バッカスの杯
歪む視界と激しい酩酊に思わず足を止め、しゃがみ込む。
周囲から陽気な歌声や楽しそうな笑い声も、今の自分にとっては騒がしいだけだった。
「うぅ…散々飲ませやがって…」
壁に手をつきながらヨタヨタと、ゆっくりと歩く。一歩進むごとに胃は収縮を繰り返し今にも内容物がひっくり返りそうだ。
これ以上、少しでも動けば倒れてしまう。
そう思い、ひんやりとした土の上に腰を下ろした。
ゆっくりと、冷たい夜の空気を肺に取り込み、吐き出す。
ふと、先ほどまで騒がしかった周囲がしんと静まり返っていることに気づく。確かに人通りが少ない裏路地へ入ったとはいえ、大通りからそこまで離れてはいないはず、だというのに周囲はまるで真夜中のように静まり返り、霧が深く立ち込めている。
「もし…そこのお方、大丈夫ですか?」
「んえ?」
頭上から声を掛けられ、振り向くと月光に照らされた女性が立っていた。
頭に生えた大きな角、獣のような白い尻尾や脚…確か、白澤という魔物だったか…
「店前で座り込んでいたので何事かと思い声をかけたのですが…調子が悪そうですね?」
「あぁ、すみません…少し飲みすぎてしまって…今どきます…」
慌てて立ち上がるが、いまだに酒の後遺症は抜けず、思わず転びそうになる。
「あらあら、無理をなさらず…良ければ店で休んで行ってくださいな」
「い、いえ、迷惑をかけるわけには…」
「店前で倒れられた方が迷惑ですよ!ささ、こちらへ…」
魔物に腕を引かれ、古びた店の中へ入る。
ふと見上げた看板には、木の板に金の文字で店名と、おそらく謳い文句のようなものがが書かれていた。
アルカナ秘宝庫
あなたの願い、叶えます
…………………
「いやぁすみません…助かりました…」
コップに注がれた水をゆっくりと飲みながら礼を言うと、魔物はにっこりとほほえんで頭を下げた。
今更ながら、冴えた頭で店内を見渡す。
ネックレスや指輪、腕輪などの装飾品が並んでいるのを見ると、ここはアクセサリー屋だろうか?
しかし、奥の棚には彫像や水晶、みるからに怪しい本なども置いてある。
「ウチの商品、気になりますか?」
「あ、はい…ここは…骨董品店ですか?」
「うーんまぁ当たらずとも遠からず…ここはですね、願いを叶える店なんです」
店主はこともなげに、にこりと笑いながらそう言った。
「願い…?」
「平たく言ってしまえば、マジックアイテムを取り扱っています。お客様のお話を聞いて、その人の願いを叶えられるような商品をご提案するんです」
「へぇ…」
「良ければ…ここに来たのも何かの縁、少しあなたのお話を聞かせてくれませんか?」
「え…?」
「かなりお酒を飲まれていたようですし、なにかお悩みがあるのでは?」
ゆったりと落ち着きのある優しい声。
先ほどあったばかりの人に悩み相談をするなんておかしな話だ。
しかし、彼女には旧知の友人のような、そんな不思議な親しみやすさが漂っていた。
「…自分は最近、この街の衛兵として働き始めたんです。この地域は平和ですし、仕事も順調で市民の人との関係も、段々築けていると思います。ただ…俺の上司になった人がひどくて…」
…………………
「おい新人!仕事おわったんだろ?」
仕事が終わると、今日も先輩が話しかけてきた。
彼女は衛兵長であり、人間の女性の身でありながら魔物や男達に負けることなく鍛え上げられたたたき上げの女傑だ。
この街では、彼女に勝てる男はいないだろう。
普段は頼りがいがあり、面倒見もいい彼女だが、一点だけ欠点がある。
「今日も飲みに行くぞ!付き合え!」
「またですか…!?一昨日も行ったじゃないですか!」
「昨日は行ってないだろ!つべこべ言うな!上司命令だぞ!」
彼女の酒好きだ。
毎晩のように酒場へ行っては、樽を空にする勢いで酒を飲む。
しかもそれほどの酒を飲んでも、次の日の朝礼には平気な顔をして顔を出すウワバミである。
それだけならいいが、問題は彼女が、どこが気に入ったのか毎日のように俺を飲みに誘ってくることだ。
「う〜ん…もう飲めないです…」
「おいおい!まだ少ししか飲んでないだろ?遠慮せず飲め飲め!おーい!酒追加で!」
特に酒に弱い方ではないが、ウワバミの彼女は俺のペースなんて考えず酒を注ぎ、飲ませてくる。
夜が更ける頃にはすっかり酔い潰れ、ふらふらになりながら兵舎へと帰る。
このせいで朝番に遅れそうになったことも何度もある。
彼女と親しげにしているのを見てうらやましいという奴もいるが、できれば変わってほしい物だ。
そして今日も、彼女に散々酔い潰され、何とか帰ろうとしたところ、この店に助けられたというわけだ…
…………………
「なるほど…それはお辛いですね…」
「彼女の事が嫌いってわけじゃないんですが…もう少しあの酒癖をどうにかできれば…もしくは俺が彼女ぐらい酒に強くなれたらなぁ…と」
「えぇ、えぇ!でしたらちょうどいい物があります!」
そういうと店主は近くに合った棚から二つの杯を取り出した。
同じブドウの蔓が巻きつき、ブドウが実っている様が掘られた対の杯で、片方は煌びやかな金色に塗られ、もう片方は厳かな銀色に染められていた。
並べてみると、蔓の細工が二つを結び付けているようにも見える。
「これはバッカスの杯と呼ばれる品です」
店主は金と銀の杯をそっと並べ、やわらかく微笑んだ。
「この杯には、酒の神であるバッカスの加護が宿っています。
まずこちらの銀の杯──酒の毒を吸い上げ、澄ませる力を持っています。
どれほど強い酒でも、この杯を通せばジュースのような優しい飲み物になりますよ
そしてこちらは金の杯。
こちらは逆に飲む者の酩酊を増幅させる力があるのです。
例えどんな酒豪であれど、この杯を使えばたちどころに酔い潰れるでしょうね」
目の前に置かれた杯を眺める。
魔法に関して知識はないが、胸の奥が微かにざわつく。
先ほどまで酒でひどい目に合っていたというのに、また酒を飲みたくなってくるような、そんな不思議な感覚だった。
「よければこちら、差し上げますよ」
「えっ!?でも、これ売り物じゃ…」
「かまいませんよ。ここにある品の多くは、夫の趣味で集めたものなんです。
夫が集めた品々は、どうも持ち主を選ぶようでして…
使わずにただ飾っておくよりも、必要な方に使ってもらった方が、この子たちにとっても本望でしょうから」
店主は杯をそっと撫でる。
その仕草はまるで子供に触れているようだった。
「…あらいけない、お話していたらもうこんな時間。さあ、この子たちは包んでおきますから、明日にでも使ってあげてくださいな」
渡された木箱は、不思議と手にしっくりと馴染んだ。
例え道楽だとしてもこれはあまりにも高価で、基調に見える。
本当に受け取っていいのだろうか、と胸の内で躊躇いが生まれる。
しかし店主はそんな疑問をよそに、最初に出会った時と同じような笑みを浮かべて言った。
「どうか、あなたの行く末に幸福がありますように」
…………………
「先輩、今日よかったら飲みに行きませんか?」
次の日、さっそく昨日貰ったグラスを持ち、彼女を飲みへ誘う。
俺の方から誘われるとは思っていなかったのか、目を丸くした後、嬉しそうに笑った。
「お、おう!お前の方から誘ってくるなんて珍しいじゃんか!」
「実は良いグラスが手に入ったので…ぜひ先輩と飲みたいなと思って」
「おぉ!いいな!じゃあ早速行こうぜ!」
思った通り、彼女はすぐに食いついた。
眼を輝かせて喜ぶ彼女を見ていると、これで酒癖さえ無ければなぁ…と想いを馳せてしまう。
酒場へと移動し、とりあえずワインを注文する。
「先輩はこっち使ってください」
「へぇ〜…いいグラスだな…」
「あ、来たみたいですね。注ぎますよ」
運ばれてきたワインの栓を抜き、彼女の前に置いた金の杯へと慎重に注いだ。
ただの安ワインのはずなのに、グラスに注がれたワインは液面がかすかな金色を帯びて輝いていた。
芳醇な香りがふわりと立ち上り、テーブルの周りの空気そのものが一瞬変わったように見える。
「…ん?」
彼女がわずかに眉を上げる。
感づかれていないだろうか…本当に効くのだろうか…不安と緊張で思わず鼓動が早くなる。
「これ…いつもと同じワインだよな…なんかいつもより美味そうだな…」
杯を手に取り、ゆっくりと飲み干す。
ワインを全て飲むと、驚きと喜びが混ざったような笑みを浮かべてため息をついた。
「かぁ〜っ!!うめぇ〜!!やっぱいいグラス使うと酒が美味くなるもんだなぁ!」
どうやら問題はないようだ。
彼女の声はいつもより大きく、すでに頬に赤みが差しているため、どうやら効果はあるらしい。
「ほら!お前も飲めよ!」
「あっ…ありがとうございます…」
彼女が銀の杯へワインを注ぐと、液面がさらりと揺れ、金の杯とは違う澄んだ光を放つ。
立ち上る香りもどこかやわらかく、ほのかな気品が漂ってくる。
ゆっくりとワインを飲み始めると、芳醇な味わいと香りが舌の上でほどけていく。
普段なら微かに感じる酒臭さやえぐみは影も形もなく、代わりに清らかな甘みだけが広がった。
──美味い。間違いなく、今まで飲んだワインの中で一番だ。
この杯には酒の毒を消すだけじゃなく、味わいまで磨き上げる力があるらしい。
「美味しい…」
「な!だろ!いやぁ、今日は酒が進みそうだ!おーい!ジャンジャン酒持ってきてくれ!」
…………………
「うへぇ…へへへ…お〜い、飲んでるかぁ?」
「ちょっ…先輩近いですって…!」
数時間後
そこには完全に出来上がっている先輩がいた。
普段はどれだけ飲んでも酔っている素振りすら見せない彼女が、今は目がとろんとし、頬を真っ赤に染めてべろんべろんに酔っぱらっている。
反対に俺は、彼女と同じ量を飲んでいるというのに全く酔わない。
どうやら効果は抜群の様だ。
「んふふ…ほらぁ、もっと近くに来いよぉ…!」
「ダメですって!ほら周りからも見られてますから!」
「そんなこと言うなよぉ!後輩の癖に生意気言うなぁ!」
それにしても、酔うとこんな風になるなんて思ってもみなかった。
彼女は俺の肩に腕を回し、頬が触れそうな距離で覗き込んでくる。
柔らかな胸や太ももも頻繁に体に当たり、火照った体温が生々しく伝わってくる。
正直、酔っていないのにこっちがのぼせてしまいそうだ。
「ほら、先輩!もう行きましょう!もう十分でしょ!」
「やぁん…まだ…」
「すみません!お会計で!」
ふらつく彼女に肩を貸し、なんとか酒場を出て彼女が下宿している宿屋へと急ぐ。
その間も彼女はべったりと腕に絡みつき、甘ったるい息を吐きながら密着してくる。
自分より先に酔い潰れてくれれば楽になるかと思ってたけど、これじゃあ大変さはそんなに変わらないな…
…………………
「お帰りなさい…あら、お持ち帰りかしら?」
宿屋の女将のキキーモラさんがくすりと笑いながら声を掛けてくる。
「勘弁してくださいよ…先輩を置いたらすぐ帰りますって」
「彼女がこんなになるなんて初めて見たわ。あなた達、どれだけ飲んだの?」
「ええと…まぁ、今日は結構…あ、すみません、これ少し預かってもらえませんか?帰るときに受け取るので…」
「はいはい、預かっておくわ」
先輩に張り付かれたまま箱を渡すと、女将はちらりと中身を見て、眉をひそめた
「あら…これ、もしかして…ふふ、なるほどねぇ…」
先ほどまでの朗らかな表情が、どこか淫猥な雰囲気のある微笑へと変わる。
「ねぇ、その子をどうするつもり?」
「どうするって…部屋まで送って帰えるだけですよ」
「そう…まぁ、ただの雑談なんだけどね…
この宿、部屋ごとに防音魔法が掛かってるの」
「はぁ…?」
だから、どれだけ騒いでも、どんな声を出しても、外には漏れないってコト♥」
「いや、だから俺は──」
「ふふっ。じゃあごゆっくり♥」
…………………
「先輩、着きましたよ」
「あぁ〜?なんだよぉ…なんでお前があたしの部屋にいるんだよぉ?」
「先輩が帰れそうにないから送ったんですよ!」
「あー!さてはあたしにエッチな事するつもりだろ〜♥すけべ〜♥」
「違いますって!ほら、ベッドに寝かせますよ!」
彼女を何とか引きはがし、ベッドに寝かせる。
かなり酔っているようだが、吐き気や気持ち悪さなどはないようだ。
「じゃあ俺帰りますから…ちゃんと寝てくださいよ?」
「おーい!帰るなよぉ!ほらぁ、こんなに無防備な女がいるんだぞぉ!」
「止めてくださいってば!ちょっ、離してくださいよ!」
ベッドから離れようとするが、彼女の手が腕を掴み、離そうとしない。
彼女が酒に強いとはいえ…男に対してここまで無防備なのはいかがなものか…
普段は気丈な先輩が見せる甘えた姿に、心がぐらつくのを感じる。
いけない、落ち着かなくては…
「先輩…男に対してこういうこと軽率にしない方がいいですよ?俺以外の奴だったらどうなっていたか…」
「…………」
彼女が押し黙る。
眠くなったのか?
そう思っていると、世界が突然ひっくり返った。
彼女が上にいるのを見て、ようやく腕を引っ張られてベッドの上に引き込まれたのだと気が付いた。
「お前だけだよ…」
馬乗りになった彼女は、いつもとは違ったしおらしい声でそう言った。
「あたしがこんな姿見せるのも…飲みに誘うのもお前だけだよ…ずっとアピールしてるのに、なんで気が付かないんだよ…」
「せ、先輩…?」
彼女の声に段々と熱が籠る。
その時、窓の外から月の光が差し込んできた。
月に照らされた彼女の頭には、先ほどまでなかったはずの尻尾や角が生え、その姿はサテュロスへと変わっていた。
「あぁ…なんかもういいや…♥初めからこうすればよかった…♥」
彼女が覆いかぶさり、ワインの香りが漂う唇でキスをされる。
火傷しそうなほど熱くなった舌が口内を這いまわり、口の中でお互いの唾液が混ぜ合わされていく。
舌の表面から裏側へ、頬の内側や歯茎の裏まで丹念に舐め上げられ、理性が削られる。
「んんっ…先輩っ…!ちょっとおちついて…!」
「んれぇ…♥やぁだ♥もっと♥」
じっくりと、口内を味わうように舌が動き、いやらしい水音が部屋に響き渡る。
時折呼吸のために口が離されると、舌と下の間に粘ついた唾液の糸が紡がれ、また口の中に押し戻される。
抵抗できない。
彼女を押しのけてでも止めた方がいいとわかっているのに、キスされるたびに頭がのぼせたようにぼーっとして考えがまとまらない。
その間も、彼女の手は俺の体の上をすべるように動き、酔った人間とは思えないような巧みな動きで服をするすると脱がせてきた。
ズボンが下ろされると同時に、張り詰めた陰茎が立ち上がり、外気にさらされる。
「…わ…♥」
彼女はうっとりとペニスを眺め、熱い吐息を吹きかけてくる。
既に興奮しきった自分では、それだけで身を震わせてしまう。
「そっか…♥あたし、ずっとこれが欲しかったんだ…♥」
彼女の舌が、まるで別の生き物のようにペニスに迫る。
サテュロスになったためか、彼女の舌は長く、表面にはざらざらとした突起が無数に現れていた。
男の性器を舐め溶かし、精を啜ることに特化した、魔物の舌。
「んれぇ…♥じゅるるるるっ…♥」
「ひゃっ…!?」
先端を少し舐められただけで激しい快感が走る。
ぞりぞりと、鈴口やカリ首、裏筋まで丹念に舌で撫でられ、どろどろの唾液をまぶされる。
強い快感に身をよじろうとしても、腰をがっしりと掴まれ、それすらもできない。
「動くなよぉ…♥あぁむっ…」
舌がペニスを巻き込み、一気に奥まで飲み込まれる。
口内は引き抜くたびに強く窄まり、喉奥と口内粘膜によって激しくしごかれ、激しい快感に頭が真っ白になる。。
「うぅ…先輩…俺、もう…!」
「だぁめ…♥もっと味合わせてよ…♥」
舌の動きが変わり、飴を舐め溶かすような舌使いへと変わる。
亀頭をじっくりと味わいながら、唇の輪がカリ首をつぷ…つぷ…と往復し、口内は唾液が溜まりペニスに絡みつく。
生殺しのような動きに、思わず腰がガクガク震えてしまう。
腰が抜けそうになるほどの快感に思わず、彼女に生えた角を掴んでしまった。
「ひぅっ…!?♥」
「っ…せ、先輩…?」
彼女の体がビクンと震え、喉奥が一段と締まる。
「そ、それ…好き…♥もっと強く掴んで…♥」
角を掴んだ事で興奮したためか、動きがより激しくなり、より追い詰めるような動きへと変わる。
舌がペニスに巻き付き、ストロークはより深く、早くなり、それと同時に射精感が込み上げてきた。
「で、出るっ…!」
「いいよぉ♥らひて♥あたひのくちに♥」
彼女の角を強く掴み、腰へ押し付ける。
びゅ〜〜〜〜〜…♥びゅるるっ………♥
そして…いつもの何倍も濃い精液が喉奥へと叩きつけられた。
「んむぅっ…!」
始めは苦しそうにしていたが、しばらくするとおいしそうに喉を鳴らして精液を飲み始める。
射精の波が引き、脈動が終わった後もしばらく尿道に残った精液を吸い、ペニスを舐めまわしていたが、満足したのか名残惜しそうに口を離した。
唾液にまみれたペニスは未だなお固く勃起し、てらてらと輝いている。
「美味しかったぁ…じゃあ、次は…」
馬乗りになった彼女が腰を下ろし、愛液がべっとりと垂れた割れ目がペニスを包み込む。
「ここで…い〜っぱいもぐもぐしてやるからな♥」
「ま、待って…!それはだめ…!赤ちゃんできちゃいますから!」
「あぁ…?いいじゃん…赤ちゃん孕ませてくれよ♥」
必死に抵抗しようとするが、射精の余韻で力が入らず、簡単に抑え込まれてしまう。
腰がゆらゆらと揺れ、ゆっくりとペニスが熱い肉の中へと飲み込まれていく。
「ほら、入るぞ…お前の初めて、もらってやるからな…♥」
彼女が腰を沈めた瞬間、思わず声をあげてしまう。
「あっ!?せ、せんぱ…これやばっ…!」
「あーあ♥入っちゃったな♥」
言葉にならない声を出して体を揺らそうとするが、彼女は無慈悲にも腕を抑え、拷問のようにゆっくりと時間をかけて腰を降ろしてゆく。
「んっ…はあぁ…♥入ってくる…♥固くてあっついのがぁ…♥」
遂に、ペニスがすべて飲み込まれる。
襞の密集地帯を抜けた先は一層狭くなり、亀頭をきつく抱きしめてくる。
そして…亀頭の先に吸い付くぷっくりとしたもの…否が応でも本能でわかってしまう。
ここが、子宮だ。
ここに、精液を吐き出すんだ。
「あはぁ♥奥まで入ったぁ♥どうだ?あたしのまんこ…気持ちいいよなぁ♥」
「ぐっ…うぅ…!先輩…!ダメです、動いたら…!」
「ん〜?動くとどうなるんだ?」
彼女が悪戯っぽく笑い、それと同時に膣全体がキュッと締め付けられる。
「あぁっ…!」
ビクンっと腰が跳ね上擦った声が思わず喉から漏れる。
それを聞いた先輩は怪しく目を細める。
「ん〜?どうしたぁ?ちょっと絞められただけでそんな声出しちゃうのかぁ<♥>」
ぎゅっ、ぎゅっと断続的に締め付け、断続的にペニスを絞られる。
それだけでなく、円を描くように腰を回し、ペニス全体が膣に触れるようにかき回されてしまい、より一層膣の形状を意識させられてしまう。
「おいおい…もう限界なのかよ…これからが本番なんだぞ…♥」
ペニスが抜けそうになるまで腰が浮き…
ぐちゅんっ♥
一気に叩きつけられる。
「あがっ…!」
今までゆっくり味わってきた快感が、一気に襲ってくる。
2回、3回…さらに腰が落とされ、そのたびに間隔が短くなってゆく。
「ほら、ほらほら<♥>気持ちいいだろ♥さっさと出してあたしを孕ませろよ…♥」
腰が降られるたびに、ペニスがかき回され、ぐちゅぐちゅといやらしい水音が響き渡る。
今まで二十数年純潔を貫いてきた俺に、耐えられるはずがなかった。
「せ、先輩!俺、もうっ…♥」
「いいぞ♥出すときは一番深く入れてやるからな♥子宮に種付けしろよ♥出せ♥出せ♥出せ出せ出せ出せ…♥♥」
ぶびゅっ…♥♥びゅるるるっ…♥♥♥
重い
腰が引っこ抜けるんじゃないかと思うほどの重く長い射精
宣言通り膣の深くまで突き刺されたペニスは、子宮へと熱いキスを交わしながら子種を流し込んでゆく。
射精の途中も、断続的に膣全体が締まり、最後まで気持ちよくなれるようにペニスを揉み解された。
「あ〜…出てる出てる…♥あっついのが来てるぞぉ…♥」
「う…うぅ…」
ペニスが引き抜かれ、割れ目からは白い精液がごぽごぽとあふれ出している。
「はは♥いっぱい出しやがって…♥」
彼女は蕩けた顔で、精液と愛液がへばりついたペニスに頬擦りをすると、労うようにゆっくりと舌を這わせる。
続けて二回も出したというのに俺のペニスは未だ固さを保ったままだった。
「ふふ…まだ元気そうだなぁ♥まだまだ頑張ってもらうからな…♥」
…………………
その日はなんだかうまくいかない日だった。
小さなミスが積み重なってしまい、結果として多くの人に迷惑をかけてしまった。
皆は気にしなくていいと言っていたが、あたしの心は沈んだままだ。
人間の女である自分も、誇れるような仕事に就きたいと思って衛兵を志があったから、この地位までやってこれた。
だが…周囲にいるのはエリートの男や魔物達、時々自分が場違いな場所にいるんじゃないかという気分になる。
そんな陰鬱とした気持ちで、がぶがぶと酒を流し込んでいた。
酒に強い自負があるあたしでもさすがに飲みすぎたためか、頭がぐらぐらち揺れて気分が悪い。
「ダメですよ先輩、そんなに飲みすぎちゃ!」
声をかけられたのはそんな時だった。
「…誰だ、お前…」
「最近赴任してきた者です!一人で飲んでいたので思わず声を掛けたんですけど…さすがに飲みすぎでは…?」
「…いいじゃねぇか…ほっとけよ…」
あたしが適当にあしらおうとしても、あいつは全然譲らなかったな…挙句の果てにあたしの目の前にドンと座って
「そんなに飲むなんてきっと何か理由があるんでしょう?俺でよければ聞きますよ!」
なんて言いやがる…
あぁ…その時からだっけな…
アイツの事が好きになりだしたのは
…………………
熱い
頭がふわふわする
きもちいい
あれ…あたし何してるんだっけ…?
「先輩…いれますね…!」
「ん…おぉおっ…♥」
入ってくる
固くて熱い物が
大好きなアイツがあたしの中に
「んぅ…好き…♥すきぃ…♥」
「先輩…!先輩っ…!」
あったかい
きもちいい
しあわせ
すき
「先輩っ…また出ます…!」
「んっ♥いいよぉ♥出して♥あたしをもっとめちゃくちゃにしてよぉ♥」
びゅ〜〜〜っ…♥♥びゅるるっ……♥♥
あふれる
とける
きもちいい
すき
しあわせ
なにもかんがえられない
しあわせ
「もっとぉ…♥もっとあたしを染め上げて…♥お前だけのお嫁さんにしてよぉ♥」
…………………
「ん…」
鳥の声と眩しい朝日で目が覚めた。
どうやら昨日は疲れていつの間にか眠ってしまったらしい。
今までの事はただの夢だったんじゃないだろうか。
あの店主がくれた杯は何の効果も無く、ただ酔いつぶれて夢を見てたんじゃ?
いや、そもそもあの不思議な店に立ち寄ったところから全部夢だったんじゃないだろうか。
「んん…」
だが、そんな考えとは裏腹に隣で眠る彼女がそれを否定する。
その頭にはしっかりと角が生え、体には昨日の行為で自分が付けた跡が無数に残っている。
無論、体に付いた後に関しては俺の方が多いのだが…
「…この人も、眠ってればかわいいんですけどね…」
「ん〜…へへ…♥」
優しく頬を撫でると、彼女の顔が緩み微笑みが浮かんだ。
昨日の行為は酒に流されてやってしまったものだ。
だが、たとえそうだとしても俺は責任を取る。
彼女を幸せにしたい…そう思う俺の気持ちは気の迷いなんかでは決してないから。
「ん…あれ…?お前…」
「あ、おはようございます」
「あ…あたし…そっか…」
「先輩…俺、責任は取りますから」
「い、いやいや!あたしの方から…襲っちゃったんだしさ…むしろ、あたしの方が嫌われてないかって心配で…」
「そんなわけないですよ!先輩の気持ちは伝わってきましたし、俺も先輩のことを幸せにしたいって思ったんですから!」
彼女の手をぎゅっと握ると、昨日の火照った顔にも負けないぐらいに彼女の顔が赤くなる。
「そ、そっか…じゃあ…これからよろしくな?旦那様♥」
そう言って、彼女は幸せそうに笑った。
……が、段々とその表情は曇り、青ざめていく。
「先輩…?」
「今、何時?」
そう言われ、はっと時計を見る。
時刻はすでに起きるべき時間を過ぎている。このままでは確実に遅刻するだろう。
「い、急げ!早く着替えて出るぞ!」
「あ!先輩それ俺の服です!」
「あれ!?あたしの服どこ!?ああもう!!」
その後、なんとか遅刻は免れることができたが、乱れた服装や生々しい跡、それに言い訳のしようがない彼女の魔物化によって、先輩との関係性の変化はすぐに街中に知れ渡ってしまうのだった…。
-----------------
<バッカスの杯>
酒と酩酊を司る神バッカスの祝福が込められた、金と銀のペアグラス。
金の杯には酒に宿る酩酊の力を強める効果を持ち、どんな酒豪であろうと注がれた酒を飲めばたちどころに酔い潰れ、自分の秘めていた感情をさらけ出してしまう。
逆に、銀の杯には酒の毒を浄化する力を持っており、どんなに度数が高い酒であれどこの杯を通せばジュースのように飲めてしまう。
どちらの杯にも酒の本来の美味しさを引き出す力があるため、この杯を使えば酒が嫌いな人とも楽しく酒を酌み交わせるだろう。
注意点として、この杯には魔力が籠っており、「金の杯で酔ってしまった女性」もしくは「金の杯で男を酔わせた女性」を素質があるとみなしてバッカス神の眷属であるサテュロスへと変えてしまう力も備わっている。
バッカス信者達からはカップルに送る引き出物や、酒豪の恋人を酔わせて甘い夜を過ごすための便利アイテムとして使われている。
周囲から陽気な歌声や楽しそうな笑い声も、今の自分にとっては騒がしいだけだった。
「うぅ…散々飲ませやがって…」
壁に手をつきながらヨタヨタと、ゆっくりと歩く。一歩進むごとに胃は収縮を繰り返し今にも内容物がひっくり返りそうだ。
これ以上、少しでも動けば倒れてしまう。
そう思い、ひんやりとした土の上に腰を下ろした。
ゆっくりと、冷たい夜の空気を肺に取り込み、吐き出す。
ふと、先ほどまで騒がしかった周囲がしんと静まり返っていることに気づく。確かに人通りが少ない裏路地へ入ったとはいえ、大通りからそこまで離れてはいないはず、だというのに周囲はまるで真夜中のように静まり返り、霧が深く立ち込めている。
「もし…そこのお方、大丈夫ですか?」
「んえ?」
頭上から声を掛けられ、振り向くと月光に照らされた女性が立っていた。
頭に生えた大きな角、獣のような白い尻尾や脚…確か、白澤という魔物だったか…
「店前で座り込んでいたので何事かと思い声をかけたのですが…調子が悪そうですね?」
「あぁ、すみません…少し飲みすぎてしまって…今どきます…」
慌てて立ち上がるが、いまだに酒の後遺症は抜けず、思わず転びそうになる。
「あらあら、無理をなさらず…良ければ店で休んで行ってくださいな」
「い、いえ、迷惑をかけるわけには…」
「店前で倒れられた方が迷惑ですよ!ささ、こちらへ…」
魔物に腕を引かれ、古びた店の中へ入る。
ふと見上げた看板には、木の板に金の文字で店名と、おそらく謳い文句のようなものがが書かれていた。
アルカナ秘宝庫
あなたの願い、叶えます
…………………
「いやぁすみません…助かりました…」
コップに注がれた水をゆっくりと飲みながら礼を言うと、魔物はにっこりとほほえんで頭を下げた。
今更ながら、冴えた頭で店内を見渡す。
ネックレスや指輪、腕輪などの装飾品が並んでいるのを見ると、ここはアクセサリー屋だろうか?
しかし、奥の棚には彫像や水晶、みるからに怪しい本なども置いてある。
「ウチの商品、気になりますか?」
「あ、はい…ここは…骨董品店ですか?」
「うーんまぁ当たらずとも遠からず…ここはですね、願いを叶える店なんです」
店主はこともなげに、にこりと笑いながらそう言った。
「願い…?」
「平たく言ってしまえば、マジックアイテムを取り扱っています。お客様のお話を聞いて、その人の願いを叶えられるような商品をご提案するんです」
「へぇ…」
「良ければ…ここに来たのも何かの縁、少しあなたのお話を聞かせてくれませんか?」
「え…?」
「かなりお酒を飲まれていたようですし、なにかお悩みがあるのでは?」
ゆったりと落ち着きのある優しい声。
先ほどあったばかりの人に悩み相談をするなんておかしな話だ。
しかし、彼女には旧知の友人のような、そんな不思議な親しみやすさが漂っていた。
「…自分は最近、この街の衛兵として働き始めたんです。この地域は平和ですし、仕事も順調で市民の人との関係も、段々築けていると思います。ただ…俺の上司になった人がひどくて…」
…………………
「おい新人!仕事おわったんだろ?」
仕事が終わると、今日も先輩が話しかけてきた。
彼女は衛兵長であり、人間の女性の身でありながら魔物や男達に負けることなく鍛え上げられたたたき上げの女傑だ。
この街では、彼女に勝てる男はいないだろう。
普段は頼りがいがあり、面倒見もいい彼女だが、一点だけ欠点がある。
「今日も飲みに行くぞ!付き合え!」
「またですか…!?一昨日も行ったじゃないですか!」
「昨日は行ってないだろ!つべこべ言うな!上司命令だぞ!」
彼女の酒好きだ。
毎晩のように酒場へ行っては、樽を空にする勢いで酒を飲む。
しかもそれほどの酒を飲んでも、次の日の朝礼には平気な顔をして顔を出すウワバミである。
それだけならいいが、問題は彼女が、どこが気に入ったのか毎日のように俺を飲みに誘ってくることだ。
「う〜ん…もう飲めないです…」
「おいおい!まだ少ししか飲んでないだろ?遠慮せず飲め飲め!おーい!酒追加で!」
特に酒に弱い方ではないが、ウワバミの彼女は俺のペースなんて考えず酒を注ぎ、飲ませてくる。
夜が更ける頃にはすっかり酔い潰れ、ふらふらになりながら兵舎へと帰る。
このせいで朝番に遅れそうになったことも何度もある。
彼女と親しげにしているのを見てうらやましいという奴もいるが、できれば変わってほしい物だ。
そして今日も、彼女に散々酔い潰され、何とか帰ろうとしたところ、この店に助けられたというわけだ…
…………………
「なるほど…それはお辛いですね…」
「彼女の事が嫌いってわけじゃないんですが…もう少しあの酒癖をどうにかできれば…もしくは俺が彼女ぐらい酒に強くなれたらなぁ…と」
「えぇ、えぇ!でしたらちょうどいい物があります!」
そういうと店主は近くに合った棚から二つの杯を取り出した。
同じブドウの蔓が巻きつき、ブドウが実っている様が掘られた対の杯で、片方は煌びやかな金色に塗られ、もう片方は厳かな銀色に染められていた。
並べてみると、蔓の細工が二つを結び付けているようにも見える。
「これはバッカスの杯と呼ばれる品です」
店主は金と銀の杯をそっと並べ、やわらかく微笑んだ。
「この杯には、酒の神であるバッカスの加護が宿っています。
まずこちらの銀の杯──酒の毒を吸い上げ、澄ませる力を持っています。
どれほど強い酒でも、この杯を通せばジュースのような優しい飲み物になりますよ
そしてこちらは金の杯。
こちらは逆に飲む者の酩酊を増幅させる力があるのです。
例えどんな酒豪であれど、この杯を使えばたちどころに酔い潰れるでしょうね」
目の前に置かれた杯を眺める。
魔法に関して知識はないが、胸の奥が微かにざわつく。
先ほどまで酒でひどい目に合っていたというのに、また酒を飲みたくなってくるような、そんな不思議な感覚だった。
「よければこちら、差し上げますよ」
「えっ!?でも、これ売り物じゃ…」
「かまいませんよ。ここにある品の多くは、夫の趣味で集めたものなんです。
夫が集めた品々は、どうも持ち主を選ぶようでして…
使わずにただ飾っておくよりも、必要な方に使ってもらった方が、この子たちにとっても本望でしょうから」
店主は杯をそっと撫でる。
その仕草はまるで子供に触れているようだった。
「…あらいけない、お話していたらもうこんな時間。さあ、この子たちは包んでおきますから、明日にでも使ってあげてくださいな」
渡された木箱は、不思議と手にしっくりと馴染んだ。
例え道楽だとしてもこれはあまりにも高価で、基調に見える。
本当に受け取っていいのだろうか、と胸の内で躊躇いが生まれる。
しかし店主はそんな疑問をよそに、最初に出会った時と同じような笑みを浮かべて言った。
「どうか、あなたの行く末に幸福がありますように」
…………………
「先輩、今日よかったら飲みに行きませんか?」
次の日、さっそく昨日貰ったグラスを持ち、彼女を飲みへ誘う。
俺の方から誘われるとは思っていなかったのか、目を丸くした後、嬉しそうに笑った。
「お、おう!お前の方から誘ってくるなんて珍しいじゃんか!」
「実は良いグラスが手に入ったので…ぜひ先輩と飲みたいなと思って」
「おぉ!いいな!じゃあ早速行こうぜ!」
思った通り、彼女はすぐに食いついた。
眼を輝かせて喜ぶ彼女を見ていると、これで酒癖さえ無ければなぁ…と想いを馳せてしまう。
酒場へと移動し、とりあえずワインを注文する。
「先輩はこっち使ってください」
「へぇ〜…いいグラスだな…」
「あ、来たみたいですね。注ぎますよ」
運ばれてきたワインの栓を抜き、彼女の前に置いた金の杯へと慎重に注いだ。
ただの安ワインのはずなのに、グラスに注がれたワインは液面がかすかな金色を帯びて輝いていた。
芳醇な香りがふわりと立ち上り、テーブルの周りの空気そのものが一瞬変わったように見える。
「…ん?」
彼女がわずかに眉を上げる。
感づかれていないだろうか…本当に効くのだろうか…不安と緊張で思わず鼓動が早くなる。
「これ…いつもと同じワインだよな…なんかいつもより美味そうだな…」
杯を手に取り、ゆっくりと飲み干す。
ワインを全て飲むと、驚きと喜びが混ざったような笑みを浮かべてため息をついた。
「かぁ〜っ!!うめぇ〜!!やっぱいいグラス使うと酒が美味くなるもんだなぁ!」
どうやら問題はないようだ。
彼女の声はいつもより大きく、すでに頬に赤みが差しているため、どうやら効果はあるらしい。
「ほら!お前も飲めよ!」
「あっ…ありがとうございます…」
彼女が銀の杯へワインを注ぐと、液面がさらりと揺れ、金の杯とは違う澄んだ光を放つ。
立ち上る香りもどこかやわらかく、ほのかな気品が漂ってくる。
ゆっくりとワインを飲み始めると、芳醇な味わいと香りが舌の上でほどけていく。
普段なら微かに感じる酒臭さやえぐみは影も形もなく、代わりに清らかな甘みだけが広がった。
──美味い。間違いなく、今まで飲んだワインの中で一番だ。
この杯には酒の毒を消すだけじゃなく、味わいまで磨き上げる力があるらしい。
「美味しい…」
「な!だろ!いやぁ、今日は酒が進みそうだ!おーい!ジャンジャン酒持ってきてくれ!」
…………………
「うへぇ…へへへ…お〜い、飲んでるかぁ?」
「ちょっ…先輩近いですって…!」
数時間後
そこには完全に出来上がっている先輩がいた。
普段はどれだけ飲んでも酔っている素振りすら見せない彼女が、今は目がとろんとし、頬を真っ赤に染めてべろんべろんに酔っぱらっている。
反対に俺は、彼女と同じ量を飲んでいるというのに全く酔わない。
どうやら効果は抜群の様だ。
「んふふ…ほらぁ、もっと近くに来いよぉ…!」
「ダメですって!ほら周りからも見られてますから!」
「そんなこと言うなよぉ!後輩の癖に生意気言うなぁ!」
それにしても、酔うとこんな風になるなんて思ってもみなかった。
彼女は俺の肩に腕を回し、頬が触れそうな距離で覗き込んでくる。
柔らかな胸や太ももも頻繁に体に当たり、火照った体温が生々しく伝わってくる。
正直、酔っていないのにこっちがのぼせてしまいそうだ。
「ほら、先輩!もう行きましょう!もう十分でしょ!」
「やぁん…まだ…」
「すみません!お会計で!」
ふらつく彼女に肩を貸し、なんとか酒場を出て彼女が下宿している宿屋へと急ぐ。
その間も彼女はべったりと腕に絡みつき、甘ったるい息を吐きながら密着してくる。
自分より先に酔い潰れてくれれば楽になるかと思ってたけど、これじゃあ大変さはそんなに変わらないな…
…………………
「お帰りなさい…あら、お持ち帰りかしら?」
宿屋の女将のキキーモラさんがくすりと笑いながら声を掛けてくる。
「勘弁してくださいよ…先輩を置いたらすぐ帰りますって」
「彼女がこんなになるなんて初めて見たわ。あなた達、どれだけ飲んだの?」
「ええと…まぁ、今日は結構…あ、すみません、これ少し預かってもらえませんか?帰るときに受け取るので…」
「はいはい、預かっておくわ」
先輩に張り付かれたまま箱を渡すと、女将はちらりと中身を見て、眉をひそめた
「あら…これ、もしかして…ふふ、なるほどねぇ…」
先ほどまでの朗らかな表情が、どこか淫猥な雰囲気のある微笑へと変わる。
「ねぇ、その子をどうするつもり?」
「どうするって…部屋まで送って帰えるだけですよ」
「そう…まぁ、ただの雑談なんだけどね…
この宿、部屋ごとに防音魔法が掛かってるの」
「はぁ…?」
だから、どれだけ騒いでも、どんな声を出しても、外には漏れないってコト♥」
「いや、だから俺は──」
「ふふっ。じゃあごゆっくり♥」
…………………
「先輩、着きましたよ」
「あぁ〜?なんだよぉ…なんでお前があたしの部屋にいるんだよぉ?」
「先輩が帰れそうにないから送ったんですよ!」
「あー!さてはあたしにエッチな事するつもりだろ〜♥すけべ〜♥」
「違いますって!ほら、ベッドに寝かせますよ!」
彼女を何とか引きはがし、ベッドに寝かせる。
かなり酔っているようだが、吐き気や気持ち悪さなどはないようだ。
「じゃあ俺帰りますから…ちゃんと寝てくださいよ?」
「おーい!帰るなよぉ!ほらぁ、こんなに無防備な女がいるんだぞぉ!」
「止めてくださいってば!ちょっ、離してくださいよ!」
ベッドから離れようとするが、彼女の手が腕を掴み、離そうとしない。
彼女が酒に強いとはいえ…男に対してここまで無防備なのはいかがなものか…
普段は気丈な先輩が見せる甘えた姿に、心がぐらつくのを感じる。
いけない、落ち着かなくては…
「先輩…男に対してこういうこと軽率にしない方がいいですよ?俺以外の奴だったらどうなっていたか…」
「…………」
彼女が押し黙る。
眠くなったのか?
そう思っていると、世界が突然ひっくり返った。
彼女が上にいるのを見て、ようやく腕を引っ張られてベッドの上に引き込まれたのだと気が付いた。
「お前だけだよ…」
馬乗りになった彼女は、いつもとは違ったしおらしい声でそう言った。
「あたしがこんな姿見せるのも…飲みに誘うのもお前だけだよ…ずっとアピールしてるのに、なんで気が付かないんだよ…」
「せ、先輩…?」
彼女の声に段々と熱が籠る。
その時、窓の外から月の光が差し込んできた。
月に照らされた彼女の頭には、先ほどまでなかったはずの尻尾や角が生え、その姿はサテュロスへと変わっていた。
「あぁ…なんかもういいや…♥初めからこうすればよかった…♥」
彼女が覆いかぶさり、ワインの香りが漂う唇でキスをされる。
火傷しそうなほど熱くなった舌が口内を這いまわり、口の中でお互いの唾液が混ぜ合わされていく。
舌の表面から裏側へ、頬の内側や歯茎の裏まで丹念に舐め上げられ、理性が削られる。
「んんっ…先輩っ…!ちょっとおちついて…!」
「んれぇ…♥やぁだ♥もっと♥」
じっくりと、口内を味わうように舌が動き、いやらしい水音が部屋に響き渡る。
時折呼吸のために口が離されると、舌と下の間に粘ついた唾液の糸が紡がれ、また口の中に押し戻される。
抵抗できない。
彼女を押しのけてでも止めた方がいいとわかっているのに、キスされるたびに頭がのぼせたようにぼーっとして考えがまとまらない。
その間も、彼女の手は俺の体の上をすべるように動き、酔った人間とは思えないような巧みな動きで服をするすると脱がせてきた。
ズボンが下ろされると同時に、張り詰めた陰茎が立ち上がり、外気にさらされる。
「…わ…♥」
彼女はうっとりとペニスを眺め、熱い吐息を吹きかけてくる。
既に興奮しきった自分では、それだけで身を震わせてしまう。
「そっか…♥あたし、ずっとこれが欲しかったんだ…♥」
彼女の舌が、まるで別の生き物のようにペニスに迫る。
サテュロスになったためか、彼女の舌は長く、表面にはざらざらとした突起が無数に現れていた。
男の性器を舐め溶かし、精を啜ることに特化した、魔物の舌。
「んれぇ…♥じゅるるるるっ…♥」
「ひゃっ…!?」
先端を少し舐められただけで激しい快感が走る。
ぞりぞりと、鈴口やカリ首、裏筋まで丹念に舌で撫でられ、どろどろの唾液をまぶされる。
強い快感に身をよじろうとしても、腰をがっしりと掴まれ、それすらもできない。
「動くなよぉ…♥あぁむっ…」
舌がペニスを巻き込み、一気に奥まで飲み込まれる。
口内は引き抜くたびに強く窄まり、喉奥と口内粘膜によって激しくしごかれ、激しい快感に頭が真っ白になる。。
「うぅ…先輩…俺、もう…!」
「だぁめ…♥もっと味合わせてよ…♥」
舌の動きが変わり、飴を舐め溶かすような舌使いへと変わる。
亀頭をじっくりと味わいながら、唇の輪がカリ首をつぷ…つぷ…と往復し、口内は唾液が溜まりペニスに絡みつく。
生殺しのような動きに、思わず腰がガクガク震えてしまう。
腰が抜けそうになるほどの快感に思わず、彼女に生えた角を掴んでしまった。
「ひぅっ…!?♥」
「っ…せ、先輩…?」
彼女の体がビクンと震え、喉奥が一段と締まる。
「そ、それ…好き…♥もっと強く掴んで…♥」
角を掴んだ事で興奮したためか、動きがより激しくなり、より追い詰めるような動きへと変わる。
舌がペニスに巻き付き、ストロークはより深く、早くなり、それと同時に射精感が込み上げてきた。
「で、出るっ…!」
「いいよぉ♥らひて♥あたひのくちに♥」
彼女の角を強く掴み、腰へ押し付ける。
びゅ〜〜〜〜〜…♥びゅるるっ………♥
そして…いつもの何倍も濃い精液が喉奥へと叩きつけられた。
「んむぅっ…!」
始めは苦しそうにしていたが、しばらくするとおいしそうに喉を鳴らして精液を飲み始める。
射精の波が引き、脈動が終わった後もしばらく尿道に残った精液を吸い、ペニスを舐めまわしていたが、満足したのか名残惜しそうに口を離した。
唾液にまみれたペニスは未だなお固く勃起し、てらてらと輝いている。
「美味しかったぁ…じゃあ、次は…」
馬乗りになった彼女が腰を下ろし、愛液がべっとりと垂れた割れ目がペニスを包み込む。
「ここで…い〜っぱいもぐもぐしてやるからな♥」
「ま、待って…!それはだめ…!赤ちゃんできちゃいますから!」
「あぁ…?いいじゃん…赤ちゃん孕ませてくれよ♥」
必死に抵抗しようとするが、射精の余韻で力が入らず、簡単に抑え込まれてしまう。
腰がゆらゆらと揺れ、ゆっくりとペニスが熱い肉の中へと飲み込まれていく。
「ほら、入るぞ…お前の初めて、もらってやるからな…♥」
彼女が腰を沈めた瞬間、思わず声をあげてしまう。
「あっ!?せ、せんぱ…これやばっ…!」
「あーあ♥入っちゃったな♥」
言葉にならない声を出して体を揺らそうとするが、彼女は無慈悲にも腕を抑え、拷問のようにゆっくりと時間をかけて腰を降ろしてゆく。
「んっ…はあぁ…♥入ってくる…♥固くてあっついのがぁ…♥」
遂に、ペニスがすべて飲み込まれる。
襞の密集地帯を抜けた先は一層狭くなり、亀頭をきつく抱きしめてくる。
そして…亀頭の先に吸い付くぷっくりとしたもの…否が応でも本能でわかってしまう。
ここが、子宮だ。
ここに、精液を吐き出すんだ。
「あはぁ♥奥まで入ったぁ♥どうだ?あたしのまんこ…気持ちいいよなぁ♥」
「ぐっ…うぅ…!先輩…!ダメです、動いたら…!」
「ん〜?動くとどうなるんだ?」
彼女が悪戯っぽく笑い、それと同時に膣全体がキュッと締め付けられる。
「あぁっ…!」
ビクンっと腰が跳ね上擦った声が思わず喉から漏れる。
それを聞いた先輩は怪しく目を細める。
「ん〜?どうしたぁ?ちょっと絞められただけでそんな声出しちゃうのかぁ<♥>」
ぎゅっ、ぎゅっと断続的に締め付け、断続的にペニスを絞られる。
それだけでなく、円を描くように腰を回し、ペニス全体が膣に触れるようにかき回されてしまい、より一層膣の形状を意識させられてしまう。
「おいおい…もう限界なのかよ…これからが本番なんだぞ…♥」
ペニスが抜けそうになるまで腰が浮き…
ぐちゅんっ♥
一気に叩きつけられる。
「あがっ…!」
今までゆっくり味わってきた快感が、一気に襲ってくる。
2回、3回…さらに腰が落とされ、そのたびに間隔が短くなってゆく。
「ほら、ほらほら<♥>気持ちいいだろ♥さっさと出してあたしを孕ませろよ…♥」
腰が降られるたびに、ペニスがかき回され、ぐちゅぐちゅといやらしい水音が響き渡る。
今まで二十数年純潔を貫いてきた俺に、耐えられるはずがなかった。
「せ、先輩!俺、もうっ…♥」
「いいぞ♥出すときは一番深く入れてやるからな♥子宮に種付けしろよ♥出せ♥出せ♥出せ出せ出せ出せ…♥♥」
ぶびゅっ…♥♥びゅるるるっ…♥♥♥
重い
腰が引っこ抜けるんじゃないかと思うほどの重く長い射精
宣言通り膣の深くまで突き刺されたペニスは、子宮へと熱いキスを交わしながら子種を流し込んでゆく。
射精の途中も、断続的に膣全体が締まり、最後まで気持ちよくなれるようにペニスを揉み解された。
「あ〜…出てる出てる…♥あっついのが来てるぞぉ…♥」
「う…うぅ…」
ペニスが引き抜かれ、割れ目からは白い精液がごぽごぽとあふれ出している。
「はは♥いっぱい出しやがって…♥」
彼女は蕩けた顔で、精液と愛液がへばりついたペニスに頬擦りをすると、労うようにゆっくりと舌を這わせる。
続けて二回も出したというのに俺のペニスは未だ固さを保ったままだった。
「ふふ…まだ元気そうだなぁ♥まだまだ頑張ってもらうからな…♥」
…………………
その日はなんだかうまくいかない日だった。
小さなミスが積み重なってしまい、結果として多くの人に迷惑をかけてしまった。
皆は気にしなくていいと言っていたが、あたしの心は沈んだままだ。
人間の女である自分も、誇れるような仕事に就きたいと思って衛兵を志があったから、この地位までやってこれた。
だが…周囲にいるのはエリートの男や魔物達、時々自分が場違いな場所にいるんじゃないかという気分になる。
そんな陰鬱とした気持ちで、がぶがぶと酒を流し込んでいた。
酒に強い自負があるあたしでもさすがに飲みすぎたためか、頭がぐらぐらち揺れて気分が悪い。
「ダメですよ先輩、そんなに飲みすぎちゃ!」
声をかけられたのはそんな時だった。
「…誰だ、お前…」
「最近赴任してきた者です!一人で飲んでいたので思わず声を掛けたんですけど…さすがに飲みすぎでは…?」
「…いいじゃねぇか…ほっとけよ…」
あたしが適当にあしらおうとしても、あいつは全然譲らなかったな…挙句の果てにあたしの目の前にドンと座って
「そんなに飲むなんてきっと何か理由があるんでしょう?俺でよければ聞きますよ!」
なんて言いやがる…
あぁ…その時からだっけな…
アイツの事が好きになりだしたのは
…………………
熱い
頭がふわふわする
きもちいい
あれ…あたし何してるんだっけ…?
「先輩…いれますね…!」
「ん…おぉおっ…♥」
入ってくる
固くて熱い物が
大好きなアイツがあたしの中に
「んぅ…好き…♥すきぃ…♥」
「先輩…!先輩っ…!」
あったかい
きもちいい
しあわせ
すき
「先輩っ…また出ます…!」
「んっ♥いいよぉ♥出して♥あたしをもっとめちゃくちゃにしてよぉ♥」
びゅ〜〜〜っ…♥♥びゅるるっ……♥♥
あふれる
とける
きもちいい
すき
しあわせ
なにもかんがえられない
しあわせ
「もっとぉ…♥もっとあたしを染め上げて…♥お前だけのお嫁さんにしてよぉ♥」
…………………
「ん…」
鳥の声と眩しい朝日で目が覚めた。
どうやら昨日は疲れていつの間にか眠ってしまったらしい。
今までの事はただの夢だったんじゃないだろうか。
あの店主がくれた杯は何の効果も無く、ただ酔いつぶれて夢を見てたんじゃ?
いや、そもそもあの不思議な店に立ち寄ったところから全部夢だったんじゃないだろうか。
「んん…」
だが、そんな考えとは裏腹に隣で眠る彼女がそれを否定する。
その頭にはしっかりと角が生え、体には昨日の行為で自分が付けた跡が無数に残っている。
無論、体に付いた後に関しては俺の方が多いのだが…
「…この人も、眠ってればかわいいんですけどね…」
「ん〜…へへ…♥」
優しく頬を撫でると、彼女の顔が緩み微笑みが浮かんだ。
昨日の行為は酒に流されてやってしまったものだ。
だが、たとえそうだとしても俺は責任を取る。
彼女を幸せにしたい…そう思う俺の気持ちは気の迷いなんかでは決してないから。
「ん…あれ…?お前…」
「あ、おはようございます」
「あ…あたし…そっか…」
「先輩…俺、責任は取りますから」
「い、いやいや!あたしの方から…襲っちゃったんだしさ…むしろ、あたしの方が嫌われてないかって心配で…」
「そんなわけないですよ!先輩の気持ちは伝わってきましたし、俺も先輩のことを幸せにしたいって思ったんですから!」
彼女の手をぎゅっと握ると、昨日の火照った顔にも負けないぐらいに彼女の顔が赤くなる。
「そ、そっか…じゃあ…これからよろしくな?旦那様♥」
そう言って、彼女は幸せそうに笑った。
……が、段々とその表情は曇り、青ざめていく。
「先輩…?」
「今、何時?」
そう言われ、はっと時計を見る。
時刻はすでに起きるべき時間を過ぎている。このままでは確実に遅刻するだろう。
「い、急げ!早く着替えて出るぞ!」
「あ!先輩それ俺の服です!」
「あれ!?あたしの服どこ!?ああもう!!」
その後、なんとか遅刻は免れることができたが、乱れた服装や生々しい跡、それに言い訳のしようがない彼女の魔物化によって、先輩との関係性の変化はすぐに街中に知れ渡ってしまうのだった…。
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<バッカスの杯>
酒と酩酊を司る神バッカスの祝福が込められた、金と銀のペアグラス。
金の杯には酒に宿る酩酊の力を強める効果を持ち、どんな酒豪であろうと注がれた酒を飲めばたちどころに酔い潰れ、自分の秘めていた感情をさらけ出してしまう。
逆に、銀の杯には酒の毒を浄化する力を持っており、どんなに度数が高い酒であれどこの杯を通せばジュースのように飲めてしまう。
どちらの杯にも酒の本来の美味しさを引き出す力があるため、この杯を使えば酒が嫌いな人とも楽しく酒を酌み交わせるだろう。
注意点として、この杯には魔力が籠っており、「金の杯で酔ってしまった女性」もしくは「金の杯で男を酔わせた女性」を素質があるとみなしてバッカス神の眷属であるサテュロスへと変えてしまう力も備わっている。
バッカス信者達からはカップルに送る引き出物や、酒豪の恋人を酔わせて甘い夜を過ごすための便利アイテムとして使われている。
25/12/12 03:36更新 / KURO
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