坑道から脱出したら
魔王が代替わりし、地上にいる全ての生物がその新たな魔王の魔力によって変化を強いられた。
それは自らの生活のためだけに鉱山を掘って鉱物を得て麓の町でそれを加工し、度々立ち寄る大きな街の限られた商人に売り払って生計を立てていたドワーフにも及ぶ。
ドワーフたちは魔王の代替わりによって姿形が変化し、元から低かった体長は更に縮んで人間の幼子ほどの大きさへ、性別は全て女に統一されてしまい。
そのために町に人間の男を呼び寄せるなどと、町の体制を変化させざるを得なかった。
そして変化が起こる時に、事故は得てして起こるもの。
「逃げろー!崩れるぞ!!」
長く伸びた坑道の一区画、ドワーフの背丈に合わせた穴の拡張工事をしていたその場所で、そんな誰とも知らない声と崩落する岩の音が響き渡る。
砂煙が坑道内にもうもうと立ち込めて一切の視界を塞ぐ中、その場所で作業していた人々は崩落場所から逃げようと駆け出していく。
やがて崩落の音が収まり砂煙の濃度も薄まった頃、一人の男と一人のドワーフは自分たちが坑道の中に閉じ込められている事を知った。
「あちゃー、参ったなこりゃ」
そう口から言葉を出したのは一人のドワーフ。動き易い布の面積が少なめな服に包まれた小さな体躯から出て来たのは、人間の子供のように高い声。それは岩壁に二・三度反響して消えていった。
ドワーフは頭を苛立たしげに掻き毟った後、カンテラの光に照らされた崩落して積み重なった岩の様子を調べようと手を伸ばす。
「崩落した場所を確かめようって言うんなら、止めた方が良いですよ」
閉じ込められたもう片方である男はそう声をドワーフに掛けた後、拡張工事の済んでいない小さい口径の坑道に窮屈そうに身を屈めていたが、完璧に塞がってしまった坑道に気落ちしたのかその場に座り込んでしまう。
「下手に触って再度崩落したら、絶対に俺ら助からない」
「こちとら生まれた時からこの坑道を遊び場にしてたんだ、そんな下手を打つわきゃねーだろ」
その言葉通りにドワーフは慎重な手つきで岩に手を当て、軽く叩いた音でどの程度崩落したのか、掘って再度開通させられるのかを確かめていく。
端から端へ隅々調べていたドワーフの頭に、からりと小石が当たった。
ふと目を上に向けたドワーフの視線の先に、今にも落ちてきそうなドワーフの頭の三周りもでかい岩が。
ドワーフがまさかと思ったその瞬間、その岩がゆっくりと岩壁から剥がれ出て、重力に引かれて落ち始める。
そして岩は地面に突き刺さると、離れていても腹を殴られたと錯覚するほどの衝撃を坑道内に撒き散らし、その岩の下敷きになったモノは粉々に砕けてしまっていた。
「崩落したての場所は崩れやすくなってるんですから、上にも気をつけてくださいよ」
「わ、わりぃな、助かった」
冷や汗を流しながらドワーフの襟首を掴んでいる男がそう言うと、ドワーフの方も引きつった笑顔に冷や汗を浮かべて礼を言った。
坑道に閉じ込められて十数分が経ち、今の状況が可及的速やかに良くも悪くもならないと確信した二人は狭い坑道内の地面に座り込んで今後の事を話し合うことにした。
「あちしはレノーラ。麓の町の出身のドワーフ」
「俺はマスカー。旅暮らしで、旅費を稼ぎに町に来ました」
運命共同体となった二人は、とりあえず自己紹介をしてから硬く握手を交わす。
レノーラの小さい見た目とは裏腹に、マスカーが握る小さな掌から伝わってきたのは、人間の大男に掴まれたかのような力強さだった。
「レノーラさんは此処で働いて長いのですか?」
「まぁな。あちしが手伝いが出来る歳になってからだから……約十年ほどになっかな」
「そうですか、少し安心しました」
「なんだそりゃ。あちしを馬鹿にしてんのかい?」
マスカーの言葉に機嫌を悪くしたのか、レノーラは怒気を含んだ物言いをして睨みを利かせているものの、それを小さい体躯で行うものだから、マスカーには小さい子供が精一杯背伸びをして大人の真似をしながら頬を膨らませて怒っているように見えてしまう。
そのためマスカーは口の端に浮かびそうになる微笑みを押し殺しながら、レノーラに対して弁明をしようと口を開く。
「いえいえ、そんなことは無いですよ。それで今後の事ですけど」
「待った!」
唐突にレノーラがマスカーの言葉を言葉と手で遮った。
もしや本当にレノーラの機嫌を損ねたのかとマスカーが心配する中、レノーラは腕を胸の前で組み、むっと片頬を膨らませた不機嫌な様子でマスカーを睨みつけた。
「如何かしましたか?」
「いや、それだよそれ。しゃちほこばった敬語は止めてくんな、背筋がむず痒くならぁな」
そんな言葉を口にしながら、本当に手を背中に回して掻き始めたレノーラ。
「でも、一応は俺の雇い主の……」
「いいってそう言うのは。ただでさえ坑道内は息苦しいのに、堅苦しい空気を作んじゃないよ。あちしを窒息死させたいのかい?」
一応の礼節は遵守しようというマスカーの試みは、逆にレノーラの不評を買う羽目になってしまった。
やはりドワーフと人間の社会では、掟に何かしらの違いがあるのかも知れないなとマスカーは納得し、態度を雇用者のものから旅路の調子に戻した。
「判った。こんな感じで良いか?」
「そうそう、その方があちしの方もやり易い」
マスカーが敬語を止めたのが嬉しいのか、レノーラは童女の様に丸く可愛らしい顔に満面の笑みを浮かべて頷いている。
そんな本当に十年来の鉱山婦なのかと疑いたくなる姿に、マスカーはひとまず目を瞑って意識から追い出すと、止まったままになっていた此処からの脱出の話を再開させた。
「この場所を掘ることは出来そうにないからな。どこか迂回できそうな場所に心当たりはあるか?」
「うーん難しいな。この先は採掘場所で行き止まりだし、横の坑道は随分と離れた場所にあるし……あ!もしかしたら」
「何かあるのか?」
「あちしの記憶が確かなら、確かこっちに……」
そう呟いたレノーラは立ち上がると、坑道の採掘場所へ続く道の奥へとスタスタと歩き出した。
置いていかれる形になったマスカーは慌ててその場から立ち上がり、天井の低さを忘れていたために頭頂部を軽く岩肌に打ち付けた後で、壁に吊るされたカンテラを念の為に手にし、中腰の姿勢でレノーラに付いて行った。
長く伸びる坑道の中、カンテラの光に照らされ岩肌に光と影が浮かび上がり幻想的な様相を見せるが、閉じ込められているという事実にマスカーは素直にその姿を鑑賞する気分にはならなかった。
しかしそのまま二人が進んで行くと、真っ直ぐだった坑道が不意に直角に曲がっており、しかもその壁面には大きく赤いバツ印が付けられていた。
「やっぱりだ!」
「??なにが矢張りなんだ?」
嬉しそうにそう大声をだすレノーラに、そのバツ印の意味がわからないマスカーは思わず首をかしげながらそう彼女に尋ねてしまう。
「この印はな、この先に使われなくなった採掘場や大昔の坑道があるからこれ以上掘るなっていう意味なのさ」
「つまりは――」
「此処を掘り進めりゃ、無事地上に脱出できるって寸法よ」
レノーラの口にニカリと笑みが浮んだのを見て、マスカーは脱出できると確信して思わず胸を撫で下ろした。
しかしレノーラはマスカーの様に胸を撫で下ろす程に安心してはいない様子で、軽くバツ印の場所を叩いて硬さを確かめていた。
「だが問題が一つだけある」
「もしかして、空気が無くなるとか言うんじゃないだろうな?」
「ドワーフの仕事を舐めるんじゃねー、空気穴はそこかしこに設けてあらぁな。あちしが言いたいのは、ここにゃ水も食料も無いだろうってことよ」
一瞬そのレノーラの言葉が理解できなかったマスカーだったが、言葉の内容が脳に染み入り始めると途端に顔色が真っ青になった。
「普通は作業場の近くに、緊急時の食料が在るものじゃないんですか!?」
余りの衝撃的事実にマスカーはなぜか敬語口調になりながらレノーラに詰め寄った。
レノーラはマスカーの迫力に押されて顔を背けながら、言い難そうな表情をしている。
「あー……身内の恥を口にするようで嫌だが、ドワーフの中にはその食料で酒盛り始めて作業をほっぽり出す奴もいてね、多分この近くの保管場所の食料も無いと」
「何で酒盛りなんか……」
「同族を代表して謝る。すまねー」
地面に座り込み項垂れるマスカーに、レノーラは如何言葉を掛けていいのか判らない様子で、とりあえずといった感じで謝罪の意だけは表した。
「折角脱出出来る望みがあるのに、ここで死ぬのか……」
思わず心のうちが漏れてしまったマスカーの言葉を聞いたレノーラの顔に、訝しげな表情が浮かび上がる。
「あん?なんか勘違いしてねーか?だれもここで死ぬなんて言ってねーだろうが」
「だって食料が……」
「あーもう、うだうだしながら早とちりすんなってーの!その食料の事についてお前に手助けして欲しいって言いたかったんだよ、あちしは!!」
項垂れたマスカーの作業着の襟首を掴み上げて顔を無理やり上げさせたレノーラは、噛み付くかのような勢いでマスカーに唾を飛ばしながら言葉を吐いた。
その言葉にレノーラには何か秘策があるとマスカーは確信し、彼の目の中に希望の光が浮ぶ。
「どこかに食料があるのか?」
「無いってさっき言っただろうに」
希望が失望に変わり再度項垂れそうになるマスカーに、レノーラは襟首を掴んだ手を揺すってマスカーの意識をはっきりさせた。
「おいマスカー。あちしは何だ?」
「ドワーフだろ?」
「もう一歩踏み込んだ表現で」
「ドワーフの女性?」
「それも合っちゃいるが、もうちょっと大まかな括りで」
「……魔物ってことか?」
欲しかった答えを手に入れたからか、レノーラは大きく頷いた後でマスカーの襟首から手を離した。
「そう、あちしは男の精さえあれば生きられる魔物で、あんたはそれを供給できる男――これがどういう意味か判るよな?」
「……俺に死ねと言いたいのか?」
確かにマスカーがレノーラに精を供給すれば彼女は生き残るだろう、しかしそれではバツ印の壁の掘削作業と精を吐き出すという二つの重労働を、食料も無しに課せられる事になるマスカーは遠くない未来に確実に死ぬ。
まさかレノーラは自分一人だけでも生き残った方が建設的だとでも言いたいのかと、マスカーは失望の詰まった視線を向ける。
その視線の意味にレノーラが気が付いたのか、マスカーの後頭部を平手で強かに打ちつけた。
「このとん馬!あちしが人殺してまで生きたいと思う様な人物に見えるてーのか!あちしは単に、役割分担しようって言いたいんだよ!」
憤然とした態度で仁王立ちしたレノーラは、座りながら痛む後頭部を撫で擦っているマスカーに向かって指を突き立てた。
「いいかい、よく聞きなよ。この場所を開通させる作業はあちし一人でやるから、あんたはあちしに精を供給する代わりに寝て過ごして体力を温存すんだ、いいね!」
愛らしい顔を真っ赤にしながら、そうマスカーに言い放ったレノーラ。
しかしその顔の赤さは本当に怒りから出てきたものなのか。もしかしたら魔物といえども一人の女性。自分の口から性交をねだるという行為に、一抹の恥ずかしさがあるのかもしれない。
「それだとあまりに俺に都合が良すぎないか?それに俺も手伝った方が早く済むんじゃ……」
「は〜……あんたは本当に馬鹿だね。こんな低い天井で人間がまともに作業できるわけないじゃないか。そんなんで手伝われても、あんたが無駄に体力消耗して死ぬだけだよ。それにあんたが死んじまったら、精を受け取れなくてあちしも死んじまうじゃないか」
そのレノーラの言葉にマスカーは自分が今いる場所を見渡す。
マスカーもレノーラの言葉通り、立ち上がっただけで頭を打ち付けてしまうこの場所で、普通の人間である彼がまともに作業が行えるとは思えなかった。
しかしそれでも見た目が幼子のレノーラ一人に掘削作業という重労働を任せるのには、一人の男であるマスカーには気が引けた。
「納得出来ないみたいだが、これが一番安全で確実な方法なんだ。あんただって知恵働かせりゃ判るだろ?」
そのレノーラの確認するような言葉を受けて、マスカーはレノーラの提案を呑むことに決めた。
この坑道に二人が閉じ込められて丸二日が経過し、あのバツ印の壁の程近くの場所にマスカーは横になり、遠くにレノーラがツルハシと楔で壁を切り崩している音を、マスカーはまどろんだ意識の中で聞くとはなしに聞いていた。
一日のほとんどを寝て過ごしていたからか、彼の体は食料も水も無く二日経過したというのに、目に見える範囲では不調はなさそうだった。
やがてマスカーはツルハシの音に導かれるように眠りに付こうとした時、不意にツルハシの音が止む。
そしてマスカーの元へと歩み寄ってくる足音が聞こえ、やがてレノーラの姿がマスカーの視界の中に入ってきた。
レノーラはその小さい体躯の全てに汗をかき、その雫は手に持ったツルハシにすら流れ伝わるほどで、その汗を含んだ衣服が煩わしいのかレノーラは脱ぎ捨てて床に置いてしまう。
水のない場所でこんなに大汗をかいていたら、人間だったら脱水症状になってしまってもおかしくは無いというのに、レノーラの肌艶にはまだまだ体からは汗が出てきそうなほどに潤いが溢れているのが不思議だ。
「ふー……休憩がてらに、精を戴くよ」
「ああ……」
もう二日も繰り返していて慣れたのか、マスカーはゆっくりと仰向けになるように寝返りを打った。
全裸のレノーラはそんなマスカーの股間部分へとにじり寄ると、マスカーのズボンをずり下ろして彼の陰茎を取り出し、それをゆっくりと手で扱いて硬く大きくしていく。
「どうだい、最初と比べて上手くなったもんだろう?」
「上手すぎて暴発するから加減してくれ」
「それは勿体無いから、出そうになったらちゃんと言うんだよ?」
口調こそは大人のそれだが、見た目は全裸の幼女に勃起した一物を扱かせているなど、事情を知らない第三者がこれを見たら確実にマスカーの事を小児性愛者だと誤解すること請け合いの光景が広がっている。
「おやおや、可愛くピクピクし始めたねぇ。出そうなのかい?」
「ああ、もう出る。だから――」
「そんなに懇願しなくても、いつも通りにあちしのちっちゃなお口で咥えて上げるよ」
小さな口を大きく開けたレノーラはそのままマスカーの陰茎へとしゃぶり付くと、マスカーの陰茎を啜り上げながらその根元に巻きつかせた小さな手を素早く上下させて、マスカーの性感を高めていく。
「はぁ――ぅう!」
小さい呻き声がマスカーの口から漏れた後、レノーラの口の中には吐き出されたねっとりとした少し苦い白濁液がたんまりと溢れた。それを零さない様に気をつけながらも、尿道に残った僅かな精をも吸い尽くそうと陰茎を更に強く啜りつつ、搾り出すかのような指使いで陰茎を揉んでいく。
「じゅぅぅうぅ〜〜〜……ちゅぱ」
「ふぅ……」
口を陰茎から離したレノーラは、口の中の粘ついた液体と唾液を噛み混ぜあわせ、舌でじっくりと味わいながら喉の奥へと送り込んだ。
その液体が喉を通り、食道を通過し、胃に到達するまでじっくりと感じていたレノーラだったが、ふと視線を下げた先に力の抜けたマスカーの陰茎を見つけると段々と頬が上気し始め、何かに突き動かされるかのように彼女は再度陰茎を口に含んでしまう。
「レノーラ、なにしてるんだ!?」
吐き出したばかりで敏感な陰茎を、レノーラの小さな口の中に入られて刺激されたマスカーは驚いた。
しかしレノーラはマスカーの様子を無視するかのように陰茎に吸い付いていたが、その先から雫すら出てこない調子に眉根を寄せると、陰茎から口を離す代わりにその巧みに動く手でマスカーの陰茎を刺激し始める。
「もう一回だけあちしにちょうだい。ねぇ、いいでしょう?」
そうねだる様な口調で告げてきたレノーラに、マスカーは色々と拒否する文言を頭の中で考えて見るものの、切迫した状況に置かれて肥大した子作りの本能がそれを押し留め、終にはレノーラに頷きで返事をさせてしまう。
レノーラはマスカーの許しを得られたのが余程嬉しいのか、嬉々とした表情を浮かべると、マスカーの亀頭の部分を口に含み舌で愛撫しながら、手では力の抜けた竿の部分を軽く掴んで上下にゆっくりと動かしていくと、射精したばかりで敏感になっている亀頭をざらりと舌で舐められて、マスカーは思わずその刺激から逃れようと腰を動かしてしまう。
「ああ!ぅぅ――」
「こひがうごいちゃうくらひ、きもひひぃの?」
しかし容赦なくレノーラは手に口と舌を使って、マスカーの陰茎に力を取り戻させていく。
そしてマスカーの陰茎はレノーラの手が動くたび、口が窄まるたび、舌が鈴口を舐め上げるたびに硬さを増し、やがて射精したばかりとは思えない程に硬さと大きさを取り戻した。
「ちゅ〜〜ぱ、えへ〜♪ガチガチのビンビンだぁ〜♪♪」
口を陰茎から離したレノーラは雄雄しいその様子にうっとりと目を細めると、小さい口で陰茎を啄ばみつつ両手はマスカーの睾丸を転がすように愛撫していく。
人生で初めて睾丸を玩ばれるのだろう、マスカーはレノーラの手が軽く睾丸を摘む度に股間を強打した時を思い出し、恐怖から背筋に必要ない力が入ってしまう。
「れ〜ろぉ〜〜〜……大丈夫、痛くしないから力を抜いて」
陰茎の裏筋を根元から天辺までを舐め上げつつ、レノーラはマスカーに対して安心させるようにそう言葉を掛ける。
しかしマスカーもレノーラが痛みを与える積もりで、自分の睾丸を玩んでいるのではないと頭ではわかっているが、それでも過去に経験した恐怖は拭いきれない。
「ゆっくりでいいから力を抜いて、自分のタマタマに意識を集中してみなよ――はみはみ」
尖った犬歯を使って陰茎を甘噛みしつつ、マスカーの恐怖を取り除こうと優しい声色で語りかけるレノーラ。
マスカーはその言葉通りにゆっくりと力を抜きつつ、意識を袋の中で動かしまわされている睾丸へと集中させる。すると陰茎を手で扱くのとはまた違った快楽が腰を伝わって、背骨を駆け上るってくるのをマスカーは感じた。
「その調子。うん、いい子にはご褒美をあげなきゃね♪」
片手を睾丸から離し陰茎に巻きつかせ、口は舌を延ばして陰茎から開いた睾丸への道を舐め下げていき、そして陰嚢の中に入って震えている丸々とした睾丸にレノーラは吸い付いた。
するとマスカーの睾丸はレノーラの口内へと吸い込まれ、その中で指の変わりかのように舌で刺激される。
「ふぁ!」
「ちゅぽ、ちゅぽ――コロコロ」
一度二度と睾丸を口の中から外へ外から中へと移動させてから、レノーラはマスカーの陰茎を舌の上で転がして愛撫し、もう片玉と陰茎も絶えず小さなその手で玩ぶ。
今までの人生で経験した事のない刺激にマスカーはのめり込み始め、やがてマスカーの鈴口の先からは透明な液体が浮かび上がり、やがて珠となって亀頭を伝わり巻きついていたレノーラの掌を濡らした。
「あは♪もう準備完了しちゃったんだ。いいよまた飲んであげるから、いっぱい出してね♪」
手に付いた透明な糸を引く液体を舌で舐め取った後、レノーラは口を大きく開けてマスカーの陰茎にしゃぶり付き、その両手は再度睾丸を玩ぶ。
しかし今回は亀頭をしゃぶるだけではなく、奥行きの無いはずの口内からは想像できないほどに陰茎をくわえ込み、そして頭を上下に動かしてマスカーを喜ばせる。
きついレノーラの口内とそれに続く喉に陰茎を締め付けられながら、睾丸を痛みと快楽との狭間という絶妙な手の力加減で転がされているマスカーは、もうそれだけで射精しそうになってしまうが、流石に二連続目ということもあり何とかギリギリのところで射精せずに済んでいた。
しかしながらレノーラはこれで射精しないのならばという感じで、頭の動きを更に早くすると、口と喉の締め付けに加えて舌を裏筋に這わせて刺激し、手も睾丸を転がすものから揉み込むような力加減に変えて、より一層刺激を強めてマスカーから精液を吐き出させようと躍起になってしまう。
「レノーラ、それ、刺激が強すぎる」
「じゅっぱじゅっぱ――」
しかしレノーラはそのマスカーの訴えを聞く事は無い。
やがてレノーラのその性戯に絶えられなくなったマスカーは、今まで体験したことの無い性感から逃れようと手が取っ掛かりを探して宙をさ迷い、最終的にレノーラの頭に手を回して思いっきり引き寄せてしまう。
「おごぉ!!?」
急に喉の奥へと陰茎を突き立てられたレノーラは呻き声をあげつつも、決してその口から陰茎を放そうとはせず、動かせなくなった首の代わりに陰茎の愛撫を甘噛みでマスカーの陰茎に刺激を加えた。
するとマスカーの陰茎はその刺激に如実に反応し、射精の前段階である震えをレノーラに伝える。
「射精るぅぁ!!」
「〜〜〜〜〜♪♪」
レノーラの顔を陰茎の根元まで引き寄せながらマスカーは射精した。
そして引き寄せられて喉をマスカーの陰茎に塞がれて窒息寸前のはずのレノーラは、しかしその顔に喜悦の色を浮かべて喉の奥で躍動しながら精液を吐き出している陰茎の感触を楽しみつつ、吐き出された精液を喉を動かして胃へと送り込んでいく。
数十秒後、ようやくマスカーはレノーラの喉を自分の陰茎で塞いでしまっているのに気が付いたのか、それとも単に射精で全身がだるくなったからなのか、レノーラの頭から手を離して地面に体を預けた。
ようやくマスカーの手から開放されたレノーラだったが、喉全体でマスカーの陰茎の形を覚えようとするかのように、喉の蠕動運動で尿道の中の精を絞りながらゆっくりとそれを喉から引き抜き、最後亀頭の部分を強く吸った後でマスカーの陰茎を開放した。
「はぁ……はぁ……どうしたんだレノーラ。何時もは一回で済むのに、そんなにお腹が減ってたのか?」
「んぁ♪――っへ?あ、いや、そう言う訳じゃない訳じゃないんだけど、えーっとあのー……ああ!作業を再開しないといけないなー!!」
レノーラは突然に誤魔化す様にそう言葉を口に出した後、逃げるかのようにバツ印の付いた壁のある場所へと駆けて行った。
不思議なレノーラの様子に小首を傾げるマスカーだったが、栄養補給なしの酷使している体で二連続の射精という荒業をしてのけたためにマスカーの体は休息を強要し、マスカーの意識を眠りの闇へと追いやってしまった。
この出来事の後レノーラのマスカーへの精の要求は増え始め、一回一発で済んでいたところが一回に一発では止まらずに二発目三発目を欲しがるようになり、マスカーが余りの頻度に生命の危険を感じて精を吐くのを拒否すると、その代わりと唇を合わせようとする様になってしまった。
しかしその代わりというわけでもないだろうが、レノーラの壁を掘り進める作業効率が格段に進歩し、閉じ込められて一週間経過した時レノーラの見立てではもう直ぐ向こうの坑道に繋がる予定になっていた。
そしてその見立てに狂いは無く、レノーラが振り下ろしたツルハシの先の岩壁が崩れると、その先には古いながらも確りとした造りの坑道が延びていた。
「マスカー開通したよ!そこで待っててな、直ぐ助けを呼んでくっから!」
そう声を掛けられたマスカーは、レノーラに一週間の間精を与え続けていたためかやせ細り、落ち窪んだ目は瞑られており生きているのか死んでいるのか区別が付かない様子だった。
そしてそれはレノーラが呼び寄せた救助隊も同様で、レノーラがマスカーに声を掛けて続けているのを、死んだ人間に妄執する哀れな女を見つめるような目付きで見ていた。
坑道の崩落事故から二週間。
つまりはレノーラが坑道から脱出して一週間が経過していた。
いまレノーラは自分の家の中で、思い悩んだ様な暗い表情をしている。
何度と無しに頭の中で自問自答を繰り返し、そして答えが出ないまま次の疑問に答えようとしているような、そんな表現しがたい思いつめた表情だった。
やがてレノーラは意を決したかのように立ち上がると、家の扉を開けて外に出た。
踏み出す足が向かう方向は決まっている。それは坑道の中で一緒に過ごしたあの男の居場所。
やがて目指す場所が見えたレノーラは、堪えきれないように自ずと早足になってしまい、やがて駆け出していく。
そしてその場所の出入り口に差し掛かると、今度は逆に駆けていた足が早足になり、そして通常の歩みの速度から牛歩の様な速度へと変わり、最終的にそのゆっくりとした歩みを止めてしまうと、不安感に押しつぶされそうな顔色のまま俯いてしまった。
そのまま横を人が通り過ぎてもそのまま俯いていたレノーラは、何かから逃げるかのように踵を返し、一歩足をもと来た道へと踏み出してしまう。
「おい、レノーラ!」
そんなレノーラの背後から声が掛けられる。
レノーラが振り返った視線の先には、病院から出てきたばかりと思わしきマスカーの姿があった。
その姿を見つけたレノーラの表情に一瞬喜びの色が浮ぶが、それは暗い表情の中に埋没して消えていってしまう。
「マスカー、お前退院したのか?可愛い看護士にあれこれ世話させるために、ずっと入院しているかと思った」
しかしレノーラはそのくらい表情を空元気を出して追い出すと、そうマスカーに向かって軽口を叩いた。
「ひでーな。レノーラに精を吐き出されすぎて、不味い薬をたらふく飲む目に遭った俺に対してそれは無いだろうよ」
それに対しマスカーの方も、レノーラが古くからの友人であるかのような気安さで軽口を叩き返した。
そして二人はお互いの軽口に思わずといった感じで笑い合うと、会話の糸口を逃して黙り込んでしまった。
「なぁマスカー。本当に旅に出ちまうのか?」
「ああ、俺には穴掘りは向いていないらしいし。それに町長にも落盤事故に合った人間は不吉だから早く出て行けって、口止め料も含めた路銀をもらってしまったしな」
懐から硬貨で満杯になった袋を取り出すと、マスカーはそれをレノーラに見せびらかせるように手の上に乗せた。
それをみたレノーラは口を歪めて無理やり笑顔の形をつくると、途切れてしまった軽口を再開させる。
「そ、そうか……ならここでお別れだな。はん、そのしょぼくれた顔を今後は見なくて済むと思うと清々するな」
「なんだ町の外まで見送りには来てくれないのか?嗚呼あれか、その短いあし足だと長い距離歩くのは大変そうだしな」
マスカーもレノーラの調子に合わせるように言葉を掛ける。
「何言ってるんだか。お前なんかを見送りに此処まで来たのを、来たのを……」
レノーラの軽口が不意に途切れると、その瞳に涙が溜まっていく。
そしてレノーラは唐突に駆け出すと、迷子が見つけた親に抱きつくかのように、マスカーの腰に手を回して抱きしめた。
「やっぱり嫌だ!マスカーと別れるなんて嫌だ!!」
「嫌だっていったってな……」
「あちしはマスカーの事が好きなんだ!愛してる!番になって欲しいんだ!だから一緒にこの町で暮らそう?町長はあちしが説得するからさ」
レノーラの口からそんな告白めいた言葉が飛び出すとはおもっても見なかったのだろう、マスカーはそのレノーラの言葉を受けて固まると、彼の頭の中に坑道の中でのレノーラの様子や、助け出された後で病室に甲斐甲斐しく通ってきた彼女の姿が思い浮かんでは消えていった。
その追憶の光景が脳裏から消え去り体の強張りも無くなると、マスカーは静かにレノーラの肩に手を当てると、優しい手つきでレノーラを体から引き剥がした。
「ありがとうレノーラ。でも、やっぱり俺はこの町では暮らせないよ」
静かに言い含めるかのような声色でマスカーに拒絶されたレノーラは、この世の終わりが来たかのような絶望した表情を浮かべ、そしてその顔がくしゃりと歪んで目から大粒の涙が零れ落ちそうになる。
「だからレノーラ、俺の旅に付いてきてくれないか?」
続いて出てきたマスカーの言葉に、溢れ出そうになっていたレノーラの涙がすっと引いた。
マスカーの言葉がどういうことか心が理解している筈なのに、脳が理解しそびれて混乱したような様子のレノーラに、マスカーは苦笑してからその場に屈み、視線をレノーラと同じ高さにしてから、再度同じ意味の言葉をもっと判りやすく言い直す。
「レノーラ。俺も君の事を愛している。俺と一緒に旅をしてくれないか?」
ようやくマスカーの言葉の意味を理解したのか、レノーラはマスカーの首筋に飛びつくと、彼を押し倒しながら唇に熱烈な接吻を交わした。
そしてその接吻はレノーラの情熱をマスカーに教えるかのように、舌が彼の口内へ飛び込むと彼の舌に絡みつかせて放そうとはせず、マスカーもその想いに応えるかのように両手をレノーラの小さい体躯に回して引き寄せながら、彼女の口を味わおうとする。
病院の敷地内のしかも大通りに面した場所で、二人は情熱的な口付けを交わしていたが、やがてお互いにお互いへ十分に想いを伝えたと確信したのか、どちらとも無く唇を離すと、至近距離の間合いで二人とも笑い合った。
「ほんとマスカーは、あちしが大好きなんだね♪」
「こんな場所で大声で愛の告白をしたレノーラほどではないさ」
そして押し倒されたままのマスカーに覆いかぶさったレノーラは、彼の耳元に顔を寄せると恥ずかしそうに頬を染めながらそっと呟いた。
「でもさぁ、旅はやっぱり明日からにしない?」
「別に急ぎじゃないからいいけど。誰かに別れの挨拶でもしたいのか?」
旅の準備に手間取るのだろうかと首をかしげているマスカーに対し、レノーラはより一層顔を上気させて消え去りそうな声でマスカーの問いに答え始める。
「いやそのぉ……やっぱり初めてはベッドの上でしたいかなって」
余りに予想外の答えに、マスカーはしばし唖然とした後で、通りに響き渡るほどの大声で笑い始めた。
「もう、笑うこと無いじゃない!!」
ぷっくりと頬を膨らませて可愛らしく怒るレノーラの様子に、マスカーは心の中で彼女に対して自分が完敗していたことを悟ると、より一層大きな声で笑い始めた。
11/12/03 22:38更新 / 中文字