問い掛け猫の我侭な日常
多種多様な魔物娘が居る中で、一番の手のかかる種族はと聞かれれば、人々や魔物娘の各々の答えは、十人十色であろう。
しかしながら、魔物娘を嫁に持つ夫たちの答えはというと、あげる種族は違えど言う事は一つ。
つまり。
『一番は判らないが。とりあえず家の嫁さんは、手がかかるよ』
それは愛しているがゆえの惚気の言葉であり、こと思考回路から思想まで、人間とは待ったく違った存在である魔物娘の夫となった者たちの、心情を的確に表しても居る。
そんな手間の掛かる状況に、つい最近突入した者が居る。
「うぅ〜〜ん……」
とある場所のとある一棟の建物の一角の部屋のベッドの上で、今まさに寝返りを打った平凡な若者こそが、その人物。
「ふふふっ……良く寝てるにゃん」
そしてその直ぐ傍に、忍び笑いを浮かべて忍び足をして近づいてくる者が一人。
頭の上には猫耳、色黒の肌に、大きな肉球付きの手足を持つ、共に黒のタンクトップとビキニパンツのような衣服を身に着けた魔物娘。
砂漠地帯の遺跡の守護者として名高い、スフィンクスこそが、もう一人の主人公である彼女の種族名。
そんなスフィンクスの、獲物を見つけた猫特有の、爛々と輝く目とゆらゆら揺れる尻尾を見れば、大体の人が彼女の次の行動の予想が付くというものだろう。
「おっきろー!!」
「ぐふぉー!!?」
ぴょんとベッド脇から飛び、青年の腹の上へボディーアタックを敢行したスフィンクス。
その威力は強大だった様で、青年は一発で目を覚まし、ばたばたとベッドの上でのたうち回ってから、自分の上に乗っかる者に目を向けた。
「おはよう、ミェルー。でもその起こし方は止めてって、いつも言ってるでしょ。いつか心臓が止まるか、内臓が破裂するかして僕は死んでしまう」
「ふーん。そんにゃ事を言って、いいのかにゃ〜ん?」
起こしたのに小言を言われたのが面白くないのか、ミェルーと呼ばれた魔物娘は、甘えるように青年に纏わり付くのを止める。
そして急に真剣な眼差しで、じっと奥底まで覗こうというような目付きで、青年の瞳を覗き込む。
「ナルフ、我が問いに答えるにゃ。普通に起こしても起きないのは、何処の誰だったかにゃ?」
先ほどまでとは一変して、真剣味の在るミェルーの態度から発せられたその問いに、ナルフと呼ばれた青年は、ぐっと言葉を詰まらせてから、次のように問いに答えた。
「僕です。御免なさい」
「正解」
問いの答えと謝罪に満足したのか、ミェルーは再度ナルフに纏わりつき始める。
それは先ほどよりも、より熱っぽい。
「正解したご褒美に〜。今日は一日中、にゃんにゃんする権利を進呈するにゃ〜」
「朝っぱらからそれはどうかと思うのだけど。まさか。さっきの問い掛けに、呪いを使った訳じゃないよね?」
スフィンクスの呪い。
問い掛けに誤答した者を、スフィンクスの虜にしてしまう呪い。
逆に問い掛けに正答すると、スフィンクスがその呪いによって、発情してしまうという厄介なもの。
先ほどの問い掛けにその呪いを掛けていたために、正答した事でミェルーがその呪いに掛かって発情しまったのではないかと、そうナルフは考えた訳である。
しかしそのナルフの疑問を聞いたミェルーは、心底呆れたと言わんばかりに、シャツ越しにナルフの胸板に頬を当てながら、盛大な溜息を吐いた。
「もうナルフにぞっこんラブな私が、ナルフに呪いを掛けるわけにゃいじゃにゃいか。さては、ナルフは魔物娘の気持ち(乙女心)が判ってないにゃ?」
「乙女心??」
つい数週間前からの押しかけ女房の心を計りかねたのか、ナルフは小首を傾げてみせた。
だがスフィンクスの質問に対して曖昧な答えを返したからか、それとも乙女心を馬鹿にされたと感じたのか、ミェルーは目に見えるほどに不機嫌な様子になると、ナルフを万歳の形でベッドに両手で縫いとめてしまう。
「本当に判らにゃい?」
「……ごめん。そういうのには疎くて」
「魔物娘が、愛する相手に何を求めているか、判らにゃいと?」
「魔物娘とはあまり面識が無くて。まともに話すのは、ミェルーが最初だったんだ」
ナルフの最後の言葉に少しだけ気分が晴れたようだが、問い掛けに知識に無いとの答が重なったことで、ミェルーは何かを決意したようだ。
「じゃあナルフ。魔物娘の気持ちは判らなくても、私が今一番欲しいものは何かわかるかにゃ?」
その問い掛けに、今まで彼女との暮らしぶりを思い出すような素振りを見せた後に、ナルフは問いに答える。
「えーっと……お目覚めのキスかな」
「それじゃあ、部分点だけしかあげられにゃいにゃ〜」
「一緒に朝ごはんを食べる」
「ちょっと遠退いたにゃ」
「おしゃべりとか?」
「それは朝ごはんと同じ位だにゃ」
キスで部分的正解。一緒に朝ごはんを食べるとおしゃべりは、同じぐらいの部分的正解だが、キスよりは低い割合。
それらを総合して考え、そして導き出された答えに、ナルフも辿り着いたのか、あっと言いたげな顔になる。
しかしそれを正直に話しても良い物かと悩んでいるのか、他に答えが無いか探している様子。
だが他の答えは間違いであるという予感があったのか、ナルフはたどり着いた答えを口に出してみる事にしたようだった。
「もしかして、僕自身?」
「正解だにゃ」
ようやくの正解に、ミェルーは満面の笑顔になると、顔を組み敷いたままのナルフの耳元に顔を近づける。
「私たち魔物娘はにゃ。愛しい人を見つけると、その匂いを嗅ぎ、味を舐めて、音を聞き、温もりを感じる事が大好きになるのにゃ」
その言葉通りに、ミェルーはナルフの首筋で鼻を動かし、動脈の流れる喉元を舐め、彼の口からの吐息と胸からの心音を耳で聞き、ぎゅっと抱きついて温もりを体感する。
「他のものは何もいらにゃい。愛しい人さえ居れば、他はどうでもいいのにゃ」
「それが、魔物娘の気持ち(乙女心)って事?」
「その通り。ご明察にゃ。というわけで……」
すると行き成りナルフの服を、器用に片手で脱がしに掛かるミェルー。
「ちょっとミェルー、いきなり如何したの!?」
「言ったはずだにゃ。魔物娘は、愛しい人を感じるのが好きだってにゃ」
「言ったけど。それと服を脱がすのと、どういう関係が!?」
「もしかして、ナルフは着衣プレイがお望みなのかにゃん?」
「いや、そうじゃなくて。なんで、そのぅ……スルのが、それに繋がるのかって事を聞きたいの!」
「ナルフの照れ顔とは、珍しい物を見れちゃったにゃ」
良いものが見れたと一笑いしたミェルーは、押さえていた手を離す。そしてナルフをベッドの上に座らせ、向かい合うように自分も座り直すと、ナルフの手を取り誘導して、自分の下腹部――臍と股間の間を触らせる。
「魔物娘はにゃ。一番敏感なココで、愛しい雄のモノを感じるのが一番好きなのにゃ。今ちょっと触られただけで、お腹の中がキュッと反応したの、わかったかにゃ?」
「う、うん。なんかビクッてしたね」
「ナルフのモノを受け入れている時は、今の以上に反応しているのに気が付かなかったのかにゃん?」
「だって、何時もは襲われて弄られる側だから、ミェルーの反応に気を配る余裕は無いんだよ」
「にゃははっ。それは申し訳なかったにゃ。これからは、もうちょっとナルフも楽しめるようにするにゃ」
言い終わるやいなや、ゆっくりと顔をナルフの唇へと近づけていくミェルー。そして小鳥が枝に止まるかのような、そっと優しいキスを交わす。
今までの二人の睦み合いの時、発情したミェルーが無理矢理奪うかのようなキスしか体験していなかったためか、ナルフは初めての優しげなキスから一瞬遅れてから、顔を真っ赤にして俯いてしまった。
そんなナルフの初心な様子を、いたずらが成功した子供のようなニコニコ笑顔で、ミェルーは見ている。
「じゃあまずは、前戯からにゃ。いつも私がしているみたいに、キスして欲しいにゃ」
ミェルーのお願い――何時ものキスをしてとは、強引に唇を奪い取るようなキスの事だと判断したナルフは、少し躊躇った。
それは自分を忘れたかのような、あの激しいキスをするのが恥ずかしいという事もある。しかしそれよりなにより、自分から相手へキスをしようとするのが、これが最初であるため、緊張と興奮からどう身体を動かしていいのか判らないのだ。
ナルフのそんな心情などすぐさま見抜いたようで、ミェルーは彼の両手を取って自分の頬へ当てさせると、さあキスをしろと口には出さずに視線だけで強請る。
意を決したのか、ナルフは両手で挟んでいるミェルーの顔を引き付けて、強引なキスをした。
「んっ。ちゅ、ちゅぅ。もう、ちょっと、あむ、強めにしても、いいにゃ」
なすがままにされながらも、少し口が離れた時に、ミェルーはナルフへと支持を出していく。
キスをしたことで、この数週間の間に知らず知らずの内に身についていたのか、ナルフのキスにたどたどしさが消えていく。
そしてそれは、ナルフの劣情に反応したのか、段々と熱を帯びていく。
「ちゅぅん、あん。そう良い調子だにゃ。余裕があったら、耳とか、胸とか、撫でるにゃ」
ミェルーの方も興が乗ってきたのか、自分からも舌を絡ませだし、二人の口の中は粘ついた音が反響している。
せがまれたからというよりも、ナルフ自身が触りたくなったからといった手つきで、ミェルーの胸へと手を伸ばしていく。
「にゃひゅ!行き成り乳首は駄目だめだにゃ。女の子は敏感にゃの。まずはゆっくりと、周りから攻めるのにゃ」
親指と人差し指とで、きゅっと乳房の頭頂部を抓られたミェルーは、可愛らしい悲鳴の後、怒るようで諭すような口調でナルフの行動に注文をつける。
それを受けてナルフは、今度は恐る恐るといった手つきでミェルーの乳房を下から持ち上げ、そしてゆっくりとあまり力を入れない様に気をつけながら揉み始める。
「んッぅ。いいにゃ。その調子だにゃ。でもお口がお留守だにゃ」
胸からの性的快楽に身を任せながらも、ミェルーは催促するように舌を出し、ちろちろと舌先を動かす。
ナルフはキスをするのを忘れている事を思い出したのか、大慌てで彼女の唇を奪う。
しかしあまり器用ではない性分なのか、胸を揉むとキスという慣れない行為の同時作業に、ナルフは四苦八苦している様子。
キスに注意を向けると手の動きが緩慢になり、胸を揉む手に意識を割くと舌の動きが鈍ると言った感じである。
「ん〜。それじゃあもうキスは良いにゃ。だからもっと、胸を気持ちよくして欲しいにゃ」
このままではナルフが楽しめないとの配慮か、ミェルーは口を離してそう語りかけると、自分の胸を覆っている布を捲り上げて、二つの乳房を空気に晒す。
たゆんと揺れ出てきた乳房を見たナルフは、再度下から持ち上げるように掌にそれらを受けてから、ゆっくりと円を描くように動かしながら揉み始める。
しかし先ほどの布越しとは違い、暖かな体温と柔らかさを直に感じ取れる事に戸惑っているのか、手つきが少々覚束ない。
「気持ちよくなってきたから、もうちょっと乱暴にしても良いにゃ。なんなら、乳首を触ってもいいのにゃ」
その言葉通りに、愛撫されるのを今か今かと待ちわびるかのように、ミェルーの乳首はピンと立って存在を示している。
だが先ほど注意されたからか、乳首を触ろうとする素振りはするものの、一向に乳輪の内側へとナルフの指が伸びる事は無い。
「もう、意気地なし。だったら、赤ちゃんみたいにしゃぶるにゃ」
焦れったくなったのか、ミェルーはナルフの頭をかき抱くと、自分の片胸へと押し付けて、無理矢理彼の口の中に乳首を含ませた。
おずおずとだが、ナルフは本当に赤ん坊になったかのように、ちゅうちゅうとミェルーの胸を吸い始める。
「そう。そんな調子にゃ。吸うだけじゃにゃくて、舐めたり、軽く噛んだりして欲しいにゃ」
胸の性感から顎が上がり喉が伸び始め、尻尾が揺ら揺らと動き出すミェルーだが、ナルフへの指示は忘れていない。
その言葉に忠実に、ナルフはまず舌先で探るように乳首と乳輪を嘗め回し、そして乳首を前の歯で軽い力で噛んでみる。
「ぅんッ!いいにゃ。上手だにゃ」
段々とたまらなくなってきたのだろう、ナルフの頭を手で抱きながら、ミェルーゆっくりとベッドの上に寝転がる。
引き込まれてミェルーに覆いかぶさる形になっても、ナルフは乳房を舐め乳首を噛むのを止めず、更には慣れてきたのか、もう片方の乳房を手で揉んでみせている。
「ちょっと名残惜しいけど、もう胸はいいにゃ。次は……」
少しだけナルフを押して胸から遠ざけると、ミェルーは腰を浮かせて、黒色のビキニパンツを摺り下ろす。
「次は、ココを弄って欲しいにゃ」
ここという言葉と同時に、ミェルーはナルフの手を取って股間の割れ目へと導く。
もう濡れていたのか、ナルフの指先に湿り気が纏わり付く。
思わずといった感じで、ナルフは自分の指の先がどうなっているのかを、目で見ようとしてしまう。
「そんなに見つめないで欲しいにゃ。ちょっとだけ、恥ずかしいのにゃ」
「ご、ごめん。手で触った事が無かったから」
「そっか。ナルフはまともに見た事すら無かったんだったにゃん。じゃあ、今から女の子のココのお勉強にゃ」
ベッドに仰向けに寝そべり、軽く両足を曲げたミェルーは、続いてよりナルフに見えやすいように、両手で自分の股間を割り開く。
「どうかにゃ。ちゃんと見えるかにゃ?」
「うん。なんというか、すごいね……」
「そこはピンク色で綺麗とか、エロいとか言って欲しかったんだけど。ま、今後に期待かにゃ」
確かにミェルーの言った様に開いたそこは、彼女の褐色の肌とは打って変わり、桃色一色で占められているし、膣口も小刻みに開いたり縮んだりを繰り返し、エロティックな様相を呈している。
しかし自分には無い部分を初めて見た男の感想としては、ナルフの言葉も強ち的外れとも言いがたい。
「じゃあ、各場所の名前からにゃ。『おまんこ』とか『おめこ』なんて呼ぶここの、一番上にあるお豆みたいにゃのが、クリトリスにゃ。女の子の身体で一番敏感だから、優し過ぎる位丁寧に扱うようににゃ」
「う、うん」
「その下の小さな穴がおしっこの出る場所で、尿道にゃ。ココを弄るのは上級者だけだから、いまのナルフは関係ないにゃ」
「う、うん」
「更に下にあるのが、何時もおちんちんを扱く穴で膣というにゃ。赤ちゃんはここを通って生まれるにゃ」
「う、うん」
「『う、うん』しか言ってにゃいけど、本当に判っているのかにゃん?」
「う、うん……じゃなくて、ちゃんと聞いてるよ。うん。大丈夫」
指摘された言葉を口に出してしまって、大慌てで訂正するナルフの様子に、ちょっとだけミェルーに笑みがこぼれた。
「じゃあ、触ってみてにゃ」
「えっと……まずは何処を触ればいいの?」
触ってといわれても、自分に無い場所をどう扱っていいのか判らない様で、ナルフの指先がその前で右往左往している。
「触りたいところでいいにゃ。全体をとりあえず触ったり、膣に指を入れて動かしたり――でも、無難なのはクリトリスからかにゃ」
「えっと、じゃあクリトリスからだね。確か優しく扱うんだよね」
「その通り。良く覚えていたにゃん」
ゆっくりと人差し指で触ってから、転がすように指先でちょこっとだけ動かしていく。
「んッ!ちょっと強いけど、良い感じだにゃ」
痛くは無さそうだと判ったからか、ナルフの指は同じ力加減ながら、動かす幅を大きくしていく。
指がクリトリスをこね回す度に、最初は柔らかな感触だったものが、段々とクリトリスが芯が出てきたかのように硬くなりだす。
その感触が興味深いのか、ナルフは熱心に弄る。
「あん、あッ。その調子にゃ。んっぅ!もうちょっとだけ、動かすのを、早くしてにゃ」
ミェルーの懇願の意味が判らない様子だったが、一体早くするとどうなるのかが知りたくなったのか、ナルフは言われたとおりに指の動きを早くしていく。
するとその指の動きに合わせるかのように、ミェルーの腰が最初はピクピクと、段々とビクビクと反応を返しだす。
「あ、あッ、もう来たにゃ。自分でするより、かなり早い、にゃ、にゃにゃ〜〜〜ぅうう!!!」
自分の股間を開いた状態のまま、ミェルーは嬌声を上げつつ、身体を軽く丸め、足先を伸ばしながら軽く絶頂した。
ビクビクとミェルーの腰から下が動くのを見つつも、それが何を意味しているのか判っていないのか、ナルフはクリトリスを弄る手を止めない。
「待って。ストップにゃ。今イってる最中にゃあぅうう!!」
ミェルーの様子に注視していたからか、制止の声をかなり遅れて認識したナルフが指を止めるその少し前に、ミェルーはクリトリスを弄られた影響で、増幅して揺り返してきた快楽の波で、再度絶頂を迎えてしまう。
今度はベッドに背中を押し付けるようにして、割り開いていた手も離し、曲げていた足もナルフを蹴飛ばしそうになる程に伸ばしながらの、全身を震わせる程の本気の絶頂。
身体を駆け巡る絶頂感を、ベッドのシーツを肉球の手で掴んでやり過ごしたミェルーは、ぐったりと五体と尻尾をベッドに投げ出しながら、じぃっとナルフを見る。
その瞳に軽く怒りに似た色が見えて、ナルフはベッドの上で小さくなってしまう。
「ストップって、私言ったよにゃん?」
「……言いました」
「言ったら普通はどうするのかにゃん?」
「……止めます」
「ナルフはさっき、どうしたかにゃん?」
「……興味が先にたち、止めませんでした」
「何か間違えたら、どうするのかにゃん?」
「御免なさい。もうしません」
「うん。許してあげるにゃ。だから――さっさと脱げにゃ!」
ベッドから飛び起きるようにしてナルフに襲い掛かったミェルーは、瞬く間に彼の服を全て脱がし、ベッドの上に仰向けに転がすと、その上に乗っかった。
「下手に仏心出して、ナルフに女の体の事を、一から十まで優しく教えようとしたのが間違いだったにゃ。今日の授業は三程教えたここでお終い。調子に乗った生徒に性的な体罰にゃ。まずは如何しようかにゃ〜」
「出来れば、お手柔らかにお願いします」
もうこうなれば、まな板の上の鯉のように大人しくしていよう、でもちょっとは手加減して欲しいなと、体言しているナルフに向かって、ミェルーは満面の笑顔を向ける。
「やなこったにゃ。私の気が済むまで、犯し倒してやるにゃん」
そう言うやいなや、ナルフの一物に肉球の手を纏わり付かせると、無遠慮に上下に振っていく。
傍目から見れば乱暴な手つきに見えるが、実際は大変に気持ちいいのか、ナルフは思わずといった感じで、腰を引いて逃げようとしてしまっている。
「ほらほら、びゅーびゅーって出すといいにゃ」
「待って、本当にもうでちゃうから」
「却下にゃん」
「でるぅうくぅうう!」
鈴口から飛び出た白い液体がミェルーの褐色の肌を、まだらに塗り替える。
その一滴を指で掬い取ってぺろりと舐めたミェルーだったが、まだ腹の虫が収まっていないのか、吐き出し終え脈動も収まりかけた陰茎を、ミェルーは手で扱き上げて無理矢理勃起状態を維持すると、すぐさま自分の膣の中へと収めてしまう。
そして騎乗位で腰を上下に振り始め、激しくナルフを責め立てる。
「どうかにゃん。射精したばっかりのおちんちんを、膣肉で磨き上げられる感触は?」
「ま、まって。気持ち良いのが止まらないから、ちょっと待って!!」
「それが答えかにゃん?だとしたら、いい気味にゃ。さっきの私の気持ちを思い知るにゃ。でも、膣内でちゃんと射精し出来たら、止めてあげてもいいにゃん」
ぱつぱつとミェルーの尻肉がナルフに当たる音が頻発するほど、ナルフを責めていく。その顔は、鼠で遊ぶ猫のような、残虐性と快楽性が合わさった笑顔である。
そして与えられる快楽に体を捩って反応してしまうナルフだが、段々と一向に陰茎が射精体制に入らない事に困惑し始めていく。
「どうして射精出来ないか、不思議な様子にゃね。どうしてか、知りたいかにゃん?」
「教えてくれるの?」
「お仕置きの最中だけど、特別に教えてあげるにゃん。男は気持ちよすぎると、出ないらしいにゃん。もっとも、ナルフは出したばっかりで、次が装てんされてないだけかもしれないけどにゃん」
陰茎を根元から一気に亀頭まで抜き、再度飲み込むという、上下運動させていた腰を、今度は根元まで膣内に入れたまま、前後左右に腰を揺らすものへと変えながら、ナルフの疑問に答えてあげるミェルー。
しかしナルフはその答えを聞いて、少しばかり顔を青ざめさせる。
今でも快楽で一杯一杯なのに、これがいつ訪れるか知らない射精まで続くとなると、最終的には陰茎の気持ちよさしか考えられない状態にされるのではないかと心配しているようだ。
「ようやく自分の失敗に気が付いたかにゃ。スフィンクスの問い掛けや扱いを間違えると、こうなるから以後気をつけるにゃ」
「うぅうぅ……判りました、以後、気をつけます」
その答えと、とうとう陰茎だけではなく快楽で体がビクつき始めたナルフを見て、少し気分が晴れてきたのか、ミェルーの顔からは険が消え、代わりに愛しい雄の肉棒に貫かれる喜びに浸る、魔物娘らしい蕩けた表情になっている。
それでもミェルーは性交の手を抜く心算は無いのか、両手をナルフの胸元に置くと、肉球の指先で彼の乳首を弄りだす。
すると面白いようにナルフの腰が跳ね、意図しない場所に陰茎が擦れる。
それが気持ちよかったのか、これからしばらくの間、腰を前後左右にくねらせながら、時折不意を突くような頻度でナルフの乳首を刺激していく。
そんなこんなで、もう完全に全身が性感帯と化していたナルフの陰茎に、待ちに待った射精の兆し。
これでこの快楽地獄から脱出できると、あからさまにホッとした様子のナルフ。
しかしミェルーの尻尾が、彼の陰茎の根元に巻き付くと、ぎゅっと射精を押し留めるように締め上げる。
「はい。残念でしたにゃ〜。もうちょっとだけ射精させて上げないのにゃ」
「なんで!?」
もう十分お仕置きしているだろうと言いたげなナルフの問いに、ミェルーはちょっとだけ言いよどんだ後、褐色の頬を朱に染めて、上目使いで言い辛そうに次の言葉を出した。
「だって。私ももう直ぐイキそうだから、同時にイキたいって願っちゃ、だめなのかにゃん?」
先ほどまでの教師然とした態度や、お仕置きと証した悪戯の表情とは打って変わり、男心を擽るその仕草と言葉。
そんな彼女の様子に、押しかけ女房だとはいえ、もうすっかりとミェルーの虜にされているナルフに否は無い。
となるとナルフの取るべき行動は一つ。
自分の胸に当てられているミェルーの手を取り、恋人繋ぎにしてからギュッと握る。
「こうするのが好き、だったよね?」
「覚えていてくれてうれしいにゃん。ねぇナルフ。もうちょっとでイけるから、ちょっとの間だけ激しく動いてもいいかにゃん?」
その問い掛けに、ナルフは首を縦に振る事で答える。
それを見て、嬉しそうにナルフの首筋に顔をこすり付け、そして前屈みのまま、時折捻りを加えつつ激しく腰を上下に振っていく。
「やっぱり、ナルフの、おちんちん。気持ち良いにゃ。んはぅ、うにゃふぅ――」
「ミェルー、御免。もう、出そう……」
「もうちょっとだけ我慢してにゃ。んッ、ふぁふ。にゃは、来たにゃ、もうちょっと。もうちょっとだけ――」
射精を堪えようと懸命にナルフは下腹に力を入れ、ミェルーはもう直ぐ其処にある絶頂への波を引き寄せるために激しく腰を振って、膣を陰茎で擦り上げていく。
やがてナルフが我慢の限界に突入したのか、根元を締め上げているミェルーの尻尾が、射精前の陰茎特有の膨らみと脈動を感じ取った。
それに呼応した訳ではないだろうが、ミェルーの子宮も精液を受け入れる準備が出来たかのように、収縮と膨張を繰り返し、その口からは白い本気汁がトロトロと流れ出始め、絶頂までもう少しの様子。
「だして、良いにゃ。もう、私も、私も――」
「もう、我慢、出来ない。うぅうううッ!!」
「私も、イックぅううぅうううぅうう!!」
先に限界が来たのはナルフの方で。腰振りに集中していたミェルーの、尻尾の締め付けが弱まった瞬間に、射精してしまった。
しかしすぐさまそれを追うかのように、ミェルーはナルフの陰茎を根元まで膣で飲み込み、子宮を亀頭部分で押し上げられた衝撃で絶頂し、いまだ続いている白い迸りを体内の奥深くで受け入れた。
そのまま二人はお互いに体を震わせながら、しばし性的快楽を味わう。
やがて射精が終わった倦怠感で、ナルフはベッドに全体重を預け、絶頂による心地よい疲れから、ミェルーはナルフに圧し掛かるかのように覆いかぶさる。
「にゃふ〜〜……幸せにゃ」
「僕は、やたらと疲れたよ」
下腹を肉球の手で擦りながら満足げに呟いたミェルーに対し、結局はミェルーに弄ばれてしまったナルフは、複雑な心境を隠すかのように言葉を返す。
そんなナルフの心の動きを知ってか知らずか、ミェルーは彼の耳元に口を寄せる。
「じゃあ、ここで質問だにゃ。ナルフは私のことを愛しているかにゃん?」
そんな問いに、ナルフはそっとミェルーの背中に手を回し、少々力強く抱きしめる。
その答えをミェルーは大変気に入ったのか、幸せそうな顔つきになると、ゴロゴロと喉を鳴らしながらナルフに甘え始める。
どうやら問い掛けに言葉ではなく、態度で返すのが正解である事も在る、と言ったところだろうか。
そんなこんなで、二人の一日は仲睦まじく過ぎていく。
ちょっとした猫からの質問とそれの答えによって、猫の態度のように日常が千変万化する日々。
そんな手のかかる月日を繰り返しながら、少しずつ少しずつ、二人の生活は積みあがっていくだろう。
おそらく、積み上げたものが金字塔(ピラミッド)に変わるその日まで。
12/08/04 21:03更新 / 中文字