封じられた熱視線
どこからか鳥の囀りが聞こえてくる
優しげな木漏れ日が照らす山の中、一人の青年が手際良く薪を集めていた
「こんなもんか、んぐぐ…」
大きく背伸びをして腰を鳴らしさあ帰ろうという正にその時ふっと辺りが暗くなる
ポツ…ポツ…
細かな水滴が空へ向けた手の平に落ちるのを感じるとすぐにざあざあと本格的に雨が降り始める
あいにく青年は傘を持っていなかったが慣れ親しんだ山を下るだけだ
濡れてしまった薪は乾かさねばならないが問題ないだろう
しかし青年は慌ててしまったのか石に躓いてしまう
そのままの勢いで急斜面に身を乗り出し────────
「ぁ」
息を呑んだ青年は薪をばら撒きながら盛大に転がり落ちるのであった
「クソ痛ぇ…」
元居た地点を見上げると4〜5m上にある
幸い目立った怪我は無いが泥塗れで薪も拾い直しだ
今は帰ることを優先しようと辺りを見渡した目に岩の割れ目が映る
そこそこの大きさだが周りの木々に埋もれるようにひっそりと目立たない
かなりの頻度で山を訪れていたが今まで気付かなかった
また落ちるのもごめん被りたい、雨宿りでもするか、と洞窟の入り口付近に座り込む
暇つぶしに歌でも歌おうかと思った矢先、雨音に混じって変な音がすることに気付く
重い何かを引きずるような不気味な音
それも自らが身を休めている洞窟の奥から聞こえて来る
青年は立ち上がりジリジリと後ずさる
すぐにこの場を離れた方が良いと本能が告げているが同時に一体何が潜んでいるのか確かめたいという好奇心が首をもたげて来た
しかし悲しいかな、そんな思考を巡らせる間に音の主がすぐ近くまで迫っていることに彼は気付かなかったのだ
暗闇が割れたのかと錯覚するほど白い肌、全長を視界に収めることが困難と思われる長大な蛇体、何よりも両眼を覆う仮面が眼前の存在こそ毒蛇の王たるバジリスクなのだと嫌でも思い知らせてくる
何秒経っただろう
それはきっと刹那、しかし青年の脳は自らを生かす為極限まで時間を引き延ばす
…完全に腰の抜けた状態では何の意味も無いが
『ここ、私の住処』
薄い桃色の唇が小さく開き、か細い言の葉を紡ぐ
その一言に侵入を咎める意図を読み取りどうにか立ち上がった青年は洞窟の主に背を向け逃げるように、実際に逃げる為に走り去ろうとする
「す、すみませんでしたっ」
結果から述べると逃走は失敗した
走り出そうとした青年の手首は鱗の生えた腕にガッチリと掴まれている
痛みは無いがびくともしない、力の差は歴然と言えよう
「勝手に入ってすみません、助けてください…」
動転した青年は只々懇願する、べっとりと濡れた背中の原因は雨か汗か
『雨で困ってる…んだよね…?そっちは出口、だよ?』
対するバジリスクの少女は珍しい来客に浮かれていた
そのまま少女は自分の家に案内しようと青年の手を引き洞窟を奥へと進んでいく
灯りの無い洞窟を手を引かれながら移動する
しばらくするとうっすらと明るい空間に出た
奥に見える小さな家は少女のものなのだろう
「なあ、俺は食われるのか」
平静を取り戻した青年は、不意に立ち止まり不安そうに疑問を口にする
『ど、どうして…?そんなこと聞くの…?』
美味しそうな匂い…♡と考えていた少女は図星を突かれて内心穏やかではいられなかったがそれはすぐに否定される
「麓の村にたまに来る教団連中が蛇の魔物は人間を丸呑みにすると言っていた」
正直なところ青年も疑いを持ち始めていた
一時は死を覚悟したが目の前にいる少女はとてもそんな怪物とは思えない
しかし長年の刷り込みはそう簡単に消えるものではなく
故に不安を取り除きかったのだ
『それなら…私の口、見て』
あ〜ん、と口を広げるがどう見ても青年のものより一回り小さい
現状行える安全確認は済んだが別の理由で目を奪われてしまう
湯気のたつほかほかと温かそうで唾液が糸を引く真っ赤な口内を甘い吐息が鼻にかかるほどの距離で見せつけられゆっくりと男性器が膨らんでいく
と、少女が口を閉じて離れる
『もう、怖くない…?』
「あ、ああ」
女の子の前で勃起するなどあってはならない
それなのに名残惜しく感じてしまう自分がいることが恐ろしい
また頼めば見せてくれるだろうか───────────────
いけない、と浮かんでくる煩悩に蓋をして再び歩き始める
『ここ、だよ…私の家。お風呂、入ろうとしてたから沸いてる』
「ありがとう、服は…」
『桶が置いてある、その中に入れて。着る服は…私、下は持ってない…知り合いに、男物の服を頼んでおく』
「そこまでしてもらうのは申し訳ないな」
『は、裸で過ごすの…?』
ボッと少女が赤くなる
考えてみるとそれは大変よろしくない
「お言葉に甘えるよ…」
「あ゛ぁ゛ー…」
身体の芯から温まっていくのを感じる
冷えた手足がじんわりと解けるような感覚だ
長い蛇体を収めるためであろう
ジパングの温泉に似せた作りの大きな風呂は非常に居心地が良い
そういえば、風呂に入ろうとして沸かしていたと彼女は言っていた
先に入ってしまうなんて悪いことをしたなあ…
しかし気持ち良い…
『すんすん…♡男の人の下着…♡んっ…♡』
ダメだ、頭の奥がじんじんする
すぐ隣の浴室に本人がいるのにやめられない
匂いを嗅ぐだけでこんなに幸せなのに、これを下腹部に擦り付けたらどんなに気持ち良いのだろう…
朦朧とする意識の中、股に指を伸ばしかけてはたと気付く
これは、一緒に入浴するチャンスなのでは…?
バタン
浴室の扉が開閉する音に青年は大いに驚いた
自身が入っている間、この扉が動く可能性は一切考えていなかったからだ
『湯加減、大丈夫?』
「あっ、ハイ」
タオルによって申し訳程度に露出が抑えられているが
恥じらうように強く胸を押さえているせいでかえって暴力的な柔らかさを強調している
その上、広い浴槽の中でわざわざ隣に入って来た
必死に目を逸らすが彼女はお構い無しと言いたげに密着してくる
そういえばおっぱいと二の腕は同じ柔らかさだと聞いたことがあった
そんなことを考えていると不意に下半身に血流が集まるのを感z
バッターン!
『小童ども、ワシがかように働いておるのにお主らは呑気に風呂か』
「どちら様!?もしかして知り合いの方って…あ、服、ありがとうございます」
『うむうむ、元の荷物に追加して運んだだけじゃ、気にせんでよい』
もふもふの手足、大きな角、幼い外見、高位の魔物として有名なバフォメットで間違いない
『…もう出るから、少し待ってて』
『何故お主は少し不満そうなのじゃ!?』
『いつもありがと、おばあちゃん』
『大した仕事ではないから構わんが…年寄り扱いはよせ、お主、正しい呼び方をこやつに示してやれ』
「お、俺!?…お婆様?」
『敬称の問題じゃない!いいもん!お兄ちゃんに慰めてもらうもん!』
『その年でお兄ちゃん…』
『お兄ちゃんは300歳超えとるんじゃからよかろう』
『おばあちゃん、年齢四桁だって、自慢してた』
お婆様が瞳を潤ませて今にも泣き出しそうになってしまった
女性に年齢の話はタブーと聞いたことはあるが、いくつになってもそれは変わらないらしい
『ワシ帰る!』
『またね』
「ありがとうございました」
二人は随分と仲が良さそうだった
心なしか楽しそうに話す少女を見ているとこちらも嬉しくなる
『あの…もう夕方、今日は…と、泊まる…?』
「えっと…」
それはありがたい提案ではあった
しかしいくらなんでもそこまでしてもらうのは申し訳ないという遠慮と女性の家に泊まることへの緊張が青年を悩ませる
帰るのなら日が落ちる前の今しかない
そうして考え込む彼だったがまたも先手を打たれてしまった
『おばあちゃんに、夕飯用の食材…増やしてもらった、から』
「そ、それなら今日は泊まっていっていいか?」
『ん…』
これでも料理は毎日作っている
少しの心得はあるから手伝わせてくれと言ったのだが断られてしまった
することが無いので綺麗に洗われた服を暖炉の前で乾かす
例のバフォメットが作った魔法道具の一つに洗濯を自動でやってくれる物があるそうだ
揺らめく炎と着古した衣服を眺めてぼんやりしていると優しい声で呼ばれる
出来上がった夕飯は豪華で食欲をそそる良い匂いを発していた
魚介と野菜のスープやチーズの乗った肉、サラダなど彩り豊かだがその材料はいまいち分からない
『口に、合うと…いいけど』
「…うん!これは美味い」
本当に美味しい、材料はさっぱり分からないがとても美味しい
全く知らない食材もまだまだあるのだと思い知る
あっという間に平らげてしまった
一方少女はそれ以上の速度で皿を空にして微笑みながらこちらを見ていた…意外と大食いなのかもしれない
青年が食べ終えたのを確認すると恐る恐るといった様子で果物を取り出す
『デザート、おすすめ、食べて』
こちらも記憶にないものだが彼女がそこまで勧めてくるものだ、丁度甘味が欲しかったところだしありがたく頂こう
少女が丁寧に皮を剥くと綺麗な黄金色の果肉が露わになる
見るからに熟れた香りの良い果実だ
『は、半分くらい齧って…それ以上は…ちょっと濃いから、ぁ…あーん…』
「自分で食べられる、それにこれは…流石に恥ずかしいです」
『私も、恥ずかしい…だから、おあいこ』
謎理論で押し切られる青年、彼は押されると弱いのだ
「あ、あー」
言われた通り小ぶりな果実を半分ほど齧る
彼女は濃いと言っていたが、滑らかな舌触り、どろりとした果汁、強い甘みを持ちながらすっきりとした後味の果実はいくらでも食べられそうだ
ふと少女の方を見ると今しがた青年が齧ったそのもう半分を美味しそうに頬張るところだった
ゆっくりと味わいながら咀嚼し、嚥下し、指を舐るその仕草がやけに鮮明に映る
こんなにも美しく、可愛らしく、優しい少女を自分の物にしたいという欲求が下半身の疼きとなってふつふつと湧き上がって──────────
────────いけない
またしても不埒な考えを抱いてしまった
彼女はただ親切で家に置いてくれているのに、と自戒する
明日の朝すぐに帰ろうと青年は決意した
その夜のこと
ゆとりを持って大きいベッドを使用していると言われたその寝具はたしかに大きく二人で寝ても十分に間隔の取れるサイズであった
…のだが
『すぅ…すぅ…』
少女に背を向けて横たわっている青年のすぐ首筋のあたりから寝息が聞こえる
足に尻尾が巻き付き胸に腕が回され全く身動きの取れない状況、そしてこの密着度なら当然なのだが背中に押しつけられるふにふにとした柔らかい感触によって彼の男性器はビクビクと脈打っている
二の腕とおっぱいは同じ柔らかさなのだと吹聴していた麓の村の雑貨屋を脳内で殴りつつ目を閉じた
蛇の魔物だというのに妙に温かく、距離感の近さが心を許してくれているという安堵に繋がる
なんだか良く眠れそうだった
翌朝目覚めた青年は、少女を起こさぬよう注意深くベッドを抜け出し、帰る支度をしていた
幸い少女の拘束は夜中よりかなり弱まっており特に力を入れずとも簡単に抜け出すことができたのだが、起きてきた彼女に礼を伝えると小さく首を横に振った
『ま、まだ…雨、止んでない、から…ここにいて、いいよ…?』
そうは言ってもあまり長く世話になるわけにもいかない
それに自宅に戻る程度のことなら雨天でも日中であれば問題ないからと断るが頷いてはくれなかった
『なら…私の、お仕事、手伝って』
本当は一刻も早く少女から離れるべきだと思っていたが助けられた感謝は何らかの形で返したい、それならばと了承する
少女の仕事というのは洞窟内に自生する植物や鉱石の採集だった
それらをお婆様(少女曰くもっと気安く接して良いとのことなので以降ばーさんと呼ぶ)に渡すことで色々と生活に必要な物資を受け取っているらしいが実際は実家の隣にある商店のばーさんがあれこれ世話を焼いてくれる感覚だそうだ
意気揚々と鉱石の採掘に取り掛かる青年だったがあることが彼を悩ませる
少女との身体接触の時間が明らかに増えているのだ
作業効率の面からそれぞれ分かれて活動するべきだと提案しても暗がりで迷ったら大変だからと手を離してくれない
風呂も当然一緒に入ることになった、先に入るよう促したのだが背中など手の届きにくい箇所を洗い合った方が清潔だと丸め込まれてしまった
実際に頭や背中を流すだけで破廉恥なことはしていないのだが彼女に触れるだけで下半身が反応してしまう
バレたら嫌われてしまうという恐怖で気が気ではなかった
そうして悶々とした一日が過ぎてゆく
精神的な疲労もあり熟睡した青年が目を覚ますと、少女は既に寝室にはいなかった
これ以上彼女と暮らしているととんでもない過ちを犯してしまいそうだ
────────犯す
その単語が脳裏にこびりつく
「…どうしちまったんだ、俺」
少女は少し頬を赤らめ青年を待っていた
『ぁ…お、はよ…ぎゅー…』
両手を広げてハグを求めてくる
なんだか断る気が起きない、彼女の声を聴くと頭がふわふわして気持ち良い
思い切り抱きしめて胸に顔を埋めたい
ふらふらと近づいt
ドーーーン!!
『牛乳配達じゃー!乳を飲め!』
凄まじい勢いで玄関口が開き、瓶牛乳を箱に入れた元気な幼女風のバフォメットが現れた
轟音で意識が覚醒し、青年は正気を取り戻す
「ばーさん!?、朝っぱらからどうしたんだ」
『…いらっしゃい』
『ホルスタウロスミルクが手に入ったからお裾分けじゃ!ほれほれ、この辺りでは貴重品じゃぞ…って何故不満そうなのじゃ!?』
『別に…こんなに早い時間に来たこと、なかったから』
『牛乳配達といえば朝じゃろ、雰囲気重視というやつよ』
「ありがとう…ありがとうばーさん…!」
危うく一線を越えかけた青年は自分を引き戻してくれた存在に深く感謝する
『なんじゃ照れるのう、そうじゃ!お主に一つ頼みたいことがあっての、今度の試作品は靴型なんじゃがそやつは靴を履かぬしワシは毛が邪魔ゆえ足の大きさを測らせてくれ』
「ぜひ協力させてくれ!」
『助かるぞ、それではちとこやつを借りるからの』
『…変なこと、しないで、ね』
ばーさんは頷き、青年を外へ連れ出す
牛乳配達員の格好をするのに邪魔だったようで、器具は外に置かれていた
「それで一体どんな靴なんだ?」
『ふふふ、履くだけで走ったり跳んだりする行動を強化する優れものじゃ!完成したらお主にも格安で売ってやるから楽しみにしておれ』
「俺の家、分かるのか?」
『む?ここに住むのじゃろ?あやつからそう聞いたぞ』
待て、おかしい、そんな筈は無い、俺はただ雨宿りに来ただけの…雨宿りに来ただけ?
恋人のように食事をし、一緒に風呂に入り、同じ布団で眠る…
一体いつからだ?どうして疑問を持てなかった?
「な、なあばーさん…一つ聞いていいか」
『む?なんじゃ、言うてみい』
「今日の…天気を教えてくれ…」
『そんなことならあやつに聞けば良かろうに、とはいえ今日の天気は──────
───────昨日と変わらず、雲一つない晴天じゃ!』
絶句し、青年は自らの致命的な間違いに気付く
二日目には既に雨など降っていなかったのだ
そんな彼を他所に幼女は採寸を終え懐から何かを取り出す
『ほれ、手伝ってくれた礼じゃ』
「こ、れ…」
それは手の平大の果物、少女が毎食後食べさせてくれる果実と同一のものだった
『これは良いものじゃぞ、性欲増進精力増強!まぐわう時にでも使うがよい、そのかわり食べたらしっかり発散することじゃ、あまり長い間放置しておると理性が薄れてくるからの…そうやって獣のようにサカるのも一興じゃが♡』
またの〜と言い残し、幼女は転移魔法で帰って行った
一人残された青年は己がずっと毒蛇のとぐろの中にいたのだと思い知る
しかし知ることができたのだ、まだ何も遅くはない
このまま帰ってしまおう
果実の副作用など一人慰めれば済むことだ
今はとにかく恐ろしい餌場から逃げ出すことが先決
出口へ、早く光の届く所へ
これが、青年の最も重大な過ちであった
もがくほど、憐れな獲物は締め上げられるのだ
青年は暗い洞窟の地面に倒れ込む
脚に、いや、全身に力が入らない
それに熱い、何かに灼かれ焦がれるような熱が体中を駆け巡る
「な、これ…バジ…リ、クの…毒…!」
最初の日、少女が洞窟の入り口までやって来たのは決して偶然などではない
実際の視界を遥かに超える感知範囲、青年の考えはそこまで及ばなかった
何かが這いずる音が背後から着実に迫って来る
それはすぐ傍らで止まり、優しく青年を抱き寄せた
『離れちゃ…や、ぎゅー…♡』
その時初めて少女の眼を見た
蛇を思わせる縦に長い瞳孔
暗闇でも妖しい輝きを放つ毒々しい緑の虹彩
蕩けきったそれがじっとこちらを覗き込んでいる
『お家、帰ろ…♡』
弛緩し身動きの取れない青年を抱え少女は自宅へと向かう
人の身で受けることに恐怖を覚えるほど深い愛を湛えた視線を青年に向けながら
『ご、めんね…♡おちんちん熱くて…辛い、よね…♡』
少し擦れるだけですぐに射精してしまいそうなほど敏感になった男性器を刺激しないようゆっくりと服を脱がされる
全身に巻き付かれ、仮に毒に侵されていなかったとしても最早逃れられまい
『ん…ちゅ…♡』
軽く唇が触れるのと熱くぬめった膣肉が男性器を呑み込むのは同時だった
「あ…がっ」
本来なら入り口に当たるだけで射精し、ヒダの一枚一枚が擦れる毎に絶頂するほど感度を高められていた青年は、しかしそれらの快感を一瞬にして叩き込まれてしまった
脈動に合わせて白濁を吐き出すような尋常の射精ではない
体の中身を全て搾り取られるようにビュービューと噴き出し続ける
『ちゅぷ…ん…す、好き…♡えへへ…♡』
生娘らしい拙いくちづけと無垢な愛の囁きとは裏腹に膣内は精液どころか青年の全てを貪ろうと容赦なく収縮し男性器を咀嚼する
その惨たらしい捕食運動は、しかし甘く柔らかな淫肉によって行われ、決して満足させず精根尽き果てるまで求めてしまう中毒性を持つ
尤も中毒になっているのは青年だけではない
『ぁー♡これ、気持ちー…♡もっと…♡』
ひとしきり子宮口で精液を飲んだ少女は遂に腰を振り始めた
挿れるだけで男性器を搾り尽くす肉壺は大量のヒダと突起を備え、ひとたび動かせば肉ヤスリのごとくゾリゾリと理性と肉棒を削りいとも容易く脳を焼き切る魔物の快楽を刻み込む
「止め、止めて…!これっ…変に、な…!」
心の底では望んでいた恋しい少女との性行、殆ど無意識に舌を絡ませ与えられる快楽と愛情を享受していた青年は本能が警鐘を鳴らすままに叫ぶ
これは人間が許容できる範囲を超えている
このままでは壊れてしまうと
『これでいっしょ…♡ずーっといっしょ…♡』
少女は涙と涎を垂れ流し、本能を剥き出しにして腰を打ち付ける
既に精をほとんど出し切り弱々しく雫を放っていた青年の男性器が震え────
────ゴポッ…と塊のように最後の精を吐き出した
そのまま意識が遠のいていく
『あ、お…起きた…?』
目を覚ますと仮面を着けた少女がこちらを心配そうに覗き込んでいた
そんな姿にも思わず愛しさが込み上げてくる
心まで囚われてしまったようだ
「ああ、おはよう」
『ご、ごめん…ね…やり過ぎ、ちゃった…』
「謝るのはこっちの方だ。人に好意を向けられるのは慣れてなくてな、土壇場で怖くなってしまった…だから、ありがとう。俺も君が好きだよ」
『えへ…♡わ、私も大好き…♡」
そっと唇が触れ合い、結ばれた幸せを噛み締m
ドーーーン!!
『やったぞお主ら!完成じゃー!おお、お主も起きたのか!三日ぶりじゃのう!』
「三日!?俺そんなに寝てたのかよ!」
『はぁ…私、二人が仲良しな理由、分かった…』
『む?たしかにこやつとは馬が合うのう』
「謎の安心感があるな」
『二人とも、空気の読めない、ニブチン』
優しげな木漏れ日が照らす山の中、一人の青年が手際良く薪を集めていた
「こんなもんか、んぐぐ…」
大きく背伸びをして腰を鳴らしさあ帰ろうという正にその時ふっと辺りが暗くなる
ポツ…ポツ…
細かな水滴が空へ向けた手の平に落ちるのを感じるとすぐにざあざあと本格的に雨が降り始める
あいにく青年は傘を持っていなかったが慣れ親しんだ山を下るだけだ
濡れてしまった薪は乾かさねばならないが問題ないだろう
しかし青年は慌ててしまったのか石に躓いてしまう
そのままの勢いで急斜面に身を乗り出し────────
「ぁ」
息を呑んだ青年は薪をばら撒きながら盛大に転がり落ちるのであった
「クソ痛ぇ…」
元居た地点を見上げると4〜5m上にある
幸い目立った怪我は無いが泥塗れで薪も拾い直しだ
今は帰ることを優先しようと辺りを見渡した目に岩の割れ目が映る
そこそこの大きさだが周りの木々に埋もれるようにひっそりと目立たない
かなりの頻度で山を訪れていたが今まで気付かなかった
また落ちるのもごめん被りたい、雨宿りでもするか、と洞窟の入り口付近に座り込む
暇つぶしに歌でも歌おうかと思った矢先、雨音に混じって変な音がすることに気付く
重い何かを引きずるような不気味な音
それも自らが身を休めている洞窟の奥から聞こえて来る
青年は立ち上がりジリジリと後ずさる
すぐにこの場を離れた方が良いと本能が告げているが同時に一体何が潜んでいるのか確かめたいという好奇心が首をもたげて来た
しかし悲しいかな、そんな思考を巡らせる間に音の主がすぐ近くまで迫っていることに彼は気付かなかったのだ
暗闇が割れたのかと錯覚するほど白い肌、全長を視界に収めることが困難と思われる長大な蛇体、何よりも両眼を覆う仮面が眼前の存在こそ毒蛇の王たるバジリスクなのだと嫌でも思い知らせてくる
何秒経っただろう
それはきっと刹那、しかし青年の脳は自らを生かす為極限まで時間を引き延ばす
…完全に腰の抜けた状態では何の意味も無いが
『ここ、私の住処』
薄い桃色の唇が小さく開き、か細い言の葉を紡ぐ
その一言に侵入を咎める意図を読み取りどうにか立ち上がった青年は洞窟の主に背を向け逃げるように、実際に逃げる為に走り去ろうとする
「す、すみませんでしたっ」
結果から述べると逃走は失敗した
走り出そうとした青年の手首は鱗の生えた腕にガッチリと掴まれている
痛みは無いがびくともしない、力の差は歴然と言えよう
「勝手に入ってすみません、助けてください…」
動転した青年は只々懇願する、べっとりと濡れた背中の原因は雨か汗か
『雨で困ってる…んだよね…?そっちは出口、だよ?』
対するバジリスクの少女は珍しい来客に浮かれていた
そのまま少女は自分の家に案内しようと青年の手を引き洞窟を奥へと進んでいく
灯りの無い洞窟を手を引かれながら移動する
しばらくするとうっすらと明るい空間に出た
奥に見える小さな家は少女のものなのだろう
「なあ、俺は食われるのか」
平静を取り戻した青年は、不意に立ち止まり不安そうに疑問を口にする
『ど、どうして…?そんなこと聞くの…?』
美味しそうな匂い…♡と考えていた少女は図星を突かれて内心穏やかではいられなかったがそれはすぐに否定される
「麓の村にたまに来る教団連中が蛇の魔物は人間を丸呑みにすると言っていた」
正直なところ青年も疑いを持ち始めていた
一時は死を覚悟したが目の前にいる少女はとてもそんな怪物とは思えない
しかし長年の刷り込みはそう簡単に消えるものではなく
故に不安を取り除きかったのだ
『それなら…私の口、見て』
あ〜ん、と口を広げるがどう見ても青年のものより一回り小さい
現状行える安全確認は済んだが別の理由で目を奪われてしまう
湯気のたつほかほかと温かそうで唾液が糸を引く真っ赤な口内を甘い吐息が鼻にかかるほどの距離で見せつけられゆっくりと男性器が膨らんでいく
と、少女が口を閉じて離れる
『もう、怖くない…?』
「あ、ああ」
女の子の前で勃起するなどあってはならない
それなのに名残惜しく感じてしまう自分がいることが恐ろしい
また頼めば見せてくれるだろうか───────────────
いけない、と浮かんでくる煩悩に蓋をして再び歩き始める
『ここ、だよ…私の家。お風呂、入ろうとしてたから沸いてる』
「ありがとう、服は…」
『桶が置いてある、その中に入れて。着る服は…私、下は持ってない…知り合いに、男物の服を頼んでおく』
「そこまでしてもらうのは申し訳ないな」
『は、裸で過ごすの…?』
ボッと少女が赤くなる
考えてみるとそれは大変よろしくない
「お言葉に甘えるよ…」
「あ゛ぁ゛ー…」
身体の芯から温まっていくのを感じる
冷えた手足がじんわりと解けるような感覚だ
長い蛇体を収めるためであろう
ジパングの温泉に似せた作りの大きな風呂は非常に居心地が良い
そういえば、風呂に入ろうとして沸かしていたと彼女は言っていた
先に入ってしまうなんて悪いことをしたなあ…
しかし気持ち良い…
『すんすん…♡男の人の下着…♡んっ…♡』
ダメだ、頭の奥がじんじんする
すぐ隣の浴室に本人がいるのにやめられない
匂いを嗅ぐだけでこんなに幸せなのに、これを下腹部に擦り付けたらどんなに気持ち良いのだろう…
朦朧とする意識の中、股に指を伸ばしかけてはたと気付く
これは、一緒に入浴するチャンスなのでは…?
バタン
浴室の扉が開閉する音に青年は大いに驚いた
自身が入っている間、この扉が動く可能性は一切考えていなかったからだ
『湯加減、大丈夫?』
「あっ、ハイ」
タオルによって申し訳程度に露出が抑えられているが
恥じらうように強く胸を押さえているせいでかえって暴力的な柔らかさを強調している
その上、広い浴槽の中でわざわざ隣に入って来た
必死に目を逸らすが彼女はお構い無しと言いたげに密着してくる
そういえばおっぱいと二の腕は同じ柔らかさだと聞いたことがあった
そんなことを考えていると不意に下半身に血流が集まるのを感z
バッターン!
『小童ども、ワシがかように働いておるのにお主らは呑気に風呂か』
「どちら様!?もしかして知り合いの方って…あ、服、ありがとうございます」
『うむうむ、元の荷物に追加して運んだだけじゃ、気にせんでよい』
もふもふの手足、大きな角、幼い外見、高位の魔物として有名なバフォメットで間違いない
『…もう出るから、少し待ってて』
『何故お主は少し不満そうなのじゃ!?』
『いつもありがと、おばあちゃん』
『大した仕事ではないから構わんが…年寄り扱いはよせ、お主、正しい呼び方をこやつに示してやれ』
「お、俺!?…お婆様?」
『敬称の問題じゃない!いいもん!お兄ちゃんに慰めてもらうもん!』
『その年でお兄ちゃん…』
『お兄ちゃんは300歳超えとるんじゃからよかろう』
『おばあちゃん、年齢四桁だって、自慢してた』
お婆様が瞳を潤ませて今にも泣き出しそうになってしまった
女性に年齢の話はタブーと聞いたことはあるが、いくつになってもそれは変わらないらしい
『ワシ帰る!』
『またね』
「ありがとうございました」
二人は随分と仲が良さそうだった
心なしか楽しそうに話す少女を見ているとこちらも嬉しくなる
『あの…もう夕方、今日は…と、泊まる…?』
「えっと…」
それはありがたい提案ではあった
しかしいくらなんでもそこまでしてもらうのは申し訳ないという遠慮と女性の家に泊まることへの緊張が青年を悩ませる
帰るのなら日が落ちる前の今しかない
そうして考え込む彼だったがまたも先手を打たれてしまった
『おばあちゃんに、夕飯用の食材…増やしてもらった、から』
「そ、それなら今日は泊まっていっていいか?」
『ん…』
これでも料理は毎日作っている
少しの心得はあるから手伝わせてくれと言ったのだが断られてしまった
することが無いので綺麗に洗われた服を暖炉の前で乾かす
例のバフォメットが作った魔法道具の一つに洗濯を自動でやってくれる物があるそうだ
揺らめく炎と着古した衣服を眺めてぼんやりしていると優しい声で呼ばれる
出来上がった夕飯は豪華で食欲をそそる良い匂いを発していた
魚介と野菜のスープやチーズの乗った肉、サラダなど彩り豊かだがその材料はいまいち分からない
『口に、合うと…いいけど』
「…うん!これは美味い」
本当に美味しい、材料はさっぱり分からないがとても美味しい
全く知らない食材もまだまだあるのだと思い知る
あっという間に平らげてしまった
一方少女はそれ以上の速度で皿を空にして微笑みながらこちらを見ていた…意外と大食いなのかもしれない
青年が食べ終えたのを確認すると恐る恐るといった様子で果物を取り出す
『デザート、おすすめ、食べて』
こちらも記憶にないものだが彼女がそこまで勧めてくるものだ、丁度甘味が欲しかったところだしありがたく頂こう
少女が丁寧に皮を剥くと綺麗な黄金色の果肉が露わになる
見るからに熟れた香りの良い果実だ
『は、半分くらい齧って…それ以上は…ちょっと濃いから、ぁ…あーん…』
「自分で食べられる、それにこれは…流石に恥ずかしいです」
『私も、恥ずかしい…だから、おあいこ』
謎理論で押し切られる青年、彼は押されると弱いのだ
「あ、あー」
言われた通り小ぶりな果実を半分ほど齧る
彼女は濃いと言っていたが、滑らかな舌触り、どろりとした果汁、強い甘みを持ちながらすっきりとした後味の果実はいくらでも食べられそうだ
ふと少女の方を見ると今しがた青年が齧ったそのもう半分を美味しそうに頬張るところだった
ゆっくりと味わいながら咀嚼し、嚥下し、指を舐るその仕草がやけに鮮明に映る
こんなにも美しく、可愛らしく、優しい少女を自分の物にしたいという欲求が下半身の疼きとなってふつふつと湧き上がって──────────
────────いけない
またしても不埒な考えを抱いてしまった
彼女はただ親切で家に置いてくれているのに、と自戒する
明日の朝すぐに帰ろうと青年は決意した
その夜のこと
ゆとりを持って大きいベッドを使用していると言われたその寝具はたしかに大きく二人で寝ても十分に間隔の取れるサイズであった
…のだが
『すぅ…すぅ…』
少女に背を向けて横たわっている青年のすぐ首筋のあたりから寝息が聞こえる
足に尻尾が巻き付き胸に腕が回され全く身動きの取れない状況、そしてこの密着度なら当然なのだが背中に押しつけられるふにふにとした柔らかい感触によって彼の男性器はビクビクと脈打っている
二の腕とおっぱいは同じ柔らかさなのだと吹聴していた麓の村の雑貨屋を脳内で殴りつつ目を閉じた
蛇の魔物だというのに妙に温かく、距離感の近さが心を許してくれているという安堵に繋がる
なんだか良く眠れそうだった
翌朝目覚めた青年は、少女を起こさぬよう注意深くベッドを抜け出し、帰る支度をしていた
幸い少女の拘束は夜中よりかなり弱まっており特に力を入れずとも簡単に抜け出すことができたのだが、起きてきた彼女に礼を伝えると小さく首を横に振った
『ま、まだ…雨、止んでない、から…ここにいて、いいよ…?』
そうは言ってもあまり長く世話になるわけにもいかない
それに自宅に戻る程度のことなら雨天でも日中であれば問題ないからと断るが頷いてはくれなかった
『なら…私の、お仕事、手伝って』
本当は一刻も早く少女から離れるべきだと思っていたが助けられた感謝は何らかの形で返したい、それならばと了承する
少女の仕事というのは洞窟内に自生する植物や鉱石の採集だった
それらをお婆様(少女曰くもっと気安く接して良いとのことなので以降ばーさんと呼ぶ)に渡すことで色々と生活に必要な物資を受け取っているらしいが実際は実家の隣にある商店のばーさんがあれこれ世話を焼いてくれる感覚だそうだ
意気揚々と鉱石の採掘に取り掛かる青年だったがあることが彼を悩ませる
少女との身体接触の時間が明らかに増えているのだ
作業効率の面からそれぞれ分かれて活動するべきだと提案しても暗がりで迷ったら大変だからと手を離してくれない
風呂も当然一緒に入ることになった、先に入るよう促したのだが背中など手の届きにくい箇所を洗い合った方が清潔だと丸め込まれてしまった
実際に頭や背中を流すだけで破廉恥なことはしていないのだが彼女に触れるだけで下半身が反応してしまう
バレたら嫌われてしまうという恐怖で気が気ではなかった
そうして悶々とした一日が過ぎてゆく
精神的な疲労もあり熟睡した青年が目を覚ますと、少女は既に寝室にはいなかった
これ以上彼女と暮らしているととんでもない過ちを犯してしまいそうだ
────────犯す
その単語が脳裏にこびりつく
「…どうしちまったんだ、俺」
少女は少し頬を赤らめ青年を待っていた
『ぁ…お、はよ…ぎゅー…』
両手を広げてハグを求めてくる
なんだか断る気が起きない、彼女の声を聴くと頭がふわふわして気持ち良い
思い切り抱きしめて胸に顔を埋めたい
ふらふらと近づいt
ドーーーン!!
『牛乳配達じゃー!乳を飲め!』
凄まじい勢いで玄関口が開き、瓶牛乳を箱に入れた元気な幼女風のバフォメットが現れた
轟音で意識が覚醒し、青年は正気を取り戻す
「ばーさん!?、朝っぱらからどうしたんだ」
『…いらっしゃい』
『ホルスタウロスミルクが手に入ったからお裾分けじゃ!ほれほれ、この辺りでは貴重品じゃぞ…って何故不満そうなのじゃ!?』
『別に…こんなに早い時間に来たこと、なかったから』
『牛乳配達といえば朝じゃろ、雰囲気重視というやつよ』
「ありがとう…ありがとうばーさん…!」
危うく一線を越えかけた青年は自分を引き戻してくれた存在に深く感謝する
『なんじゃ照れるのう、そうじゃ!お主に一つ頼みたいことがあっての、今度の試作品は靴型なんじゃがそやつは靴を履かぬしワシは毛が邪魔ゆえ足の大きさを測らせてくれ』
「ぜひ協力させてくれ!」
『助かるぞ、それではちとこやつを借りるからの』
『…変なこと、しないで、ね』
ばーさんは頷き、青年を外へ連れ出す
牛乳配達員の格好をするのに邪魔だったようで、器具は外に置かれていた
「それで一体どんな靴なんだ?」
『ふふふ、履くだけで走ったり跳んだりする行動を強化する優れものじゃ!完成したらお主にも格安で売ってやるから楽しみにしておれ』
「俺の家、分かるのか?」
『む?ここに住むのじゃろ?あやつからそう聞いたぞ』
待て、おかしい、そんな筈は無い、俺はただ雨宿りに来ただけの…雨宿りに来ただけ?
恋人のように食事をし、一緒に風呂に入り、同じ布団で眠る…
一体いつからだ?どうして疑問を持てなかった?
「な、なあばーさん…一つ聞いていいか」
『む?なんじゃ、言うてみい』
「今日の…天気を教えてくれ…」
『そんなことならあやつに聞けば良かろうに、とはいえ今日の天気は──────
───────昨日と変わらず、雲一つない晴天じゃ!』
絶句し、青年は自らの致命的な間違いに気付く
二日目には既に雨など降っていなかったのだ
そんな彼を他所に幼女は採寸を終え懐から何かを取り出す
『ほれ、手伝ってくれた礼じゃ』
「こ、れ…」
それは手の平大の果物、少女が毎食後食べさせてくれる果実と同一のものだった
『これは良いものじゃぞ、性欲増進精力増強!まぐわう時にでも使うがよい、そのかわり食べたらしっかり発散することじゃ、あまり長い間放置しておると理性が薄れてくるからの…そうやって獣のようにサカるのも一興じゃが♡』
またの〜と言い残し、幼女は転移魔法で帰って行った
一人残された青年は己がずっと毒蛇のとぐろの中にいたのだと思い知る
しかし知ることができたのだ、まだ何も遅くはない
このまま帰ってしまおう
果実の副作用など一人慰めれば済むことだ
今はとにかく恐ろしい餌場から逃げ出すことが先決
出口へ、早く光の届く所へ
これが、青年の最も重大な過ちであった
もがくほど、憐れな獲物は締め上げられるのだ
青年は暗い洞窟の地面に倒れ込む
脚に、いや、全身に力が入らない
それに熱い、何かに灼かれ焦がれるような熱が体中を駆け巡る
「な、これ…バジ…リ、クの…毒…!」
最初の日、少女が洞窟の入り口までやって来たのは決して偶然などではない
実際の視界を遥かに超える感知範囲、青年の考えはそこまで及ばなかった
何かが這いずる音が背後から着実に迫って来る
それはすぐ傍らで止まり、優しく青年を抱き寄せた
『離れちゃ…や、ぎゅー…♡』
その時初めて少女の眼を見た
蛇を思わせる縦に長い瞳孔
暗闇でも妖しい輝きを放つ毒々しい緑の虹彩
蕩けきったそれがじっとこちらを覗き込んでいる
『お家、帰ろ…♡』
弛緩し身動きの取れない青年を抱え少女は自宅へと向かう
人の身で受けることに恐怖を覚えるほど深い愛を湛えた視線を青年に向けながら
『ご、めんね…♡おちんちん熱くて…辛い、よね…♡』
少し擦れるだけですぐに射精してしまいそうなほど敏感になった男性器を刺激しないようゆっくりと服を脱がされる
全身に巻き付かれ、仮に毒に侵されていなかったとしても最早逃れられまい
『ん…ちゅ…♡』
軽く唇が触れるのと熱くぬめった膣肉が男性器を呑み込むのは同時だった
「あ…がっ」
本来なら入り口に当たるだけで射精し、ヒダの一枚一枚が擦れる毎に絶頂するほど感度を高められていた青年は、しかしそれらの快感を一瞬にして叩き込まれてしまった
脈動に合わせて白濁を吐き出すような尋常の射精ではない
体の中身を全て搾り取られるようにビュービューと噴き出し続ける
『ちゅぷ…ん…す、好き…♡えへへ…♡』
生娘らしい拙いくちづけと無垢な愛の囁きとは裏腹に膣内は精液どころか青年の全てを貪ろうと容赦なく収縮し男性器を咀嚼する
その惨たらしい捕食運動は、しかし甘く柔らかな淫肉によって行われ、決して満足させず精根尽き果てるまで求めてしまう中毒性を持つ
尤も中毒になっているのは青年だけではない
『ぁー♡これ、気持ちー…♡もっと…♡』
ひとしきり子宮口で精液を飲んだ少女は遂に腰を振り始めた
挿れるだけで男性器を搾り尽くす肉壺は大量のヒダと突起を備え、ひとたび動かせば肉ヤスリのごとくゾリゾリと理性と肉棒を削りいとも容易く脳を焼き切る魔物の快楽を刻み込む
「止め、止めて…!これっ…変に、な…!」
心の底では望んでいた恋しい少女との性行、殆ど無意識に舌を絡ませ与えられる快楽と愛情を享受していた青年は本能が警鐘を鳴らすままに叫ぶ
これは人間が許容できる範囲を超えている
このままでは壊れてしまうと
『これでいっしょ…♡ずーっといっしょ…♡』
少女は涙と涎を垂れ流し、本能を剥き出しにして腰を打ち付ける
既に精をほとんど出し切り弱々しく雫を放っていた青年の男性器が震え────
────ゴポッ…と塊のように最後の精を吐き出した
そのまま意識が遠のいていく
『あ、お…起きた…?』
目を覚ますと仮面を着けた少女がこちらを心配そうに覗き込んでいた
そんな姿にも思わず愛しさが込み上げてくる
心まで囚われてしまったようだ
「ああ、おはよう」
『ご、ごめん…ね…やり過ぎ、ちゃった…』
「謝るのはこっちの方だ。人に好意を向けられるのは慣れてなくてな、土壇場で怖くなってしまった…だから、ありがとう。俺も君が好きだよ」
『えへ…♡わ、私も大好き…♡」
そっと唇が触れ合い、結ばれた幸せを噛み締m
ドーーーン!!
『やったぞお主ら!完成じゃー!おお、お主も起きたのか!三日ぶりじゃのう!』
「三日!?俺そんなに寝てたのかよ!」
『はぁ…私、二人が仲良しな理由、分かった…』
『む?たしかにこやつとは馬が合うのう』
「謎の安心感があるな」
『二人とも、空気の読めない、ニブチン』
21/09/12 19:48更新 / 武士