エルフの嫌いなこと好きなこと
樹木が生い茂る山の中、一人の男が弓を番えて立っていた。狙う先には一山ほどの大猪――いや、魔界豚と呼ばれる魔獣が、むしゃむしゃと下草の根を食べていた。
ギリギリと弓をもう一搾りした男の手から、ぴゅんと風きり音と共に矢が放たれる。木々を抜け、枝に当たらず、まっすぐに飛ぶ矢は、狙い違わず魔界豚の額に突き刺さる。
しかし魔界豚の頭蓋骨が分厚かったからか、普通なら死亡してもおかしくは無いというのに、元気な様子で矢を放った男へと向かって走り出す。一踏み毎に地面が揺れるほどの地響きを生み出しながら、魔界豚は突っ込んでいく。
ギリギリと二本目の矢を番えた男は、今度こそと意気込んだ様子で、向かってくる魔界豚の眉間に狙いをつける。
「ウルーズ、トゥアート、アラゥ」
小さく呪文を唱えると、鏃に魔力の光が灯り始める。それを確りと視線で確認し、木を薙ぎ倒しながら迫り来る魔界豚に向かって、限界まで引き絞った矢を放つ。そしてすぐさま横に飛んで逃げる。
しかし男の矢が魔界豚に辿り着くほんの少し前、魔界豚の横合いから煌く一筋の光が突き刺さり、魔界豚は糸の切れた芝居人形の様にその場に崩れ落ちながら、砂埃を上げて地面の上を滑る。
やがて砂埃が止み、辺りが静まり返ると、木陰から人が一人出てきた。顔にはフードを被っている為、顔の造形は分からないものの、フードから覗いている金色の髪と、体に纏っている木の葉を多用した衣服からでも分かる細く柔らかそうな体型から、エルフの女性であることは丸分かりである。
「危なかったわね、メドァ」
「いいや、二の矢が間に合っていたさ。スェデギ」
メドァと呼ばれた男は、スェデギと呼んだ女性に対して、魔界豚の眉間を指差す。そこには矢羽まで深々と突き刺さった矢があった。どうやら先ほどメドァが鏃に掛けた魔法は、威力増加の効果があった様で、これならばスェデギの援護が無くても危なげは無かっただろう。
しかしそれでもスェデギは不満なようで、苛立たしげな身振りでフードを跳ね上げる。すると押し込んでいたであろう金髪が零れ出し、森に数筋降り注いでいる日の光に反射し、当たりにキラキラと陽光を振り撒いた。
「三つの約束忘れてないよね」
ぎろりと睨みつけられるようにして、きつい口調でそう詰問されたメドァは、肩を竦めて申し訳無さそうにする。
「忘れて無いさ。『無茶はしない、怪我はしない、君を残して死んだりしない』だろ」
「分かっているんなら、何で魔界豚の向かってくる真ん前に立つの!」
「いや、無茶している積もりも、怪我する積もりも無く。大丈夫だと思ってたんだけど」
「もう、前からメドァは!」
先ほどの魔界豚の歩みにも負けないほど、ズンズンと足音を立てて歩み寄ってくる。殴られるぐらいの覚悟は済ませたような表情で、メドァは逃げ出すことも無く彼女が近づいてくるのを待った。
やがて二人の距離が近づき、もう手を伸ばせば届く距離になる。しかしその歩みは、メドァの胸板にスェデギの額がくっ付まで続いた。
「人間は死にやすいんだから、もっと安全に気を配ってよ」
そしてメドァの無事を確認するかのように、スェデギは彼の腰に腕を回してギュッと抱きしめた。
意外な行動だったのか、メドァは困ったような表情を一瞬浮かべた後で、申し訳無さそうな顔付きになると抱きしめ返す。
「ごめん。そんなに心配されるだなんて、思ってもみなかった」
「……私がメドァの事蔑ろにした事あった?」
「いやそういう意味じゃなくて。スェデギには、俺が君を残して死ぬような男に見えているんだなって思ってさ」
「だって、いっつも無茶なことするじゃない」
「自分では安全だと思ってやっているんだよ。だってほら、俺は人間じゃなくなったし」
そこで暫く二人の間に沈黙が流れる。エルフのスェデギは、彼の言った内容を忘れていたかのようにポカンとし。メドァは彼女と自分との認識に、どうして差があったのかを理解して。
「さ、さーて、獲物も取れたことだし、日も傾き始めたし」
「そ、そうね。もうそろそろ引き上げて、周りにお裾分けしないとね」
やがて二人どちらとも無く気まずげに体を離すと、何事も無かったかのように会話を再開する。
「じゃあ何時も通り、足を縛るのお願いするよ」
「じゃあ運ぶのは宜しくね」
エルフ語でスェデギが周りに働きかけると、木々が生物かのように動き出し、つる草が何重にも仕留めた魔界豚の足に絡みつき、その股の輪を太い木の枝が通過する。再度つる草が足と枝に絡みつくと、独りでに枝が木から切り離される。
そんな不思議な光景を、不思議と思っていなさそうな気軽さで、メドァは自分の腕ほどの太さのある枝を掴む。そして軽々といった感じで、小山ほどの魔界豚を持ち上げて歩き始める。
スェデギは彼が運ぶ手伝いをする素振りは見せずに、そのまま彼の隣に立って森の中を歩き始めた。
家での魔界豚の解体作業が終わり。近く――といっても田舎基準の近さの近隣住民に配り終わった二人。
今はのんびりと暖炉の前にある椅子に座って、スェデギが淹れた体力回復効果のあるエルフの薬草茶を飲んでいた。
「はぁ〜。このお茶何時飲んでも美味しいな〜」
「そうでしょ、そうでしょ。お代わりあるから、まだまだどうぞ〜」
陶器製のカップに、これまた陶器製のポットからお茶を淹れる。
「お茶も良いけど、折角新鮮な肉を手に入れたんだから。ちょっと早いけど晩御飯にしない?」
「いや、でもね、やっぱり晩御飯はもうちょっと遅くたって。それにまだお茶だって沢山――」
「まだ肉食べられないの?」
「うッ……別に食べられないわけじゃ。ちょっと苦手なだけで」
本来生物の肉を食べないエルフ。伴侶を得て里から追放されたとはいえ、その一員であるスェデギに肉に対しての抵抗があっても不思議は無い。
「まったく、仕方が無い……それじゃあ何時も通りに特訓だ」
「別にお肉なんて食べなくたって、木の実とか野草とか……」
「その事は結婚する時に、散々話し合って決めただろう。食事関係は人間である俺に譲歩してくれるって」
「やっぱりその約束は無しに……」
「問答無用。はい熱したフライパンに、お肉を投下ー」
じゅわわと、暖炉で熱された鉄のフライパンに乗った、一切れの薄切り肉が鳴る。
程なくして、脂が溶け始めた豚肉特有の良い匂いがし始める。思わず人間ならば口内によだれが溢れる香りなのだが、しかし肉が苦手なスェデギにとってはその匂いもダメなのか、少しだけ気分の悪そうな顔色になる。
「ほら、抱きついていいから。我慢我慢」
「うん……」
ノロノロとメドァの後ろから抱きついたスェデギは、肉の焼ける匂いを彼の体臭で誤魔化すかのように、鼻先を彼の背中に付けて息をしだす。
そんな様子を微笑ましそうに見つめた後で、メドァは良い感じに焼けた肉をフォークに突き刺して、自分の顔の前に持ってくる。
「ふー、ふー……はぐ、あひあひ」
ぱちぱちと脂が鳴る豚肉を熱そうに口に含みながら、もぐもぐと咀嚼していく。
やがて口の中で溢れていた唾液と完全に混ぜ合わさったのか、少し水っぽい咀嚼音が鳴りだす。
「んっ……」
振り返りスェデギの肩を掴んだメドァは、ゆっくりと彼女の顔に自分の顔を近づけていく。
愛しい夫の口付けという甘美と、その口の中には苦手な肉があるという事実に、少しだけメドァは気後れしたような表情を浮かべた後で、どうにでもなれと捨て鉢になった様子で、メドァの唇に自分の唇を寄せていった。
「んっ、ちゅ、ちゅ……んぅー」
最初は軽く唇同士で触れ合うキスをし、続いて深いキスに移行する段階で、メドァは口の中で咀嚼した肉をスェデギに下で受け渡す。
「んんぅ!うぅ……ごくっ。ちゅぐ、ちゅぐちゅ」
肉の味を舌に受けて驚いたような声を上げたスェデギは、続いて泣きそうな表情を浮かべつつ飲み込む。そして口直しするかのように、メドァの口の中を舌で舐め回す。
三分ほどそうやっていたが、メドァに軽く肩を押されて、渋々と言った感じでメドァは唇を放す。
「じゃあ今度は、自分で噛んで味わってみよう」
「お肉食べたから、もう良いでしょぉ……」
「だーめ。一切れ――だと可哀想だから、一欠けらだけ。はい、頑張ってみよう。あーん」
喋りながらメドァが焼き上げた、一切れの薄切り肉。その端を千切るかのようにして分離した肉が、フォークに突き刺さって目の前に差し出される。
「うぅぅ……あ、あーん。もぐ、うぐ!」
「はい、我慢我慢」
思わず口から吐き出そうとするスェデギを、メドァは抱きしめつつあやすかのように頭を撫でる。
そんな事で誤魔化されるかと言わんばかりににらみつけるスェデギ。だが好きな夫に抱きしめられながら頭を撫でられると、とろんとしてしまうのは魔物娘ゆえ致し方の無いこと。
なので肉の味という不快な感情が眉間の皺に、抱きしめ頭を撫でられる嬉しさが目じりの緩みになる。
「う……うぐん!」
そんな苦痛と幸福とがない交ぜになった表情で、どうにかこうにか肉を飲み下した。
「ちゃんと食べられたな。偉いぞスェデギ」
「こ、こんな事で褒められたって……」
「いやいや、ちゃんと進歩しているよ。だって前までは、肉を飲み込むことが出来なかったじゃないか。だからちゃんと訓練すれば、肉を食べられるようになるさ」
「じゃ、じゃあもう今日は……」
言外に肉を食べる訓練しなくてもいいかと問いかけられたメドァは、少し悩むような素振りを見せる。
「うーん、まだ肉はあるし、俺はご飯食べて無いんだけど……」
一言一言でうるうると涙目になっていくスェデギを見て、これ以上は流石に拙いと思ったのか、メドァは彼女を安心させるかのように、少し力強く抱きしめる。
「スェデギは頑張ったんだから、ご褒美を上げなきゃね」
「ああ、メドァ……」
ご褒美という単語で、どういう事をしてもらえるか悟った様子のスェデギは、うっとりとした表情でメドァに口付けをしようとする。
しかし二人の唇が合わさるその瞬間にスェデギの小鼻が動き、そしてスェデギはメドァを突き飛ばすかのように体を離す。
一体どうしたことかとメドァが戸惑う中、スェデギは幸せな気分を害されたといった表情で、メドァに提案を口にする。
「口、洗いましょう。あとミントの葉も口に含んで、完全に肉の匂いを追い出すの」
そこまで肉のことを嫌いかと、これからの食意識の改善への長い道のりを意識したようで、メドァは少しだけ苦笑いしていた。
さてスェデギにとって苦しい時間が終わり、今は彼女の伴侶との甘いひと時の真っ最中。
椅子に座ったメドァの上にスェデギが座る形のまま、二人は唇を合わせている。
「もっとぉ、もっと愛して……」
「ああ、分かってるよ」
隙間なく重なり合った二人の唇が、呼吸のために離れる数瞬を活かして、二人は言葉のコミュニケーションを交わす。
腰に回した腕を更にきつく巻き付けながら、メドァはスェデギの口の中を荒々しく犯していく。
「あんッ、ちゅむ……ステキ」
体を腕で占められて苦しいだろうに、それでもスェデギは苦痛ではなく恍惚の表情を浮かべる。しかも締め付ける腕の力が増す度に、その色の度合いが強まっていく。
「本当にスェデギは荒く愛されるの好きだよな」
「んぅ、ちがうの。荒いのが、好きなんじゃないのぉ」
「知ってる。甘いのも大好きなんだよね」
「ああんぅ!耳、耳をハムハムされてるぅ!!」
口を離しての短い会話の後に、メドァはスェデギの尖った耳の先端を唇で啄ばみ始める。
耳が弱いのか、唇が耳の溝を撫でる度にスェデギは体をピクピクと動かしてしまう。
「愛しているよ、スェデギ。愛している。大好きだ。君無しじゃ生きられない」
「耳元で、喋っちゃ、だめぇ……」
「金色の髪はサラサラで思わず撫でたくなるよ。ツンと尖った耳も愛らしいよ。細く長い白い首に、控えめだけどちゃんとある胸も、細いけどしなやかな腰に、柔らかいお尻。全部大好きだ」
「もぅ、だめだってばぁ……」
自分の各部を名指しで褒められて、もうすっかりと先ほどあった嫌な事を忘れたように、スェデギの顔に締りがなくなりそうだ。
「ほら、耳ばっかり気にしていいのかな?」
「んうぃ!?」
葉っぱの服の上から、少し控えめの胸を優しげに揉み込んで行くと、メドァの膝の上から立ち上がるかの勢いで、スェデギの体が反応する。
「耳舐められながら、胸を揉まれるの大好きでしょ」
「だめ、だめ。胸も耳も弱いの……」
「じゃあ何処なら大丈夫?」
「ど、どこって……」
その間にも胸を揉まれ、耳の溝を舌で撫でられ続けて、じんわりと快楽が増してきたのか、ピクピクと太ももの筋肉が震え始めている。
「言わないなら、耳の穴、犯しちゃうよ?」
「待って、言うから、言うからあぁぁあぁ!!」
耳の穴に舌の先を突っ込まれ、ぴちゃくちゃと愛撫された途端、スェデギの口から悲鳴とも嬌声とも取れない大声が漏れ出した。
「くちゅ、ちゅぴ、ほら、何処?」
「みみ、みみのあなが!」
「耳の穴だね?」
「ち、ちがぁぁぁうぅぃ!?」
思わず自分の状況を口に出してしまったスェデギの言葉を受けて、メドァの舌がより深く巧みに耳の穴を犯していく。
さらに拒否されなかったからか、胸を揉む強さが上がり、頻度も早くなっていく。
「だめ、そんな、いじめたら、いく、いっちゃう。さきに、いっちゃう!!」
「いいよ、先に逝って。耳と胸だけで、逝っちゃえば良い」
「そ、そんな、耳と胸だけでなんてぇ……」
「恥ずかしい?じゃあココも弄ってあげよう」
「ホントにそこは、ま、ぁてぇえええええんぅうう!!!」
胸から放した左手をスェデギの股間に差し入れたメドァは、その人差し指で布に覆われつつも濡れている割れ目をなぞり上げつつ、勃起していた陰核を撫で上げる。すると電撃を受けたかのように、スェデギの体は硬直し、口からは大声を出す。
その口を塞ぐようにしてメドァが唇で覆う。しかし舌はスェデギの口内を暴れ回り、右手はぎゅっぎゅっと小さな胸を軽く力を入れて揉み、左手はしゅっしゅっと陰核のある部分を撫でて、より一層高い快楽を与えて上げようとしている。
「んぅぅ!んうぅうううぅう!!」
硬直していた体がガクガク震え始め、塞がれた口からは絶えず嬌声を上げ、スェデギは絶頂し続けながらも、更に高い位置で絶頂を繰り返す。
やがて目の光が弱まり気絶する寸前に、メドァの口と手が止まる。
「どうかな?」
「気持ち、良すぎだよぉ……」
気持ちよくしてくれたお礼のように、もっと快楽を要求するように、メドァにネットリとしたキスをスェデギは交わす。
「んちゅ……じゃぁ、俺の方も気持ちよくしてもらおうかな」
スェデギの手を取り、自分のズボンの下で怒張している股間を撫でさせながら、メドァは耳元で優しい声色で言葉を掛ける。
「もぉ、しょうがないなぁ」
口ではそう言いつつも、顔は嫌そうな素振り一つ無く、メドァの膝から降りて床に膝を着いたスェデギは、手でズボンの合わせを解いていく。
やがてこの瞬間を待ちわびたかの様に、怒張した陰茎が顔を出すと、スェデギはゆっくりと舌を這わせていく。
「ぺろぉ、れろぉぅ。おちんぽ、おいひぃ……」
「肉は嫌いなのに、肉棒は好きなんだ?」
「もぅ、意地悪」
メドァの趣味の悪い冗談に気分を害したかのように、スェデギは大口を開けて陰茎を口に含む。
そして舌を蔦の様に絡ませてから、上下に頭を振っていく。
「気持ち良いよ。その調子その調子」
「うぅん……」
「頭はお気に召さないようだ。じゃあ耳を――」
「ううんッ!」
頭を撫でられて腰が震えたスェデギを見て、メドァは撫でる目標を弱点である耳に変更する。
耳を撫でられたスェデギは、まだ絶頂の残滓がある体を震わせながらも、メドァの陰茎を噛むことも放すことも無く、愛撫を続けていく。
「俺も愛撫してた時滾ってたから、もうそろそろ出しそう」
「……んぁ」
「ん?どうして止めるんだ??」
「だって、もう、我慢できない」
震える膝で立ち上がると、木の葉で編んだスカートを両手でつまんで持ち上げる。すると股間を覆っている布が濡れ、暖炉の火の光で薄っすらと中が透けて見えた。
しかも愛しい夫に見せているという興奮を得たのか、スェデギの股間の布が吸いきれなかった愛液が、太ももを伝って流れ落ちていくのが光って見える。
「しょうがないな、ホラおいで」
「うん。お邪魔するね」
椅子に座ったままのメドァに、真正面から抱きつくような形でスェデギは跨ると、股間の布を横にずらして陰部を外気に晒す。
そして陰部に陰茎を付け、膣口に確りと亀頭の先端を咥え込むと、そのまま下へと腰を落としていく。
「んぅうぅううぅう……」
歯を食いしばりながら、自分の中を一杯にしていくメドァの陰茎の感触に耐える。しかしそれは苦痛だからではなく、余りの快楽に腰が抜けそうになるの我慢する為である。
「今日は、また一段と、凄いね」
しかし口淫で高められていたメドァの方も余裕が無いようで、スェデギの膣の咥え込みに暴発しないように歯を食いしばっている。
その後二人とも近づいて口付けを交わした後、スェデギはゆるゆると腰を動かしていく。
「あんまり、焦らさないでね。すぐに、出してね」
「どうして。楽しめば、いいじゃないか」
「分かってる、癖にぃ」
腰を動かしながらも、耐えるように眉根を寄せているスェデギ。
それに合わせる様に、メドァはスェデギの腰に手を当てて動かしてやる。
暖炉の前の椅子の上、緩い動きながらも確りと性交をする二人。ぐちゅぐちゅと粘ついた音が響き、時折吐息の様な快楽を逃がす声が漏れる。
「あんぅ……あんまり、そこは、いっちゃうからぁ」
「そっちだって、あんまり、きつく、締めるなよ」
ゆっくりな高め合いの中で、スェデギの膣内は収縮を繰り返し始めて精液をねだり始め、メドァの陰茎からはトロトロと先走りの透明な液が漏れ出て行く。
「もう、いっちゃう。ねぇ、だしてよぉ」
「大丈夫。もう、出る……」
言葉を交わし、ゆっくりと腰を合わせ、唇を重ねながら、そのまま二人は静かにお互いに絶頂を迎える。
ビクビクとお互いの下腹が震え、メドァの陰茎が白い液体を吐き出し、スェデギの膣がそれを飲み干しながら、飲みきれなかったものが二人が繋がっている隙間から零れ落ちる。
「はぅん、んぅぁ……気持ちよかった」
「んぅちゅ。満足?」
「ううん、まだ足りない。でも、次はベッドが良い」
「しょうがないな……」
「ひゃぁぅ!」
繋がったまま、抱っこの要領で立ち上がったメドァは、そのままベッドの上に直行し、押し倒す形でスェデギに乗りかかる。
「このままもう一回戦ということで」
「うん。もう一回頂戴♪」
そうして二人はもう一度愛を確かめる行為を始め、二人とも疲れ果てて眠るまでそれは続く。
翌日。魔界豚の豚骨スープを前に、スェデギは泣きそうな顔をするのだが、それはまた今度のお話にでも。
ギリギリと弓をもう一搾りした男の手から、ぴゅんと風きり音と共に矢が放たれる。木々を抜け、枝に当たらず、まっすぐに飛ぶ矢は、狙い違わず魔界豚の額に突き刺さる。
しかし魔界豚の頭蓋骨が分厚かったからか、普通なら死亡してもおかしくは無いというのに、元気な様子で矢を放った男へと向かって走り出す。一踏み毎に地面が揺れるほどの地響きを生み出しながら、魔界豚は突っ込んでいく。
ギリギリと二本目の矢を番えた男は、今度こそと意気込んだ様子で、向かってくる魔界豚の眉間に狙いをつける。
「ウルーズ、トゥアート、アラゥ」
小さく呪文を唱えると、鏃に魔力の光が灯り始める。それを確りと視線で確認し、木を薙ぎ倒しながら迫り来る魔界豚に向かって、限界まで引き絞った矢を放つ。そしてすぐさま横に飛んで逃げる。
しかし男の矢が魔界豚に辿り着くほんの少し前、魔界豚の横合いから煌く一筋の光が突き刺さり、魔界豚は糸の切れた芝居人形の様にその場に崩れ落ちながら、砂埃を上げて地面の上を滑る。
やがて砂埃が止み、辺りが静まり返ると、木陰から人が一人出てきた。顔にはフードを被っている為、顔の造形は分からないものの、フードから覗いている金色の髪と、体に纏っている木の葉を多用した衣服からでも分かる細く柔らかそうな体型から、エルフの女性であることは丸分かりである。
「危なかったわね、メドァ」
「いいや、二の矢が間に合っていたさ。スェデギ」
メドァと呼ばれた男は、スェデギと呼んだ女性に対して、魔界豚の眉間を指差す。そこには矢羽まで深々と突き刺さった矢があった。どうやら先ほどメドァが鏃に掛けた魔法は、威力増加の効果があった様で、これならばスェデギの援護が無くても危なげは無かっただろう。
しかしそれでもスェデギは不満なようで、苛立たしげな身振りでフードを跳ね上げる。すると押し込んでいたであろう金髪が零れ出し、森に数筋降り注いでいる日の光に反射し、当たりにキラキラと陽光を振り撒いた。
「三つの約束忘れてないよね」
ぎろりと睨みつけられるようにして、きつい口調でそう詰問されたメドァは、肩を竦めて申し訳無さそうにする。
「忘れて無いさ。『無茶はしない、怪我はしない、君を残して死んだりしない』だろ」
「分かっているんなら、何で魔界豚の向かってくる真ん前に立つの!」
「いや、無茶している積もりも、怪我する積もりも無く。大丈夫だと思ってたんだけど」
「もう、前からメドァは!」
先ほどの魔界豚の歩みにも負けないほど、ズンズンと足音を立てて歩み寄ってくる。殴られるぐらいの覚悟は済ませたような表情で、メドァは逃げ出すことも無く彼女が近づいてくるのを待った。
やがて二人の距離が近づき、もう手を伸ばせば届く距離になる。しかしその歩みは、メドァの胸板にスェデギの額がくっ付まで続いた。
「人間は死にやすいんだから、もっと安全に気を配ってよ」
そしてメドァの無事を確認するかのように、スェデギは彼の腰に腕を回してギュッと抱きしめた。
意外な行動だったのか、メドァは困ったような表情を一瞬浮かべた後で、申し訳無さそうな顔付きになると抱きしめ返す。
「ごめん。そんなに心配されるだなんて、思ってもみなかった」
「……私がメドァの事蔑ろにした事あった?」
「いやそういう意味じゃなくて。スェデギには、俺が君を残して死ぬような男に見えているんだなって思ってさ」
「だって、いっつも無茶なことするじゃない」
「自分では安全だと思ってやっているんだよ。だってほら、俺は人間じゃなくなったし」
そこで暫く二人の間に沈黙が流れる。エルフのスェデギは、彼の言った内容を忘れていたかのようにポカンとし。メドァは彼女と自分との認識に、どうして差があったのかを理解して。
「さ、さーて、獲物も取れたことだし、日も傾き始めたし」
「そ、そうね。もうそろそろ引き上げて、周りにお裾分けしないとね」
やがて二人どちらとも無く気まずげに体を離すと、何事も無かったかのように会話を再開する。
「じゃあ何時も通り、足を縛るのお願いするよ」
「じゃあ運ぶのは宜しくね」
エルフ語でスェデギが周りに働きかけると、木々が生物かのように動き出し、つる草が何重にも仕留めた魔界豚の足に絡みつき、その股の輪を太い木の枝が通過する。再度つる草が足と枝に絡みつくと、独りでに枝が木から切り離される。
そんな不思議な光景を、不思議と思っていなさそうな気軽さで、メドァは自分の腕ほどの太さのある枝を掴む。そして軽々といった感じで、小山ほどの魔界豚を持ち上げて歩き始める。
スェデギは彼が運ぶ手伝いをする素振りは見せずに、そのまま彼の隣に立って森の中を歩き始めた。
家での魔界豚の解体作業が終わり。近く――といっても田舎基準の近さの近隣住民に配り終わった二人。
今はのんびりと暖炉の前にある椅子に座って、スェデギが淹れた体力回復効果のあるエルフの薬草茶を飲んでいた。
「はぁ〜。このお茶何時飲んでも美味しいな〜」
「そうでしょ、そうでしょ。お代わりあるから、まだまだどうぞ〜」
陶器製のカップに、これまた陶器製のポットからお茶を淹れる。
「お茶も良いけど、折角新鮮な肉を手に入れたんだから。ちょっと早いけど晩御飯にしない?」
「いや、でもね、やっぱり晩御飯はもうちょっと遅くたって。それにまだお茶だって沢山――」
「まだ肉食べられないの?」
「うッ……別に食べられないわけじゃ。ちょっと苦手なだけで」
本来生物の肉を食べないエルフ。伴侶を得て里から追放されたとはいえ、その一員であるスェデギに肉に対しての抵抗があっても不思議は無い。
「まったく、仕方が無い……それじゃあ何時も通りに特訓だ」
「別にお肉なんて食べなくたって、木の実とか野草とか……」
「その事は結婚する時に、散々話し合って決めただろう。食事関係は人間である俺に譲歩してくれるって」
「やっぱりその約束は無しに……」
「問答無用。はい熱したフライパンに、お肉を投下ー」
じゅわわと、暖炉で熱された鉄のフライパンに乗った、一切れの薄切り肉が鳴る。
程なくして、脂が溶け始めた豚肉特有の良い匂いがし始める。思わず人間ならば口内によだれが溢れる香りなのだが、しかし肉が苦手なスェデギにとってはその匂いもダメなのか、少しだけ気分の悪そうな顔色になる。
「ほら、抱きついていいから。我慢我慢」
「うん……」
ノロノロとメドァの後ろから抱きついたスェデギは、肉の焼ける匂いを彼の体臭で誤魔化すかのように、鼻先を彼の背中に付けて息をしだす。
そんな様子を微笑ましそうに見つめた後で、メドァは良い感じに焼けた肉をフォークに突き刺して、自分の顔の前に持ってくる。
「ふー、ふー……はぐ、あひあひ」
ぱちぱちと脂が鳴る豚肉を熱そうに口に含みながら、もぐもぐと咀嚼していく。
やがて口の中で溢れていた唾液と完全に混ぜ合わさったのか、少し水っぽい咀嚼音が鳴りだす。
「んっ……」
振り返りスェデギの肩を掴んだメドァは、ゆっくりと彼女の顔に自分の顔を近づけていく。
愛しい夫の口付けという甘美と、その口の中には苦手な肉があるという事実に、少しだけメドァは気後れしたような表情を浮かべた後で、どうにでもなれと捨て鉢になった様子で、メドァの唇に自分の唇を寄せていった。
「んっ、ちゅ、ちゅ……んぅー」
最初は軽く唇同士で触れ合うキスをし、続いて深いキスに移行する段階で、メドァは口の中で咀嚼した肉をスェデギに下で受け渡す。
「んんぅ!うぅ……ごくっ。ちゅぐ、ちゅぐちゅ」
肉の味を舌に受けて驚いたような声を上げたスェデギは、続いて泣きそうな表情を浮かべつつ飲み込む。そして口直しするかのように、メドァの口の中を舌で舐め回す。
三分ほどそうやっていたが、メドァに軽く肩を押されて、渋々と言った感じでメドァは唇を放す。
「じゃあ今度は、自分で噛んで味わってみよう」
「お肉食べたから、もう良いでしょぉ……」
「だーめ。一切れ――だと可哀想だから、一欠けらだけ。はい、頑張ってみよう。あーん」
喋りながらメドァが焼き上げた、一切れの薄切り肉。その端を千切るかのようにして分離した肉が、フォークに突き刺さって目の前に差し出される。
「うぅぅ……あ、あーん。もぐ、うぐ!」
「はい、我慢我慢」
思わず口から吐き出そうとするスェデギを、メドァは抱きしめつつあやすかのように頭を撫でる。
そんな事で誤魔化されるかと言わんばかりににらみつけるスェデギ。だが好きな夫に抱きしめられながら頭を撫でられると、とろんとしてしまうのは魔物娘ゆえ致し方の無いこと。
なので肉の味という不快な感情が眉間の皺に、抱きしめ頭を撫でられる嬉しさが目じりの緩みになる。
「う……うぐん!」
そんな苦痛と幸福とがない交ぜになった表情で、どうにかこうにか肉を飲み下した。
「ちゃんと食べられたな。偉いぞスェデギ」
「こ、こんな事で褒められたって……」
「いやいや、ちゃんと進歩しているよ。だって前までは、肉を飲み込むことが出来なかったじゃないか。だからちゃんと訓練すれば、肉を食べられるようになるさ」
「じゃ、じゃあもう今日は……」
言外に肉を食べる訓練しなくてもいいかと問いかけられたメドァは、少し悩むような素振りを見せる。
「うーん、まだ肉はあるし、俺はご飯食べて無いんだけど……」
一言一言でうるうると涙目になっていくスェデギを見て、これ以上は流石に拙いと思ったのか、メドァは彼女を安心させるかのように、少し力強く抱きしめる。
「スェデギは頑張ったんだから、ご褒美を上げなきゃね」
「ああ、メドァ……」
ご褒美という単語で、どういう事をしてもらえるか悟った様子のスェデギは、うっとりとした表情でメドァに口付けをしようとする。
しかし二人の唇が合わさるその瞬間にスェデギの小鼻が動き、そしてスェデギはメドァを突き飛ばすかのように体を離す。
一体どうしたことかとメドァが戸惑う中、スェデギは幸せな気分を害されたといった表情で、メドァに提案を口にする。
「口、洗いましょう。あとミントの葉も口に含んで、完全に肉の匂いを追い出すの」
そこまで肉のことを嫌いかと、これからの食意識の改善への長い道のりを意識したようで、メドァは少しだけ苦笑いしていた。
さてスェデギにとって苦しい時間が終わり、今は彼女の伴侶との甘いひと時の真っ最中。
椅子に座ったメドァの上にスェデギが座る形のまま、二人は唇を合わせている。
「もっとぉ、もっと愛して……」
「ああ、分かってるよ」
隙間なく重なり合った二人の唇が、呼吸のために離れる数瞬を活かして、二人は言葉のコミュニケーションを交わす。
腰に回した腕を更にきつく巻き付けながら、メドァはスェデギの口の中を荒々しく犯していく。
「あんッ、ちゅむ……ステキ」
体を腕で占められて苦しいだろうに、それでもスェデギは苦痛ではなく恍惚の表情を浮かべる。しかも締め付ける腕の力が増す度に、その色の度合いが強まっていく。
「本当にスェデギは荒く愛されるの好きだよな」
「んぅ、ちがうの。荒いのが、好きなんじゃないのぉ」
「知ってる。甘いのも大好きなんだよね」
「ああんぅ!耳、耳をハムハムされてるぅ!!」
口を離しての短い会話の後に、メドァはスェデギの尖った耳の先端を唇で啄ばみ始める。
耳が弱いのか、唇が耳の溝を撫でる度にスェデギは体をピクピクと動かしてしまう。
「愛しているよ、スェデギ。愛している。大好きだ。君無しじゃ生きられない」
「耳元で、喋っちゃ、だめぇ……」
「金色の髪はサラサラで思わず撫でたくなるよ。ツンと尖った耳も愛らしいよ。細く長い白い首に、控えめだけどちゃんとある胸も、細いけどしなやかな腰に、柔らかいお尻。全部大好きだ」
「もぅ、だめだってばぁ……」
自分の各部を名指しで褒められて、もうすっかりと先ほどあった嫌な事を忘れたように、スェデギの顔に締りがなくなりそうだ。
「ほら、耳ばっかり気にしていいのかな?」
「んうぃ!?」
葉っぱの服の上から、少し控えめの胸を優しげに揉み込んで行くと、メドァの膝の上から立ち上がるかの勢いで、スェデギの体が反応する。
「耳舐められながら、胸を揉まれるの大好きでしょ」
「だめ、だめ。胸も耳も弱いの……」
「じゃあ何処なら大丈夫?」
「ど、どこって……」
その間にも胸を揉まれ、耳の溝を舌で撫でられ続けて、じんわりと快楽が増してきたのか、ピクピクと太ももの筋肉が震え始めている。
「言わないなら、耳の穴、犯しちゃうよ?」
「待って、言うから、言うからあぁぁあぁ!!」
耳の穴に舌の先を突っ込まれ、ぴちゃくちゃと愛撫された途端、スェデギの口から悲鳴とも嬌声とも取れない大声が漏れ出した。
「くちゅ、ちゅぴ、ほら、何処?」
「みみ、みみのあなが!」
「耳の穴だね?」
「ち、ちがぁぁぁうぅぃ!?」
思わず自分の状況を口に出してしまったスェデギの言葉を受けて、メドァの舌がより深く巧みに耳の穴を犯していく。
さらに拒否されなかったからか、胸を揉む強さが上がり、頻度も早くなっていく。
「だめ、そんな、いじめたら、いく、いっちゃう。さきに、いっちゃう!!」
「いいよ、先に逝って。耳と胸だけで、逝っちゃえば良い」
「そ、そんな、耳と胸だけでなんてぇ……」
「恥ずかしい?じゃあココも弄ってあげよう」
「ホントにそこは、ま、ぁてぇえええええんぅうう!!!」
胸から放した左手をスェデギの股間に差し入れたメドァは、その人差し指で布に覆われつつも濡れている割れ目をなぞり上げつつ、勃起していた陰核を撫で上げる。すると電撃を受けたかのように、スェデギの体は硬直し、口からは大声を出す。
その口を塞ぐようにしてメドァが唇で覆う。しかし舌はスェデギの口内を暴れ回り、右手はぎゅっぎゅっと小さな胸を軽く力を入れて揉み、左手はしゅっしゅっと陰核のある部分を撫でて、より一層高い快楽を与えて上げようとしている。
「んぅぅ!んうぅうううぅう!!」
硬直していた体がガクガク震え始め、塞がれた口からは絶えず嬌声を上げ、スェデギは絶頂し続けながらも、更に高い位置で絶頂を繰り返す。
やがて目の光が弱まり気絶する寸前に、メドァの口と手が止まる。
「どうかな?」
「気持ち、良すぎだよぉ……」
気持ちよくしてくれたお礼のように、もっと快楽を要求するように、メドァにネットリとしたキスをスェデギは交わす。
「んちゅ……じゃぁ、俺の方も気持ちよくしてもらおうかな」
スェデギの手を取り、自分のズボンの下で怒張している股間を撫でさせながら、メドァは耳元で優しい声色で言葉を掛ける。
「もぉ、しょうがないなぁ」
口ではそう言いつつも、顔は嫌そうな素振り一つ無く、メドァの膝から降りて床に膝を着いたスェデギは、手でズボンの合わせを解いていく。
やがてこの瞬間を待ちわびたかの様に、怒張した陰茎が顔を出すと、スェデギはゆっくりと舌を這わせていく。
「ぺろぉ、れろぉぅ。おちんぽ、おいひぃ……」
「肉は嫌いなのに、肉棒は好きなんだ?」
「もぅ、意地悪」
メドァの趣味の悪い冗談に気分を害したかのように、スェデギは大口を開けて陰茎を口に含む。
そして舌を蔦の様に絡ませてから、上下に頭を振っていく。
「気持ち良いよ。その調子その調子」
「うぅん……」
「頭はお気に召さないようだ。じゃあ耳を――」
「ううんッ!」
頭を撫でられて腰が震えたスェデギを見て、メドァは撫でる目標を弱点である耳に変更する。
耳を撫でられたスェデギは、まだ絶頂の残滓がある体を震わせながらも、メドァの陰茎を噛むことも放すことも無く、愛撫を続けていく。
「俺も愛撫してた時滾ってたから、もうそろそろ出しそう」
「……んぁ」
「ん?どうして止めるんだ??」
「だって、もう、我慢できない」
震える膝で立ち上がると、木の葉で編んだスカートを両手でつまんで持ち上げる。すると股間を覆っている布が濡れ、暖炉の火の光で薄っすらと中が透けて見えた。
しかも愛しい夫に見せているという興奮を得たのか、スェデギの股間の布が吸いきれなかった愛液が、太ももを伝って流れ落ちていくのが光って見える。
「しょうがないな、ホラおいで」
「うん。お邪魔するね」
椅子に座ったままのメドァに、真正面から抱きつくような形でスェデギは跨ると、股間の布を横にずらして陰部を外気に晒す。
そして陰部に陰茎を付け、膣口に確りと亀頭の先端を咥え込むと、そのまま下へと腰を落としていく。
「んぅうぅううぅう……」
歯を食いしばりながら、自分の中を一杯にしていくメドァの陰茎の感触に耐える。しかしそれは苦痛だからではなく、余りの快楽に腰が抜けそうになるの我慢する為である。
「今日は、また一段と、凄いね」
しかし口淫で高められていたメドァの方も余裕が無いようで、スェデギの膣の咥え込みに暴発しないように歯を食いしばっている。
その後二人とも近づいて口付けを交わした後、スェデギはゆるゆると腰を動かしていく。
「あんまり、焦らさないでね。すぐに、出してね」
「どうして。楽しめば、いいじゃないか」
「分かってる、癖にぃ」
腰を動かしながらも、耐えるように眉根を寄せているスェデギ。
それに合わせる様に、メドァはスェデギの腰に手を当てて動かしてやる。
暖炉の前の椅子の上、緩い動きながらも確りと性交をする二人。ぐちゅぐちゅと粘ついた音が響き、時折吐息の様な快楽を逃がす声が漏れる。
「あんぅ……あんまり、そこは、いっちゃうからぁ」
「そっちだって、あんまり、きつく、締めるなよ」
ゆっくりな高め合いの中で、スェデギの膣内は収縮を繰り返し始めて精液をねだり始め、メドァの陰茎からはトロトロと先走りの透明な液が漏れ出て行く。
「もう、いっちゃう。ねぇ、だしてよぉ」
「大丈夫。もう、出る……」
言葉を交わし、ゆっくりと腰を合わせ、唇を重ねながら、そのまま二人は静かにお互いに絶頂を迎える。
ビクビクとお互いの下腹が震え、メドァの陰茎が白い液体を吐き出し、スェデギの膣がそれを飲み干しながら、飲みきれなかったものが二人が繋がっている隙間から零れ落ちる。
「はぅん、んぅぁ……気持ちよかった」
「んぅちゅ。満足?」
「ううん、まだ足りない。でも、次はベッドが良い」
「しょうがないな……」
「ひゃぁぅ!」
繋がったまま、抱っこの要領で立ち上がったメドァは、そのままベッドの上に直行し、押し倒す形でスェデギに乗りかかる。
「このままもう一回戦ということで」
「うん。もう一回頂戴♪」
そうして二人はもう一度愛を確かめる行為を始め、二人とも疲れ果てて眠るまでそれは続く。
翌日。魔界豚の豚骨スープを前に、スェデギは泣きそうな顔をするのだが、それはまた今度のお話にでも。
13/02/15 19:15更新 / 中文字