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清潔ゴブリン~第二章〜絶望の荒野に降臨する闇をは払う光の聖剣に認められし伝説の光の勇者〜その者は――ゴブリン〜
 「ふふ……こんな……私……みたい……な……ひどい子……に……本当……良い……ゴブリン……なんて……いたのね……こんな……いい人……なら……友達……なれば……よかった……私は……もう……助から……ないわ……今……縄……切って……あげる……優しい……ゴブリン……さん……私の……勝手な……お願いを……聞いて……みんなを……助けて……」

 そういってリンは清潔なゴブリンさんをつないでいた綱を切ると静かに目を閉じました。
 清潔なゴブリンさんの心は熱くなり感情的になりました。
 この感情が何かは清潔なゴブリンさんにはわかりませんでしたが「みんなを助けて」というリンの言葉をしかと胸に刻み走り出しました。

 「ドウゾク――ガ!?」

 「コッチク――ガ!?」

 「ショウグンタタカ――ガ!?」

 道中矢を構えたゴブリンを目印に遭遇した全てのゴブリンの首を一撃で折りながら町の中央の広場に向かうと。
 広場には三百を超えるであろう大量のゴブリンが広場を囲み中央に集められた青い顔の村人たちの前で一人の金髪の青年が大きな背の高いゴブリンと戦ってました。
 そのゴブリンが同族のいう将軍だと理解した清潔なゴブリンさんは広場囲うゴブリンたちの大群を飛び越えるために大きく飛び上がりました。
 一方そのころ代々村を守ってきた聖剣を継承し村を守り続けた村の守り手であるリークの父マークは困惑していました。
 目の前の将軍といわれれるゴブリンの強さに人間では決し振り回すことのできない力持ちのドワーフですら難しい重量の巨大な斧を軽々振り回す怪力に一撃一撃が聖剣が折れるかと思うほどの凄まじい膂力。
 このゴブリンが振るう巨大な斧が手入れされて刃こぼれがないなら聖剣は無事でも体はすで両断されていたでしょう。
 仮にこのゴブリンを倒せたとして周りを囲む三百を超えるゴブリンを倒す力など残されているわけがありません。

 「オワリダ」

 ゴブリン将軍の振るう横薙ぎの斬撃に頼みの聖剣が天高く吹き飛ばされました。

 「オマエ コロシタラ ツギ タノヤツラ」

 ゴブリン将軍は醜悪に口角をゆがめます。

 「もう終わりだ」

 村人のだけかがそうつぶやきました。
 もう後悔など遅い誰しもそう確信しました。
 その時清潔なゴブリンさんが広場を囲う大量のゴブリンを飛び越え現れました。

 「でも」

 また誰かがつぶやきました。
 確かにこのゴブリンは自分たちを助けようとしてくれた。
 それなのに自分たちはそんな彼にひどい仕打ちをした。
 そんな自分たちを彼が助けてくれるはずもないのです。
 それにこの絶望的な状況をたった一匹のゴブリンが打破してくれるとこの場のたった一人を除いて考えもしませんでした。

 「ゴブタ!」

 ただ一人リーク少年を除いて。

 「リークト ナカマ イマタスケル!」

 「ナニモノ オマエ ナゼ コイツタスケル?」

 「タスケル リークトモタヂ ソノナカマ オレノナカマ!」

 「オカシナヤツ イマコロス!」

 ゴブリン将軍は悠々と清潔なゴブリンさんに歩み寄ります。
 たった一匹のゴブリンに絶対に負けるわけのないそう確信ているからです。
 すると――

 「!?」

 ゴブリン将軍に弾かれ天に高く舞っていた聖剣が清潔なゴブリンさんにまるで自分を使えというかのような位置につきき刺さりました。
 次にその聖剣は凄まじい黄金の光を放ちます。

 「ナンダ? コノ イマワシイ ヒカリハ!?」

 その光にゴブリン将軍は目を覆いました。

 「邪悪な魔物を討ち滅ぼす聖剣が反応している!? それにあの見たことのないほどの強い聖剣の輝き――まさか魔物であるゴブリンに反応して――今は信じるしかない! リークの友達のゴブリン君! その剣を取るんだ!」

 「マーク何を言っているんだ! 魔物が聖剣を握ったら消し炭になるなんてわかりきって――」

 「村長ゴブタなら大丈夫」

 そうリーク少年は村長に言いました。
 そして清潔なゴブリンさんは聖剣の柄を握りました。
 すると――

 『邪悪な卑しき肉体に善なる精神を宿す稀有なるものよ――
 我が新たな担い手として――
 我が主の愛する者たちを守る力を授けよう――』

 そう頭に声が響くと聖剣から放たれた凄まじい光は清潔なゴブリンさんに流れ込み彼自身も金色の光を放ちました――
 その光はまさに長き暗き夜の終わりの夜明けを告げる地平から登る黄金の太陽――
 邪悪なものを打ち払う一筋の光――

 「ソ……ソンナ! コケオドシッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッッィ!」

 その光に動揺したゴブリン将軍は渾身の一撃を清潔なゴブリンさんに上から放ちました。
 巻き起こる砂煙にゴブリン将軍はこう言いました。

 「コンナ コケオドシ ワタシノマエニ――ナニイ!?」
 
 ゴブリン将軍は驚きました。
 振り下ろされた巨大な大岩ですら一撃で叩き切る巨大な斧の一撃を聖剣すら使わず素手でしかも片手で受け止めていたのです。
 ゴブリン将軍の驚きもつかの間片手で受けていた斧を握力だけて粉々に粉砕するとゴブリン将軍は何かを言おうとしました。

 「ッマテ! オレノマケ! オマエノブカニナル! トモニヒトコロ――アレ!?」

 ゴブリン将軍の首は空を舞い驚き表情のまま空中で何が起きたか理解し表情は苦痛に歪みそのまま地面に転がりました。
 それに遅れるように首を失った体は月夜に照られて血しぶきを上げ力なく崩れ落ちました。
 それを見ていた周りのゴブリンたちは盛大に騒ぎ立ちました。

 「オマエツヨイ ショウグンマケタ オマエ アタラシイ ショウグン!」

 そう一匹のゴブリンが歩み寄りました。
 清潔なゴブリンさんを仲間に加えてさらなる勢力を築き上げられると思ったのでしょう。
 騒いでていたのはきっとそのためです。

 「オレ ナカマナラナイ! オレノナカマ コノスノヒト! コノスノヒト キズツケルヤツラ ユルサナイ!」

 「オマエノチカラ スゴイ ジョウグンコエテ オウ ナレル ソノチカラ ニクキ ユウシャコロセル オマエナカマナレバ ゼンセカイオレタチノモノ!」

 「オレ ナカマキズケル オマエタチ ユルサナイ!」

 「ドウホウ ヨリ ヤツラエセブ アタマオカシイ!」

 「オレ オマエタチミカタシナイ! オレミカタテスルノ コノスノヒト リークトモタヂ ソノナカマ オレノナカマ!」 

 「ミナ コイツ コロス! ドウゾクノテキ! イカシテオク ドウゾクコロス! ウラギリモノ!」

 その言葉に周りの大量のゴブリンたちは全てを飲み込む陸の雪崩のように清潔なゴブリンさんに襲い掛かりました――
 切ったゴブリンの数が百を超えても――
 体に受けた矢の数が二十を超えても――
 受けた傷が五十を超えても戦いは終わりません――
 いつしか聖剣を振う手の感覚がなくなり――
 受けた返り血の気持ち悪ささえわからなくなり――
 体の傷の痛みを感じなくなり――
 壮絶な戦いは朝まで続きました――
 朝日が昇っても清潔なゴブリンさんの高ぶった闘争心は収まらず目はらんらんと輝き――
 ただ目の前の敵が現れることを反射的に待ち構えます――
 そんな時声が聞こえました――

 「ゴ……ブタ……モ……゙イジ……ウブ……タ……ラ……」

 その声はまさしくリーク少年です。
 気づくと清潔なゴブリンさんは聖剣を片手に動くもの居ないゴブリンの屍の山と血の海の広場をにらみつけていたのです。

 「ゴブタ……もう終わったから大丈夫……だから……もうやめて……これ以上続けたらゴブタ死んじゃうよ……」

 その言葉で清潔なゴブリンさんはすべてが終わったと悟りました感覚のなくなった体なのに自分を抱きしめるリーク少年の体温だけがしはっきりとわかり自分が一番大事なものを守れた――
 そう心の底から安どして今まで生きた中で一番心地よい眠気が襲ってきて――
 清潔なゴブリンさんは静かに目を閉じました――
 これで死んでしまっても悔いはないと思えるほどの心地よ眠りに入りました――
 そして清潔なゴブリンさんは夢を見ました――
 リーク少年の成長した姿の隣にいる人間の姿の自分が小さな赤ちゃんを抱いている姿を――
 その姿を見て夢の中で清潔なゴブリンさんは涙を流しました――
 自分の姿とかけ離れけているのになぜか自分だとわかる女性と二人の間の子供――
 ゴブリンで女ですらない自分が――
 こんなことあるわけないのだから―

23/12/18 06:21更新 / 師失人
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■作者メッセージ
何故清潔なゴブリンが強い理由はゴブリンキングを超えるゴブリン最強種ゴブリンエンペラーだからです
この世界では魔王以外で世界を破滅させかけ魔王以外で一介の魔物でありながら魔王と伝えられる伝説が残る唯一の魔物
数と規模と殺して奪った武器によっては脅威度は魔王よりも上
ゴブリンエンペラー単体でも高レベル冒険者パーティ複数で討伐する強さに加え配下にゴブリンジェネラル
ゴブリンシャーマン
ゴブリンプリースト
ゴブリンキャスター
ゴブリンチャンピオン
軍隊の中核を担う強さに質のあるゴブリンがゴブリンエンペラーを守り囲う
そして高い繁殖力による無尽蔵に増える雑兵
その中にはまれに上位種が生まれ
圧倒的数の優位に混ざる質のゴブリン軍団
頭のいい個体ならゴブリンエンペラーは軍師としての力を持つ
規模によるが魔王を倒した勇者パーティですら軍の協力なくしては討伐は難しい
大抵の知恵ある高位の魔物は力に自負を持っているのでその力を自らふるうことを好む
より高位になるほど強さに誇りと自信を持ち
中には戦いに美学を持つ魔物もいるがゴブリンたちはそういう誇りも美学もないのでありとあらゆる卑劣な方法を平気で使い
圧倒的な数で押しつぶしそれを切り抜けた弱った強者を上位のゴブリンで叩く戦法を取るため軍団としての強さはゴブリンエンペラーの軍のほうが魔王軍より厄介といえる
ゴブリンエンペラーが生まれるのは数百年に一度あるかないかくらいだがそのゴブリンエンペラーが生まれたほとんどの時代において複数の国が消滅の危機もしくは消滅に陥るほどの被害を出した災厄の魔物
それに潜在能力なら最高位の神器に劣らない力を持つ聖剣の光の力が加わり作中最高値のその強さは伝説の魔王を討伐した勇者パーティを単騎で殲滅できる力を得ている
その強さは剣だけで大空を高速で駆ける天空の支配者空中にいるドラゴンを撃墜しミスリル並みの強度の鱗で守られた強靭な硬さを誇るドラゴンの体をたやすく両断する
この村に伝わる聖剣は過去に魔王を討伐するも苦楽を共にした仲間は魔王との激しい戦いですべて死に
魔王を倒したその時には国と故郷とが滅ぼされ全ての家族と故郷の友は死に失意のまま旅を続けていた悲しき世界を救った勇者が最後にたどり着き一人の村娘と愛をはぐくみ結ばれ子をなし聖剣を愛する家族と子孫と村を守るために残したもの
代々村を守り続けた聖剣は伝説の聖剣の一振りでマークとリークはその直系の子孫にあたる
村を守る聖剣は勇者により持たられたと二人の一族の家に言い伝えらているが自分たちが魔王を倒し世界を救った伝説の勇者の子孫であることは二人は知らない
名前で神器とばれぬように聖剣の名前さえ使えず子孫はただ聖剣とよんている
勇者は妻だけに真実を話し二人で話合過酷な体験をした勇者のようなつらい目に子孫があわないように子孫が再び現れるであろう魔王討伐に駆り出されないようにそのことを伝えないことにして勇者は村を守り続け村人として愛する妻とともに老いその生を終えた
この世界には複数の世界を救える神器が存在しているため一つくらいなくても世界は勇者により何度も救われてきた
何故そんなものが複数あるのかといえば単純に救う可能性を高めるために神々が複数与えたからそりゃ一本から数本の神器で世界が救われるほど世の中簡単じゃない
盗難封印収集隠す独占破壊などできるできないはともかく持ち手に選ばれない者がとる持ち手のいない神器を使用できなくする要因も数多い
全ての神器には意志が宿り持ち手を選び持ち手の資質に応じて力を授ける
神器の力は強大で全ての力を与えれば人なんて簡単に弾けとんでしまう
その安全弁の役割を持つため全ての神器には意思が宿る
作中の清潔なゴブリンはゴブリンエンペラーとして素材の強さに聖剣の強い光の力体を流れる魔物としての体に流れる邪悪な血肉に宿る正しき心が聖剣のとても高い適正を獲得し本来実現しえない奇跡の総合作用により歴代の聖剣勇者最強クラスの力を得ていた
あの時清潔なゴブリンは邪と聖の力をその身に宿す聖魔混同の世界唯一の勇者となったのだ
ちなみに歴代最高の聖剣の力を引き出したのは村に聖剣を残し魔王を倒した伝説の勇者
しかしそれは一時的なもので皮肉なことにその力が魔王との戦いで引き出せれば少なくとも仲間のすべてを失うことはなかったであろう
当然それはリークもマークも清潔なゴブリンさえも知らない
全てを知る聖剣に宿る意識は唯一の認めた主の命を守り沈黙を貫くだろう

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