清潔ゴブリン~第一の章~出会いと襲撃~
今からほんの少し昔の話。
あるところに当時臭い汚い醜いといわれ魔物の中で一番に嫌われた種族ゴブリンの中に一人だけ変わったゴブリンがいました。
当時のゴブリンは体や服を洗う体についた汚れをふき取るという習慣もなく汗や垢で体は汚れ用を足してもおしりをふくこともない服は原型がなくなり着れなくなるので一度も洗わず取り替えないためとても臭くさらに醜い見た目と他種族の女性を連れ去り犯すことで数を増やす習性から世界中の全ての人族から嫌われていました。
そんなゴブリンの中で彼だけは違いました。
彼は毎日水浴びをして体を清め香りのよい香草を体にすり込むことを日課としていました。
当然彼は最初からそうではありませんでした。
彼は生まれた時普通のゴブリンでしたが繁殖できるころになると彼は自分に違和感を覚え始めました。
同じ時に生まれた同族は捕まえた女性がどれだけ泣き叫び悲痛の声を上げようとも嬉々として犯していましたが彼にはどうやっても受け入れられませんでした。
彼女たちの暗い闇でも宿したような光のないよどんだ瞳を見るのがどうやってもいやで犯すことができず彼はついに巣から追放されました。
そのゴブリンは最初は悲しかったですが今ではよかったと思い一人森の奥で生活していました。
最初に巣から追い出された出会った人間は一言顔をゆがめ「臭い」と言い放ち剣を抜き何とか逃げ出し彼は自身が臭いと思われているのが嫌で毎日水浴びをして体を清め香りのよい香草を体に刷り込むことを日課としてました。
すると次第になれ彼も如何に自分が不潔であるかと知りいつしか水浴びの気持ちよさを知りました。
毎日獲物の皮で作った粗末な腰巻を洗い数日おきに新たに交換し自分の体臭については同族の凄まじい体臭の悪臭に囲まれ生まれたころから慣れ親しんだためよくわかりませんでしたが臭いと思われるのはなぜか嫌だったので自分のお気に入りの香りのよい草をすり込むことにした。
そんなある日でした。
「うわあああ!?」
そんな声が聞こえてきました。
どう聞いても人間の声です。
今までの経験から言えば剣を向けられるか逃げられるかの二択です。
一瞬ほおっておこうかと思った清潔なゴブリンさんですが、何故がその声のほうに走り出しました。
彼はずっと一人で寂しかったのかもしれません。
助けても感謝されず理解されなくても誰かとのつながりが欲しかったのでしょう。
そこには大きなイノシシの魔物グレイトボアに襲われている少年がいました。
「グモモモモモモモモモ!?」
清潔なゴブリンさんは素早くグレイトボアに駆け寄ると石と曲がった棒で作った粗末なやりで首の頸動脈ごとばっさり骨まで切断しグレイトボアを一撃で倒しました。
彼は巣を出てから気づいたのですが何故か彼は他のゴブリンよりもはるかに強く素早かったのです。
しかしそんなことは彼にはどうでもよかったのです。
どうせ感謝などされるわけがありませんからしかし予想外のことが起きました。
「ありがとうゴブリンさん」
清潔なゴブリンさんは困惑しました同族にも人間にも他種族にも笑顔なんて向けられた経験などありません。
かわいらしい顔立ちの少年は金髪を揺らし笑顔を向けてきます。
「モリキケン モウクルナ」
困惑しながら彼はそう言って巨大なグレイトボアを引きずつり仮の巣に帰ろうとしました。
「ゴブリンさん今度お礼しに来るね!」
その言葉にさらに清潔なゴブリンさんは驚きましたが冗談だろうと思いながら仮の巣に帰りました。
しかし次の日――
「ゴブリンさーんどこ?}
あの少年が昨日と同じ場所に現れたのです。
今までの経験から警戒しましたが心のどこかにあった寂しさに勝てず恐る恐る姿を現しました。
「ナゼキタ……オレゴブリン……オマエノテキ……オレクサイ……」
「敵じゃないよ他のゴブリンみたいに嫌な感じはしないし僕を助けてくれたじゃないか! それに他のゴブリンみたいに臭くないしむしろ死んじゃたお母さんみたいにいい匂いするよ! それより助けてもらったお礼はちゃんとしなさいってお父さんに言われているんだお礼のパンを持ってきたよ!」
「パン……?」
少年の差し出す見たことのない茶色い長いものに困惑する清潔なゴブリンさん――しかしその謎の茶色いものから放たれる香ばしい香りはやけに彼の食欲をそそり危ないと思いながら口に含んでしまいました。
「――!?」
一口口に入れた噛んだ時口の中に広がる芳醇な小麦の香り表面はやや硬くても中は柔らかくフカフカ噛め噛むほどここゆよい甘みと芳醇な香りが鼻に抜けますこんなもの食べたことありません。
「ウマイ!」
気づくと少年の差し出したパンを平らげ少年はそれをニコニコと眺めていました。
「美味しい? ゴブリンさんの名前は?」
「オレ ナマエナイ」
「じゃあ僕がつけてあげるゴブタなんてどう?」
「オレゴタ! ソレデイイ!」
初めてつけられた名前に清潔なゴブリンさんはとてもうれしくなりました。
少年の名前はリークといいこの先のクローク村に住んでいると聞きました。
「じぁねゴブタまた来るね!」
そういってリーク少年は去っていきました。
その晩清潔なゴブリンさんは心がうきうきしてなぜか眠れませんでしたか明日が楽しみで仕方なくなりました。
それからリーク少年は毎日のように清潔なゴブリンさんのところに遊びにきていろいろは話をしてくれました。
この世界を作った神様の話冒険者の英雄譚クローク村の話父と村人話簡単な料理の仕方料理を劇的においしくする調味料の存在。
どれも聞いたことのないお話で清潔なゴブリンさんは目を輝かせリーク少年の語る話を聞きました。
そのおかげて生活環境と食生活は大きく改善しただ焼くか生のままのの食事がリーク少年が凄く美味しいと絶賛するほどに料理も上手くなりました。
しかし清潔なゴブリンさんは悩みました。
これだけ多くの物をリーク少年からもらっていてもそれにふさわしいものは返せていません。
時折かった獲物の肉や魚をリーク少年に沢山あげていますそれをとても喜んでくれますがそれでは清潔なゴブリンさんの気が収まりません。
そして暫くして苦労の果てリーク少年に挙げられる最高のものを見つけました。
「リークコレヤル コレヤイテ コナニシテ カケルウマイ」
「この魚って……」
そうしてあげたものに流石のリーク少年も顔をゆがめます。
清潔なゴブリンさんが差し出したものはカチカチの魚の燻製。
それがただの魚ならよかったのですが差し出した魚はあまりのまずさにゴブリンすら食べないと有名なこの地方のとある池にしかいない魚で淡水の魚なのにとんでもなく塩辛くとても食べられたもののではいやな風味と香りをもつ魚です。
あまりまずさに自然界では鳥ですら食べず同じ池に住む魔物か魚しか食べません。
「ダイジョウブ ウマイ オレシンジル イウトウリニ ヤイテ ホホネイガイ コナニスル トテモウマイ」
「ゴブタがそういうならやってみる!」
そういってリーク少年はいつものように笑顔で清潔なゴブリンさんに別れを告げ帰っていきました。
次の日。
「ゴブタこれ凄い美味しい! お父さんも美味しいって大喜びだったよ! どうやって作ったの?」
「コレハ」
清潔なゴブリンさんは苦労の末このとても美味しくない魚がリーク少年に教えてくれた焚火でいぶす燻製にして数種類の香草を表面にたっぷりめり込み数日干し焼いて身と皮を粉にするととても美味しい調味料になると発見したのです。
のちにクローク村名産となるクローク旨魚塩の誕生の瞬間でした。
「ありがとうゴブタ皆喜ぶよ今度僕の友達を紹介するね」
「リークマタ」
その弾けんばかりの笑顔に清潔なゴブリンさんはとても満足しました。
やっとリーク少年のくれたもののの一部を返させたとほっとけ胸をなでおろしました。
しかしそれが危うく二人が別れなくてはいけないかもしれない事態につながるとは清潔なゴブリンさんもリーク少年も知る由もありませんでした。
暫くしてリーク少年は一人の黒髪の女の子をつれていつもの場所に現れました。
「ゴブタ紹介したい人をつけた来たよ!」
「リーク大丈夫なの? こんな森の奥に住んでいる友達って……」
「少し変わっているけどすごくいい子だよ! 僕の一番の友だちだもん!」
「まああんな美味しいもの教えてくれた子が悪い子なわれないわね。いつもリークに沢山くれる肉や魚のを分けてくれてお父さんもお母さんも喜んでいたし。村の大人たちとても喜んでいたもん。何もない村に名産ができたって」
「ゴブタ出てきてよ僕のやお隣の家に住むリンちゃんだよ」
「ヨクキタ」
「ゴブリン!? きゃー!? ゴブリンよ! 逃げるわよ! リーク!?」
「大丈夫だよ? ゴブタはいいゴブリンだよ?」
「いいゴブリンなんているわけないじゃない!? お母さんの妹もゴブリンに殺されたしそれをかばったおじさんだって!?」
そういうとリンという少女は一目散に逃げていきました。
「ゴブタごめん帰るよ……リンちゃんには僕が言っておくよほんとにごめんね……」
「イツモノコト キニスルナ……」
これが普通だと清潔なゴブリンさんも心のどこかではわかっていました。
しかし清潔なゴブリンさんにあっとたー仲良しのリーク少年の友達ならという淡い希望は簡単に崩れ去りました。
その時何故が清潔なゴブリンさんの胸が痛みました。
傷でも負ったのかと胸を確認しましたか傷はありません。
それが心の痛みであるとは今の彼にはわかりませんでした。
次の日の早朝朝日が昇り始めたばかりでまだ暗さの残る時間。
「ゴブタ逃げて!」
「ドウシタ?」
「村の大人たちがゴブタが何か企んでいるから殺すって言ってたんだ! もうすぐ来るよ! 早く逃げて僕が時間を稼ぐから!」
「ワカッタ……リークノ……タメ……オレサル……」
「ごめんね……ゴブタ……僕たちはずっと友達だよ……」
そうして清潔なゴブリンさんは慣れ親しんだ仮の巣から移動を決めました。
移動している最中何故が目頭が熱くなり頭にはリーク少年との思い出ばかり現れては消え何故か目から水があふれ前がよく見えません。
でも最後のリーク少年の別れの「僕たちはずっと友達だよ」言葉が嬉しくてその言葉があれば清潔なゴブリンさんはどこでも生きていけるそう思えました。
そしてあてもなくさ迷うと気づくと追い出された巣の近くに来ていました。
時刻はもうすぐ昼興味本位で追い出された巣を覗くと巣は大きな変貌を遂げていました。
同族の数は十倍以上に膨れ上がり如何にも強そうな背のでかい見慣れない大きなゴブリンが奥に骨でてきた椅子にどかっと座り周りをところどころ血の付いたぶかぶかな兜をつけたゴブリンがかこっています。
「オマエ モドタカ」
「ナニアッタ」
「タノムレデ ショウグンウマレタ オレタチクワワッタ コンヤ チカクノヒトノス オソウ オトコニクニシテオンナハラマセ ドウゾクフヤス ドウゾクフヤシテ ショウグンノグンニシテ クニツクル イマナラ ユルス オマエクワワル」
それを聞いて清潔なゴブリンさんは走り出しました今は昼急いで行って逃げれば何とかなるかもしれません。
リーク少年の言葉を頼りに清潔なゴブリンさんはクローク村の入り口にたどり着きました。
清潔なゴブリンさんは大きく息を吸い込みながら村の中に入り大声を張り上げました。
「コノス ドウゾク コンヤ オソウ ミナニゲル ドウゾク トテモタクサン イマニゲレバマニアウ オレ リークノトモタヂ トモタヂノナカマ オレノナカマ オレドウナテモイイ オレコロシテイイ シンジテ!」
そういって清潔なゴブリンさんは村の中心の広場で頭を地にこすりつけ懇願しました。
あまりのことにそれを目撃した村人でさえ何が起きたかよくわかりません。
次に村の娘たちの悲鳴が響きました。
「ゴブリンよ! ゴブリンが出た!」
「オレ ウソツイテナイ ミナニゲル!」
負けじと清潔なゴブリンさんも声を張り上げます。
「このゴブリンがリークをだましていたのよ!」
とリンが声を張り上げました。
その言葉に村人は殺気立ちます。
村の名物なるようなものがゴブリンからもたらされたと知れば買う人間はいません。
名物も何もなく困窮していた貧しい村を救うかもしれないものがゴブリンからもたらされたということでたたれてしまったのです。
それだけで悪意を持つ村人は少なくありません。
「タノム シンジテ コンヤ ドウゾク コクコオソウ トテモタクサン タクサンコロサレル ココニゲル イマナラマニアウ!」
「ゴブタのことを信じてあげて!」
「そう声を張り上げたのはリーク少年です。
「ゴブタは命がけできたくれたんだ! 僕の一番の友達を信じて!」
「ふざけるな! ゴブリンなんか信じられるか! 俺の妹はゴブリンにもてあそばれて殺されたんだそ!」
「俺のじいちゃんもだ!」
「俺の妻の故郷はゴブリンに滅ぼされたんだぞ!」
「私の姉さんもよ!」
「オネガイ シンジテ コンヤ ドウゾク ココオソ――」
頭を地にこすりつける清潔なゴブリンさんの意識は突如走った後頭部の衝撃により途切れました。
「このゴブリンどうする殺すか?」
「それより村を今夜ゴブリンが襲撃するとかいったが……」
「絶対嘘だろ伝説や作り話でも聞いたことないぞ……人を助けるゴブリンなんて……」
「じゃあ見世物小屋にでも売るか? でも村の守りの手の家のリークの父親が反対するか……あの人お人よしだからな……」
「せっかく村の名物になると思ったアレがまさかゴブリンが作ったものとはな……こんなゴブリンならありえるな……危なくて食えないから捨てたけどもったいねえ……」
「確かにあれは最高だったな……ゴブリンの事かくして売れはいいんじゃ……」
「ゴブリンが作って物だぞ? 信用できるわけねえ……変なことになったら村人全員さらし首だぞ」
「とりあえず村の男集総出で村の警護だな……コイツガほんとのこと言っていてもたかがゴブリンだろ? うちの守りて様には勝てないだろ。守り手のリークの父親は夕方には帰るし大丈夫だろうよ。あの人ならゴブリン百匹でも負けないって」
「どちらにせよこいつのことは明日になってからだ、見世物小屋に売るにしてもこいつを殺すにせよこいつが本当のことを言っていた時一人でも男手があったほうがいいだろ。それにしてもこいつ臭いところか特別な日に俺のかみさんがめかしこむときにしかつけない香水みたいなにいい匂いがするな……ゴブリンってこんな香りだっけ?」
清潔なゴブリンさんが気が付くと日が沈み夜になっていました。
「リーク アブナイ マモラナイト!」
しかし両手は頑丈な紐で柱に結ばれ流石の清潔なゴブリンさんでも刃物がないと紐が切れません。
「ドウニカシテ――」
「すると清潔なゴブリンさんが閉じ込められていた暗い小屋の入り口から月の光が差し込みました。
誰かが開けてくれたようです。
「ご……めんな……さい……あなた……は……本当の……こと……いって……いた……私たち……を助け……ようと……して……くれた……のに……」
「オマエ リン」
その姿はボロボロで背中には何本もの矢が刺さり血が滴ってました。
「大丈夫……私……以外は……無事……だから……あの……でかい……ゴブリン……は……言って……た……リーク……の父さん……殺して……から……皆に……手を出す……つもり……例外は……私……みたい……に……その……場……離れる……人たち……だけ……ほんと……リークが……来る……はず……だっけど……私が……止めたの……私……責任……取ら……ない……とらな……い……と……いけ……ない……から……」
「リン タスケル ナワトク!」
「ふふ……こんな……私……みたい……な……ひどい子……に……本当……良い……ゴブリン……なんて……いたのね……こんな……いい人……なら……友達……なれば……よかった……私は……もう……助から……ないわ……今……縄……切って……あげる……優しい……ゴブリン……さん……私の……勝手な……お願いを……聞いて……――」
あるところに当時臭い汚い醜いといわれ魔物の中で一番に嫌われた種族ゴブリンの中に一人だけ変わったゴブリンがいました。
当時のゴブリンは体や服を洗う体についた汚れをふき取るという習慣もなく汗や垢で体は汚れ用を足してもおしりをふくこともない服は原型がなくなり着れなくなるので一度も洗わず取り替えないためとても臭くさらに醜い見た目と他種族の女性を連れ去り犯すことで数を増やす習性から世界中の全ての人族から嫌われていました。
そんなゴブリンの中で彼だけは違いました。
彼は毎日水浴びをして体を清め香りのよい香草を体にすり込むことを日課としていました。
当然彼は最初からそうではありませんでした。
彼は生まれた時普通のゴブリンでしたが繁殖できるころになると彼は自分に違和感を覚え始めました。
同じ時に生まれた同族は捕まえた女性がどれだけ泣き叫び悲痛の声を上げようとも嬉々として犯していましたが彼にはどうやっても受け入れられませんでした。
彼女たちの暗い闇でも宿したような光のないよどんだ瞳を見るのがどうやってもいやで犯すことができず彼はついに巣から追放されました。
そのゴブリンは最初は悲しかったですが今ではよかったと思い一人森の奥で生活していました。
最初に巣から追い出された出会った人間は一言顔をゆがめ「臭い」と言い放ち剣を抜き何とか逃げ出し彼は自身が臭いと思われているのが嫌で毎日水浴びをして体を清め香りのよい香草を体に刷り込むことを日課としてました。
すると次第になれ彼も如何に自分が不潔であるかと知りいつしか水浴びの気持ちよさを知りました。
毎日獲物の皮で作った粗末な腰巻を洗い数日おきに新たに交換し自分の体臭については同族の凄まじい体臭の悪臭に囲まれ生まれたころから慣れ親しんだためよくわかりませんでしたが臭いと思われるのはなぜか嫌だったので自分のお気に入りの香りのよい草をすり込むことにした。
そんなある日でした。
「うわあああ!?」
そんな声が聞こえてきました。
どう聞いても人間の声です。
今までの経験から言えば剣を向けられるか逃げられるかの二択です。
一瞬ほおっておこうかと思った清潔なゴブリンさんですが、何故がその声のほうに走り出しました。
彼はずっと一人で寂しかったのかもしれません。
助けても感謝されず理解されなくても誰かとのつながりが欲しかったのでしょう。
そこには大きなイノシシの魔物グレイトボアに襲われている少年がいました。
「グモモモモモモモモモ!?」
清潔なゴブリンさんは素早くグレイトボアに駆け寄ると石と曲がった棒で作った粗末なやりで首の頸動脈ごとばっさり骨まで切断しグレイトボアを一撃で倒しました。
彼は巣を出てから気づいたのですが何故か彼は他のゴブリンよりもはるかに強く素早かったのです。
しかしそんなことは彼にはどうでもよかったのです。
どうせ感謝などされるわけがありませんからしかし予想外のことが起きました。
「ありがとうゴブリンさん」
清潔なゴブリンさんは困惑しました同族にも人間にも他種族にも笑顔なんて向けられた経験などありません。
かわいらしい顔立ちの少年は金髪を揺らし笑顔を向けてきます。
「モリキケン モウクルナ」
困惑しながら彼はそう言って巨大なグレイトボアを引きずつり仮の巣に帰ろうとしました。
「ゴブリンさん今度お礼しに来るね!」
その言葉にさらに清潔なゴブリンさんは驚きましたが冗談だろうと思いながら仮の巣に帰りました。
しかし次の日――
「ゴブリンさーんどこ?}
あの少年が昨日と同じ場所に現れたのです。
今までの経験から警戒しましたが心のどこかにあった寂しさに勝てず恐る恐る姿を現しました。
「ナゼキタ……オレゴブリン……オマエノテキ……オレクサイ……」
「敵じゃないよ他のゴブリンみたいに嫌な感じはしないし僕を助けてくれたじゃないか! それに他のゴブリンみたいに臭くないしむしろ死んじゃたお母さんみたいにいい匂いするよ! それより助けてもらったお礼はちゃんとしなさいってお父さんに言われているんだお礼のパンを持ってきたよ!」
「パン……?」
少年の差し出す見たことのない茶色い長いものに困惑する清潔なゴブリンさん――しかしその謎の茶色いものから放たれる香ばしい香りはやけに彼の食欲をそそり危ないと思いながら口に含んでしまいました。
「――!?」
一口口に入れた噛んだ時口の中に広がる芳醇な小麦の香り表面はやや硬くても中は柔らかくフカフカ噛め噛むほどここゆよい甘みと芳醇な香りが鼻に抜けますこんなもの食べたことありません。
「ウマイ!」
気づくと少年の差し出したパンを平らげ少年はそれをニコニコと眺めていました。
「美味しい? ゴブリンさんの名前は?」
「オレ ナマエナイ」
「じゃあ僕がつけてあげるゴブタなんてどう?」
「オレゴタ! ソレデイイ!」
初めてつけられた名前に清潔なゴブリンさんはとてもうれしくなりました。
少年の名前はリークといいこの先のクローク村に住んでいると聞きました。
「じぁねゴブタまた来るね!」
そういってリーク少年は去っていきました。
その晩清潔なゴブリンさんは心がうきうきしてなぜか眠れませんでしたか明日が楽しみで仕方なくなりました。
それからリーク少年は毎日のように清潔なゴブリンさんのところに遊びにきていろいろは話をしてくれました。
この世界を作った神様の話冒険者の英雄譚クローク村の話父と村人話簡単な料理の仕方料理を劇的においしくする調味料の存在。
どれも聞いたことのないお話で清潔なゴブリンさんは目を輝かせリーク少年の語る話を聞きました。
そのおかげて生活環境と食生活は大きく改善しただ焼くか生のままのの食事がリーク少年が凄く美味しいと絶賛するほどに料理も上手くなりました。
しかし清潔なゴブリンさんは悩みました。
これだけ多くの物をリーク少年からもらっていてもそれにふさわしいものは返せていません。
時折かった獲物の肉や魚をリーク少年に沢山あげていますそれをとても喜んでくれますがそれでは清潔なゴブリンさんの気が収まりません。
そして暫くして苦労の果てリーク少年に挙げられる最高のものを見つけました。
「リークコレヤル コレヤイテ コナニシテ カケルウマイ」
「この魚って……」
そうしてあげたものに流石のリーク少年も顔をゆがめます。
清潔なゴブリンさんが差し出したものはカチカチの魚の燻製。
それがただの魚ならよかったのですが差し出した魚はあまりのまずさにゴブリンすら食べないと有名なこの地方のとある池にしかいない魚で淡水の魚なのにとんでもなく塩辛くとても食べられたもののではいやな風味と香りをもつ魚です。
あまりまずさに自然界では鳥ですら食べず同じ池に住む魔物か魚しか食べません。
「ダイジョウブ ウマイ オレシンジル イウトウリニ ヤイテ ホホネイガイ コナニスル トテモウマイ」
「ゴブタがそういうならやってみる!」
そういってリーク少年はいつものように笑顔で清潔なゴブリンさんに別れを告げ帰っていきました。
次の日。
「ゴブタこれ凄い美味しい! お父さんも美味しいって大喜びだったよ! どうやって作ったの?」
「コレハ」
清潔なゴブリンさんは苦労の末このとても美味しくない魚がリーク少年に教えてくれた焚火でいぶす燻製にして数種類の香草を表面にたっぷりめり込み数日干し焼いて身と皮を粉にするととても美味しい調味料になると発見したのです。
のちにクローク村名産となるクローク旨魚塩の誕生の瞬間でした。
「ありがとうゴブタ皆喜ぶよ今度僕の友達を紹介するね」
「リークマタ」
その弾けんばかりの笑顔に清潔なゴブリンさんはとても満足しました。
やっとリーク少年のくれたもののの一部を返させたとほっとけ胸をなでおろしました。
しかしそれが危うく二人が別れなくてはいけないかもしれない事態につながるとは清潔なゴブリンさんもリーク少年も知る由もありませんでした。
暫くしてリーク少年は一人の黒髪の女の子をつれていつもの場所に現れました。
「ゴブタ紹介したい人をつけた来たよ!」
「リーク大丈夫なの? こんな森の奥に住んでいる友達って……」
「少し変わっているけどすごくいい子だよ! 僕の一番の友だちだもん!」
「まああんな美味しいもの教えてくれた子が悪い子なわれないわね。いつもリークに沢山くれる肉や魚のを分けてくれてお父さんもお母さんも喜んでいたし。村の大人たちとても喜んでいたもん。何もない村に名産ができたって」
「ゴブタ出てきてよ僕のやお隣の家に住むリンちゃんだよ」
「ヨクキタ」
「ゴブリン!? きゃー!? ゴブリンよ! 逃げるわよ! リーク!?」
「大丈夫だよ? ゴブタはいいゴブリンだよ?」
「いいゴブリンなんているわけないじゃない!? お母さんの妹もゴブリンに殺されたしそれをかばったおじさんだって!?」
そういうとリンという少女は一目散に逃げていきました。
「ゴブタごめん帰るよ……リンちゃんには僕が言っておくよほんとにごめんね……」
「イツモノコト キニスルナ……」
これが普通だと清潔なゴブリンさんも心のどこかではわかっていました。
しかし清潔なゴブリンさんにあっとたー仲良しのリーク少年の友達ならという淡い希望は簡単に崩れ去りました。
その時何故が清潔なゴブリンさんの胸が痛みました。
傷でも負ったのかと胸を確認しましたか傷はありません。
それが心の痛みであるとは今の彼にはわかりませんでした。
次の日の早朝朝日が昇り始めたばかりでまだ暗さの残る時間。
「ゴブタ逃げて!」
「ドウシタ?」
「村の大人たちがゴブタが何か企んでいるから殺すって言ってたんだ! もうすぐ来るよ! 早く逃げて僕が時間を稼ぐから!」
「ワカッタ……リークノ……タメ……オレサル……」
「ごめんね……ゴブタ……僕たちはずっと友達だよ……」
そうして清潔なゴブリンさんは慣れ親しんだ仮の巣から移動を決めました。
移動している最中何故が目頭が熱くなり頭にはリーク少年との思い出ばかり現れては消え何故か目から水があふれ前がよく見えません。
でも最後のリーク少年の別れの「僕たちはずっと友達だよ」言葉が嬉しくてその言葉があれば清潔なゴブリンさんはどこでも生きていけるそう思えました。
そしてあてもなくさ迷うと気づくと追い出された巣の近くに来ていました。
時刻はもうすぐ昼興味本位で追い出された巣を覗くと巣は大きな変貌を遂げていました。
同族の数は十倍以上に膨れ上がり如何にも強そうな背のでかい見慣れない大きなゴブリンが奥に骨でてきた椅子にどかっと座り周りをところどころ血の付いたぶかぶかな兜をつけたゴブリンがかこっています。
「オマエ モドタカ」
「ナニアッタ」
「タノムレデ ショウグンウマレタ オレタチクワワッタ コンヤ チカクノヒトノス オソウ オトコニクニシテオンナハラマセ ドウゾクフヤス ドウゾクフヤシテ ショウグンノグンニシテ クニツクル イマナラ ユルス オマエクワワル」
それを聞いて清潔なゴブリンさんは走り出しました今は昼急いで行って逃げれば何とかなるかもしれません。
リーク少年の言葉を頼りに清潔なゴブリンさんはクローク村の入り口にたどり着きました。
清潔なゴブリンさんは大きく息を吸い込みながら村の中に入り大声を張り上げました。
「コノス ドウゾク コンヤ オソウ ミナニゲル ドウゾク トテモタクサン イマニゲレバマニアウ オレ リークノトモタヂ トモタヂノナカマ オレノナカマ オレドウナテモイイ オレコロシテイイ シンジテ!」
そういって清潔なゴブリンさんは村の中心の広場で頭を地にこすりつけ懇願しました。
あまりのことにそれを目撃した村人でさえ何が起きたかよくわかりません。
次に村の娘たちの悲鳴が響きました。
「ゴブリンよ! ゴブリンが出た!」
「オレ ウソツイテナイ ミナニゲル!」
負けじと清潔なゴブリンさんも声を張り上げます。
「このゴブリンがリークをだましていたのよ!」
とリンが声を張り上げました。
その言葉に村人は殺気立ちます。
村の名物なるようなものがゴブリンからもたらされたと知れば買う人間はいません。
名物も何もなく困窮していた貧しい村を救うかもしれないものがゴブリンからもたらされたということでたたれてしまったのです。
それだけで悪意を持つ村人は少なくありません。
「タノム シンジテ コンヤ ドウゾク コクコオソウ トテモタクサン タクサンコロサレル ココニゲル イマナラマニアウ!」
「ゴブタのことを信じてあげて!」
「そう声を張り上げたのはリーク少年です。
「ゴブタは命がけできたくれたんだ! 僕の一番の友達を信じて!」
「ふざけるな! ゴブリンなんか信じられるか! 俺の妹はゴブリンにもてあそばれて殺されたんだそ!」
「俺のじいちゃんもだ!」
「俺の妻の故郷はゴブリンに滅ぼされたんだぞ!」
「私の姉さんもよ!」
「オネガイ シンジテ コンヤ ドウゾク ココオソ――」
頭を地にこすりつける清潔なゴブリンさんの意識は突如走った後頭部の衝撃により途切れました。
「このゴブリンどうする殺すか?」
「それより村を今夜ゴブリンが襲撃するとかいったが……」
「絶対嘘だろ伝説や作り話でも聞いたことないぞ……人を助けるゴブリンなんて……」
「じゃあ見世物小屋にでも売るか? でも村の守りの手の家のリークの父親が反対するか……あの人お人よしだからな……」
「せっかく村の名物になると思ったアレがまさかゴブリンが作ったものとはな……こんなゴブリンならありえるな……危なくて食えないから捨てたけどもったいねえ……」
「確かにあれは最高だったな……ゴブリンの事かくして売れはいいんじゃ……」
「ゴブリンが作って物だぞ? 信用できるわけねえ……変なことになったら村人全員さらし首だぞ」
「とりあえず村の男集総出で村の警護だな……コイツガほんとのこと言っていてもたかがゴブリンだろ? うちの守りて様には勝てないだろ。守り手のリークの父親は夕方には帰るし大丈夫だろうよ。あの人ならゴブリン百匹でも負けないって」
「どちらにせよこいつのことは明日になってからだ、見世物小屋に売るにしてもこいつを殺すにせよこいつが本当のことを言っていた時一人でも男手があったほうがいいだろ。それにしてもこいつ臭いところか特別な日に俺のかみさんがめかしこむときにしかつけない香水みたいなにいい匂いがするな……ゴブリンってこんな香りだっけ?」
清潔なゴブリンさんが気が付くと日が沈み夜になっていました。
「リーク アブナイ マモラナイト!」
しかし両手は頑丈な紐で柱に結ばれ流石の清潔なゴブリンさんでも刃物がないと紐が切れません。
「ドウニカシテ――」
「すると清潔なゴブリンさんが閉じ込められていた暗い小屋の入り口から月の光が差し込みました。
誰かが開けてくれたようです。
「ご……めんな……さい……あなた……は……本当の……こと……いって……いた……私たち……を助け……ようと……して……くれた……のに……」
「オマエ リン」
その姿はボロボロで背中には何本もの矢が刺さり血が滴ってました。
「大丈夫……私……以外は……無事……だから……あの……でかい……ゴブリン……は……言って……た……リーク……の父さん……殺して……から……皆に……手を出す……つもり……例外は……私……みたい……に……その……場……離れる……人たち……だけ……ほんと……リークが……来る……はず……だっけど……私が……止めたの……私……責任……取ら……ない……とらな……い……と……いけ……ない……から……」
「リン タスケル ナワトク!」
「ふふ……こんな……私……みたい……な……ひどい子……に……本当……良い……ゴブリン……なんて……いたのね……こんな……いい人……なら……友達……なれば……よかった……私は……もう……助から……ないわ……今……縄……切って……あげる……優しい……ゴブリン……さん……私の……勝手な……お願いを……聞いて……――」
23/12/17 16:44更新 / 師失人
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