お使い少年
外はまだ、日が上ってすぐだったからか、人の気配は全くしない。みんなまだ寝てる……かどうかは分からない。ただ、家から出てないのは確かだ。
家を飛び出して大体15分くらいたったか、大きめの木造の建物が見えてきた。途中何度か民家を通りすぎたとき、喘ぎ声みたいなものが聞こえてきたが、気のせいだろう。うん。
俺が今向かっているのは、俺が手伝いをしている研究所。名前はない。
ここに寄ったのは、薬品の研究に使う材料ーーーその入れ物を取りに来るためだ。
わざわざ入れ物を取りに来る必要は無いんじゃないか?って思った人もいるだろう。俺も思ったさ。何で面倒なことをするのかメノットに聞いたら……
「折角集めた研究材料にバイ菌がついたら準備が面倒になるじゃろ?ゆえに、ワシが作った魔法具である『細菌シャットアウト袋』に入れる必要があるんじゃ!」
……まあ、ネーミングセンスはともかく、メノットの魔法具は便利なものが多い。確かに、ついた汚れのせいで突然変異なんか起きたらたまったもんじゃないよな。
俺は研究所の扉をノックした。木製の扉の乾いた音が響く。
「はーい、どなたですか?」
……?この声は……
「俺だよ、オレオレ」
「ふふっ、『フェザー』さんですか?」
笑顔で扉を開けたのは、メノットと同じくらい小さい女の子、魔女の「マリーナ」さんだ。
誕生日ケーキのロウソクが年の数だってことを教えてくれたのは、この人だ。
「おはようございます。マリーナさん」
「おはようございます」
俺とマリーナさんは挨拶をしながら研究所の中に入る。
心なしか、研究所の中が昨日見たときよりもきれいになっている気がする。きっとマリーナさんが掃除してたんだろう。きれい好きだからなぁ。どっかのバフォメットと違って……。
「今日は早いですねフェザーさん。メノットさんから何か用事を頼まれたんですか?」
「察しが良いですねマリーナさんは。実は昨日……」
俺はメノットから薬品の材料集めを頼まれたことを説明した。
ところで、俺の名前を言ってなかった気がするから、ここで自己紹介させてもらう。
俺の名前は「フェザー」今年で12歳、辛いものが好き。そして特技は嘘とイタズラ!
まあ、ざっとこんなもんかな。
「それで、メノットが昨日書いたっていうメモと袋を取りに来たんです」
「そうだったんですか。ちょっと待っててくださいね」
「あぁ、俺も探すよ」
「家から走ってきたんですよね?それなら少し休憩していてください」
さすがマリーナさん、俺がここで手伝い始めてから5年も経ってるからか、俺の事をよく分かってらっしゃる……でも、一人で探してもらうのは流石に……
「お待たせしました!」
「早っ!?」
その間、僅か15秒ッ!
「お掃除したとき、大体の場所を覚えてしまったので、このくらいは大したことありませんよ?」
……これはマリーナさんの掃除スキルが凄いと言うべきか、はたまた物の場所まで覚えさせてしまうほど掃除をさせたメノットのせいと言うべきか……どちらにしても、メノットが悪いことに変わりはないけど。
「このメモによると、どうやら材料はすでに注文されてるようなので、お店に取りに行けば大丈夫みたいですよ?」
「……自分で取りに行けばいいだろうに……」
「ふふっ、メノットさんは面倒臭がりですからね」
「何で研究は続けられるんだろうな……?」
「メノットさんは研究が好きなんですよ」
そんなことを話していると、マリーナさんはいつの間にかお茶を持ってきた。
「お茶なんてわざわざ出さなくても……」
「気にしないでください。私が出したかっただけなので」
お茶を出したいなんて、変わってるなぁ。
俺はカップに入ったお茶を一口飲む。紅茶は実を言うとあまり好きじゃない。けど、折角入れてもらったので、嫌な顔をして飲むわけにはいかない。
ここで俺の特技「嘘」が生かされる。俺は実際に思っていること、考えていることを顔に出さずに話すことができる。所謂「ポーカーフェイス」ってやつだ。
「……もしかして、あまり美味しくなかったですか?」
「いや、超美味しいよ」
俺は満面の笑みでマリーナさんの親切に応える。
「……もう!また嘘をついてますね?」
「いや、嘘はついてないですよ」
ポーカーフェイスはしてるけども。
「誤魔化してもダメですよ!紅茶が嫌ならそう言ってくださいよ……私はお世辞なんて好きじゃないんです。むしろ、なんだか信用されてないみたいで悲しくなります……」
だんだんと声のトーンが下がっていき、それに比例して視線が下がっていく……あぁ、これはまずいパターンだ。
「わ、悪かったって!いや、入れ直してもらうのは悪いかなと思っただけで」
「ふふっ!冗談ですってば!」
……俺の特技の嘘は、呆気なく見破られてしまった。
ただ、折角口をつけたので、全部飲んでから出かけることにした。
「無理して飲まなくてもいいんですよ?」
「男のプライドってものがあるんですよ」(キリッ
「プライドを見せる場所が違う気がしますけど……」
俺は苦手な紅茶をさっさと飲み終えて、袋とメモをもって外に向かう。
「もう行ってしまうんですか?」
「メノットが来る前に終わらせないといけないから」
「その……もう少し、お話を……」
「早めに行ってのんびり帰ってきたいんで。それじゃ、行ってきまーす!」
「あっ……」
最後に何か言ってたような気はしたが、家から研究所まで走ってきたので、ゆっくり歩いていきたかった。っていうのは本当だ。
ただ、俺にはもうひとつの目的がある。それは……おっと!民家から人が出てきた!
何故こんなことを気にするのか……それは、この町にとって、お使いというのは生存率(性的な意味で)が低いからだ!
ライオコットに住んでいる人と魔物娘の割合は殆ど同じくらい。つまり100人の人間は100人全員がお婿さんになる。ってわけだ。
俺はもちろん独身だし、結婚なんて全く考えてない。ただ、ちょっと油断するとすぐに路地裏に連れ込まれそうになったり、家にお誘いされたり、挙げ句の果てには路上レイプされそうになったり……みんな優しいから、路上レイプなんていうのはごく稀なことだけどな。
とにかく、いかにして出会うことを避け、誘いを断るかが重要なのだっ!
______________
「……はぁ」
また、ゆっくりお話出来ませんでした……。
近くにあるイスに腰掛けると、無意識に溜め息が出てしまう。いつもチャンスを見計らっているのに、どうしても勇気がでない。
「この気持ちは、いつ伝えられるんでしょうか……?」
答えが返ってくる筈がないのに、私はつい口に出してしまう。フェザーさんの前でも、こんな風にすっと口から言葉が出てくれれば……。
「……あわわわっ!だ、ダメです〜!///」
あまりの恥ずかしさに赤くなっているであろう頬に手を当て、頭を動かして冷静さを取り戻そうとしますが、一度考えてしまうとなかなか離れないのが生き物のもどかしいところです。
深呼吸をしながら洗面台へ向かい、水で顔を洗う。鏡を見ると、まだ頬が赤い私の顔が映っています……はぁ
フェザーさんはどんな女の子が好みなんでしょうか……フェザーさんも年頃の男の子なので、異性とのお付き合いに興味が無い筈はないと思うんですけど……。
……はっ!も、もしかして、幼女には興味が無いんでしょうか!?だとしたら、私に勝ち目はぁぁ〜……いえいえ!弱気になっちゃダメですよ私っ!興味が無いのなら興味を持ってもらうまで!これからですよっ!
ーーー所変わって
俺は今、花屋に向かっている。
俺の友人の一人ーーーアルラウネの「リリ」の両親が経営してる花屋で、そこには花だけじゃなく、薬草、木の苗、キノコなんていう物まで置いてある。
そこにメノットが頼んだ物を取りに行く。
もう一度言うが、俺は結婚なんて考えてない。ましてや異性との付き合いなんて全然考えてない。そういう趣味があるわけじゃなくて、ただ単に面倒なだけだ。何故二回言ったのか、俺にも分からん!
「フェザーちゃーん♥」
「あっ、ラーナ!おはよう!」
花屋に向かってる最中、俺に話しかけてきたのは、アラクネの「ラーナ」俺の友人の一人だ。
「うふふ♪今日も髪飾りが似合ってるわね。かわいいわよ♥」
「明日にはカッコよくなってるさ!それじゃ、俺急いでるから。店、頑張れよ!」
そう言ってから小走りでその場を去る。実は、ラーナが最初の刺客だったりする。
ラーナが放つお姉さんオーラと「かわいい」の言葉に惑わされた瞬間、あっという間に会話の主導権を握られ自宅に連れて行かれてしまう。
1、2年前まではかなり戸惑ったけど、慣れてしまえば簡単だ。
ラーナの影が視界から消えたことを確認してスピードを落とす。
「ふぅー……危なかった。さてと、さっさとリリのとこに」
「おーい!フェザー!」
うわっ……よりによって一番会いたくないやつが来たか……。
きれいに焼けた褐色の肌、頭からは牛の角。これだけで分かるだろう。こいつも、俺の昔からの友人ーーーミノタウロスの「カウリア」だ
「なあ、相撲やろうぜ!」
「ヤダッ!」(ダッシュ
「あっ、おいっ!待てって!」
ちっ、スタートダッシュが遅れたか!
「何で逃げんだよ!一回ぐらいいいだろう!?ちょっと前までは普通に遊んでくれたじゃねぇか!」
「いやらしい目付きを直してから言えっ!淫乱牛が!」
こいつの対処法はシンプルだ。逃げる!あるいは無視すればいい。昔は普通に遊んだ仲だったけど、思春期に入ってから急変した。色々知りすぎたんだろ。後は、ご覧の通りです。
なんとかカウリアを撒いた俺は、再び目的地に向かって歩き出す。カウリアのお陰で結構時間をくった。
ーーーそして
研究所を出てから20分くらいか。結構かかった……いや、連れ込まれたり、脱がされそうになってたらもっと時間がかかってたかもしれない。今俺は花屋「フラワーガーデン」の前にいる。
店の前には文字通り、フラワーガーデンがある。花はいい。一輪あるだけで世界が変わって見える……なんて、芸術家なら言うんだろうけど、俺には全く分かんないなぁ。
「おはようございまーす!」
「いらっしゃい……あっ、フェザー君!おはよう!」
中に入ると、俺と同い年くらいの女の子が出迎える。ただ、その肌は緑色で、人間ではない。
「リリ!今日はお前が店番してるんだな」
「うん、お父さんとお母さん、まだ終わってなくて……」
おう……そうかこれ以上は追求しない方が良さそうだ。
「それで、今日はどうしたの?」
「メノットが頼んだ物を取りに来たんだけど……」
俺はメモを見せながら用件を話す。
リリはメモを受け取ると、かかれているものを探し始めた。
「えーっと……あった!」
指差し確認をしながら丁寧に商品を手に取っていく。っていうかメモにも書いてあったけど、主にキノコを頼んでるんだよなぁ……何でキノコを使うんだろうか……。
「お待たせ!お金は貰ってるみたいだから、このまま持っていって!」
確認が終わって、キノコの束を渡してくれたリリ。
貰ったキノコを袋に入れ、店を出ようとしたときだった。
「あっ、ねぇ!」
「………?」
リリの声をかけられて、振り返る。
「あ、あのさ……今日の夕方暇だから……一緒に遊びに行っても、いいよ?」
「……は?」
「だ、たからっ!仕事が終わったら、どっか遊びに行かない……?」
「……あぁ悪い。今日はちょっと手伝いが長くなりそうなんだ。また今度な!」
俺は手を振って店を出る。用事も済んだし、早く研究所に戻んないとな……。
……不覚にも、リリの言葉に少しドキッとしちまった。でも、俺はまだ付き合ったりはしない。自由に生きてやるのさ!「羽根」みたいに、風に乗ってなっ!
家を飛び出して大体15分くらいたったか、大きめの木造の建物が見えてきた。途中何度か民家を通りすぎたとき、喘ぎ声みたいなものが聞こえてきたが、気のせいだろう。うん。
俺が今向かっているのは、俺が手伝いをしている研究所。名前はない。
ここに寄ったのは、薬品の研究に使う材料ーーーその入れ物を取りに来るためだ。
わざわざ入れ物を取りに来る必要は無いんじゃないか?って思った人もいるだろう。俺も思ったさ。何で面倒なことをするのかメノットに聞いたら……
「折角集めた研究材料にバイ菌がついたら準備が面倒になるじゃろ?ゆえに、ワシが作った魔法具である『細菌シャットアウト袋』に入れる必要があるんじゃ!」
……まあ、ネーミングセンスはともかく、メノットの魔法具は便利なものが多い。確かに、ついた汚れのせいで突然変異なんか起きたらたまったもんじゃないよな。
俺は研究所の扉をノックした。木製の扉の乾いた音が響く。
「はーい、どなたですか?」
……?この声は……
「俺だよ、オレオレ」
「ふふっ、『フェザー』さんですか?」
笑顔で扉を開けたのは、メノットと同じくらい小さい女の子、魔女の「マリーナ」さんだ。
誕生日ケーキのロウソクが年の数だってことを教えてくれたのは、この人だ。
「おはようございます。マリーナさん」
「おはようございます」
俺とマリーナさんは挨拶をしながら研究所の中に入る。
心なしか、研究所の中が昨日見たときよりもきれいになっている気がする。きっとマリーナさんが掃除してたんだろう。きれい好きだからなぁ。どっかのバフォメットと違って……。
「今日は早いですねフェザーさん。メノットさんから何か用事を頼まれたんですか?」
「察しが良いですねマリーナさんは。実は昨日……」
俺はメノットから薬品の材料集めを頼まれたことを説明した。
ところで、俺の名前を言ってなかった気がするから、ここで自己紹介させてもらう。
俺の名前は「フェザー」今年で12歳、辛いものが好き。そして特技は嘘とイタズラ!
まあ、ざっとこんなもんかな。
「それで、メノットが昨日書いたっていうメモと袋を取りに来たんです」
「そうだったんですか。ちょっと待っててくださいね」
「あぁ、俺も探すよ」
「家から走ってきたんですよね?それなら少し休憩していてください」
さすがマリーナさん、俺がここで手伝い始めてから5年も経ってるからか、俺の事をよく分かってらっしゃる……でも、一人で探してもらうのは流石に……
「お待たせしました!」
「早っ!?」
その間、僅か15秒ッ!
「お掃除したとき、大体の場所を覚えてしまったので、このくらいは大したことありませんよ?」
……これはマリーナさんの掃除スキルが凄いと言うべきか、はたまた物の場所まで覚えさせてしまうほど掃除をさせたメノットのせいと言うべきか……どちらにしても、メノットが悪いことに変わりはないけど。
「このメモによると、どうやら材料はすでに注文されてるようなので、お店に取りに行けば大丈夫みたいですよ?」
「……自分で取りに行けばいいだろうに……」
「ふふっ、メノットさんは面倒臭がりですからね」
「何で研究は続けられるんだろうな……?」
「メノットさんは研究が好きなんですよ」
そんなことを話していると、マリーナさんはいつの間にかお茶を持ってきた。
「お茶なんてわざわざ出さなくても……」
「気にしないでください。私が出したかっただけなので」
お茶を出したいなんて、変わってるなぁ。
俺はカップに入ったお茶を一口飲む。紅茶は実を言うとあまり好きじゃない。けど、折角入れてもらったので、嫌な顔をして飲むわけにはいかない。
ここで俺の特技「嘘」が生かされる。俺は実際に思っていること、考えていることを顔に出さずに話すことができる。所謂「ポーカーフェイス」ってやつだ。
「……もしかして、あまり美味しくなかったですか?」
「いや、超美味しいよ」
俺は満面の笑みでマリーナさんの親切に応える。
「……もう!また嘘をついてますね?」
「いや、嘘はついてないですよ」
ポーカーフェイスはしてるけども。
「誤魔化してもダメですよ!紅茶が嫌ならそう言ってくださいよ……私はお世辞なんて好きじゃないんです。むしろ、なんだか信用されてないみたいで悲しくなります……」
だんだんと声のトーンが下がっていき、それに比例して視線が下がっていく……あぁ、これはまずいパターンだ。
「わ、悪かったって!いや、入れ直してもらうのは悪いかなと思っただけで」
「ふふっ!冗談ですってば!」
……俺の特技の嘘は、呆気なく見破られてしまった。
ただ、折角口をつけたので、全部飲んでから出かけることにした。
「無理して飲まなくてもいいんですよ?」
「男のプライドってものがあるんですよ」(キリッ
「プライドを見せる場所が違う気がしますけど……」
俺は苦手な紅茶をさっさと飲み終えて、袋とメモをもって外に向かう。
「もう行ってしまうんですか?」
「メノットが来る前に終わらせないといけないから」
「その……もう少し、お話を……」
「早めに行ってのんびり帰ってきたいんで。それじゃ、行ってきまーす!」
「あっ……」
最後に何か言ってたような気はしたが、家から研究所まで走ってきたので、ゆっくり歩いていきたかった。っていうのは本当だ。
ただ、俺にはもうひとつの目的がある。それは……おっと!民家から人が出てきた!
何故こんなことを気にするのか……それは、この町にとって、お使いというのは生存率(性的な意味で)が低いからだ!
ライオコットに住んでいる人と魔物娘の割合は殆ど同じくらい。つまり100人の人間は100人全員がお婿さんになる。ってわけだ。
俺はもちろん独身だし、結婚なんて全く考えてない。ただ、ちょっと油断するとすぐに路地裏に連れ込まれそうになったり、家にお誘いされたり、挙げ句の果てには路上レイプされそうになったり……みんな優しいから、路上レイプなんていうのはごく稀なことだけどな。
とにかく、いかにして出会うことを避け、誘いを断るかが重要なのだっ!
______________
「……はぁ」
また、ゆっくりお話出来ませんでした……。
近くにあるイスに腰掛けると、無意識に溜め息が出てしまう。いつもチャンスを見計らっているのに、どうしても勇気がでない。
「この気持ちは、いつ伝えられるんでしょうか……?」
答えが返ってくる筈がないのに、私はつい口に出してしまう。フェザーさんの前でも、こんな風にすっと口から言葉が出てくれれば……。
「……あわわわっ!だ、ダメです〜!///」
あまりの恥ずかしさに赤くなっているであろう頬に手を当て、頭を動かして冷静さを取り戻そうとしますが、一度考えてしまうとなかなか離れないのが生き物のもどかしいところです。
深呼吸をしながら洗面台へ向かい、水で顔を洗う。鏡を見ると、まだ頬が赤い私の顔が映っています……はぁ
フェザーさんはどんな女の子が好みなんでしょうか……フェザーさんも年頃の男の子なので、異性とのお付き合いに興味が無い筈はないと思うんですけど……。
……はっ!も、もしかして、幼女には興味が無いんでしょうか!?だとしたら、私に勝ち目はぁぁ〜……いえいえ!弱気になっちゃダメですよ私っ!興味が無いのなら興味を持ってもらうまで!これからですよっ!
ーーー所変わって
俺は今、花屋に向かっている。
俺の友人の一人ーーーアルラウネの「リリ」の両親が経営してる花屋で、そこには花だけじゃなく、薬草、木の苗、キノコなんていう物まで置いてある。
そこにメノットが頼んだ物を取りに行く。
もう一度言うが、俺は結婚なんて考えてない。ましてや異性との付き合いなんて全然考えてない。そういう趣味があるわけじゃなくて、ただ単に面倒なだけだ。何故二回言ったのか、俺にも分からん!
「フェザーちゃーん♥」
「あっ、ラーナ!おはよう!」
花屋に向かってる最中、俺に話しかけてきたのは、アラクネの「ラーナ」俺の友人の一人だ。
「うふふ♪今日も髪飾りが似合ってるわね。かわいいわよ♥」
「明日にはカッコよくなってるさ!それじゃ、俺急いでるから。店、頑張れよ!」
そう言ってから小走りでその場を去る。実は、ラーナが最初の刺客だったりする。
ラーナが放つお姉さんオーラと「かわいい」の言葉に惑わされた瞬間、あっという間に会話の主導権を握られ自宅に連れて行かれてしまう。
1、2年前まではかなり戸惑ったけど、慣れてしまえば簡単だ。
ラーナの影が視界から消えたことを確認してスピードを落とす。
「ふぅー……危なかった。さてと、さっさとリリのとこに」
「おーい!フェザー!」
うわっ……よりによって一番会いたくないやつが来たか……。
きれいに焼けた褐色の肌、頭からは牛の角。これだけで分かるだろう。こいつも、俺の昔からの友人ーーーミノタウロスの「カウリア」だ
「なあ、相撲やろうぜ!」
「ヤダッ!」(ダッシュ
「あっ、おいっ!待てって!」
ちっ、スタートダッシュが遅れたか!
「何で逃げんだよ!一回ぐらいいいだろう!?ちょっと前までは普通に遊んでくれたじゃねぇか!」
「いやらしい目付きを直してから言えっ!淫乱牛が!」
こいつの対処法はシンプルだ。逃げる!あるいは無視すればいい。昔は普通に遊んだ仲だったけど、思春期に入ってから急変した。色々知りすぎたんだろ。後は、ご覧の通りです。
なんとかカウリアを撒いた俺は、再び目的地に向かって歩き出す。カウリアのお陰で結構時間をくった。
ーーーそして
研究所を出てから20分くらいか。結構かかった……いや、連れ込まれたり、脱がされそうになってたらもっと時間がかかってたかもしれない。今俺は花屋「フラワーガーデン」の前にいる。
店の前には文字通り、フラワーガーデンがある。花はいい。一輪あるだけで世界が変わって見える……なんて、芸術家なら言うんだろうけど、俺には全く分かんないなぁ。
「おはようございまーす!」
「いらっしゃい……あっ、フェザー君!おはよう!」
中に入ると、俺と同い年くらいの女の子が出迎える。ただ、その肌は緑色で、人間ではない。
「リリ!今日はお前が店番してるんだな」
「うん、お父さんとお母さん、まだ終わってなくて……」
おう……そうかこれ以上は追求しない方が良さそうだ。
「それで、今日はどうしたの?」
「メノットが頼んだ物を取りに来たんだけど……」
俺はメモを見せながら用件を話す。
リリはメモを受け取ると、かかれているものを探し始めた。
「えーっと……あった!」
指差し確認をしながら丁寧に商品を手に取っていく。っていうかメモにも書いてあったけど、主にキノコを頼んでるんだよなぁ……何でキノコを使うんだろうか……。
「お待たせ!お金は貰ってるみたいだから、このまま持っていって!」
確認が終わって、キノコの束を渡してくれたリリ。
貰ったキノコを袋に入れ、店を出ようとしたときだった。
「あっ、ねぇ!」
「………?」
リリの声をかけられて、振り返る。
「あ、あのさ……今日の夕方暇だから……一緒に遊びに行っても、いいよ?」
「……は?」
「だ、たからっ!仕事が終わったら、どっか遊びに行かない……?」
「……あぁ悪い。今日はちょっと手伝いが長くなりそうなんだ。また今度な!」
俺は手を振って店を出る。用事も済んだし、早く研究所に戻んないとな……。
……不覚にも、リリの言葉に少しドキッとしちまった。でも、俺はまだ付き合ったりはしない。自由に生きてやるのさ!「羽根」みたいに、風に乗ってなっ!
16/05/08 18:03更新 / 鞘笛
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