第五章 エリエールの日記 散策編その三 (街紹介、ほのぼの)
「たしかこっちであってたよね?う〜、一人で行動したことないから不安だよ〜」
マリンはフレイヤに言われたとおりに西工業地区にきて、地図と睨めっこをしながらキョロキョロしていた。
無理もない、今までマリンはカリンやコリンと一緒に行動をすることがあっても、一人で行動をするということはしたことがなかったのだ。
つまりこれがマリンにとって初めて自分で行動をする機会なのだ。
「え〜と今いるのが、ここだから・・・・・・どこからいこう・・・」
そして自分で考えて行動をするのもこれが初めてだったりする。
今まではカリンとコリンが中心となって動いていて、マリンはそれに合わせて動くという消極的な行動しかしてこなかった。
だから自分の意思を持つということがなかなかできず、自分で考えて行動をするのは超がつくほど苦手なのだ。
「と、とりあえずは・・・観光品工房街に、行ってみようかな・・・」
そしてマリンは地図と睨めっこをしながら観光品工房街に向かった。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
観光品工房街。
ここは街で売られる観光品を作る場所。
ここで作られる観光品は人気が高くすぐに売切れてしまうほどだ。
主に人気が高いのは次の三つだ。
ダラララララララララララララララララララ、バン!!
エリエール観光品人気の品ベストスリー!!!!
第三位 御守り
この御守りは御守りの本場ジパングからやってきた稲荷とその旦那さんが作っているもので、肌身離さずに持っていると効能があるという口コミが広がり人気の品物となっている。
効能は、商売繁盛、恋愛成就、健康安全、縁結び等など様々なものがあります。
特に恋愛成就や縁結びは人気が高く、予約を入れなければ買えないくらい売れる。(主に買いに来るのは女の人(魔物)ばかりだが)
第二位 ガラス細工
観光品で美術的なもので人気があるのはガラス細工。
人気の秘密はなんといってもその情熱的なデザイン。
このガラス細工を作っているのはイグニスと契約したガラス職人だ。
イグニスが放つ炎を使い旦那がガラスを加工していくその姿はまさに情熱的な姿と呼ぶにふさわしい。
この夫婦だからこそ出せる作品だと断言できる。
第一位 お菓子
堂々の第一位はフェアリー達が作るお菓子である。
観光品用のお菓子はもちろん市販のお菓子も作っているため知名度も高く、エリエールに来たらまず絶対にお土産用に買われるのは当たり前の観光品だ。
フェアリーたちの工房には約200人規模でフェアリーが働いているため通称妖精の工房と呼ばれている。
窓からのぞけばフェアリーたちがせっせと働いているのがよく見える。
ちなみにのぞきは禁止です。
「ふーん、この観光品工房街は、こういうところなんだ」
そういってどこから持ってきたのかパンフレットを眺めて、感想を漏らしていた。
あたりもだいぶ暗くなってきているが、それでも工房の灯はまだ消えておらずあっちこっちから作業音が聞こえる。
中には歌いながら作業をしているところもあるようだ。
「と、とりあえずここに何があるのかはわかったし、次の場所に行こうかな」
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
日用品工房街。
ここは市民が使う日用品を作る場所。
食器各種はもちろん、文房具に紙、イスやテーブルなどなど我々の生活には欠かせないものが日々ここで作られている。
良質なものはわざわざ他国から注文が来るほどでたとえば他国の王族御用達の良質な紙や羽ペンなども作っていたりする。
ダラララララララララララララララララララ、バン!!!
エリエール日用品職人ベストスリー!!!
第三位 たんす職人のアパッチ
たんす職人のアパッチ、たんす作りにかけては彼の右に出るものがいないというほどに優れたたんす職人である。
この道三十年のベテランであり、この日用品工房街ではかなりの古株だ。
彼は人望も厚く、義理人情を重んじる親分肌な人間である。
その姿はまさに職人の鏡と言われるほどに威風堂々としている。
第二位 ゼッテル職人のシャーロット
ゼッテル職人のシャーロットといえば世界中の王族、学者などのお偉いさん関係によく知られているほどのゼッテル職人である。
ゼッテルとは植物を紙に加工したものの名前。
ゼッテルの生産は技術力が必要で、一人前になるには三年はかかるといわれているが、彼女はたった一年で習得して自分の工房を持つまでになった。
しかし、一人で生産するにはあまりに注文が多すぎて、てんてこまいなため彼女は弟子を取って、少しでも生産力アップを目指している。
第一位 オールマイティな職人ミス・レベッカ
ミス・レベッカはドワーフであり、この日用品工房街で唯一の魔物である。
しかし、彼女はそんな孤独な環境にも負けずに明るい笑顔を撒き散らし日々精進している。
彼女の凄いところは一度手にした技術は絶対に忘れないことである。
それゆえ、彼女は器用に何でもこなす素晴らしい職人になった。
最初は皆に「魔物に人間様の商品が作れるのか」と、嫌な目で見られたことがあったが日々の努力に前向きな姿勢が評価されて、今ではすっかり馴染んでいる。
そして、職人志望の若者や魔物がよく弟子になりたいと懇願しに来る場面ももはや日常茶飯事であるが、彼女は決して弟子を取ろうとはせずに、いまだに一人で日用品作りに精を出している変わり者としても知られている。
「・・・いろんな職人さんがいるんだな〜」
またもマリンはパンフレットを片手に日用品工房街を散策していた。
「さすがに仕事を切り上げ始めたのかな?皆工房から出て行く」
マリンの言うとおりで工房の灯が一つまた一つと消えて、次々と仕事を終えた職人が帰宅の道についてゆく。
そんな中。
「おや?お譲ちゃん、こんな時間にこんなところでどうしたんだい?」
「あ、あ、いや、その・・・・」
「うん、なんだ?オジサンの顔になんかついてるかい?」
「いや、そういう、わけじゃ・・・」
「ああ、もしかして初対面の人間と話すのはあまり慣れてないんじゃないか?」
「は、はい」
「そうかそうか、そいつは悪かった。オジサンはアパッチって言うんだけどなここらじゃ名の知れたたんす職人なんだぜ」
「アパッチ・・・も、もしかして、こ、このパンフレットに書いてある人ですか?」
「うん?・・・おお確かにこいつは俺のことだな、なんでい俺は三位か」
「ご、ごめんなさい」
「おいおい、お譲ちゃんが誤ることじゃないだろうが」
「で、でもなんだか、悪い気がして」
「はっはっは、気にすることはねえさ、それよりも子供がこんな夜遅くをぶらつくもんじゃねえぞ」
「あ、あたし、これでも16、なんですけど」
「俺からしたら16も十分子供だ。それよりも何でこんな時間にこんなところうろついているんだい」
「じ、実は・・・」
マリンは説明した。
自分はギルドの依頼で散策をしているということを。
「なるほどね、あのギルドに冒険者がやってきたってわけか」
「は、はい」
「それならこれからちょくちょく依頼が出せるな、よし俺が工業地区全域に宣伝しておいてやるよ」
「ええ!いいんですか?」
「ああ、こんなに働き者なんだから信頼してもよさそうだからな、それに・・・」
「そ、それに?」
「マリンちゃんが可愛いからかな、だっはっはっはっはっは!!!!」
「あー、そうですか・・・はは、ははは・・・・はぁー」
マリンは初めてあきれてため息をついた。
「と、とりあえず、まだ仕事があるので、これで失礼します」
「おう!!がんばれよ!!だっはっはっはっはっは!!!!」
マリンは次の目的地、道具工房街に向かった。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
道具工房街。
ここは主に冒険者のための道具が作られる場所で、ポーションや中和剤などの回復薬に爆弾やマジックロッドといった攻撃アイテムなど様々な道具が作られている。
ダララララララララララララララララララ、バン!!!
エリエール冒険者に人気の道具ベストスリー
第三位 ポーション
ポーションは体内の治癒力を活性化させる薬で冒険者の必需品。
冒険者なら常に常備している道具の一つだ。
ポーションにはたくさんの種類がある、たとえば普通のポーションは治癒力を何倍かに高めるだけのものだが、ハイポーションと言われるものは治癒力を何十倍にもして回復を早めてくれる即効性のものもある。
そして味についてだが、やはりくそ不味いと誰も飲まないわけなので飲みやすいように味も改良してある。
第二位 マジックロッド
マジックロッドは使い捨ての道具で、何回か使うと杖にはめ込まれた魔法石が壊れてしまう欠点があるが、しかし魔法が使えない戦士にとっては非常に重宝されている品物だ。
このマジックロッドにもたくさんの種類がある。
たとえば炎の玉を飛ばすファイヤーロッドや傷を癒すホーリーロッドなどといったものがある。
第一位 テントセット
テントセットは冒険者が野宿をするときに使うもので、これがあるのとないとでは天と地との差があるといわれるほどに冒険者には重宝されている。
まずどういう仕組みかはわからないがテントについているボタンを押すだけで収縮したり大きくなったりする摩訶不思議なボタンがついている。
これで持ち運びがかなり便利になる。
そしてテントには外敵を寄せ付けない魔法が掛けられておりこれに入っていれば外敵に襲われる心配は皆無だ。
ちなみにこのテントセットが商品化してから山賊や魔物に襲われなくなったと好評判を得ている。
ちなみのちなみにこの商品はバフォメットのアーニー様のサバト商会で開発されたものである。
「アーニーさん、ギルドだけじゃなくてサバト商会もやっているんだ・・・さて次で最後だったかな。よし、がんばれあたし」
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
武器防具工房街。
ここは武器と防具を作る場所。
ここで作られる武器と防具は皆一級品といわれるものばかり。
エリエールに来たならばここで武器を新調することをお勧めしよう。
「へえーエリエールって本当に何でもそろっているんだ、えっとここのベストスリーは・・・・・・あれ、載ってない」
まことに申し訳ございませんただいま調査中なので、武器防具工房街の職人ベストスリーは次回のパンフレットに掲載予定です。
「そ、そんなー、つまりは自力で調べろと・・・はぁー・・・あれあそこだけ、まだ灯りがついてる」
落ち込んでとりあえず調べようとしたときに、一軒だけまだ灯りがついているのが見えた。
なんとなくマリンはその灯りが気になり、その工房に向かって走っていった。
カーン!! カーン!! カーン!!
工房の中からはなにか鉄を打つような音が聞こえてきた。
マリンはとりあえず話を伺おうと中に入った。
「ご、ごめんくださーい」
「・・・・・・だれ?・・・」
工房の中にいたのはサイクロプスだった。
マリンはあわてて返事をした。
「あ、あの、あ、あたし、マリンっていいます」
「・・・おきゃく?・・・」
「い、いやお客さんじゃないんですけど、ちょっと話が聞きたくて」
「・・・いま、しごとちゅう・・・しごとしながらでもいい?・・・」
「か、かまいません」
「・・・はなしって?・・・」
「い、いえ、もう他の工房の人たちは皆灯りを消してるのに、ここだけまだ灯りがついてたから、ちょっと気になっちゃいまして」
「・・・さっきいった・・・まだしごとちゅう・・・」
「そうですか・・・あ、あの見学しててもいいですか」
「・・・・・・すきにして・・・・・・」
「あ、ありがとうございます」
マリンはそのサイクロプスの仕事を見学することにした。
なぜ見学をしようと思ったのか自分でもわからなかったマリンだがなんとなく一緒にいたいと思ってしまったのだ。
しばらく見学をしていると突然サイクロプスが手を止めた。
見てみるとそこには立派な剣が出来上がっていた。
「うわー、立派な剣ですねー」
「・・・・・・ちがう・・・・・・」
「えっ?」
ブン! ガッキーン!!!!!
突然自分で作った剣をたたき折ったサイクロプス。
その様子に唖然とするマリン。
「な、なんで壊すんですか?せ、せっかく作ったのに」
「・・・・・・・こんなけんじゃ、だめ・・・・」
「えっ?」
「・・・こんなけんじゃ、わたしなっとくできない・・・」
マリンにはさっぱりわからなかった。何がいけないのか、とても立派な剣に見えたのにどこが駄目だったのか。
「・・・・・・こころがない・・・・・・」
「ふぇ?」
「・・・わたしのつくるぶき、ぜんぶこころがない・・・これじゃ、だめ・・・」
「心?」
「・・・ごめんね、つまらないものみせて・・・きょう、もうおわり・・・」
「お、終わりにするんですか?」
「・・・うん、やっぱりわたしむりだった・・・ぶき、こころこめるなんて・・・」
「そ、それって、あきらめるってことですか」
「・・・・・・」
サイクロプスは静かに頷いた。
「なんでですか・・・あきらめちゃだめですよ」
「・・・・・・」
「・・・あきらめたら、その剣を待っている人はどうするんですか」
「・・・・・・このけん、わたし、こうぼう、もつため、しれん・・・・・・だからいい、もうあきらめる・・・・・・」
「なんでですか!!あきらめちゃだめですよ!!この試練を乗り越えたら自分の工房を持つことができるんですよね!?だったらあきらめちゃ駄目じゃないですか!!たとえ駄目な剣しか作れないとしても最後までがんばろうよ・・・」
「・・・・・・」
サイクロプスは唖然としていた。
さっきまで物静かだった少女が突然怒り出して泣き出したからだ。
「うっ、ひっく、すんすん・・・」
目の前にハンカチが出てきた。
「・・・・・・なみだ、ふいて・・・・・・」
「あ、ありがとう、ございます」
「・・・・・・ありがとう、まりん、わたし、がんばる・・・」
単眼の少女は無表情だった表情を少しだけ笑わせてマリンにお礼を言った。
「・・・サイクロプスさん・・・」
「・・・あれしあ・・・」
「えっ?」
「・・・わたし、あれしあ・・・」
「あっ、はい。アレシアさん」
「・・・よびすてでいい・・・」
「えっ、じゃあ・・・アレシア・・・」
「・・・ありがとう・・・じゃあ、けんつくる・・・」
「あ、あたしも手伝っていいかな?」
「・・・うれしい・・・」
「じゃあいいんだね」
コクリ
「それじゃあ最後までいっしょに頑張ろう」
「・・・うん・・・」
その後あたしはアレシアの仕事を手伝っていたんだけど、気がついたらねむってしまっていたんだ。
でもアレシアは文句を言わなかった。
朝日で目覚めたあたしに「・・・おはよう・・・てつだい、ありがとう・・・」
って言ってくれたんだ。
あたしは何度も謝ったんだけど、その度にアレシアは気にしないでと言ってくれた。
そして。
「・・・まりん・・・これ、てつだい、おれい・・・」
「これは?」
「・・・わたし、つくった、たんけん、だいじにして・・・」
「ア、アレシア・・・ありがとう」
マリンとアレシアは互いに抱きしめあった。
「アレシアあたしね冒険者やってるの、だから困ったことがあったら、依頼してね絶対助けるから」
「・・・わかった・・・やくそく・・・」
「うんやくそく」
二人はゆびきりをした。
「じゃあ、あたしもう帰るね」
「・・・またね・・・」
「うんまたあおうね!!試練乗り越えられるといいね」
「・・・だいじょうぶ・・・」
そういって無表情のままVサインをしてきた。
「うん、それじゃあね!!」
こうしてマリンは初めての依頼を終えてギルドに戻った。
今回はマリンの初めての友達もできて、マリンにとって忘れられない一日となったのは言うまでもない。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
こんな感じで大丈夫かな?
日記って話すのと違って、自分を表現しやすいかもしれない。
言いたいことや書きたいことがスラスラ出てくるんだもん。
これくらい会話もスムーズに行けばいいのに、はぁー。
お姉ちゃんたちは勝手に書いたみたいだけど、あたしはフレイヤお姉ちゃんに許可を取ってから書いてるから怒られる心配はないんだよね。えへへー。
今日はフレイヤお姉ちゃんが全快したので依頼達成パーティをしようってレオンさんが言ったからその準備をしなくちゃいけないんだ。
だから今日はこれでお終い。
○月×日 ゴブリン三姉妹 三女 マリン
マリンはフレイヤに言われたとおりに西工業地区にきて、地図と睨めっこをしながらキョロキョロしていた。
無理もない、今までマリンはカリンやコリンと一緒に行動をすることがあっても、一人で行動をするということはしたことがなかったのだ。
つまりこれがマリンにとって初めて自分で行動をする機会なのだ。
「え〜と今いるのが、ここだから・・・・・・どこからいこう・・・」
そして自分で考えて行動をするのもこれが初めてだったりする。
今まではカリンとコリンが中心となって動いていて、マリンはそれに合わせて動くという消極的な行動しかしてこなかった。
だから自分の意思を持つということがなかなかできず、自分で考えて行動をするのは超がつくほど苦手なのだ。
「と、とりあえずは・・・観光品工房街に、行ってみようかな・・・」
そしてマリンは地図と睨めっこをしながら観光品工房街に向かった。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
観光品工房街。
ここは街で売られる観光品を作る場所。
ここで作られる観光品は人気が高くすぐに売切れてしまうほどだ。
主に人気が高いのは次の三つだ。
ダラララララララララララララララララララ、バン!!
エリエール観光品人気の品ベストスリー!!!!
第三位 御守り
この御守りは御守りの本場ジパングからやってきた稲荷とその旦那さんが作っているもので、肌身離さずに持っていると効能があるという口コミが広がり人気の品物となっている。
効能は、商売繁盛、恋愛成就、健康安全、縁結び等など様々なものがあります。
特に恋愛成就や縁結びは人気が高く、予約を入れなければ買えないくらい売れる。(主に買いに来るのは女の人(魔物)ばかりだが)
第二位 ガラス細工
観光品で美術的なもので人気があるのはガラス細工。
人気の秘密はなんといってもその情熱的なデザイン。
このガラス細工を作っているのはイグニスと契約したガラス職人だ。
イグニスが放つ炎を使い旦那がガラスを加工していくその姿はまさに情熱的な姿と呼ぶにふさわしい。
この夫婦だからこそ出せる作品だと断言できる。
第一位 お菓子
堂々の第一位はフェアリー達が作るお菓子である。
観光品用のお菓子はもちろん市販のお菓子も作っているため知名度も高く、エリエールに来たらまず絶対にお土産用に買われるのは当たり前の観光品だ。
フェアリーたちの工房には約200人規模でフェアリーが働いているため通称妖精の工房と呼ばれている。
窓からのぞけばフェアリーたちがせっせと働いているのがよく見える。
ちなみにのぞきは禁止です。
「ふーん、この観光品工房街は、こういうところなんだ」
そういってどこから持ってきたのかパンフレットを眺めて、感想を漏らしていた。
あたりもだいぶ暗くなってきているが、それでも工房の灯はまだ消えておらずあっちこっちから作業音が聞こえる。
中には歌いながら作業をしているところもあるようだ。
「と、とりあえずここに何があるのかはわかったし、次の場所に行こうかな」
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
日用品工房街。
ここは市民が使う日用品を作る場所。
食器各種はもちろん、文房具に紙、イスやテーブルなどなど我々の生活には欠かせないものが日々ここで作られている。
良質なものはわざわざ他国から注文が来るほどでたとえば他国の王族御用達の良質な紙や羽ペンなども作っていたりする。
ダラララララララララララララララララララ、バン!!!
エリエール日用品職人ベストスリー!!!
第三位 たんす職人のアパッチ
たんす職人のアパッチ、たんす作りにかけては彼の右に出るものがいないというほどに優れたたんす職人である。
この道三十年のベテランであり、この日用品工房街ではかなりの古株だ。
彼は人望も厚く、義理人情を重んじる親分肌な人間である。
その姿はまさに職人の鏡と言われるほどに威風堂々としている。
第二位 ゼッテル職人のシャーロット
ゼッテル職人のシャーロットといえば世界中の王族、学者などのお偉いさん関係によく知られているほどのゼッテル職人である。
ゼッテルとは植物を紙に加工したものの名前。
ゼッテルの生産は技術力が必要で、一人前になるには三年はかかるといわれているが、彼女はたった一年で習得して自分の工房を持つまでになった。
しかし、一人で生産するにはあまりに注文が多すぎて、てんてこまいなため彼女は弟子を取って、少しでも生産力アップを目指している。
第一位 オールマイティな職人ミス・レベッカ
ミス・レベッカはドワーフであり、この日用品工房街で唯一の魔物である。
しかし、彼女はそんな孤独な環境にも負けずに明るい笑顔を撒き散らし日々精進している。
彼女の凄いところは一度手にした技術は絶対に忘れないことである。
それゆえ、彼女は器用に何でもこなす素晴らしい職人になった。
最初は皆に「魔物に人間様の商品が作れるのか」と、嫌な目で見られたことがあったが日々の努力に前向きな姿勢が評価されて、今ではすっかり馴染んでいる。
そして、職人志望の若者や魔物がよく弟子になりたいと懇願しに来る場面ももはや日常茶飯事であるが、彼女は決して弟子を取ろうとはせずに、いまだに一人で日用品作りに精を出している変わり者としても知られている。
「・・・いろんな職人さんがいるんだな〜」
またもマリンはパンフレットを片手に日用品工房街を散策していた。
「さすがに仕事を切り上げ始めたのかな?皆工房から出て行く」
マリンの言うとおりで工房の灯が一つまた一つと消えて、次々と仕事を終えた職人が帰宅の道についてゆく。
そんな中。
「おや?お譲ちゃん、こんな時間にこんなところでどうしたんだい?」
「あ、あ、いや、その・・・・」
「うん、なんだ?オジサンの顔になんかついてるかい?」
「いや、そういう、わけじゃ・・・」
「ああ、もしかして初対面の人間と話すのはあまり慣れてないんじゃないか?」
「は、はい」
「そうかそうか、そいつは悪かった。オジサンはアパッチって言うんだけどなここらじゃ名の知れたたんす職人なんだぜ」
「アパッチ・・・も、もしかして、こ、このパンフレットに書いてある人ですか?」
「うん?・・・おお確かにこいつは俺のことだな、なんでい俺は三位か」
「ご、ごめんなさい」
「おいおい、お譲ちゃんが誤ることじゃないだろうが」
「で、でもなんだか、悪い気がして」
「はっはっは、気にすることはねえさ、それよりも子供がこんな夜遅くをぶらつくもんじゃねえぞ」
「あ、あたし、これでも16、なんですけど」
「俺からしたら16も十分子供だ。それよりも何でこんな時間にこんなところうろついているんだい」
「じ、実は・・・」
マリンは説明した。
自分はギルドの依頼で散策をしているということを。
「なるほどね、あのギルドに冒険者がやってきたってわけか」
「は、はい」
「それならこれからちょくちょく依頼が出せるな、よし俺が工業地区全域に宣伝しておいてやるよ」
「ええ!いいんですか?」
「ああ、こんなに働き者なんだから信頼してもよさそうだからな、それに・・・」
「そ、それに?」
「マリンちゃんが可愛いからかな、だっはっはっはっはっは!!!!」
「あー、そうですか・・・はは、ははは・・・・はぁー」
マリンは初めてあきれてため息をついた。
「と、とりあえず、まだ仕事があるので、これで失礼します」
「おう!!がんばれよ!!だっはっはっはっはっは!!!!」
マリンは次の目的地、道具工房街に向かった。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
道具工房街。
ここは主に冒険者のための道具が作られる場所で、ポーションや中和剤などの回復薬に爆弾やマジックロッドといった攻撃アイテムなど様々な道具が作られている。
ダララララララララララララララララララ、バン!!!
エリエール冒険者に人気の道具ベストスリー
第三位 ポーション
ポーションは体内の治癒力を活性化させる薬で冒険者の必需品。
冒険者なら常に常備している道具の一つだ。
ポーションにはたくさんの種類がある、たとえば普通のポーションは治癒力を何倍かに高めるだけのものだが、ハイポーションと言われるものは治癒力を何十倍にもして回復を早めてくれる即効性のものもある。
そして味についてだが、やはりくそ不味いと誰も飲まないわけなので飲みやすいように味も改良してある。
第二位 マジックロッド
マジックロッドは使い捨ての道具で、何回か使うと杖にはめ込まれた魔法石が壊れてしまう欠点があるが、しかし魔法が使えない戦士にとっては非常に重宝されている品物だ。
このマジックロッドにもたくさんの種類がある。
たとえば炎の玉を飛ばすファイヤーロッドや傷を癒すホーリーロッドなどといったものがある。
第一位 テントセット
テントセットは冒険者が野宿をするときに使うもので、これがあるのとないとでは天と地との差があるといわれるほどに冒険者には重宝されている。
まずどういう仕組みかはわからないがテントについているボタンを押すだけで収縮したり大きくなったりする摩訶不思議なボタンがついている。
これで持ち運びがかなり便利になる。
そしてテントには外敵を寄せ付けない魔法が掛けられておりこれに入っていれば外敵に襲われる心配は皆無だ。
ちなみにこのテントセットが商品化してから山賊や魔物に襲われなくなったと好評判を得ている。
ちなみのちなみにこの商品はバフォメットのアーニー様のサバト商会で開発されたものである。
「アーニーさん、ギルドだけじゃなくてサバト商会もやっているんだ・・・さて次で最後だったかな。よし、がんばれあたし」
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武器防具工房街。
ここは武器と防具を作る場所。
ここで作られる武器と防具は皆一級品といわれるものばかり。
エリエールに来たならばここで武器を新調することをお勧めしよう。
「へえーエリエールって本当に何でもそろっているんだ、えっとここのベストスリーは・・・・・・あれ、載ってない」
まことに申し訳ございませんただいま調査中なので、武器防具工房街の職人ベストスリーは次回のパンフレットに掲載予定です。
「そ、そんなー、つまりは自力で調べろと・・・はぁー・・・あれあそこだけ、まだ灯りがついてる」
落ち込んでとりあえず調べようとしたときに、一軒だけまだ灯りがついているのが見えた。
なんとなくマリンはその灯りが気になり、その工房に向かって走っていった。
カーン!! カーン!! カーン!!
工房の中からはなにか鉄を打つような音が聞こえてきた。
マリンはとりあえず話を伺おうと中に入った。
「ご、ごめんくださーい」
「・・・・・・だれ?・・・」
工房の中にいたのはサイクロプスだった。
マリンはあわてて返事をした。
「あ、あの、あ、あたし、マリンっていいます」
「・・・おきゃく?・・・」
「い、いやお客さんじゃないんですけど、ちょっと話が聞きたくて」
「・・・いま、しごとちゅう・・・しごとしながらでもいい?・・・」
「か、かまいません」
「・・・はなしって?・・・」
「い、いえ、もう他の工房の人たちは皆灯りを消してるのに、ここだけまだ灯りがついてたから、ちょっと気になっちゃいまして」
「・・・さっきいった・・・まだしごとちゅう・・・」
「そうですか・・・あ、あの見学しててもいいですか」
「・・・・・・すきにして・・・・・・」
「あ、ありがとうございます」
マリンはそのサイクロプスの仕事を見学することにした。
なぜ見学をしようと思ったのか自分でもわからなかったマリンだがなんとなく一緒にいたいと思ってしまったのだ。
しばらく見学をしていると突然サイクロプスが手を止めた。
見てみるとそこには立派な剣が出来上がっていた。
「うわー、立派な剣ですねー」
「・・・・・・ちがう・・・・・・」
「えっ?」
ブン! ガッキーン!!!!!
突然自分で作った剣をたたき折ったサイクロプス。
その様子に唖然とするマリン。
「な、なんで壊すんですか?せ、せっかく作ったのに」
「・・・・・・・こんなけんじゃ、だめ・・・・」
「えっ?」
「・・・こんなけんじゃ、わたしなっとくできない・・・」
マリンにはさっぱりわからなかった。何がいけないのか、とても立派な剣に見えたのにどこが駄目だったのか。
「・・・・・・こころがない・・・・・・」
「ふぇ?」
「・・・わたしのつくるぶき、ぜんぶこころがない・・・これじゃ、だめ・・・」
「心?」
「・・・ごめんね、つまらないものみせて・・・きょう、もうおわり・・・」
「お、終わりにするんですか?」
「・・・うん、やっぱりわたしむりだった・・・ぶき、こころこめるなんて・・・」
「そ、それって、あきらめるってことですか」
「・・・・・・」
サイクロプスは静かに頷いた。
「なんでですか・・・あきらめちゃだめですよ」
「・・・・・・」
「・・・あきらめたら、その剣を待っている人はどうするんですか」
「・・・・・・このけん、わたし、こうぼう、もつため、しれん・・・・・・だからいい、もうあきらめる・・・・・・」
「なんでですか!!あきらめちゃだめですよ!!この試練を乗り越えたら自分の工房を持つことができるんですよね!?だったらあきらめちゃ駄目じゃないですか!!たとえ駄目な剣しか作れないとしても最後までがんばろうよ・・・」
「・・・・・・」
サイクロプスは唖然としていた。
さっきまで物静かだった少女が突然怒り出して泣き出したからだ。
「うっ、ひっく、すんすん・・・」
目の前にハンカチが出てきた。
「・・・・・・なみだ、ふいて・・・・・・」
「あ、ありがとう、ございます」
「・・・・・・ありがとう、まりん、わたし、がんばる・・・」
単眼の少女は無表情だった表情を少しだけ笑わせてマリンにお礼を言った。
「・・・サイクロプスさん・・・」
「・・・あれしあ・・・」
「えっ?」
「・・・わたし、あれしあ・・・」
「あっ、はい。アレシアさん」
「・・・よびすてでいい・・・」
「えっ、じゃあ・・・アレシア・・・」
「・・・ありがとう・・・じゃあ、けんつくる・・・」
「あ、あたしも手伝っていいかな?」
「・・・うれしい・・・」
「じゃあいいんだね」
コクリ
「それじゃあ最後までいっしょに頑張ろう」
「・・・うん・・・」
その後あたしはアレシアの仕事を手伝っていたんだけど、気がついたらねむってしまっていたんだ。
でもアレシアは文句を言わなかった。
朝日で目覚めたあたしに「・・・おはよう・・・てつだい、ありがとう・・・」
って言ってくれたんだ。
あたしは何度も謝ったんだけど、その度にアレシアは気にしないでと言ってくれた。
そして。
「・・・まりん・・・これ、てつだい、おれい・・・」
「これは?」
「・・・わたし、つくった、たんけん、だいじにして・・・」
「ア、アレシア・・・ありがとう」
マリンとアレシアは互いに抱きしめあった。
「アレシアあたしね冒険者やってるの、だから困ったことがあったら、依頼してね絶対助けるから」
「・・・わかった・・・やくそく・・・」
「うんやくそく」
二人はゆびきりをした。
「じゃあ、あたしもう帰るね」
「・・・またね・・・」
「うんまたあおうね!!試練乗り越えられるといいね」
「・・・だいじょうぶ・・・」
そういって無表情のままVサインをしてきた。
「うん、それじゃあね!!」
こうしてマリンは初めての依頼を終えてギルドに戻った。
今回はマリンの初めての友達もできて、マリンにとって忘れられない一日となったのは言うまでもない。
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こんな感じで大丈夫かな?
日記って話すのと違って、自分を表現しやすいかもしれない。
言いたいことや書きたいことがスラスラ出てくるんだもん。
これくらい会話もスムーズに行けばいいのに、はぁー。
お姉ちゃんたちは勝手に書いたみたいだけど、あたしはフレイヤお姉ちゃんに許可を取ってから書いてるから怒られる心配はないんだよね。えへへー。
今日はフレイヤお姉ちゃんが全快したので依頼達成パーティをしようってレオンさんが言ったからその準備をしなくちゃいけないんだ。
だから今日はこれでお終い。
○月×日 ゴブリン三姉妹 三女 マリン
11/01/06 10:15更新 / ミズチェチェ
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