるためにクラウディアを訪ねて……」
「テメェ……いいかげんにしねぇとマジで切り刻むぞ……!」
「グレア、落ち着けって。面白がってからかってるだけなんだよ、あいつは」
「ローレットさんも、あんまり変なこと言わないで下さい。グレアさんは僕の恩人なんですから」
ギチギチと爪と牙を鳴らして威嚇するグレアをアークが落ち着かせている間に、マルクはローレットをやや厳しめの口調で諌めた。
やはり、自分が信頼している人物の一人を貶されては、少なからず好意を寄せているローレットであっても気分が悪いというものである。
だが、にもかかわらずローレットの態度は平然としたもの。それどころか、どこか満足げな様子でナイフに突き刺した肉に食らい付いた。
「はぐ……んっ、なぁに、わかっている。マルクの恩人であれば、その妻たる私の恩人も同然だ。感謝しているに決まっている」
「その割には態度に出てねぇな……ってか、おい。なんか聞き捨てならねぇ台詞が……ん?おい、マルク。お前全然食ってねぇじゃねぇか。ほら、切り分けてやるからどんどん食えよ。今日は全部、この女の奢りなんだからよ」
「だ、大丈夫ですって。もう僕お腹いっぱいですし」
首を振るマルクだが、それでもグレアはお構い無し。いきなり彼の腕を掴み、その感触から腕の太さを確かめ、さらに腹回りを撫で回した。
「ほら!なんだこのほっそい腕!ガリガリじゃねぇか!いいから食えって!お前背もちっこいんだから、もっと食わねぇと!」
食べやすいよう一口サイズに切り分けては次々とマルクの皿に盛られていく。たちまち山となるが、満腹というのは本当らしい。げんなりとマルクは溜め息をつきながら、恩人の好意を無下には出来ぬとゆっくり肉を口に運び始めた。
そんなこんなで夜は更けていき、他の客達もポツポツと席を立ち始める。やや空席が目立ち始めた頃、マルク達のテーブルにもちょっとした変化が訪れていた。
「んっ……ぅ……」
そろそろ、少年には辛い時間帯であったようだ。酒の席が始まってから舐めるように果実酒を味わっていたマルクの瞳が虚ろになり、こくりこくりと身体が船を漕ぎ始めた。
「あー……そろそろ、マルクは連れて帰るか。俺が店まで送ってくから、お前らはまだ飲んでてもいいぞ。ほらマルク、起きろ。帰るぞ」
「ん、んんぅ……はぁい……」
寝惚け眼を擦りながら、マルクはアークに抱えられて椅子から立ち上がった。
この時間帯、酔っ払った少年一人でこの街の通りを歩くのは自殺行為に近い。店を出て三歩も歩く内に拐われて、気付いたらベッドの上で誰かに乗られてました、というのが日常茶飯事なのが魔王城城下町である。
「む……ならば私が送っていこう。元勇者のお前だけでは不安だ。マルクに近寄る者は、全て私が蹴散らしてくれる」
「狼に羊を預けるバカがどこにいるんだよ。いいから、そのまま座って飲んでろ」
「ごめんなさいね、アークさん。あとはお願いね」
立ち上がり掛けたローレットの肩を押さえ込み、アークはマルクと共に一足先に店から出ていってしまった。
彼らを見つけて、すかさず数人の魔物達が追跡に走ったが、わざわざ既婚者を相手に暴挙に及ぶことはないだろう。アーク達を見送り、クラウディアはワイングラスを手元で弄びながら溜め息を吐いた。
「はぁ……早いものね。マルクちゃんがウチに来てから、もう五年になるのかしら」
「ああ、そうだな。次会う時にオッサンになってたらどうすっかな〜……いっそのこと、三日三晩快楽漬けにして先にインキュバスにしちまうか」
「またまたぁ、そんなつもりなんてないくせに〜」
上機嫌に笑いながら、クラウディアとグレアは言葉を交わす。すると、そこへ何かに気付いたらしいローレットが顔を上げた。
「むっ……おい、待て。マルクは一年ほど前から店で働き始めたのだろう?五年とはどういうことだ?」
この中で唯一、マルクの過去を知らないローレット。
基本的にクラウディアの店に出ている男娼達は、拾われて約一ヶ月以内に店に出ることが通常である。というのも、自分の食い扶持は自分で稼ぐというのが銀雪館の鉄の掟。働き始める年齢も、早い者は五、六歳から客を取っている。
しかし、マルクの場合はそうではない。逆算すると、マルクがクラウディアの元へやって来たのは彼が八歳の頃になる。その年齢であれば、既に男娼として働いていてもおかしくはなかった。
「あ、あのね……えーっと……」
返答に詰まり、誤魔化すような笑みを浮かべるクラウディアだが、それでうやむやに出来るほどローレットは甘くない。困り果てた彼女であったが、不意にその肩が叩かれた。
「…いいじゃねぇか、聞かせてやっても。コイツはマルクのお気に入りなんだろう?それなら、多祥なり資格はあると思うぜ」
そう助け船を出したのはグレアであった。彼女は酔いを覚ますように煙草に火を着け、煙を吐き出した。その眼差しは真剣で、ローレットを睨み付けるように見つめていた。
「だが……この話をマルクや他の奴に面白おかしく話してみな。テメェの軽い舌を切り刻んで、二度と口が利けねぇようにしてやる」
グレアの瞳が物語る、本気という二文字。誓いを破れば、確実にグレアは口にした言葉通りの行動を実行するだろう。
もっとも、さらさらその気は無いローレットにしてみれば、全く問題なかったのだが。
「見くびるな。私がそのようなことをするはずもない。さっさと話せ、酔いが覚める」
「ケッ……聞いた後で後悔すんじゃねぇぞ」
灰皿にグリグリと煙草を押し付け、グレアは天井を見上げた。昔日の思い出を振り返るように。
「アタシとマルクが会ったのは……七年前だ。その時のアタシは、一人で悪ぶってるチンピラだった……」
瞳を閉じると、今でも鮮明に思い出す。満月の月夜に、獲物を求めて深い森を歩き回っていた時。微かだが、匂いを感じたのだ。若い男と、それに混ざるもう一つの女の匂いに。
「それを辿っていくと、小屋を見つけた。森のど真ん中にポツンと建ってる、苔だらけのきったない小屋さ。アタシも、その時はまさかとは思ったんだが……」
間違いなく、匂いはその中だった。傾いた扉を開いて中に入ると、そこで見つけたのだ。
「アタシは、そこでマルクと、もう一人の女を見つけた。多分、母親だろうね。ベッドの上で、眠るように死んでやがった。マルクは、ジッと死んだ母親のベッドにすがり付いていたのさ」
涙も枯れ果てたのか、無表情のまま母親の死に顔を見つめる少年。声を掛けても一切反応せず、ずっと母親の遺体から離れなかった。
「アタシは、その女を弔った後、マルクと暮らし始めたんだが……」
マルクは、何も話さなかった。いや、話さないだけではない。水も食事も、一切口にしようとはしなかったのだ。さすがにマズイと、無理矢理口にさせたこともあった。
「初めの内は、それで何とかなった。だけど、二年後のある時……」
雨の降りしきる夜。狩りを終えて棲み家にしていた洞窟に戻ると、そこにマルクの姿は無かった。雨のせいで匂いもわからず、無我夢中で夜の森を駆け巡り、そしてようやくマルクを見つけたのだ。
崖の下で土砂に埋もれ、横たわるマルクの姿を。
「あの時……マルクは、きっと母親のところに行こうとしたんだろうねぇ。幸い、怪我も大したことはなかったんだが、アタシは情けなくなっちまったのさ。二年も一緒に居たってのに、アタシは……マルクに、生きる気力を与えてやれなかったのさ」
それからは、早かった。クラウディアにマルクのことを託し、ずっと陰から見守ってきた。すると、彼女の見立て通り、マルクは少しずつ生きる気力を取り戻していった。それでも、四年もの歳月を必要としたのだが。
「…まぁ、こんなところだろうね。どうだい、これがマルクの過去さ。面白い話じゃなかったろう?」
「…そうだな。だが、聞くだけの価値はあったとだけ、言っておこう」
そう言って、ローレットはグラスの中身を一気に煽った。
自分が知ろうとしていたマルクの過去は、こんなにも辛いものだったのだ。その過去に土足で踏み込もうとしていた自分の愚かさが、どうにも許せないのだろう。奥歯を噛みしめ、瞳は空になった皿に映る自分の顔を睨み付けていた。
「でも、グレアちゃんのおかげで、今のマルクちゃんがあるのよ。それだけは、忘れないでちょうだいね」
「ああ、まったくその通りだ。一時はどうあれ、気に病むことはないだろう」
「さぁて、どうかな……でも、アタシはマルクに償いがしたいのかもしれないね。だから、アタシは……」
グレアは、ぎゅっとテーブルの下で拳を握りしめる。その強い意思を感じさせる表情に、何かを察したようにローレットは瞳を細めた。
「…どうした?」
「いや、何でもないよ。アタシも、どうやら飲み過ぎたみたいだ。先に戻らせてもらうよ。ごちそうさん」
グレアは席を立つと、足早に店を出ていってしまった。
彼女の突然の行動に、クラウディアは不思議そうに首を傾げた。
「…どうしたのかしら、グレアちゃん。ちょっと様子がおかしかったような気がするけど……ローレットちゃんは、どう?」
「…さぁて、どうかな。まぁ、心配することはないだろう。私達は、もうしばらく飲むとしようか」
ローレットは空のグラスに並々とワインを注ぐ。何かに気付いているが、敢えてその方向へは目を向けない。そんな意思を、瞳に宿してーーー
「んっ……く……っ」
妙な寝苦しさを感じて、マルクは目を覚ました。アークに部屋まで送ってもらい、そう時間は経っていないはず。
ひとまず水でも飲もうと身体を起こそうとしてーーー失敗した。
「あっ……!?なに、これ……っ」
なんと、マルクの両腕は頭上でベッドの縁に縛り付けられているのだった。もがいてみるも、結び目はキツクほどけそうにない。痛みはそれほどではないものの、体勢的にかなり辛いものがあった。
「起きたか……マルク」
「え……っ?」
マルクが顔を向けた先には、ベッド横に置かれた椅子に腰掛けたグレアの姿。立ち上がった彼女は、マルクのすぐ横から顔を見下ろしてきた。
「グレアさん……どうして、こんなことを?何があったんです?」
「いや、何てことはないよ。ちょっとばかり、確認したいことがあるんだ」
グレアはベッドによじ登り、マルクの腰の上に馬乗りになる。身体を倒してお互いの吐息が掛かるほどの至近距離から彼の顔を見つめた。
「単刀直入に言うよ、マルク。また、アタシと一緒に暮らさないかい?」
「グレアさん、と……?」
思いがけぬグレアの言葉に、思わず尋ね返すマルク。彼女はさらに言葉を続けた。
「ああ、そうさ。アタシも、もうただのチンピラじゃない。子分を抱える、ここら一帯の大親分さ。お前に、もう寂しい思いはさせないよ。だから、もう一度アタシと暮らそう。五年前、お前を悲しませた償いをさせて欲しいのさ」
「グレアさん……」
押し付けられた身体から伝わる、グレアの体温。そして胸の鼓動がマルクの胸を叩いている。
彼女も、緊張しているのだ。マルクの次の言葉を待つだけで、これほど強く鼓動している。それだけ、グレアにとって今回の行動は思いきったものに違いない。
だが、それでもーーー
「…ごめんなさい、グレアさん。それは、出来ないです……」
「…どうしてだい?」
冷静を保った声色だが、その内に秘められた激情を感じる。それに気圧されることなく、マルクは言葉を続けた。
「僕は、グレアさんのことも大好きです。僕を育ててくれたことの恩も忘れたことはありません。でも……僕は、ここでいろんな人に出会いました」
このような因果な職業だが、本気で愛を語ってくれる人達がいる。そんな人達に何一つ返事を返すことなく、この店を離れることは出来なかった。
マルクが正直にそれを伝えると、グレアは自嘲気味に笑ってみせた。
「あ、はは……やっぱ、フラれちまったか。お前、真面目すぎるからなぁ……」
「ごめんなさい……でも、グレアさんにも、きっと恩を返していきますから。だから、待ってて下さい」
「いや、それなら今すぐ返してもらおうか」
「はい……?それって……んんっ!?」
突然、グレアの唇が重ねられた。マルクが顔を逸らせないよう両側から顔を押さえ、何度も角度を変えては深く唇を押し付ける。熱く熱を持った舌が口の回りを這い回り、やがて唇を割って入り込んできた。
「んっ、はぁっ……はぁむ、んっ……」
ずっと我慢していた食事を貪るような、激しいディープキス。お互いの口元が涎まみれになろうと一切意に介することもなく、グレアの舌はマルクの舌を絡めとり、唾液を交換するように掻き混ぜる。
押し返そうと伸ばされたマルクの舌を唇で挟み、吸ってやる。彼との口付けに没頭しつつ、グレアはマルクの服に手を掛け、煩わしいとばかりに破り捨てた。
「んっ……ふぁ……はっ……グレア、さん……?」
「ククッ……身体を重ねりゃ、考えが変わることもあるさ。アタシはお前を見つけて七年間、ずっとお預け食らってんだ。アタシに恩を返したいってんなら、今夜一晩たっぷりと付き合ってもらうぜ……!」
そう言うなり、グレアはマルクの身体にむしゃぶりついた。首筋、脇、乳首、臍に至るまでありとあらゆる箇所に満遍なく舌を這わせ、唾液を塗り付けていく。豪快な彼女からは考えられないほど、そのタッチは繊細なもので、初めは身体を強張らせていたマルクも、次第にその力が抜けていった。
「ちゅ……んっ……れるぅ……ちゅうう……っ」
「そこ、ばっか……いやぁぁ……っ」
執拗に乳首を吸われて、ちゅぽんと音を立ててグレアの唇が離れる。充血した乳首は真っ赤に腫れ、コリコリとした硬度を保っている。指で転がされると、それだけで電流が走ったような快感が駆け巡った。
「ああっ、くそ……可愛すぎだろ、お前……っ!こっちも、限界だ……!」
辛抱たまらんとグレアが上着を脱ぎ捨てると、豊満な肢体が明らかになり、拘束されていた乳房がたぷんと跳ねる。続けて彼女はズボンに手を掛け、下着ごと一気に引き下げるとーーーその瞬間、思いもよらぬ光景が。
「え……っ?」
マルクの目の前で、窮屈な下着の中からぶるんと音が聞こえそうなほど、勢いよく飛び出したのは紛れもなくぺニスであった。
長さや太さなどはマルクと比較にならず、赤黒いそれの亀頭は拳ほどもあろうかというエグいほどの大きさである。巨根という二文字がピッタリと似合うそれを、マルクは今の状況も忘れて食い入るように見つめていた。
「あ、あんまり見んなよ。これはアタシの、その……特異体質みたいなもんなんだからな」
よくよく見ると、クリトリスの部分がぺニスとなっているらしく、玉はついていない。普通は薬を用いることで擬似的にぺニスを作ることは可能であるが、グレアの場合は自然に出来た体質のようなものらしい。
グレアは見せ付けるように、その巨根をしごいてみせる。涎のように先走りが溢れ、ポタポタとマルクの腹に降り注いだ。
「グレアさん……おっきいですね……今までのお客様の中でも一番かも……」
「は……はっ、このアタシのが紛い物に負けるかよ。って、お前……こういう客を相手にしたことあんのか?」
「は、はい……まぁ、頻繁に……」
マルクがそう言うと、グレアは落ち込んだように肩を落とした。
しかし、即座に復活。悔し涙を浮かべながらマルクを睨み付ける。
「へ……へへ……じゃあ、今晩は思い知らせてやるぜ。他の奴らより、アタシのが一番だってなぁ!」
「ぐ、グレアさん、怖い……あっ!」
グレアはマルクのズボンをパンツごと引きちぎる。同時に、ぴょこんと可愛らしく顔を出したマルクの勃起したぺニスを前に、勝ち誇ったように笑みを浮かべた。
「一番人気、つってもここはまだガキだな。可愛らしいもんだ……」
「グレア、さ……ぁああっ!?」
グレアは赴ろに自分のぺニスとマルクのぺニスの亀頭を合わせ、グリグリと鈴口を擦り付ける。さらに細かい体毛で包まれた両手で包み込み、手の中でこねるように摩擦した。
「ぁ、あぅうっ!グレアさ、やめてぇ……!」
「あっついな……お前のチンポ……こっちまで火傷しそうだ……」
快楽の虜となってしまったように、グレアは亀頭を擦り続ける。溢れる透明な先走りが潤滑油となり、さらなる快楽を二人で享受する。
「あぁ、出る……出ちゃいます、グレアさん……!」
「あ、アタシも……ヤバい……出るぞ……っ!くぅうううっ!」
ほぼ同時に、二人は達した。しかし、放たれた精液の量は比較にならず、グレアのおびただしい量の精液が雨のようにマルクの身体に降りかかる。グレアの真っ黒な体毛にも白い精液がこびりつき、より扇情的にその姿を彩った。
「…グレアさん……どうぞ、こっちに……」
そんな彼女の姿に触発されたか、マルクは大きく口を開いて舌を精一杯突き出す。彼の口内は唾液で滑り、月明かりに照らされて淡く輝く。グレアは、ゴクリと息を呑んだ。
「ま、マルク……いいんだな?お前の口、使うぞ……?」
「…お願いします。グレアさんの精液、欲しいですから……」
「……っ!」
マルクが微笑んだ瞬間、グレアは自らのぺニスをマルクの小さな口に突き入れていた。
しかし、決して無理はさせない。マルクの口では亀頭を頬張るだけで精一杯であり、グレアはマルクの頭を押さえて亀頭だけの注挿を繰り返す。
代わりに、マルクは巧みに舌を動かした。押し込まれる動きに合わせて鈴口から裏筋を刺激し、引き抜かれるところに合わせて吸ってやる。
しばらく、荒いグレアの呼吸とねちっこい水音だけが部屋に響く。絶頂が近いのか、グレアの動きが徐々に加速を始めた。
「はぁっ!イクぞ、マルク!アタシの、アタシの精液、全部受け止めろっ!うぉおおお……っ!」
「んんっ!?んっ、く……っ」
物凄い量の精液が、洪水のようにマルクの口内を一瞬で満たした。口の端から溢れさせつつも、マルクは喉を鳴らして濃い粘性の白濁液を飲み込んでいく。思いの外生臭くはなく、どちらかというと、ほんのりと甘味すら感じる。やはり人間と魔物では、身体の構造に若干違いがあるようだ。
「だ、大丈夫か、マルク……?ちょっと出しすぎちまった……んっ」
グレアがぺニスを引き抜いた瞬間、僅かに残っていた分がマルクの顔に降りかかる。マルクは口の中一杯に溜まった精液を舌で分けるように少しずつ飲み込んでいき、遂に最後の一滴まで飲み干した。グレアの精液に顔を汚しながら、微笑んでみせる。
「ごちそうさま……です。グレアさんの、美味しかったですよ……」
「お前……ったく、可愛いやつだな……!」
感極まったグレアは、自分の放った精液が残っているにも関わらず、マルクに覆い被さり唇を押し付ける。
一心不乱に、二人は狂ったように唇を重ね、舌を絡ませる。その時、グレアは片手に握っていた小瓶の蓋を外し、手の平に中身の液体を注いだ。
すると、液体は彼女の手の上でぷるんとゼリーのような個体へと変化。何をするかと思いきや、グレアはマルクの菊門にゼリーを押し付けた。
「ひゃ……っ!?」
冷たい感触に、マルクから驚いたような声が上がる。
しかし、それだけではない。ゼリーは自らの意思でマルクの中へと潜り込み、時にその形を変化させながら腸壁を擦りあげてくる。
「ぐ、グレアさん!何ですか、これ……!?」
「何って……綺麗にしてやってんだろ。媚薬を混ぜた特製スライムだ。たまらねぇだろ……?」
スライムの触れた箇所が熱く熱を持ち、狂おしいほどの情欲に襲われる。マルクが身体をくねらせようが容赦なくスライムは腸内を移動し、前立腺を押し上げてきた。
「へへ……だいぶ解れてきたな。これなら、アタシのをぶちこんでも大丈夫そうだ」
「ぁ、あ……!壊れちゃ……壊れちゃうよ……!」
三本ものグレアの指が入り込み、入り口近くを拡張するように掻き回す。一度達したはずのマルクのぺニスは痛いほどに勃起しており、気付かぬ内に達してしまっていた。
十分に解れてきたところを見計らい、グレアは指を引き抜いた。さらにマルクの両足を抱え、ピタリと熱く熱を持った巨根の先端を菊門に押し付ける。
「いくぞ……マルク……アタシも、手加減してやれそうにねぇからな」
「うん……うん、きて……来てください、グレアさん……」
「んっ、く……いくぞ……っ」
ぐぐっと、グレアが腰を進めると菊門を抉じ開けて大きな熱の塊が入り込んできた。
スライムが潤滑油となっているせいか思いの外痛みはなく、代わりに強い快楽がマルクを襲う。それはグレアが腰を進めるにつれて大きくなり、脳に直接ビリビリと快感が駆け巡った。
「はぁっ……入っ、た……!」
ピタリと、グレアの腰がマルクに押し付けられる。あれだけの質量を小さな身体のマルクが受け入れたこと時点で驚くべきことで、彼の下腹部にはポッコリとグレアのぺニスの形が浮き上がってしまっていた。
「はぁっ……はぁっ、あ……んん……っ」
呼吸をすることすらままならないのか、甘い呻きを洩らしながらマルクは身を捩る。それだけでグレアに快感を与えているのか、彼女の背筋がぶるぶると震えている。
「んっ……どうだ、マルク……アタシの、気持ちいいか……?」
「気持ち、いいですよ……固くて、熱くて……身体の中から、溶けちゃいそうです……」
「お前……やっぱ、可愛いな……っ」
グレアは手を伸ばし、マルクの腕を拘束していた縄代わりのタオルを外す。同時に、ゆっくりと彼の中からぺニスを引き抜いていく。
「ぅあっ、あ……っ!」
腸がめくれ上がっていくような感覚に、マルクは身悶えする。しかし、グレアは休む暇も与えずに今度は腰を押し付けた。その二つの動作を、連続して続けていく。
スムーズな動きに繋がった部分からは卑猥な水音と肉がぶつかり合う音が弾け、掻き出されたスライムがシーツを汚した。
「はぁっ、あ……くぁっ……!マルク、気持ちいいか?どうなんだ?」
「いゃ、ぁっ、気持ち、いいです……凄く、気持ち良くて……頭が壊れそうで……!」
「そうか……アタシも、お前の中がギチギチ締め上げてきて、たまんねぇよ……!」
グレアも慣れてきたのか、一突きごとにマルクの弱点を看破。腰を突き出す角度を変えながら、執拗にその箇所を的確に抉っていった。
不意に、マルクの腕がグレアの首に絡み付く。潤んだ瞳で、彼女の瞳を見つめた。
「グレアさん……我慢、しないで下さい。もっと、気持ちよくなっていいんですよ……?」
グレアが負担を掛けないよう、動きをセーブしていることをマルクはすぐに察した。こうして身体を重ねることで少しでも恩を返せるのであれば、好きにこの身体を貪って欲しかった。
「マルク……知らねぇぞ。アタシが本気で腰振ったら、お前が壊れちまうかもしれねぇ。それでも、いいのか……?」
グレアの言葉に、マルクは強く頷いてみせる。それ以上、他に言葉を交わす必要は無いと、グレアの胸に顔を擦り付けた。
そして、これがスイッチとなった。
「ぐ、くっ……ま、マルクぅッ!」
グレアはマルクの頭を胸に抱え込み、猛烈な勢いで腰を叩きつけ始めた。
技術も何もない、ただ気持ち良くなるための単純な動き。だが、スライムによって痛みすら快楽に還元する身体となったマルクには、それだけでも極上の快感が与えられた。
「ひゃ、ひゃぁあんっ!グレアさ、グレアさぁんッ!僕もう、もう……っ!」
「構やしねぇからイッちまいな!こっちはまだまだ余裕あっからよ!」
激しく身体の奥を突かれながら、マルクは再び絶頂に達した。放たれた精液がグレアの毛皮を汚すが、彼女は一切気にしない。より激しく、より苛烈に愛する少年の身体を貪った。
マルクのほっそりとした太股とグレアのふくよかな太股が打ち鳴らされ、少年の菊門はグレアの巨根を貪欲にくわえ込み、種を欲するように搾り上げる。
そして、グレアにも限界が訪れようとしていた。
「イクぞ、アタシもイクぞマルク!たっぷり出してやるから、アタシの種で孕んじまえっ!」
「きて、きてぇ!中で、僕の中で、いっぱいぃ……っ!」
腰を叩きつける大きな動作が徐々に小さく、小刻みに身体の最奥をノックする。そして絶頂と同時に、グレアはマルクの腰にぴったりと自らの腰を押し付けた。
「出るぞ、出るぞマルク!うあぁぁああーーーッ!!」
「ひあぁああーーーーッ!!」
絶叫と同時に、おびただしい量の精液がマルクの中に注がれた。ドクドクと音を立てて注がれていく精液はマグマのように熱く、はっきりと生命の鼓動を感じる。それは徐々にマルクの中を満たしていき、彼の腹を風船のように膨らませていった。
「あっ……すごい、たくさん……っ」
中でビクビクとぺニスが跳ねるたびに、物凄い量の熱が注がれていく。これほどの量を受け止めるのは初めてのせいか、マルクも自分の腹を見下ろして驚きの表情。一方、グレアは至極申し訳なさそうに顔を伏せていた。
「わ……悪ィ、マルク……まだ収んねぇみてぇだ……」
強気な彼女にしては、珍しい表情。グレアを見つめて、マルクは思わず笑みを洩らしていた。
「ふふっ……いいですよ。気が済むまで、出しちゃって下さい。ずっと我慢させてしまったのは、僕ですから……」
「マルク……すまねぇな……」
二人は抱き合い、お互いの体温を交換するように身体を寄せ合う。グレアの放つ精液が収まってなお、二人はずっと抱き合いーーー
「…やはりな。どうせ、このようなことだと思っていたぞ」
『…………っ!?』
突然聞こえてきた声の方向へ、マルクとグレアは揃って顔を向けた。
そこには、クラウディアと残って飲み直してはずのローレットが腕組みをしながら、仁王立ちでマルク達を見つめているのだった。
なみなみと注がれたビールを飲み干し、ローレットは空になったジョッキを置いた。普段から強い酒を水のように飲む彼女にとって、この程度は口を湿らせる程度にしかならないらしい。
場所は変わって、銀雪館から反対側の通りに位置するローレットお勧めの大衆食堂。夜も遅い時刻とあって、宿屋に近いこの店は多くの観光客や行商人達で溢れかえっており、かなりの喧騒に包まれていた。
そんな店内の隅っこに、マルク達の姿はあった。マルク、ローレット、クラウディア夫妻、グレアと五人でテーブルを囲み、美味な料理と酒を楽しみながら、昔話に華を咲かせているところであった。
しかし、約二名ほど、どことなく殺伐とした雰囲気も否めないが。
「つまり……あれだな。お前が一時期マルクを育てていたが、生活苦のあまり、知り合いだったクラウディアのところに泣き叫ぶマルクを無理矢理連れていき、身体で稼がせていたと……」
「何の話を聞いてたテメェッ!!」
グレアの手から鋭く放たれたナイフを、ローレットは人差し指と中指で挟み楽々とキャッチ。くるりと手にしたナイフの向きを変え、手元の皿に盛られた肉に突き刺した。
彼らが話していたのは、マルクがクラウディアの元へやって来ることになった経緯。親を亡くし、一人で暮らしていたマルクをグレアが見つけ、二年間ほど一緒に暮らした後、クラウディアに預けたのだという。
預けた理由は、グレアの生業にある。彼女は現在こそ大きな盗賊団の頭領となっているものの、マルクと出会った頃には一人でしがない野盗をしていた。当時幼いマルクを育てるにはあまりに環境が悪いと、やむを得ずクラウディアに預けたということであった。
彼らが夕方頃から食事を始めて、既に外は真っ暗闇。酒も進みに進み、良い感じにーーーいや、悪い感じに酒が回ってきた頃であった。
「おや、違ったか。確か……ああ、そうだ。お前の世話にほとほと疲れ果てたマルクが、共に暮らすよりはマシだと男娼の世界へと足を踏み入れるためにクラウディアを訪ねて……」
「テメェ……いいかげんにしねぇとマジで切り刻むぞ……!」
「グレア、落ち着けって。面白がってからかってるだけなんだよ、あいつは」
「ローレットさんも、あんまり変なこと言わないで下さい。グレアさんは僕の恩人なんですから」
ギチギチと爪と牙を鳴らして威嚇するグレアをアークが落ち着かせている間に、マルクはローレットをやや厳しめの口調で諌めた。
やはり、自分が信頼している人物の一人を貶されては、少なからず好意を寄せているローレットであっても気分が悪いというものである。
だが、にもかかわらずローレットの態度は平然としたもの。それどころか、どこか満足げな様子でナイフに突き刺した肉に食らい付いた。
「はぐ……んっ、なぁに、わかっている。マルクの恩人であれば、その妻たる私の恩人も同然だ。感謝しているに決まっている」
「その割には態度に出てねぇな……ってか、おい。なんか聞き捨てならねぇ台詞が……ん?おい、マルク。お前全然食ってねぇじゃねぇか。ほら、切り分けてやるからどんどん食えよ。今日は全部、この女の奢りなんだからよ」
「だ、大丈夫ですって。もう僕お腹いっぱいですし」
首を振るマルクだが、それでもグレアはお構い無し。いきなり彼の腕を掴み、その感触から腕の太さを確かめ、さらに腹回りを撫で回した。
「ほら!なんだこのほっそい腕!ガリガリじゃねぇか!いいから食えって!お前背もちっこいんだから、もっと食わねぇと!」
食べやすいよう一口サイズに切り分けては次々とマルクの皿に盛られていく。たちまち山となるが、満腹というのは本当らしい。げんなりとマルクは溜め息をつきながら、恩人の好意を無下には出来ぬとゆっくり肉を口に運び始めた。
そんなこんなで夜は更けていき、他の客達もポツポツと席を立ち始める。やや空席が目立ち始めた頃、マルク達のテーブルにもちょっとした変化が訪れていた。
「んっ……ぅ……」
そろそろ、少年には辛い時間帯であったようだ。酒の席が始まってから舐めるように果実酒を味わっていたマルクの瞳が虚ろになり、こくりこくりと身体が船を漕ぎ始めた。
「あー……そろそろ、マルクは連れて帰るか。俺が店まで送ってくから、お前らはまだ飲んでてもいいぞ。ほらマルク、起きろ。帰るぞ」
「ん、んんぅ……はぁい……」
寝惚け眼を擦りながら、マルクはアークに抱えられて椅子から立ち上がった。
この時間帯、酔っ払った少年一人でこの街の通りを歩くのは自殺行為に近い。店を出て三歩も歩く内に拐われて、気付いたらベッドの上で誰かに乗られてました、というのが日常茶飯事なのが魔王城城下町である。
「む……ならば私が送っていこう。元勇者のお前だけでは不安だ。マルクに近寄る者は、全て私が蹴散らしてくれる」
「狼に羊を預けるバカがどこにいるんだよ。いいから、そのまま座って飲んでろ」
「ごめんなさいね、アークさん。あとはお願いね」
立ち上がり掛けたローレットの肩を押さえ込み、アークはマルクと共に一足先に店から出ていってしまった。
彼らを見つけて、すかさず数人の魔物達が追跡に走ったが、わざわざ既婚者を相手に暴挙に及ぶことはないだろう。アーク達を見送り、クラウディアはワイングラスを手元で弄びながら溜め息を吐いた。
「はぁ……早いものね。マルクちゃんがウチに来てから、もう五年になるのかしら」
「ああ、そうだな。次会う時にオッサンになってたらどうすっかな〜……いっそのこと、三日三晩快楽漬けにして先にインキュバスにしちまうか」
「またまたぁ、そんなつもりなんてないくせに〜」
上機嫌に笑いながら、クラウディアとグレアは言葉を交わす。すると、そこへ何かに気付いたらしいローレットが顔を上げた。
「むっ……おい、待て。マルクは一年ほど前から店で働き始めたのだろう?五年とはどういうことだ?」
この中で唯一、マルクの過去を知らないローレット。
基本的にクラウディアの店に出ている男娼達は、拾われて約一ヶ月以内に店に出ることが通常である。というのも、自分の食い扶持は自分で稼ぐというのが銀雪館の鉄の掟。働き始める年齢も、早い者は五、六歳から客を取っている。
しかし、マルクの場合はそうではない。逆算すると、マルクがクラウディアの元へやって来たのは彼が八歳の頃になる。その年齢であれば、既に男娼として働いていてもおかしくはなかった。
「あ、あのね……えーっと……」
返答に詰まり、誤魔化すような笑みを浮かべるクラウディアだが、それでうやむやに出来るほどローレットは甘くない。困り果てた彼女であったが、不意にその肩が叩かれた。
「…いいじゃねぇか、聞かせてやっても。コイツはマルクのお気に入りなんだろう?それなら、多祥なり資格はあると思うぜ」
そう助け船を出したのはグレアであった。彼女は酔いを覚ますように煙草に火を着け、煙を吐き出した。その眼差しは真剣で、ローレットを睨み付けるように見つめていた。
「だが……この話をマルクや他の奴に面白おかしく話してみな。テメェの軽い舌を切り刻んで、二度と口が利けねぇようにしてやる」
グレアの瞳が物語る、本気という二文字。誓いを破れば、確実にグレアは口にした言葉通りの行動を実行するだろう。
もっとも、さらさらその気は無いローレットにしてみれば、全く問題なかったのだが。
「見くびるな。私がそのようなことをするはずもない。さっさと話せ、酔いが覚める」
「ケッ……聞いた後で後悔すんじゃねぇぞ」
灰皿にグリグリと煙草を押し付け、グレアは天井を見上げた。昔日の思い出を振り返るように。
「アタシとマルクが会ったのは……七年前だ。その時のアタシは、一人で悪ぶってるチンピラだった……」
瞳を閉じると、今でも鮮明に思い出す。満月の月夜に、獲物を求めて深い森を歩き回っていた時。微かだが、匂いを感じたのだ。若い男と、それに混ざるもう一つの女の匂いに。
「それを辿っていくと、小屋を見つけた。森のど真ん中にポツンと建ってる、苔だらけのきったない小屋さ。アタシも、その時はまさかとは思ったんだが……」
間違いなく、匂いはその中だった。傾いた扉を開いて中に入ると、そこで見つけたのだ。
「アタシは、そこでマルクと、もう一人の女を見つけた。多分、母親だろうね。ベッドの上で、眠るように死んでやがった。マルクは、ジッと死んだ母親のベッドにすがり付いていたのさ」
涙も枯れ果てたのか、無表情のまま母親の死に顔を見つめる少年。声を掛けても一切反応せず、ずっと母親の遺体から離れなかった。
「アタシは、その女を弔った後、マルクと暮らし始めたんだが……」
マルクは、何も話さなかった。いや、話さないだけではない。水も食事も、一切口にしようとはしなかったのだ。さすがにマズイと、無理矢理口にさせたこともあった。
「初めの内は、それで何とかなった。だけど、二年後のある時……」
雨の降りしきる夜。狩りを終えて棲み家にしていた洞窟に戻ると、そこにマルクの姿は無かった。雨のせいで匂いもわからず、無我夢中で夜の森を駆け巡り、そしてようやくマルクを見つけたのだ。
崖の下で土砂に埋もれ、横たわるマルクの姿を。
「あの時……マルクは、きっと母親のところに行こうとしたんだろうねぇ。幸い、怪我も大したことはなかったんだが、アタシは情けなくなっちまったのさ。二年も一緒に居たってのに、アタシは……マルクに、生きる気力を与えてやれなかったのさ」
それからは、早かった。クラウディアにマルクのことを託し、ずっと陰から見守ってきた。すると、彼女の見立て通り、マルクは少しずつ生きる気力を取り戻していった。それでも、四年もの歳月を必要としたのだが。
「…まぁ、こんなところだろうね。どうだい、これがマルクの過去さ。面白い話じゃなかったろう?」
「…そうだな。だが、聞くだけの価値はあったとだけ、言っておこう」
そう言って、ローレットはグラスの中身を一気に煽った。
自分が知ろうとしていたマルクの過去は、こんなにも辛いものだったのだ。その過去に土足で踏み込もうとしていた自分の愚かさが、どうにも許せないのだろう。奥歯を噛みしめ、瞳は空になった皿に映る自分の顔を睨み付けていた。
「でも、グレアちゃんのおかげで、今のマルクちゃんがあるのよ。それだけは、忘れないでちょうだいね」
「ああ、まったくその通りだ。一時はどうあれ、気に病むことはないだろう」
「さぁて、どうかな……でも、アタシはマルクに償いがしたいのかもしれないね。だから、アタシは……」
グレアは、ぎゅっとテーブルの下で拳を握りしめる。その強い意思を感じさせる表情に、何かを察したようにローレットは瞳を細めた。
「…どうした?」
「いや、何でもないよ。アタシも、どうやら飲み過ぎたみたいだ。先に戻らせてもらうよ。ごちそうさん」
グレアは席を立つと、足早に店を出ていってしまった。
彼女の突然の行動に、クラウディアは不思議そうに首を傾げた。
「…どうしたのかしら、グレアちゃん。ちょっと様子がおかしかったような気がするけど……ローレットちゃんは、どう?」
「…さぁて、どうかな。まぁ、心配することはないだろう。私達は、もうしばらく飲むとしようか」
ローレットは空のグラスに並々とワインを注ぐ。何かに気付いているが、敢えてその方向へは目を向けない。そんな意思を、瞳に宿してーーー
「んっ……く……っ」
妙な寝苦しさを感じて、マルクは目を覚ました。アークに部屋まで送ってもらい、そう時間は経っていないはず。
ひとまず水でも飲もうと身体を起こそうとしてーーー失敗した。
「あっ……!?なに、これ……っ」
なんと、マルクの両腕は頭上でベッドの縁に縛り付けられているのだった。もがいてみるも、結び目はキツクほどけそうにない。痛みはそれほどではないものの、体勢的にかなり辛いものがあった。
「起きたか……マルク」
「え……っ?」
マルクが顔を向けた先には、ベッド横に置かれた椅子に腰掛けたグレアの姿。立ち上がった彼女は、マルクのすぐ横から顔を見下ろしてきた。
「グレアさん……どうして、こんなことを?何があったんです?」
「いや、何てことはないよ。ちょっとばかり、確認したいことがあるんだ」
グレアはベッドによじ登り、マルクの腰の上に馬乗りになる。身体を倒してお互いの吐息が掛かるほどの至近距離から彼の顔を見つめた。
「単刀直入に言うよ、マルク。また、アタシと一緒に暮らさないかい?」
「グレアさん、と……?」
思いがけぬグレアの言葉に、思わず尋ね返すマルク。彼女はさらに言葉を続けた。
「ああ、そうさ。アタシも、もうただのチンピラじゃない。子分を抱える、ここら一帯の大親分さ。お前に、もう寂しい思いはさせないよ。だから、もう一度アタシと暮らそう。五年前、お前を悲しませた償いをさせて欲しいのさ」
「グレアさん……」
押し付けられた身体から伝わる、グレアの体温。そして胸の鼓動がマルクの胸を叩いている。
彼女も、緊張しているのだ。マルクの次の言葉を待つだけで、これほど強く鼓動している。それだけ、グレアにとって今回の行動は思いきったものに違いない。
だが、それでもーーー
「…ごめんなさい、グレアさん。それは、出来ないです……」
「…どうしてだい?」
冷静を保った声色だが、その内に秘められた激情を感じる。それに気圧されることなく、マルクは言葉を続けた。
「僕は、グレアさんのことも大好きです。僕を育ててくれたことの恩も忘れたことはありません。でも……僕は、ここでいろんな人に出会いました」
このような因果な職業だが、本気で愛を語ってくれる人達がいる。そんな人達に何一つ返事を返すことなく、この店を離れることは出来なかった。
マルクが正直にそれを伝えると、グレアは自嘲気味に笑ってみせた。
「あ、はは……やっぱ、フラれちまったか。お前、真面目すぎるからなぁ……」
「ごめんなさい……でも、グレアさんにも、きっと恩を返していきますから。だから、待ってて下さい」
「いや、それなら今すぐ返してもらおうか」
「はい……?それって……んんっ!?」
突然、グレアの唇が重ねられた。マルクが顔を逸らせないよう両側から顔を押さえ、何度も角度を変えては深く唇を押し付ける。熱く熱を持った舌が口の回りを這い回り、やがて唇を割って入り込んできた。
「んっ、はぁっ……はぁむ、んっ……」
ずっと我慢していた食事を貪るような、激しいディープキス。お互いの口元が涎まみれになろうと一切意に介することもなく、グレアの舌はマルクの舌を絡めとり、唾液を交換するように掻き混ぜる。
押し返そうと伸ばされたマルクの舌を唇で挟み、吸ってやる。彼との口付けに没頭しつつ、グレアはマルクの服に手を掛け、煩わしいとばかりに破り捨てた。
「んっ……ふぁ……はっ……グレア、さん……?」
「ククッ……身体を重ねりゃ、考えが変わることもあるさ。アタシはお前を見つけて七年間、ずっとお預け食らってんだ。アタシに恩を返したいってんなら、今夜一晩たっぷりと付き合ってもらうぜ……!」
そう言うなり、グレアはマルクの身体にむしゃぶりついた。首筋、脇、乳首、臍に至るまでありとあらゆる箇所に満遍なく舌を這わせ、唾液を塗り付けていく。豪快な彼女からは考えられないほど、そのタッチは繊細なもので、初めは身体を強張らせていたマルクも、次第にその力が抜けていった。
「ちゅ……んっ……れるぅ……ちゅうう……っ」
「そこ、ばっか……いやぁぁ……っ」
執拗に乳首を吸われて、ちゅぽんと音を立ててグレアの唇が離れる。充血した乳首は真っ赤に腫れ、コリコリとした硬度を保っている。指で転がされると、それだけで電流が走ったような快感が駆け巡った。
「ああっ、くそ……可愛すぎだろ、お前……っ!こっちも、限界だ……!」
辛抱たまらんとグレアが上着を脱ぎ捨てると、豊満な肢体が明らかになり、拘束されていた乳房がたぷんと跳ねる。続けて彼女はズボンに手を掛け、下着ごと一気に引き下げるとーーーその瞬間、思いもよらぬ光景が。
「え……っ?」
マルクの目の前で、窮屈な下着の中からぶるんと音が聞こえそうなほど、勢いよく飛び出したのは紛れもなくぺニスであった。
長さや太さなどはマルクと比較にならず、赤黒いそれの亀頭は拳ほどもあろうかというエグいほどの大きさである。巨根という二文字がピッタリと似合うそれを、マルクは今の状況も忘れて食い入るように見つめていた。
「あ、あんまり見んなよ。これはアタシの、その……特異体質みたいなもんなんだからな」
よくよく見ると、クリトリスの部分がぺニスとなっているらしく、玉はついていない。普通は薬を用いることで擬似的にぺニスを作ることは可能であるが、グレアの場合は自然に出来た体質のようなものらしい。
グレアは見せ付けるように、その巨根をしごいてみせる。涎のように先走りが溢れ、ポタポタとマルクの腹に降り注いだ。
「グレアさん……おっきいですね……今までのお客様の中でも一番かも……」
「は……はっ、このアタシのが紛い物に負けるかよ。って、お前……こういう客を相手にしたことあんのか?」
「は、はい……まぁ、頻繁に……」
マルクがそう言うと、グレアは落ち込んだように肩を落とした。
しかし、即座に復活。悔し涙を浮かべながらマルクを睨み付ける。
「へ……へへ……じゃあ、今晩は思い知らせてやるぜ。他の奴らより、アタシのが一番だってなぁ!」
「ぐ、グレアさん、怖い……あっ!」
グレアはマルクのズボンをパンツごと引きちぎる。同時に、ぴょこんと可愛らしく顔を出したマルクの勃起したぺニスを前に、勝ち誇ったように笑みを浮かべた。
「一番人気、つってもここはまだガキだな。可愛らしいもんだ……」
「グレア、さ……ぁああっ!?」
グレアは赴ろに自分のぺニスとマルクのぺニスの亀頭を合わせ、グリグリと鈴口を擦り付ける。さらに細かい体毛で包まれた両手で包み込み、手の中でこねるように摩擦した。
「ぁ、あぅうっ!グレアさ、やめてぇ……!」
「あっついな……お前のチンポ……こっちまで火傷しそうだ……」
快楽の虜となってしまったように、グレアは亀頭を擦り続ける。溢れる透明な先走りが潤滑油となり、さらなる快楽を二人で享受する。
「あぁ、出る……出ちゃいます、グレアさん……!」
「あ、アタシも……ヤバい……出るぞ……っ!くぅうううっ!」
ほぼ同時に、二人は達した。しかし、放たれた精液の量は比較にならず、グレアのおびただしい量の精液が雨のようにマルクの身体に降りかかる。グレアの真っ黒な体毛にも白い精液がこびりつき、より扇情的にその姿を彩った。
「…グレアさん……どうぞ、こっちに……」
そんな彼女の姿に触発されたか、マルクは大きく口を開いて舌を精一杯突き出す。彼の口内は唾液で滑り、月明かりに照らされて淡く輝く。グレアは、ゴクリと息を呑んだ。
「ま、マルク……いいんだな?お前の口、使うぞ……?」
「…お願いします。グレアさんの精液、欲しいですから……」
「……っ!」
マルクが微笑んだ瞬間、グレアは自らのぺニスをマルクの小さな口に突き入れていた。
しかし、決して無理はさせない。マルクの口では亀頭を頬張るだけで精一杯であり、グレアはマルクの頭を押さえて亀頭だけの注挿を繰り返す。
代わりに、マルクは巧みに舌を動かした。押し込まれる動きに合わせて鈴口から裏筋を刺激し、引き抜かれるところに合わせて吸ってやる。
しばらく、荒いグレアの呼吸とねちっこい水音だけが部屋に響く。絶頂が近いのか、グレアの動きが徐々に加速を始めた。
「はぁっ!イクぞ、マルク!アタシの、アタシの精液、全部受け止めろっ!うぉおおお……っ!」
「んんっ!?んっ、く……っ」
物凄い量の精液が、洪水のようにマルクの口内を一瞬で満たした。口の端から溢れさせつつも、マルクは喉を鳴らして濃い粘性の白濁液を飲み込んでいく。思いの外生臭くはなく、どちらかというと、ほんのりと甘味すら感じる。やはり人間と魔物では、身体の構造に若干違いがあるようだ。
「だ、大丈夫か、マルク……?ちょっと出しすぎちまった……んっ」
グレアがぺニスを引き抜いた瞬間、僅かに残っていた分がマルクの顔に降りかかる。マルクは口の中一杯に溜まった精液を舌で分けるように少しずつ飲み込んでいき、遂に最後の一滴まで飲み干した。グレアの精液に顔を汚しながら、微笑んでみせる。
「ごちそうさま……です。グレアさんの、美味しかったですよ……」
「お前……ったく、可愛いやつだな……!」
感極まったグレアは、自分の放った精液が残っているにも関わらず、マルクに覆い被さり唇を押し付ける。
一心不乱に、二人は狂ったように唇を重ね、舌を絡ませる。その時、グレアは片手に握っていた小瓶の蓋を外し、手の平に中身の液体を注いだ。
すると、液体は彼女の手の上でぷるんとゼリーのような個体へと変化。何をするかと思いきや、グレアはマルクの菊門にゼリーを押し付けた。
「ひゃ……っ!?」
冷たい感触に、マルクから驚いたような声が上がる。
しかし、それだけではない。ゼリーは自らの意思でマルクの中へと潜り込み、時にその形を変化させながら腸壁を擦りあげてくる。
「ぐ、グレアさん!何ですか、これ……!?」
「何って……綺麗にしてやってんだろ。媚薬を混ぜた特製スライムだ。たまらねぇだろ……?」
スライムの触れた箇所が熱く熱を持ち、狂おしいほどの情欲に襲われる。マルクが身体をくねらせようが容赦なくスライムは腸内を移動し、前立腺を押し上げてきた。
「へへ……だいぶ解れてきたな。これなら、アタシのをぶちこんでも大丈夫そうだ」
「ぁ、あ……!壊れちゃ……壊れちゃうよ……!」
三本ものグレアの指が入り込み、入り口近くを拡張するように掻き回す。一度達したはずのマルクのぺニスは痛いほどに勃起しており、気付かぬ内に達してしまっていた。
十分に解れてきたところを見計らい、グレアは指を引き抜いた。さらにマルクの両足を抱え、ピタリと熱く熱を持った巨根の先端を菊門に押し付ける。
「いくぞ……マルク……アタシも、手加減してやれそうにねぇからな」
「うん……うん、きて……来てください、グレアさん……」
「んっ、く……いくぞ……っ」
ぐぐっと、グレアが腰を進めると菊門を抉じ開けて大きな熱の塊が入り込んできた。
スライムが潤滑油となっているせいか思いの外痛みはなく、代わりに強い快楽がマルクを襲う。それはグレアが腰を進めるにつれて大きくなり、脳に直接ビリビリと快感が駆け巡った。
「はぁっ……入っ、た……!」
ピタリと、グレアの腰がマルクに押し付けられる。あれだけの質量を小さな身体のマルクが受け入れたこと時点で驚くべきことで、彼の下腹部にはポッコリとグレアのぺニスの形が浮き上がってしまっていた。
「はぁっ……はぁっ、あ……んん……っ」
呼吸をすることすらままならないのか、甘い呻きを洩らしながらマルクは身を捩る。それだけでグレアに快感を与えているのか、彼女の背筋がぶるぶると震えている。
「んっ……どうだ、マルク……アタシの、気持ちいいか……?」
「気持ち、いいですよ……固くて、熱くて……身体の中から、溶けちゃいそうです……」
「お前……やっぱ、可愛いな……っ」
グレアは手を伸ばし、マルクの腕を拘束していた縄代わりのタオルを外す。同時に、ゆっくりと彼の中からぺニスを引き抜いていく。
「ぅあっ、あ……っ!」
腸がめくれ上がっていくような感覚に、マルクは身悶えする。しかし、グレアは休む暇も与えずに今度は腰を押し付けた。その二つの動作を、連続して続けていく。
スムーズな動きに繋がった部分からは卑猥な水音と肉がぶつかり合う音が弾け、掻き出されたスライムがシーツを汚した。
「はぁっ、あ……くぁっ……!マルク、気持ちいいか?どうなんだ?」
「いゃ、ぁっ、気持ち、いいです……凄く、気持ち良くて……頭が壊れそうで……!」
「そうか……アタシも、お前の中がギチギチ締め上げてきて、たまんねぇよ……!」
グレアも慣れてきたのか、一突きごとにマルクの弱点を看破。腰を突き出す角度を変えながら、執拗にその箇所を的確に抉っていった。
不意に、マルクの腕がグレアの首に絡み付く。潤んだ瞳で、彼女の瞳を見つめた。
「グレアさん……我慢、しないで下さい。もっと、気持ちよくなっていいんですよ……?」
グレアが負担を掛けないよう、動きをセーブしていることをマルクはすぐに察した。こうして身体を重ねることで少しでも恩を返せるのであれば、好きにこの身体を貪って欲しかった。
「マルク……知らねぇぞ。アタシが本気で腰振ったら、お前が壊れちまうかもしれねぇ。それでも、いいのか……?」
グレアの言葉に、マルクは強く頷いてみせる。それ以上、他に言葉を交わす必要は無いと、グレアの胸に顔を擦り付けた。
そして、これがスイッチとなった。
「ぐ、くっ……ま、マルクぅッ!」
グレアはマルクの頭を胸に抱え込み、猛烈な勢いで腰を叩きつけ始めた。
技術も何もない、ただ気持ち良くなるための単純な動き。だが、スライムによって痛みすら快楽に還元する身体となったマルクには、それだけでも極上の快感が与えられた。
「ひゃ、ひゃぁあんっ!グレアさ、グレアさぁんッ!僕もう、もう……っ!」
「構やしねぇからイッちまいな!こっちはまだまだ余裕あっからよ!」
激しく身体の奥を突かれながら、マルクは再び絶頂に達した。放たれた精液がグレアの毛皮を汚すが、彼女は一切気にしない。より激しく、より苛烈に愛する少年の身体を貪った。
マルクのほっそりとした太股とグレアのふくよかな太股が打ち鳴らされ、少年の菊門はグレアの巨根を貪欲にくわえ込み、種を欲するように搾り上げる。
そして、グレアにも限界が訪れようとしていた。
「イクぞ、アタシもイクぞマルク!たっぷり出してやるから、アタシの種で孕んじまえっ!」
「きて、きてぇ!中で、僕の中で、いっぱいぃ……っ!」
腰を叩きつける大きな動作が徐々に小さく、小刻みに身体の最奥をノックする。そして絶頂と同時に、グレアはマルクの腰にぴったりと自らの腰を押し付けた。
「出るぞ、出るぞマルク!うあぁぁああーーーッ!!」
「ひあぁああーーーーッ!!」
絶叫と同時に、おびただしい量の精液がマルクの中に注がれた。ドクドクと音を立てて注がれていく精液はマグマのように熱く、はっきりと生命の鼓動を感じる。それは徐々にマルクの中を満たしていき、彼の腹を風船のように膨らませていった。
「あっ……すごい、たくさん……っ」
中でビクビクとぺニスが跳ねるたびに、物凄い量の熱が注がれていく。これほどの量を受け止めるのは初めてのせいか、マルクも自分の腹を見下ろして驚きの表情。一方、グレアは至極申し訳なさそうに顔を伏せていた。
「わ……悪ィ、マルク……まだ収んねぇみてぇだ……」
強気な彼女にしては、珍しい表情。グレアを見つめて、マルクは思わず笑みを洩らしていた。
「ふふっ……いいですよ。気が済むまで、出しちゃって下さい。ずっと我慢させてしまったのは、僕ですから……」
「マルク……すまねぇな……」
二人は抱き合い、お互いの体温を交換するように身体を寄せ合う。グレアの放つ精液が収まってなお、二人はずっと抱き合いーーー
「…やはりな。どうせ、このようなことだと思っていたぞ」
『…………っ!?』
突然聞こえてきた声の方向へ、マルクとグレアは揃って顔を向けた。
そこには、クラウディアと残って飲み直してはずのローレットが腕組みをしながら、仁王立ちでマルク達を見つめているのだった。
15/09/25 06:58更新 / Phantom
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