〜壱〜 蜜河の河渡し
蜜河国には、河が多い。
元々、蜜河は『密河』という字を当てていたという。
それはつまり、河の密集した地という意味だ。
妖怪が増えるにつれて、いつしか蜜河と書かれるようになっていたようだが、元々豊かだった水源は変わる事は無い。
北の山地から南へと無数の大河が流れ、この地を豊かな農業地としてきた。
だが同時に、この地は東西の国を結ぶ街道の経由地でもあった。
その面でみると、街道を陸路でたどった場合、無数の河の流れに阻まれ事となる。
無論橋が一切ないわけではない。
しかし、小川ならともかく、この地に流れる川の中でも最も大きな小萩川や鱗川などは、上流のごく限られた場所に数本簡素な橋があるだけ。
その為、この地では渡し船が重要な交通手段となっていた。
同時に無数の河は、ただ交通の障害となっているだけではなかった。
領地に無数の川が流れていると言う事は、領地に海を経由しつながった無数の水路があるに等しい。
その為川水運も盛んであり、そういった面でも河船は重要な交通手段となっていた。
そしてここにも、深い妖怪との繋がりがあった。
渡し船や水運の船では、川の妖怪の河童が数多く働いているのだ。
水辺に多く棲む河童は、当然のことながら泳ぎが得意である。
人間よりもはるかに身体能力の高い河童達の泳力は、川の流れに逆らい船を上流まで進める事さえ可能なのである。
その為水運船は、下りは川の流れに任せ、上りは河童たちの力を借りることで運行されている。
渡し船も同様に、人が船を操るよりも速く船を押す河童達の力を借りていた。
ちなみに、河童達への報酬は一律でキュウリであり、人を雇うよりも安上がりだったという面も有るようだ。
そんな船主と河童達の関係にも、魔王の代替わり、そしてその魔力は大きく影響を及ぼしていた。
河童達も、淫魔化し女性体となったのである。
(……いや、こいつはどうしたもんかねぇ…)
この地で長く川水運で身を立ててきた船主、流衛門は頭を抱えていた。
いや、抱えようとして出来ずにいた。
それというのも…
「旦那様ぁ………好き……ギュッって、してください…」
「やぁっ…うちもぉ……」
無数の河童達に現在進行形で押し倒されているのだ。
流衛門は、大川船五隻を抱えるそれなりの船主だ。
むろんそれだけの船を動かすには、動力というべき河童達も相応の数が必要となる。
その全てが、流衛門が所持する最も大きいこの船に乗り込み、彼を囲んで甘い声を上げている。
(まぁ、話にゃぁ聞いていたが、俺の身にも降りかかるたぁね)
流衛門も、妖怪が美しく淫らな魔物へと性質を変えているという話は聞いていた。
そして、雇っている河童達も、この数日で皆淫魔へとなっていることは知っていた。
だが流衛門の聞いた話では、町に住む稲荷様や絡新婦といった妖怪たちは、性質を変えても自ら男を襲うという事は無かったはずだ。
(だがまぁ、実際にこうなった以上は、今更だなぁ…)
熱に浮かされた様に流衛門を呼び、濡れた体を絡みつかせてくる河童達。
河童達の様子がおかしいと、女房の知らせを受けて来てみたらこの有様だ。
どうも雇っていた河童達は、淫魔の性による『夫』となるべき相手を、流衛門と定めたらしい。
(…いつの間にそんなに惚れられたんだ?)
流衛門自身は疑問に思っているようだが、河童達にとってはそうではなった。
流衛門は元々河童達の待遇に気をかける船主であり、そのため元々から深い信頼を寄せられていたのだ。
それが、淫魔化により思慕へと一気に傾いたのだろう。
見れば流衛門と同様に河童達に慕われていた彼のの女房もまた、河童達と女同士で睦みあっている。
親しげに体を擦り付ける河童達の閨の技に、流衛門の女房が甘い声を上げる。
あのままだと稲荷の守り組紐を持たない彼の女房は、後四半時もせずに淫気に侵されて淫魔へと変わってしまうのではないだろうか?
だが、止めようにももともと人間よりも遥かに力が強い河童達に、話に聞く勇者でもない流衛門では逆らう事も出来ない。
ただ、半ば現実逃避気味に途方に暮れるより他なかった。
(あ〜、このまえ聞いた若殿様の御触れじゃぁ、子供3人産んだ夫婦は淫魔に堕ちても許されるんだったなぁ…)
ちなみに流衛門は女房との間に既に5児をもうけている。労務や税務を負う事は無い。
そして、多妻は上限が無かったはず。
(確か、夫を持った妖怪は、夫以外を襲わないんだったな……雇ってる河童は全部嫁にするしかないなぁ
でなけりゃ、今後男を船に乗れられないからなぁ…)
押し寄せる快楽の合間にそんな事を考えながら、流衛門は河童達のために、際限無く精を溢れさせていった…
同様な事象が蜜河各地の船着き場で起きたのだが、稲荷の守り組紐のおかげか淫魔化した事例は殆ど無かったという。
そのかわり、この後渡し船や川水運で働く河童達は、夫を持ってからでしか雇われなくなったとか。
元々、蜜河は『密河』という字を当てていたという。
それはつまり、河の密集した地という意味だ。
妖怪が増えるにつれて、いつしか蜜河と書かれるようになっていたようだが、元々豊かだった水源は変わる事は無い。
北の山地から南へと無数の大河が流れ、この地を豊かな農業地としてきた。
だが同時に、この地は東西の国を結ぶ街道の経由地でもあった。
その面でみると、街道を陸路でたどった場合、無数の河の流れに阻まれ事となる。
無論橋が一切ないわけではない。
しかし、小川ならともかく、この地に流れる川の中でも最も大きな小萩川や鱗川などは、上流のごく限られた場所に数本簡素な橋があるだけ。
その為、この地では渡し船が重要な交通手段となっていた。
同時に無数の河は、ただ交通の障害となっているだけではなかった。
領地に無数の川が流れていると言う事は、領地に海を経由しつながった無数の水路があるに等しい。
その為川水運も盛んであり、そういった面でも河船は重要な交通手段となっていた。
そしてここにも、深い妖怪との繋がりがあった。
渡し船や水運の船では、川の妖怪の河童が数多く働いているのだ。
水辺に多く棲む河童は、当然のことながら泳ぎが得意である。
人間よりもはるかに身体能力の高い河童達の泳力は、川の流れに逆らい船を上流まで進める事さえ可能なのである。
その為水運船は、下りは川の流れに任せ、上りは河童たちの力を借りることで運行されている。
渡し船も同様に、人が船を操るよりも速く船を押す河童達の力を借りていた。
ちなみに、河童達への報酬は一律でキュウリであり、人を雇うよりも安上がりだったという面も有るようだ。
そんな船主と河童達の関係にも、魔王の代替わり、そしてその魔力は大きく影響を及ぼしていた。
河童達も、淫魔化し女性体となったのである。
(……いや、こいつはどうしたもんかねぇ…)
この地で長く川水運で身を立ててきた船主、流衛門は頭を抱えていた。
いや、抱えようとして出来ずにいた。
それというのも…
「旦那様ぁ………好き……ギュッって、してください…」
「やぁっ…うちもぉ……」
無数の河童達に現在進行形で押し倒されているのだ。
流衛門は、大川船五隻を抱えるそれなりの船主だ。
むろんそれだけの船を動かすには、動力というべき河童達も相応の数が必要となる。
その全てが、流衛門が所持する最も大きいこの船に乗り込み、彼を囲んで甘い声を上げている。
(まぁ、話にゃぁ聞いていたが、俺の身にも降りかかるたぁね)
流衛門も、妖怪が美しく淫らな魔物へと性質を変えているという話は聞いていた。
そして、雇っている河童達も、この数日で皆淫魔へとなっていることは知っていた。
だが流衛門の聞いた話では、町に住む稲荷様や絡新婦といった妖怪たちは、性質を変えても自ら男を襲うという事は無かったはずだ。
(だがまぁ、実際にこうなった以上は、今更だなぁ…)
熱に浮かされた様に流衛門を呼び、濡れた体を絡みつかせてくる河童達。
河童達の様子がおかしいと、女房の知らせを受けて来てみたらこの有様だ。
どうも雇っていた河童達は、淫魔の性による『夫』となるべき相手を、流衛門と定めたらしい。
(…いつの間にそんなに惚れられたんだ?)
流衛門自身は疑問に思っているようだが、河童達にとってはそうではなった。
流衛門は元々河童達の待遇に気をかける船主であり、そのため元々から深い信頼を寄せられていたのだ。
それが、淫魔化により思慕へと一気に傾いたのだろう。
見れば流衛門と同様に河童達に慕われていた彼のの女房もまた、河童達と女同士で睦みあっている。
親しげに体を擦り付ける河童達の閨の技に、流衛門の女房が甘い声を上げる。
あのままだと稲荷の守り組紐を持たない彼の女房は、後四半時もせずに淫気に侵されて淫魔へと変わってしまうのではないだろうか?
だが、止めようにももともと人間よりも遥かに力が強い河童達に、話に聞く勇者でもない流衛門では逆らう事も出来ない。
ただ、半ば現実逃避気味に途方に暮れるより他なかった。
(あ〜、このまえ聞いた若殿様の御触れじゃぁ、子供3人産んだ夫婦は淫魔に堕ちても許されるんだったなぁ…)
ちなみに流衛門は女房との間に既に5児をもうけている。労務や税務を負う事は無い。
そして、多妻は上限が無かったはず。
(確か、夫を持った妖怪は、夫以外を襲わないんだったな……雇ってる河童は全部嫁にするしかないなぁ
でなけりゃ、今後男を船に乗れられないからなぁ…)
押し寄せる快楽の合間にそんな事を考えながら、流衛門は河童達のために、際限無く精を溢れさせていった…
同様な事象が蜜河各地の船着き場で起きたのだが、稲荷の守り組紐のおかげか淫魔化した事例は殆ど無かったという。
そのかわり、この後渡し船や川水運で働く河童達は、夫を持ってからでしか雇われなくなったとか。
11/08/26 09:04更新 / ミスターTYN
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