愛しい妻と、穏やかな牧場生活
差し込む朝日の眩しさに、バイコーンのコジールは自分のベッドともいえる、藁を敷きつめた自分の部屋の中で目を覚ました。
明け方の寒い空気を感じつつ、眠気眼を擦りながら、何も身に付けていない人間の体を起こしながら背伸びをして、体に纏わりつく睡魔を追いやる。今度は立ち上って馬の体に付いた藁の欠片を身を震わせて落としてやる。
そうして彼女は、ふわわと大欠伸をしながら、着替えをするために部屋を出ようとして、その直ぐ目の前に彼女の愛しい旦那様――ロンメートの顔が目に入った。
どうやら彼は彼女を起こしに、彼女の部屋に入ろうとしていたようだ。
「随分と大きい欠伸だね、コジール」
「はわッ!だ、旦那様。いえ、その、違うのです」
「そんなに慌てて弁解なくても。日頃滅多に見れない物を見れて、此方としては得した気分なんだから」
「そんな、お恥ずかしい所を……」
愛しい旦那様に自分の失態を見せたためか、それともそんな失態を見たとしても、相変わらずに優しい笑みを浮かべる旦那様に惚れ直したからか、コジールの透き通る程に白く滑らかな肌に赤色が差している。
「ほら、今日は約束していた日でしょ。朝から無駄に出来ないよ?」
「……もう、旦那様ったら」
そんな風にコジールを囃しながら手を差し出すロンメートは、コジールの失態を無かったものにしたいというようにも感じ取れるし、コジールが失態と思っている事など失態ではないと言いたげなようにも感じられてしまう。
それはコジールも感じ取った様で、ロンメートの優しさに少し救われた気分を抱きながら、彼の手を取って歩き出した。
二人は野菜スープと作り置きのパンで軽く朝食を取った後、コジールは今日の為に用意していたものを取り出すために建物に残り、ロンメートは牧場にある巨木の脇に設えたロッキングチェアに座り、木漏れ日を身に受けつつぼんやりと景色を楽しみながら、彼女の準備が出来るまで待つ事にしたようだ。
「旦那様〜」
そこへブンブンと大手を振り、パカパカと蹄の音を響かせて近寄って来るコジール。
振っているのとは反対の手には、ワインと二つのグラス。黒い馬体の背に括りつけた、鞍のような荷を置く場所の上には、切ったチーズやビスケットにドライフルーツの乗った大皿。
「待っていたよ」
コジールの姿を確認したロンメートは、そっと椅子から立ち上ると、木に立てかけてある板のような物を手に取り、テキパキと組み立てていく。すると程なくして木の板だと思われていたそれは、折りたたみ式の木の机に早変わり。
その机の上にまずコジールは、手にある瓶詰めワインとグラスを置き、続いて後ろに手を回して大皿を掴み、一度何が入っているのかをロンメートに見せてから、机の中央にそっと置いた。
「今日は随分と美味しそうな品揃えだね」
「今日の日のために、いろいろと準備してきましたもの」
大皿を見て思わずといった感じで、そう感想を漏らしたロンメートに、コジールは自分の努力を誇る様に、豊満な胸を張って答えるコジール。
そして二人どちらともなく笑い合うと、示し合わせた様にロンメートはグラスに手を伸ばし、コジールはワインのコルクを抜きにかかる。
「昨日ゴブリン商隊から買い付けました、魔界の空気で爛れたブドウで作られる、淫腐ワインですわ」
「貴腐ワインは聞いたことあるけど、淫腐とは……」
グラスに注がれた耳馴れない名称の、血のように赤黒いワインに、少しだけ訝しげな視線を向けるロンメート。
しかしそのワインから立ち上るワインとは思えないほどに、甘く蕩ける様な匂いに誘われて、彼はコジールとグラスを合わせた後に、グラスに口を付けワインを一口だけ含んで味わう。
そしてロンメートは、少し驚いたような表情を浮かべながら、ゆっくりとそれを味わいながら飲み下していく。
恐らく彼は今、淫腐ワインの特徴を余すことなく、体全体で味わっていることだろう。
それは魔界の水に似た薄甘さと、ブドウの渋みを味覚として。鼻から抜けるアルコールの中に混ざる、樽の木から移った香辛料の様な香りと、魔物娘が発する淫臭に似た匂いを嗅覚として。そしてそのワインに含まれる多分の魔力が、含んでいた口内、味を確かめていた舌、匂いを感じていた鼻、飲み込んで通る食道、そして辿り着く胃の内壁から、アルコールと共に体内へと侵入されるのを触覚として感じる。
そんな風に味わうのが、人間の女をレッサーサキュバスに、男をインキュバスへと変える効果を持つ、魔界産の高級酒である淫腐ワイン。
「なんか、これぞ魔界の品といった感じだね」
「旦那様のお気に召していただけましたようで、安心しましたわ。そうそう、虜の果実のドライフルーツに、そのワイン良く合いますの。ささ、どうぞお試しになって下さい」
「じゃあ一つ試しに」
皿の上にあった、虜の果実を魔界の日に干したドライフルーツを一口齧りながら、ロンメートは淫腐ワインを傾ける。
ドライフルーツになって少々くどいほどの虜の果実の甘さが、ワインに攫われてすっと舌の上から消えていく。そしてそのくどい甘さに引き寄せられるように、ワインの中の淫臭の様な匂いと、魔界の水の様な薄甘さがなりを潜め、舌に残るのは高級ワインの様な気品溢れる味。
たかが一齧りのドライフルーツで、ここまで変わるかというほどの、劇的な味の変化。
「不思議なワインだね、これ……」
「ホルスタウロスのミルクで作ったチーズに、私が焼いたビスケットもありますわ。お試しになって下さい」
驚き感動するロンメートの姿に、嬉々として自分の手によって作った物を進めるコジール。
そしてそれを口に入れてワインを含んだロンメートは、美味しい美味しいと言いつつ食べ進め、大皿の中身とワインの瓶が空になるまではあっという間だった。
「ああ、美味しかった……」
ほんのりとワインが含んでいたアルコールと魔力によって頬を赤くしながら、ロッキングチェアーにもたれ掛かって呟くロンメート。
その表情は実に幸せそうである。
「では昼食も楽しみにして下さいませ。腕に縒りをかけますわ」
ロンメートの幸せは自分の幸せと言いたげに、コジールはにっこりと笑いかけつつも、今日は彼の胃を飽きさせないと宣言する。
そんなコジールに笑いかけながら、ふぅっとため息を吐いたロンメートは、ロッキングチェアーに深く体を預けた。
「旦那様。もしかしてお疲れですか?」
「うん、まあね。今日一日空けるために、ここ三日ほど無茶したから」
コジールに心配をかけまいとする様に、ロンメートはにっこりと笑いかけるものの、その目の下や唇の端の上がり方に、やや疲れが見えた。
それを見つけたコジールは、少しだけ暗い表情になってしまう。
「私が考えなしに、一昨日二人もハーレムに入れたのが原因ですわね」
「いや、あの二人は実に良い子たちだよ。ワーウルフのウォルは直ぐに俺を主人に認めてくれた様で、精液で膨れたお腹撫でると幸せそうに尻尾振るし。狐のミカネは甘えん坊で、今日一日離れるのを嫌がっていたけど、俺と体の相性が良いのか、この二日だけで尻尾が二本になったしね」
そこまで言って何かを思い出したか、ロンメートはぎしっと椅子を揺らして間を取った。
「でも他の子達は、ここ最近で随分と大食らいになったのか、気絶から復帰した途端に交わりたがるんだよ。お陰でここ三日は、眠る暇も無いほど離してくれなかったから」
独白するように呟くロンメート。
その言葉を聴いたコジールの手がすっと伸び、ロンメートの頬に手を当てる。
そして二度ほど上下に撫でた後で、人差し指と親指とで彼の頬をきゅっと摘んだ。
「ひてててて」
痛いと言う口に対して別に大して痛くは無いのだろう、ロンメートの顔は苦痛にも不快にも歪んではいない。
むしろ、このやり取りを楽しんでいるようにすら見受けられる。
「あの子たちは、全員旦那様の愛しい妻なのですから、愛されて嬉しい悲鳴を上げるのでしたらまだしも、あの子たちが聞いたら泣いてしまいそうな、その物言いは看過できませんわ」
「悪かったって。ちゃんと全員愛してます」
「その物言いが疑わしいのですわ!」
ぎゅっと音が出そうなぐらいに力強く頬を一抓りしてから、ぱっと手を離すコジール。
最後のやつは本当に痛かったのか、ロンメートは離して貰った頬を手のひらで数度撫でて、痛みを拡散させようとしている。
しかしコジールとのこの掛け合いが楽しいのか、ロンメートの顔は相変わらず笑顔だ。
そしてそんなロンメートの表情に、そっとため息を吐き出すコジール。
「旦那様はもう少々、ハーレムの主という自覚を持ってほしいですわ」
「俺としては、永遠の愛を誓ったのは君だけのはずだったんだけどね」
「バイコーンに求婚した時点で、そういうのは諦めて欲しいと、何度と無く申し上げたはずですわよね。それを旦那様も了承なさったはずですわ」
「そうだね。だから普通はハーレムの主として勤めを果たし、月に一日だけ俺の我侭で君とだけ愛する日を作って貰ったんだよね」
「もう、判っているのなら混ぜ返さないで欲しいですわ」
プンプンと怒るコジールを、困ったような笑顔を向けて見ていたロンメートだが、不意に彼の口が開かれ、ふわっと欠伸が漏れた。
どうやら先ほどの発言は、コジールを怒らせるための方便ではなく、本当の事のようだ。
それをコジールも悟ったのか、ロンメートの頭を幼子にするかのような手つきで撫でて、彼の様子を伺っている。
「一眠りなさいますか?」
「うん。お言葉に甘えて、ちょっと寝るよ。昼食のとき、起こして」
頭を撫でるコジールの手に誘われるように、すっと眠りに入ったロンメート。程なくして彼の口からは、寝息が漏れ始める。
そんなロンメートの姿を見て、聖母のような微笑を浮かべたコジールは、彼を起こさない様に気遣いながら、空になったワイン瓶やグラスに皿を持って、昼食の用意をするためにか、建物のほうへと歩いて向かっていった。
時は進み昼食時。
もうロンメートは起きたかなと、手作りのポトフが入った鍋を手に持ち、馬の背中に食器とパンを乗せた荷を背負って、ロンメートの居る大樹の木陰へとやってきたコジール。
しかし彼女が近寄っても反応を返さないロンメート。彼はまだ眠っているようだ。
(狸寝入り、ではなさそうですわね)
そっと彼の幸せそうな寝顔を見て、心の中でそう呟いたコジールは、手にある熱々のポトフを机に置き、音を立てないように食器をその周りに配置していく。
並べ終え、このままではポトフが冷めてしまうからと、コジールはロンメートの体を揺すって起こそうと手を伸ばした。
しかしロンメートのズボンの一部が隆起している様子が目に入ったコジールは、彼の上半身へ伸ばしかけていた手を、軌道を修正してその隆起している場所へと手を向ける。
降り立つように軽くその部分にコジールの手が触れると、その中の何かが途端に反応し、隆起している部分がビクリと振るえた。
それに怖気づくことなく、そのまま手で軽くその部分を撫でるコジール。
(すごいですわね……撫でるだけで、こんなに反応なさるなんて)
コジールの手が上下にゆっくり動くたびに、ビクビクと反応を返すその部分に当てられたのか、彼女の口から熱っぽい吐息が漏れる。
そして我慢できなくなったかのように、コジールの手はロンメートのズボンを、彼が起きないように静かにゆっくりとずらしていき、よく眠っているロンメートの体を少しだけ持ち上げて、するりとズボンを膝まで脱がしてしまった。
するとズボンに引っかかっていたロンメートの起立した陰茎は、弾かれた起き上がりこぼしかの様に、勢い良く彼の下腹に当たった後に小刻みに揺れ、その存在を周りに誇示している。
(ふわぁ……一ヶ月ぶりの、旦那様のおちんぽ……)
多数の魔物娘との性交で、唾液にまみれ、淫水に焼かれ、膣肉を耕してきたそれは、いっそ禍々しい程の存在感があった。
しかしそれは比喩ではない。
実際に魔力を目で見ることの出来るものが見たのならば、ロンメートのそれは悪名高い伝説の魔剣並みに、魔物の魔力が溢れているのが見えることだろう。
そんな威圧感と雄の匂いを放ち、数々の魔物の魔力に塗れたその一物こそ、バイコーンの求める究極の陰茎。
(旦那様と、あの子達の匂いが混ざって、すごく良い匂いですわ……)
バイコーン的に美味しそうなその陰茎に誘われて、まずコジールの手がそれに添えられ、口から伸びた舌がそれの根元へと付け、そしてゆっくりと舌全体で味わうかのように、陰茎の裏筋を下から上へと舐め上げていく。
そのたった一舐めで舌に感じた味に、コジールの体は歓喜の声を上げるかのごとく、ぶるりと大きく震えた。
(一月前より、味に深みが増してますわ……)
恍惚としながら舌にまとわりつくその味を、じっくりと堪能したコジールは、今度は数々の魔物の子宮を苛め抜き、膣肉を掘り返してきた亀頭部分へと口をつける。
艶々と光を反射しながらも、魔物娘の淫水に焼けて赤黒く変色してしまっているそれを、まずは舌先でちろちろと鈴口を解し、そして舌の中ほどまでを使って全体的に満遍なく味わい始める。
亀頭全体が唾液で濡れて光を鈍く反射するまで味わったコジールは、今度は唇を窄めて鈴口にちゅっちゅっと吸い付くような口付けをする。
最初は鈴口に触れる程度だったそれが、やがて鈴口を唇で啄ばむ様に変わり、亀頭の先を唇の内側で愛撫するようになり、最終的に亀頭部分をすっぽりと口で覆ってから吸い付き始めた。
(あん。先っぽから美味しいお汁が……)
ロンメートが起きていないかを上目遣いで確かめながら、コジールは口と舌で彼の亀頭を苛めつつ、先走りの汁を啜って味わい、黒い手袋に覆われた手指を、竿の部分に巻きつけて上下させ、その汁をもっと出そうとしている。
ちゅぅちゅぅとコジールの口の端から音が漏れ、ロンメートの陰茎に触れている手袋がしゅっしゅっと布擦れの音を出す。
流石にここまでされると、熟睡していても体は反応するもので、その身に受けている愛撫の快楽からか、ロンメートの眉がよって皺が眉間に出来て、何かを我慢しているかのようだ。
そんなロンメートの様子を見ていて、次の段階へと進む事に決めたのか、手を陰茎から離してそっと彼の腰へ巻きつけるコジール。
そしてゆっくりと喉の奥へと、ロンメートの陰茎を飲み込んでいく。
(すごい……前よりも、もっと奥に届いて……)
鼻先がロンメートの下腹に付くまで飲み込んだコジールは、鼻から抜ける陰茎の匂いと、喉の奥を刺し貫かれている快感から、ぶるりと体を振るわせた。
次にゆっくりと飲み込んでいた陰茎を、頭を動かして引き抜いていく。
(あああッ!頭の後ろにビリビリきますわ!!)
ぞろぞろと喉の奥を括れの部分で撫で上げられて、コジールは腰が抜けそうな程の快感を感じながらも、唇にその括れの部分が来るまで、吸い付きながら頭を引いていく。
そしたらまた喉の奥まで飲み込み、引き抜き、また飲み込み、今度は首を傾げて撫でられる部分を変えながら、引き抜いていく。
それを何度と無く繰り返していくと、もう馬の体といわず人の体といわず、コジールの体全体が性感によって小刻みに震え始め、股間部分はしとどに濡れそぼり、喉で陰茎を愛撫している彼女の顔は、恍惚という言葉が負けてしまいそうなほどに緩んで幸せそうな表情になっている。
(もう少しですわ。もう少しで……)
頭を上下に動かす度に、快楽からビクビクと反応していた陰茎が、何かの内圧から膨れ上がるかのように、更に大きく硬くなっていく。
もう何度と無く味わった経験のあるコジールには、これがロンメートが射精する前兆であることがわかっている。
なのでその射精を促すために、性感で顔を赤く染めながらも、必死で頭を上下させて、陰茎に快楽を与えていく。
腹の底に生まれた奔流を感じたのか、寝ているはずのロンメートの顔がしかめられる。
もうそろそろ限界だと察したコジールは、ぎゅっと両手でロンメートの腰に抱きつきながら、喉の奥の更に奥へと押し込む様に、彼の陰茎を飲み込んだ後、喉全体でその陰茎を締め付ける。
「あッうぅ……」
そんな夢現な声がロンメートの口から漏れた瞬間、その陰茎の先からコジールの喉の奥へと向かって、白濁した大量の液体が放たれた。
(すごいぃ……こんなに出るなんて……)
止まる事を知らないかのように、どんどんと発射されるその白い液体を、ゴクゴクと喉を鳴らして必死に嚥下しつつも、飲み込みきれなかったそれが、コジールの口の端から漏れ出て、ロンメートの下腹を少しだけ汚す。
やがて先から吐き出されるものの勢いが弱まり、硬く熱い肉の棒であった陰茎の力も弱まった頃、名残を惜しむかのようにコジールは、その陰茎に纏わり付いている液体を、唇でこそぎ取るかのようにしながら、少しずつ喉から陰茎を引き抜いていく。
そして亀頭が喉から口内へ戻ってきた時、一際強く吸い付いて、尿道に残った精液を吸い取る。
そこでようやくコジールは、待ちに待った愛しい雄の、様々な魔物娘の魔力に塗れた精液の味を堪能することが出来た。
(この複雑怪奇な味が、堪りませんわ〜♪)
本来魔物娘というのは、自分の魔力を伴侶へ注ぎ、自分の体に合った精液を生産させるという性質がある。
それがまだ二・三人を相手にする位なら大した事は無いが、十人二十人と魔物娘と交わると、彼女たちの魔力が伴侶の精を自分にあったものにしようとし合ってしまい、その結果いまコジールが堪能しているような、単純に言えば混沌に満ちた味の精へと変わってしまうのである。
こうなるとコジールのようなバイコーンにとっては最上の味なのだが、普通の魔物娘にとっては自分の好みの味が薄いため、物足りなさを感じてしまうことになる。
それがここ三日ほど、ロンメートが寝ずに相手にしなければならない理由だったりするのは、彼は気が付いていない。
「ちゅ〜〜ぱ……美味しかったですわ〜」
そう吸い付いていた口を離して言いつつも、体は満足していないのか、ロンメートの腰に回していた手を解くと、いまだに硬いままの彼の陰茎に手指を巻きつけて上下している。
でもここまでやっていれば、寝ている子も起きるというもので。
「コジール。寝込みを襲わないでよ」
「だ、旦那様!? いえ、その、これは」
「別に怒っているんじゃないよ。するときはちゃんと起こしてよ。こっちも堪能したいんだから」
「御免なさい。旦那様」
しゅんと項垂れるコジールの銀色の頭を、慰めるように撫でるロンメート。
そしてもう一方の彼の手は、彼女の人間の股間へと伸びていく。
「ひゃぁ!だ、旦那様!!?」
「ねぇ、どうする。先に美味しそうな料理を食べる? それともこっちが先かな?」
前掛けの様な黒い衣装の隙間から差し込んだ手で、ロンメートは濡れているコジールの股間を弄りながら、そう彼女の耳元でささやく。
時間的には昼食を取るべきだし、今ならまだポトフは温かいので、食事を優先するという選択肢もある。
しかし魔物娘にとって、顔の口で取る食事よりも、股の口で取る食事の方が優先されるのは自明の理で。
「ポトフは温め直しますわ。ですから……」
ご多分に漏れず、コジールもそっちを選び、ロンメートを誘うように、その身に纏った黒い衣装を黒い手袋を嵌めた手で脱いでいく。
コルセット状の上着を外し、ガーターベルトの様な股間を覆う部分を外し、人間の体の方を全裸の状態になる。
そしてコジールは、自分の股間をまさぐっているロンメートの手を取ると、彼の手指を固くなりつつある自分のクリトリスに這わせながら、そっと伺うように呟く。
「此処に、旦那様のおちんぽを頂戴してもよろしいでしょうか?」
「もちろん、喜んで」
そんな愛しい妻の控えめなおねだりを、ロンメートは一も二も無く受け入れつつも、まずは優しく両腕でコジールを抱き寄せながら、その唇を自分の唇で塞いだ。
最初は啄ばむ様に、そして貪る様な口付けをして、やがてお互いの舌を舌で絡めとるものへ。
お互いの口の端から、どちらのとも取れない唾液を滴らせ、口の中から隠微な音を響かせながら、お互いの髪を指に絡ませて引き寄せるという、情熱的な口付けを繰り返す。
そんな口付けの最中、どちらともなしにお互いの髪から離れた手は、次にお互いの股間へと伸びる。
ロンメートの右手指はコジールの膣内へと分け入り、その入り口の部分を入念に解し、左手は彼女の豊満な胸を揉み込んでいく。
コジールの黒手袋に覆われた両手は、ロンメートの陰茎に巻きつき、その手袋の滑らかさを生かして、上下運動で愛撫を始める。
それはコジールの色白な人間の肌が、性感からほんのりと朱色に染まり、ロンメートの陰茎の先から、準備が出来たと知らせる透明な液体がとろりと出てくるまで続いた。
「じゃあいくよ、コジール」
「お願い致しますわ。旦那様」
「コジール。この時は旦那様じゃなくて、なんて言うんだったっけ?」
「……ロンメート。私の膣内に挿入れて下さい」
旦那様ではなく自分の名前を言ってもらえて満足したように、ロンメートは勃起した陰茎をコジールの膣内へ、対面立位のような体系で抱き合いながら挿入していく。
「あ、あ、ああッ!」
まずは艶々で熱い亀頭がコジールの膣口に触れ、それが膣肉を押し開きながら奥へ奥へと進んでいく。
その一ヶ月ぶりに膣内から感じる愛しい雄の陰茎の感触に、コジールの口からは知らず知らずの内に声が漏れてしまっている。
そんなコジールの乱れ様を見て微笑みながら、ロンメートはさらに奥へと押し入って、鈴口で子宮口へ口付けをする。
「ふぁんッっっ!!」
体の奥底を、陰茎で持ち上げられるようにして小突かれたコジールは、ロンメートにしがみ付きながら少し強めに達してしまい、愛液が繋がっているところからどろどろと地面へと零れ落ち、繋がっていない馬の膣の方も、いつか訪れる陰茎の感触を待ちわびているのか、膣口が蠢きながら愛液を滴らせている。
しかしロンメートはそんなコジールの様子を見て知りながらも、遠慮無しに腰を前後に振って、膣肉を陰茎の括れで撫で上げていく。
「ロンメート。待って、待ってください」
「どうしたの気持ち良くないの?」
「当たってます、気持ちいところに当たってます――んッ!!」
小煩い口を塞ぐためか、ロンメートはコジールの唇を奪うと、そのまま彼女が抵抗できないように抱き寄せてから、より一層激しく腰を前後に降り始めた。
力強く抱き寄せられ、そして口の中を舌で蹂躙されながら、激しく膣内を陰茎で責められる事になったコジールの体は、抵抗するのを止めるかのように力を抜いて、ロンメートへと体を預けてしまっている。
それをロンメートは、コジールの胸の双球の柔らかさを胸板で、性感で上昇した体温を彼女の口から舌で、蠢き抱きつき愛撫してくる膣肉を陰茎で感じつつ、腰を前後に振ってコジールを高めていく。
やがてコジールの肌から珠のような汗が浮かび、目が快楽からの涙で潤み始めると、彼女の子宮口が何かを強請るように、ロンメートの陰茎の先がくっつく度に、吸い付くような動きをし始める。
「もうそろそろ、イキそうなの?」
「ひゃぅ、ひぃゃぃ、うひぃぅ!」
腰振りは止めず、口を離してそう問いかけたロンメートに、もう快楽で言葉も碌にしゃべれない様子のコジールは、目に溜まっていた涙を零しながら、首を何度も上下に振ることでロンメートの問いかけに答える。
一方はまだまだ余裕なのに、もう片方は達する寸前という二人の差は、ロンメートはコジール以外の嫁と毎晩性技を磨いていたのに対し、コジールは一ヶ月ぶりで体が疼いていたためと、それに加えて先ほどロンメートの精液を口にして、コジールの性欲に歯止めが掛からないことも起因している。
「こっちももう直ぐだから、もうちょっとだけ我慢できない?」
「ひゃぃ、うぅう!」
コジールは今度の問いかけに、本当に切羽詰った感じで首を左右に振る。
「じゃあ先にイっても良いけど、こっちがイクまで止めないけど、それでもいい?」
「ぉひゃぃ、ううッ。ぃぅうううぅううぅううう!!!」
もうどうにでもしてと言わんばかりに、首を上下に振っていた途中で、コジールは体を盛大に震わせながら絶頂し、口からは大きな嬌声が閉じた口の隙間から漏れ出る。
「もう少しだから、そのままこっちに体を預けていてね」
「うくうぅ、あぅあああッ、ああぅぁうぅ!!」
ロンメートに震える体を預けながらも、膣内を穿られる快楽で絶頂しつづけて口も閉じていられないのか、大きく口を開けて喉を震わせながら、恥じらいも無くして獣の様に嬌声を、緑生い茂る広い丘陵地帯へ向けて放つコジール。
それから数分の後、ようやくロンメートの睾丸から精液が上ってくる感覚が生まれる。
「射精るよ、準備は良い?」
「ひゃうぅいぃ、あひぅうぅう!!」
「イクよ!」
「ひぅうぃいいぃいぅぅう!!!」
人語を忘れた様に喚きながら、コジールはロンメートの突き入れられた陰茎を子宮口で吸い付きながら、発射された精液を子宮の中に受け入れつつ、再度大きく絶頂して、一際大きな嬌声を辺りに振りまく。
その際にロンメートの吐き出した精液は、先ほどコジールが口で受けたよりも多いものの、柔軟性に富んだコジールの魔物娘の子宮は、その全てを飲み干し、その結果彼女の下腹は臨月の妊婦の様に膨れてしまう。
「はぁ、はぁ、結構出た」
「うあぅ……」
精を吐き終えたロンメートの腕から、ずるりと滑り落ちたコジールは、そのまま地面に植えられている牧草の上に力なく横たわりつつ、激しい性交の余韻に浸っている。
しかし一度射精し終えて冷静になっているはずのロンメートは、コジールの汗で顔に張り付いた銀髪や、性感で上気した肌と頬、そして膣口から漏れ出る白い液体を見て、さらに劣情を催したのか、さらに硬く大きく陰茎を起立させると、今度はコジールの馬の体の方へと周り込んでいく。
「……ひゃぅ?」
「よい、しょっと」
「あはぅ――!」
馬の体の後ろ左足を持ち上げて股を開かせ、露になった馬の膣へロンメートは自分の陰茎を入れ込み、また腰を上下に降り始める。
その人間の方に入れるのとはまた違った感触に、ロンメートの腰は先ほどよりも大きく早く動いていく。
「まっれぇ、やふまへてぇ……」
「やっぱり大きさの違いで気持ち良くないのかな。じゃあオマケして」
「ほひぃぅ!」
少しだけでも休憩を挟んだからか、人語を取り戻しつつあったコジールだったが、ロンメートが次にしたことで、また人語を忘れたような声を口から漏らした。
「お尻の穴から手を入れて、直接子宮を揉んでいるんだけど、どう?」
その言葉通りに、ロンメートの右手がコジールの馬の尻穴に二の腕近くまで入り、そしてその掌でコジールの馬の子宮を、腸壁越しにぐにぐにと揉んでいる様だ。
そんな事をされるとは想像すらしていなかったはずのコジールは、先ほど散々達した事と、直接子宮を揉まれるという快楽刺激で、白目を剥いて失神してしまった。
まさか失神するとは思っていなかったのか、ロンメートは少しばつの悪そうな顔つきになった後、少しの間考える素振りを見せた。
「えっと、じゃあ勝手に楽しむからね」
さっき寝込み襲われたしと言外に呟いてから、腰振りと子宮揉みを再開するロンメート。
コジールの体は彼女の意思とは関係なく、ロンメートに与えられるその快楽に、ビクビクと反応しつつ、彼の陰茎と尻穴に入っている腕を締め付けてきた。
事が終わり、コジールが目を覚ましたのは、日が傾きかけている昼下がりだった。
目を覚まして直ぐ最初に愛しいロンメートを見つけたコジールは、一瞬嬉しそうな笑顔になった後、どうして自分が気絶することになったかを思い出したのか、一転して不満顔に変わり、そして彼女の記憶にあるよりも、自分の体に多量に掛けられている白い液体を見て、コジールはロンメートの首筋に噛み付いた。
馬は人に不満を覚えると噛み付くと言うが、それがバイコーンにも当てはまるとは意外である。
「何も噛み付かなくても。ほら、こんなに歯形がくっきり」
「ご所望でしたら、もう一つ拵えてさしあげますわよ?」
草原に横たわったままくあっと大口を開けるコジールに、その近くで横たわっていたロンメートは、焦った笑顔を向けて謝罪する。
判ればよろしいとばかりに頷いてから、ロンメートをその胸に抱きしめるコジール。
今この二人が何をしているのかと言うと、愛し合った後戯という部分もあるが、ロンメートにコジールの魔力を注入している最中。
なぜ今これをするかと言うと、理由は二つある。
一つは、ロンメートに多数の魔物の魔力が混在している事は周知の事実だが、その混沌とした状態にある他種の魔物の魔力を、水と油に卵を入れると混ざり合ってマヨネーズになるように、コジールのバイコーンの魔力でもって、それらを一つの魔力へと変換するため。
これをすることで、ロンメートの発する魔力と匂いが、より一層魔物娘を魅了する物へと変わり、より大きなハーレムを築くための礎になるのである。
二つ目には、混沌とした魔力が溢れる精液がバイコーンのご馳走なのに、している最中にこれをしてしまうと、混沌とした味わいがなくなってしまうので、先ほどの性交時にはしなかったのである。
「ねえコジール。普通に抱き合ったままじゃなくてさ……」
「だめですわよ。それはまた夜に」
「えー……」
「えー、じゃないですわ。昼食に作ったポトフと、夕食用のサラダとローストビーフを食べていただかないと」
「それを食べた後なら、またしても良いんだね」
「それなら、いいですわよ……」
とまあこんな風に、バイコーンと彼女を愛する男の、一月に一日だけの、普通の魔物の夫婦らしい生活は過ぎていく。
明日からは、ロンメートはハーレムの主として、多数の魔物娘に愛を囁きながらその腕に抱く事になり、コジールは次の逢瀬の為に、畑を耕して野菜を作り、取引で珍しい食べ物や酒を手に入れる事になるだろう。
それがロンメートとコジールの、バイコーンの居る牧場の生活である。
明け方の寒い空気を感じつつ、眠気眼を擦りながら、何も身に付けていない人間の体を起こしながら背伸びをして、体に纏わりつく睡魔を追いやる。今度は立ち上って馬の体に付いた藁の欠片を身を震わせて落としてやる。
そうして彼女は、ふわわと大欠伸をしながら、着替えをするために部屋を出ようとして、その直ぐ目の前に彼女の愛しい旦那様――ロンメートの顔が目に入った。
どうやら彼は彼女を起こしに、彼女の部屋に入ろうとしていたようだ。
「随分と大きい欠伸だね、コジール」
「はわッ!だ、旦那様。いえ、その、違うのです」
「そんなに慌てて弁解なくても。日頃滅多に見れない物を見れて、此方としては得した気分なんだから」
「そんな、お恥ずかしい所を……」
愛しい旦那様に自分の失態を見せたためか、それともそんな失態を見たとしても、相変わらずに優しい笑みを浮かべる旦那様に惚れ直したからか、コジールの透き通る程に白く滑らかな肌に赤色が差している。
「ほら、今日は約束していた日でしょ。朝から無駄に出来ないよ?」
「……もう、旦那様ったら」
そんな風にコジールを囃しながら手を差し出すロンメートは、コジールの失態を無かったものにしたいというようにも感じ取れるし、コジールが失態と思っている事など失態ではないと言いたげなようにも感じられてしまう。
それはコジールも感じ取った様で、ロンメートの優しさに少し救われた気分を抱きながら、彼の手を取って歩き出した。
二人は野菜スープと作り置きのパンで軽く朝食を取った後、コジールは今日の為に用意していたものを取り出すために建物に残り、ロンメートは牧場にある巨木の脇に設えたロッキングチェアに座り、木漏れ日を身に受けつつぼんやりと景色を楽しみながら、彼女の準備が出来るまで待つ事にしたようだ。
「旦那様〜」
そこへブンブンと大手を振り、パカパカと蹄の音を響かせて近寄って来るコジール。
振っているのとは反対の手には、ワインと二つのグラス。黒い馬体の背に括りつけた、鞍のような荷を置く場所の上には、切ったチーズやビスケットにドライフルーツの乗った大皿。
「待っていたよ」
コジールの姿を確認したロンメートは、そっと椅子から立ち上ると、木に立てかけてある板のような物を手に取り、テキパキと組み立てていく。すると程なくして木の板だと思われていたそれは、折りたたみ式の木の机に早変わり。
その机の上にまずコジールは、手にある瓶詰めワインとグラスを置き、続いて後ろに手を回して大皿を掴み、一度何が入っているのかをロンメートに見せてから、机の中央にそっと置いた。
「今日は随分と美味しそうな品揃えだね」
「今日の日のために、いろいろと準備してきましたもの」
大皿を見て思わずといった感じで、そう感想を漏らしたロンメートに、コジールは自分の努力を誇る様に、豊満な胸を張って答えるコジール。
そして二人どちらともなく笑い合うと、示し合わせた様にロンメートはグラスに手を伸ばし、コジールはワインのコルクを抜きにかかる。
「昨日ゴブリン商隊から買い付けました、魔界の空気で爛れたブドウで作られる、淫腐ワインですわ」
「貴腐ワインは聞いたことあるけど、淫腐とは……」
グラスに注がれた耳馴れない名称の、血のように赤黒いワインに、少しだけ訝しげな視線を向けるロンメート。
しかしそのワインから立ち上るワインとは思えないほどに、甘く蕩ける様な匂いに誘われて、彼はコジールとグラスを合わせた後に、グラスに口を付けワインを一口だけ含んで味わう。
そしてロンメートは、少し驚いたような表情を浮かべながら、ゆっくりとそれを味わいながら飲み下していく。
恐らく彼は今、淫腐ワインの特徴を余すことなく、体全体で味わっていることだろう。
それは魔界の水に似た薄甘さと、ブドウの渋みを味覚として。鼻から抜けるアルコールの中に混ざる、樽の木から移った香辛料の様な香りと、魔物娘が発する淫臭に似た匂いを嗅覚として。そしてそのワインに含まれる多分の魔力が、含んでいた口内、味を確かめていた舌、匂いを感じていた鼻、飲み込んで通る食道、そして辿り着く胃の内壁から、アルコールと共に体内へと侵入されるのを触覚として感じる。
そんな風に味わうのが、人間の女をレッサーサキュバスに、男をインキュバスへと変える効果を持つ、魔界産の高級酒である淫腐ワイン。
「なんか、これぞ魔界の品といった感じだね」
「旦那様のお気に召していただけましたようで、安心しましたわ。そうそう、虜の果実のドライフルーツに、そのワイン良く合いますの。ささ、どうぞお試しになって下さい」
「じゃあ一つ試しに」
皿の上にあった、虜の果実を魔界の日に干したドライフルーツを一口齧りながら、ロンメートは淫腐ワインを傾ける。
ドライフルーツになって少々くどいほどの虜の果実の甘さが、ワインに攫われてすっと舌の上から消えていく。そしてそのくどい甘さに引き寄せられるように、ワインの中の淫臭の様な匂いと、魔界の水の様な薄甘さがなりを潜め、舌に残るのは高級ワインの様な気品溢れる味。
たかが一齧りのドライフルーツで、ここまで変わるかというほどの、劇的な味の変化。
「不思議なワインだね、これ……」
「ホルスタウロスのミルクで作ったチーズに、私が焼いたビスケットもありますわ。お試しになって下さい」
驚き感動するロンメートの姿に、嬉々として自分の手によって作った物を進めるコジール。
そしてそれを口に入れてワインを含んだロンメートは、美味しい美味しいと言いつつ食べ進め、大皿の中身とワインの瓶が空になるまではあっという間だった。
「ああ、美味しかった……」
ほんのりとワインが含んでいたアルコールと魔力によって頬を赤くしながら、ロッキングチェアーにもたれ掛かって呟くロンメート。
その表情は実に幸せそうである。
「では昼食も楽しみにして下さいませ。腕に縒りをかけますわ」
ロンメートの幸せは自分の幸せと言いたげに、コジールはにっこりと笑いかけつつも、今日は彼の胃を飽きさせないと宣言する。
そんなコジールに笑いかけながら、ふぅっとため息を吐いたロンメートは、ロッキングチェアーに深く体を預けた。
「旦那様。もしかしてお疲れですか?」
「うん、まあね。今日一日空けるために、ここ三日ほど無茶したから」
コジールに心配をかけまいとする様に、ロンメートはにっこりと笑いかけるものの、その目の下や唇の端の上がり方に、やや疲れが見えた。
それを見つけたコジールは、少しだけ暗い表情になってしまう。
「私が考えなしに、一昨日二人もハーレムに入れたのが原因ですわね」
「いや、あの二人は実に良い子たちだよ。ワーウルフのウォルは直ぐに俺を主人に認めてくれた様で、精液で膨れたお腹撫でると幸せそうに尻尾振るし。狐のミカネは甘えん坊で、今日一日離れるのを嫌がっていたけど、俺と体の相性が良いのか、この二日だけで尻尾が二本になったしね」
そこまで言って何かを思い出したか、ロンメートはぎしっと椅子を揺らして間を取った。
「でも他の子達は、ここ最近で随分と大食らいになったのか、気絶から復帰した途端に交わりたがるんだよ。お陰でここ三日は、眠る暇も無いほど離してくれなかったから」
独白するように呟くロンメート。
その言葉を聴いたコジールの手がすっと伸び、ロンメートの頬に手を当てる。
そして二度ほど上下に撫でた後で、人差し指と親指とで彼の頬をきゅっと摘んだ。
「ひてててて」
痛いと言う口に対して別に大して痛くは無いのだろう、ロンメートの顔は苦痛にも不快にも歪んではいない。
むしろ、このやり取りを楽しんでいるようにすら見受けられる。
「あの子たちは、全員旦那様の愛しい妻なのですから、愛されて嬉しい悲鳴を上げるのでしたらまだしも、あの子たちが聞いたら泣いてしまいそうな、その物言いは看過できませんわ」
「悪かったって。ちゃんと全員愛してます」
「その物言いが疑わしいのですわ!」
ぎゅっと音が出そうなぐらいに力強く頬を一抓りしてから、ぱっと手を離すコジール。
最後のやつは本当に痛かったのか、ロンメートは離して貰った頬を手のひらで数度撫でて、痛みを拡散させようとしている。
しかしコジールとのこの掛け合いが楽しいのか、ロンメートの顔は相変わらず笑顔だ。
そしてそんなロンメートの表情に、そっとため息を吐き出すコジール。
「旦那様はもう少々、ハーレムの主という自覚を持ってほしいですわ」
「俺としては、永遠の愛を誓ったのは君だけのはずだったんだけどね」
「バイコーンに求婚した時点で、そういうのは諦めて欲しいと、何度と無く申し上げたはずですわよね。それを旦那様も了承なさったはずですわ」
「そうだね。だから普通はハーレムの主として勤めを果たし、月に一日だけ俺の我侭で君とだけ愛する日を作って貰ったんだよね」
「もう、判っているのなら混ぜ返さないで欲しいですわ」
プンプンと怒るコジールを、困ったような笑顔を向けて見ていたロンメートだが、不意に彼の口が開かれ、ふわっと欠伸が漏れた。
どうやら先ほどの発言は、コジールを怒らせるための方便ではなく、本当の事のようだ。
それをコジールも悟ったのか、ロンメートの頭を幼子にするかのような手つきで撫でて、彼の様子を伺っている。
「一眠りなさいますか?」
「うん。お言葉に甘えて、ちょっと寝るよ。昼食のとき、起こして」
頭を撫でるコジールの手に誘われるように、すっと眠りに入ったロンメート。程なくして彼の口からは、寝息が漏れ始める。
そんなロンメートの姿を見て、聖母のような微笑を浮かべたコジールは、彼を起こさない様に気遣いながら、空になったワイン瓶やグラスに皿を持って、昼食の用意をするためにか、建物のほうへと歩いて向かっていった。
時は進み昼食時。
もうロンメートは起きたかなと、手作りのポトフが入った鍋を手に持ち、馬の背中に食器とパンを乗せた荷を背負って、ロンメートの居る大樹の木陰へとやってきたコジール。
しかし彼女が近寄っても反応を返さないロンメート。彼はまだ眠っているようだ。
(狸寝入り、ではなさそうですわね)
そっと彼の幸せそうな寝顔を見て、心の中でそう呟いたコジールは、手にある熱々のポトフを机に置き、音を立てないように食器をその周りに配置していく。
並べ終え、このままではポトフが冷めてしまうからと、コジールはロンメートの体を揺すって起こそうと手を伸ばした。
しかしロンメートのズボンの一部が隆起している様子が目に入ったコジールは、彼の上半身へ伸ばしかけていた手を、軌道を修正してその隆起している場所へと手を向ける。
降り立つように軽くその部分にコジールの手が触れると、その中の何かが途端に反応し、隆起している部分がビクリと振るえた。
それに怖気づくことなく、そのまま手で軽くその部分を撫でるコジール。
(すごいですわね……撫でるだけで、こんなに反応なさるなんて)
コジールの手が上下にゆっくり動くたびに、ビクビクと反応を返すその部分に当てられたのか、彼女の口から熱っぽい吐息が漏れる。
そして我慢できなくなったかのように、コジールの手はロンメートのズボンを、彼が起きないように静かにゆっくりとずらしていき、よく眠っているロンメートの体を少しだけ持ち上げて、するりとズボンを膝まで脱がしてしまった。
するとズボンに引っかかっていたロンメートの起立した陰茎は、弾かれた起き上がりこぼしかの様に、勢い良く彼の下腹に当たった後に小刻みに揺れ、その存在を周りに誇示している。
(ふわぁ……一ヶ月ぶりの、旦那様のおちんぽ……)
多数の魔物娘との性交で、唾液にまみれ、淫水に焼かれ、膣肉を耕してきたそれは、いっそ禍々しい程の存在感があった。
しかしそれは比喩ではない。
実際に魔力を目で見ることの出来るものが見たのならば、ロンメートのそれは悪名高い伝説の魔剣並みに、魔物の魔力が溢れているのが見えることだろう。
そんな威圧感と雄の匂いを放ち、数々の魔物の魔力に塗れたその一物こそ、バイコーンの求める究極の陰茎。
(旦那様と、あの子達の匂いが混ざって、すごく良い匂いですわ……)
バイコーン的に美味しそうなその陰茎に誘われて、まずコジールの手がそれに添えられ、口から伸びた舌がそれの根元へと付け、そしてゆっくりと舌全体で味わうかのように、陰茎の裏筋を下から上へと舐め上げていく。
そのたった一舐めで舌に感じた味に、コジールの体は歓喜の声を上げるかのごとく、ぶるりと大きく震えた。
(一月前より、味に深みが増してますわ……)
恍惚としながら舌にまとわりつくその味を、じっくりと堪能したコジールは、今度は数々の魔物の子宮を苛め抜き、膣肉を掘り返してきた亀頭部分へと口をつける。
艶々と光を反射しながらも、魔物娘の淫水に焼けて赤黒く変色してしまっているそれを、まずは舌先でちろちろと鈴口を解し、そして舌の中ほどまでを使って全体的に満遍なく味わい始める。
亀頭全体が唾液で濡れて光を鈍く反射するまで味わったコジールは、今度は唇を窄めて鈴口にちゅっちゅっと吸い付くような口付けをする。
最初は鈴口に触れる程度だったそれが、やがて鈴口を唇で啄ばむ様に変わり、亀頭の先を唇の内側で愛撫するようになり、最終的に亀頭部分をすっぽりと口で覆ってから吸い付き始めた。
(あん。先っぽから美味しいお汁が……)
ロンメートが起きていないかを上目遣いで確かめながら、コジールは口と舌で彼の亀頭を苛めつつ、先走りの汁を啜って味わい、黒い手袋に覆われた手指を、竿の部分に巻きつけて上下させ、その汁をもっと出そうとしている。
ちゅぅちゅぅとコジールの口の端から音が漏れ、ロンメートの陰茎に触れている手袋がしゅっしゅっと布擦れの音を出す。
流石にここまでされると、熟睡していても体は反応するもので、その身に受けている愛撫の快楽からか、ロンメートの眉がよって皺が眉間に出来て、何かを我慢しているかのようだ。
そんなロンメートの様子を見ていて、次の段階へと進む事に決めたのか、手を陰茎から離してそっと彼の腰へ巻きつけるコジール。
そしてゆっくりと喉の奥へと、ロンメートの陰茎を飲み込んでいく。
(すごい……前よりも、もっと奥に届いて……)
鼻先がロンメートの下腹に付くまで飲み込んだコジールは、鼻から抜ける陰茎の匂いと、喉の奥を刺し貫かれている快感から、ぶるりと体を振るわせた。
次にゆっくりと飲み込んでいた陰茎を、頭を動かして引き抜いていく。
(あああッ!頭の後ろにビリビリきますわ!!)
ぞろぞろと喉の奥を括れの部分で撫で上げられて、コジールは腰が抜けそうな程の快感を感じながらも、唇にその括れの部分が来るまで、吸い付きながら頭を引いていく。
そしたらまた喉の奥まで飲み込み、引き抜き、また飲み込み、今度は首を傾げて撫でられる部分を変えながら、引き抜いていく。
それを何度と無く繰り返していくと、もう馬の体といわず人の体といわず、コジールの体全体が性感によって小刻みに震え始め、股間部分はしとどに濡れそぼり、喉で陰茎を愛撫している彼女の顔は、恍惚という言葉が負けてしまいそうなほどに緩んで幸せそうな表情になっている。
(もう少しですわ。もう少しで……)
頭を上下に動かす度に、快楽からビクビクと反応していた陰茎が、何かの内圧から膨れ上がるかのように、更に大きく硬くなっていく。
もう何度と無く味わった経験のあるコジールには、これがロンメートが射精する前兆であることがわかっている。
なのでその射精を促すために、性感で顔を赤く染めながらも、必死で頭を上下させて、陰茎に快楽を与えていく。
腹の底に生まれた奔流を感じたのか、寝ているはずのロンメートの顔がしかめられる。
もうそろそろ限界だと察したコジールは、ぎゅっと両手でロンメートの腰に抱きつきながら、喉の奥の更に奥へと押し込む様に、彼の陰茎を飲み込んだ後、喉全体でその陰茎を締め付ける。
「あッうぅ……」
そんな夢現な声がロンメートの口から漏れた瞬間、その陰茎の先からコジールの喉の奥へと向かって、白濁した大量の液体が放たれた。
(すごいぃ……こんなに出るなんて……)
止まる事を知らないかのように、どんどんと発射されるその白い液体を、ゴクゴクと喉を鳴らして必死に嚥下しつつも、飲み込みきれなかったそれが、コジールの口の端から漏れ出て、ロンメートの下腹を少しだけ汚す。
やがて先から吐き出されるものの勢いが弱まり、硬く熱い肉の棒であった陰茎の力も弱まった頃、名残を惜しむかのようにコジールは、その陰茎に纏わり付いている液体を、唇でこそぎ取るかのようにしながら、少しずつ喉から陰茎を引き抜いていく。
そして亀頭が喉から口内へ戻ってきた時、一際強く吸い付いて、尿道に残った精液を吸い取る。
そこでようやくコジールは、待ちに待った愛しい雄の、様々な魔物娘の魔力に塗れた精液の味を堪能することが出来た。
(この複雑怪奇な味が、堪りませんわ〜♪)
本来魔物娘というのは、自分の魔力を伴侶へ注ぎ、自分の体に合った精液を生産させるという性質がある。
それがまだ二・三人を相手にする位なら大した事は無いが、十人二十人と魔物娘と交わると、彼女たちの魔力が伴侶の精を自分にあったものにしようとし合ってしまい、その結果いまコジールが堪能しているような、単純に言えば混沌に満ちた味の精へと変わってしまうのである。
こうなるとコジールのようなバイコーンにとっては最上の味なのだが、普通の魔物娘にとっては自分の好みの味が薄いため、物足りなさを感じてしまうことになる。
それがここ三日ほど、ロンメートが寝ずに相手にしなければならない理由だったりするのは、彼は気が付いていない。
「ちゅ〜〜ぱ……美味しかったですわ〜」
そう吸い付いていた口を離して言いつつも、体は満足していないのか、ロンメートの腰に回していた手を解くと、いまだに硬いままの彼の陰茎に手指を巻きつけて上下している。
でもここまでやっていれば、寝ている子も起きるというもので。
「コジール。寝込みを襲わないでよ」
「だ、旦那様!? いえ、その、これは」
「別に怒っているんじゃないよ。するときはちゃんと起こしてよ。こっちも堪能したいんだから」
「御免なさい。旦那様」
しゅんと項垂れるコジールの銀色の頭を、慰めるように撫でるロンメート。
そしてもう一方の彼の手は、彼女の人間の股間へと伸びていく。
「ひゃぁ!だ、旦那様!!?」
「ねぇ、どうする。先に美味しそうな料理を食べる? それともこっちが先かな?」
前掛けの様な黒い衣装の隙間から差し込んだ手で、ロンメートは濡れているコジールの股間を弄りながら、そう彼女の耳元でささやく。
時間的には昼食を取るべきだし、今ならまだポトフは温かいので、食事を優先するという選択肢もある。
しかし魔物娘にとって、顔の口で取る食事よりも、股の口で取る食事の方が優先されるのは自明の理で。
「ポトフは温め直しますわ。ですから……」
ご多分に漏れず、コジールもそっちを選び、ロンメートを誘うように、その身に纏った黒い衣装を黒い手袋を嵌めた手で脱いでいく。
コルセット状の上着を外し、ガーターベルトの様な股間を覆う部分を外し、人間の体の方を全裸の状態になる。
そしてコジールは、自分の股間をまさぐっているロンメートの手を取ると、彼の手指を固くなりつつある自分のクリトリスに這わせながら、そっと伺うように呟く。
「此処に、旦那様のおちんぽを頂戴してもよろしいでしょうか?」
「もちろん、喜んで」
そんな愛しい妻の控えめなおねだりを、ロンメートは一も二も無く受け入れつつも、まずは優しく両腕でコジールを抱き寄せながら、その唇を自分の唇で塞いだ。
最初は啄ばむ様に、そして貪る様な口付けをして、やがてお互いの舌を舌で絡めとるものへ。
お互いの口の端から、どちらのとも取れない唾液を滴らせ、口の中から隠微な音を響かせながら、お互いの髪を指に絡ませて引き寄せるという、情熱的な口付けを繰り返す。
そんな口付けの最中、どちらともなしにお互いの髪から離れた手は、次にお互いの股間へと伸びる。
ロンメートの右手指はコジールの膣内へと分け入り、その入り口の部分を入念に解し、左手は彼女の豊満な胸を揉み込んでいく。
コジールの黒手袋に覆われた両手は、ロンメートの陰茎に巻きつき、その手袋の滑らかさを生かして、上下運動で愛撫を始める。
それはコジールの色白な人間の肌が、性感からほんのりと朱色に染まり、ロンメートの陰茎の先から、準備が出来たと知らせる透明な液体がとろりと出てくるまで続いた。
「じゃあいくよ、コジール」
「お願い致しますわ。旦那様」
「コジール。この時は旦那様じゃなくて、なんて言うんだったっけ?」
「……ロンメート。私の膣内に挿入れて下さい」
旦那様ではなく自分の名前を言ってもらえて満足したように、ロンメートは勃起した陰茎をコジールの膣内へ、対面立位のような体系で抱き合いながら挿入していく。
「あ、あ、ああッ!」
まずは艶々で熱い亀頭がコジールの膣口に触れ、それが膣肉を押し開きながら奥へ奥へと進んでいく。
その一ヶ月ぶりに膣内から感じる愛しい雄の陰茎の感触に、コジールの口からは知らず知らずの内に声が漏れてしまっている。
そんなコジールの乱れ様を見て微笑みながら、ロンメートはさらに奥へと押し入って、鈴口で子宮口へ口付けをする。
「ふぁんッっっ!!」
体の奥底を、陰茎で持ち上げられるようにして小突かれたコジールは、ロンメートにしがみ付きながら少し強めに達してしまい、愛液が繋がっているところからどろどろと地面へと零れ落ち、繋がっていない馬の膣の方も、いつか訪れる陰茎の感触を待ちわびているのか、膣口が蠢きながら愛液を滴らせている。
しかしロンメートはそんなコジールの様子を見て知りながらも、遠慮無しに腰を前後に振って、膣肉を陰茎の括れで撫で上げていく。
「ロンメート。待って、待ってください」
「どうしたの気持ち良くないの?」
「当たってます、気持ちいところに当たってます――んッ!!」
小煩い口を塞ぐためか、ロンメートはコジールの唇を奪うと、そのまま彼女が抵抗できないように抱き寄せてから、より一層激しく腰を前後に降り始めた。
力強く抱き寄せられ、そして口の中を舌で蹂躙されながら、激しく膣内を陰茎で責められる事になったコジールの体は、抵抗するのを止めるかのように力を抜いて、ロンメートへと体を預けてしまっている。
それをロンメートは、コジールの胸の双球の柔らかさを胸板で、性感で上昇した体温を彼女の口から舌で、蠢き抱きつき愛撫してくる膣肉を陰茎で感じつつ、腰を前後に振ってコジールを高めていく。
やがてコジールの肌から珠のような汗が浮かび、目が快楽からの涙で潤み始めると、彼女の子宮口が何かを強請るように、ロンメートの陰茎の先がくっつく度に、吸い付くような動きをし始める。
「もうそろそろ、イキそうなの?」
「ひゃぅ、ひぃゃぃ、うひぃぅ!」
腰振りは止めず、口を離してそう問いかけたロンメートに、もう快楽で言葉も碌にしゃべれない様子のコジールは、目に溜まっていた涙を零しながら、首を何度も上下に振ることでロンメートの問いかけに答える。
一方はまだまだ余裕なのに、もう片方は達する寸前という二人の差は、ロンメートはコジール以外の嫁と毎晩性技を磨いていたのに対し、コジールは一ヶ月ぶりで体が疼いていたためと、それに加えて先ほどロンメートの精液を口にして、コジールの性欲に歯止めが掛からないことも起因している。
「こっちももう直ぐだから、もうちょっとだけ我慢できない?」
「ひゃぃ、うぅう!」
コジールは今度の問いかけに、本当に切羽詰った感じで首を左右に振る。
「じゃあ先にイっても良いけど、こっちがイクまで止めないけど、それでもいい?」
「ぉひゃぃ、ううッ。ぃぅうううぅううぅううう!!!」
もうどうにでもしてと言わんばかりに、首を上下に振っていた途中で、コジールは体を盛大に震わせながら絶頂し、口からは大きな嬌声が閉じた口の隙間から漏れ出る。
「もう少しだから、そのままこっちに体を預けていてね」
「うくうぅ、あぅあああッ、ああぅぁうぅ!!」
ロンメートに震える体を預けながらも、膣内を穿られる快楽で絶頂しつづけて口も閉じていられないのか、大きく口を開けて喉を震わせながら、恥じらいも無くして獣の様に嬌声を、緑生い茂る広い丘陵地帯へ向けて放つコジール。
それから数分の後、ようやくロンメートの睾丸から精液が上ってくる感覚が生まれる。
「射精るよ、準備は良い?」
「ひゃうぅいぃ、あひぅうぅう!!」
「イクよ!」
「ひぅうぃいいぃいぅぅう!!!」
人語を忘れた様に喚きながら、コジールはロンメートの突き入れられた陰茎を子宮口で吸い付きながら、発射された精液を子宮の中に受け入れつつ、再度大きく絶頂して、一際大きな嬌声を辺りに振りまく。
その際にロンメートの吐き出した精液は、先ほどコジールが口で受けたよりも多いものの、柔軟性に富んだコジールの魔物娘の子宮は、その全てを飲み干し、その結果彼女の下腹は臨月の妊婦の様に膨れてしまう。
「はぁ、はぁ、結構出た」
「うあぅ……」
精を吐き終えたロンメートの腕から、ずるりと滑り落ちたコジールは、そのまま地面に植えられている牧草の上に力なく横たわりつつ、激しい性交の余韻に浸っている。
しかし一度射精し終えて冷静になっているはずのロンメートは、コジールの汗で顔に張り付いた銀髪や、性感で上気した肌と頬、そして膣口から漏れ出る白い液体を見て、さらに劣情を催したのか、さらに硬く大きく陰茎を起立させると、今度はコジールの馬の体の方へと周り込んでいく。
「……ひゃぅ?」
「よい、しょっと」
「あはぅ――!」
馬の体の後ろ左足を持ち上げて股を開かせ、露になった馬の膣へロンメートは自分の陰茎を入れ込み、また腰を上下に降り始める。
その人間の方に入れるのとはまた違った感触に、ロンメートの腰は先ほどよりも大きく早く動いていく。
「まっれぇ、やふまへてぇ……」
「やっぱり大きさの違いで気持ち良くないのかな。じゃあオマケして」
「ほひぃぅ!」
少しだけでも休憩を挟んだからか、人語を取り戻しつつあったコジールだったが、ロンメートが次にしたことで、また人語を忘れたような声を口から漏らした。
「お尻の穴から手を入れて、直接子宮を揉んでいるんだけど、どう?」
その言葉通りに、ロンメートの右手がコジールの馬の尻穴に二の腕近くまで入り、そしてその掌でコジールの馬の子宮を、腸壁越しにぐにぐにと揉んでいる様だ。
そんな事をされるとは想像すらしていなかったはずのコジールは、先ほど散々達した事と、直接子宮を揉まれるという快楽刺激で、白目を剥いて失神してしまった。
まさか失神するとは思っていなかったのか、ロンメートは少しばつの悪そうな顔つきになった後、少しの間考える素振りを見せた。
「えっと、じゃあ勝手に楽しむからね」
さっき寝込み襲われたしと言外に呟いてから、腰振りと子宮揉みを再開するロンメート。
コジールの体は彼女の意思とは関係なく、ロンメートに与えられるその快楽に、ビクビクと反応しつつ、彼の陰茎と尻穴に入っている腕を締め付けてきた。
事が終わり、コジールが目を覚ましたのは、日が傾きかけている昼下がりだった。
目を覚まして直ぐ最初に愛しいロンメートを見つけたコジールは、一瞬嬉しそうな笑顔になった後、どうして自分が気絶することになったかを思い出したのか、一転して不満顔に変わり、そして彼女の記憶にあるよりも、自分の体に多量に掛けられている白い液体を見て、コジールはロンメートの首筋に噛み付いた。
馬は人に不満を覚えると噛み付くと言うが、それがバイコーンにも当てはまるとは意外である。
「何も噛み付かなくても。ほら、こんなに歯形がくっきり」
「ご所望でしたら、もう一つ拵えてさしあげますわよ?」
草原に横たわったままくあっと大口を開けるコジールに、その近くで横たわっていたロンメートは、焦った笑顔を向けて謝罪する。
判ればよろしいとばかりに頷いてから、ロンメートをその胸に抱きしめるコジール。
今この二人が何をしているのかと言うと、愛し合った後戯という部分もあるが、ロンメートにコジールの魔力を注入している最中。
なぜ今これをするかと言うと、理由は二つある。
一つは、ロンメートに多数の魔物の魔力が混在している事は周知の事実だが、その混沌とした状態にある他種の魔物の魔力を、水と油に卵を入れると混ざり合ってマヨネーズになるように、コジールのバイコーンの魔力でもって、それらを一つの魔力へと変換するため。
これをすることで、ロンメートの発する魔力と匂いが、より一層魔物娘を魅了する物へと変わり、より大きなハーレムを築くための礎になるのである。
二つ目には、混沌とした魔力が溢れる精液がバイコーンのご馳走なのに、している最中にこれをしてしまうと、混沌とした味わいがなくなってしまうので、先ほどの性交時にはしなかったのである。
「ねえコジール。普通に抱き合ったままじゃなくてさ……」
「だめですわよ。それはまた夜に」
「えー……」
「えー、じゃないですわ。昼食に作ったポトフと、夕食用のサラダとローストビーフを食べていただかないと」
「それを食べた後なら、またしても良いんだね」
「それなら、いいですわよ……」
とまあこんな風に、バイコーンと彼女を愛する男の、一月に一日だけの、普通の魔物の夫婦らしい生活は過ぎていく。
明日からは、ロンメートはハーレムの主として、多数の魔物娘に愛を囁きながらその腕に抱く事になり、コジールは次の逢瀬の為に、畑を耕して野菜を作り、取引で珍しい食べ物や酒を手に入れる事になるだろう。
それがロンメートとコジールの、バイコーンの居る牧場の生活である。
12/06/02 21:45更新 / 中文字
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