|
||
―同日 1時間後 野営地 さっきの場所を出発してだいぶ歩き、俺はロムルと彼らの野営地にようやく到着した。 到着するとすぐにロムルは俺をたき火の前の丸太に座らせると、いきなりこう言った。 「君は君の世界からこの世界に連れて来られたようだ。これはほぼ間違いない」 「・・・え?今何と?」 「君は違う世界にいる、と言った方が分かりやすいかな?」 俺はなんだかわけが分からなくなってきた。これが現実なら、俺は見知らぬゾンビ娘についさっき童○を奪われた事になる。なんだか複雑な気分だ。 俺は耐え切れなくなってロムルに言った。 「これは夢ですか?そうなら今覚めてくれれば・・」 「夢ではないぞ。証明はできんがな。とりあえずここのことを何か知っているか?」 ぴしゃりと否定されたことはいいとして、俺はここのことを何一つ知らないのに不安を覚えた。 ただ1つだけ分かっているのは、かわいい(でも人間ではないような)女の子がいい意味で襲ってくる男にとってかなり夢のある世界だということだけだが、これはさすがに口に出すのはやめておいた。 「・・いえ何にも。ここは一体?」 「私たちはこの世界のことを[ヴァイス]と呼んでいる。ヴァイスは主に3つの大陸と、いくつかの島々で構成されていて、それぞれの大陸は気候も風土もかなり異なる、そして・・・」 ロムルはそう話し始めた。 彼の話が終わったのはそれから一時間ほど後だった。何やら専門的な言葉や様々な町の名前?などは全く分からなかったが、俺がなんとか理解したのは、 ・この世界は人間(ヒト)と魔物が主に暮らしていて、比較的ヒトの多い場所もあれば、魔物ばかりの場所もあったりと様々で、また大陸によって人種も魔物の種類や分布の傾向も異なっている ・魔物は例外を除いてほとんどが雌(女性)である ・魔法がある(人間はほとんど使えず、主に魔物たちが使うそうだ) ・魔力は魔物にとってはビタミンのように体に無くてはならないもので、それはこの世界では主にヒトの精液に多く含まれている(だから先ほど俺はゾンビ娘に襲われたそうだ) ・俺のいた世界の中世の時代観に近い ということだった。 「とりあえず今はこれくらいでいいだろう。ミツキ、腹が減っているなら食べるといい」 ロムルはそう言ってシチューのようなものを差し出した。どうやらたき火で温められていた鍋に入っていたものはこれだったようだ。 「いただきます」 「ミツキ、そんな堅くなるな。そんな丁寧な言葉は使わなくていいぞ」 「いや、でも・・・。・・わかった」 俺がそう言うとロムルは満足そうにほほ笑んだ。 「よし、それでいい。それとミツキ、君はこれから行くあてがないのだろう。なら私たちとしばらく行動を共にしてはどうだ?」 「そうするしかないよね?」 「その通り。今日はここでゆっくり休むことにしよう。明日、この森を出ることにしよう」 「あ!そう言えばここがどこだかまだ聞いてないんだけど・・」 俺はここの周辺の事をまだ聞いていなかったことに気付き、慌てて彼に訊ねた。 「!忘れていた。ここは[時の森]と呼ばれている。ここは不思議な場所でな。今まで誰も見たことがないものが落ちていたり、ミツキのように他の世界から人がやってくることもごく稀にあるそうだ」 「・・まあ大概はここに生息する魔物たちに骨抜きにされて力尽きたり、同じ魔物にされてしまうことも多いらしいがな」 そう笑いながらロムルは事もなげに言った。 (・・どうも良い事ばかりではないみたいだな) そう思いつつ、とんでもない世界に迷い込んでしまったらしい、と俺は今更ながら実感した。 「それと、私がなぜ君が来た場所を知っているか気になったろう。実はずっと昔にも君と同じようにこの森にふと現れた男がいたのだよ。彼はどうにかして元の世界に帰ろうとしたが、結局自分がこの世界に来た場所、つまり再度[屋根の下にある木のベンチ]を見つけることは出来なかったそうだ」 「・・・え!?じゃあもしかして俺も・・・」 もしかして帰れなくなってしまうのだろうか。 「いや、まだそれは俺にも分からない。とりあえず私はギルドの依頼でここに来ている。謎の物体の回収という名目でだ。まさかその‘物体’が人だとは思いもしなかったがな。ギルドマスターは君が来ることを知っていたに違いない。とりあえず町に着いたら君を彼女の所へ連れていくことにしよう」 初めて聞き覚えのある単語が出てきたんじゃないか?。聞く限り、ギルドってのは某RPGによくあるものと同じだろうと俺は思った。が、とりあえず聞いておこう、もしかしたら違うかもしれないし。 「ギルドっていうのは?」 「簡単に言うとなんでも屋だ。依頼をこなし、報酬を受け取る。いたって単純な仕事もあれば、かなりの危険が伴うものもあったりと内容は様々だがな」 これは想像通りだった。段々とこの世界のことが分かってきた気がする。 「まあ細かなことは後々話すとして」 とロムルが言うと同時に、木陰から先ほどの少女が勢いよく飛び出してきた。 「旦那ぁ、ちゃんとさっきの場所の周りを探したけど、他には何も見つからなかったよ」 そう言ってこちらへちょこちょこと走ってくると、俺を見て少し顔を赤くした。どうやらあの時から何か俺に対して‘変態’のようなイメージを持たれてしまったようだ。・・・初対面があれじゃあ仕方ないね。 「そうか、ご苦労。そういえばいろいろあって紹介が遅れていたな。この娘はミミィ。見ての通り、ラージマウスだ」 まあ見たところネズミのようには見えたが、この娘も魔物だったのかと若干俺は驚いた。 「よ、よろしく」 「・・よろしく、です」 「ちょっと人見知りするが、根はいい子だ。仲良くしてやってくれ」 ロムルはそう言って、少女の首根っこの服をつまみあげると、俺の隣にちょん、と座らせた。見た目以上に相当腕力があるようだ。 彼女はちょっとびっくりしたようだが、ロムルにシチューの入った器を渡されると、すぐに猛烈な勢いで食べ始めた。 ロムルも俺の向かい側の丸太に座ると、自分の分のシチューを装りながら、 「さあ、あしたは早い。たくさん食べて、明日に備えるぞ」 そう言って食べ始めた。隣の少女も、もぐもぐとかなり速いスピードで食べ続けている。 (このままだと俺の分(おかわり)が無くなる・・) 若干の危機感を覚えた俺は、急いで2人に続いて食べ始めた。 ―同日 深夜 簡易テントの寝袋の中 ・・・・・・・・・・・。 ・・・・・・・・。 ・・・・・。 なんだかやたらと鼻がむずがゆい。 俺はあの後シチュー(ミミィが作ったたらしい)をたらふく食べた後、すぐにロムルに案内された寝袋に 入って眠ってしまった。夢ならここで覚めるはずだが、寝袋の中でまた意識が戻ってきたことを考えると本当に夢ではないようだ。それはともかく、さっきから何かが俺の鼻をこちょこちょとくすぐっているみたいだ。 (・・・俺の鼻をくすぐっているのは何だ?もう・・くしゃみが出そうなんだけど・・・) さっき俺が起きたのは全くの偶然だったが、そうして目を開けずに色々と考え事をしていたら急にわけの分からないこのような事態に陥っているのだ。 (ゆっくり目を開けてみよう) そう思い目を開けると・・・・・・ ミミィが俺の顔を覗き込んでいた。手には猫じゃらしのようないかにもくすぐるために生まれてきたとしか言えない形の植物が握られている。ロムルはテントの中にはおらず、どうやら外で見張りでもしている様だ。 俺が起きたのに気付くと、彼女はひゃっと言って俺の顔に突撃してきた。 ドスッ 思いっきりとび蹴りを食らってしまった。 「ぎゃっ、い、痛い・・・」 「あ、ごめ、ごめんなさいっ、あのっ、そのっ、これは、」 「ちょ、ちょっと落ち着こうよ、ね!?」 こっちが驚くのが普通だよ、と思ったが、ミミィはなぜか俺よりテンパっていた。額に突如蹴りを食らって目の前に星が散っている中、俺はとりあえずそう言った。 「あ、うっ、はい・・・」 それから数分して、彼女は落ち着いてきたらしく、それを見計らって俺はさっきの事を訊ねた。 「どうして俺の鼻なんかをくすぐったの?」 「そ、それは・・・あの・・・」 「何?」 「初めてだったから・・」 「え?何が?」 「その、ヒトの男の子を見たのが。・・・どんな風かなって思って」 「何がどんな風!?なんでそこで鼻をくすぐるんだよ!?」 「ご、ごめんなさい・・・」 興奮してツッコミすぎてしまった。いやマジで意味分かんないんだけど。一体どこに初対面で鼻をくすぐって相手を観察する人間がいるんだよ!?しかもとび蹴り付き。 (・・よくよく考えたらこの娘、人間じゃなかったな。・・なんだこのノリツッコミは) そんな無駄なことを考えてたら気持ちが落ち着いてきたので、しゅんとして自分のシッポをいじっているミミィに声をかけた。 「怒ってるわけじゃないし、びっくりしただけだから」 「ほ・・ほんと?」 「ああ、本当だよ」 そう俺が言った後ミミィは黙ってしまった。 ・・・・・・・・・・・気まずい。 なにか話しかけないと、そう思った時、ミミィが先に口を開いた。 「あ・・あなたはどうやってここに来たの?」 「俺?俺は・・・」 そう言って俺は自分がいままでのいきさつを話し始めた。 当然あのゾンビ娘との行為の所に話が進むと、彼女はぽっ、と顔を赤く染めた。 ・・一通り話し終えると、今度は彼女が口を開いた。 「あたいは旦那に助けてもらってから、一緒に仕事を手伝ってるの」 「助けてもらったって?」 詳細を聞くと、何年か前に街の裏道でお腹が減りすぎて動けなくなった彼女の所を偶然ロムルが通りかかり、介抱してもらったそうだ。 「あたいヒトにあんなに優しくされたの初めてだったの」 「そうか・・いろいろと大変だったんだな」 「でも今は旦那の役に立てて嬉しいんだ。・・あとお腹いっぱい食べれるし」 ミミィはそう言うと突然恥ずかしくなったのか、自分の寝袋にすごい速さでもぐり込んだ。 「じゃ、じゃあ明日は早いからあたい寝ます!お、おやすみなさい、あの、ええと・・・」 「ミツキでいいよ」 「うん・・おやすみ、ミツキ・・・zzz」 そう言うと彼女はすぐ寝息を立て始めた。 (明日早いんだっけな。もう寝ないと) 俺もそう思い目を閉じた。 ・・すぐに俺は意識が遠くなり、夢の世界へ入っていった・・・
10/12/27 23:51 up
説明多くなっちゃいました。 文章力無いな、と読み返しながら反省してます。 だんだん面白くなるように頑張っていきたいです・・ あと今回エロは無しでした。申し訳ない。 若干のミスを修正しました。 masapon
|