読切小説
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ハロウィンでも、通常の一日


 朝早く、まだ日の明けていない薄暗い部屋の中。
 ベッドの中ですやすやと眠る男の掛け布団が、もぞりもぞりと動く。動いている部分は男の下半身。動いている規模は、子供が中に居るかのような大きさ。

「うむぅ。暗いと脱がし難いのじゃ……」 

 そこから小さな子供の声色に聞こえる呟きが漏れると、男の股間部分の布団が内側から照らされる。
 その中には男の体とは違う、小さな人間の影があった。頭には角が映えているのが、シルエットからうかがい知る事が出来る。
 そしてその影は布団の中で、くふふと笑いながら肩を揺らす。

「さーて、明るくなった事じゃし、一気にお兄様のパジャマを」
「俺のパジャマを如何するのかな?」
「そりゃぁ勿論、朝の一番絞りおちんぽみるくを……」
「ほほぅ。それは面白い事をしようとなさるな、バフォ様」

 そこで漸く自分以外の言葉があると気が付いたのか、バフォ様――つまりはバフォメットらしいその影は、もぞもぞと布団の中を移動して、男の胸側の掛け布団から顔を出した。
 ひょこっと擬音が付きそうな動作で出した顔は、ロリロリしく艶々でプニプニなほっぺを持ち、くりくりとした愛らしいどんぐり眼、勝気そうながらも細い眉、鼻筋が通った面。髪は解いてストレートだが、頭には確りと二本の角。耳はロバのような筒状の獣耳。
 何処からどう見ても、立派な可愛いバフォメットがそこにいた。

「あ、あれぇ?お兄様、起きたのかの??」
「阿呆か!部屋が明るくなるほど、明かりの魔法を至近距離で使われてたら、誰だって起きるわい!!」
「ひゃわわ!こ、これは予想外だったのじゃ!」

 驚いたついでに逃げ出そうとするバフォメットを、男は両手足を回してがっしりと掴んで逃がさないようにする。

「なぁバフォ様よ。俺は眠りを妨げられるのが大っ嫌いだって、知ってるよね?」
「あ、あのじゃな、お兄様。そんなバフォ様なんて他人行儀な言い方じゃなくてじゃな」
「じゃあ、フィルニーキ。どういう心算か説明してくれるよねぇ?」
「あ、あのじゃな。わしを愛称で耳元で囁きつつ、尋ねてくれたら、答えてやっても良いんじゃよ」
「ほほぅ。耳元で囁きつつとな?」

 すると男は掛け布団を跳ね上げると、腕でフィルニーキという名のバフォメットを回転させ、後ろ向きに抱きかかえ直す。
 なぜか全裸だったフィルニーキは、逃げ出すことも出来ずにそのまま男の腕の中に収められつつ、筒状の獣耳を口ではむはむされ、手で薄いながらもぷにっとした乳房を弄り回され始める。

「ねぇ、フィニ。起床予定はあと二時間後みたいだが、どうして俺を起こしたのかなぁ?」
「あッ、そんな、んぅ!耳と、乳びぃ、乳首を、そんなに、丁寧に苛めちゃ、だ、駄目なのじゃ……」
「早く答えないと、胸だけでイっちゃうよ。それとも胸だけでイきたいのかな?」
「言う、言う。じゃからぁ、胸だけじゃなくてぇ――」
「なら、ほら早く。あんまり遅いと、乳腺マッサージしちゃうよ?」

 男の手が優しく揉むものから、胸の奥を指で刺激するような強く揉み込むものへと変わる。

「ひぁぃ!きょ、今日は、ハロウィンじゃから、お兄様に悪戯しながら、お兄様の美味しいミルクを貰おうと、おひぃ!したのじゃ」
「二時間待てなかったの?そうしたら何時もみたいに、優しーい愛の言葉囁きながら、た〜っぷりとココに濃厚なのご馳走したのに」
「ひゅぃ!?だ、駄目なのじゃ。そんな、お腹の下のほうを、ぐりぐりと撫でたら、んひゅ!イって、しまうのじゃぁ〜」

 胸から離した手を滑らして、フィルニーキの下腹を凹むぐらいの力で指で押して、恥骨ごとぐりぐりと撫でていく。
 ぐり、ぐり、っと恥骨を指圧する度に、フィルニーキの足が電気でも走ったかの様にびくりびくりと反応する。

「ほひほひぃ!だ、だめなのじゃ。だめぇなのじゃ。い、い、イッくぅううぅ!!!」

 小さい背を一杯に反らし、股間からドロドロと透明な液体を垂らしつつ、フィルニーキは派手に絶頂する。

「堪え性が無いんだからフィニは。仕方ないから、もっとぐりぐりしちゃおうっと」
「イってる最中に、そんなことしたら、またイくのじゃぁ、ぁああぁぁんッぅうぅ!!!」

 しかしその絶頂を終わらせないようにするためか、男はフィルニーキの乳首を軽く抓りつつ、耳をしゃぶりながら、恥骨マッサージを続ける。

「はひぃ、はひぃ!!」

 絶頂して下がるはずの波が、男の手によって追加される快楽によって一向に下がらず、フィルニーキは背を反らしながら、びくびくと痙攣するように絶頂し続ける。
 やがて絶頂し続けて、フィルニーキの瞳に意思の光が消え掛かりそうになったところで、男は最後の仕上げとばかりに、固くなっていたクリトリスを掴んで軽く捻った。

「あいぃいぃいぃ、イッぐうぅうううぅううう!!!」

 ぷしゃっとフィルニーキの股間から潮が噴出した。すると反らしていた背も、一気に力が抜けたようにふにゃっと崩れて、男の身体にもたれてしまう。

「ひ、ひ、ひどい、のじゃ。い、いって、イってるのに。ずーっと、イってるのにぃ……」
「お仕置きだからね。酷いのは当たり前でしょ?」
「じゃ、じゃからって、こ、こんな、の、酷すぎる、のじゃ」

 酷い仕打ちをされて嘆いているつもりなのだろうが、フィルニーキの顔は発情した魔物娘のそれになっていた。
 そんなフィルニーキの表情を見て、男は仲直りのためか優しく口付けをする。

「あむ、ちゅ、ちゅぅ……あんぅ、離れちゃ嫌なのじゃぁ。もっと、もっとぉ〜」
「ちゅちゅ――これからは、起床時間前に起こさないって、誓う?」
「ちゅむ、あむぅ――ふふん、どうしようかのぉ〜」
「反省して無いなら、これから起床時間になるまで、口と手だけでずーっとイかせるの刑にするよ?」
「う、嘘なのじゃ。約束する、約束するのじゃ。そんな意地悪されたら、わし、狂ってしまうのじゃ」
「本当に狂うか試してみようかなー?」
「や、止め、三十分だけとか、そういう問題じゃないのじゃ。やめ、あ、ひぅ。あ、そんな執拗にぃ……」

 その後三十分に渡り、男はフィルニーキのクリトリスを舐めたり手指で擦ったり、膣の中を指と舌でかき回したりして、フィルニーキを絶頂の更に奥へと押し込むように愛撫し続けた。
 無論三十分後には、目を開けたままイキ疲れて失神し、蕩けた顔中を涙と涎と汗でべとべとにしながら、ぐったりとベッドの上に横たわるフィルニーキが出来上がっていた。
 しかしその後失神から復帰したフィルニーキに、さんざんイかされたお返しとばかりに、お腹が一杯になるまで精液を搾り取られた事は言うまでもない事である。



 起床時のどたばたから、朝食を終えた二人は一転して、仲睦まじい夫婦の情景を展開していた。

「もぅ、酷い目にあったのじゃ。あんなに無理矢理イかされるとは、思ってもみなかったのじゃ」
「御免御免。俺って昔から、寝ている途中を起こされると、眠気と不機嫌さが合わさって突拍子も無い事するから」

 二人は言葉を交わしながら、朝食時に使った食器を洗い片付けていく。
 食器を洗う担当はフィルニーキで。お立ち台の上に乗り、魔法でお皿と泡の付いたスポンジを浮かせ動かして洗っていく。
 男は泡の付いた食器を水で流して、水切りラックへと置いていく。

「お兄様の鬼畜な一面に、わしは酷く傷ついたのじゃ。じゃからお兄様は、今日はわしを誠心誠意甘やかす必要があると思うんじゃよ」
「別にそれに此方としても不満は無いけど、どんな事して欲しいの?」

 全ての皿を洗い終わって、フィルニーキはお立ち台から降りると、考えるように両腕を組みながらソファーへと歩いていく。
 何を考えているのかは分からないが、歩く際に小さな尻尾が左右に揺れているのを見ると、どうやらなにか楽しい事を考えていそうだという事だけは分かってしまう。

「そうじゃなぁ、今日はハロウィンじゃし。まずはお買い物デートかのぉ。それで二人でかぼちゃランタン作って。中身はかぼちゃ料理にするとしてじゃな、かぼちゃの種は揚げてオヤツにするじゃろ。それで夜には、蝋燭の明かりの中で、二人しっぽりとじゃな……」

 うっとりとこの後の予定を考えているフィルニーキの横に男は座りながら、小首を傾げて何かを思い出したようだ。

「あれ?トリック・オア・トリートしに、他の家へ行くんじゃなかったの?サバトのお知らせに、そんなのが書いてあったと思ったけど」
「ああ、その行事は『お兄ちゃん』の居ないサバトメンバーの婚活じゃよ。家に押しかけて「お嫁にしてください」って言うのと同じことじゃな」
「あの〜、押しかけられた方は溜まったものじゃないと思うけど、ソレ」
「なんじゃ。ロリっ子に迫られるなんて、男なら嫌なはずがあるまい。しかし仮に嫌だとしてもじゃな、飴玉でもジュースでも何でも上げれば、退散するという決まりじゃし、そう気に病まんでも大丈夫じゃよ」
「なんだかな〜」

 こういった人の常識と魔物娘の常識の齟齬に慣れていない事から見るに、まだまだ男の方は魔物娘の魅力に染まっていないと見える。

「さーて、今日は色々と忙しくなりそうな予感じゃな。早速、かぼちゃを買いに――」
「まだお店開いてないよ。誰かさんが早く起こしすぎたから、時間に余裕がありすぎるからね」
「うぐぅ……反省してるのじゃ」
「ははっ。まぁお店が開くまで、テレビでも見てようよ。ホラ、おいでフィニ」

 ぽんぽんと男が膝を叩くと、フィルニーキは嬉しそうにごろりとソファーに横になると、男の腿の上に頭を乗せた。そして反転して股間側に顔を埋めながら、フィルニーキが深呼吸し始める。
 それを見て、男は少々複雑そうな顔になる。

「あのー、フィニ。いや、嬉しいんだけど。こっちとしては、膝上抱っこの心算だったんだけど」
「むふぅ〜。こっちの方が、お兄様の匂いがダイレクトに来て、安らぐのじゃ〜」
「異性の股間に顔を埋めるって、サバトの教義的にどうかと思うんだけど。実にオヤジ臭いよ、ソレ」
「す〜〜、ふぅ〜〜。傍目から見れば、子供が親に甘えているように見えるのじゃから、問題無しじゃよ。あ〜〜、安らぐのぉ〜〜。クンカクンカ」

 本当に良いのかサバトの教義、と考えそうになるが、そこを治めているフィルニーキが良いというのならば良いのだろう。たぶん。



 店が空いている時間になると、連れ立って買い物に出かけてかぼちゃを買い、昼食を外で済ませて家に戻ってきた二人。

「デュフフ、覚悟はいいかのぉ?」

 食卓に防水シートを引いた上にかぼちゃを載せ、それに向かって鎌を振り上げているフィルニーキ。
 といっても鎌の刃は小さなナイフほどの大きさで、フィルニーキはもふもふで肉球の右手でそれを掴んでいる。

「先ずはその頭を横に切り裂いてくれるわ!」

 ざくっと鎌の刃をかぼちゃの上から四分の一のところに横に突き刺すと、ぐるぐるとかぼちゃを回しながら切って行く。
 しかし硬いかぼちゃの皮を難なく切り裂くとは、小さな鎌にしては凄い切れ味である。
 彼女の伴侶である男は、フィルニーキの真向かいでそれを見ながら、もう一つのかぼちゃを包丁で切り抜いている。

「ねぇフィニ。気分乗っているところ悪いんだけどさ、バフォメットの鎌を魔法で小さくして、かぼちゃを斬るのは種族的にアリなのかい?」
「何を言っておるかなお兄様は。鎌は切るために在るものじゃよ。かぼちゃを切ってはいけない道理など、ありはしないのじゃよ」
「そういうものかなぁ。でもちょっと羨ましいな、その切れ味」
「ふふん、凄いじゃろ。わしの魔力を含んだ魔界銀製の大鎌じゃよ」
「今は片手鎌とも言えない小ささだけどね」

 などと言葉を交わしながら、かぼちゃの上を横に切り終わると、今度は二つのボウルの中へと、くり貫いた種と果肉とを分けて入れていく。

「くっくっく。オマエの中身をぶちまけてやるわ〜♪」
「しかし鎌でくり貫くなんて、器用だねフィニは」
「にゅふ〜。お兄様に褒められてしまったのじゃ〜」

 実際に肉球の付いた手で良くもそこまで動かせるものだと感心する手つきで、フィルニーキはどんどんかぼちゃの中身をくりぬいて、ボウルの中へと入れていく。
 男の方はスプーンでくり貫いているのだが、はっきり言ってフィルニーキの方が早く、そして綺麗にくり貫いていっている。

「もうオマエの中身はからっぽじゃ。さ〜て、どんな顔に刻んでやろうかのぉ」
「うわ、早い。こっちはまだ半分ぐらい残ってるよ」
「……お兄様が頼むのならば、わしが手伝ってやっても良いんじゃよ?」
「う〜ん、頼みたいところだけど。人生で始めてのかぼちゃランタン作りだから、最後まで自分でやりたいかなと」
「ふむぅ、そういうことなら、引き下がるのじゃ。さーてと、気を取り直して、コイツをどんな顔に――」
「御免ね。共同作業は来年に持越しってことで」
「ひぅ!お兄様、そういう嬉しい事を不意に言うのは危ないのじゃ。特に鎌を扱っているときなど!」
「御免御免。なんかフィニがとても残念そうだったからさ」
「ぶぅ……来年は大きいかぼちゃ買って、共同作業じゃからな。約束じゃよ?」
「約束します。あ、でも、玄関に入るぐらいの大きさにしてよ。外で作業するんじゃ、十月は寒いだろうし」
「ふふ〜ん。わしはどんな気候でも、このビキニアーマー風の、バフォメット伝統衣装で大丈夫じゃよ。ロリっ子は寒さなどへっちゃらなのじゃ」
「見た目が寒そうだから止めて欲しいんだけどね、ソレ。かぼちゃを買った時、居合わせたラミアの人が余りのフィニの薄着っぷりに、思わず温まろうと伴侶の人をロールちゃってたし」
「ふむ。わしの知らぬところで、魔物娘の愛の活動に貢献していたとは、わしは自分の才能が恐ろしいのじゃ」

 そんなこんなでかぼちゃの中身をくり貫き終え、かぼちゃに顔を彫る段階になった両者。
 ちなみにどんな顔になったかというと、フィルニーキの方は三白眼に牙つきの口。記号で表すのなら(▽w▽)な感じ。
 一方のフィルニーキの兄の方はというと丸い眼に普通の口という、記号で表すなら(○ヮ○)な感じだ。

「ふむ、改心の出来栄えじゃな。さてと、長持ちさせるために保存魔法かけるので、お兄様のヤツも渡して欲しいのじゃ」
「はいどーぞ。じゃあ俺はその間に、くり貫いた中身で料理でも作りますか」
「種は油でカリッと揚げて塩を振ると、チップスみたいで美味しいんじゃよ。独身時代、サバト内でかぼちゃランタン作る時、魔女たちとよく食べたのじゃ」
「試しに作ってみるけど、俺は初めてだよそれ。基本捨てるものだしね、種って」
「捨てるなんて勿体無い。このくり貫いた皮も、祭りの後は煮付けにして食べたものじゃよ、わしらは」
「もしかして保存魔法って、そのためのものなのかい?」

 驚愕の事実に、ちょっとだけ驚きながら、男はボウルを手に持ち台所へ向かう。
 フィルニーキは自分のと男のかぼちゃランタンを、床の上に二つ横に並べると、手に持っていた魔法で小さくしていた鎌を通常の大鎌へと戻して両手に掲げ持つと、魔力を解放しながらにゃむにゃむと呪文を唱えていく。
 その間に、男はフライパンに油を引いて火で温める傍ら、かぼちゃの中身を裏ごししていく。近くに出ているのは、ブイヨンなどのスープを作るのに必要なものなので、油は種を揚げるためのもの、裏ごししているのはパンプキンスープを作るようだ。
 作業を進め、適温の油に種を投入してぱちぱちと弾ける音が響くと、男の腰に何かがしがみついてきた。
 男が視線を後ろに向けると、母親に抱きつく幼子のように、フィルニーキが彼の尻に顔を埋めていた。

「はふ〜はふ〜。お兄様の匂い〜」
「あの〜フィニさん。お料理中は危ないので、止めて頂けませんかね?」
「もうちょっと、もうちょっとだけなのじゃ。使った魔力分をお兄様の体から発する精で補っておるから、もうちょっとなのじゃ〜」

 しょうがないなーと口に出した後、男は油を引いたフライパンから、いい感じに揚がったかぼちゃの種を取り出して、キッチンペーパーを引いた皿の上に移し、残っている種を適量フライパンの中に入れていく。
 その作業の傍らで裏ごししたかぼちゃの果肉を別の鍋に入れようとして、男はふと何かに気が付いたように動きを止めた。
 男の耳には背後から、くちゅくちゅと濡れた音が漏れているのが聞こえていた。

「あの〜フィニさん。オナニーするなら、台所じゃないところでお願いしたいんですが」
「もうちょっと、お兄様の匂いを嗅ぎながら、一回軽くイッたら終わりにするのじゃ。じゃから……」
「しょうがないなぁ〜」

 料理をする手を止めて、分けた残りのかぼちゃの種が揚げあがるまでに時間がある事を確認して、男はフィルニーキを自分の尻から引き剥がす。
 何をするといいたげなフィルニーキに、男は唐突に口付けをする。それは舌を絡ませつつ、相手の口の中を舐るという、かなり深いもの。
 不満顔など一瞬で吹き飛び、うっとりとその舌の動きに身を任せたフィルニーキの隙を付いて、彼女の股間を男は手で布越しに素早く撫でていく。

「むむぅぅ!?」

 そこで男が何をする心算か分かったのだろう、フィルニーキは慌てて彼の腕から逃れようとするが、男の手が股間を撫でるに従って、フィルニーキの足が快楽で震えてしまい、逃げる事が出来ない。
 やがて口と舌で上から、手で股間と尻を撫でられて下から快楽責めを受けたフィルニーキは、口を塞がれたまま身体に気持ち良さが蓄積していく。
 それは自分ではなく愛しい人からの愛撫だから格別なのか、もう絶頂まで一直線といった感じに傍からでは見えた。

「む、んッ、ちゅぅんツ!む、むぅ、むぅうううぅうぅうう!!」

 口を塞がれ――いや、自分から男をもふもふの手で引き寄せて口付けつつ、フィルニーキは足を内股に震わせながら軽く絶頂した。
 しかし今回は朝のときとは違い、男は愛撫を続けずそのままフィルニーキの快楽の波が去るに任せている。

「ちゅるぅ、ぱッ。はい、一回軽くイッたね。これで終わり」
「えぇ〜。ここまでして、お預けとは酷いのじゃ〜」
「誰かさんが料理を手伝ってくれたら、夕食までの時間愛せるんだけどなぁ。でもその誰かさんはオナニーに夢中なようだから、夕食までは料理に掛かりっきりになっちゃうな〜」
「ふむぅ。その誰かさんは駄目な魔物娘じゃな。あ、お兄様、わし料理お手伝いするのじゃ」
「はいはい。じゃぁマッシュポテト作るから、そこにあるジャガイモの皮剥いといてね」
「は〜い、なのじゃ。ふっふっふ。また、わしの鎌が唸りを上げるのじゃ」

 さっと小さくした鎌を取り出すと、台所の隅にビニール袋を広げた上にフィルニーキは陣取り、その袋の中へと鎌で剥いたジャガイモの皮を入れていく。その手に持ったジャガイモの土が洗い落とされて濡れていたので、何時の間にジャガイモを洗ったのかと思いきや、今まさに流しの中で魔法でジャガイモ同士を擦り合わせてつつ洗っていた。

「ホント、フィニは器用だよなー。あ、そのジャガイモの皮も、種を揚げている油でチップスにするから捨てないでよ」
「勿論分かっているのじゃ。野菜は皮に栄養が豊富に含まれておるからの。勿体無いのじゃ」

 そんな調子で料理を作っていき、最終的に男は最後の仕上げを残して料理を中断して、揚げたかぼちゃの種とジャガイモの皮のチップスに塩を振ると、それを持って一足先にソファーに座っていたフィルニーキの横に座る。

「はい、ご所望のチップスだよ。あーん」
「あー、あむッ。むふぅ〜〜、最高なのじゃ〜。でもビールが欲しくなるのぉ」
「……フィニってバフォメットだよね。背中にファスナーあって、開けたら中年オヤジ出てこないよね?」
「何を馬鹿な事言っておるのかな、お兄様は。こんなにも、ぷりちーで、ぷにろりなバフォメットが、中年オヤジに見えるのかの?」
「いや中身がって話なんだけどね――ぱくっ。もぐもぐ。俺は日本酒と焼酎派だし、ビールはちょっと苦くて苦手かな〜」
「お兄様も十分オヤジ臭いのじゃ。でも苦いのが駄目とは、随分な子供舌じゃな」
「おわっ。バフォメットにオヤジ扱いと子供扱いを同時にされるとか。何この屈辱感と敗北感……」

 そんな調子でイチャイチャと喋りながら、もぐもぐと作ったチップスを食べ薦める二人だった。
 しかし料理をしたり喋ったりして時間が空いたからか、フィルニーキは愛撫の続きを求めるのを忘れてしまっているのに、本人が気が付くのはいつの事になるのだろうか。



 日が落ちて、薄暗い部屋の中に明かりが灯る。
 しかし灯った明かりが映し出すのは、(▽w▽)と(○ヮ○)の顔とその直ぐ近くの空間だけ。
 その部屋の中に、怪しげな声が木霊する。

「ふっふっふ。ようこそわが城に」

 ぼぉっと浮かび上がったのは、マントを付けた幼子のような女性の姿。
 その女がバッとマントを広げると、その身に着けているのは極小ビキニを鎧にしたようなもの。
 その幼い肢体を晒しながら、女は不敵に笑いながら言葉を虚空に向かって吐いていく。

「今日はハロウィン。魔物が蘇り、人々を襲う日。ふっふっふ、人よ恐怖に戦きながら過ごすが良い。そしてその声こそが、今宵の晩餐に花を添え「てい!」――あ痛たー!何をするんじゃお兄様。いま丁度、調子が出てきたところなのじゃよ!」

 その女――フィルニーキの額をチョップしたのは、彼女の兄的存在の男だった。

「そういう小芝居は、夕食の前には要らないからね。第一、何時もの「〜じゃ」口調止めちゃって良いの、種族的に」
「前までは魔女たちと、こういう勿体振った昔風の口調を使って、ハロウィンは晩御飯食べていたのじゃよ。うっかり普通の口調使ったら罰ゲームだったのじゃ」
「はいはい。今日は魔女は居ないからね、俺だけだから。そういうのは無しで」
「ぶぅ……もうちょっとお兄様も乗ってくれば良いのじゃ。差し詰め、お兄様はわしに向かってくる勇者の様な口調で」
「そこまで言うのなら、じゃあちょっとだけ乗ってあげよう……フィニよ、汝は晩御飯が要らないと見える。皿を下げてやろうではないか」
「わ、わわー!要る要るのじゃ!止める、止めるからー、お皿下げるのは止めてーなのじゃ!!」
「はいはい。わかればよろしい」

 本当に料理が入った皿を下げられそうになって、慌てるフィルニーキの様子を見て少しは溜飲が下がったのか、男は手でフィルニーキの座る椅子を手で指し示す。
 フィルニーキは少しだけ不満そうに、指し示された椅子の上に座ると、男は笑顔で対面の椅子に座った。

「それじゃあ、フィニ。ほら、膨れてないで、晩御飯食べようよ」
「……お詫びなら、今晩寝かしちゃ、ヤなのじゃ」
「了解。元からその積もりだからね、心配しないで良いよ」
「じゃぁ、ここは大人しく引き下がるのじゃ」
「それじゃあ」
「「いただきまーす」」

 お互いに手を合わせて食事の挨拶をすると、食べ始めた。
 今回の二人の晩御飯は、滑らかな舌触りのパンプキンスープ、マッシュポテトと茹でた野菜の盛り合わせ、丸鳥を半身に分けたのの香草オーブン焼き、そして切ったフランスパンという、洋食のラインナップである。
 まずフィルニーキはスープにスプーンを刺して中身を掬うと、ぱくりと口の中に入れた。
 その途端、先ほどまでの不満顔が嘘のように満面の笑顔になる。

「んぅ〜〜!!やっぱりお兄様の料理は、天下一なのじゃ」
「いや。普通の家庭料理だから。それは言い過ぎだよ?」
「否!お兄様の愛がたっぷり詰まったこの料理、わしにとってはリリムトランの五つ星の名店以上の味に感じるのじゃ!」
「また変なものを引き合いに出して……」

 楽しく会話を交わしながら、食事を勧めていき。程なくして二人ともお皿の上が空になった。

「ふぅ〜、食べたのじゃぁ〜。お腹一杯じゃぁ〜」
「あれ?デザートにかぼちゃのタルトがあるんだけど、食べられない?」
「勿論、食べる食べる〜のじゃ♪」

 張ったぷっくりお腹を撫でていたと思いきや、なんとも現金な話である。
 円形タルトを、角度四十五度ぐらいで切り分けていると、不意に部屋にチャイムの音がなった。

「むぅ、誰じゃ一体」
「ああ、フィニはタルト食べてて。俺が応対するから」

 フィルニーキに切り分けたタルトを乗せた皿と小さなフォークを手渡して、男は玄関へと向かって歩いていく。

「はーい、どちらさま〜」

 がちゃりと玄関を開けると、視界の下に突き出た三角帽子の天辺が。男が下を見ると、マントに三角帽子という典型的な魔女が立っていた。
 魔女は男にニッコリと笑い掛け、口を開いてこう言ってきた。

「とりっく、おあ、とりーと♪」
「えーと、お菓子の用意は無いから、タルトでも良いのかな?」
「はい、大丈夫ですよ。でもタルトだなんて高そうなもの、申し訳ないです」
「いえいえ。俺が作ったものだし、俺が食べる分だから、遠慮しないで良いよ」

 一旦引き返そうと男が背中を向けた途端、後ろからその魔女が突進して男を廊下に押し倒す。

「ぐへへ〜、理想のお料理上手なお兄ちゃんゲットだぜ〜」
「ちょっと、行き成り何を!」
「直ぐにとりーと出来ない人は、私のお兄ちゃんにするのだーあー……ぁ?あれ、この魔力の波長は……」
「ほぅ。わしのお兄様を兄にしたいとは、随分とお目が高いのじゃ」

 魔女がギギッと音が出そうな程にぎこちなく顔を上げると、そこには小さなフォークに刺したタルトを食べながら、魔女に厳しい視線を向けるフィルニーキが居た。

「げぇ!バフォ様!!?」
「ん?お主、わしのサバトでは見かけん顔じゃな。どこの魔女じゃ?」
「えーっとぉ、隣町の……」
「嘘付け。お兄様を知らんということは、少なくともこの近辺の町ではないのじゃ」
「な、何故!?」
「じゃって、お兄様との結婚式に付近の町のサバトのバフォメットは呼んだのじゃ。じゃからサバト配下の魔女たちも、写真でお兄様の顔知っておるのじゃよ。第一、付近のバフォメットは、全員わしの姉妹じゃから、調べようと思えば直ぐに……んっ、全員から知らんとの返信が来たのじゃ」

 バフォメットだけに支給される、種族間通信専用のバッフォンを取り出して、魔女に返信されたメールの件名を見せる。どれもこれも『そんな魔女はウチに居ない!!!!』という件名だった。
 その『!』の多さに、恐らく本文には『お兄ちゃんとイチャイチャしてたのに、邪魔するな!』と書いてあろう事は、確かめなくても分かりそうである。

「さて、どこのどなたか知らんし、知る心算も無いのじゃが……」
「あわわわわ、ご、ごめんなさい。バフォ様のお兄さんだとは……」
「何もそうおびえる事はあるまい。今日は魔女にとって婚活で必死な日じゃしな。お兄様に言い寄ったからと、わしも消し飛ばしたりはしないのじゃ」
「そ、そうですかぁ……」

 ホッとした様子の魔女だったが、その肩にポンとフィルニーキの肉球の手が置かれる。
 はっとフィルニーキの目を見た魔女は、その瞳に怒りの炎が揺らめいているのが見えた。

「じゃから、お兄様の作ったタルト食べさせてやる。なので直ぐに出て行けなのじゃ。あと、何時までわしのお兄様に乗っておる心算かの。流石に心の広いわしでも、思わず殴りたくなるのじゃが?」
「ひゃひゃい!す、直ぐにお退きいたします!」
「はい、次は大きく口を開けるのじゃ!」
「ひゃい!ああああーー」

 限界まで大きく開けた魔女の口に、フィルニーキは切り分けて皿に乗せられた一片のタルトを押し込んだ。

「もがぁ!!?」
「よし、食ったな。では、帰るのじゃ!」

 口にタルトを押し込まれて喋れないからか、びしっと敬礼をしてから魔女はその場から全速力で去っていった。
 それを見届けて満足したのか、フィルニーキは玄関の扉を閉めて、確りと鍵を掛けた。
 そして未だに廊下に横たわり、呆然と今の出来事を見ていた男を見て、フィルニーキはぐっと涙を堪える振りをする。

「うぅぅ……お兄様がどこぞの魔女に穢されてしまったのじゃ」
「いや、ただ押し倒されただけだからね。穢されたってのは言いすぎだと思うよ?」
「否!ほらぁ、お兄様の背中に、あの魔女の匂いが付いて……うぅぅ、酷いのじゃ……」
「……もしかしてその匂いを取るために、ベッドに行こうって続ける心算?」
「……おや、ばれてしまったのじゃ。まあ良いのじゃ、夕ご飯食べ終わったので、寝室にいくのは確定事項じゃし」
「あのぉ〜、俺タルト食べたいなーって」
「うぅぅ……お兄様がわしよりタルトを食べたいって、意地悪を言うのじゃ……」

 たびたび泣く振りを入れるフィルニーキに、彼女の兄という立場もある男は、ぐぬぬっと呻いた後でがばりと立ち上がると、フィルニーキをお姫様抱っこする。

「ひへ?」

 行き成りそんな事をされるとは予想外だったのか、フィルニーキの口からロリっ子らしくない呟きが漏れた。

「分かったよ。そこまで言うのなら、ハロウィン・ナイト・フィーバーしてやんよ!!」
「あはッ。それでこそわしのお兄様なのじゃ」

 そうして二人は寝室へと突撃した。
 まず二人はベッドの上へダイブすると、横たわりながら相手の服を愛撫しながら脱がし、そしてお互いの性器へと手を伸ばす。
 フィルニーキはぷにぷにの肉球で男の陰茎を挟んで撫でながら、男はフィルニーキの股間の割れ目を指で割って撫でながら。
 そうして前戯をしながら、フィルニーキは背を伸ばすようにして、男は背を丸めるようにしてキスを交わす。

「ちゅ、ちゅぅ……ふふふ、ここからは甘ーい夫婦の時間じゃの〜」

 もう嬉しくてたまらないといったフィルニーキ。
 そんなフィルニーキの下着を手でするすると脱がし、仰向けの彼女の足を左右に開かせると、男はその間に座り込む。取り出した男根はもうビンビンだった。

「その通り。ここからは、夫婦の時間だよ、ねッ!!」
「ひきゅぃいいぃ!!行き成りおちんぽ全部挿入れるなんて!!駄目、だめぇ、体が全部おまんこになっちゃうのじゃ!!」
「まだ全部入ってないよ。ほら、こうやって子宮を解さないと」

 入れたままぐりぐりと腰を捻るように動かすと、フィルニーキの口からはきゃんきゃんと犬のような嬌声が漏れ出てくる。

「あひゅぃ!そんなにおちんぽで子宮を撫でたら、子宮が、子宮がおちんぽ食べちゃ、あひぃぃぅ!!食べっちゃったのじゃぁああぅぃい!!!」

 こぽんと、何かが中に押し入ったような音がフィルニーキの下腹から小さく響く。
 そしてそれと同時にフィルニーキの体がエビ反りになり、彼女の手はシーツをぎゅっと握り締めて皺を作る。

「これで全部入ったね。ほらほら、次は引き抜いていくよ」
「し、子宮が、子宮がお腹から、めくれ出ちゃうのじゃぁぁ〜〜〜〜!!!」
「大丈夫。フィニの子宮は良い子だから、めくれ出る前に放してくれるよ。でも放したら放したで、もう一回入れなおすけどね〜」
「しょんな!引っ張って下がった子宮を、お゛お゛お゛ぉ、子宮が、おちんぽ咥えて、お腹の奥に戻ってくるのじゃぁぁあああ゛あ゛あ゛ぁ!!!」
「今度は子宮だけ、ちんぽでこすこすしちゃおうか」
「ひぁ!ひぁぉ!!おちんぽの段差で、子宮が引っ掻かれてるぅ!!ほぉひ、ほひぃ!!ぎぐぅ!ぎぐぅのじゃぁぁあ゛!!」

 とまあこんな感じで、二人の夜は深けていく。
 恐らく前に約束していた通り、男はフィルニーキを今晩は寝かさない心算だろう。
 そう仮に、フィルニーキが失神したとしても、それを約束だからと陰茎で叩き起こして、フィルニーキという自我がトロトロに蕩けきって朝を迎えるまで。

「ひひぃぃぅぃ!!しゅごい、しゅごいのじゃぁああ゛あ゛んぃぅ゛!!!」
「今度は子宮に入れたまま、お腹の中を引っ掻き回してあげちゃおうかなーっと」
「ほおぉお゛お゛ぉおおぉ゛!!お腹の中が、お腹の中が、気持ちよすぎて、死んでしまうのじゃぁああぅ、いぐぅぅうう゛ぅうう!!」
 
 果てさてこれからどうなるのか興味は尽きないが、ここからは夫婦だけのお時間。
 外様は密かに去ることとしましょう。
 二人が幸せである様にと、ハロウィンの月へと願いながら。


12/11/10 19:33更新 / 中文字

■作者メッセージ
ロリ=バフォ様という安直な思いつきと、バフォ様DAヒャッハー!!の精神で書き上げた、チャットでのハロリンSS大会の時期外れ作品を、ちょこちょこっと加筆修正してお送りいたしましたがいかがだったでしょうか。

これ以上、別段これと言って言う事も見当たらないので、この辺で。

中文字でした。ノシ

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