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第一章 始まりの日記 (バトル、シリアス)
私の名は「ヴァル=フレイヤ」ここオステカの村で自警団をしている。

なぜ私が自警団に入っているのかというと、これには理由がある。
それは私は冒険者に憧れているのだ。
15の時だったかな、その時の私はとにかく本が好きでな自宅にある本はもちろん村中にある本を片っ端から読み漁るくらいだ。(もちろん、ちゃんとことわりは入れてある)

そしてある本に出会った。その本はある冒険者が出てくる物語でな、私はその物語に引き込まれていったよ。何度も何度も読むうちに私は冒険者にだんだん憧れていたのだ。

私は冒険者になろうと決心したよ。だがこの村には戒律があって村の人間は20歳になるまでは村の外には出ることを許さないという戒律があった。
当時の私も冒険者になりたくてあの手この手でなんとか村を抜け出そうとしたがその度に自警団やら村の人などに見つかってしまい連れ戻される日々。
ならばと村長と両親にお願いをした。

「村の戒律に従い20歳までは我慢いたします。ですがその時がきたならば止めないと誓っていただけますか?」

村長と両親は渋っていた。女が冒険者などとんでもないなどと考えていたのであろう。

「誓っていただけますか!?」

静かにはっきりとした口調でさらに問いただす。

「わかったわいフレイヤ、ヌシがそこまでいうならば認めよう」

村長の言葉に両親が驚いていた。

「村長何をおっしゃるんですか!?」

「まあ待て、何もワシはただで認めはせんよ、フレイヤ、ヌシには自警団の入団テストを受けてもらう」

「入団テストですか?」

「そうじゃ、この村の自警団にも入れないようなら冒険者など無理であろうからな、もし20歳までに合格できればワシはもう止めはせんよ」

「その話誓って偽りはありませんね」

「無論だ」

「わかりました。その条件を受けましょう、20歳までなら何度でも受けていいんですね」

「うむ」

「それではこれで失礼します」

私はそういい残して村長の家から出て行った。

「村長なぜあんなことをいったんですか!?」

「そうですわ、娘が冒険者なんてそんな危険なことをあの子は女の子なんですよ」

「おぬしらすこしは落ち着かんか」

「これが落ち着いていられますか!!、娘の一大事なんですよ!!」

「だからこそじゃ、もしワシがあそこで認めなくともフレイヤは勝手に村をでていっただろう、そうなってしまってはさらにフレイヤが危険にさらされるじゃろう、それならば自警団に入れるほどの実力者になるか、自警団にも入れない弱者と認めさせるかの二択しかあるまい。これも全てフレイヤのためじゃわかっておくれ」

「し、しかし」

「どうしても嫌というならばフレイヤを監禁するしかなかろうがそれはお主らも嫌じゃろう、これが一番フレイヤのためなのじゃ、わかっておくれ」

「・・・・・わかりました」

   −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

両親の心配をよそに私は自警団に入るために特訓を開始した。
体力づくり、剣の修行、護身術、そして戦術の本を読み漁り知識を溜め込んだ。
私は自分にできることは全てやった。
私は何度もテストを受けた。
しかし何度やってもどうしても受からない。
テストの内容はいたってシンプル、ただ単に一騎打ちを3回行い勝てばいいというものだった。

はじめは一人は抜くことができた。しかし二人目が強かった。
二人目は副団長だったからだ。
齢40は超えている自警団きってのベテランだ。

そんな日が幾度も続き、気がつけば三年が経過し、私は鍛錬に明け暮れていた。
こんどこそ受かってみせる!!
その意気込みを胸に再度テストを受ける。

テストが行われる空き地には村の人が私の入団テストを見学しに来ていた。(私が何度もテストを受けるものだから、既に恒例行事の見世物みたいになってしまっている。・・・私は真剣にやっているんだがな、はあー)
最初の相手はいつもどおり、村で門番を任されている。アレックスだ。
彼は正義感も強く、人一倍負けず嫌いで努力家だ。
・・・しかし、残念なことに、彼にはまったくといっていいほど武術の才能がなかった。

互いに位置につき、木剣を構える。

「はじめ!!」

「いくぞ!フレイヤ!」

そういうと彼は真っ直ぐに突っ込んできた。

「やぁあああああ!!!」

そして、ジャンプをして、木剣を振り下ろしてくる。
こんな攻撃では避けて反撃してくださいと言っているようなもの。
私は攻撃を掻い潜り彼の背後を取り、首筋に一撃を与えた。

「くはぁ・・・」

彼はそのまま前のめりに倒れていく。

「勝負あり!!勝者フレイヤ」

「よし。まずは一人」

「ふふふふふ、どうやらまた一つ腕をあげたようですな」

笑いながら、近づいてくるのは副団長の二キータだった。

「それはそうですよ、何度もあなたに叩きのめされてきたんですからね、こんどこそ!私はあなたに勝ってみせる!!」

「ふふふふふ、それは楽しみですね。あなたがどこまで進歩したか、この老兵が見極めてあげましょう」

「その余裕な態度、いったいいつまで続けられるか、楽しみにしていてください」

私は闘志を燃やしていた、幾度となく私の冒険者入りを拒んできた壁なのだから。

互いに位置につき、木剣を構える二人。

「はじめ!!」

始まりの合図が告げられた。しかし、二人は動かない。
なぜなら、二キータは絶対自分からは仕掛けないからだ。
 
(私は何度も戦ってきたから分かる、彼は完璧な受けの達人なのだ。
攻め込んでくる相手をいなし、無力化してから初めて攻撃に移るのだ。
だから迂闊には飛び込めない、しかしそれでもこちらから攻撃しなければ勝機がないのも事実、さてどうやって攻めるか)

「どうしたのですか?遠慮することはありません、さっさと打ち込んだらどうなのですか?・・・それとも私が怖くて動けないんですか?最初の勢い、あれはハッタリだったんですか?」

と、挑発を仕掛けてくる。だが・・・

「まあそんなに慌てないでください。その言葉どおりに突っ込んでしまっては、あなたの方に勝機が流れ込んでしまうんですから、その挑発には乗りませんよ」

「そうですか。しかし、いつまでも見合っていては勝敗がつきませんよ?」

「それもそうですね、じゃあ、そろそろいきますか」

そういって、ジリジリと距離を詰めていく。
緊張感が一気に高まっていく。

 ドックン ドックン ドックン ドックン ドックン

「いやああああああああああ!!!!!」

短い間合いから一気に懐に詰め寄る。
木剣を横薙ぎに払う。

 ガツン!!

彼の木剣とぶつかり合う。

 バッ!! ガッ!! ガツ!ガツ! ガツン!!

何度も打ち合う、何度も、何度も。
その最中彼は私の攻撃をいなし続けた。
泳ぎそうになる体を支え、そのまま打ち合いをつづける。
そして、私は勢い余って大振りの攻撃をしてしまった。
当然のごとく攻撃をいなされ、体が泳ぐ私。

「もらったーーー!」

彼の攻撃が私の背中に当たる。・・・はずだった。

 ブン!!!

そこには私の姿はなく、彼の攻撃は何もない空中を切り裂いていた。

 ストッ。

背後から音が聞こえ、後ろを見る。
そこにはいつの間に移動したのか、彼女の姿があった。
彼女は既に攻撃態勢に入っていた。

「やあああああ!!!!!!!!」

 ガツン!!!!

「ぐはあああああああ」

そのまま吹き飛ばされるニキータ。

「勝負あり!!勝者フレイヤ」

ついに私は副団長から一本を取ることに成功した。
あの時の感動は今でも忘れない。

「ぐううう・・・ま、負けて、しまったか」

「大丈夫ですか?」

「ああ、大事無い、心配しなくていいぞ。しかし、まさかフレイヤに負ける日がこようとはおもわなんだな。最後のあれはいったいどうやったんだ?」

「ああ、あれは最後に大振りをしたじゃないですか、実はあれ、わざとやったんですよ。大振りをすれば確実にニキータさんならいなしてくると読めましたからね、今回はそこを利用したんですよ」

「それだけでは答えになってないぞ、フレイヤ」

「もちろんこれだけでは、答えじゃないですね。実はかなり危険な賭けだったんです、問題はいなされた後、泳ぐ体をどれだけ制御できるか、結果は何とか即座に立て直せたんですけどね、そして立て直してすぐにニキータさんの後ろにバク宙したんです」

「それで振り向いたときにはいなかったわけか。それにしてもあきれた反射神経だな、普通はいなされたら即座に立て直すなんて、なかなかできないいんだがな」

「まあ、いろいろ特訓しましたからね、ともかくこれで二人目、次で三人目。いよいよ最後だ。最後の人はやっぱり団長ですか?」

「いや、私ではないぞ」

今まで審判をやっていた、団長は否定した。

それならばいったい誰が三人目を勤めるのだろうか?
私が疑問に思っていると、顔に出てしまったのか、団長が答えを言った。

「三人目はフレイヤもよく知っている人物だ。・・・リサ!!!来なさい!!」

「えっ!?」

私は驚いた。なぜならば、リサとは私の幼馴染なのだ。

「はい!!」

元気な返事をして、現れたのは、青いポニーテールをなびかせ。
青いうろことこれまた青い尻尾たずさえたリザードマンのリサだった。
リサとは幼いころはよく遊んだものだった。
最近は自警団が忙しいということで、たまに顔を合わせるくらいだったのだがまさかリサが出てくるとは思わなかった。

「あたいが出てきたのがそんなに意外かい?」

「ああものすごくな」

「団長にお願いしてださせてもらったんだ」

「なぜそんなことを?」

「あんた自警団に入りたい理由って冒険者になるためなんだろ団長から聞いたよ、だからあたいもその手伝いをしたくてね」

「手伝い?」

「この入団テスト本当は一人だけでいいんだよ、戦うの」

「・・・・・ウソ」

「ウソじゃないよその証拠にあたいは一人倒して入ったからね、このテストはいわばあんたのための特別テストさ、村で強い奴と渡り合えないで冒険者なんてチャンチャラおかしいからね、だから特別テストなのさそして最後に友達としてあんたの実力を確かめておきたいのさ、いや、違うかな一人の戦士としてあんたと戦いたいのさ」

「リサ」

「あたいを倒さなきゃ、冒険者なんか絶対に認めない、絶対に認めるもんか!!」

リサの気持ちが痛いほど伝わってくる。
だが、私も引くわけにはいかない。

「わかった、リサ勝負!!」

「では互いに位置につけ」

リサと私は互いに位置につく

「はじめ!!」

互いに木刀を構える。
周囲のギャラリーも固唾を飲んで見守る。

 ヒュウゥゥーー 

風が吹き、落ち葉が互いの間を通り抜ける。

「ディヤァァァァ!!!」

落ち葉が通り抜けると同時にリサが突っ込んできた。
あっという間に私の目の前に飛び込んでくる。

「デリャアアアアアアア!!」

雄たけびを上げながら木刀を振り下ろす、殺すのではないかというほどの勢いだ、私は間一髪で横に避けたのと同時に木刀を横に振り払う。
リサはそれをしゃがんでかわし、いったん後ろに飛ぶ。
わずか一瞬の隙があれば即座にやられる。
私はリサを見つめながらどうすればいいか考えていた。

再び、リサは突撃をしてくる。
そのスピードは速く、リサがリザードマンなんだと再認識させられる。
スピードを生かし、突き、切り払い、切り上げ、あらゆる攻撃が私を襲う。
その攻撃を紙一重、皮一枚、ギリギリのところでかわし、木剣で受け止める。

(は、速すぎる!!)

リサの猛攻の前に防戦一方のフレイヤ。
攻撃をかわし、受け止めるので精一杯だった。

(このままじゃ、いつかもらってしまう、なんとかしなきゃ、なんとかしなきゃ!!)

(一撃でいい、何とかいなさなければ)

そして、リサの攻撃はイライラしてきたせいなのか、大雑把な攻撃に、だんだんと大振りになってきた。
その一撃をフレイヤは見逃さなかった。

 ガツン!!!!

思い切りリサの攻撃をいなした。
何度もニキータと戦ってきたからこそ、出来たことだった。
リサがよろけているうちにいったん距離をおいた。

「ハアハアハアハアハアハア」

「ハアハア、どうしたのさ、ずいぶん息が上がってるじゃないか」

「ハアハアハア、そりゃそうだろう、三連戦をして、さらに今みたいなむちゃくちゃな連撃を受け続ければ、誰だって息が上がるさ」

会話をしながらも私はどうすれば勝てるのかを模索していた。
正直、まともにぶつかれば勝てる気がしない。
ならば、何か利用できるものはないだろうか。

「あきらめなよ。あんたじゃあたいには絶対に勝てないんだからさ、降参したほうが、痛い目に会わなくて済むよ」

「そういうわけにもいかないだろう。私は冒険者になるって決めたのだからな」

とはいったもののかなり絶体絶命のこの状況、いったいどうすればいいのか。
そのときふと自分の影に気がついた。

(影、太陽・・・そうか!?)

フレイヤはある作戦を思いついた。
しかし、その成功確立はきわめて低いものだった。

(だが、やるしかない!!)

「ふっ、それにしてもその程度の実力しかないのかリサ、それで私に一撃を与えられるとでも思ったのか、まったくお話にならないな」

「なっなんだって!!!」

実際はかなりギリギリだ、この作戦も失敗すれば負ける可能性がでかい、しかし今はこれしか勝機が見当たらない。

「だってそうだろ、リザードマンは人間より戦闘に関しては優秀だ。なのに私に一撃も当たっていないじゃないか」

「な、何!!ちょっと手加減してやれば、調子に乗りやがって、このヤロー!!!」

そういってリサは突進してくる。
先ほどとは違いさらに速くなって突撃してきた。

「食らえー!!!!」

そういって木剣を横に薙ぎ払ってきた。
私はあらかじめ立てた作戦通りに足に力を込め高く飛び上がった。

(馬鹿だな、空を飛べば隙だらけじゃないか)

リサも私を見失わないよう空を見上げたその時。

「うっ」

太陽を背に飛び上がった私を見たリサは太陽の光で目をくらましてしまった。

「はああああああ!!!!!!!!」

私は一気に落下して自重とともに木剣を振り下ろす。

 ガツン!!!!!バキッ!!!

着地とともに私は木剣を突きつけた。

「・・・・・ま、まいった」

「勝負あり!!!!勝者フレイヤ」

 ウオオオオオオオ!!!!!!!!

まわりから大歓声が起きた。

「大丈夫かリサ」

そういって私は手を差し出した。

「うん大丈夫」

そういって手を握り立ち上がるリサ。

「おめでとう。これでフレイヤも自警団の仲間入りだ」

「団長、わっ私、私」

「おめでとうフレイヤあんたに負けるとは思ってもみなかったよ、強くなったね」

その言葉を聞いたとき私は泣き崩れていた。ただうれしくて涙が止まらなかった。
こうして私は自警団に晴れて入団することができた。
自警団にいるときにはさまざまなことがあったがまあそれはまた別の機会に記しておこう。

  −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

あれから二年いよいよ私は20歳になるときがやってきた。
明日がその日だ、楽しみでしょうがない。
さて、今日はもう遅いそろそろ寝るとしよう。

今日から書き始めたこの日記いったいどこまで書けることやら。
                                        ○月×日 ヴァル=フレイヤ

10/12/21 08:05更新 / ミズチェチェ
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■作者メッセージ
 はい初投稿です。本来なら携帯から投稿する予定だったのですが、どうやっても携帯では投稿できず涙を流しました。
思ったよりもすらすら書けましたがどこまでがんばれるかな。
感想にはキャラ返信をする予定です。
ドシドシ感想をお待ちしております。

11月19日 改行修正および加筆しました。
11月25日 改行修正しました。

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