四感
カッカッカッカッ…
「…」
背後に感じる気配を振り切り、心なしか早足で帰路を急ぐ
「…っ」
家が見えた。相手の距離が近い
「っ!」
走る。酒で眩んだ視界が揺れる。残り10、5、3、…0
「…おえっ」
洗面所で吐いた。酔っぱらいは走るものではないな
「で、困ってる、ていう訳か」
「そうだ」
対面に座る友人に茶を出し、生返事を返した
「しかしよお、セロ。この御時世、ストーカーなんぞ珍しくも何ともないだろう」
「そうだな」
魔物娘の過度な愛情がそう言った行為に走らせる。よくある話だ。現に、この町でもストーカーの白蛇とくっついた男だっているわけで
「しかし、俺はそういうの苦手なんだ。あとをつけられるとか、そういうの」
「まぁ、そりゃいい気分はしないだろうな」
他人事と思いながら友人はケタケタと笑い、下品に茶を一気飲みした
「セロよぉ、ストーカーに悩むなら、いっその事自分からしかけて見たらどうだ?」
「自分から?」
「おう。曲がり角を曲がってすぐにその場で待ってるとかな」
「リスクが高すぎる。相手が魔物ならほぼ間違いなく組み伏せられてしまう」
「なぁに心配すんな!失敗してもたかがヤられるだけよ!」
「そうか…」
試して見るのも、悪くない。
友人の真似をして、残った少ない茶を、一気に飲み下した。むせた。
「…」
仕事の帰り道、感じる気配
自分に重なって響く足音、今までになく、距離が近い
曲がり角を視認した、曲がり切りその場で待ち伏せ、やはり無謀か、しかし
(睡眠不足解消のためならやむを得まい、セロ、腹をくくれ)
曲がり切った。振り向いて待つ。足音が迫る。徐々に大きくなっていく、そして
「…こんばんは、ストーカー」
「!!」
果たして目の前に現れたのは、月に照らされた美少女だった。尻尾が逆立っていた。
「粗茶だが」
「あ、ありがとうございます…」
ペタリと耳を伏せた稲荷に茶を出す。俺は何を考えたか、ストーカーを家に招き茶を振舞っていた
「其方、名前は」
「あ…の…篠座 夏希と申します…稲荷です…」
ジパングの地では珍しくはない、稲荷の魔物、夏樹は、目と耳を伏せたまま名乗った
「…篠座か、まぁ、とって食うわけではない、話を聞かせてくれれば、届け出はださん。なぜ俺をつけていたか、教えてくれ」
なるべくきつい態度は取るまいと意識をし、夏樹とやらに問いかける。なぜ、俺をつけたのか
「…ご、呉服屋で働いているあなたを見て、髪の色に、驚いたのです」
「…この金髪か」
大陸人とジパング人のハーフである俺は母の髪色を受け継ぎ、秋の麦畑のような、濃く、透き通るような金色をしている。俺の自慢だ
「ジパングでは、みな、黒か茶の髪色をしています。私も、知る限りでは私自身と、母しか知りません」
そういう夏樹のいうとおり、夏樹の髪も、黄金の月のように燭台の日の光を受けて輝いていた
「物珍しさからか、あなたの髪色が焼き付いて…呉服屋には度々、一年ほど前から通っていますが、その度に髪に惹かれて…」
「…髪、ね」
髪の色一つでここまで深い執着を示すとは、危なっかしい娘だ
「そ、それで、見ているウチになんだか胸が高鳴って…お恥ずかしい…言葉を一つも交わしていないのに、貴方に恋をしてしまったのです」
頬を紅葉のように染め、思いを語る夏樹は、としの頃20に届くか届かぬかというのに、ひどく妖艶に見えた
「…そう、か」
内心、唐突な告白を受けて戸惑っていた。老けていると言われながらの18歳、経験なしではこんな状況には対応できない。
『やーいやーいへたれ童貞』
「だまれ」
「ふぇ?」
「あ、いやすまん、其方に言ったことではない、独り言のようなものだ」
脳内の真っ赤なピエロを虐殺しながら、どうするか考えた
悪気はなかったのだろうが、ストーカーという行為は褒められたものではないだろう、しかし約束した以上、奉行に突き出すわけにもいかぬ
「…其方、篠座だったな」
「は、はい」
「とりあえず、ストーカー行為はやめてくれ、最近はそれのせいで夜も怯えで眠れなかったのだ」
「ま、真に申し訳ありません、金輪際いたしません」
深く頭を下げる夏希を見て、根はいい子なのだと、何となく思う。きっとそれだけ、俺に深い情を抱いたのだろう、ならば
「篠座よ、其方年はいくつだ」
「え、えーと…19です」
「年上か」
「え、えぇ!?」
まずはこちらも、相手を知ろうと思った
「セロ、セロー」
「お呼びですか、ご主人」
「おう、来たか。悪いが、この着物をべあとりすさんの家に届けてくれや、それが終わったらそのまま今日は終わりでいい」
「わかりました」
着物をいれた箱を預かり、風呂敷に丁寧に包み、店を出る。
べあとりすさんといえば、俺の家を通り過ぎたあたりにある町外れの西洋の館に住む吸血鬼だ
着物にずいぶんご執心で、また金髪の俺のおかげか気後れせずに店の常連になった。銀髪が綺麗な既婚者だ
「…2時か」
母の形見の懐中時計で時間をみる。そういえば昼を食べていなかった。腹が空腹を訴える。
「届けたら飯にするか」
「セロくーん!」
ふと、元気な声に振り向いてみれば、カラリコロリと下駄を鳴らして夏希が走り寄ってきた
「夏希殿か、何用だ?」
「えへへ、見かけたから声をかけちゃいました。お届けもの?」
「あぁ。町外れのベアトリス様に着物をな」
「へぇ〜…ついてっていいー?」
「あぁ」
「やたー!」
あの夜、年齢を知ってからは気を払うようにしたら、夏希の方もそれに慣れ、こちらに砕けた口調で話すようになった。しかし、くんをつけるのは恥ずかしい
「届けたら飯にする予定だが、暇ならどうか?団子くらいは馳走しよう」
「ほんとう?ありがと!」
ニコリと微笑む顔に不覚にも胸を高鳴らせた。喜んだ顔はまるで咲き誇る花のような笑顔だ
「あ、あぁ…なら急ごう。木村屋の団子はなくなるのが早い」
「あ、まってよー」
歩を早めると、カラリコロリがカラコロカラコロと音を変えた。早足で歩調を合わせているのだろう。その姿を想像して、何となく胸が暖かくなった
『わざわざすまなかったな、セロ。届け物などさせてしまって。私も早くデイウォーカーと慣れればな…』
『気になさるな。常連客のベアトリス様になら、届け物の一つや二つ、軽いものでございます』
『ふふ、そうか…今茶を入れよう、ゆっくりしていくといい』
『いえ、実はこのあと、予定が』
『予定?…ふふ、そうか、セロにもやっと春がきたか』
「?…??」
母直伝の大陸言語で会話をすれば、夏希は当然置いてけぼりで
『あのキツネ、化かすつもりが化かされておる。可愛い子だ。逃がすなよ。』
『お戯れを…今後も、ご贔屓に』
にやけ顔で手を振るベアトリス様を背に、夏樹の手を引き屋敷をでた
「大陸の言葉、喋れるんだねぇ」
「あぁ、母に習った…普段は日の本の語だがな」
「そりゃそだね…しかし、むぅ…」
「どうした?」
「べあとりすさんとばかりしゃべっていて、寂しかったな〜」
少しばかり怒って膨れた顔にまた胸が少し跳ねた。この幼い年上は、少しばかりかわいすぎる
「…私用に付き合わせてしまった。団子、三本いいぞ」
「ふ、ふとっちゃうよ…」
「あーあ、せっかくの逢引の日に雨なんて」
「間が悪いな、俺は」
「もう、セロくん全然残念そうじゃないし!」
「突然何を…」
隣町に出かけて逢引を予定していた日、ざんざ降りの雨に見舞われ。昨晩我が家に泊まった夏希と手持ち無沙汰のまま家でぼーっとしていた
「始めての逢引だったんだしさ!もう少し残念がってもいいんじゃないー?」
「いや、俺だって残念だ、ただ、な…思い出す、雨の日は」
「思い出す?」
きっと遠い目をしているだろう俺の眼を覗き込み、夏希は首をかしげた
「あぁ、ちょうどこんな雨の日だった。野党に襲われて父と母は死んだ。七歳だった俺は野党に攫われて慰み者にされて、な。奉行の助けが来るまでの二日間は、地獄だった…」
「…セロ、くん」
「野党は俺の髪を珍しがってな…髪が黒ければ殺されていたか。いや、母は殺された。きっと奴ら相当の変態だったんだろう」
「セロくん…!」
語り出して止まらない口を、胸に埋められて塞がれた
「ごめんね、辛いこと言わせちゃったね」
「…昔のことだ、もう吹っ切った」
夏希の肩を軽く押して離す。そして夏希の目をじっと見た
「それにな、今は夏希がいるから全然哀しくない。楽しいくらいだ」
「…そっか」
「三ヶ月記念の逢引は中止だし、今日は何をする、夏希」
「…セロくんと、ゆっくりお昼寝したいな」
「…そうか」
細い体をギュッと抱きしめた。柔らかい身体で抱きしめ返された。
夏希が、愛おしい
「…そろそろお暇させていただこう」
「おいー、もう帰るのかよー」
「あぁ。遅くなるとこが騒ぐのだ」
「ちぇー、相変わらず子煩悩だな」
「お前も持てばわかるさ、きっとな」
「そうかいそうかい、ケッ…お前さ、嫁さん、確か出会いはストーカーだったか」
「あぁ、今となっては懐かしいな」
「マジでくっつくとはそのときゃおもってなかったなぁ」
「俺もだ。全く、これだから人生は面白い…お代ここにおいとく。ではな」
「あいよー」
「俺も、嫁が欲しいね」
「…」
背後に感じる気配を振り切り、心なしか早足で帰路を急ぐ
「…っ」
家が見えた。相手の距離が近い
「っ!」
走る。酒で眩んだ視界が揺れる。残り10、5、3、…0
「…おえっ」
洗面所で吐いた。酔っぱらいは走るものではないな
「で、困ってる、ていう訳か」
「そうだ」
対面に座る友人に茶を出し、生返事を返した
「しかしよお、セロ。この御時世、ストーカーなんぞ珍しくも何ともないだろう」
「そうだな」
魔物娘の過度な愛情がそう言った行為に走らせる。よくある話だ。現に、この町でもストーカーの白蛇とくっついた男だっているわけで
「しかし、俺はそういうの苦手なんだ。あとをつけられるとか、そういうの」
「まぁ、そりゃいい気分はしないだろうな」
他人事と思いながら友人はケタケタと笑い、下品に茶を一気飲みした
「セロよぉ、ストーカーに悩むなら、いっその事自分からしかけて見たらどうだ?」
「自分から?」
「おう。曲がり角を曲がってすぐにその場で待ってるとかな」
「リスクが高すぎる。相手が魔物ならほぼ間違いなく組み伏せられてしまう」
「なぁに心配すんな!失敗してもたかがヤられるだけよ!」
「そうか…」
試して見るのも、悪くない。
友人の真似をして、残った少ない茶を、一気に飲み下した。むせた。
「…」
仕事の帰り道、感じる気配
自分に重なって響く足音、今までになく、距離が近い
曲がり角を視認した、曲がり切りその場で待ち伏せ、やはり無謀か、しかし
(睡眠不足解消のためならやむを得まい、セロ、腹をくくれ)
曲がり切った。振り向いて待つ。足音が迫る。徐々に大きくなっていく、そして
「…こんばんは、ストーカー」
「!!」
果たして目の前に現れたのは、月に照らされた美少女だった。尻尾が逆立っていた。
「粗茶だが」
「あ、ありがとうございます…」
ペタリと耳を伏せた稲荷に茶を出す。俺は何を考えたか、ストーカーを家に招き茶を振舞っていた
「其方、名前は」
「あ…の…篠座 夏希と申します…稲荷です…」
ジパングの地では珍しくはない、稲荷の魔物、夏樹は、目と耳を伏せたまま名乗った
「…篠座か、まぁ、とって食うわけではない、話を聞かせてくれれば、届け出はださん。なぜ俺をつけていたか、教えてくれ」
なるべくきつい態度は取るまいと意識をし、夏樹とやらに問いかける。なぜ、俺をつけたのか
「…ご、呉服屋で働いているあなたを見て、髪の色に、驚いたのです」
「…この金髪か」
大陸人とジパング人のハーフである俺は母の髪色を受け継ぎ、秋の麦畑のような、濃く、透き通るような金色をしている。俺の自慢だ
「ジパングでは、みな、黒か茶の髪色をしています。私も、知る限りでは私自身と、母しか知りません」
そういう夏樹のいうとおり、夏樹の髪も、黄金の月のように燭台の日の光を受けて輝いていた
「物珍しさからか、あなたの髪色が焼き付いて…呉服屋には度々、一年ほど前から通っていますが、その度に髪に惹かれて…」
「…髪、ね」
髪の色一つでここまで深い執着を示すとは、危なっかしい娘だ
「そ、それで、見ているウチになんだか胸が高鳴って…お恥ずかしい…言葉を一つも交わしていないのに、貴方に恋をしてしまったのです」
頬を紅葉のように染め、思いを語る夏樹は、としの頃20に届くか届かぬかというのに、ひどく妖艶に見えた
「…そう、か」
内心、唐突な告白を受けて戸惑っていた。老けていると言われながらの18歳、経験なしではこんな状況には対応できない。
『やーいやーいへたれ童貞』
「だまれ」
「ふぇ?」
「あ、いやすまん、其方に言ったことではない、独り言のようなものだ」
脳内の真っ赤なピエロを虐殺しながら、どうするか考えた
悪気はなかったのだろうが、ストーカーという行為は褒められたものではないだろう、しかし約束した以上、奉行に突き出すわけにもいかぬ
「…其方、篠座だったな」
「は、はい」
「とりあえず、ストーカー行為はやめてくれ、最近はそれのせいで夜も怯えで眠れなかったのだ」
「ま、真に申し訳ありません、金輪際いたしません」
深く頭を下げる夏希を見て、根はいい子なのだと、何となく思う。きっとそれだけ、俺に深い情を抱いたのだろう、ならば
「篠座よ、其方年はいくつだ」
「え、えーと…19です」
「年上か」
「え、えぇ!?」
まずはこちらも、相手を知ろうと思った
「セロ、セロー」
「お呼びですか、ご主人」
「おう、来たか。悪いが、この着物をべあとりすさんの家に届けてくれや、それが終わったらそのまま今日は終わりでいい」
「わかりました」
着物をいれた箱を預かり、風呂敷に丁寧に包み、店を出る。
べあとりすさんといえば、俺の家を通り過ぎたあたりにある町外れの西洋の館に住む吸血鬼だ
着物にずいぶんご執心で、また金髪の俺のおかげか気後れせずに店の常連になった。銀髪が綺麗な既婚者だ
「…2時か」
母の形見の懐中時計で時間をみる。そういえば昼を食べていなかった。腹が空腹を訴える。
「届けたら飯にするか」
「セロくーん!」
ふと、元気な声に振り向いてみれば、カラリコロリと下駄を鳴らして夏希が走り寄ってきた
「夏希殿か、何用だ?」
「えへへ、見かけたから声をかけちゃいました。お届けもの?」
「あぁ。町外れのベアトリス様に着物をな」
「へぇ〜…ついてっていいー?」
「あぁ」
「やたー!」
あの夜、年齢を知ってからは気を払うようにしたら、夏希の方もそれに慣れ、こちらに砕けた口調で話すようになった。しかし、くんをつけるのは恥ずかしい
「届けたら飯にする予定だが、暇ならどうか?団子くらいは馳走しよう」
「ほんとう?ありがと!」
ニコリと微笑む顔に不覚にも胸を高鳴らせた。喜んだ顔はまるで咲き誇る花のような笑顔だ
「あ、あぁ…なら急ごう。木村屋の団子はなくなるのが早い」
「あ、まってよー」
歩を早めると、カラリコロリがカラコロカラコロと音を変えた。早足で歩調を合わせているのだろう。その姿を想像して、何となく胸が暖かくなった
『わざわざすまなかったな、セロ。届け物などさせてしまって。私も早くデイウォーカーと慣れればな…』
『気になさるな。常連客のベアトリス様になら、届け物の一つや二つ、軽いものでございます』
『ふふ、そうか…今茶を入れよう、ゆっくりしていくといい』
『いえ、実はこのあと、予定が』
『予定?…ふふ、そうか、セロにもやっと春がきたか』
「?…??」
母直伝の大陸言語で会話をすれば、夏希は当然置いてけぼりで
『あのキツネ、化かすつもりが化かされておる。可愛い子だ。逃がすなよ。』
『お戯れを…今後も、ご贔屓に』
にやけ顔で手を振るベアトリス様を背に、夏樹の手を引き屋敷をでた
「大陸の言葉、喋れるんだねぇ」
「あぁ、母に習った…普段は日の本の語だがな」
「そりゃそだね…しかし、むぅ…」
「どうした?」
「べあとりすさんとばかりしゃべっていて、寂しかったな〜」
少しばかり怒って膨れた顔にまた胸が少し跳ねた。この幼い年上は、少しばかりかわいすぎる
「…私用に付き合わせてしまった。団子、三本いいぞ」
「ふ、ふとっちゃうよ…」
「あーあ、せっかくの逢引の日に雨なんて」
「間が悪いな、俺は」
「もう、セロくん全然残念そうじゃないし!」
「突然何を…」
隣町に出かけて逢引を予定していた日、ざんざ降りの雨に見舞われ。昨晩我が家に泊まった夏希と手持ち無沙汰のまま家でぼーっとしていた
「始めての逢引だったんだしさ!もう少し残念がってもいいんじゃないー?」
「いや、俺だって残念だ、ただ、な…思い出す、雨の日は」
「思い出す?」
きっと遠い目をしているだろう俺の眼を覗き込み、夏希は首をかしげた
「あぁ、ちょうどこんな雨の日だった。野党に襲われて父と母は死んだ。七歳だった俺は野党に攫われて慰み者にされて、な。奉行の助けが来るまでの二日間は、地獄だった…」
「…セロ、くん」
「野党は俺の髪を珍しがってな…髪が黒ければ殺されていたか。いや、母は殺された。きっと奴ら相当の変態だったんだろう」
「セロくん…!」
語り出して止まらない口を、胸に埋められて塞がれた
「ごめんね、辛いこと言わせちゃったね」
「…昔のことだ、もう吹っ切った」
夏希の肩を軽く押して離す。そして夏希の目をじっと見た
「それにな、今は夏希がいるから全然哀しくない。楽しいくらいだ」
「…そっか」
「三ヶ月記念の逢引は中止だし、今日は何をする、夏希」
「…セロくんと、ゆっくりお昼寝したいな」
「…そうか」
細い体をギュッと抱きしめた。柔らかい身体で抱きしめ返された。
夏希が、愛おしい
「…そろそろお暇させていただこう」
「おいー、もう帰るのかよー」
「あぁ。遅くなるとこが騒ぐのだ」
「ちぇー、相変わらず子煩悩だな」
「お前も持てばわかるさ、きっとな」
「そうかいそうかい、ケッ…お前さ、嫁さん、確か出会いはストーカーだったか」
「あぁ、今となっては懐かしいな」
「マジでくっつくとはそのときゃおもってなかったなぁ」
「俺もだ。全く、これだから人生は面白い…お代ここにおいとく。ではな」
「あいよー」
「俺も、嫁が欲しいね」
13/02/07 23:28更新 / トライブレイズ