死神VSバフォメット
ここはバトルクラブの入り口にあたる洞窟の前ここに一人の男が倒れていた。
「うっ、うーん、ここは、どこだ・・・」
男は洞窟の前にいた。
男の姿は漆黒のローブを身にまとい、その雰囲気はまるで地獄の使者といわんばかりの雰囲気をかもし出している。
「私は・・・私の名はジェイド、ジェイド=フライス」
男はなぜかぶつぶつと独り言をしゃべっている。
そこに。
「ようよう兄ちゃん、そんなところで突っ立てると邪魔なんだよ。入るならさっさと入ってくれねえか?」
突然後ろから柄の悪そうな男たちが三人やってきた。
「なんだおめえそんな身なりでバトルクラブに参加するつもりか?ギャハハハハハハハ、こいつは傑作だぜ!」
「バトル、クラブ・・・バトルクラブ・・・」
「なんだ?なにさっきからぶつくさ言ってんだ?」
「御頭こいつ頭おかしいんじゃないんですか?」
「どの道参加者が増えると面倒だし、ここで殺っちまいませんか御頭」
「そうだな、兄ちゃん悪いが俺たちが参加して勝ち残るためにもよ、ここで死んどいてくれねえか!!!」
そう言って御頭と呼ばれた男はジェイドに向かって、剣を抜き放った。
当たれば首が飛ぶという剣筋だった。
しかし。
ヒュン ザン!!ビシャアアアア!!!ドサ
首が飛んだのは御頭と呼ばれた男の首だった。
「・・・お、御頭!?」
「お、御頭の首が・・ひえええええ!!!」
「ま、待ってくれ!!」
残った二人は一目散に逃げ出した。
しかしいつの間に回りこんだのか目の前には漆黒のローブをまとったジェイドがいた。
その手にはローブと同じく漆黒の大鎌があった。
その大鎌から先ほど斬ったであろう御頭の血がぽたりぽたりと流れ落ちていた。
「た、助けてくれ!!命だけは」
「・・・・・・」
ヒュン ザン!!ビシャアアアアアア!!!ドサ
「あわああ、ああ、た、助けて、い、命だけは・・・」
「死ね」
ヒュン ザン!!ビシャアアアアアア!!!ドサ
わずか数分の間にジェイドは荒くれ共の首を飛ばした。
「私は誰だ?名前はジェイド=フライス、バトルクラブに参加する。これ以外の私の記憶がない」
そうジェイドは記憶喪失だったのだ。
「だが、戦い方は覚えてる、こいつは私の相棒」
そういうとジェイドは大鎌をかざした。
突如闇に染まった空間が出現し、大鎌を引きずり込んでゆく。
大鎌は完全に飲み込まれて消滅した。
「私の記憶の手がかりはバトルクラブにありそうだ」
そういってジェイドは洞窟に向かって歩いていった。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
ジェイドはあの後受付で参加を申し込み、控え室にいた。
控え室にいる最中もずっと自分の記憶を探っていた。
しかし一向に戻る気配がなかった。
そうこうしているうちにジェイドの出番が来ていた。
ジェイドが参加したのはサバイバルバトルというもの、サバイバルバトルは試合に勝つたびに次の試合を行うか行わないかを聞き、行う場合は休憩を挟まずに戦う。行わない場合は勝利数に応じて賞金が手渡される。というものだった。
つまり勝てば勝つほど賞金がもらえるのだ。だが欲をかけば大体が体力が尽きて殺されてしまうのだ。
なので引き際見極めることが重要ともいえる。
最初の相手はどこにでもいそうないかつい戦士だった。
「おぬしに恨みはないが、私の大切な家族が私の帰りを待っている死ぬわけにはいかんのだ。覚悟せよ」
「・・・・・・覚悟?」
そう言ってジェイドは目の前に手をかざした。
先ほどと同じ闇の空間があらわれそこから先ほど飲みこまれた大鎌が出てくる。
「貴様を、殺す覚悟か?」
あまりに異様な光景に唖然とする観客と戦士。
「き、貴様何者だ?」
「それは・・・私にもわからんよ」
言い終わると同時にジェイドの姿が消えた。
「き、消えた!?」
ヒュン ザン!! ビシャアアアア!!!ドサ
突如後ろからジェイドが姿を現し、戦士の首を跳ねた。
戦士の顔は驚いた顔をしたまま死んでいた。
「だがなぜかな、人の首を切るのがとても楽しいんだ」
ジェイドは薄ら寒い笑みを浮かべていた。
その光景に観客はぞっとしていた。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
その後もジェイドは勝ち続けた。襲ってくる相手の首をいとも簡単に斬り飛ばし続けた、中には元最強の王国騎士の姿もあったが首こそ飛ばされなかったものの鎧ごと心臓を切り裂かれ絶命した。
気がつけば、ジェイドが殺した数は49人にまで達していた。
闘技場は血に染まり、凄まじい血の匂いで溢れていた。
もはや誰にも止めることができないと誰もがそう感じていた。
「ジェ、ジェイド様、次が最後のバトルとなります。よ、よろしいですね」
「かまわん、もし次の対戦相手もつまらなければ、ここにいる観客の首でももらおうかな?」
な、なんだって!!!!!!!
「私の記憶を取り戻すためにはどうやら人を殺さなければならないらしい、その証拠に徐々に私の記憶が戻ってきているのだからな、とはいってもまだ自分が何者なのかもわかっていないがな」
ごくり
審判を勤めている男はあまりの恐怖に体を震わせていた。
いや審判だけではない、観客も体を震わせ動けないでいた。
なぜなら、次のバトル次第では自分たちの命が危ういからだ。
「し、しかし、我がクラブでは観客を攻撃することは禁じられています。その禁を破れば我がクラブの主であるデルフィニア様が直接罰を下すことになっております」
「それがどうした?」
「あなたはデルフィニア様をご存知無いのか!デルフィニア様は我々人間でどうにかできる存在では・・・」
「黙れ。そのデルフィニアとやらが何者でも関係ない、私の楽しみを奪うなら誰であろうと殺す、だから要らぬ心配は無用だ。さあ、さっさと始めてくれないか?早く記憶を取り戻したいのだよ私は」
審判の男はもはや何を言っても無駄だと悟り、自分の仕事をすることにした。
「ラストバトル!!ラストチャレンジャーの入場です!!皆様拍手でお迎えください」
しかし誰も拍手などしなかった。
当然だ。このバトルが終われば自分は死ぬかもしれないのにのん気に拍手などする気にもなれなかったのだ。
「ラストチャレンジャーははるばる魔界からやってきた地獄の使者、可愛い外見とは裏腹に凶悪な大鎌と強烈な魔法を使う、皆様ご存知のあの魔物、バフォメットの、ミレーーーヌーーーー!!!!!」
お、お、うおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!
突如今まで沈黙を保っていた観客が驚きと喜びの混じった歓声をあげた。
それもそのはずバフォメットは魔物の中でも戦闘力が上位に入る存在、バフォメットならあの狂った殺人鬼を止めることができるはず、その想いができたからこそ歓声をあげることができたのだ。
そして紹介とともに赤く塗られたゲートからバフォメットが姿を現した。
その手にはすでに大鎌を持っており、表情は険しく、戦うという意思が込められていた。
両者は闘技場の中央で向かい合った。
「お主がジェイドか、ワシはバフォメットのミレーヌじゃ、お主の戦いはずっと見ておった。とても人間が戦っているとは思えんほどに強かった。・・・・お主、本当に人間か?」
「私にもわかりませんよ、私は記憶を無くしているんですから」
「ふっ、そうじゃったのう、・・・ワシはお主に興味が出てのう、本当は出るつもりは無かったんじゃが、その強さを研究してみたくなってな、もし殺してしまったときのためにすまないと謝っておこうかのぉ」
「そんな心配は要らないですよ、私があなたを殺せば済む話ですからね」
互いに顔を笑わせながらとんでもないことを口に出し合う。
「さぁそろそろ始めようかのぉ」
「ええ、始めましょう」
互いに大鎌を構える。
互いに膨大な殺気を放ち、それらがぶつかり合い緊張感を高めていくその緊張感が闘技場全体を包みだす。
観客もそれを感じある者は黙り、硬直、失神するなどの事態を引き起こしていた。
ヒュン
対峙していたはずの二人が突然消えたのだ。
ガッキーン!!
突如鋭く鈍い音が響いた。
ミレーヌの大鎌とジェイドの大鎌が相手の首を取ろうと攻撃しあったところでぶつかったのだ。
そして何事も無かったようにお互いが真逆の位置で表れる。
「まさかワシの一撃に反応できるとはのぉ、今までのやつらは大抵この一撃で終わるんじゃがな」
「私も驚きました。今まで殺してきたやつらとは決定的に何かが違う。強いんですね」
「スピードはワシと互角、ならばこれはどうかのぉ」
ミレーヌは何かをぶつぶつと唱え始めた。
「地獄の雷神よ、そなたの力、我に貸し与えたまえ、ヘルスパーク!!」
するとジェイドの上に突如黒い空間が出現し、紫色の雷がジェイドを襲う。
ゴロゴロ ドッカーン!!
「くっ!?、ぐわあああああ!!!!」
雷は見事にジェイドに当たった。辺りが雷が落ちた衝撃で土煙が出ている。
「ふっ、いくら素早いお主でも雷の早さには勝てなかったようじゃな」
「・・・ふっ、ふっふっふ、はっはっはっはっは!!!!」
土煙の中からジェイドの笑い声が聞こえだした。
「なっなんじゃと!?」
「思い出した、思い出したよ。私、いや、俺という存在を」
「思い出したじゃと?記憶が戻ったというのか?」
「ああ、あんたのおかげでな、俺はジェイド=フライス、あの世から使わされた死神だ」
「し、死神じゃと!?馬、馬鹿な、死神はあくまで空想上の生物じゃ。現実にいるはずが無い!」
「ところがいるんだよ、ここにな、俺たち死神はこの地上の生き物の魂を狩るのが仕事だ。さまよう魂は狩らなければ世界を崩壊させてしまうからな」
「・・・ならばお主はなぜ生きた人間を狩るのじゃ?」
「俺は生きた人間を狩るために育てられたエリートだからな。こういった世の中に不必要と判断された場所に赴いては人間狩りを行うのさ。まあその中には善良と呼ばれるやつもいるかもしれないが関係ねぇ、狩れと言われれば狩るまでの話さ」
「・・・なるほどのぉ。それでお主はなぜ記憶を失っていたのかのぉ」
「たぶん、俺の部下のせいだろう。俺の部下は俺のことを嫌っていやがったからな、記憶を消去する術でも使ったんだろうよ。今頃は俺は亡き者として扱われてるかもな」
「事情はわかった。それでお主はまだ戦う気なのかのぉ」
「当たり前だ!たとえ部下に裏切られても、俺はあの方に忠誠を誓った身だ。仕事は絶対にやり遂げる。このバトルクラブにいるやつらを全員ぶち殺すことが俺の仕事だ!!」
「ならばワシはお主を止めるために戦うかのぉ。全力で!」
再び互いに大鎌を構える。
「俺はあまり技は無いが一つだけとっておきのがある。それをお前に食らわせてやるぜ!!」
ジェイドは大鎌を両手で持ち、後方に構えた。
構えた大鎌に黒い光が輝き始めた。
「暗黒両断波!!!」(あんこくりょうだんは)
振るった大鎌から黒く幅広い斬撃が飛び出てきた。
その速度は速く、絶大な威力があると見受けられた。
(よけねば、しかしよければ・・・くっ!)
「大いなる守護の壁よ、その壁を用いて攻撃を阻止せよ、ガーディアンウォール!!」
ミレーヌの目の前に透明な魔力の壁ができた。
そしてジェイドの暗黒両断波がガーディアンウォールを襲う。
バチッ!!!!!!
凄まじい音が響く。
「ぐぬ!ぐううううぅぅぅ!!!!」
ミレーヌが苦悶の表情を見せる。このガーディアンウォールを用いてここまで押されたことはかつて記憶に無い、それほどの一撃なのだ。
「はあああああああぁぁぁぁ!!!!!!」
ドッカーン!!!!!!
魔力をフルに使い暗黒両断波を打ち消したミレーヌ。
「あんた、隙だらけだぜ」
背後からジェイドの声が聞こえた。
「あんたは今までの中で最高の獲物だ。楽に死なせてやるぜ!」
「ぐっ、しまったのじゃ!!!」
「あばよ!!」
ジェイドの大鎌が振り下ろされる。
ミレーヌは死を覚悟した。
しかし、振り下ろされた大鎌は途中で止められていた。
目の前にいる悪友によって。
「なっ!?お前!邪魔するな!!」
「悪いな死神とやら、貴様は我がクラブの禁を破る行為を行った。よって貴様を罰するために赴いたのだ」
「デ、デルフィニア?」
「すまないな、せっかくの勝負に水を差してしまって、しかし禁を破るものには罰を与えるのが我の仕事でもある、故に許せ」
「ふっ、そのおかげで助かったのじゃ」
「ぐっ、くそ!離せ!!」
「少し黙っていろ!!」
ヒュン ベゴン!! ドッガーン!!!
デルフィニアのパンチがジェイドをとらえ、そのまま壁にぶっ飛ばされた。
ぶっ飛ばされたジェイドは見事に気絶していた。
「お主やりすぎでは・・・」
「何を言うか?これぐらいでは我の気が済まぬ、さすがに殺す気は無いが屈服させねば気が済まぬのだ」
「はあーお主はミョーな性格をしておるからのぉ、殺し合いを見たいとか行っておるくせにルールを破る、つまり観客に手を出す行為を許さないとかどれだけ矛盾しておるんじゃ」
「それは我の習性みたいなものだ。財宝を集めるのが我の習性、故にその財宝を吐き出す観客に死なれては困るただそれだけだ。それと他人を巻き込ま無ければ勝てないような戦いは好かんのだ」
「・・・やっぱり、お主は変わり者じゃ」
「さてとあのジェイドとやらを暇つぶしに我の下僕にしてみるとするか、どうだミレーヌも一緒に来ないか?」
「やめておくのじゃ、お主の調教は過激だからの見ていると目に毒なのじゃ」
「ふふふ、そいつは残念だ」
そういうとデルフィニアは気絶しているジェイドをつかみ自慢の羽を羽ばたかせて空を飛び、自分の部屋へと帰っていった。
「これで何人目じゃったかのぉ、あやつに連れ去られたのは・・・ところで審判この勝負はどうなるのじゃ?」
「・・・は、はい、この勝負は観客を巻き添えにしようとした攻撃を放ったためジェイド様の失格です。なのでミレーヌ様の勝利ですね」
「ならばさっさと勝利宣言をしてやれ、観客が混乱しておるぞ」
ザワザワ・・・・・・
「は、はい!・・・オホン、皆様!!ただいまの勝負ですが、ジェイド様の失格行為が発覚しましたため、ミレーヌ様の勝利といたします!!」
や、や、やったーーーーーーーーー!!!!!!
観客は歓喜の歓声をあげた。
さっきまで、殺されるかもしれない緊張感を味わっていたためにこの勝利宣言は自分たちの命も助かったという事実が含まれているため、その歓声は決闘場を揺らすほどだった。
「すごい歓声なのじゃ・・・さてとワシも帰るとするかのぉ」
「あのミレーヌ様、賞金は!?」
「そんなもんはいらんのじゃ」
そういってミレーヌは闘技場を去っていった。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
ここはとある地下にある闘技場。
己のすべてをぶつけ合う場所。
一攫千金を狙える場所。
次なる挑戦者はいったい誰か。
TO BE CONTINUE
「うっ、うーん、ここは、どこだ・・・」
男は洞窟の前にいた。
男の姿は漆黒のローブを身にまとい、その雰囲気はまるで地獄の使者といわんばかりの雰囲気をかもし出している。
「私は・・・私の名はジェイド、ジェイド=フライス」
男はなぜかぶつぶつと独り言をしゃべっている。
そこに。
「ようよう兄ちゃん、そんなところで突っ立てると邪魔なんだよ。入るならさっさと入ってくれねえか?」
突然後ろから柄の悪そうな男たちが三人やってきた。
「なんだおめえそんな身なりでバトルクラブに参加するつもりか?ギャハハハハハハハ、こいつは傑作だぜ!」
「バトル、クラブ・・・バトルクラブ・・・」
「なんだ?なにさっきからぶつくさ言ってんだ?」
「御頭こいつ頭おかしいんじゃないんですか?」
「どの道参加者が増えると面倒だし、ここで殺っちまいませんか御頭」
「そうだな、兄ちゃん悪いが俺たちが参加して勝ち残るためにもよ、ここで死んどいてくれねえか!!!」
そう言って御頭と呼ばれた男はジェイドに向かって、剣を抜き放った。
当たれば首が飛ぶという剣筋だった。
しかし。
ヒュン ザン!!ビシャアアアア!!!ドサ
首が飛んだのは御頭と呼ばれた男の首だった。
「・・・お、御頭!?」
「お、御頭の首が・・ひえええええ!!!」
「ま、待ってくれ!!」
残った二人は一目散に逃げ出した。
しかしいつの間に回りこんだのか目の前には漆黒のローブをまとったジェイドがいた。
その手にはローブと同じく漆黒の大鎌があった。
その大鎌から先ほど斬ったであろう御頭の血がぽたりぽたりと流れ落ちていた。
「た、助けてくれ!!命だけは」
「・・・・・・」
ヒュン ザン!!ビシャアアアアアア!!!ドサ
「あわああ、ああ、た、助けて、い、命だけは・・・」
「死ね」
ヒュン ザン!!ビシャアアアアアア!!!ドサ
わずか数分の間にジェイドは荒くれ共の首を飛ばした。
「私は誰だ?名前はジェイド=フライス、バトルクラブに参加する。これ以外の私の記憶がない」
そうジェイドは記憶喪失だったのだ。
「だが、戦い方は覚えてる、こいつは私の相棒」
そういうとジェイドは大鎌をかざした。
突如闇に染まった空間が出現し、大鎌を引きずり込んでゆく。
大鎌は完全に飲み込まれて消滅した。
「私の記憶の手がかりはバトルクラブにありそうだ」
そういってジェイドは洞窟に向かって歩いていった。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
ジェイドはあの後受付で参加を申し込み、控え室にいた。
控え室にいる最中もずっと自分の記憶を探っていた。
しかし一向に戻る気配がなかった。
そうこうしているうちにジェイドの出番が来ていた。
ジェイドが参加したのはサバイバルバトルというもの、サバイバルバトルは試合に勝つたびに次の試合を行うか行わないかを聞き、行う場合は休憩を挟まずに戦う。行わない場合は勝利数に応じて賞金が手渡される。というものだった。
つまり勝てば勝つほど賞金がもらえるのだ。だが欲をかけば大体が体力が尽きて殺されてしまうのだ。
なので引き際見極めることが重要ともいえる。
最初の相手はどこにでもいそうないかつい戦士だった。
「おぬしに恨みはないが、私の大切な家族が私の帰りを待っている死ぬわけにはいかんのだ。覚悟せよ」
「・・・・・・覚悟?」
そう言ってジェイドは目の前に手をかざした。
先ほどと同じ闇の空間があらわれそこから先ほど飲みこまれた大鎌が出てくる。
「貴様を、殺す覚悟か?」
あまりに異様な光景に唖然とする観客と戦士。
「き、貴様何者だ?」
「それは・・・私にもわからんよ」
言い終わると同時にジェイドの姿が消えた。
「き、消えた!?」
ヒュン ザン!! ビシャアアアア!!!ドサ
突如後ろからジェイドが姿を現し、戦士の首を跳ねた。
戦士の顔は驚いた顔をしたまま死んでいた。
「だがなぜかな、人の首を切るのがとても楽しいんだ」
ジェイドは薄ら寒い笑みを浮かべていた。
その光景に観客はぞっとしていた。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
その後もジェイドは勝ち続けた。襲ってくる相手の首をいとも簡単に斬り飛ばし続けた、中には元最強の王国騎士の姿もあったが首こそ飛ばされなかったものの鎧ごと心臓を切り裂かれ絶命した。
気がつけば、ジェイドが殺した数は49人にまで達していた。
闘技場は血に染まり、凄まじい血の匂いで溢れていた。
もはや誰にも止めることができないと誰もがそう感じていた。
「ジェ、ジェイド様、次が最後のバトルとなります。よ、よろしいですね」
「かまわん、もし次の対戦相手もつまらなければ、ここにいる観客の首でももらおうかな?」
な、なんだって!!!!!!!
「私の記憶を取り戻すためにはどうやら人を殺さなければならないらしい、その証拠に徐々に私の記憶が戻ってきているのだからな、とはいってもまだ自分が何者なのかもわかっていないがな」
ごくり
審判を勤めている男はあまりの恐怖に体を震わせていた。
いや審判だけではない、観客も体を震わせ動けないでいた。
なぜなら、次のバトル次第では自分たちの命が危ういからだ。
「し、しかし、我がクラブでは観客を攻撃することは禁じられています。その禁を破れば我がクラブの主であるデルフィニア様が直接罰を下すことになっております」
「それがどうした?」
「あなたはデルフィニア様をご存知無いのか!デルフィニア様は我々人間でどうにかできる存在では・・・」
「黙れ。そのデルフィニアとやらが何者でも関係ない、私の楽しみを奪うなら誰であろうと殺す、だから要らぬ心配は無用だ。さあ、さっさと始めてくれないか?早く記憶を取り戻したいのだよ私は」
審判の男はもはや何を言っても無駄だと悟り、自分の仕事をすることにした。
「ラストバトル!!ラストチャレンジャーの入場です!!皆様拍手でお迎えください」
しかし誰も拍手などしなかった。
当然だ。このバトルが終われば自分は死ぬかもしれないのにのん気に拍手などする気にもなれなかったのだ。
「ラストチャレンジャーははるばる魔界からやってきた地獄の使者、可愛い外見とは裏腹に凶悪な大鎌と強烈な魔法を使う、皆様ご存知のあの魔物、バフォメットの、ミレーーーヌーーーー!!!!!」
お、お、うおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!
突如今まで沈黙を保っていた観客が驚きと喜びの混じった歓声をあげた。
それもそのはずバフォメットは魔物の中でも戦闘力が上位に入る存在、バフォメットならあの狂った殺人鬼を止めることができるはず、その想いができたからこそ歓声をあげることができたのだ。
そして紹介とともに赤く塗られたゲートからバフォメットが姿を現した。
その手にはすでに大鎌を持っており、表情は険しく、戦うという意思が込められていた。
両者は闘技場の中央で向かい合った。
「お主がジェイドか、ワシはバフォメットのミレーヌじゃ、お主の戦いはずっと見ておった。とても人間が戦っているとは思えんほどに強かった。・・・・お主、本当に人間か?」
「私にもわかりませんよ、私は記憶を無くしているんですから」
「ふっ、そうじゃったのう、・・・ワシはお主に興味が出てのう、本当は出るつもりは無かったんじゃが、その強さを研究してみたくなってな、もし殺してしまったときのためにすまないと謝っておこうかのぉ」
「そんな心配は要らないですよ、私があなたを殺せば済む話ですからね」
互いに顔を笑わせながらとんでもないことを口に出し合う。
「さぁそろそろ始めようかのぉ」
「ええ、始めましょう」
互いに大鎌を構える。
互いに膨大な殺気を放ち、それらがぶつかり合い緊張感を高めていくその緊張感が闘技場全体を包みだす。
観客もそれを感じある者は黙り、硬直、失神するなどの事態を引き起こしていた。
ヒュン
対峙していたはずの二人が突然消えたのだ。
ガッキーン!!
突如鋭く鈍い音が響いた。
ミレーヌの大鎌とジェイドの大鎌が相手の首を取ろうと攻撃しあったところでぶつかったのだ。
そして何事も無かったようにお互いが真逆の位置で表れる。
「まさかワシの一撃に反応できるとはのぉ、今までのやつらは大抵この一撃で終わるんじゃがな」
「私も驚きました。今まで殺してきたやつらとは決定的に何かが違う。強いんですね」
「スピードはワシと互角、ならばこれはどうかのぉ」
ミレーヌは何かをぶつぶつと唱え始めた。
「地獄の雷神よ、そなたの力、我に貸し与えたまえ、ヘルスパーク!!」
するとジェイドの上に突如黒い空間が出現し、紫色の雷がジェイドを襲う。
ゴロゴロ ドッカーン!!
「くっ!?、ぐわあああああ!!!!」
雷は見事にジェイドに当たった。辺りが雷が落ちた衝撃で土煙が出ている。
「ふっ、いくら素早いお主でも雷の早さには勝てなかったようじゃな」
「・・・ふっ、ふっふっふ、はっはっはっはっは!!!!」
土煙の中からジェイドの笑い声が聞こえだした。
「なっなんじゃと!?」
「思い出した、思い出したよ。私、いや、俺という存在を」
「思い出したじゃと?記憶が戻ったというのか?」
「ああ、あんたのおかげでな、俺はジェイド=フライス、あの世から使わされた死神だ」
「し、死神じゃと!?馬、馬鹿な、死神はあくまで空想上の生物じゃ。現実にいるはずが無い!」
「ところがいるんだよ、ここにな、俺たち死神はこの地上の生き物の魂を狩るのが仕事だ。さまよう魂は狩らなければ世界を崩壊させてしまうからな」
「・・・ならばお主はなぜ生きた人間を狩るのじゃ?」
「俺は生きた人間を狩るために育てられたエリートだからな。こういった世の中に不必要と判断された場所に赴いては人間狩りを行うのさ。まあその中には善良と呼ばれるやつもいるかもしれないが関係ねぇ、狩れと言われれば狩るまでの話さ」
「・・・なるほどのぉ。それでお主はなぜ記憶を失っていたのかのぉ」
「たぶん、俺の部下のせいだろう。俺の部下は俺のことを嫌っていやがったからな、記憶を消去する術でも使ったんだろうよ。今頃は俺は亡き者として扱われてるかもな」
「事情はわかった。それでお主はまだ戦う気なのかのぉ」
「当たり前だ!たとえ部下に裏切られても、俺はあの方に忠誠を誓った身だ。仕事は絶対にやり遂げる。このバトルクラブにいるやつらを全員ぶち殺すことが俺の仕事だ!!」
「ならばワシはお主を止めるために戦うかのぉ。全力で!」
再び互いに大鎌を構える。
「俺はあまり技は無いが一つだけとっておきのがある。それをお前に食らわせてやるぜ!!」
ジェイドは大鎌を両手で持ち、後方に構えた。
構えた大鎌に黒い光が輝き始めた。
「暗黒両断波!!!」(あんこくりょうだんは)
振るった大鎌から黒く幅広い斬撃が飛び出てきた。
その速度は速く、絶大な威力があると見受けられた。
(よけねば、しかしよければ・・・くっ!)
「大いなる守護の壁よ、その壁を用いて攻撃を阻止せよ、ガーディアンウォール!!」
ミレーヌの目の前に透明な魔力の壁ができた。
そしてジェイドの暗黒両断波がガーディアンウォールを襲う。
バチッ!!!!!!
凄まじい音が響く。
「ぐぬ!ぐううううぅぅぅ!!!!」
ミレーヌが苦悶の表情を見せる。このガーディアンウォールを用いてここまで押されたことはかつて記憶に無い、それほどの一撃なのだ。
「はあああああああぁぁぁぁ!!!!!!」
ドッカーン!!!!!!
魔力をフルに使い暗黒両断波を打ち消したミレーヌ。
「あんた、隙だらけだぜ」
背後からジェイドの声が聞こえた。
「あんたは今までの中で最高の獲物だ。楽に死なせてやるぜ!」
「ぐっ、しまったのじゃ!!!」
「あばよ!!」
ジェイドの大鎌が振り下ろされる。
ミレーヌは死を覚悟した。
しかし、振り下ろされた大鎌は途中で止められていた。
目の前にいる悪友によって。
「なっ!?お前!邪魔するな!!」
「悪いな死神とやら、貴様は我がクラブの禁を破る行為を行った。よって貴様を罰するために赴いたのだ」
「デ、デルフィニア?」
「すまないな、せっかくの勝負に水を差してしまって、しかし禁を破るものには罰を与えるのが我の仕事でもある、故に許せ」
「ふっ、そのおかげで助かったのじゃ」
「ぐっ、くそ!離せ!!」
「少し黙っていろ!!」
ヒュン ベゴン!! ドッガーン!!!
デルフィニアのパンチがジェイドをとらえ、そのまま壁にぶっ飛ばされた。
ぶっ飛ばされたジェイドは見事に気絶していた。
「お主やりすぎでは・・・」
「何を言うか?これぐらいでは我の気が済まぬ、さすがに殺す気は無いが屈服させねば気が済まぬのだ」
「はあーお主はミョーな性格をしておるからのぉ、殺し合いを見たいとか行っておるくせにルールを破る、つまり観客に手を出す行為を許さないとかどれだけ矛盾しておるんじゃ」
「それは我の習性みたいなものだ。財宝を集めるのが我の習性、故にその財宝を吐き出す観客に死なれては困るただそれだけだ。それと他人を巻き込ま無ければ勝てないような戦いは好かんのだ」
「・・・やっぱり、お主は変わり者じゃ」
「さてとあのジェイドとやらを暇つぶしに我の下僕にしてみるとするか、どうだミレーヌも一緒に来ないか?」
「やめておくのじゃ、お主の調教は過激だからの見ていると目に毒なのじゃ」
「ふふふ、そいつは残念だ」
そういうとデルフィニアは気絶しているジェイドをつかみ自慢の羽を羽ばたかせて空を飛び、自分の部屋へと帰っていった。
「これで何人目じゃったかのぉ、あやつに連れ去られたのは・・・ところで審判この勝負はどうなるのじゃ?」
「・・・は、はい、この勝負は観客を巻き添えにしようとした攻撃を放ったためジェイド様の失格です。なのでミレーヌ様の勝利ですね」
「ならばさっさと勝利宣言をしてやれ、観客が混乱しておるぞ」
ザワザワ・・・・・・
「は、はい!・・・オホン、皆様!!ただいまの勝負ですが、ジェイド様の失格行為が発覚しましたため、ミレーヌ様の勝利といたします!!」
や、や、やったーーーーーーーーー!!!!!!
観客は歓喜の歓声をあげた。
さっきまで、殺されるかもしれない緊張感を味わっていたためにこの勝利宣言は自分たちの命も助かったという事実が含まれているため、その歓声は決闘場を揺らすほどだった。
「すごい歓声なのじゃ・・・さてとワシも帰るとするかのぉ」
「あのミレーヌ様、賞金は!?」
「そんなもんはいらんのじゃ」
そういってミレーヌは闘技場を去っていった。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
ここはとある地下にある闘技場。
己のすべてをぶつけ合う場所。
一攫千金を狙える場所。
次なる挑戦者はいったい誰か。
TO BE CONTINUE
11/01/10 20:02更新 / ミズチェチェ
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