二人のマーメイド
「すごぉい……乳首も、オチ〇チンも、服の上からわかるくらいピンッって硬くなってるわ♪」
「そろそろ、休憩する? お姉さんたちに素直に言ってごらん?」
ゴンドラはまだ堂々と大通りを進んでいるにもかかわらず、桃色髪の人魚のお姉さん二人が、熱い吐息とともに体を優しくねっとりと擦る。
これまで数えきれないほど妖艶な接待を受けた少年はもう我慢の限界で…………顔を真っ赤にして俯き「休憩……したいです」とつぶやくほかなかった。
「うふふ、緊張しなくても大丈夫よ。痛いことは絶対にしないから、ね」
「お姉ちゃんたちがぁ……たっぷり癒してあげる♪」
この言葉を待っていた――――少年から同意の言葉を引き出した人魚二人は、もう逃がさないとばかりに彼の腕を自分たちの豊かな腕に挟み込むと、尾鰭を器用にあやつってゴンドラの向きを変え、そのまま一本の路地へと進んでいった。
(僕……この先どうなっちゃうんだろう?)
お姉さんの熱と吐息に挟まれる少年の鼓動は速さを増すばかり。
そして心の中は不安と期待が両方いっぺんに膨らんで、今にも破裂しそうであった。
もはや少年は、当初の目的をすっかり忘れているようだ。
それは遡ること数時間前の話―――
×××
少年フリードリヒ・ヒルデブラント――――フリッツの愛称で呼ばれる彼は、コートアルフから少し離れた地域にある連合国家「コモンウェルス」の商人の家の子供である。
もうすぐ14歳になるが、顔はまるで女の子のようにかわいらしく、栗色の長い髪を、後ろでしっぽのような三つ編みにしているので、余計に女の子のように見えるが、れっきとした男の子であり、いつかはかっこいい大人になりたいと願っていた。
ついこの前までは故郷の地方都市で、店で商いをする親の手伝いをしていたのだが、このところ故郷の情勢が不穏になってきたため、親は店を畳んでフリッツとともに船で海を渡った。
そして、繁栄の真っただ中にある水の都コートアルフで、商機をつかむべく、新しい店を出すことに決めたのだった。
当然フリッツも、新しい店を出す両親を全力で手伝いたいと考え、港に着いた時から気合を入れていたのだが…………
「ええっ!? 僕だけで遊んでくるの!?」
「フリッツ……前の店にいた頃は毎日店の手伝いと勉強ばかりで、ちっとも友達を作らなかっただろう? いい機会だから、まずは町で友達を作ってきたらどうだい」
「手伝ってくれるのは嬉しいけど、お店を出す場所を決めるためにあっちこっち歩かなきゃいけないからね。大丈夫よ、心配しなくても、ゆっくり観光してらっしゃい」
何とフリッツは、第一の島「アル・マール」についてすぐ、両親から町を一人で観光してくるように言われてしまう。
この歳になってもまだ両親にべったりのフリッツにとって、両親から別行動を言い渡されたのが大変ショックだった。彼は何度もゴネたが両親はどこ吹く風。押し切られるまま、しょんぼりしながら一人で当てもなく歩き始めた。
「ありゃ〜、なかなかスパルタじゃないですかお父様お母様」
アル・マールの不動産を案内する役の乙姫アンズは、強引に息子を一人旅に出したフリッツの両親にやや驚いていた。
「まあ、一人だけで行動させたのは初めてだから、ちょっと不安なんだけどね…………でもフリッツもそろそろ独り立ちしてもいい頃だ。支えてくれる人がいれば、すぐにでも僕たちを上回る立派な商人になれるはずだ」
「私たちが付きっ切りでは、あの子の甘えん坊癖は治りませんからね」
もちろん両親も若干心配ではあったが、アンズからはコートアルフのみならず、親魔物国家は(魔物娘からの逆レイプ案件を除いて)基本的に犯罪の心配はほとんどないとのことで、それこそ小さい子供が町を一人でうろついても、どこかで転びもしない限りは安全とのことだ。
それになにより……フリッツは昔から筋金入りの甘えん坊で、5歳の頃から毎日店を手伝って、計算や流通の勉強をしているのだが、それは店を切り盛りする両親のそばにずっといたいからという理由なのだから…………
「ま、フリッツ君には遠距離を交信できる巻貝を渡していますから。いざとなったら、すぐにどこにいるかわかりますよ。なので…………安心して新しい二人の愛の巣を探してくださいね♪」
こうして両親は、少し後ろ髪を引かれながら、アンズの案内の元、物件探しに出かけた。
一方、一人で街を歩き始めたフリッツは
「はぁ……もしかしてお父さんとお母さんは、僕が甘えすぎるから、あえて引き離したのかなぁ」
割とすぐに親の考えの核心に思い至ったようだ。
「でも、今日一日一人で過ごして無事戻れば、きっとお父さんもお母さんも、また僕を手伝わせてくれるよね!」
が、肝心の甘え癖は全く揺らいでいなかった。
「それにしても……」とつぶやきながら、フリッツはきょろきょろと辺りを見回す。
アル・マールの波止場沿いの大通りは、一目見るだけでも故郷とは比べ物にならないほど栄えているのが分かった。
その上、防犯のことを全く考えないあけっぴろげな雰囲気は、魔物のいなかった故郷では考えられない事だ。
「な、なんだか女の人ばかり…………しかもみんな、見るだけでドキドキする……。だ……大丈夫かな?」
故郷と違うと言えば、見渡す限りのきれいな女性、女性、女性!
しかも美しいだけでなく、足ひれがある人魚だったり、タコやイカの脚を持つ蠱惑的な魔物だったり、果ては手が翼になっているハーピー類など、故郷ではほとんど見る機会がなかった「魔物娘」が、そこらじゅうを闊歩しているのである。
彼への反応も様々で、目が合っただけでにっこりとほほ笑んで手を振ってくれる娘もいれば、妖しい目つきで舌をなめずりまわす、ちょっと危ない香りがするお姉さんまで、こちらも様々。
安全なのに、なぜかいつどこで食べられてしまうかわからない―――――フリッツの心は、次第に緊張感に塗りつぶされていった。
(うう……どうしよう。確か、町の観光案内があるんだっけ。とりあえず、観光ツアーを申し込んで、一日案内で時間をつぶそう!)
幸いフリッツは、両親からお小遣いとしてかなりの額のお金をあらかじめもらっている。
手持ちのお金があれば、昼食と夕飯を食べて、さらに高級ホテルに泊まっても、まだ半分以上残るほど。
ならば、少し高額なツアーを申し込んでも特に問題ないだろう。
フリッツは船着き場を眺め、ツアーを申し込めそうな場所を探し始めた。
すると――――彼の目は、すぐにある一点に吸い寄せられることになる。
「あれは…………」
フリッツが見たのは、黒に金の縁取りがされたゴンドラと、その上で楽しそうに談笑する二人のマーメイドの姿だった。
おそらく姉妹であろうか。一人は腰まで届く桃色の長髪に、リボンのようなひらひらのカチューシャを付けていて、もう一人は、同じく桃色の髪を、後ろで大きなボリュームにまとめたポニーテールをしている。
着ている服は青と白を基調にしたドレス風だが、裾などにフリルがあしらわれていて、しかも前部分が縦に大きく開いているせいで、片方だけでも顔ほどの大きさのある乳房の大部分と、股間の大事な部分を絶妙に隠す、レース付きのマイクロビキニが丸見えだった。
細いくびれの下は、真紅の鱗に覆われた魚のような尾鰭で、その細くしなやかな肢体もまた、彼女たちの色っぽさに拍車をかけていた。
目が離せない。
フリッツは、まるでメデューサに魅入られたかのように体が動かず、どうすればいいか全くわからなかった。
フリッツが彼女たちに見とれていると、二人も自分たちを見つめる熱い視線に気が付いたのか、同時にフリッツの方を見た。
そして…………揃って妖艶な笑みを浮かべると、片方ずつ手を伸ばし、誘うように揺らす。
(乗っていいって……ことなんだろうか?)
頭で考える間もなく、フリッツの足は自然に二人が乗るゴンドラへと近づいていった。
「そろそろ、休憩する? お姉さんたちに素直に言ってごらん?」
ゴンドラはまだ堂々と大通りを進んでいるにもかかわらず、桃色髪の人魚のお姉さん二人が、熱い吐息とともに体を優しくねっとりと擦る。
これまで数えきれないほど妖艶な接待を受けた少年はもう我慢の限界で…………顔を真っ赤にして俯き「休憩……したいです」とつぶやくほかなかった。
「うふふ、緊張しなくても大丈夫よ。痛いことは絶対にしないから、ね」
「お姉ちゃんたちがぁ……たっぷり癒してあげる♪」
この言葉を待っていた――――少年から同意の言葉を引き出した人魚二人は、もう逃がさないとばかりに彼の腕を自分たちの豊かな腕に挟み込むと、尾鰭を器用にあやつってゴンドラの向きを変え、そのまま一本の路地へと進んでいった。
(僕……この先どうなっちゃうんだろう?)
お姉さんの熱と吐息に挟まれる少年の鼓動は速さを増すばかり。
そして心の中は不安と期待が両方いっぺんに膨らんで、今にも破裂しそうであった。
もはや少年は、当初の目的をすっかり忘れているようだ。
それは遡ること数時間前の話―――
×××
少年フリードリヒ・ヒルデブラント――――フリッツの愛称で呼ばれる彼は、コートアルフから少し離れた地域にある連合国家「コモンウェルス」の商人の家の子供である。
もうすぐ14歳になるが、顔はまるで女の子のようにかわいらしく、栗色の長い髪を、後ろでしっぽのような三つ編みにしているので、余計に女の子のように見えるが、れっきとした男の子であり、いつかはかっこいい大人になりたいと願っていた。
ついこの前までは故郷の地方都市で、店で商いをする親の手伝いをしていたのだが、このところ故郷の情勢が不穏になってきたため、親は店を畳んでフリッツとともに船で海を渡った。
そして、繁栄の真っただ中にある水の都コートアルフで、商機をつかむべく、新しい店を出すことに決めたのだった。
当然フリッツも、新しい店を出す両親を全力で手伝いたいと考え、港に着いた時から気合を入れていたのだが…………
「ええっ!? 僕だけで遊んでくるの!?」
「フリッツ……前の店にいた頃は毎日店の手伝いと勉強ばかりで、ちっとも友達を作らなかっただろう? いい機会だから、まずは町で友達を作ってきたらどうだい」
「手伝ってくれるのは嬉しいけど、お店を出す場所を決めるためにあっちこっち歩かなきゃいけないからね。大丈夫よ、心配しなくても、ゆっくり観光してらっしゃい」
何とフリッツは、第一の島「アル・マール」についてすぐ、両親から町を一人で観光してくるように言われてしまう。
この歳になってもまだ両親にべったりのフリッツにとって、両親から別行動を言い渡されたのが大変ショックだった。彼は何度もゴネたが両親はどこ吹く風。押し切られるまま、しょんぼりしながら一人で当てもなく歩き始めた。
「ありゃ〜、なかなかスパルタじゃないですかお父様お母様」
アル・マールの不動産を案内する役の乙姫アンズは、強引に息子を一人旅に出したフリッツの両親にやや驚いていた。
「まあ、一人だけで行動させたのは初めてだから、ちょっと不安なんだけどね…………でもフリッツもそろそろ独り立ちしてもいい頃だ。支えてくれる人がいれば、すぐにでも僕たちを上回る立派な商人になれるはずだ」
「私たちが付きっ切りでは、あの子の甘えん坊癖は治りませんからね」
もちろん両親も若干心配ではあったが、アンズからはコートアルフのみならず、親魔物国家は(魔物娘からの逆レイプ案件を除いて)基本的に犯罪の心配はほとんどないとのことで、それこそ小さい子供が町を一人でうろついても、どこかで転びもしない限りは安全とのことだ。
それになにより……フリッツは昔から筋金入りの甘えん坊で、5歳の頃から毎日店を手伝って、計算や流通の勉強をしているのだが、それは店を切り盛りする両親のそばにずっといたいからという理由なのだから…………
「ま、フリッツ君には遠距離を交信できる巻貝を渡していますから。いざとなったら、すぐにどこにいるかわかりますよ。なので…………安心して新しい二人の愛の巣を探してくださいね♪」
こうして両親は、少し後ろ髪を引かれながら、アンズの案内の元、物件探しに出かけた。
一方、一人で街を歩き始めたフリッツは
「はぁ……もしかしてお父さんとお母さんは、僕が甘えすぎるから、あえて引き離したのかなぁ」
割とすぐに親の考えの核心に思い至ったようだ。
「でも、今日一日一人で過ごして無事戻れば、きっとお父さんもお母さんも、また僕を手伝わせてくれるよね!」
が、肝心の甘え癖は全く揺らいでいなかった。
「それにしても……」とつぶやきながら、フリッツはきょろきょろと辺りを見回す。
アル・マールの波止場沿いの大通りは、一目見るだけでも故郷とは比べ物にならないほど栄えているのが分かった。
その上、防犯のことを全く考えないあけっぴろげな雰囲気は、魔物のいなかった故郷では考えられない事だ。
「な、なんだか女の人ばかり…………しかもみんな、見るだけでドキドキする……。だ……大丈夫かな?」
故郷と違うと言えば、見渡す限りのきれいな女性、女性、女性!
しかも美しいだけでなく、足ひれがある人魚だったり、タコやイカの脚を持つ蠱惑的な魔物だったり、果ては手が翼になっているハーピー類など、故郷ではほとんど見る機会がなかった「魔物娘」が、そこらじゅうを闊歩しているのである。
彼への反応も様々で、目が合っただけでにっこりとほほ笑んで手を振ってくれる娘もいれば、妖しい目つきで舌をなめずりまわす、ちょっと危ない香りがするお姉さんまで、こちらも様々。
安全なのに、なぜかいつどこで食べられてしまうかわからない―――――フリッツの心は、次第に緊張感に塗りつぶされていった。
(うう……どうしよう。確か、町の観光案内があるんだっけ。とりあえず、観光ツアーを申し込んで、一日案内で時間をつぶそう!)
幸いフリッツは、両親からお小遣いとしてかなりの額のお金をあらかじめもらっている。
手持ちのお金があれば、昼食と夕飯を食べて、さらに高級ホテルに泊まっても、まだ半分以上残るほど。
ならば、少し高額なツアーを申し込んでも特に問題ないだろう。
フリッツは船着き場を眺め、ツアーを申し込めそうな場所を探し始めた。
すると――――彼の目は、すぐにある一点に吸い寄せられることになる。
「あれは…………」
フリッツが見たのは、黒に金の縁取りがされたゴンドラと、その上で楽しそうに談笑する二人のマーメイドの姿だった。
おそらく姉妹であろうか。一人は腰まで届く桃色の長髪に、リボンのようなひらひらのカチューシャを付けていて、もう一人は、同じく桃色の髪を、後ろで大きなボリュームにまとめたポニーテールをしている。
着ている服は青と白を基調にしたドレス風だが、裾などにフリルがあしらわれていて、しかも前部分が縦に大きく開いているせいで、片方だけでも顔ほどの大きさのある乳房の大部分と、股間の大事な部分を絶妙に隠す、レース付きのマイクロビキニが丸見えだった。
細いくびれの下は、真紅の鱗に覆われた魚のような尾鰭で、その細くしなやかな肢体もまた、彼女たちの色っぽさに拍車をかけていた。
目が離せない。
フリッツは、まるでメデューサに魅入られたかのように体が動かず、どうすればいいか全くわからなかった。
フリッツが彼女たちに見とれていると、二人も自分たちを見つめる熱い視線に気が付いたのか、同時にフリッツの方を見た。
そして…………揃って妖艶な笑みを浮かべると、片方ずつ手を伸ばし、誘うように揺らす。
(乗っていいって……ことなんだろうか?)
頭で考える間もなく、フリッツの足は自然に二人が乗るゴンドラへと近づいていった。
20/05/17 11:46更新 / ヘルミナ
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