読切小説
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ボクっ娘幼馴染の龍神様と再会したら、プロポーズされてイチャ甘初夜を迎えちゃった話
 次の停留所を告げるバスの案内音声に、俺は我に返った。
 眠っていたわけじゃない。ただ放心状態で窓の外を眺めていただけだ。
 機械的に降車ボタンを押し、今日何度目とも分からない溜息を吐く。

 俺の名前は須藤直彦(すどう なおひこ)。
 この春に大学を卒業したばかりだ。
 秋口に内定をもらい、卒論も無事提出、さあ後は卒業式を残すのみとなった三月、不幸は起きた。
 なんと就職先の会社が倒産してしまったのだ。
 当然、あてにしていた社員寮への入居も無くなった。
 泥縄を承知で就活を再開するがそう簡単に内定などもらえるはずがなく、次の住居がそう都合よく見つかるはずもない。
 こうして新たな就職先も、新居も得られぬままの卒業となった。
 とどめに今年は学生寮の希望者が多く、後が詰まっているからとっとと出ていけとのお達しが来た。
 そんなわけで俺は追い出し同然に部屋を引き払い、バイト先からも暇をもらい、失意の帰郷となったのだった。

 雑木林を貫く道端にぽつんと立つ停留所でバスが停まり、乱雑にドアが開く。
 運賃箱に小銭と整理券を投げ入れながら、俺はのそのそと故郷の山村に降り立った。
 潰れかけの待合小屋を尻目に歩き出す。

 バス停から実家までは15分ほど。
 林を抜け、田畑しかない景色の中を歩く。
 しだいに落ちていく西日に照らされながら、ただ機械的に歩く。
 あまりに将来が暗すぎて、心が何も感じなくなっていた。

 やがて俺は周囲を屋敷林に囲まれた家に辿り着いた。
 くすんだ白の壁と家紋が刻まれた鬼瓦が特徴の、大きな家だ。
 高祖父の代から補修と改築を繰り返した結果生まれた、現代のテセウスの船。
 それが俺の実家だ。

 玄関の前で一度深呼吸してから、チャイムを鳴らす。
 すぐに奥から走ってくる音が聞こえる。
 親に連絡はしてあるし、荷物は先に送っているから、少なくとも驚かれることはないはずだ。

「はーい」
「ただいま」

 引き戸が開くと、そこに母がいた。
 どうやら仕事を午前中で切り上げてくれたらしい。
 促されるまま家に上がる。
 バッグを自室に置くのもそこそこに、休息がてら居間で母と話す。
 内容はこれまでのおさらいと、これからの方針。
 当面はここで暮らしながら新しい住居と仕事を探すつもりだった。
 俺のために用意してくれたらしい菓子は、「途中で買ったのがあるから」と断った。
 とりあえずの事務連絡を済ませたところで、母がふと口を開いた。

「そういえば、龍ちゃんがあなたに会いたがってたわよ」
「龍ちゃんって、まさか龍華が?」
「そう。ちょっと電話してあげたら、帰ってきたらすぐ言って!ってすごく興奮してたわ」

 龍華。
 その名前は俺の頭の中で懐かしくリフレインした。

 辰崎龍華(たつざき りゅうか)。
 俺と同じ日に生まれた、幼馴染。
 この村に伝わる龍神信仰、その宗教的中心とも言うべき龍神の一人娘。

 ……などと言うと近寄りがたい印象を受けるだろうが、実際は明るく社交的で活発な、親しみやすい女の子だ。
 俺の家とは家族ぐるみでの付き合いがあったおかげで、小さい頃は一緒に野山で遊び回っていたものだ。
 短大を出た後は村に帰ってきて、次代の龍神となるべく本格的に修行中だと聞いていた。

 この際だし、龍華の所に顔を出しておくのも悪くない
 後ろ向きの思考の中に、ふとそんな情動が生じた。

「んじゃ、今から行ってくるわ」

 一言言って立ち上がる。
 彼女と会えば、前を向ける気がした。





 この村は周囲を大きな山に囲まれているため、意外なほど暗くなるのが早い。
 家を出てすぐにライトが必要になった。

 車庫から引っ張り出した自転車を走らせ、俺はある山の麓に建つ神社へとやって来た。
 辰崎家の自宅を兼ねた神社だ。その奥にある神域を守るように建っているのだという。
 申し訳程度の駐輪場に自転車を停め、鳥居をくぐる。

 入ってすぐの社務所の窓口に、よく知る顔の龍が見えた。何か片付けをしている。
 年賀状や暑中見舞いのやり取りがあった位で(龍華は機械オンチだ)、直接顔を合わせるのは中学卒業以来だ。

「よっ、龍華」
「…………!」

 その時の龍華の表情を、俺はきっと忘れないだろう。
 窓口の反対側に誰が居るのか理解した瞬間、彼女の顔が目に見えて明るくなった。

「ナオくん!」

 祈願待合室への出入り口の方を指差すと、アルバイトらしいパイロゥと白蛇に後を任せ、奥へと引っ込んでいった。
 出入り口の引き戸を開けると、すぐに龍華が出迎えてくれた。
 『関係者以外立入禁止』のプレートが貼られたドアをくぐり、渡り廊下を連れ立って歩く。

 俺達の間に言葉はなかった。
 何を言えばいいのか分からなかった。
 もっと言えば、俺は龍華と再会したその後のことを全く考えていなかった
 何か言う前に、頭の中の気持ちと情報を整理する必要があった。

 渡り廊下の先にあるのは龍華の家だ。
 俺は一階の隅にある和室に通された。
 中央に古びたちゃぶ台と座布団が置かれている。

 貴重品類を入れたウェストポーチを下ろしながら座り込む。
 龍華は飲み物を取ってくると言って廊下を引き返していった。

 残された俺は一人、辺りをぐるりと見まわした。
 何かのTVドラマを真似して付けた柱の傷が、今も黒々と残っている。
 床の間に飾られた裸体の龍を描いた掛け軸は、ここだけの話だが、ネットで見つけた同じ画像をたまにオカズに使っている。

 俺がまだ幼い頃、半年に一度あるかないかで仕事の都合で両親が家に居られず、辰崎家にお泊りすることがあった。
 この部屋はそんな時、決まって通された部屋だ。

 龍華も同じ部屋で寝てくれたから寂しくはなかったし、そうして彼女と一緒に居られることが楽しみでもあった。
 最初の頃は一緒の布団で寝ていた記憶があるが、別々の布団で寝るようになったのは、いつからだったっけ。

 間もなくおぼんに麦茶が入ったコップを乗せて龍華が戻ってきた。
 この家には季節を問わず、年中麦茶がある。
 ちゃぶ台があるのに、俺のすぐ隣に座った。
 コップを手に取り、軽く突き合わせてから一口飲む。
 喉から鼻へ抜ける、少し焦げ付いた香りは、市販のパックを煮出して作っているからだという。

 二人で一息ついて、しばしの沈黙。
 先に口を開いたのは龍華だった。

「えっと……久しぶりだね、ナオくん」
「ああ、久しぶり」

 また沈黙。
 最初のキャッチボールは一往復で終わってしまった。
 だが龍華は一度落としたくらいなら、諦めずに拾って投げてくるタイプだ。

「向こうで何があったの? 急に帰ってくるって聞いて、ボクびっくりしちゃった」

 この様子だと、帰ってきた理由までは知らないらしい。
 不意に胸がチクリと痛んだ。
 俺は真っ暗闇の中にいる。
 龍華とは会えたが、これから先にまだ何も希望が持てなかった。

「知ってどうする?」

 口を衝いて出た言葉は、ほんのささやかな強がりだった。
 これ以上踏み込まれたら、気持ちが溢れ出してしまう気がした。

「辛いんなら、慰めてあげたいんだよ」
「別に辛くなんか」
「書いてあるよ、顔に『つらい』って」

 その瞬間、俺のプライドは決壊した。
 内定をもらっていた会社が、就職直前に潰れたこと。
 卒業したからという理由で、学生寮を追い出されたこと。
 仕事も住居も見つからないまま、実家に帰ってきたこと。
 こんなことになるに至ったいきさつを、龍華に洗いざらい打ち明けていた。

 まったくこいつは。
 いつもいつも人の心にずけずけ踏み込んできやがる。
 中学最後の夜、同じ言葉で俺の本音をあっさり引き出した時から、龍華は何も変わっていない。
 だが、そのことに不思議な安堵を覚えている自分もいた。

 全てを吐き出した時、俺は心がすっと軽くなっていることに気付いた。
 どんなことでもやってやれるという、全能感に満ちていた。

「うん、よろしい。ナオくんはウジウジしてるより、シャンとしてる方がずっといい」

 龍華が満足げな表情で頷く。

「んじゃ、次はボクの番だね」
「お前の番?」
「そ、キミの話を聞いてあげたんだから、次はキミが話を聞く番だよ」
「まあ、筋は通ってるな。よし、聞こうじゃないか」

 そこで龍華は一つ深呼吸をして俺の方を真っすぐ見た。
 真剣な話をする兆候だと、経験が告げていた。

「ボクね、ママに龍神として認めてもらえたんだ。お役目は一通りこなせそうだからって。みんなへのお披露目はもう少し先になるけどね」
「やるじゃないか!」
「すっごく頑張ったんだよ」

 龍華は昔から努力家だった。
 いつも、自分がやりたいことを成し遂げるための努力は惜しまずしていたことを、俺は知っている。
 こいつが龍神になれたんだ、俺も心が折れたままでいたくないという、負けん気が生じる。
 彼女の語りは続く。

「でね、正式に龍神になれたら、ボクはお婿さんをもらって、子供を作らないといけないの。分かるでしょ?」

 理解できる。
 この村の龍神となれるのは、辰崎家の娘のみ。
 一人娘である龍華には、跡取りを生むという任が課されているのだ。
 彼女が龍神になるということは、誰かの女になるということを意味していると、俺はようやく理解する。
 同時に、それをひどく寂しいと感じる自分がいた。

「そんな顔しないで。すぐ決めなきゃいけないわけじゃないし、相手はこっちで決めていいことになってるんだから」
「俺、そんな顔してた?」
「うん。ボクがどこの馬の骨とも分からない人と結婚しちゃうのはヤダな、って顔。それじゃ、本題に入りまーす」

 茶化すように言う龍華の頬が少し赤らんでいたのは、気のせいではあるまい。

「ママからこの話を聞いた時、最初に浮かんだのがナオくんの顔だった。
 ボクのお婿さんは、ナオくんしかいないって。
 龍神になったボクのそばにいるのは、ナオくんがいいって。
 ボクと子供を作るのは、ナオくんじゃなきゃヤダって。
 それでボク、気付いたんだ」

 龍華は俺の手を包み込むように握り、最後の言葉を紡いだ。

「ナオくん……好きです。ずっとずっと、好きでした。今も、大好きです」

 彼女の口から零れたのは、純粋な想いだった。

「ねえナオくん、ボクんちに婿入りする気はないかい?」

 それが龍華からのプロポーズであることを理解するのに、時間は要さなかった。
 当然、俺に断る理由はない。
 生まれた時からずっと、俺の隣に居てくれた幼馴染が、こんなにも俺を想ってくれている。
 それだけで、前を向いて歩き出せる。
 気付いた時、俺は龍華のことをきつく抱きしめていた。

「……ありがとう」
「うんうん、ボクに感謝するがいい」
「俺も好きだ、龍華。大好きだ!」
「ふえっ!?」

 どさくさに紛れての告白にきょとんとなる龍華に、そのまま追撃を加える。

「どんなときも俺のそばに居てくれたあの時のお前と、何も変わってないんだな」
「そうだよ。ボクはボクさ。ナオくんのことが大好きな、龍華だよ」

 龍華のゴツゴツした手が俺の背中に回される。
 俺達は額を突き合わせて言葉を交わす。

「ボク達、両想いなんだね」
「そうだな」

 そこでまた、俺達の間に沈黙が訪れた。
 交わす言葉が見つからないがための沈黙ではない。
 互いの意思を確認するための沈黙だった。

「ナオくん……」
「龍華……」

 龍華が耳元で囁く。
 ミルクチョコレートのような、甘いロリータボイスはしかし、カカオの後味のように蕩けるような響きを帯びていた。
 目と目が合って、瞳が揺れて、どちらからともなく唇を重ねた。
 まずはただ触れ合わせるだけのキス。

 それをきっかけに、俺は急に思い出した。
 俺と龍華がキスをしたのは、これが初めてではなかった。





 幼稚園の頃だったと思う。
 両親の仕事の都合で辰崎家に"お泊り"した晩のことだ。
 当時はまだ、俺達は一緒の布団で寝ていたのは確かだった。
 その日は直前までテレビを見ていて、目が冴えた龍華が隣でもぞもぞ動き、そのせいで俺もなかなか寝付けずにいた。

「龍華、ねれない」

 俺がとうとう不満を口にすると、龍華が唐突にこちらを向いた。

「ナオくん、チューして」
「なんで?」
「チューしてくれたら、ねれるから」

 そう言う龍華の目は、今までにない光を帯びていた。
 多分、テレビで見たキスシーンの影響だろう。

 俺は不思議と、いつもと様子が違う幼馴染に恐怖は感じず、むしろキスという未知なる行為に対し胸の高鳴りを覚えていた。
 返答の代わりに目を閉じて顎を突き出す。
 龍華がわずかな距離を詰めてくる気配がして――数瞬置いて俺の唇に何かが触れた。
 彼女は自覚していないかもしれないが、それは柔らかくて、甘くて、なにより温かった。
 突然に訪れたファーストキスは、龍華が持っているものを俺に教えてくれた。
 同時に、俺が持っているであろうものを龍華にも。

 思えばあの時、俺達は恋に落ちたのかもしれない。





 龍華の唇には、あの時と変わらない柔らかさと、甘さと、温もりがあった。
 多分、俺が持っていることに気付いていない何かを、龍華も感じ取っていただろう。
 それを頭の奥に刻み込むように、俺達は長く長く唇を重ね続けた。

 やがて名残を惜しながらも離れた時、龍華の眼差しは切なげに揺れていた。
 あの晩と同じ目だ。
 しばらく息を整えるための間を置いてから、龍華の唇が言葉を紡いだ。

「ナオくん……また、一緒のお布団で寝ようよ……」

 それが何を意味するのか分からないほど、俺は子供じゃない。
 息を塞ぐように、もう一度キスを交わす。
 軽く口を開いて舌を出すと、唇と唇の間で龍華の舌と出会った。
 ひどくぬめっている。
 それは反対側にいる俺の舌に気付いた途端、歓喜して絡み付いてきた。
 同時に背中に回された腕に力がこもる。

 最初こそお互いに勢い任せのぎこちない口付けだったが、先に龍華が要領を得た。
 急に動きが滑らかになり、俺の口内を嵐のように掻き乱していく。
 それは俺に酩酊に似た恍惚感をもたらした。

 龍華も時折、身体を震わせる。
 悦びを感じているのは、彼女も同じなようだった。
 龍華のラミア系の下半身が、俺を巻き込んでゆるくとぐろを巻いていく。
 そうしてできあがった緑色をした台風の目の中で、俺達はキスを解いた。

「みせて」

 龍華があっけらかんと言ってのける。
 俺達にそれ以上の言葉は必要なかった。
 何も言わずお互いに服を脱ぎ始めた。

 こっちはシャツとズボンを脱ぐだけだったが、龍華の龍神装束は意外と構造が複雑だった。
 俺がボクサーパンツ一丁になった時、龍華は普通の巫女でいうところの裳を解いたところだった。

「悪い、ペース合わせてやれなくて」
「いいんだ、ボクが脱ぐとこ……ナオくんにじっくり見ててほしい」

 そう言って龍華は小袖の帯に手を掛ける。
 何重にも巻かれた帯だ。おまけにかなり固く結んでしまったらしい。
 しばらく百面相しながら結び目を弄っていたが、間もなく帯は解けて畳に落ちた。

 龍華は口元を舌で軽く濡らし、そのまま合わせ目に手を掛けると、露出魔のコートの如く一気に割り開いた。
 ロマンもへったくれもない脱ぎ方だったが、着物と着物の間から飛び出してきたものに、俺は一瞬で心を奪われていた。

「おお……」

 でかい。
 理性が飛びそうで今まで意識しないようにしていたが、さすがは龍だ。

 掛け軸に描かれた龍は胸こそ大きいがそれでもまだどこか品があった。
 だが龍華のそれは完全な凶器だった。

 形はいわゆる釣り鐘型。下乳にボリュームが集中し、自重で柔らかく垂れている。
 その頂点ではツンと前を向いた乳首がサーモンピンクに色づいている。

 たわわに実った果実が、目の前で淫猥に揺れている。
 今すぐかぶりつきたいと、俺の心臓が訴えていた。
 ただただ圧倒されるばかりの俺の様子を見た龍華が、悪戯っぽく笑みを浮かべながら、にじり寄ってくる。

「これからナオくんのこと、全力で骨抜きにしてあげるから……ね♥」

 鱗に覆われた腕が、俺を捕らえる。
 そもそも俺は逃げるつもりなど毛頭なかったが。

 再び大きな爪からなる手が背中に回される。
 俺も龍華の腰に手を回して応える。
 乳房が胸板に当たって潰れる。
 その柔らかさを認識し、たちまちボクサーパンツがテントを張った。

 当然のようにもう一度、情熱的な口付けを交わす。
 唾液で潤った舌をたっぷりと絡め合う。
 そのどさくさにまぎれ、俺はついにボクサーパンツを脱ぎ去った。
 解き放たれたモノが、龍華を刺すように屹立する。
 生暖かい蛇身の鱗に擦りつけるのが、癖になりそうなほど気持ちがいい。

 一方の龍華も俺の手を握り、鼓動が鳴る方へと導いた。
 唇が別れを告げるリップ音がした時、俺は龍華の胸乳を思い切り掴んでいた。

「ねえ……おっぱい、モミモミして……♥」

 頬を上気させ、ディープキスの残滓を口の端からしたたらせながら誘う。

「いいのか?」
「ナオくんなら……いいよ♥」

 ねだられるまま、指を食い込ませた。

「あっ♥」

 龍華の身体が震え、その口から悦びの声が漏れる。

 初めて触る異性のおっぱいは、柔らかかった。
 指を埋めればどこまでも沈んでいきそうなほどに。
 力を加える度、指の間から乳肉が溢れ出してくる。
 肌は風船のように張り詰めているのに、こんなに簡単に形を変えるなんて。
 まるで粘体だ。
 自分の手の中にある女体の神秘に、俺は感激さえ覚えていた。

「龍華、お前の胸……」
「『重い』って言ったらぶっとばすからね」
「……本当にでかくなったよな」
「あはっ、ナオくんはほんっとおっぱい好きだよね♥」

 まるで俺が昔からおっぱいフェチだったような言い草だった。
 幼稚園の頃にはもう掛け軸の絵に胸を高鳴らせていた記憶があるので、あながち間違いではないのだが。

「ボク、知ってるんだよ? ナオくんが掛け軸の絵を隠れてガン見してたの」
「知ってたのか……」
「認めるんだね。まあ素直なのはいいことだ」

 俺に胸を揉まれながら、龍華が悪戯っぽく笑う。
 子供の無邪気さと、大人の妖艶さが入り交じったその笑顔を、俺は好きだと思った。

 龍華にもっと、気持ちよくなってほしい。
 もう片方の手でもう片方の胸を揉みにかかる。
 ぶっとばすと言われたので言う気はないが、下乳に手のひらを添え、円を描くように揉むと、その重量を感じられて満足感が高いことを知った。

 龍華も目を細めて感じ入っている。
 単純に考えれば、両胸を同時に愛撫されたことで、快感も二倍に引き上げられているのだろう。
 俺の指先が双乳を揺らす度に、彼女の口から湿った息が漏れる。
 やがてバストを弄る俺の手を引き離すように、鱗に覆われた手が割り込んできた。
 物足りなさげな目が俺に向けられる。

「ナオくん、今度はおままごとの時みたいに、して♥」

 龍華は大きな手で乳房を持ち上げると、期待に満ちた眼差しと共に差し出した。
 吸ってくれと言わんばかりに勃ちきったニップルに、俺は本能的にむしゃぶりついた。

「はうあああっ♥」

 背筋をのけ反らせた龍華の口から、嬌声が上がった。
 舌先で刺激してやる度に、ビクンビクンと震える。
 快感で力が入らないのか、爪が弱々しく俺の後頭部を撫でる。
 口の中で存在を主張する突起を甘噛みしてやると、明らかに過敏な反応が返ってきた。

「ぁんっ♥ ナオくんったら、OK出した途端目の色変えちゃって……♥」

 もっと反応を引き出したくて、今度はわざと音を立てながら吸い立てる。
 ちゅぽんとリップ音を立てて離すと、バストトップが唾液で濡れて光っていた。

「もう、そんなに吸っても出ないったらぁ♥ ボク、ホルスタウロスじゃないよぉ♥」

 龍華の胸が、荒く上下している。
 その吐息は、明らかに発情の熱を帯びていた。
 冷める前に、俺はもう一つのミルクタンクに口付けた。

「んああっ……ふふ♥ お乳出るようになったら、ナオくんにも分けてあげるね♥」

 おっぱいにがっつく俺に母性を刺激されたのか、頭をなでる手の動きに慈しみが加わった。
 子供扱いしているような態度に、少しだけ不満を覚える。
 その不満を、むき出しの本能は行動で表した。

 さっきまで貪っていた方をつねりながら、咥えている乳首を思い切り吸引する。

「ふあ!? あああああっ♥」

 瞬間、龍華はこれまでにないレベルで身体を震えあがらせ、そのまま脱力した。
 視線を彷徨わせ、完全に放心している。

「胸だけで、イけるもんなんだな」
「誰のせいだと思ってんの」

 龍華は遠い昔の俺達の遊びのことを覚えていた。
 彼女の胸の性感は、確実にその時の開発の賜物だろう。

 年×の頃、薄着をしていた覚えがあるから夏だと思う。
 俺と龍華はおままごとをしていて、経緯は忘れたが、俺が赤ちゃんの役をやることになった。
 その中でこともあろうに龍華はキャミソールをたくし上げ、自分のおっぱいを吸うよう求めてきた。
 お互いに、それがどういうことを意味するのか分からない歳だった俺は応え、龍華は受け入れてくれた。
 その行為は大人達にバレることはないまま、俺達がおままごとに飽きるまでの定番であり続けた。

 今になってみれば、とんでもないことをしていたと理解できるが、それが回り回って俺達の快楽に繋がっているのなら、価値はあったと思える。

「ねえ、今度はお風呂の時みたいにして♥」

 龍華が脳が溶けそうな声で言いながら、俺の剛直を手で包み込む。
 俺も下半身の肌から鱗へと変わりゆく部分にある、龍華の入り口に触れる。

 まずは慣らすようにゆるゆると扱く/ぬめり具合を確かめるようにワレメをなぞる。

 鱗のざらつきを伴った手コキは、自分の右手とは比べ物にならないほどの充実感と、龍華からの確かな愛情を俺にもたらした。
 ヤツデの葉のように大きな手と猛禽類めいた鋭い爪とは裏腹の、気遣いに満ちたその所作だけで、達しそうになる。

 俺も負けじと膣口の上方ににある莢を剥き、肉豆を指先で摩擦する。
 龍華は顔こそ赤らんだ笑みの中に押し隠せていたが、手の動きの不規則な緩急とつばを飲み込むような息遣いで、感じていることを如実に示してくれていた。

 互いへのいたわりに満ちた愛撫。
 それは俺達の性への目覚めの記憶を呼び覚ました。

 龍華の胸が目に見えてふくらみだした頃で、それから間もなく親に止められたから、これは小学校の後半のことだと思う。

 当時の俺は、お泊りの日でなくても、ときどき辰崎家の広い風呂に入らせてもらっていた。

 人前で裸になることは恥ずかしいことだと気付き始めていた年頃だけれど、俺と龍華は当たり前のように一緒に入っていた。
 お互いにだけは裸体を晒しても恥ずかしいとは思わなかったし、むしろ見てほしい・触ってほしいとさえ思っていた。

 そんな訳で、俺達が『洗いっこ』に興じるようになったのは、ごく自然のことだった。
 その中で俺達は、相手に洗ってもらう行為が気持ちいいことを知った。
 股のそこに触られると特に気持ちがいいことも。

 すぐに『洗いっこ』は風呂場で性的快感を与えあう行為の建前になった。
 俺に身体をまさぐられる龍華の艶(なま)めいた声は、今も鮮明に思い出せる。
 もしかしたら、親達が一緒に風呂に入ることを止めたのは、この淫らな遊びに感付いたからなのかもしれない。

 あの時はその先があるなんて知らなかった。
 けれども、俺達にそれがある意味を知った今なら行ける。
 前に進もう。

 互いの局所を刺激し合っていた手が同時に止まる。

「ナオくん……来て……♥」

 再び動き出すきっかけを与えたのは、龍華のしっとりとした声だった。

 サオを導いて、クレヴァスを割り開いて。
 限界まで硬直しきった俺の先端が、綻びきった龍華への入り口に宛がわれる。

 ちゅっとふざけあうようにバードキスを交わし、くすくす幼いころのように笑い合い、どちらからともなく一つになった
 まず亀頭が飲み込まれ、何かを破るような感触を経て、肉棒全体がぬかるみに沈む。
 瞬間、龍華が全身を強張らせ、声を上げまいと自らの唇の端を噛んだ。
 俺の背中に鋭い爪が突き立てられる。

「龍華?」
「あ、あはは……ロストバージンって、本当に痛いんだね……」

 痛みをこらえているのか、ぎこちなく作り笑いを浮かべている。
 その目の端から、涙が流れ落ちた。
 俺はただ、痛みと不安に押し潰されかけている龍華を、抱き締め返すことしかできなかった。

「ナオくん、お願い……何も言わないで……このまま、ギュッてしてて……」

 言葉の代わりに全身でしがみつくように、手足に力を込めて答える。
 間もなく龍華の息遣いが、穏やかに落ち着いていった。

「あのね、ボクがどうしてナオくんのことを好きなのか、分かった気がする……」

 おもむろに龍華が言い出した。
 その理由は予想がついていたが、先に言ったらヘソを曲げそうなので俺は黙っている。

「……ボクのことを、女の子として見てくれてるからだって」
「……」

 知ってる。
 社交的な龍華には、俺以外にも友人は居た。
 だが、龍神の跡取り娘という素性ゆえか、その多くが必要以上に深く付き合おうとはしなかった。
 寂しげな様子を俺に見せたことも、一度や二度ではない。

「ボクにチューしてくれて、おっぱい吸ってくれて、あそこを触ってくれて、嬉しかった……」

 俺は龍華が求めてきたから応えただけにすぎない。
 けれども、あの淫らな遊びが俺達にとって、とても大きな意味を持っていたことを理解した。

「俺だって、龍華が求めてくれるのが嬉しかった。だから好きなんだ」
「えへへ……ナオくん、ボクも大好きっ♥ 一緒に気持ちよくなろっ♥」

 好きな人が好きでいてくれることが、こんなに幸せだなんて。

 両想いを改めて確かめ合うように、ピストンを始める。

 とぐろを巻いた龍華の龍身の真ん中、しかも対面座位という決して動きやすいとは言えない体位。
 それでも俺達は、局部から得られない分を補うように見つめあい、抱き合い、口付けしあう。

「ナオくん……んー……ちゅっ♥」
「はあ……ん……龍華……」

 龍華と触れ合っている部分全てが反応していた。
 特に俺の股間の勃起が、早く射精したいと訴えるように疼いている。

 その衝動のままに、へこへこと腰を打ち付ける。
 色々な動かし方を試した末、龍華の下半身を俺の両腿で挟んで滑らせるように動かすのが一番いい、ということが分かった。

「あっ、あっ♥ ねえ、ボクのおま×こ、気持ちいーい?」
「ああ、すっげえ気持ちいい」
「ふふっ、ナオくんのお×んちんも、気持ちいいっ♥」

 快楽の中ににあっても、絶えず言葉を交わし合う。
 飾り気のない言葉が耳から全身に染み渡って、微弱な電流めいた性感を高めていく。

 龍華がヤツデの葉のように大きな手に力を込め、しがみついてきた。その乳房を押し潰しながら。

「ナオくん……逆鱗……触ってぇ……♥」

 逆鱗。
 本で読んだことがある。
 尻の下辺りにある、龍の最大の性感帯。
 それも理性が飛んでしまうほどの。

「いいのか?」
「うん。もっともっと気持ちよくなりたいっ♥」

 龍華の背中に回した手をゆっくりと下げていく。
 尻の丸みをなぞった先で、ふと指先に違和感を感じた。
 鱗の中に一点、引っ掛かるものがある。
 その周囲を円を描くように探っていくと、それは他の鱗と確かな相似形を成した。

 見つけた。

 だがそこで俺の中で悪戯心が鎌首をもたげた。
 ただ触るだけというのも面白くない。
 何か、興奮を更に高めてくれるおまけが欲しい。
 アイディアはすぐに浮かんだ。

 俺は逆鱗を撫で上げながら、龍華のヒレ耳に囁いた

「龍華、愛してる」
「ふああああああああっ♥」

 その途端、喜悦の絶叫と共に龍華の肉洞がギチギチに締まり、何かがクニュっと俺の鈴口とキスをした。
 これは何だ。
 当惑が顔に出た俺に対し、龍華は頬を上気させながら答えた。

「はあ、はあ……子宮、下りてきちゃった♥」

 はにかみながら、下腹部を愛おしげに撫でる。

 ならば、今当たっているものは子宮口か。
 例の本には、逆鱗に触れられた龍は、子宮を精で満たされるまで治まることはないというような記述があった。

 それは俺の理性も吹き飛ばすには十分すぎる威力があった。

 昂りのままに、最奥を突き上げる。
 頭の中が真っ白に停滞する。

「あああっ♥ ナオくんっ♥ 好き。好きっ!好き好き好きっ♥」

 龍華が感極まって身もだえる。
 本能のままに交わる中でも、他に言葉が浮かばないからだとしても、言葉で愛を示してくれるのが、たまらなく愛おしい。

 ただ抜き差ししているだけだが、カリ首が膣襞に擦れ、敏感な鈴口が膣奥に当たる度に、俺は精神的に達していた。
 龍華もまた、Gスポットを刺激され、ポルチオを叩かれる度に、あられもない声を上げて小絶頂を繰り返していた。

 お互いの一部となって、お互いのことで頭を一杯にして、俺達は一歩一歩、果てへ向けて進んでいく。
 ペニスが甘く痺れる。
 カウントダウンはすぐに始まった。

 龍華と一緒にイきたいという想いだけで持ちこたえていたが、そろそろ限界だった。

「龍華、膣内(なか)に出すぞ……!」
「うんっ、ボク、ナオくんの赤ちゃん生みたいっ♥」

 唐突な妊娠願望の告白に、俺の身体を戦慄が走った。
 1、2の3で子宮を思い切り押し返す。

 瞬間、膣口が搾り取るように波打ち、俺の男根が脈動した。
 限界まで煮詰まった官能のタガが飛び、快感のボルテージが最高潮に到達する。
 龍華も声にならない声を上げながら、一際強くしがみついてきた。
 俺は肌でその存在を噛み締めながら、彼女の中に子種を流し込んだ。

 まるで放尿だったが、頭の芯が蕩けるような多幸感は、間違いなく射精のものだった。
 一度の量では間違いなく新記録だ。
 自慰ではこんなに出ることはなかっただろう。

 隙間を埋めるようにきつく抱きしめ合う。
 大きすぎる龍華のおっぱいのせいで、ほんのわずかに空いてしまった空間さえももどかしい。

 俺の放出が終わってもしばらくそうやって余韻に浸っていたが、やがて龍華が一度深呼吸して抱擁を解いた。

「ああ……赤ちゃんの素がいっぱいぃ……幸せぇ……♥」

 ふにゃふにゃになってしなだれかかってくる。
 俺と繋がったままの蜜壺から白濁が溢れ出す。

「愛してるよ、ナオくん。世界で一番だぁい好き♥」
「俺も好きだ、龍華。誰よりも愛してる」

 言葉を紡ぎながら、互いの唇にバードキスを落とす。
 今、俺達の間にはどこまでも純粋な愛があった。

 そのまま龍華に押されて、ベッド代わりの彼女の龍身に押さえ込まれる。

「ところでナオくん、まだできるよね?」

 不意に龍華が口を開いた。

「……少し休めば」
「ヤダ。休みたくない」

 俺の申し出を拒否する彼女の口調には、有無を言わさぬものがあった。

「な、なんで」
「実はさっき逆鱗を触られたせいで、まだ体が火照りっぱなしなんだよ」
「マジか」
「マジで。だ・か・ら、今夜は朝までフィーバーしちゃおっ♥」
「お、お手柔らかに……」

 どうやら俺達の夜はまだまだ終わらないらしい。





「ふぃーよ、ほふのふのはんろるりひへ、ふひほあほれふぁひふぁひひへっ♥」(いーよ、ボクの角ハンドルにして、口オナホでガシガシしてっ♥)



「あはっ♥ ボクのLカップおっぱいでナオくんのおち×ちん、メロメロにしてあげる♥」



「おっぱいちゅーちゅーしながらこーんなにおっ勃てちゃって、エッチな赤ちゃんだね♥」



「すごいすごいっ! 抜かずに12発もキメちゃうなんて、ナオくんのおちん×ん最高っ♥」



「ナオくんもっ、ナオくんのお×んちんも大好きぃぃぃぃぃっ♥」





 結局、龍華が鎮まったのは、空が白み始めた頃だった。

 押し入れから引っ張り出した布団に、二人で身を寄せ合って包まる。

 一晩中、ほぼノンストップで運動したせいか、眠気を訴える頭とは裏腹に、心はは清々しく澄み渡っていた。

「なあ、龍華」
「何だい?」

 俺はおもむろに口を開いた。
 ひと眠りする前に言っておきたいことがあった。

「婿入りの話だけどさ、俺はお前のヒモなんてごめんだからな」
「ナオくんって、変なところで意地っ張りだもんね」
「龍華の前では、カッコつけたいんだよ。とにかく、お前が龍神をやるように、俺も龍神の旦那として、何かしたいんだ」

 龍華のおかげで、俺はまた立って、歩き出すことができた。
 次はどこに向かって歩いていくかだ。
 まだ目的地は分からないけど大丈夫、焦る必要はない。
 これからは龍華ががそばに居てくれる。
 一歩一歩、進んでいこう。

「ボク、とっても幸せ。ずぅっと一緒だよ、ナオくん」
「龍華、ずっとお前のそばに居る。二人で幸せになろう」
「うん、ナオくん!」

(おわり)




















『……それで、直彦はどうしてるのかしら?』
「龍華と一緒に寝てるわ。ゆうべは二人で盛り上がってたみたいよ」
『どうりでなかなか既読が付かないわけね』
「どうする? 起こして帰らせましょうか?」
『いいえ、もう少し寝かせてあげて。お熱い二人に水を差しちゃいけないわ』
「それもそうね。あの子達、誰もが羨むラブラブ夫婦になれそうよ……」
25/04/11 20:48更新 / 正木大陸

■作者メッセージ
ほぼあらすじ通り、
エロボディに成長した幼馴染がぐいぐいくる
妄想をぶつけました。

こんな幼馴染が欲しいだけの人生だった……

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