炎を司る異質な男VS異質な戦闘狂火竜(後編)
キーン ガッガッ キーン
「うおおおおお!!!!!」
「くうっ!!!」
ブレイズが本性を出してからの戦いはマジにきつくなっていた。
最初の素手での戦闘とは違い、今は重量のある両手剣(ここからはクリムゾンと呼ぶ)を使い果敢にせめてくるからだ。
同じ性質の武器だと思い最初はどっちが強いかはっきりさせてやると意気込んで対峙していたが、その考えが浅はかであるとすぐに思い知らされた。
さっきも言ったがブレイズはクリムゾンを使っているのに対して、俺の方は刀・・・・・・武器の耐久力では明らかにこっちが分が悪いと気づかされた。
そうなると必然と打ち合いを避けて、相手の攻撃をかわしたり、いなしたりしつつ隙あらば攻撃を仕掛けるという戦法を取らざるを得ない。
だがブレイズには隙という隙はまったくと言っていいほどになかった。
クリムゾンを片手で扱い、ただ振り回すだけでなく洗練した剣裁きとトリッキーな剣術、さらに徒手空拳も加わるというまるで台風でも相手にしてるような状態だった。
「くっ、ありえねえよ・・・あんな得物振り回してなんで隙ができねえんだ?」
「どうしたどうした!お前の実力はその程度か!もっと本気を出してくれないとつまらないだろうが!」
「ちっ!リベートなんかいい方法は無いのか!?」
『正直なところ、現在の炎馬様の実力では彼女に勝つ可能性は約10%ほどしかありません。最善の策としては降参することをお勧めしますが』
「冗談!これはあの無茶苦茶な師匠が出した試練だぜ?降参なんてしたら何をされるかわかったもんじゃない!それに俺は負けるのが大嫌いなんだよ!」
『そう言うと思っていました。いくつか方法があります』
「なんだ!教えてくれどうすればいい!」
『ではその方法を直接炎馬様の脳に送り込みます』
すると、俺の脳裏にリベートが示す方法が瞬時に頭に流れ込んできていた。
「なるほど・・・たしかにこれならいけるかもしれねえ」
『制御はおまかせください。炎馬様はご自分の感覚を信じてください』
「おう!よろしく頼むぜ!リベート!」
『Yes,My Master』
「退屈な独り言は終わったか?内容を聞いてみるに何かと相談している感じだったが・・・何か秘策でも思いついたのか?」
「ああ!お前を倒すための策を見つけたぜ!覚悟しろよ!!!」
「面白い!その秘策とやら見せてみろ!!!」
俺は刀を鞘に納めて代わりにハンドガンを2丁取り出す。
「またその銃か?それは俺には通用しないと言ったろうが!」
俺はその問いに対して答える代わりに引き金を引く。
ズッガーン ドッカーン
「な!?」
ブレイズが避けたとはいえ驚いていた。それもそのはずハンドガンから出た弾丸がリンゴほどの大きさで炎を纏って出てきて、当たった場所が大爆発を起こしたのだ。
「すっげーな、魔力の送る量を増やしただけでこんなんになるとはな」
『さらにこの威力で連射が可能です。炎馬様は前魔王の魔力を5分の1も引いているので魔力切れは起きないと思われますので遠慮せずに撃ち込んでください』
「おっしゃー!どんどん撃ち込むぜ!」
ズガガガガガーン ドカドカドカピカッドッカーン
俺は容赦なく弾丸を撃ち込みブレイズを爆発の海へと沈めていく。
これが秘策のうちの一つ魔力量を増やして火力をあげるだ。
シンプルだが攻撃の手段としてはこれが最善策だった。
「はあ、はあ、はあ・・・これだけ撃ち込めばさすがにくたばったろう。今回は手加減は無理だった。恨むなよ」
『・・・!?まだです!炎馬様!!!』
「えっ!?」
【火竜の化身】
リベートの発言に驚き炎の方を見るとブレイズの声が響き渡った。その直後炎の中から飛び出して来るものが見えた。
「な!?火竜だと!?」
炎の海から飛び出てきたのは紛れも無く火竜だった。火竜は一直線に俺目掛けて飛んできていた。
「うおおおおおお!!!!!」
間一髪の所で横っ飛びをして避ける俺。しかしその行動は俺にとって最悪の結果へとつながっていた。
「さっきの弾丸の礼に舞を踊ってやる。ありがたく受け取れ!!!」
【火竜の舞】
飛んだ先にいたのは全身から炎が出て心の底からこの状況を楽しんでいる表情をしたブレイズの姿だった。そしてクリムゾンを持ち独特の構えを取ったと思ったらまるで舞を踊っているかのように流れるような動作で俺に斬りかかっていた。
ヒュンヒュヒュヒュンヒュヒュヒュン・・・・・・チン
気がつけば、剣を鞘にしまっていた。
俺は何しまってんだと声をかけようとしたができなかった。
ザザザザザザシュ ブッシャーーーーー ドサリ
あれ?なんだこれ・・・目の前が真っ赤だ。
いや俺が真っ赤なのか?あれ?俺何してたんだっけ?
何か大事なことをしていた気がする・・・なんだっけ?
駄目だ・・・体が動かねえ・・・考えるのかったりー・・・なんだか眠く・・・なってきた。
このまま眠れば・・・楽になるかな?
ねむ・・・ちゃ・・・おう・・・
『炎馬様!!!』
な、なんだ?今誰かが呼んだような?
誰だ?・・・リ・ベー・・ト・?
『炎馬様!!!しっかりしてください!!!ここで死んでしまっていいのですか!?敵に背を向けられたまま負けていいのですか!?』
負ける?俺が・・・負ける?
そうだ。俺は・・・負けるわけにはいかない。
・・・でもなんで負けちゃ駄目なんだ?
なんで・・・駄目なんだっけ?
『リリアン様との約束を果たせぬまま死ぬつもりですか!!!炎馬様!!!!!』
約束?・・・そうだ・・・俺約束したんだ。
街を守ってやるって・・・・・・でも、もう体が・・・いうことをきかねえ。
ちくしょー・・・何が・・・守ってやるだ・・・こんな所で死にかけてる奴が・・・何言ってんだよ。
「・・・はあーもう少し楽しめると思っていたんだがな、だが久しぶりに本気が出せただけでもよくやったと褒めるべきかな?・・・いや、それともお前の師匠ヘリッド=ロベルタを無能と罵るべきかな?」
・・・・・・なに?
「お前の師匠は俺が唯一殺し損ねた奴だ。だから常に情報を集めていた。当然お前のことも情報として入ってきたよ。お前の実力では俺にに勝てないのはあいつ自身わかっていたはずだからな、これを無能と呼ばずなんと呼ぶ」
・・・・・・師匠が無能?
「さらに言えば、お前は戦いの基本も知らない異世界人らしいじゃないか?そんなやつを街の守護者にと頼みこむバフォメットもどうかしていると思うがな」
・・・・・・・・・・・・
「これだけ罵っても起きないと言うことは本当にもう死んじまったか?なら最後にもう一つ罵ってやろう」
・・・・・・・・・・・・
「お前の妻は淫乱な雌馬だ。それこそ誰にでも尻尾を振って喜んでマンコを広げるような雌馬だよ」
ブチ!
「・・・・・・す」
「ん?まだ息はあるようだな?もう興味も尽きたし最後の情けだ。一思いに・・・」
ヒュン ズガン
「かはっ!!!」
「・・・・・・」
「ふふふふふ、いいパンチだ。殺気のこもった実にいいパンチだ」
「・・・コロス!」
「殺すか・・・漸くまともな殺気を纏えるようになったか。いいぞその調子でもっと俺を楽しませろ!」
「・・・コロス!!!」
炎馬は制御装置がついているネックレス【リベート】を引きちぎり、片手にハンドガンともう片方に小太刀を持ち咆哮をあげながらブレイズに突っ込んでいく。
制御装置を外したことにより炎馬の魔力は制御不能に陥り、さらに怒りで我を忘れているために魔力は際限なくあふれ出ている状態になり体からは魔力を放出するのと同時に炎も発せられていた。
そして体の隅々まで魔力が侵食しているため身体能力も通常の人間の何倍も上がっていた。
炎馬はハンドガンを発砲しながらブレイズに接近していく。
ブレイズも弾丸を避けながら炎馬に接近していく。
闘技場の中央で両者がぶつかる。
ブレイズが接近戦で再び火竜の舞を繰り出し、先ほどよりも速度を上げて攻撃をしていく。
それに対して炎馬はハンドガンを投げ捨てて、もう一本の小太刀を取り出し、ブレイズの火竜の舞の流れるような動作に合わせて、かわしては斬りつけ、いなしては斬りつけるといった、火竜の舞を無効化していく。
「ちっ!楽しいけど、火竜の舞を無効化されるとは・・・これが前魔王の魔力を引き継いだものの実力って奴か!」
「コロスコロスコロスコロスコロスコロスコロス!!!!!」
「だったらこれならどうかな!?」
ブレイズは炎馬の攻撃をかわしてすかさずボディブローを叩き込む。
炎馬が一瞬硬直した瞬間を逃さずにクリムゾンを両手で掴み頭上に掲げる。
【火竜の化身】
超至近距離からの火竜の化身を出したのだ。
火竜の化身は本来遠距離用の技で滅多に至近距離で放つことは無い技だ。
何故なら溜め時間が少なくなるからだ。この技は溜め時間が長ければ長いほど威力が増す技だから、本来溜め時間を作れない接近戦では使用しないのだ。
だが、ブレイズはほんの一瞬の溜め時間で少し威力を落とした火竜の化身を繰り出せるようになっていた。
「!?いないだと!」
なんとブレイズの視界には炎馬の姿はどこにも無く残されていたのは焼け焦げた小太刀が2本あるだけだった。
どこに居るのか気配を探すとそれはすぐ後ろに居ることが分かった。
振り向くとそこに居たのは刀に手をかけ居合いの体勢に入ってる炎馬の姿だった。
「ウガアアアアアアアアアア!!!!!」
ブレイズが見えたのは鞘から放たれた一瞬の眩い光だった。
ピカッ シュン ブシャアーーーーーーー!!!
気がつけばブレイズの腹部から見事な真一文字が刻まれて、そこから赤い血が勢いよく噴き出してしていた。
「ゴボ!ウッ!・・・ま、まいったな・・・まさかここで・・・楽しい闘いが終わるなんてな・・・・・・ほんとうに・・・ざんねんだ」
ドサリ
審判の男が駆け寄りブレイズの様子を伺う、勝敗は決したと確信して炎馬に振り向いた矢先だった。
ドサリ
炎馬もまた力尽きたように倒れたのだった。
−−−バトルクラブ救護室−−−
「・・・さ・・・ん・・・」
なんだ?誰か俺を呼んでる?誰だ?
「・・・炎馬さん!!!!!」
「・・・ス・テ・ア・さ・ん・?」
「炎馬さんよかった!無事で!」
目を開けて最初に見えたのは俺の大事な妻であるステアさんの泣き顔だった。
「・・・どう・して?」
「どうしてじゃないですよ!1ヶ月以上も家に帰ってこないんですよ!心配するに決まってるじゃないですか!・・・どうして、教えてくれなかったのですか!」
「えっ?」
「どうしてこの試練のこと教えてくれなかったんですか!教えてくれればこんな包帯グルグル巻きの状態にさせずにすんだのに!」
「・・・ごめん、心配を掛けたくなくて・・・黙って行ったんだけどかえって心配させちゃったね」
「本当に心配したのよ」
ステアさんがやさしく俺のことを抱きしめてくる。
俺もそれに答えようとゆっくりと手を動かし抱きしめ返す。
ガチャリ
「どうやら起きたようじゃな」
「大丈夫かい炎馬?」
ドアを開けて入ってきたのはミレーヌと師匠のヘリッドだった。
「ミレーヌさん、それに、師匠も」
「まったく心配させて困った弟子だよ君は」
「何言うとるんじゃ、あんな無茶な試練を出した張本人がよくいうわ」
「・・・・・・(汗)」
「さてとりあえず現状について話そうかのぉ、まずお主なんじゃがあの試合からかれこれ1ヶ月は寝たきりの状態になっておった」
「・・・・・・」
「怪我はなんとか直りつつあるが、魔力の暴走でかなりボロボロになっておったぞ。それこそなぜあの怪我で死なんのか不思議なくらいじゃった」
「・・・・・・」
「試合結果は両者戦闘不能のため引き分けになっておる」
「・・・そのミレーヌさん」
「なんじゃ?」
「ブレイズはどうなったんですか?」
「・・・あやつは・・・」
「・・・やっぱり」
「・・・1週間で勝手に退院して、自分を鍛えなおしてくると置手紙を残してバトルクラブを出て行きおったわ」
「へっ?」
「さすがに勝手に抜けられると思っておらんかったからデルフィニアも呆れておったよ」
「じゃあとりあえず生きてるんですか?」
「そうじゃ」
「・・・はあー」
「安心したか?」
「えっ?」
「ワシはバトルの前にお主に聞いたな。【お主にとって闘いとは何かと?】」
「ええ」
「答えはみつかったかのぉ?」
「はい。俺考えが甘かったんですね。闘いって命がけなんですね」
「・・・・・・」
「闘いである以上そこには命の取り合いしか存在しない、闘う以上は相手の命を奪わなければならない」
「・・・・・・」
「俺は何で犯罪者がここに居るんだと聞きました。だけどその考え方がそもそも間違っていた。闘いをやろうとしている時点でもう犯罪者なんですから俺自身も犯罪者になってしまうんですよね」
「お主が得た答えが全てとは限らんがすくなくとも十把一絡げのモノの見方はこれで無くなったじゃろう。お主が言っておるとおり、闘いは生きるものを傷つける犯罪行為じゃ、じゃがある意味生きると言うのは闘うこと同じじゃ、生きるためには肉を食らわねばならんし、命を食わねばならん。これは生きとし生けるものが負う共通の罪じゃろう。闘うと言うことはそういうことじゃとワシは認識しておるよ」
「・・・・・・生きるって大変ですね」
「そうじゃな」
「なんか話が脱線してるような気がするのはわたしだけなのかしら?」
「いいんじゃないかな?良い話っぽいし」
俺はこの闘いで何か大事なことを学んだ気がする。
それこそ今までなら考えることも無かったことを。
きっと俺は生涯ここでの経験を忘れないだろう。
闘いとはどういうことなのかと。
ここはとある地下にある闘技場。
己のすべてをぶつけ合う場所。
一攫千金を狙える場所。
次なる挑戦者はいったい誰か。
TO BE CONTINUE
「うおおおおお!!!!!」
「くうっ!!!」
ブレイズが本性を出してからの戦いはマジにきつくなっていた。
最初の素手での戦闘とは違い、今は重量のある両手剣(ここからはクリムゾンと呼ぶ)を使い果敢にせめてくるからだ。
同じ性質の武器だと思い最初はどっちが強いかはっきりさせてやると意気込んで対峙していたが、その考えが浅はかであるとすぐに思い知らされた。
さっきも言ったがブレイズはクリムゾンを使っているのに対して、俺の方は刀・・・・・・武器の耐久力では明らかにこっちが分が悪いと気づかされた。
そうなると必然と打ち合いを避けて、相手の攻撃をかわしたり、いなしたりしつつ隙あらば攻撃を仕掛けるという戦法を取らざるを得ない。
だがブレイズには隙という隙はまったくと言っていいほどになかった。
クリムゾンを片手で扱い、ただ振り回すだけでなく洗練した剣裁きとトリッキーな剣術、さらに徒手空拳も加わるというまるで台風でも相手にしてるような状態だった。
「くっ、ありえねえよ・・・あんな得物振り回してなんで隙ができねえんだ?」
「どうしたどうした!お前の実力はその程度か!もっと本気を出してくれないとつまらないだろうが!」
「ちっ!リベートなんかいい方法は無いのか!?」
『正直なところ、現在の炎馬様の実力では彼女に勝つ可能性は約10%ほどしかありません。最善の策としては降参することをお勧めしますが』
「冗談!これはあの無茶苦茶な師匠が出した試練だぜ?降参なんてしたら何をされるかわかったもんじゃない!それに俺は負けるのが大嫌いなんだよ!」
『そう言うと思っていました。いくつか方法があります』
「なんだ!教えてくれどうすればいい!」
『ではその方法を直接炎馬様の脳に送り込みます』
すると、俺の脳裏にリベートが示す方法が瞬時に頭に流れ込んできていた。
「なるほど・・・たしかにこれならいけるかもしれねえ」
『制御はおまかせください。炎馬様はご自分の感覚を信じてください』
「おう!よろしく頼むぜ!リベート!」
『Yes,My Master』
「退屈な独り言は終わったか?内容を聞いてみるに何かと相談している感じだったが・・・何か秘策でも思いついたのか?」
「ああ!お前を倒すための策を見つけたぜ!覚悟しろよ!!!」
「面白い!その秘策とやら見せてみろ!!!」
俺は刀を鞘に納めて代わりにハンドガンを2丁取り出す。
「またその銃か?それは俺には通用しないと言ったろうが!」
俺はその問いに対して答える代わりに引き金を引く。
ズッガーン ドッカーン
「な!?」
ブレイズが避けたとはいえ驚いていた。それもそのはずハンドガンから出た弾丸がリンゴほどの大きさで炎を纏って出てきて、当たった場所が大爆発を起こしたのだ。
「すっげーな、魔力の送る量を増やしただけでこんなんになるとはな」
『さらにこの威力で連射が可能です。炎馬様は前魔王の魔力を5分の1も引いているので魔力切れは起きないと思われますので遠慮せずに撃ち込んでください』
「おっしゃー!どんどん撃ち込むぜ!」
ズガガガガガーン ドカドカドカピカッドッカーン
俺は容赦なく弾丸を撃ち込みブレイズを爆発の海へと沈めていく。
これが秘策のうちの一つ魔力量を増やして火力をあげるだ。
シンプルだが攻撃の手段としてはこれが最善策だった。
「はあ、はあ、はあ・・・これだけ撃ち込めばさすがにくたばったろう。今回は手加減は無理だった。恨むなよ」
『・・・!?まだです!炎馬様!!!』
「えっ!?」
【火竜の化身】
リベートの発言に驚き炎の方を見るとブレイズの声が響き渡った。その直後炎の中から飛び出して来るものが見えた。
「な!?火竜だと!?」
炎の海から飛び出てきたのは紛れも無く火竜だった。火竜は一直線に俺目掛けて飛んできていた。
「うおおおおおお!!!!!」
間一髪の所で横っ飛びをして避ける俺。しかしその行動は俺にとって最悪の結果へとつながっていた。
「さっきの弾丸の礼に舞を踊ってやる。ありがたく受け取れ!!!」
【火竜の舞】
飛んだ先にいたのは全身から炎が出て心の底からこの状況を楽しんでいる表情をしたブレイズの姿だった。そしてクリムゾンを持ち独特の構えを取ったと思ったらまるで舞を踊っているかのように流れるような動作で俺に斬りかかっていた。
ヒュンヒュヒュヒュンヒュヒュヒュン・・・・・・チン
気がつけば、剣を鞘にしまっていた。
俺は何しまってんだと声をかけようとしたができなかった。
ザザザザザザシュ ブッシャーーーーー ドサリ
あれ?なんだこれ・・・目の前が真っ赤だ。
いや俺が真っ赤なのか?あれ?俺何してたんだっけ?
何か大事なことをしていた気がする・・・なんだっけ?
駄目だ・・・体が動かねえ・・・考えるのかったりー・・・なんだか眠く・・・なってきた。
このまま眠れば・・・楽になるかな?
ねむ・・・ちゃ・・・おう・・・
『炎馬様!!!』
な、なんだ?今誰かが呼んだような?
誰だ?・・・リ・ベー・・ト・?
『炎馬様!!!しっかりしてください!!!ここで死んでしまっていいのですか!?敵に背を向けられたまま負けていいのですか!?』
負ける?俺が・・・負ける?
そうだ。俺は・・・負けるわけにはいかない。
・・・でもなんで負けちゃ駄目なんだ?
なんで・・・駄目なんだっけ?
『リリアン様との約束を果たせぬまま死ぬつもりですか!!!炎馬様!!!!!』
約束?・・・そうだ・・・俺約束したんだ。
街を守ってやるって・・・・・・でも、もう体が・・・いうことをきかねえ。
ちくしょー・・・何が・・・守ってやるだ・・・こんな所で死にかけてる奴が・・・何言ってんだよ。
「・・・はあーもう少し楽しめると思っていたんだがな、だが久しぶりに本気が出せただけでもよくやったと褒めるべきかな?・・・いや、それともお前の師匠ヘリッド=ロベルタを無能と罵るべきかな?」
・・・・・・なに?
「お前の師匠は俺が唯一殺し損ねた奴だ。だから常に情報を集めていた。当然お前のことも情報として入ってきたよ。お前の実力では俺にに勝てないのはあいつ自身わかっていたはずだからな、これを無能と呼ばずなんと呼ぶ」
・・・・・・師匠が無能?
「さらに言えば、お前は戦いの基本も知らない異世界人らしいじゃないか?そんなやつを街の守護者にと頼みこむバフォメットもどうかしていると思うがな」
・・・・・・・・・・・・
「これだけ罵っても起きないと言うことは本当にもう死んじまったか?なら最後にもう一つ罵ってやろう」
・・・・・・・・・・・・
「お前の妻は淫乱な雌馬だ。それこそ誰にでも尻尾を振って喜んでマンコを広げるような雌馬だよ」
ブチ!
「・・・・・・す」
「ん?まだ息はあるようだな?もう興味も尽きたし最後の情けだ。一思いに・・・」
ヒュン ズガン
「かはっ!!!」
「・・・・・・」
「ふふふふふ、いいパンチだ。殺気のこもった実にいいパンチだ」
「・・・コロス!」
「殺すか・・・漸くまともな殺気を纏えるようになったか。いいぞその調子でもっと俺を楽しませろ!」
「・・・コロス!!!」
炎馬は制御装置がついているネックレス【リベート】を引きちぎり、片手にハンドガンともう片方に小太刀を持ち咆哮をあげながらブレイズに突っ込んでいく。
制御装置を外したことにより炎馬の魔力は制御不能に陥り、さらに怒りで我を忘れているために魔力は際限なくあふれ出ている状態になり体からは魔力を放出するのと同時に炎も発せられていた。
そして体の隅々まで魔力が侵食しているため身体能力も通常の人間の何倍も上がっていた。
炎馬はハンドガンを発砲しながらブレイズに接近していく。
ブレイズも弾丸を避けながら炎馬に接近していく。
闘技場の中央で両者がぶつかる。
ブレイズが接近戦で再び火竜の舞を繰り出し、先ほどよりも速度を上げて攻撃をしていく。
それに対して炎馬はハンドガンを投げ捨てて、もう一本の小太刀を取り出し、ブレイズの火竜の舞の流れるような動作に合わせて、かわしては斬りつけ、いなしては斬りつけるといった、火竜の舞を無効化していく。
「ちっ!楽しいけど、火竜の舞を無効化されるとは・・・これが前魔王の魔力を引き継いだものの実力って奴か!」
「コロスコロスコロスコロスコロスコロスコロス!!!!!」
「だったらこれならどうかな!?」
ブレイズは炎馬の攻撃をかわしてすかさずボディブローを叩き込む。
炎馬が一瞬硬直した瞬間を逃さずにクリムゾンを両手で掴み頭上に掲げる。
【火竜の化身】
超至近距離からの火竜の化身を出したのだ。
火竜の化身は本来遠距離用の技で滅多に至近距離で放つことは無い技だ。
何故なら溜め時間が少なくなるからだ。この技は溜め時間が長ければ長いほど威力が増す技だから、本来溜め時間を作れない接近戦では使用しないのだ。
だが、ブレイズはほんの一瞬の溜め時間で少し威力を落とした火竜の化身を繰り出せるようになっていた。
「!?いないだと!」
なんとブレイズの視界には炎馬の姿はどこにも無く残されていたのは焼け焦げた小太刀が2本あるだけだった。
どこに居るのか気配を探すとそれはすぐ後ろに居ることが分かった。
振り向くとそこに居たのは刀に手をかけ居合いの体勢に入ってる炎馬の姿だった。
「ウガアアアアアアアアアア!!!!!」
ブレイズが見えたのは鞘から放たれた一瞬の眩い光だった。
ピカッ シュン ブシャアーーーーーーー!!!
気がつけばブレイズの腹部から見事な真一文字が刻まれて、そこから赤い血が勢いよく噴き出してしていた。
「ゴボ!ウッ!・・・ま、まいったな・・・まさかここで・・・楽しい闘いが終わるなんてな・・・・・・ほんとうに・・・ざんねんだ」
ドサリ
審判の男が駆け寄りブレイズの様子を伺う、勝敗は決したと確信して炎馬に振り向いた矢先だった。
ドサリ
炎馬もまた力尽きたように倒れたのだった。
−−−バトルクラブ救護室−−−
「・・・さ・・・ん・・・」
なんだ?誰か俺を呼んでる?誰だ?
「・・・炎馬さん!!!!!」
「・・・ス・テ・ア・さ・ん・?」
「炎馬さんよかった!無事で!」
目を開けて最初に見えたのは俺の大事な妻であるステアさんの泣き顔だった。
「・・・どう・して?」
「どうしてじゃないですよ!1ヶ月以上も家に帰ってこないんですよ!心配するに決まってるじゃないですか!・・・どうして、教えてくれなかったのですか!」
「えっ?」
「どうしてこの試練のこと教えてくれなかったんですか!教えてくれればこんな包帯グルグル巻きの状態にさせずにすんだのに!」
「・・・ごめん、心配を掛けたくなくて・・・黙って行ったんだけどかえって心配させちゃったね」
「本当に心配したのよ」
ステアさんがやさしく俺のことを抱きしめてくる。
俺もそれに答えようとゆっくりと手を動かし抱きしめ返す。
ガチャリ
「どうやら起きたようじゃな」
「大丈夫かい炎馬?」
ドアを開けて入ってきたのはミレーヌと師匠のヘリッドだった。
「ミレーヌさん、それに、師匠も」
「まったく心配させて困った弟子だよ君は」
「何言うとるんじゃ、あんな無茶な試練を出した張本人がよくいうわ」
「・・・・・・(汗)」
「さてとりあえず現状について話そうかのぉ、まずお主なんじゃがあの試合からかれこれ1ヶ月は寝たきりの状態になっておった」
「・・・・・・」
「怪我はなんとか直りつつあるが、魔力の暴走でかなりボロボロになっておったぞ。それこそなぜあの怪我で死なんのか不思議なくらいじゃった」
「・・・・・・」
「試合結果は両者戦闘不能のため引き分けになっておる」
「・・・そのミレーヌさん」
「なんじゃ?」
「ブレイズはどうなったんですか?」
「・・・あやつは・・・」
「・・・やっぱり」
「・・・1週間で勝手に退院して、自分を鍛えなおしてくると置手紙を残してバトルクラブを出て行きおったわ」
「へっ?」
「さすがに勝手に抜けられると思っておらんかったからデルフィニアも呆れておったよ」
「じゃあとりあえず生きてるんですか?」
「そうじゃ」
「・・・はあー」
「安心したか?」
「えっ?」
「ワシはバトルの前にお主に聞いたな。【お主にとって闘いとは何かと?】」
「ええ」
「答えはみつかったかのぉ?」
「はい。俺考えが甘かったんですね。闘いって命がけなんですね」
「・・・・・・」
「闘いである以上そこには命の取り合いしか存在しない、闘う以上は相手の命を奪わなければならない」
「・・・・・・」
「俺は何で犯罪者がここに居るんだと聞きました。だけどその考え方がそもそも間違っていた。闘いをやろうとしている時点でもう犯罪者なんですから俺自身も犯罪者になってしまうんですよね」
「お主が得た答えが全てとは限らんがすくなくとも十把一絡げのモノの見方はこれで無くなったじゃろう。お主が言っておるとおり、闘いは生きるものを傷つける犯罪行為じゃ、じゃがある意味生きると言うのは闘うこと同じじゃ、生きるためには肉を食らわねばならんし、命を食わねばならん。これは生きとし生けるものが負う共通の罪じゃろう。闘うと言うことはそういうことじゃとワシは認識しておるよ」
「・・・・・・生きるって大変ですね」
「そうじゃな」
「なんか話が脱線してるような気がするのはわたしだけなのかしら?」
「いいんじゃないかな?良い話っぽいし」
俺はこの闘いで何か大事なことを学んだ気がする。
それこそ今までなら考えることも無かったことを。
きっと俺は生涯ここでの経験を忘れないだろう。
闘いとはどういうことなのかと。
ここはとある地下にある闘技場。
己のすべてをぶつけ合う場所。
一攫千金を狙える場所。
次なる挑戦者はいったい誰か。
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11/12/04 02:14更新 / ミズチェチェ
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