第四章 エリエールの日記 その一 (シリアス、微ギャグ)
「姉貴ー早く早く!!」
「・・・元気だな、お前たちの姉は」
「まあ、それだけが取り柄ですからね、カリン姉さんは」
「ご、ごめんなさい」
「ああ、いやすまない、別に怒ってるわけじゃないからそんなに気を落とさなくていいよ」
元気なカリンを見て思わず言ってしまった言葉に対し、マリンが謝ってきたので慌てて謝罪をするフレイヤ。
宿屋で休息を取ったとはいえ、ここまでずいぶん歩いたため正直に足が痛いというのが本音だ。
しかし、三姉妹はケロッとしていてまだ余力があるように見える、その中でも三姉妹の長女、カリンが一番元気だった。
「やはり、こういう長距離の移動には慣れているのか?」
「そうですね、あたしたちはいつも旅人たちを襲うために一月に一回のペースでいろんなところに行きましたからね、まあ主にカリン姉さんが飽きっぽいせいというのもあるんですけどね」
その表情からは「苦労」の二文字が見て取れた。
マリンのほうも似たような顔をしていた。
「・・・苦労しているんだな」
「ええ」
そして当の本人はそんな会話をされているとも知らずに鼻歌を歌いながら元気に上り坂を歩いていた。
「おっあれは・・・」
上りきったと思ったら、突然カリンの動きが止まった。
何事かと考えていたら。
「姉貴ー!!見えたよ、エリエールの街がー!!」
その言葉を聞いたのと同時に私たちは駆け出していた。
一気にカリンのところまで上るとその先には大都市エリエールが見えた。
「あれがエリエール」
「うわあ、大きいです」
「本当でかいなー!」
「たしかに大きいですね」
遠くから見下ろしているにもかかわらずその町の形がはっきりとわかるのだ。
これはたしかに大きいといえるだろう。
「ついに着いたんだなエリエールに、私はこの時をどれほど待ったことか・・・さあいくぞみんな」
「「「おーーー!!」」」
エリエールまであと少し、私は期待に胸を躍らせながらエリエールに向かった。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
街の入り口にたどり着くと、まず目に入ったのが防壁だ。
それもかなり高さのある防壁だ。
大都市エリエールにはもう一つ名前がある、その名も要塞貿易都市エリエール。
その名の通り要塞を備えた貿易を盛んに行っている都市である。
シンボリ大陸にある都市で唯一、世界を相手に商売をしている、そのため自然といろんな商人がこのエリエールに修行もしくは商売をしにやってくる。
まさに商人にとっては聖地といっても過言ではない場所である。
もちろん商売は何も世界だけではなく、ちゃんと街の人に対しても行っている。
そのジャンルは実にさまざまで日用品から食料品はもちろんのこと、衣服、工芸品、宝石、武器防具などなどたくさんの商売をしている。
しかしこれだけ商売を発展させれば当然、盗賊などが盗みにくるなどの被害も出てくるため、昔は自警団を作って撃退していたそうだ。
だがあるとき、教団派の軍が突然やってきて一時街を占領された経歴がある、そのときは魔界軍の力を借りて撃退はされたがそれでもかなりの損害を受けた。
その教訓を生かし、当時の領主は貿易で得た金を使い、防壁を立て、軍備を充実させたと言われている。
その歴史ある偉大な防壁が目の前にある。
その事実がフレイヤの体を震わせていた。
「ど、どうしたの姉貴、そんなに体を震わせて?」
「さ、さむいんですか?」
「フレイヤさん大丈夫ですか?」
三姉妹が心配そうに顔を覗いてくる。
「すまない、あまりに嬉しくてな、体の震えが止まらんのだ。
ともかくここで立ち止まっても仕方ないから、街に入るか」
「「「は〜〜〜い」」」
そういって私たちは関所に向かった。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
「うん?・・・おいそこの者たち止まれ」
フレイヤたちは関所の兵士に呼び止められた。
「この街に入るには、通行証もしくは身分を証明するものが必要だ。
どちらかを提示してくれ」
フレイヤはアイテムバックから村長にもらった通行証を取り出した。
「これでいいだろうか?」
「失礼、拝見させていただく・・・・・・!?オステカ・・・はっはっはっは、なんだ貴様ド田舎から来たのか?」
「なっ!?いきなり初対面の人に対してその言い方は失礼ではないか!!」
「だってあそこはいまだに古臭い戒律に縛られて、あまり外のものとは交流をしようとしないではないか、しかも森や山に囲まれて得に目立ったものもない、これをド田舎と呼ばずしてなんて呼べというんだ」
フレイヤは完全に頭にきていた。
(いくらなんでも初対面にこんなことを言うなんて、許せない)
殴りかかろうとした瞬間。
「この大馬鹿者!!!!!!!」
ドゴーーン!!
突然兵士の後ろから何者かが兵士に対して拳骨を放っていた。
拳骨を食らった兵士の兜はベコンと凹んでおりピクリとも動かない。
どうやら気絶してしまったようだ。
「すまない旅のお方、うちの部下が失礼を働いた、どうか許していただきたい」
そういって現れたのは緑のウロコにつつまれ、そして緑のポニーテールをなびかせているリザードマンだった。
突然のことに唖然としていたフレイヤは我に返り。
「いえこちらこそ、あともう少しで手を上げてしまうところだった。
おかけで助かりました」
フレイヤは頭を下げた。
「ふっ、はっはっは、いやー気に入ったよあんた、普通なら怒ってもいいところだと思うのだがな、まさかお礼を言ってくるとはな」
そういってまた豪快に笑い出したあと。
「ふぅー、こんなに笑ったのは久しぶりだ。
自己紹介が遅れたな、私の名はケーニッヒ=グラン、一応はこの南関所の守備警備部隊隊長を務めている、あらためて歓迎しよう。
大都市エリエールにようこそ」
「私の名はヴァル=フレイヤ、こっちは私の仲間で」
「あたしはカリンよろしくー!!」
「あたしはコリン、よろしくお願いします」
「あたしは、マ、マリン、です、よ、よろしく、お願いします」
「そちらは仲間だったか、ちなみに彼女たちは通行証もしくは身分を証明できるものを持っているかな?」
「そんなもん持ってるわけないじゃん」
カリンが能天気に答える。
「持っていないのか」
「やはり証明ができないと街には入れないのでしょうか?」
「そうだな・・・一応は入れる手段はある」
「それは?」
「まあこれだな」
そう言ってグランはお金が必要というジェスチャーをした。
「身分を証明できなければ金を払うしかない、この街のルールでね、お金を払うのはいわば保証金みたいなものさ」
「保証金?」
「そう、私はこの町で犯罪を犯しませんという意味を込めて払う金だから保証金なんだ。
わざわざ金を払ってまで犯罪を犯しに来るのはよっぽどの馬鹿だからな」
「なるほど、それでいくらになるんですか?」
「子供三人だから、銀貨一枚と銅貨五枚だな」
「あたしたちはこもぉぉお!?」
「「なんでもないです」」
そこにはなぜかカリンを抑えている、コリンとマリンがいた。
おそらくは現在の経済状況を知っているから取った行動なのだろう。
(ギリギリで足りるが、払えば文無しになってしまうが・・・仕方がないか)
フレイヤがお金を払おうとしたとき、グランはにやりと笑い。
「と、いつもなら金を頂戴するのだが、今回はこちらが失礼を働いた面もあるから特別にタダでこれをやる」
そういって差し出してきたのは銅でできたコインで「客」という文字が彫られているものだった。
「これは?」
「この街に客人として入った者の証だ。
それが身分証明の代わりになる」
「でもいいのですか?」
「構わない、失礼を働いたのは事実だからな、それに私はお前が気に入った。
だから特別だ、それに彼女たちはどう見ても悪い子には見えないからな」
「ぷはぁー、あったりまえじゃんこんなにかわぶも!?」
「「お気になさらずー」」
再度押さえ込みに入るコリンとマリン。
今度は話がややこしくならないように抑えたのだろう。
「そ、それではありがたく頂かせてもらいます」
「ああ受け取りな」
フレイヤは三人分のコインを受け取った。
「それでは通らせてもらいますね、そうだ一つ伺いたいんですが、冒険者ギルドにはどういったらいいのか教えてもらえますか」
「冒険者ギルド?なんだあんた冒険者になりにきたのか」
「ええ、そうです」
「ふうーん、そうかい。
冒険者ギルドだったな、それなら中央地区に向かうといい、この先は大通りになっていてそこをまっすぐ進めば中央地区の関所が見えるはずだ。
そこを抜けると領主の城が見える、その城の付近にあるはずだから探してみな」
「詳しい場所は分からないんですか?」
「冒険者になるんだったら自分で見つけてみな、これくらいできないようじゃ冒険者になったとき困るのは自分だからな」
「なるほど、既に試練は始まっているということですか」
「そういうことだ」
「わかりました。よしみんないくぞ」
「「「おーーーー!!」」」
フレイヤたちは関所を出てギルドを目指した。
「さてフレイヤたちは冒険者になれるかねぇ、あそこのマスターは変わり者だからな。
さてとギルドに連絡と通行記録を書かねば・・・コラ!!!いつまで寝てるか、さっさと起きろ!!!」
「うーん・・・はっ。オレはいったい何をしていたんだ」
どうやらあまりの威力に一部記憶を失ったようだ。
「なんだお前覚えていないのか?まあそれなら好都合、さっさと起きて仕事をしろ」
「ハッ、了解しました」
敬礼をする兵士、しかしなぜか頭が痛くて、そして自分はなぜ倒れていたのか、そんな疑問がよぎったが気にしないようにして仕事に戻っていった。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
私たちは領主の城の付近にあるベンチに腰を下ろしていた。
「ふうーまいった、さっぱりといっていいほどに見つからないな」
「そうですね。やっぱり表通りじゃなくて裏通りにあるってことじゃないんですか」
「裏通りか・・・たしかにそのあたりはまだ調べていないからその可能性はあるな」
「んじゃ探索を再開しようぜ姉貴!!」
「・・・・・」
フレイヤはマリンが何かをじっと見つめていることに気がついた。
「どうしたんだマリン?」
「えっ!?あ、いや、その・・・あのお城なんか地味だなって思って」
「城?」
フレイヤは城のほうを見た。
確かに城といえば派手な外観が印象的には強いのだが、あの城は飾り気があまりなく地味といえば地味だった。
しばらくじーっと眺めているとあることに気がついた。
「確かに地味だが、なかなかいい城だと思うよ」
「「「えーーーーーーー!!?」」」
三姉妹が声を上げて驚いている。
「姉貴、頭大丈夫?」
「フレイヤさん、相当疲れてるんじゃ?」
「無理は、よくないですよ」
「お前たち・・・なかなか失礼なことを言ってくれるな」
「「「あっ」」」
タラタラタラ・・・・・
三姉妹は冷や汗を掻き始めた。
フレイヤお得意の目が笑っていない笑みをしているからだ。
「まったく、私は何も美的な感覚でいい城といったわけではない」
「「「えっ?」」」
「私がいい城といったのは、あの城の防衛力だ」
「「「防衛力?」」」
「ああ、戦の時にあの城にたてこまれれば、容易には落とせないだろう」
「「「どうして?」」」
「まず一つ、攻め込む道があの大橋一本しかないということ。
まわりは湖に囲まれているから、船でも使わない限りは橋を使わざるを得ないということ」
「でも、攻め込まれたら逃げ道なくなるよ姉貴」
「逃げる必要はないよ、あの大橋を使ってくるということは隠れる場所が無いということ、つまりは弓矢などの遠距離攻撃を防ぐ手段が無いってことさ、しかも少し距離があるから、一気に駆け抜けるのも難しい」
「それでも駆け抜けられたらどうするんですか?」
「橋の入り口で待ち伏せするしかないだろうな、だけどたどり着いたところでそれは少数だけだろうし、弓矢や魔法の援護も続くから敵側が不利であることには違いないよ」
「そ、それじゃ湖から攻められたらどうするんですか?」
「湖からは無理だ」
「ど、どうしてですか?」
「仮に湖から攻めたとして、いったいどこから攻められるかな?」
「えっ?ど、どういうことですか?」
「あの島の上に城が建っているわけだが、島の崖はねずみ返しでとてもじゃないが登れない、仮に登れたとしても島の周りは防壁で囲まれているからこれが邪魔で進入はできない、だから湖から攻めるのは無謀と呼ぶしかない」
「それじゃあさ、空から攻められたらどうするのさ?」
「あの城の周りに四本の塔が立っているのが見えるか?」
「ああ見えるよ」
「あの塔には弓矢を放つための穴が四方八方に開いているんだ。
そこから弓矢もしくは魔法でも放てば撃退できるだろう」
「あの四本の塔はそういう意味で建っていたんですか」
「て、てっきり見張りの塔だと思いました」
「もちろん見張りの意味もあるが攻撃をする場所でもあるんだ」
「すごい城なんだなー弱点なんて無いじゃん」
「そうでもないさ」
「「「えっ」」」
「弱点は二つある、一つは大軍で襲われ続けること、あの城はそんなに大きいわけではないから食料や武器の備蓄にも限界ができてしまう。
まあこれはどんな要塞や城にも言えることだがな、二つ目は巨大な魔法攻撃。例えばバフォメットなんかがその例の一つだ。
どんなに警戒をしても魔法だけはどうにもできないからな、それこそ発動される前につぶしに行かなくては行けなくなってしまう、まあこんなところか。
うん?どうしたお前たち?」
気がつくと三姉妹はキラキラした眼差しでフレイヤを見つめていた。
「「「す、す、すっごいーーー!!!」」」
「ちょっと眺めただけでそこまで分析できるなんて、さすが姉貴だぜ!!」
「本当凄いですね、その頭のよさがうらやましいです」
「そ、尊敬します」
「そんなことないよ、全部本で得た知識だからかならずこれが当たっているとは限らないよ、もしかしたら他にも攻略する方法はあるかもしれないし」
「そんな謙遜することないよ姉貴」
「そうですよ。もう少し自信を持ってもいいと思いますよ」
「その通りだな、君の観察力は素晴らしいんだ、もっと自信を持ったほうがいいね」
「うんうん、マリンもいいこと言うねー」
「本当にマリンとは思えないくらいの褒めっぷりですね」
「あの、あたし、何もしゃべってないよ」
「「えっ?じゃあ誰が?」」
「・・・二人とも後ろを向いてごらん」
「「後ろ?」
フレイヤに言われ後ろを向くとそこにはボサボサの金髪ショートヘアーと短いあごひげをたくわえたおじさんがいた。
「「「おじさんだれ?」」」
「おじさんじゃないレオンお兄さんと呼んでくれ」
「・・・あなたはどちらさまですか?」
自称レオンお兄さんはフレイヤの方を向くと二カッと笑ってこう答えた。
「ああ悪い悪い、ここを通りかかったら君があの城のことを解説してるものだからつい聞き入ってしまってね。
自己紹介をしよう。
オレの名はターキン=レオン、以後よろしくね」
「そうですか、それでは私たちも自己紹介を「いや、言わなくてもいいよ」えっ?」
「君はヴァル=フレイヤで合ってるね?」
「なぜ私の名を!?」
「そして君たちはゴブリン三姉妹のカリンちゃんにコリンちゃんにマリンちゃんだったかな?」
「「「何で知ってるの!?」」」
「いったいあなたは何者なんですか?」
フレイヤは警戒をしながら、静かに質問をする。
「いやだな〜そんなに警戒しなくてもいいじゃないか・・・といっても無駄か。う〜ん・・・そうだな。
ここじゃ何だし落ち着いて話せるところにでもいかない?」
「信用できないな」
「やれやれ疑われたもんだ。それじゃこれを見せれば納得してくれるかなっと」
そういって彼レオンは懐から何かを取り出した。
「賢い君なら見たことがあるんじゃないかな、これ」
取り出し物は金でできた大型のコインだった。
そしてそのコインには「A」と彫られていた。
それを見たフレイヤは驚愕に目を見開いた。
「!?・・・そのマークに金のコイン・・・ま、まさか」
「そのとおり、やっぱり知っていたか。いや〜よかった知っててもらえて。
知らなかったらどうしようかと思ったよ」
「姉貴、あのコインがいったいなんだっていうのさ?」
「あれは冒険者の証、金のコインに「A」の文字が彫られているのは紛れもなくAランク上級冒険者の証。
冒険者の中でも上位に入る存在だ」
「そのとおり、いや〜よく勉強してるねフレイヤちゃんは」
「ち、ちゃん・・・ちゃん付けはやめてください!」
「おお悪い悪いつい癖でね、かわいい女の子にはちゃんをつけたくなるんだ。
それよりもどうだ、ついてくる気になったかい?」
フレイヤはすこし悩んでからこう答えた。
「どこに行くのか教えてくださればついていきましょう」
「なんだいもう答えを聞きたいのか?意外とせっかちなんだね」
「そういうわけではありませんがどこに行くかくらいは教えてもらっても損はないと思いまして」
「まあいいか、この街の冒険者ギルドだ。そこでじっくりとオレの事について教えてやるぜ」
これは願ってもいないチャンスだった。
探している冒険者ギルドにいけるのだからここはついていくべきだと思った。
しかし、彼がまだ正体不明であることには代わりがないからそれに対しても若干の不安があった。
(どうするべきか)
悩んだ挙句私は最後の質問をした。
「最後に一つだけ質問をさせてください」
「なにかな?」
「・・・あなたは仲間に危害を加えないと約束できますか」
「・・・・・」
「・・・・・」
しばらくお互いに見つめあい数分の時が流れた。
お互いにまったく視線をそらさずにいると彼の目がフッと笑った。
「フレイヤは仲間思いなんだね・・・わかった、約束しよう。
絶対に仲間は傷つけない。このターキン=レオンの名にかけて」
彼は一度もフレイヤの目線から逃げなかった。
そしてフレイヤも彼なら信用しても問題はないと判断した。
「わかりました、あなたについていきます。
そういうわけだか、ら・・・何をしているんだお前たち」
三姉妹は地面に手をついて、息を荒げていた。
「「「はあ、はあ、はあ、この緊張感に、飲まれました」」」
「はあーまったく仕方がない、すみませんが少し待ってもらっていいですか」
「あー構わないよ」
こうして私と彼はは三姉妹の緊張が解れるのを待ち、いっしょにギルドに向かうことになった。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
ターキン=レオン、彼が何者なのかこの時の私にはわからなかった、だが決して彼が悪しき人物ではないと私は確信した。
彼の目は嘘をついている人間の目ではなかった。
だから信用した。
この先の期待と不安を胸に私たちは彼とともにギルドに向かっていった。
さて、少々長くなってしまったのでこの辺でいったん区切るとしよう。
また明日続きをかかねばならないから今日はもう寝ることにする。
○月×日 ヴァル=フレイヤ
「・・・元気だな、お前たちの姉は」
「まあ、それだけが取り柄ですからね、カリン姉さんは」
「ご、ごめんなさい」
「ああ、いやすまない、別に怒ってるわけじゃないからそんなに気を落とさなくていいよ」
元気なカリンを見て思わず言ってしまった言葉に対し、マリンが謝ってきたので慌てて謝罪をするフレイヤ。
宿屋で休息を取ったとはいえ、ここまでずいぶん歩いたため正直に足が痛いというのが本音だ。
しかし、三姉妹はケロッとしていてまだ余力があるように見える、その中でも三姉妹の長女、カリンが一番元気だった。
「やはり、こういう長距離の移動には慣れているのか?」
「そうですね、あたしたちはいつも旅人たちを襲うために一月に一回のペースでいろんなところに行きましたからね、まあ主にカリン姉さんが飽きっぽいせいというのもあるんですけどね」
その表情からは「苦労」の二文字が見て取れた。
マリンのほうも似たような顔をしていた。
「・・・苦労しているんだな」
「ええ」
そして当の本人はそんな会話をされているとも知らずに鼻歌を歌いながら元気に上り坂を歩いていた。
「おっあれは・・・」
上りきったと思ったら、突然カリンの動きが止まった。
何事かと考えていたら。
「姉貴ー!!見えたよ、エリエールの街がー!!」
その言葉を聞いたのと同時に私たちは駆け出していた。
一気にカリンのところまで上るとその先には大都市エリエールが見えた。
「あれがエリエール」
「うわあ、大きいです」
「本当でかいなー!」
「たしかに大きいですね」
遠くから見下ろしているにもかかわらずその町の形がはっきりとわかるのだ。
これはたしかに大きいといえるだろう。
「ついに着いたんだなエリエールに、私はこの時をどれほど待ったことか・・・さあいくぞみんな」
「「「おーーー!!」」」
エリエールまであと少し、私は期待に胸を躍らせながらエリエールに向かった。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
街の入り口にたどり着くと、まず目に入ったのが防壁だ。
それもかなり高さのある防壁だ。
大都市エリエールにはもう一つ名前がある、その名も要塞貿易都市エリエール。
その名の通り要塞を備えた貿易を盛んに行っている都市である。
シンボリ大陸にある都市で唯一、世界を相手に商売をしている、そのため自然といろんな商人がこのエリエールに修行もしくは商売をしにやってくる。
まさに商人にとっては聖地といっても過言ではない場所である。
もちろん商売は何も世界だけではなく、ちゃんと街の人に対しても行っている。
そのジャンルは実にさまざまで日用品から食料品はもちろんのこと、衣服、工芸品、宝石、武器防具などなどたくさんの商売をしている。
しかしこれだけ商売を発展させれば当然、盗賊などが盗みにくるなどの被害も出てくるため、昔は自警団を作って撃退していたそうだ。
だがあるとき、教団派の軍が突然やってきて一時街を占領された経歴がある、そのときは魔界軍の力を借りて撃退はされたがそれでもかなりの損害を受けた。
その教訓を生かし、当時の領主は貿易で得た金を使い、防壁を立て、軍備を充実させたと言われている。
その歴史ある偉大な防壁が目の前にある。
その事実がフレイヤの体を震わせていた。
「ど、どうしたの姉貴、そんなに体を震わせて?」
「さ、さむいんですか?」
「フレイヤさん大丈夫ですか?」
三姉妹が心配そうに顔を覗いてくる。
「すまない、あまりに嬉しくてな、体の震えが止まらんのだ。
ともかくここで立ち止まっても仕方ないから、街に入るか」
「「「は〜〜〜い」」」
そういって私たちは関所に向かった。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
「うん?・・・おいそこの者たち止まれ」
フレイヤたちは関所の兵士に呼び止められた。
「この街に入るには、通行証もしくは身分を証明するものが必要だ。
どちらかを提示してくれ」
フレイヤはアイテムバックから村長にもらった通行証を取り出した。
「これでいいだろうか?」
「失礼、拝見させていただく・・・・・・!?オステカ・・・はっはっはっは、なんだ貴様ド田舎から来たのか?」
「なっ!?いきなり初対面の人に対してその言い方は失礼ではないか!!」
「だってあそこはいまだに古臭い戒律に縛られて、あまり外のものとは交流をしようとしないではないか、しかも森や山に囲まれて得に目立ったものもない、これをド田舎と呼ばずしてなんて呼べというんだ」
フレイヤは完全に頭にきていた。
(いくらなんでも初対面にこんなことを言うなんて、許せない)
殴りかかろうとした瞬間。
「この大馬鹿者!!!!!!!」
ドゴーーン!!
突然兵士の後ろから何者かが兵士に対して拳骨を放っていた。
拳骨を食らった兵士の兜はベコンと凹んでおりピクリとも動かない。
どうやら気絶してしまったようだ。
「すまない旅のお方、うちの部下が失礼を働いた、どうか許していただきたい」
そういって現れたのは緑のウロコにつつまれ、そして緑のポニーテールをなびかせているリザードマンだった。
突然のことに唖然としていたフレイヤは我に返り。
「いえこちらこそ、あともう少しで手を上げてしまうところだった。
おかけで助かりました」
フレイヤは頭を下げた。
「ふっ、はっはっは、いやー気に入ったよあんた、普通なら怒ってもいいところだと思うのだがな、まさかお礼を言ってくるとはな」
そういってまた豪快に笑い出したあと。
「ふぅー、こんなに笑ったのは久しぶりだ。
自己紹介が遅れたな、私の名はケーニッヒ=グラン、一応はこの南関所の守備警備部隊隊長を務めている、あらためて歓迎しよう。
大都市エリエールにようこそ」
「私の名はヴァル=フレイヤ、こっちは私の仲間で」
「あたしはカリンよろしくー!!」
「あたしはコリン、よろしくお願いします」
「あたしは、マ、マリン、です、よ、よろしく、お願いします」
「そちらは仲間だったか、ちなみに彼女たちは通行証もしくは身分を証明できるものを持っているかな?」
「そんなもん持ってるわけないじゃん」
カリンが能天気に答える。
「持っていないのか」
「やはり証明ができないと街には入れないのでしょうか?」
「そうだな・・・一応は入れる手段はある」
「それは?」
「まあこれだな」
そう言ってグランはお金が必要というジェスチャーをした。
「身分を証明できなければ金を払うしかない、この街のルールでね、お金を払うのはいわば保証金みたいなものさ」
「保証金?」
「そう、私はこの町で犯罪を犯しませんという意味を込めて払う金だから保証金なんだ。
わざわざ金を払ってまで犯罪を犯しに来るのはよっぽどの馬鹿だからな」
「なるほど、それでいくらになるんですか?」
「子供三人だから、銀貨一枚と銅貨五枚だな」
「あたしたちはこもぉぉお!?」
「「なんでもないです」」
そこにはなぜかカリンを抑えている、コリンとマリンがいた。
おそらくは現在の経済状況を知っているから取った行動なのだろう。
(ギリギリで足りるが、払えば文無しになってしまうが・・・仕方がないか)
フレイヤがお金を払おうとしたとき、グランはにやりと笑い。
「と、いつもなら金を頂戴するのだが、今回はこちらが失礼を働いた面もあるから特別にタダでこれをやる」
そういって差し出してきたのは銅でできたコインで「客」という文字が彫られているものだった。
「これは?」
「この街に客人として入った者の証だ。
それが身分証明の代わりになる」
「でもいいのですか?」
「構わない、失礼を働いたのは事実だからな、それに私はお前が気に入った。
だから特別だ、それに彼女たちはどう見ても悪い子には見えないからな」
「ぷはぁー、あったりまえじゃんこんなにかわぶも!?」
「「お気になさらずー」」
再度押さえ込みに入るコリンとマリン。
今度は話がややこしくならないように抑えたのだろう。
「そ、それではありがたく頂かせてもらいます」
「ああ受け取りな」
フレイヤは三人分のコインを受け取った。
「それでは通らせてもらいますね、そうだ一つ伺いたいんですが、冒険者ギルドにはどういったらいいのか教えてもらえますか」
「冒険者ギルド?なんだあんた冒険者になりにきたのか」
「ええ、そうです」
「ふうーん、そうかい。
冒険者ギルドだったな、それなら中央地区に向かうといい、この先は大通りになっていてそこをまっすぐ進めば中央地区の関所が見えるはずだ。
そこを抜けると領主の城が見える、その城の付近にあるはずだから探してみな」
「詳しい場所は分からないんですか?」
「冒険者になるんだったら自分で見つけてみな、これくらいできないようじゃ冒険者になったとき困るのは自分だからな」
「なるほど、既に試練は始まっているということですか」
「そういうことだ」
「わかりました。よしみんないくぞ」
「「「おーーーー!!」」」
フレイヤたちは関所を出てギルドを目指した。
「さてフレイヤたちは冒険者になれるかねぇ、あそこのマスターは変わり者だからな。
さてとギルドに連絡と通行記録を書かねば・・・コラ!!!いつまで寝てるか、さっさと起きろ!!!」
「うーん・・・はっ。オレはいったい何をしていたんだ」
どうやらあまりの威力に一部記憶を失ったようだ。
「なんだお前覚えていないのか?まあそれなら好都合、さっさと起きて仕事をしろ」
「ハッ、了解しました」
敬礼をする兵士、しかしなぜか頭が痛くて、そして自分はなぜ倒れていたのか、そんな疑問がよぎったが気にしないようにして仕事に戻っていった。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
私たちは領主の城の付近にあるベンチに腰を下ろしていた。
「ふうーまいった、さっぱりといっていいほどに見つからないな」
「そうですね。やっぱり表通りじゃなくて裏通りにあるってことじゃないんですか」
「裏通りか・・・たしかにそのあたりはまだ調べていないからその可能性はあるな」
「んじゃ探索を再開しようぜ姉貴!!」
「・・・・・」
フレイヤはマリンが何かをじっと見つめていることに気がついた。
「どうしたんだマリン?」
「えっ!?あ、いや、その・・・あのお城なんか地味だなって思って」
「城?」
フレイヤは城のほうを見た。
確かに城といえば派手な外観が印象的には強いのだが、あの城は飾り気があまりなく地味といえば地味だった。
しばらくじーっと眺めているとあることに気がついた。
「確かに地味だが、なかなかいい城だと思うよ」
「「「えーーーーーーー!!?」」」
三姉妹が声を上げて驚いている。
「姉貴、頭大丈夫?」
「フレイヤさん、相当疲れてるんじゃ?」
「無理は、よくないですよ」
「お前たち・・・なかなか失礼なことを言ってくれるな」
「「「あっ」」」
タラタラタラ・・・・・
三姉妹は冷や汗を掻き始めた。
フレイヤお得意の目が笑っていない笑みをしているからだ。
「まったく、私は何も美的な感覚でいい城といったわけではない」
「「「えっ?」」」
「私がいい城といったのは、あの城の防衛力だ」
「「「防衛力?」」」
「ああ、戦の時にあの城にたてこまれれば、容易には落とせないだろう」
「「「どうして?」」」
「まず一つ、攻め込む道があの大橋一本しかないということ。
まわりは湖に囲まれているから、船でも使わない限りは橋を使わざるを得ないということ」
「でも、攻め込まれたら逃げ道なくなるよ姉貴」
「逃げる必要はないよ、あの大橋を使ってくるということは隠れる場所が無いということ、つまりは弓矢などの遠距離攻撃を防ぐ手段が無いってことさ、しかも少し距離があるから、一気に駆け抜けるのも難しい」
「それでも駆け抜けられたらどうするんですか?」
「橋の入り口で待ち伏せするしかないだろうな、だけどたどり着いたところでそれは少数だけだろうし、弓矢や魔法の援護も続くから敵側が不利であることには違いないよ」
「そ、それじゃ湖から攻められたらどうするんですか?」
「湖からは無理だ」
「ど、どうしてですか?」
「仮に湖から攻めたとして、いったいどこから攻められるかな?」
「えっ?ど、どういうことですか?」
「あの島の上に城が建っているわけだが、島の崖はねずみ返しでとてもじゃないが登れない、仮に登れたとしても島の周りは防壁で囲まれているからこれが邪魔で進入はできない、だから湖から攻めるのは無謀と呼ぶしかない」
「それじゃあさ、空から攻められたらどうするのさ?」
「あの城の周りに四本の塔が立っているのが見えるか?」
「ああ見えるよ」
「あの塔には弓矢を放つための穴が四方八方に開いているんだ。
そこから弓矢もしくは魔法でも放てば撃退できるだろう」
「あの四本の塔はそういう意味で建っていたんですか」
「て、てっきり見張りの塔だと思いました」
「もちろん見張りの意味もあるが攻撃をする場所でもあるんだ」
「すごい城なんだなー弱点なんて無いじゃん」
「そうでもないさ」
「「「えっ」」」
「弱点は二つある、一つは大軍で襲われ続けること、あの城はそんなに大きいわけではないから食料や武器の備蓄にも限界ができてしまう。
まあこれはどんな要塞や城にも言えることだがな、二つ目は巨大な魔法攻撃。例えばバフォメットなんかがその例の一つだ。
どんなに警戒をしても魔法だけはどうにもできないからな、それこそ発動される前につぶしに行かなくては行けなくなってしまう、まあこんなところか。
うん?どうしたお前たち?」
気がつくと三姉妹はキラキラした眼差しでフレイヤを見つめていた。
「「「す、す、すっごいーーー!!!」」」
「ちょっと眺めただけでそこまで分析できるなんて、さすが姉貴だぜ!!」
「本当凄いですね、その頭のよさがうらやましいです」
「そ、尊敬します」
「そんなことないよ、全部本で得た知識だからかならずこれが当たっているとは限らないよ、もしかしたら他にも攻略する方法はあるかもしれないし」
「そんな謙遜することないよ姉貴」
「そうですよ。もう少し自信を持ってもいいと思いますよ」
「その通りだな、君の観察力は素晴らしいんだ、もっと自信を持ったほうがいいね」
「うんうん、マリンもいいこと言うねー」
「本当にマリンとは思えないくらいの褒めっぷりですね」
「あの、あたし、何もしゃべってないよ」
「「えっ?じゃあ誰が?」」
「・・・二人とも後ろを向いてごらん」
「「後ろ?」
フレイヤに言われ後ろを向くとそこにはボサボサの金髪ショートヘアーと短いあごひげをたくわえたおじさんがいた。
「「「おじさんだれ?」」」
「おじさんじゃないレオンお兄さんと呼んでくれ」
「・・・あなたはどちらさまですか?」
自称レオンお兄さんはフレイヤの方を向くと二カッと笑ってこう答えた。
「ああ悪い悪い、ここを通りかかったら君があの城のことを解説してるものだからつい聞き入ってしまってね。
自己紹介をしよう。
オレの名はターキン=レオン、以後よろしくね」
「そうですか、それでは私たちも自己紹介を「いや、言わなくてもいいよ」えっ?」
「君はヴァル=フレイヤで合ってるね?」
「なぜ私の名を!?」
「そして君たちはゴブリン三姉妹のカリンちゃんにコリンちゃんにマリンちゃんだったかな?」
「「「何で知ってるの!?」」」
「いったいあなたは何者なんですか?」
フレイヤは警戒をしながら、静かに質問をする。
「いやだな〜そんなに警戒しなくてもいいじゃないか・・・といっても無駄か。う〜ん・・・そうだな。
ここじゃ何だし落ち着いて話せるところにでもいかない?」
「信用できないな」
「やれやれ疑われたもんだ。それじゃこれを見せれば納得してくれるかなっと」
そういって彼レオンは懐から何かを取り出した。
「賢い君なら見たことがあるんじゃないかな、これ」
取り出し物は金でできた大型のコインだった。
そしてそのコインには「A」と彫られていた。
それを見たフレイヤは驚愕に目を見開いた。
「!?・・・そのマークに金のコイン・・・ま、まさか」
「そのとおり、やっぱり知っていたか。いや〜よかった知っててもらえて。
知らなかったらどうしようかと思ったよ」
「姉貴、あのコインがいったいなんだっていうのさ?」
「あれは冒険者の証、金のコインに「A」の文字が彫られているのは紛れもなくAランク上級冒険者の証。
冒険者の中でも上位に入る存在だ」
「そのとおり、いや〜よく勉強してるねフレイヤちゃんは」
「ち、ちゃん・・・ちゃん付けはやめてください!」
「おお悪い悪いつい癖でね、かわいい女の子にはちゃんをつけたくなるんだ。
それよりもどうだ、ついてくる気になったかい?」
フレイヤはすこし悩んでからこう答えた。
「どこに行くのか教えてくださればついていきましょう」
「なんだいもう答えを聞きたいのか?意外とせっかちなんだね」
「そういうわけではありませんがどこに行くかくらいは教えてもらっても損はないと思いまして」
「まあいいか、この街の冒険者ギルドだ。そこでじっくりとオレの事について教えてやるぜ」
これは願ってもいないチャンスだった。
探している冒険者ギルドにいけるのだからここはついていくべきだと思った。
しかし、彼がまだ正体不明であることには代わりがないからそれに対しても若干の不安があった。
(どうするべきか)
悩んだ挙句私は最後の質問をした。
「最後に一つだけ質問をさせてください」
「なにかな?」
「・・・あなたは仲間に危害を加えないと約束できますか」
「・・・・・」
「・・・・・」
しばらくお互いに見つめあい数分の時が流れた。
お互いにまったく視線をそらさずにいると彼の目がフッと笑った。
「フレイヤは仲間思いなんだね・・・わかった、約束しよう。
絶対に仲間は傷つけない。このターキン=レオンの名にかけて」
彼は一度もフレイヤの目線から逃げなかった。
そしてフレイヤも彼なら信用しても問題はないと判断した。
「わかりました、あなたについていきます。
そういうわけだか、ら・・・何をしているんだお前たち」
三姉妹は地面に手をついて、息を荒げていた。
「「「はあ、はあ、はあ、この緊張感に、飲まれました」」」
「はあーまったく仕方がない、すみませんが少し待ってもらっていいですか」
「あー構わないよ」
こうして私と彼はは三姉妹の緊張が解れるのを待ち、いっしょにギルドに向かうことになった。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
ターキン=レオン、彼が何者なのかこの時の私にはわからなかった、だが決して彼が悪しき人物ではないと私は確信した。
彼の目は嘘をついている人間の目ではなかった。
だから信用した。
この先の期待と不安を胸に私たちは彼とともにギルドに向かっていった。
さて、少々長くなってしまったのでこの辺でいったん区切るとしよう。
また明日続きをかかねばならないから今日はもう寝ることにする。
○月×日 ヴァル=フレイヤ
10/12/21 08:08更新 / ミズチェチェ
戻る
次へ