連休に入って3日目。諸々の用事も終わり、
ようやく遊びに出かけた。
そんなわけで電車に揺られながら
ぼーっと座っている。
どうやら、乗客は僕一人だけらしく
ゆったりとした時間が流れる。

車窓から見えるのどかな風景
少し暖かい空気と静謐に包まれ
少しうたた寝してしまう。



｢○○〜、○○〜。｣

電車のアナウンスでふと目を覚ますと
一人の女性が乗車するのが目に入る


整った顔立ちに僕よりも高い身長。
長い桃色の髪をなびかせた
綺麗なお姉さん。
天使族の方だろうか…
背中から翼が生えている。

突然の登場に僕はじっと見つめたまま
動けなくなってしまった。
そんな僕に気がつくと
お姉さんは少し微笑んで、
こちらに会釈する。

す、すごい……
見てたの気づかれちゃったかな…

見つめていたことを感ずかれたのが
恥ずかしくなって
さっと目線を外して、俯いてしまう。
ただ、足音からお姉さんが
こちらに向かって歩いて来るのがわかる。
逃げることも出来ずに、ただ俯いたまま
きゅっと目をつぶっていると
そっと声をかけられる。

｢すみません…、怖がらせてしまいました
よろしければお隣よろしいですか…
おひとり様同士ですし
お話相手になっていただければと…。｣

優しく、甘いその声に
キュンと音がするほどに胸が高鳴る
まるで、初恋の時のように
心音が止まらない。
そんな気持ちに気付くはずもなく
お姉さんはすっと隣に座って
心配そうにこちらを見てくる。

｢大丈夫ですか…お水…
気分が悪いなら次の駅で…｣

お姉さんに気をつかわせたままでは
さすがに居心地が悪すぎたので
深呼吸してから、話し始める。

｢だ…大丈夫です。すみません、
ご心配をお掛けしました。｣

どこからか花畑の匂いがする。
高鳴りを助長させ、
お姉さんに対する好意が
さらに強くなってしまう。

｢そうですか……人間さんは
無理しがちですから……
頑張り屋さんですね…♡偉いですよ…♡
あっ…手を握れば
少し楽になるかも…♡｣

｢あっ、の……手はさすがに…
大丈夫ですから……｣

さすがに恥ずかしかったので
握られるすんでのところで
手を引っ込めた。

お姉さんは少し不思議そうな顔で
こちらを覗き込んでいたが
理解したのか微笑みをこぼす。

｢人間さんは純真ですね…♡
まったく…♡そういうところも
大大だ〜い好きですよ…♡
さすがに誘ってますよね…♡｣


み…みみ……耳元で…！
大好きって…
さっきからなんなんだ…

先程から、自分のペースをガタガタに
崩されて、余裕がなくなってしまう。
胸は強く鼓動を打ち続け、
お姉さんにも聞こえるのでは
と思うほどに激しく音を鳴らす。
先程までの静寂とは打って変わって
あたりの静けさがなくなったかのように
感じる。

｢今日はどちらまで…｣

｢××まで…遊びに…｣

そんなことも露知らず
お姉さんはそのまま雑談に入った。
僕も粗相があってはいけないと思い
必死に話について行く。

｢お姉さんは天使族の方ですか…？
その、背中の翼…｣

｢あら…♡隠し忘れてました…♡
ふふっ…♡そうなんですよ…♡
フーリーという種族です…♡
愛の天使ですよ、愛の…♡｣

気になっていた事を質問すると
やはり予想はあっていたようで
翼を見られたことが恥ずかしかったのか
少し赤面しながら、お姉さんは語った。
笑った時、口に手を当てる
時折、髪を耳にかけ直す
一つ一つの細やかな仕草ですら
気になってぽーっとしてしまう。
そんなこんなで話していると
終点に着いた。
辺り一面すごい花畑で
車内にふわりと陽の光が差し込む

｢お姉さん、終点ですよ。
目的地一緒だったんですね
おn、お姉さん…？｣

何故かお姉さんは僕の膝の上に手を置き
肩に頭を乗せた。
まるで恋人かのようなその仕草に
どぎまぎしているうちに
電車の扉が静かに閉まる。

｢お、お、お姉さん！？大丈夫ですか？
今、車掌さんを呼んできますかr｣

｢やっぱり優しいんですね…♡
大好きです、大大大好き…♡
でも行っちゃやーですよ。文也さん…♡
もうすぐ着きますからね…♡｣

いきなり手を握られ
無理やり席に縫い付けられるように
固定される。

えっ…なんで……、すご……
髪の匂いがもろに鼻に……
というかなんで僕の名前…
まあ、いいか…どうでも……

お姉さんの匂いを嗅いでいると
思考が急に鈍ったように感じる。
気になることが沢山あるのに
そんなことどうでも良くなって
お姉さんに見とれてしまう…
綺麗な指も整った顔も、美しい……

『次は天界〜、天界〜
お出口は右側です。』

｢降りましょうか…♡文也さん…♡｣

気付くと、いつの間にか知らない駅に
着いていた。

天界って…ここって…どこだ…
お姉さんは一体…、
まずい…！

シャボンがパチンと弾けたように
一気に意識が現実に戻される。

｢お姉さん…ここどこですか！
離してください…！｣

必死に振りほどこうと抵抗するが
お姉さんの手は一向にほどけない
それどころか、何事も無かったかのように
澄ました顔で淡々と語り始める。

｢ここは天界ですよぉ…♡文也さん…♡
あなたをお婿さんにするために
ここに連れてきたんです。
もうちょっとおバカさんに
なっててくれませんかねぇ…♡
いっぱい気持ちいいことできますからね…♡
要するに抵抗するなってことです。｣

｢て…天界…？なんで…？
これから一体…離して…｣

｢はーい…♡おしゃべりなお口は
チャックしましょうね〜♡｣

一瞬で取り押さえられ唇を奪われると
そのままお姫様抱っこで
電車から連れ出される。
お姉さんの凛々しく、優しい顔に
何故か王子様を思い浮かべてしまう。
男としてここまで屈辱的なことは
ないはずなのに…
今はこのまどろみに体を委ねていたい。

いつの間にか自分から唇を求めている。
もっと、もっと、繋がりたい。
焦燥感にも似たそんな感情が
僕の心を支配する。
お姉さんとのエッチなことで
頭の中はいっぱいで、
段々、難しいことを考えなくなる。

どこか桃色のモヤのかかった
空気と甘い香りに包まれた
花畑の小道をお姉さんと歩いている。
暖かい。久々に安心する。

｢ぷふっ…♡♡激しいですよぉ…♡
かっこいいキスですね…♡
って、あらあら…♡
今日は検問の日でしたか…♡｣

天界の門まで来たらしい。
何やら手続きをしているようだ…

｢そこにいる方は人間さんですが…
まさか無理やり攫ってきたんじゃ…
どうなんですか…人間さん…？｣

その通りだ…
逃げなきゃ…ここから…逃げないt…

助けを乞う声をあげようとした瞬間に
耳元で初めて声をかけられた時の
ようにそっと優しく囁かれた。

｢私と来たら…どうしてもらえるか…
分かってますよね…
初めて見た時から、恋してたんでしょ…♡
ね…♡一緒に行きましょ…♡
このぬるま湯のような甘い世界で
大好きなお嫁さんと一緒に…♡｣

一気に理性の操縦は出来なくなり
逃亡本能もかなぐり捨てて
ぎゅっとお姉さんに抱きつくと
猫のように頭を押し付けて。
甘えた声で門番に返事をする。

｢ハニーと一緒にいるぅ…♡
僕はハニーのお婿さんですから…♡
邪魔しないで…♡完全合意ですから…♡｣

｢だ、そうですので…♡
ふふっ…♡いいですか…？♡｣

｢し…失礼しました…♡
ふふっ…♡素敵なお婿さんですね…♡
どうぞ…お通りください｣

やってしまった…、最後のチャンスを…
自分から捨ててしまったのだ
しかし何故か、そう思いながらも
心は愉悦に浸っている。
ただひたすらにキュンキュンした
甘酸っぱい気持ちに心を支配されたままだ

｢ふふっ…♡かっこよかったですよ…♡
文也さんのラブラブ告白のお姿…
私の子宮もキュンって疼きまくって
すごいすごい…♡今からこんな殿方を
お婿さんにするんだって思うと
もう惚れ直しちゃいましたよ…♡
かっこいいです…♡文也さん…♡｣

何をしても、どんなことをしても
全てを受け入れ包み込んでくれる。
しかも、こんな美人なお姉さんの
お婿さんになれるんだ…♡
後悔なんてないに決まってる…♡

すっかり洗n…
すっかり教育を施された男の子は
お姉さんの家へと向かった。

■作者メッセージ
あなたにもエロス様の
御加護があらんことを…♡
常に天界から見張られています。

続編はしばしお待ちを…
コメント、ご指摘いただければ幸いです。
ではまた…