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序章 |
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手始めに、皆さんに説明するとしよう。この一連の事件の源はなんなのか。
5年前に遡り、ある小さなサバト支部。 その中では、一匹のバフォメットが、大きな釜の前に、風呂いすの上に立っていて、念入りにその釜に載っている液体をほぐしている。 釜の下は魔法の焚き火が燃えていて、メラメラと燃え盛る同時に、禍々しき紫色の光を放つ。 その周囲は山ほどの本が積んでいて、フラスコや試験管が所々転がっていて、お世辞にも綺麗とは言えない部屋である。 「もう少しで…もう少しで出来るのじゃ!今度こそ…!あのうつけものにぎゃふんと言わせるのじゃ!」 突然、「パン!」と大きな音が後ろから響いた。 「うわぁあ!誰じゃ!?」 びっくりしたバフォメットは、危うく風呂いすから落とそうになった。 「パンドラさま!パンドラさま!みつけました!」バフォメットと同じく幼い姿をしている魔女が、突然ドアを開け、部屋の中へ飛び込んだ。 「なんじゃ、お主かぁ。わしはあぶない実験をしておるから今度は扉を叩いてから入りたまえ!お主のせいで事故になりそうではないか。」パンドラの名を持つバフォメットは、おっちょこちょい魔女に軽く叱った。 「は、はわわ、ごめんなさい、パンドラさま…」魔女は自分の不用心を気づき、慌てながらパンドラに謝った。 「それと、お主は何を見つかったのじゃ?アネシドラよ。わしに見せてくれたまえ。」 「は、はい!」 アネシドラと呼ばれる魔女は、懐から、一冊の本を取り出し、パンドラに渡した。 「どれどれ…エピタヒーノ!」 パンドラはすぐ本を開け、速読呪文を掛け、高速に本を読み上げる。 数分後、パンドラは本を閉じた。 「でかしたぞ、アネシドラ。これでこの最強の薬がとうとうわしが完成するのじゃ!これで、二度とあのうつけものどもに見下されたりはせぬ!お主のおかげじゃぞ!」 「ふえええー!?あたし、パンドラさまの役に立ちましたの?」 「うむ、誇るがいい。そこで待ちたまえ、直に完成してやろう!」 バフォメットは素早く、隣にある薬草入れ棚にいくつかの薬草や鉱石を取り出し、紫色の薬液に入れ、そして念入りにほぐし続ける。 「6回の時計回りに一回の逆時計回り…もうすぐじゃ…わしの最高の発明が!」 逆時計回りに変わる一瞬、紫色の薬液が、急に透明なピンク色になり、馥郁なる香りを放つ。 「うわああ〜!これ何のくすりなの?いい香りですぅ」アネシドラもその香りに引かれ、釜の中身を覗き込む。 「ふふふん〜わしの最高傑作、其れは、飲んだ者に変幻自在な体になれることが可能な薬じゃ!一度飲んだ者は、精力増強・ちんぽ増大はおろか、年齢変化・触手・複根・魔物化等々、想像が付く物であれば、丸一日其れに成り済ますことができ、寝る頃は元に戻って明日はまた別のを選ぶことに、毎日違う体で交尾を楽しめる、現在の市販物の数多な物をかき集まって出来た最高で最上の薬じゃ。名付けて、『パンドラ秘薬』!なのじゃ!」 「ふええ〜すごいですぅこれはきっといっぱいうれますね」 「そうじゃそうじゃ!お主わかっておるのぅ。だから今夜は、お主に今までわしについてきた労いじゃ!レスカティエで最高の魔界豚のステーキ屋でわしら二人であそこにご馳走を頂こうぞ!」 これを聞いて、幼い魔女の目から、ピカピカと喜びの光を放ち、開けた口から涎が垂れていく。 「ステーキ!?ほんとうですか?もう黒パンじゃなくいいんですか?わーい!」 アネシドラは喜びの余りに、万歳のポーズを取りながらぴょんぴょんとジャンプした。 しかしその瞬間、悲劇が起こってしまった。 魔女の足は、一本の試験管に着地し、それを踏み割れた。 靴は着ているものの、ガラスは靴を刺さり込み、その足裏を刺さって、血が出ていた。 「ああああああ!いたい!いたいですよぉ!」 魔女は足が刺された激痛で、片足で飛び回り、そしてとうとう体のバランスを崩した彼女は、釜の方向に転んだ。 次の瞬間は、言うまでもないことであろう。 釜は横へ倒し、薬液が全部溢してしまった。 しかし薬液は周囲へ拡散することはなく、なんと、こぼした方向にある一つの魔法の鏡に流れていく、薬液が全部、その鏡の中に流れ込んでいた。 「ああああ!それ、ゴミ廃棄魔鏡じゃ!しまったのじゃ!」 「それ、どこにつながっているんですか?」 「虚空に決まってるのじゃ!あそこは容量が無限大で汚染にもならぬ最高のゴミ捨て場じゃから!」 バフォメットは自分の成果がこうもあっさりと事故で無に帰ったことにショックを受け、何千年の身とはいえ、悲しみのあまりに涙が溢れ出してしまい、やがてポロポロと落ちていく。 「うっ、うっ...うわああああああああああ!わしの最高傑作が!なくなってしまったあああああああああ!うわああああああああああん!」 そして、パンドラはこのショックに押しつぶされ、とうとうわあわあと号泣し始めた。 「え、じゃパンドラさま、もう、ステーキはなしなの?あたしのステーキは?もう食べないですの?」 「わああああああああああん!今、そんな金、あるわけ、なかろう!わああああああああ!」 「うっ…そんな…うっ、うわああああああああああああ!あたちぃのしゅてーきも、なくなりましゅたぁ!黒パンはいやですううううう!うわああああああああああん!」 アネシドラも、この絶望的な状況と、ステーキと無縁な生活に戻っていく悲しみ、さらに目の前に号泣しているパンドラを見てもらい泣きが働き、ついに自分も泣き崩れてしまった。 天国から無惨に叩き落とされたパンドラと魔女。一人は研究成果がチャラになったせい、もう一人はご馳走の夢から毎日黒パン地獄に醒めたせい。 しかしこれは終わりどころか、パンドラの箱を開けたように、一連の波乱の元となってしまったのだ。 22/10/07 03:06 瞬間爆発型W
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この光景を見て、彼女二人を無性に慰めたくなるものだ。
魔物とはいえ、感情のあるものだから、自分こういう状況で研究がパーになったら、たぶん彼女以上大声で泣くものだろう。最もサバトはみんなロリっ子なんだから、親玉であるバフォメットが泣き出すとみんな泣き出してしまうがちなんだから、やはり保護欲がかきたてるものである。 とはいえ、この魔鏡がどういう原理かで行き先が変わってまくって、薬を各地にばら撒いたのは知らないが、とにかく虚空には行っていない模様だ。 追記:この二人は後、知り合いのリリムが訪れ、怪我を治し、ご馳走を奢ってくれた。めでたしめでたし。 【作者後記】 いかがですか?今回は自分が苦手な第三人称で書くことで、いろいろ描写が届いていないところもある思います。 最も自分の日本語はそこまで上達していなかったので、ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いします。 簡単に言うとどうして後のエピソードがあるのかを説明するため、所謂設定裏付けストーリーでした。初めて魔物娘図鑑ものを書くにはやはり心細く感じますね。 |
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