這いずる嗜虐心
黒ずんだ紫の粘液が、女性の体を這いずっていた。それは粘質な音を立ててネバネバと蠢いて、女性をぐじゅぐじゅと包む。彼女は唯一自由になる首から上を振り乱して叫んだが、直後そこへ粘液が飛び込んだ。
そうして何度も何度も絶頂に導かれた。次第に考える能力を失う。言葉が紡げなくなる。幼児退行していくように、ただただ泣いて、食べて、それを繰り返した。その間も、何度もイかされた。ともだち、という女の子たちも、そうやって壊された。
「さあ、愛しの彼と永遠の愛を誓いなさい。いいわね」
蠢く粘液が妖艶に微笑んだ。
×
会社を出て終電に飛び乗り、眠い頭を擦った。僕の目がどんよりと濁っているのが、車窓に映っている顔を見るとよくわかった。
それとなく普通に生きてきた僕は、学生時代にできた恋人を失踪という形で失って以来、何もかもに無気力になっていた。なぜ彼女がいなくなったのかはわからないし、警察も足取りをつかめず、もう六年が経つ。
女友達数人とキャンプに行って、全員が行方不明。全国ネットのニュースにもなった。無理解な記者やなんかの質問攻めを思い出し、僕はかぶりを振った。
電車を降りて、自宅へ。一人暮らしをし始めて時間が経ち、アパートの一室は僕の色合いに染まっている。
自分の部屋に入って、靴を脱ぐ。なにやらにちゃ、と水音がした。なんだろうか、蛇口が緩んでいたのだろ──
靴下越しに、湿った感触。
「えっ、水漏れ……?」
慌てて部屋の電気をつけた僕は、喉を引き攣らせた。
それは紫色の粘液だった。とてつもない量のそれが床と言わず壁や天井にへばりつき、僕が逃げ出そうとすると部屋中を覆った。
なんなんだ、これは。
ジュルジュルと蠢いたそれは、やがて二人の女となった。
「久しぶり」
「え……」
スライム状の肉体。決してヒトではない。あくまで粘液。けれどその外見は、どう見ても数年前にどこかへ消えた恋人だった。となりの女は、そんな彼女の親友である。
「体は変わっちゃったけど、ちゃんと君のこと覚えてるよ。ごめんね、いなくなっちゃって。でももう大丈夫だよ。ずーっと一緒だよ」
信じられるか。これは夢、違う、悪夢だ!
「来るな化け物!」
僕は手元にあった孫の手でスライムを殴る。しかしそんなもの、効くわけがない。容易く受け止められた。
「ひどくない? 先輩は勇気出してそう言ったんだよ? 最悪。こんな男ふっちゃえば?」
友人がそう言った。けれど恋人は首を振る。
「だめ。この人がいいの。大丈夫だよ、怖くないから。こうしたら思い出すよ、ね?」
にゅるんっ、と粘液がズボンの裾から入り込んだ。僕の陰茎がぎゅる、と飲み込まれる。生暖かい感触に包まれた。そしてそれは、彼女がそうしてくれた舌遣いとまるで同じように僕のブツを舐め回す。
「やめろ……っ、僕の好きな人を、汚すな!」
「私がその人なの。お願い、信じて。私を受け入れて」
「ふざけ……っ」
「ムカつく! あんたねぇ、先輩がこんなに頑張ってんのに……! もういい!」
後輩がガバッと僕を押し倒し、衣類を包む。紫色の毒々しい粘液があっという間にそれらを溶かした。恋人だったスライムが微笑んで、彼女も僕を包んで覆い重なる。
「可愛いなぁ……私たち、ずっとずっとこうしてようね。全部どうでもよくなるくらい交尾しようね」
「な……」
「ほら、先輩の気持ち受け入れなよ。あたしも実はあんた狙ってたしさ。いいじゃん、二人抱けば。立派な竿だし、あとふくろは二つ。一方で作った方を先輩に出したら、もう一方はあたしね」
「今日はぜーんぶ私のだからダメよ」
じゅるるっ、と僕の陰茎を包むそれが変形した。体勢を騎乗位にした彼女は嗜虐的に微笑む。それは僕が学生時代に彼女に惹かれた、サディズムな笑みだった。こんな顔をできるのは、彼女だけだ。
「君は、本当に……」
「ただいま。ごめんね、一人にして。でも、大好きだよ。大好きなの。だから一緒にいようよ。あなたの全部、ぜーんぶ受け止めるから」
「あたしも、あんたの全部が欲しい」
ぐじゅっ、ぐじゅっ、と粘質な膣肉が蠕動し、二人の顔が近づいた。恋人が唇を重ねて激しいディープキスを求め、僕はそれに応じた。後輩は激しい息づかいで、興奮をあらわに僕の耳をぐちゃぐちゃと舐め回す。
「あっ……ぐ、ぅ」
「射精ちゃうの? いいよ、射精して。いっぱいちょうだい。いっちに、いっちに……」「がんばれ❤︎ がんばれ❤︎」
びゅるっ、びゅるるっ、と僕の陰茎が波打った。恋人の膣内をめぐって、それは半透明の子宮に流れ込んでいく。
「美味しいっ❤︎ もっとちょうだい、ね? ん……っ、じゅぶっ、んんっ」
有無を言う前に口を塞がれた。後輩が「先輩、口くらい譲ってくださいよ」というと恋人は騎乗位になり、僕の顔面に後輩のおまんこが押し当てられた。
「はーい、先輩拒否ってた悪い子はご奉仕の刑でーす。あたしがイくまでどきませーん。クソ雑魚ど変態さん、頑張ってくださいねー」
そうやって、僕の体は彼女たちに好き放題弄ばれた。朝になっても、昼になっても、ずっと。
不思議なことに、僕の体は壊れることはなく、ややあって満足した恋人と後輩は改めて同居を申し出た。
すっかり、新しい存在になった彼女らの快楽の虜にされた僕は二つ返事で了承した。
今日もまた、家に帰ったら激しい「お仕置き」を受けて、「ご奉仕」しなくては。
そうして何度も何度も絶頂に導かれた。次第に考える能力を失う。言葉が紡げなくなる。幼児退行していくように、ただただ泣いて、食べて、それを繰り返した。その間も、何度もイかされた。ともだち、という女の子たちも、そうやって壊された。
「さあ、愛しの彼と永遠の愛を誓いなさい。いいわね」
蠢く粘液が妖艶に微笑んだ。
×
会社を出て終電に飛び乗り、眠い頭を擦った。僕の目がどんよりと濁っているのが、車窓に映っている顔を見るとよくわかった。
それとなく普通に生きてきた僕は、学生時代にできた恋人を失踪という形で失って以来、何もかもに無気力になっていた。なぜ彼女がいなくなったのかはわからないし、警察も足取りをつかめず、もう六年が経つ。
女友達数人とキャンプに行って、全員が行方不明。全国ネットのニュースにもなった。無理解な記者やなんかの質問攻めを思い出し、僕はかぶりを振った。
電車を降りて、自宅へ。一人暮らしをし始めて時間が経ち、アパートの一室は僕の色合いに染まっている。
自分の部屋に入って、靴を脱ぐ。なにやらにちゃ、と水音がした。なんだろうか、蛇口が緩んでいたのだろ──
靴下越しに、湿った感触。
「えっ、水漏れ……?」
慌てて部屋の電気をつけた僕は、喉を引き攣らせた。
それは紫色の粘液だった。とてつもない量のそれが床と言わず壁や天井にへばりつき、僕が逃げ出そうとすると部屋中を覆った。
なんなんだ、これは。
ジュルジュルと蠢いたそれは、やがて二人の女となった。
「久しぶり」
「え……」
スライム状の肉体。決してヒトではない。あくまで粘液。けれどその外見は、どう見ても数年前にどこかへ消えた恋人だった。となりの女は、そんな彼女の親友である。
「体は変わっちゃったけど、ちゃんと君のこと覚えてるよ。ごめんね、いなくなっちゃって。でももう大丈夫だよ。ずーっと一緒だよ」
信じられるか。これは夢、違う、悪夢だ!
「来るな化け物!」
僕は手元にあった孫の手でスライムを殴る。しかしそんなもの、効くわけがない。容易く受け止められた。
「ひどくない? 先輩は勇気出してそう言ったんだよ? 最悪。こんな男ふっちゃえば?」
友人がそう言った。けれど恋人は首を振る。
「だめ。この人がいいの。大丈夫だよ、怖くないから。こうしたら思い出すよ、ね?」
にゅるんっ、と粘液がズボンの裾から入り込んだ。僕の陰茎がぎゅる、と飲み込まれる。生暖かい感触に包まれた。そしてそれは、彼女がそうしてくれた舌遣いとまるで同じように僕のブツを舐め回す。
「やめろ……っ、僕の好きな人を、汚すな!」
「私がその人なの。お願い、信じて。私を受け入れて」
「ふざけ……っ」
「ムカつく! あんたねぇ、先輩がこんなに頑張ってんのに……! もういい!」
後輩がガバッと僕を押し倒し、衣類を包む。紫色の毒々しい粘液があっという間にそれらを溶かした。恋人だったスライムが微笑んで、彼女も僕を包んで覆い重なる。
「可愛いなぁ……私たち、ずっとずっとこうしてようね。全部どうでもよくなるくらい交尾しようね」
「な……」
「ほら、先輩の気持ち受け入れなよ。あたしも実はあんた狙ってたしさ。いいじゃん、二人抱けば。立派な竿だし、あとふくろは二つ。一方で作った方を先輩に出したら、もう一方はあたしね」
「今日はぜーんぶ私のだからダメよ」
じゅるるっ、と僕の陰茎を包むそれが変形した。体勢を騎乗位にした彼女は嗜虐的に微笑む。それは僕が学生時代に彼女に惹かれた、サディズムな笑みだった。こんな顔をできるのは、彼女だけだ。
「君は、本当に……」
「ただいま。ごめんね、一人にして。でも、大好きだよ。大好きなの。だから一緒にいようよ。あなたの全部、ぜーんぶ受け止めるから」
「あたしも、あんたの全部が欲しい」
ぐじゅっ、ぐじゅっ、と粘質な膣肉が蠕動し、二人の顔が近づいた。恋人が唇を重ねて激しいディープキスを求め、僕はそれに応じた。後輩は激しい息づかいで、興奮をあらわに僕の耳をぐちゃぐちゃと舐め回す。
「あっ……ぐ、ぅ」
「射精ちゃうの? いいよ、射精して。いっぱいちょうだい。いっちに、いっちに……」「がんばれ❤︎ がんばれ❤︎」
びゅるっ、びゅるるっ、と僕の陰茎が波打った。恋人の膣内をめぐって、それは半透明の子宮に流れ込んでいく。
「美味しいっ❤︎ もっとちょうだい、ね? ん……っ、じゅぶっ、んんっ」
有無を言う前に口を塞がれた。後輩が「先輩、口くらい譲ってくださいよ」というと恋人は騎乗位になり、僕の顔面に後輩のおまんこが押し当てられた。
「はーい、先輩拒否ってた悪い子はご奉仕の刑でーす。あたしがイくまでどきませーん。クソ雑魚ど変態さん、頑張ってくださいねー」
そうやって、僕の体は彼女たちに好き放題弄ばれた。朝になっても、昼になっても、ずっと。
不思議なことに、僕の体は壊れることはなく、ややあって満足した恋人と後輩は改めて同居を申し出た。
すっかり、新しい存在になった彼女らの快楽の虜にされた僕は二つ返事で了承した。
今日もまた、家に帰ったら激しい「お仕置き」を受けて、「ご奉仕」しなくては。
21/12/06 23:46更新 / 蕾雅之銀狐