読切小説
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純情ギャルカノバルログに慰められて初体験する話
 駅に程近いラブホテルの一室。
 今、その比較的無難な部屋の無難なベッドの上に、体育座りでどんよりとした空気を振りまく僕はいる。

 僕は柴村(しばむら)ユウヤ。
 バルログの加具土(かぐつち)モカと絶賛交際中だ。
 呼び捨てよりしっくりくる気がして、お互いに「ゆーくん」「モカちゃん」と呼び合っている。

 告白はモカちゃんの方からだ。
 クラス委員長をしている彼女の仕事を手伝ったのがきっかけだ。
 ドジを踏んでばかりの僕は、ほとんど役に立てていなかった気がするけど、曰く「ガラじゃない仕事を押し付けられたわたしを、気遣ってくれたのがうれしかったの……」とか。

 僕のザ・陰キャな見た目のせいで周りからはよく「釣り合っていない」なんて言われるけど、モカちゃんが僕を選んでくれたことは嬉しいと思う。

 今日は初デートの日だった。
 期待に応えたくて、僕一人で今日のプランを立て、モカちゃんをエスコートしたんだけど……





「映画、主演の人が棒読みすぎて話が頭に入ってこなかった……」

「レストランの予約サイトのボタン、最後の一つ押し忘れてた!」

「天気予報は一日中晴れだって言ってたのに、なんで土砂降りになるの!?」





 以上、あまりしたくない回想は終了。

 こうして、僕のちっぽけなプライドは完全に打ち砕かれてしまったのだった。

 それでも、モカちゃんは何も言わず、寄り添ってくれていた。

「……ごめん」

 長い無言の後、どうにか絞り出せた言葉がこれだった。

「なんで?」
「だって、君にいい所を見せたくて頑張ったのに、盛大に空回りしちゃって、散々なデートになっちゃってさ……」

 僕の隣で、モカちゃんが反応する気配がした。

「わたしに、嫌われたって思ってるでしょ」
「……うん」

 バルログが惹かれるのは、高い対人スキルや才能を持ち合わせている人だと聞いたことがある。
 みんなの言うとおり、僕みたいなヤツがモカちゃんを喜ばせるなんて、最初から無理な話だったんだ。
 心がどんどん縮んでいって、息が詰まりそうになる。

「ゆーくん、こっちむいて」

 モカちゃんの声が、深みに嵌りかけていた僕の意識を呼び戻した。
 自然と体育座りが崩れる。
 身体を向けるなり、モカちゃんが抱き着いてきた。
 僕の背中に腕が回され、彼女の柔らかさを上半身で感じ取る。

「初めてのデートなのに、わたしのこと喜ばせようって頑張ってくれたんだよね?」
「でも……」
「でもでもだってはおしまい。今日は、とっても嬉しかったよ」

 モカちゃんが腕をほどいて、僕を真っすぐ見つめながら続ける。

「ゆーくんの気持ちは、ちゃんと伝わったから。今度デートする時はさ、一緒にどこ行くかとか計画立てて行こうよ。ね♥」

 最後に小首をかしげて満面の笑み。

 やっぱり彼女には太陽みたいな笑顔が似合う。
 モカちゃんが嬉しいと、僕も嬉しくなる。

「……好き」

 思わず口からこぼれ出た言葉がこれだった。

「えへへっ……わたしも、ゆーくんがだーい好きだよ♥」

 もう一度、ぎゅっ。
 こうしてモカちゃんと触れ合っているだけで、胸が幸福感で満たされていく。

 再び沈黙が訪れる。
 それはこの温もりを分かち合うための沈黙だった。
 自然と顔と顔が近づいていき、何の前触れもなく唇と唇が重なった。

 それが世間ではキスと呼ばれる行為であることを理解するのに五秒。
 僕達にとってこれが初めてのキスであることに気付くのにさらに五秒。

 その先をしたことなんて、当然ない。

 始まりの時と同じように唐突に離れる。
 口づけは思っていたよりも呆気なく終わった。

「僕達……キス、しちゃった……」
「ファーストキス、だね……」

 初めてするキスは、モカちゃんの僕への「好き」が全身を駆け巡って心臓を滾らせ、僕のモカちゃんへの「好き」を確かなものにしてくれた。
 全身が、これから起きることへの期待で昂っていた。

「ねえゆーくん、せっかくラブホに来たんだよ? もっとやりたいこととかないの?」
「まだ外は明るいよ?」

 時刻は午後14時32分。
 僕達は、緊急避難的にここに来ただけだ。
 事に及ぶにはまだ早いように思える。

 だが、モカちゃんが次に発した言葉は、僕の理性を焼き切る最後の一押しには十分すぎた。

「今日はね、ゆーくんのいい所、いっぱい見つけちゃった。
 映画の途中で寝ちゃった時、わたしが寄りかかってもゆーくんは終わりまでじっとしててくれて、
 お昼がサ×ゼになっちゃったけど、ゆーくんは何も言わずにお金を出してくれて、
 雨が降って来ちゃったら、すぐにバッグを傘代わりにしてくれて……
 わたし、ゆーくんのこともっともっと好きになっちゃった。
 お願い、抱いて……
 もう、ガマンできないの……」

 感動で体が震えるとは、こういうことをいうのだろう。
 モカちゃんは、僕が失敗をフォローしようとする姿をちゃんと見てくれていた。

「モカちゃん、ありがとう」

 今度は僕の方から抱きしめる。
 返事の代わりにモカちゃんも抱き返してくれる。

 彼女の身体の芯が、灼けるような熱を発していた。
 僕の奥底に灯った火と、同種の熱を感じる。

「ゆーくん……エッチしよ♥」

 誘われるままキスをする。
 すぐにモカちゃんが反応を返した。
 もう離さないとでも言うように、僕の頭が掴まれる。
 彼女がカラフルなラメの入ったネイルをしているのを思い出す。

 軽く立てられた爪の硬さを感じる間もなく、今度は熱くねばつくものが唇を割って入り込んでくる。
 それは瞬く間に僕に息をすることを忘れさせ、頭の中をモカちゃん一色に染め上げていった。
 僕はといえば、動き回る舌に自分の舌で申し訳程度に触れるくらいしかできなかった。
 酸欠と悦びでモカちゃんのことしか考えられなくなりかけたところで、解放された。

 僕達の間に銀色の橋が架かって、ベッドの上に落ちていった。
 肩で息をする彼女の瞳の奥に、ハートマークが見えた気がした。

 何も言わず、モカちゃんは黒いオフショルトップスに手を掛け、一気にたくし上げる。
 大きな角や翼があるのに、器用に脱ぎ去ってしまった。

 そのまま白いショートパンツもずり下ろす。
 ちゃんと尻尾を通す穴があって、少し感心した。

 下に着ていたのは、フリルが控えめで肩紐が細い、いわゆる見せブラと、横が細いひも状のショーツだった。
 露になったボディラインにたちまち目が釘付けになる。
 そんな僕に、モカちゃんがアンニュイな眼差しを返す。

「ねえ、ゆーくんも脱いでよ。わたしだけこんな格好とか恥ずかしいよ」

 まるで催眠術にでもかけられたように僕もシャツとズボンを脱ぐ。
 お互いに下着姿で向かい合ったところで、モカちゃんが四つん這いで猫のようににじり寄ってきた。
 その腕と腕の間で寄せられてできた谷間が、僕の視界に大写しになる。

「ここからは、脱がしっこしよ♥」

 答える暇もなくシャツをめくられる。
 「はい、バンザーイ」で半ば強引に袖を抜き取られ、つうとみぞおちをネイルでなぞられる。

「わー、ゆーくん細マッチョだねー」
「必要なだけ運動して、必要なだけ食べてるだけだよ」
「そっかー、でもすっきりしてる方がわたし好みかも。んー……ちゅっ♥」

 不意打ち気味に鎖骨にキスをされる。
 まあ、好きなひとが気に入ってくれたなら、生まれついての小食と温泉卓球に毛が生えた程度の卓球部にも価値はあったと言えるだろう。

 モカちゃんはといえば、とうとう僕のボクサーパンツに指を掛けていた。
 そのまま一気にずり下ろされる。
 さすが炎の大悪魔。
 腕の細さに対してかなり力が強い。
 とっさに両手で股間を覆ったおかげで、緊張で半勃ちのモノを隠すことはできた。

 そのままモカちゃんは僕に差し出すように胸を張る。

「はい、今度はゆーくんの番。これフロントホックだから外してみて」

 彼女の視線が下を向いていないのをいいことに、そろりそろりとブラの真ん中を指でつまむ。
 確かに金属質の感触があった。
 そこに一つの輪の切れ目があることが分かる。
 強くたわませると、唐突に左右からの抵抗が緩んだ。

 僕の心臓が早鐘を打ちだすのを感じる。

 触れた時と同じようにそっと手を離すと、カップを押しのけて、おっぱいがこぼれ落ちてきた。
 モカちゃんが軽く肩をすくめると、そのまま肩紐が腕へと抜けて、ブラが彼女の背後に落ちる。

 前かがみになっているせいか、重力に引かれて熟した果実のように揺れている。
 "ぷるん"というよりは"ふるん"という擬音の似合う柔らかさが見て取れた。
 その先端では、ピンクの乳首が確かな存在感を主張していた。

 見とれる暇もなく、モカちゃんは僕に背を向けた。
 背中やや下辺りの翼や臀部すぐ上の尻尾が視界に入ってきて、否応なく人間でないことを意識させられる。

 ショーツに両端に指を引っかけ、ヒップを突き出してくる。
 促されるまま指先で受け取って引き下ろす。

「きゃーゆーくんのエッチー♥」

 わざとらしく嬌声を上げながらお尻を振る。
 膝のあたりまで下ろしきると、そこからはモカちゃんが自分で脱ぎ去った。
 両膝だけで身体を支えながら、足から紐パンを引き抜き、ポイと床に落とす。

 今、僕の目の前に、モカちゃんのお尻が現れた。
 程よく脂肪が乗って、もちっと触り心地がよさそうなお尻だった。

 向き直って生まれたままの姿を晒す。

「ゆーくん、わたしの身体、変じゃないかな……?」

 モカちゃんが不安げに尋ねる。
 赤褐色の裸身は砂時計というには若干脂肪が付いていて、抱き心地がよさそうだった。

 何も言わずもう一度、抱きしめる。
 想像通り、彼女の身体の柔らかさには、抱き枕のような安心感があった。

「すごく……柔らかいね。しゅっとしてるよりはちょっとむちむちしてる方が僕は好きだな」
「そっか、よかった。わたし、油断するとすぐお肉が付いちゃうから、ちょっと心配だったんだ」

 額を突き合わせて笑い合う。
 ふとした拍子に、モカちゃんの目がうっとりと閉じられた。
 先走るように彼女の舌が伸びてくる。
 応えるように僕も舌を差し出す。
 カタツムリの交尾のように舌と舌が絡み合い、また唇が出会った。

 再び僕はモカちゃんと溶けあい、今度は本当にモカちゃんのことしか考えられなくなる。

 抱き締める手に力がこもる。
 触れ合う素肌からよりはっきりと熱が伝わってくる。

「ちゅ……ちゅっちゅっ……♥ 好き、好き……ゆーくん♥」
「ん、ふ……んん……好きだよ、モカちゃん」

 息継ぎの度に互いに愛を囁き合う。
 キスだけで満足してしまいそうだけれど、せっかく裸になったのに、これだけで終わりたくないと思っている自分が、頭や胸でない場所に確実に居た。

 軽く肩を押すと、察したモカちゃんが離れた。

「最高の初体験にしようね♥」

 その言葉を合図に二人でベッドに倒れ込む。
 モカちゃんが僕を見下ろす、騎乗位すれすれの格好だ。

「ね、どこ触ってみたい?」
「……おっぱい」

 目の前に乳房をぶら下げられて、思わず言ってしまった。

 モカちゃんは頬を上気させ、その答えを待っていたとでも言うようにはにかんだ。

「ふふ、正直なゆーくんには両方のおっぱいを触らせてあげちゃいまーす♥」

 まるで泉の女神のように言うと、僕の両手を取って思いっきり触らせてきた。
 反射的に掌の中のものを握りしめてしまう。

「はんっ♥」

 モカちゃんの口から、甘い声が漏れた。
 僕的には少し強すぎたと思える。

「あの、大丈夫? 痛くなかった?」
「ううん。今の、すごくよかった……」
「じゃあ、これくらいで触ってくね」

 再び手を動かす。
 円を描きながら、手を握って、開いて。
 水平方向はパソコンのマウス操作のイメージで。
 垂直方向は水の入ったビニール袋を揉むイメージで。

 今度は確信をもって揉み立てる。
 初めての愛撫で喘がせることができたのが自信につながっていた。

 手が一周する度に、モカちゃんの口から漏れる息が湿度を増していく。

「あっ、あっ♥ ゆーくん、そう、それ……いいっ♥」

 快感が高まっていくにつれ、彼女の腕から力が抜け、顔が次第に近づいてくる。

 そしてまたキス。
 それはついばむように一瞬で終わってしまった。

 すぐに離れたモカちゃんは、顔に蕩け切った表情を浮べていた。

「ねえ、キスしながらおっぱい弄ってよ」
「そんなことしたら、理性飛ぶよ?」
「いーよ。ケダモノになったゆーくん、見てみたいな……♥」

 モカちゃんの言うケダモノが、僕の中で蠢くのを感じた。

 お望み通り、その身体を抱き寄せて、今度はこっちがモカちゃんの唇を塞ぐ。
 身体と身体の間に手を滑り込ませ、おっぱいを鷲掴みにする。

「んんっ……♥」

 モカちゃんが喉の奥でくぐもった声を上げる。

 僕は二つの唇を隔てた先に舌をねじ込み、僕を振りまくようにねぶり回す。
 すぐにモカちゃんも歓喜して舌を伸ばしてきた。
 ミックスされた唾液を互いに飲み干し合う。

 一方で手も、身体の間で自由が利かないなりに抱き付く前の愛撫を模倣し、潰れかけたモカちゃんの胸の柔らかさを楽しんでいた。
 偶然、指先が乳首に当たった時、彼女の身体がびくんと震えた。

 その瞬間、僕の理性のタガが吹き飛んだ。

 すばやく体勢を入れ替え、モカちゃんにのしかかる。
 もっとじっくり味わいたかったが、正直僕の方が待てなかった。
 前振りを置かず、胸のチョコプリンにむしゃぶりついた。

「ふああああっ♥」

 鋭い嬌声が耳朶を打つ。

 煽られるまま、味わうように舐め回して、架空の母乳を飲むように吸って、固めのグミのように甘噛みして。
 技巧などない、欲望任せの責めだ。
 それでも乳首が感応して、口の中で硬く勃っていくのが分かる。
 女体の小さな神秘に、僕は新たな興奮を覚えていた。

 喘ぎに被せるようにワザと音を立てて唇を離し、一呼吸置いてもう片方に吸い付ける。

 僕が顔が埋めている身体が小刻みに震え、髪がわしゃわしゃと掻き回される。
 頭皮に弱く当たる爪が心地いい。

 モカちゃんは自分の両足を僕の片足に絡ませ、乳首に刺激が加わる度に、媚びるように股を擦りつけてくる。
 そこが愛液で潤っているのを感じる。

 最後に矢継ぎ早に噛んで舐めて吸い抜くと、モカちゃんが完全に出来上がった表情で僕を見つめていた。

「ゆーくん……舐めあいっこ、しよ……♥」

 再びモカちゃんが上になり、そこからさらに互い違いの体勢になる。
 いわゆるシックスナインだ。

 僕の目の前に絶景が広がる。
 鞭のような尻尾、ヒクつくアナル、そして濡れぼそったワレメ。
 全てが誘惑するために存在しているようだった。

 モカちゃんのお腹とおっぱいで確認はできないが、彼女の目の前にも僕の股の光景が広がっているはずだ。

「モカちゃんのここ、濡れてヒクヒクしてて、すごくいやらしい……」
「ゆーくんのおち×ちん……こんなおっきくて熱いのが、わたしの中に入っちゃうんだ……♥」

 感想を述べあう。
 お互いのコメントには暗に「このまま口でシてみたい」という意味が込められていた。
 僕達が繋がるこの場所を、まずは味覚で感じたい。
 口付けしたら/されたら、どれだけ気持ちがいいのだろう。どれだけ気持ちよくなってくれるのだろう。

 多分同じ気持ちだろうモカちゃんがきっかけをくれる。

「それじゃ、せーのでぺろぺろしよ」
「うん、それがいい」

 彼女の息がかかるせいで股のモノがピクピクと震える。
 気を取られている間にカウントダウンが始まった。

「「せーの……」」
「あむっ♥」
「れろ……っ」

 竿がぬめる感触で包まれるのと同時に、僕もモカちゃんの花園に舌を伸ばした。
 まずはフチにあふれ出した、少ししょっぱい蜜を舐め取っていく。
 モカちゃんも根元から先端に向かって舐め上げてくれる。

 僕の背筋を電流に似た快感が走る。
 目の前のクレヴァスに意識を向けていなければ、これだけで果てていただろう。

 やがてモカちゃんの口が先端近くで止まる。
 ちょうどカリ首の辺りだ。
 舌らしい感触が、カエシから裏筋を通って鈴口へと登っていく。
 快感のアンペアが一段階上がる。

 僕も彼女の性感帯をひとつ見つけた。
 秘裂の持ち主から見て上端の、ひだに隠れた肉突起……クリトリスだ。
 舌を這わせた途端、モカちゃんが身体を波打たせた。
 なかなか悦(よ)かったらしい。

 互いの局部に唾液を擦り込み合んでいく。
 僕達の間に言葉はない。
 ひたすら相手に与え、相手から受け取ることに没頭していた。

 口での行為がこれなら、本番はどれだけ気持ちいいのだろう。
 想像するだけで射精感が込み上げてくる。

 そのまま身を委ねようとしたところで、根元をつままれた。
 鈴口を舌でくすぐられたのを最後に、フェラが止まってしまう。
 放尿の寸前にも似た高揚が引いていく。

「ねえ、どこに出したい?」

 不意にモカちゃんが聞いてきた。

「モカちゃんの……あそこ……」
「あそこじゃ分かりませーん」

 うわごとのような僕の返事に、からかうような言葉が返ってくる。
 そこの名前を声に出したら、欲望に溺れてしまいそうな気がした。

「モ、モカちゃんの……おま×こ」

 なけなしの理性でなんとか口にする。

「おっけー♥」

 向き直ったモカちゃんの顔には、笑みが浮かんでいた。
 たぶん、これからへの期待で。

 流れるような手つきで僕の肉筒を入り口に宛がう。
 そこで二、三度軽くしごくと、一気に腰を沈めてきた。

 そびえ立った逸物が何かを乱暴に貫き、最奥に当たって止まる。

「あ……」

 モカちゃんが表情を強張らせた。
 僕の身体に倒れ込んでくる。
 途中にあったものはやはり処女膜だったらしい。

「あの、大丈夫?」
「大丈夫じゃない。すっごく痛い……」

 いつも明るいモカちゃんが辛そうにしているのを見て、僕も胸が痛んだ。
 小さく見える背中に、そっと手を回す。
 頬に当たる角の硬さが心地いい。

「だったら無理しなくても……」

 それとなく中止を持ちかける。
 このまま最後までしてしまいたいと思ってはいたが、それ以上に嫌な思いをさせたくないという気持ちが強くあった。

 モカちゃんが何かを振り払うように首を振り、ゆっくりと身体を起こす。

「ううん……わたし、頑張る……お願い……手、握って……」

 差し出された手のひらに自分の手のひらを重ね、指を絡ませるように繋ぐ。
 弱く立てられたネイルの感触に、手の甲が甘酸っぱく痺れる。

「それじゃ、動くね……」

 モカちゃんがゆっくりと動き出す。
 お尻を上げて、下ろす。

 結合部から破瓜の血が赤く流れ落ちる。
 まだ痛いのか、動きがぎこちない。

 うろ覚えの知識のままに、膣道の上方に当たるように腰をずらしてやると、急にぬめりが増した。
 モカちゃんの顔に恍惚が浮かぶ。

「ああっ♥ そこいいっ、もっとっ♥」

 背筋が弓なりに反りかえる。
 うまくGスポットを擦れたらしい。
 モカちゃんの腰使いが急に激しくなる。
 どうやらコツを掴んだらしい。

 自分の上下運動で感じ入るモカちゃんを見ているだけでも、官能の熱が高まるのを感じる。

 触覚以外でも彼女を感じ取ろうと、頭が回らないなりに思考しだす。

 淫猥に弾むおっぱいを、つい目で追ってしまう。
 クーパー靱帯が心配になる揺れ方だ。
 AVでそういう場面を見たことはあるけれど、間近で見ると物凄い迫力だ。

「おっぱいじゃなくて、こっちを見て♥」

 すぐに気付いたモカちゃんにおとがいを持ち上げられる。
 僕の視界いっぱいに大好きなバルログの顔が大写しになり、そのまま唇を塞がれた。
 ねじ込まれた舌で、口内に甘い唾液を流し込まれる。

「ん♥ れる……ぷぁ♥」

 たちまち脳が沸点に至り、心地よいめまいで視界がぶれる。

 僕の様子を見たモカちゃんが、覆い被さるように四つん這いの姿勢を維持したまま、腰を振り立てる。

 当然のように目の前に乳房が来る。
 たぷんと液体感を帯びてぶら下がり、まるで催眠術の振り子のように揺れている。
 もしかしたら僕は、本当に催眠術にかかっていたのかもしれない。

「モカちゃん……!」

 誘うように勃った頂点に、お乳を求める子牛のように吸い付いた。

「あんっ♥ またがっついちゃって……ゆーくんのおっぱい星人っ♥」

 モカちゃんがまんざらでもなさそうに身を震わせる。
 乳首がスイッチになっているように膣内が締まり、一旦引いたはずの射精感がこみ上げてくる。

「これ、ちょっと、やばい、もう……」
「いいよっ♥ ゆーくんの童貞卒業せーし、わたしの処女喪失ま×こにちょうだいっ♥」

 その言葉をきっかけに、先走りのカウパー液が流れ出すのを感じた。
 同時にリング状の子宮口が下りてきて、僕を欲するように鈴口にキスをする。
 お互いの恋人繋ぎをした手に力がこもる。

 そして待ちに待った時が訪れた。

「モカちゃん、モカちゃんモカちゃんモカちゃんっ!」
「ゆーくん、ゆーくんっ! ゆーくぅぅぅぅぅぅんっ♥」

 落ちてきた最奥を一度深く突き上げながら、僕は膣内に精を噴き上げた。
 モカちゃんも上半身をのけ反らせ、長く甘く叫びながら絶頂した。

 一滴もこぼさないとでも言うように彼女の内側がうごめいて、子袋が液を飲み干していく。

 やがて限界を迎えたモカちゃんが僕に倒れ込んできた。
 その重さに心地よさを感じながら、両手で身体を抱き止める。

「僕、初めての相手がモカちゃんで良かった」
「わたしも、だよ。ゆーくんに処女をあげられて、嬉しい♥」

 繋がったまま、初体験大成功の喜びを分かち合う。
 腕の中で乙女のような穏やかな表情を浮かべているバルログは今、僕にとって間違いなく世界で一番大切な存在だった。

「モカちゃん……愛してる」
「わたしもゆーくんのこと、いっぱい、いーっぱい愛してるよ♥」

 ふざけるようにキスを交わし合う。

 いつの間にか、雨は止んでいた。





 ラブホテルを2時間ピッタリで出て、僕はモカちゃんを家まで送っていった。

 閑静な住宅街にある、こげ茶色の一戸建てが彼女の家だ。
 その門扉の前で、「また明日」と言って別れる。
 家路に就こうと回れ右したところで、モカちゃんに呼び止められた。

「ねえゆーくん、明日うちに来ない? さっそくだけど次のデートのこと二人で考えたいな……」
「パパとママ帰り遅いんだけど……ってやつ? ロマンだね。いいよ」
「やった♪ じゃ、そのあとは……ね♥」
「うん、楽しみにしてる」
「わたしも。はい、んー……♥」

 最後に軽く目を閉じ、顎を上げるモカちゃん。
 僕はちゅっと唇を重ねる。
 キスはすぐに終わって、耳元に囁かれる。

「ゆーくん、これからはいっぱいエッチしようね♥」

 僕は無言で同意する。

 これから僕達は、世間一般でいう爛れた生活を送っていくことになるだろう。
 でも、モカちゃんとそういう関係でありたいと思う僕は確実に居る。
 口だけじゃなく、身体全てで相手に示して、身体全てで相手を受け止める。
 それがきっと、僕達の愛の形なのだろう。

 明日のことを考えると、それだけで肌が甘く痺れるのを感じた。
 陽が落ち始めた道を、僕は足取り軽やかに帰って行った。

(おわり)
25/10/31 23:05更新 / 正木大陸

■作者メッセージ
ハロウィンなのに、空気を読まずこんなお話を投稿です

バルログには、良い所を見せようとして空回りしちゃうシチュエーションが
合うと思ったんですよ

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