連載小説
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精霊呼びの笛
「帰れ帰れ!お前みたいな田舎者に教える魔法など無いわ!!」
「そんなぁ…そこをなんとか…」
「ふんっ!」

目の前で扉がぴしゃりと閉められ、またもや僕は路上に置き去りにされてしまった。

「はぁ…またダメだった…これで7軒目か…」

魔法を学ぶため、研究が盛んなこの街へこの身ひとつでやってきたが、なかなか師匠となる人を見つけることができていない。
今日も朝から高名な魔法使いの人達を尋ねるが、誰一人として田舎から出てきたばかりの素人を弟子にしてくれる人はいなかった。

「はぁ…もう日が暮れるし…今日も収穫無しか…帰ろ…」

夕方になり暗くなった街路をとぼとぼと歩く。

「…ん…あれ?ここどこだろう」

顔を上げると、見知らぬ落ち込んで下を向いていたせいか見覚えのない路地へと迷い込んでしまった。
日が落ちて幾許も経っていないはずだが、周囲は深夜のようにシンと静まり返り、道の先は霧が立ち込め白く曇っていた。

「変な道に来ちゃったな…どこかに道を聞ける人はいないか…」

周囲を見渡すが、周りにある家には明かり一つ灯っていない。
いや、それどころか人が住んでいたかどうかすらも怪しいほど、人の営みや温かさとは切り離された無機質さが漂っている。
不気味に思いながらも、ふと道の先に光が見えた。

「なんだろう…店…?」

道の行き止まりにある店はこの場所で唯一明るい光が灯り、安心感を与えてくれる。
不安感に苛まれていた僕はとにかくその店に飛び込むことにした。

扉を開ける前にふと見た看板にはこう書かれていた。

アルカナ秘宝庫
あなたの願い、叶えます

…………………

「いらっしゃいませお客様、我がアルカナ秘宝庫へようこそ」

扉を潜ると1人の魔物が僕を出迎えてくれた。
魔物には詳しく無いため何の魔物かは分からないが…おそらく獣人の類いだろうか?

「すみません、道に迷ってしまって…」
「まぁ…それは災難でしたね…ここらは霧が出ると迷いやすいんです…よければ、霧が止むまでここで一休みしてくださいな」
「いや、道さえ教えてくれれば大丈夫なので…霧もそこまで深くは──」

そう言いながら外を見ると、いつの間にか辺りは深い霧に包まれていた。
先程とは比べ物にならない濃さで、数歩先すら見えない。

「あれ!?いつの間に…」
「ここではよく起きる事です。無理矢理進むと危険ですよ?」

確かに、ここまで濃いと無理に外に出れば迷ってしまいそうだ。
ここはしばらく待った方がいいだろう。

「じゃあ、お言葉に甘えて…ここって何のお店なんですか?色んなものが置いてありますけど…」

店内にはおそらく商品と思われる物が理路整然と並んでいる。
しかし、商品に値札は無く、並んでいるものもネックレスや指輪などのアクセサリーを初め、彫像や人形などの置物や何に使うのか分からない実験器具のようなものまで置いてある。

「ここはマジックアイテムを扱う店…お客様の願いのため、より適切な──」
「マジック!?」

店主のセリフに思わず身を乗り出してしまう。

「なら…僕が魔法使いになれるような物もありますか!?」
「…何か事情があるご様子…これも何かの縁、あなたのお話を聞かせてください…」

…………………

「はぁ…今日もこれだけ…」

少しの硬いパンに芋の欠片、これが僕が住む村の一般的な食事。
この村の風景はほとんどが茶色だ。
ひび割れた土、薪にすら使えない枯れ木、そして古ぼけた民家。
ここには自然の恵みと言えるものがほとんどない。
辛うじて芋などの強い野菜を育てることで食いつないでいるが、それも日照りが続き水が枯れれば無くなってしまう。
僕と同じくらいの若者はみんな常に腹を空かせていた。

「僕、魔法を学んでみたい」

そんな村の現状を変えるため、僕は魔法を学ぶことを決めた。
最初は両親やみんなも反対していたが、僕の意思が強いと分かると、なけなしの食料や路銀を持たせて送り出してくれた。
恩に報いるために、出来るだけ早く魔法を学びたい…そう考え魔法研究が盛んなこの街へとやってきたが、師匠になってくれるような人はどこにもいない。
魔法使いを尋ねては帰され…そんなことを繰り返していたらもう1週間が経ってしまった…

…………………

「そういう訳で、僕は魔法使いになりたいんです!」
「ふむ…なるほど…」

店主は少し考えた後、口を開く。

「質問なのですが…魔法についての知識はどれほど…?」
「…全くありません」
「魔力やそれに関する原理について、基本的な事も?」
「全然わかりません」
「そもそも、魔法の種類について知っていますか?」
「そんなのあるんですか?」
「うーん…なるほど…」
「…やっぱり僕が魔法を学ぼうなんて身の程知らずでしたかね…」

そう尋ねると、店主はにこやかに笑った。

「そんなことはありません…たとえ知識がなくとも、故郷を救いたいという目標があるのですから…あぁ、そういえば」

そう言うと、少しの間店の奥に入ったかと思うと、布に包まれた何かを持って戻ってきた。

「これならば、お客様の要望にお答えすることができます」

布を開くと、そこにあったのは色とりどりの宝石が飾り付けられた横笛だった。
複雑な紋様が刻まれていて、楽器と言うよりも儀式用の祭具に近い雰囲気を醸し出している。

「こちらは精霊呼びの笛…その名の通り精霊を呼び、その力を借りることができる笛です」
「精霊を…?」
「魔法の1種として、精霊魔法というものがあります。これは一般的に魔法として知られる古式魔法と違い、精霊の力を借りて影響を及ぼすため知識や演算などを必要としない魔法なのです」
「じゃあ、もしかして僕にも…」
「えぇ、精霊と契約すれば簡単に使えるかと。
それに、精霊魔法はいわば自然を操る魔法…枯れた井戸を潤し、痩せた土地も甦らせることができます。
荒廃した村に恵みをもたらすのにこれ以上最適な魔法はありません」

すごい、まさに自分が求めていた魔法そのものじゃないか!
耐えきれず、カウンターに身を乗り出す。

「それ、いくらですか!?」
「ふふ…お代は結構です。あなた様の願いが叶うなら、それで何よりですから…」

店主はこともなげにそう言うと、布に包んだ笛を差し出した。

「え…でも…」
「お気になさらず、元々道楽でやっているような店ですので…この笛も、飾られるより使われた方がいいでしょうから…」

…………………

「…結構難しいなぁ…」

村へ帰るための馬車に揺られながら笛の練習をする。
店主が笛と一緒に渡してくれた取り扱い説明書を見ながら、正しい音階を吹けるように練習しているが、笛どころか楽器すら触ったことがないため狙った音を出すことすらなかなか難しい。
笛を吹きながら、店主の忠告を思い出す。

『この笛で呼び出せるのは四大元素の精霊─火を司るイグニス、水を司るウンディーネ、風を司るシルフ、そして土を司るノームを好きな時に呼び出し、その力を使うことができます。
ですが、本来精霊とは嫉妬深いモノ…他の精霊と仲良く、あまつさえその力を使っていると知られれば必ずその怒りを買うでしょう。
ですので、精霊の召喚は同時に一体まで、くれぐれも他の精霊を呼んでいることはバレないようにしてください…』

説明書に書かれた4つの旋律、これを正しく吹くことで精霊を呼び出せるらしい。
段々指も慣れ、音を正確に出せるようになった時、急に馬車が止まった。

「あー…こりゃいけねぇ。お客さん、土砂崩れだ…この道は通れねぇ」

道の先を見ると、確かに落ちてきた土で崖の横にある道が塞がってしまっている。
ここが塞がってしまうと近くの街までの道が遠くなり、ただでさえ少ない食料の供給が無くなってしまう。
早速、笛の力が役に立ちそうだ。

「ちょっと待っててください!どかしてみます!」
「どかすったって…あんな土砂をどうやって…」

土をどかすなら、土の精霊であるノームを呼ぶのが最適だろう。
一度深呼吸をして集中を高め、旋律通りに笛を吹く。

大地から込み上げるような力強い旋律が辺りに響き渡る。
周囲の地面が揺れ、辺りが淡く輝いたかと思うと、地面の一部が盛り上がりそこから何かが飛び出してきた。
身体の一部か土と一体化したような姿の女性…彼女がノームなのだろうか?

「あの、君がノーム?」
「…あなたから呼んだのに…?」

呼び出されたノームは無表情のまま首を傾げる。
これは怒っているのか、呆れているのか、はたまたただ疑問に思ってるだけなのか、表情からは読み取れない。

「えーと、とりあえずあそこの土砂を退かして欲しいんだけど…」
「…いいよ…」

ノームは土砂の前まで歩み寄り、地面にそっと手を置いた。
次の瞬間、大地がうなりを上げて傾き、積もっていた土砂が坂を滑るように崖下へと流れ落ちていく。
やがて揺れが収まると、地面は元の形に戻り、道は何事もなかったかのように開けていた。

「…すごい…!」

初めて見る魔法、初めて見る精霊の力。
この力さえあれば村を救うことができる、そう確信するのに十分な光景だった。

「すごいや!ありがとうノーム!」
「………」

ノームは未だ無表情のまま、こちらを見つめている。
どういった感情なのだろうか…

「えっと…もう帰っていいよ…?」
「…帰る…?」

ノームが首を傾げたのを見て、説明書の記述を思い出した。
確か、精霊を元の場所に返すためには旋律を逆向きにして演奏しなければいけないのだ。

「あ、ごめん!僕が帰さなきゃダメなんだ!ちょっと待っててね…」
「あ…」

ノームは何かを言いたそうだ…どこか寂しそうにも見える…ような気がする。

「また呼ぶから、その時はよろしくね!」
「!…うん…」

帰還の旋律を奏でると、召喚した時と同じように地響きと共にノームはいなくなった。
まだ心臓がバクバクと動いている…本当に、僕も魔法が使えるようになったんだ…!

…………………

村へ戻ると、僕を送り出してくれたみんなが一斉に集まってきた。

「お前!ずいぶん早いじゃないか!」
「もう魔法が使えるようになったのか!?」
「バカ!そんなわけ無いだろ!きっと打ちのめされて帰ってきたんだよ…」

どうやら、ほとんどの人は僕が魔法使いになるのを諦めて戻ってきたと思っているらしい。
僕は高らかに宣言する。

「大丈夫!僕は魔法を使えるようになったんだ!この村の問題は全部僕が解決するよ!」

周囲がざわつき、不安そうな声が響いてくる。
たった1週間かそこらで魔法を使えるようになったと言われても信じられないのは仕方がないことだ。
しばらくすると、群衆の中のひとりが手を挙げた。

「じゃあ頼みたいことがあるんだけどよ…最近井戸の水が少なくなってるんだ!このままじゃ井戸が枯れちまう!」

男の言っている井戸とは、この村の中央にある古井戸の事だろう。
かなり古い物だが、村のみんなが共有して使っているため枯れてしまえば大変なことになってしまう。

「任せて!僕が何とかする!」

…………………

それから、忙しい日々が始まった。
井戸の再生からはじまり、土地の開墾や森の再生など、色んなことを解決するため奔走した。
その中で、精霊一人一人の性格や扱い方も段々と分かってきた。

ノームは無口だが、仕事をきっちりこなしてくれる頼りがいのある奴だ。
畑を耕したり種を植えたり…精霊で1番働いているのは彼女かもしれない。
前に一度、いつも呼び出して迷惑じゃないか聞いたことがあるが、彼女はいつも通りの無表情で
「全然…もっと呼んでもいいよ…」
と言ってくれた。
最近は腕に抱きついたりしてくるので、かなり親密になってきたと思う。
未だ彼女の表情から読み取れることは少ないが。

水の精霊であるウンディーネは、清楚で礼儀正しいお嬢様みたいな性格をしている。
初めて呼び出した時も、恭しくお辞儀をして
「初めまして、ご主人様。あなた様へ絶対の忠誠を誓います」
と挨拶してきた時は面食らった物だ。
そんな彼女とも親密になり、気軽に話ができるようになったが、彼女がいる時に他の女性と話していると冷たい視線を感じるような気がする。
そんなに僕らの会話が気になるのだろうか?

風の精霊シルフは1番の問題児だ。
彼女には風車を回したり、風が強い日は風を防いでもらうなどの役割をしてもらっているが、呼び出すと毎回ひとつはイタズラをしていく。
食べ物をつまみ食いするのはまだいい方で、酷い時は僕を屋根の上に放り投げたりもする。
その上、彼女はひとしきり遊ぶまで帰ろうとしない。

「せっかく呼ばれたのにこのまま帰りたくない!遊んで!」

と言われ、毎回遊びに付き合わされている。

火の精イグニスはとにかく距離が近い。
暖を取ったり、村に近づく獣を追い払うなどの仕事を任せているが、何かにつけてボディタッチが多い。
呼び出すと必ず肩を組み、片時も離れようとせず、帰そうとしても

「おいおい俺達の仲だろ!?もっと話そうぜ!」

と、聞く耳を持たず、結局数十分は暖かい身体をぴったりとくっつけながら話を続けている。
かなりのおしゃべり好きらしい。

そんなふうに、僕は精霊達の力を借りて順調に村を立て直していった──

…………………

「なぁ、俺達結構長くなっただろ?そろそろ本格的に契約するってのはどうかな…」

ある日、暖炉に火を灯すため呼んだイグニスが、やけに顔を赤らめてそう言った。

「契約?力を借りるのとは違うの?」
「今力を貸してるのはお試しみたいなもんでさ…契約すればもっとすごい力を使えるんだぜ!」
「へぇ…でも、今のままでもそんなに困らないし…」
「で、でもほら!契約したら一々呼ばなくてもずっと一緒にいられるんだぞ!」
「えっ、それは…」
「…なんだよ、何かダメなことでもあるのかよ?」
「い、いや…何も…」

もし契約してずっと傍にいられたら、他の精霊を呼び出すことができなくなってしまう。
どうにか避けなければ…

「いやぁ、もう少しお互いのことを知ってからでもいいんじゃないかな!」
「そうか…?でも…俺だって早く身を固めたいんだぜ…?」

なんだかいつもよりしおらしい気がするな…
それに身を固めるっていうのもなんか変な言い方だ。
とりあえず、その場は何とか言いくるめられたが、日に日に他の精霊からも契約を持ちかけられることが多くなっていった。

…………………

「えっと…ノーム?」
「…………」

畑を耕すのを手伝ってくれた後、ノームはずっと腕にしがみついている。
相変わらず無表情で思惑を読み取ることは難しいが、何かを不満に思っていることが感じられる。

「あの…?」
「…契約…」
「…契約したいってこと?」

ノームはゆっくりと頷き、さらに腕を強く抱きしめる。
彼女の豊満な胸に腕が挟まり、柔らかな感覚に包まれて落ち着かない。

「いや…まだ…もう少し待って欲しいな…村の復興にはまだ時間がかかるから…」
「…まだ…?」
「そう!村が大きくなったら契約してあげるから!ね!」
「…わかった…」

ノームは不満気ながらも納得はしてくれたようだ。

「ところで…そろそろ離れて…」
「やだ」

…………………

「契約して!お願いお願いお願いお願い!!!!」
「落ちっ…ぶはぁっ!落ち着いて!!ねぇ!!」

木の葉が舞い、顔面に強烈な風が吹きつけてきて前が見えない。
駄々をこね初めて何分経っただろうか?至近距離で強風を浴び続けた自分にとってはあまりにも長い時間だ。

「なぁんで!なんで契約しないの!!」
「だからっ…!もう少し村が落ち着いたら…」
「やだやだやだやだ!!今!!今すぐがいいの!!」

シルフの駄々は留まることを知らない。
まずい、このままだと台風が発生して村ごと吹き飛ばしてしまいそうだ。
何とか落ち着かせなければ…

「ほ、ほら!村の仕事が多いと遊べる時間も少なくなっちゃうからさ!全部終わって忙しくなくなったら契約しよう!」
「…それっていつになるの…?」
「あと…もう…ちょっと!そう!あとほんのちょっと手伝ってくれれば落ち着くはずだから!そしたら追いかけっこでも隠れんぼでもなんでもできるよ!」
「………わかった」

ようやく納得してくれたのか、風が止み、シルフはムスッとした顔を浮かべながら地上へ降りてきた。
今回は何とかなったが…またしばらくしたら大暴れしそうだ。
次が来るまでにどうにか対策を整えておかないと…

…………………

「ご主人様、契約のことなのですが…」
「あ、あぁ…そのことなんだけど…」
「村の復興までまだ時間がかかりそうですし…本格的な契約はもう少し先にしましょうか」
「えっ…いいの…!?」

思ってもなかった言葉だ。
てっきり他の精霊達と同じように契約を迫ってくるかと思ったのに…

「えぇ、今すべきことは村の安定化…それが終わるまでは忙しくなりますし、2人きりの時間を確保するためにもここは我慢いたしますわ」
「そっか…!ありがとう!」

良かった…ウンディーネは話が通じそうだ。

「ところで…先程水を通したこの畑用の側溝、随分長いですが…これは、村の方々が作ったのですか?」
「え…あ、うん…そうだよ…?」
「前回来た時には無かったような気がするのですが…随分早く作られたのですね?」
「あ、あぁ!みんなで頑張って作ったんだ!」
「まぁ!皆さん頑張ったんですのね!では、あそこにあったはずの林は…?前に来た時はあったはず…」
「そ、それも頑張って開拓したんだよ!みんな手伝ってくれたから早く終わったんだ!」
「あら…それはそれは…皆様頑張り屋さんなのですね…」

あ、危ない…この側溝はノームが、林はシルフが切り開いた物だ。
どうやらウンディーネは早すぎる村の発展に不信感を抱いているらしい。
疑問を投げかけていたウンディーネの目は全く笑っていなかった…1番警戒すべきなのは彼女かもしれない。

…………………

村の発展は順調だ。
順調すぎて昔の姿を忘れてしまいそうになるほどに。
以前は荒れ果て、風が吹く度乾いた音と砂が舞っていたこの村は、今や色とりどりの自然に囲まれ、生き生きと輝いている。
畑にはみずみずしい緑が広がり、大きく葉を広げた野菜が豊かな恵みを象徴している。
川の方へ目をやると、澄み切った清流がきらめきながら流れ、その中に川魚が悠々と泳いでいる。
家々の変化が最も顕著だろう。
朽ちかけていた木造の壁はレンガに置き換わり、屋根には新しい瓦が並んでいる。
道を歩けば焼きたてのパンの香りが鼻をくすぐり、子供達の笑い声が絶えず村の中に響き渡る。
昔、僕が夢見たような…いや、夢見たよりももっと美しい景色が広がっていた。

笛を貰ってから数ヶ月程度、正直ここまでやれるとは思っていなかった。
しかし…それゆえ悩ましいのが精霊達との契約だ。
ここまで村が発展してしまえばもう先延ばしにすることは難しい。
次に呼べば間違いなく契約を迫ってくるだろう。
だが、正直もう彼女達を呼ぶ必要も薄くなってきているのが現状だ。
災害に怯える心配は無いし、インフラも整ってもう直すようなところも無い。
いっそ、もう二度と彼女達を呼ばなければいいのではないだろうか?

…自分が最低なことを考えているのは分かっている。
今まで彼女達の力を借り続けてきた。
彼女達はこの村を救ってくれた恩人だ。
その恩を仇で返そうとしている。
しかし、もし災害などがあった時、精霊一体の力では対応できないかもしれない。
村の未来とモラル…どちらか選ぶのなら当然村の未来だ。
だから…だから僕は…

…………………

「ご主人様…ご主人様…?」
「ん…あぁ…」

ウンディーネの心配そうな声で我に返る。
確か、新しい河川を通すためにウンディーネを呼んだんだっけ…

「ごめんごめん、ぼーっとしてた…もう終わった?」
「えぇ…ご主人様、なんだかお疲れのようですね…」
「そ、そうかな?」
「あまり無理をなさらず…どうかご自愛ください」

そう言うと、ウンディーネは僕の頬にキスをした。

「えっ…」
「私の魔力を少々注ぎ込みました…これで疲れも取れるかと」

そういえば、最近よく眠れなくて疲れていたが、今は頭がスッキリと冴えている。
まるで身体の悪い部分が浄化されたみたいだ。

「わ、本当に疲れが取れてる…ありがとうウンディーネ!」
「ふふっ、いえいえ。また何時でも呼んでくださいね?」

そう言ったウンディーネの顔は何かを秘めたような微笑を浮かべたが、その時の僕はまだ彼女の思惑に気づくことはなかった。

…………………

ウンディーネが帰った後、今度は溜まっていた洗濯物を乾かすためにイグニスを呼ぶことにした。

炎のように激しく揺れるような旋律を奏でる、この笛にももう慣れたもので、最近では暇さえあれば色んな曲を吹くようになった。

「おう!呼んだか?」
「イグニス、ちょっとこの洗濯物乾かして欲しいんだけど…」
「任せとけって!すぐに終わらせて…ん…?」

普段通り快く手を貸そうとしたイグニスだったが、僕の顔を見て顔を顰めた。

「どうしたの?僕の顔になにか付いてる?」
「…お前…他の女の臭いがするな…」
「えっ…」

まずい!バレた!?なんで!?

「そ、そんなはずないよ…あぁ、もしかしたら隣のおばさんと話した時の臭いとか…」
「違う…お前から漂ってくるのは魔力の臭いだ…しかもこれは俺と同じ精霊…ウンディーネか?」

混乱する頭の中、先程ウンディーネと会った時の記憶を思い出す。
別れ際のキス…あの時か!

「ま、待って!これには理由が…」
「おいおい…理由…?ふざけんなよ…どんな理由があったら浮気なんてするんだよ…!」
「う、浮気って…僕らそんな関係じゃないでしょ…?」

イグニスの表情が変わる。
わかりやすい怒りの表情から一転、底冷えするような真顔へと変わった。
いつも炎のように明るいイグニスからは考えられないような顔に、否が応でも何かまずいことを言ってしまったのだと気付かされた。

「い、イグニス…」
「そうかよ…あぁわかったよ、今までお前の意志を尊重して耐えてやったのに…そんな事言うならもう遠慮する必要もねぇよなぁ?」

イグニスが指を鳴らすと、周囲に炎が広がり僕を包み込む。
身につけていた衣服が燃え尽き、生まれたままの姿にされてしまった。
そのまま燃やし殺されるかと思ったが、不思議なことにイグニスの炎は依然として体にまとわりついているが、肌を焼くことは無い。
ただ、暖炉や日光のような温かさが包み込んでいる。

「な、何を…?」
「契約だよ、契約♥これからお前を犯して精液を絞り出す、それで契約成立だからな♥」
「えっ…!?や、やだっ!やめてっ…」
「暴れんなよ♥そら、挿れるぞ…♥」

イグニスが腰を落とすと、ぺニスが凄まじい熱さに包まれた。
ドロドロに蕩けた柔肉が四方八方からぺニスを揉みくちゃにし、止めどない快感が襲ってくる。

「ひぃっ…♥あ…♥が…♥」

あまりの快楽に頭の中に閃光が走り、声にならない喘ぎが喉から押し出される。

「あっはぁ…♥きたァ…♥これを待ってたんだよ…♥」
「あ…やめ…動かなっ…」
「あーあー聞こえない聞こえない♥おらっ♥」

ばちゅんっ、ばちゅんっ
イグニスが腰を振ると、肉がぶつかり合う音が響き、粘ついた水音と共にぺニスが激しく掻き回される。
カリ首、裏筋、亀頭まで、ぺニスの全体が火照った腟襞で舐め回され、あっという間に限界へと追い詰められる。

「ま、待って…♥出るっ♥出ちゃうから♥抜いてぇ♥」
「ははっ♥ばぁか♥中に出さなきゃ意味無ぇんだよ♥さっさと気持ちよく中出ししちまえ♥」

イグニスの動きが細かく追い詰めるような物になり、腟奥の子宮口も精液を強請るように吸い付いてきた。
体の奥から快感が吹き上がり、抑えきれなくなる。

「いっ…ぐ…♥」

びゅるるるっ♥びゅ〜〜っ♥

彼女の腰使いに導かれるまま、一番奥へと叩きつけるように射精してしまった。
体中の力が抜き取られ、魂が引き剥がされるような激しい射精。
だというのに脱力感は一切なく、未だに体の奥の燃えるような火照りが治まらない。

「イグニス…♥」
「へへっ…♥トロットロに蕩けやがって…♥このままずっと犯したいが…その前に」

淫らな笑みを浮かべていたイグニスの顔がスッと真顔になる。

「浮気相手をここに連れて来い。今、すぐに」
「…はい…」

…………………

どちゅんっ♥どちゅっ♥どちゅっ♥

「もうほんっとに信じられない!隠れて他の精霊と浮気ってどういうことよ!しかも3人と!」
「ひぃっ♥許してぇ♥」

僕の体の上でシルフが激しく跳ね、その度にぺニスに強い快感が走る。
シルフの幼い秘部はみっちりと狭く、至る所に襞が生えぺニスをなぞり、くすぐってくる。
腰が動く度に腟が蠢き、常に予測不可能な刺激を与えてくるため、快感に慣れることもできず悶えることしかできない。

イグニスに命令されて呼び出した精霊達は浮気されていた事を知ると怒り出し、すぐさま契約を結ばされることになった。
順番待ちをしているノームとウンディーネは僕を挟んで添い寝し、唇や胸板、頬へと口付けを落としてくる。

「ちゅっ♥ちゅう♥…初めては私が奪いたかったのに…」
「ん…♥ぢゅうぅ…♥そうですよ…嘘をつかれていたなんて悲しいです…」
「へっ、よく言うよ…一番先に気がついてカマかけたクセに…」

イグニスは先に契約を結んだためか、膝枕をしながら僕を貪る3人を眺めている。

「ご、ごめっ♥わざとじゃ♥知らなくてぇ♥」
「知らなかったで済むわけ無いでしょ!そういうことするなら予め言っておいてくれればいいのに…ほら!早いとこ出しちゃえ♥」
「うぐうぅっ…♥」

びゅるるる〜〜っ……♥ ♥

シルフの激しい腰使いに耐えられるはずもなく、狭くうねった腟の中へ大量に射精してしまった。
入り口からは精液が溢れ、シルフは恍惚とした表情を浮かべている。

「あははっ…♥最高…♥えっちってこんなに気持ちよかったんだ…♥」
「どいて…次は私…」

休む暇もなく、シルフが腰を上げるとすぐさまノームが覆いかぶさり腰を落とす。

「あうぅっ…♥」
「私は動くの得意じゃないから…こうやってぎゅ〜って抱きしめるね…♥」

ノームの腟は柔らかく、むっちりと肉厚でぺニスをギュッと締め付けてくる。
シルフの強い締め付けから一転して、優しく揉みほぐすように締め付けてくるため、思わず腰の力が抜けてしまう。

「ぎゅっ♥ぎゅっ♥ぎゅ〜っ…♥きもちいい…?」
「うぅ…♥」

ノームに抱きしめられ、彼女の柔らかな体が密着してくる。
身体中どこもかしこも柔らかい。
ゆるゆるとした緩慢な腰使いも、丹念にぺニスを押し潰し、絶え間なく快感を与えてくる。

「ちゅっ♥ちゅうっ…♥出して…♥私の奥に、種付けして…♥」
「んむううぅっ…♥」

ぶびゅ〜〜〜っ♥ ♥ ♥びゅくっ…♥

柔らかな唇で啄むようにキスされながら、またしても最奥へ射精してしまった。
立て続けに三度も射精したというのに、ぺニスは全く衰えず、今も尚硬さを保っている。
いや、むしろ精霊達に中出しする度、どんどんと興奮が高まっていくような気さえしてくる。

「ん…♥いっぱい…種付け…嬉しい…♥」
「さぁ、次は私ですわ♥共に永遠の愛を契りましょう♥」
「ちょ、ちょっと待って…!少し休憩を…」
「あら…ですがご主人様のおちんちんはまだ元気ですよ?こんなものを前におあずけなんて…絶対できません♥」

ぶじゅっ…♥ ♥

有無を言わさず、ノームに変わって僕に跨ったウンディーネが腰を落とし、粘着質な水音と共にぺニスが彼女の体内へと沈んだ。
半透明な彼女の体の中で、ぺニスがヒクヒクと震えている。
ひんやりとしたスライムに飲み込まれた感覚が襲ってくる。

「あぁあ…♥」
「どうでしょう、私の中は♥他の方達と全然違うでしょう?」

ウンディーネが味わうようにゆっくりと腰を揺らすと、ぐにゅぐにゅと内部が動き、ドロリとした粘液が渦を巻くように絡みつく。

「粘液おまんこ、気に入っていただけたようですね♥顔が蕩けていますよ♥」
「あ、あぁ…♥すごい…♥中がうねってる…♥」
「ふふっ♥では、こういうのはどうでしょうか…♥」

ウンディーネの動きが代わり、内部の粘液がゼリーのような固さを持ちはじめた。
先程までのねっとりとした快感と違い、プルプルとしたゼリーの襞が容赦なくぺニスを擦り上げ、激しい快感を与えてくる。

「あうぅっ♥」
「いつでも出していいんですよ…♥ほら、動きを激しくしますよ♥」

激しく腰を振り乱し、容赦ないピストン運動によってぺニスがもみくちゃにされてしまう。
ウンディーネのスライムの体は動く度に形を変え、いつも清純な彼女とは正反対に貪欲に精を強請ってくる。
当然、耐えられるはずもなかった。

「あっ♥出るっ♥また出るっ♥」
「出して♥私の中に♥あなたの精子、注ぎ込んでください♥」

びゅくっ……♥♥びゅるるるっ…♥ ♥

追い詰めるような細かい動きの末、ウンディーネの中へと射精してしまった。
体の中でぺニスが痙攣しながら精を吐き出している様が見えてしまい、羞恥と背徳感を感じてしまう。

「あぁ…♥ご主人様の種がたっぷりと…♥満たされていきますわ…♥」

ウンディーネは射精が収まるまでしつこく腰を動かしていたが、何も出ないと分かると名残惜しそうにしながら腰を浮かせ、ぺニスを引き抜いた。

「はぁ…♥はぁ…♥やっと終わった…♥」

何度も絞られ、激しい快感に晒され、もう立つ力さえ残っていない。

「おい、何終わった気になってんだ?終わりなわけねぇだろ」

ナメクジのように全身の力を緩ませてベッドに沈んでいると、そうイグニスが耳元で囁やいた。

「え…?でも…もう1人1回したでしょ…?」
「それは契約のためだから…ここからは番としての子作りエッチだよ…♥」
「たった1回なんて足りないに決まってるでしょ♥」
「夫婦の契りを結んだのですから…夫としてのお役目を果たさなければいけませんよ♥」
「つーわけだ!ほら、ぐでっとしてないで続きはじめるぞ♥」

そう言うと4人は倒れ込んだ僕の元へにじり寄って来る。
その目は淫らに爛々と輝き、これから行われる行為の過酷さを物語っていた。

「ま、待って…!もう限界…!」
「4人も嫁を作ったくせに、今更甘えたこと言ってんじゃないわよ!」
「大丈夫です♥おちんちんが疲れないよう、手の空いている3人は力を注ぎ込みますから♥」
「これからがキツイぞぉ♥なんせ4人の嫁を全員満足させないといけないからな♥」
「みんなで仲良く分け合うから…頑張ってね…♥」

4人がぺニスに口付けをし、舐め、啜り、吸い付き、亀頭にも、竿にも、金玉にも、太ももの内側にまで満遍なく舌と唇が這い回る。
口付けの度に、体の中で逃げ場の無い力が渦巻き、体に馴染んでいくのを感じる。

愛おしそうにぺニスを味わう4人を見ながら、もう二度とまともな生活には戻れないことを静かに理解した

…………………

明緑魔界に存在する、とある街の中心には笛を持った男の像が建てられている。
御伽噺によると、かつて風前の灯だった村を精霊の力で救い、街を作り上げた英雄らしい。
彼についての逸話はいくつもあるが、最もよく知られている話がある。
彼はかなりの恐妻家だったらしい。

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精霊呼びの笛
精霊魔法を補助するために使用する魔法の笛。
側面には火を意味するルビー、水を意味するアクアマリン、土を意味するトルマリン、風を意味するアメジストがはめ込まれている。
笛を特定のメロディーで吹くことにより、遠距離にいる精霊へ交信を行い、契約に合意した精霊を召喚する事ができる。
本来の精霊術師は1体の精霊と契約するのが普通であるが、このアイテムは精霊との契約や元素の管理、精霊の呼び出しや命令などを笛に刻まれた魔法式が自動的に行うため、一般人であっても四大元素の精霊すべてと同時に契約することもできる。
ただし、あくまで簡易契約なため、精霊本来の力を発揮することが出来ない。
さらに、魔法を使う際にもいちいち笛を演奏して精霊を呼び出す必要があるため、戦闘では使い勝手が悪い。
本格的な精霊術師を目指すならば、これを使うよりも直接精霊と契約した方が使い勝手がいいだろう。

そもそも、複数の精霊と契約を結ぶのは浮気と捉えられてもおかしくなく、もしもその事が精霊達にバレてしまえば手痛いしっぺ返しを喰らうことになる。
あくまで一般人が精霊の力を借りるためのサポートアイテムである。
26/01/12 21:46更新 / KURO
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