女教師、射精管理をする
花に水を与える。
水をなみなみと注いだバケツを振り回すようにして水をぶちまける。透明な液体が土に当たってはじけ、しみこんでいく。
本来、このような水の与え方はすべきではない。植物の根に不要なダメージを与えるからだ。
しかし、彼女が育てている花は皆丈夫で果てしなく手荒に扱っても全く問題ない。
それどころか多少ストレスを与えることでより強く美しく育つのだ。
「ふん?」
水でびしゃびしゃになった植物に浮かんだ白い斑点に気づく。70年ほど育ててきた経験からこのようなものは病気以外にないとわかった。
「珍しいねぇ……。治すのは面倒なのだけれど、手を打たなければ全滅してしまう……。さてさて。」
どうしたものか。特効薬は材料の性質上市販しておらず、自作するしかない。方法は確立されているうえに何度か作ったことはある。しかし……。
「若い男の精液……。それもしばらく禁欲生活をさせた男のか……。しまったねぇ、バイトの子はこの間やめちゃったし、どうしようかねぇ。」
彼女のもとでアルバイトをしていた少年がいたが、一身上の都合で退職してしまったのだ。何か問題のあることをしてしまっただろうかと悩んだが、街で見かけて得心した。
白蛇と手をつないで歩いている姿を見たからだ。大方、少年が気を遣って退職したのだろう。彼との間には何もないのだが、ラミアの嫉妬深さは尋常ではない。
自らの伴侶のためにほかの仕事を探す。なかなかできないことだ。ナイスガイである。
そこまで思い返して彼女は思い浮かんだ。
一人いるじゃないか。もう一つの仕事先に。
「さて、テストは全員もらったな。」
僕の周りで友達たちが数字に一喜一憂している。何のことはない、点数などただの数字であり、極論すればインクの染みなのだ。何も気にすることはない。
誰にも見られないように鞄の中に答案用紙をしまおうとすると、隣からキャンキャンとした高い声が聞こえてきた。パイロゥのツムギだ。
「42点んん!?ヤバくない?バカじゃんか!」
「語呂合わせならヤバいかもしれない。死につながるから。でもこれはただのインクの染みだから大丈夫。赤いのはインクだけ。多分君の彼氏もそう言う。そうだよね。」
後ろからふざけたトーンの声がした。ツムギの彼氏、ウミだ。
「つまり俺は彼氏じゃなかった……!?ナツキ、彼女いない同志で海に行こう。海のヒト達はおおらかで優しいしな!こんな紙切れじゃ人生は左右できないって教えてくれるさ!」
「ほらね。去年まで彼女いない同盟だった男たちの友情は固い。……ん?」
ツムギがウミの答案を奪い、僕に渡してくる。84点。
「友情はもろいな、ウミ。ツムギにエナジードレインされて死ね。」
「キャハハハハ!ありがと、ヒビキ!ウミ、今日は天国見せてあげる!」
ツムギはウミの顔に手を当てるとエナジードレインを行う。ウミはエナジーを吸い取られながら嬌声を上げる。その隙に僕はツムギの答案を奪い、点数を確認した。
98点。失点は誤字によるものだった。なぜ……。
「さ、静かにしたまえ。エナジードレインはするなとは言わないがバレないようにやるように。これから授業を始めるが最低点数だった42点は放課後、
すべての用事が終わった後に理科準備室に来るように。」
おやおや。
教室の掃除中、ヘルハウンドのホムラが声をかけてきた。ウルフ族は狂暴だと思っていたが、話してみると意外と気さくで親しみやすいので僕は結構好きだ。
「ナツキ、何かやったのか?ユーシェン先生に呼ばれるなんて。」
「ん……、記憶にないかな。逆ナンかも。いやそれはない。」
「42点だもんなぁ。あたしならイヤだな。」
このアマぁ……!
「あたしたちの感覚だと頭の悪い男はイヤだ。友達ならともかく、彼氏はなー。」
「なーんでー?養ってくんないから?」
「あはは、違う違う。あたしたちにとって人間の男なんて弱っちいんだ、頭良くないと生きてけないくらい。しかもバカな男に振り回されて群れが死んじゃう話はたくさんある。」
「ふうん。あ、掃き掃除終わったよ。」
「よし、ごみ捨てに行ってくれ、机は片付けとく。すぐ終わるだろうし、捨てたらユーシェン先生の所に行っていいぞ。」
「はーい、ママありがとー!」
「うん、お前があたしの子供だったら42点なんて情けない点数はとらせないな。」
そんなに悪いか……?赤点じゃないし……。先生に呼ばれたけど。
廊下に出ると隅に小柄な生徒が寝そべって勉強していた。雑巾で床掃除をしたばかりなので制服が濡れてしまっている。
名前は知らないがホムラとキスしているのを見たことがある。多分彼氏くんだろう。彼は頭が良いのだろうか?
「もう一人になったよ。ホムラさん待ちでしょ?」
声をかけるとわたわたとした様子で本を片付けた。背表紙はなんだか読めない文字で書いており、
ちらりと見えたノートはよくわからない図形と計算式らしきものが書かれていた。やはり頭がよさそうということしかわからない。我ながらバカな感想だ。
「あっ、先輩。教えてくれてありがとうございます!」
びし、と袖余りの手が敬礼をしてちょこちょことホムラのもとに走っていった。眼鏡と童顔が可愛らしい。
先輩、中等部か……ショタコンなのかな?まあ、見た目は犯罪的だが通報はされないんじゃなかろうか。
理科準備室は2階の最奥にある。日当たりは良いがあまり掃除されていないのか、表札に蜘蛛の巣がかかっている。
くすんだ色のドアをノックすると穏やかで優しげな声がドアの向こうから聞こえた。
「開いてるよ。入りたまえ。」
「失礼します。」
古びた引き戸は手入れされていないのか、がたがたと揺れながら開いた。視界の隅で垂れて来た蜘蛛が慌てたように床を這ってどこかへと消えていく。
入ってすぐに白澤のユーシェン先生がいた。先生がこちらを振り向いたとき、角から下げられた魔除けの鈴が揺れる。
りん。
涼やかな音が鳴った。
ユーシェン先生は煙草を灰皿に押し付けて消し、穏やかに微笑む。
「うん、よく来たねぇ。もうすこし遅れるんじゃあないかと思ったんだけど。」
「せんせーによばれたので早く来ました!」
「感心、感心。だからと言ってテストの点数には手心は加えないけれど。」
ちっ。
僕は近くにある椅子を引き寄せて先生の体面に座る。正面を見るとたっぷりとした乳房があるのでなんだか気恥ずかしく、口もとのあたりを見る。
肉厚で柔らかそうな唇が動いた。それ自体は人も魔物も行う動作だが、やけに扇情的に感じてしまう。
「さて、君は彼女やパートナーといった存在はいないね?」
はて?そんなことはみればわかるはずだけど。
先生の言ったとおり、僕にそういった相手はいない。何しろ、友人の魔物娘全員が誰かしらといい仲になっているのだ。
今までも何となくあぶれてしまって恵まれていない。進学したらそれなりに出会いもあると思っていたのに。僕は事実を答えた。
「いないです。もしかしたらいるかもですけど見たことはないですね。」
その言葉を聞き、先生の笑みはさらに深くなったような気がした。
「うん。実は君にしかできないことがあってね。手伝ってはくれないかな?」
「……?できることならなんでもやりますけど……。」
先生は立ち上がるとゆっくりと僕に近づき、白く細い指が僕の顎を包む。
「わ……。」
心臓が跳ね上がる。なにせ女性に触れられるのは慣れていない。直近で思い出せるのは春の体育祭でツムギと手をつないで走ったことだった。
種目は借り物競争。お題は彼氏の親友。
その時はこんな感情はなく、仲の良い友人と触れ合う喜びしかなかった。しかし、先生の手はその感触とは明らかに違う。
先生の瞳が眼鏡越しに笑う。
「嬉しいよ。実はだねぇ、ちょっとした用事で君の精液が欲しいんだ。」
精液。
サキュバスの主食であり、先生の主食ではないはずだけど……。
なぜかを問いただそうとするも先生の艶やかな唇とふくよかな乳房、ハリのある肌が目に入った瞬間に僕は問う言葉を失った。
「……わかり、ました……。」
「ふふふ、じゃあ目をつむってくれるかな……?」
先生が耳に顔を近づけてひそやかに話すと、吐息が耳にかかり鳥肌が立つ。息を吸うと甘い匂いが鼻に飛び込んでくる。
年上の女性の魅力をふんだんに味わい、僕の肉棒は痛いほどに張り詰めていた。
名残惜しい気持ちを残しながら瞼を閉じるとかちゃかちゃとベルトが外され、ズボンと一緒に下着が降ろされる。
硬くなった肉棒はズボンの中から初夏の涼しい空気の中に開放される。それは先生の目の前に僕の性器が晒されることであり、気持ちよさと同時に恥ずかしさに襲われた。
「ふ〜っ。」
先生の吐息が僕のペニスに吹きかけられ、優しい刺激に僕は腰を振ってしまう。
「あっ、やあっあっ。」
「っく、ふふ。息を吹きかけただけで気持ちいいのかな?」
「あっあっ、そんなこと、ないですっ。」
震える腰に何かが巻き付いてくると、柔らかくペニスを包んでしまう。暖かくぬめったそれは悩ましくペニスを刺激する。
「駄目、駄目、せんせい、だめですぅ……っ。」
かくかくと腰が震えるが、射精した時の放出感はない。それどころか下半身に熱いものがたまるばかりで、快感はあるが射精の満足感はない。
「ふふ、だいぶ早かったな。さ、目を開けたまえ。」
「え……?」
僕の腰には薄いナメクジのようなものが巻き付き、ペニスを覆っていた。
「こ、これ、なんです?ナメクジみたいな……。」
「貞操守護生命体のヤチガサキちゃんだ。知能は賢い犬くらいで私の命令には従い、ほかのヒトとも簡単な意思相通ができる。
ご飯はなんでも食べるが接触している人間男性の射精しそうな感覚を食べるのを一番好む。この時、人間男性は射精せずに寸止めされた感覚を味わう。」
「は、はあ……。」
「ヤチガサキちゃんは君の射精を止めることで美味しいご飯を食べることができ、たっぷり寸止めされた精液は私が必要としている。わかったかい?」
「それって、つまり……。」
「そう、君にはこれから強制射精禁止生活を送ってもらう。もちろん終わった後には満足するまでオモラシさせてあげようか。」
「や、やだぁ……。すぐイきたいですよぉ……。」
僕はヤチガサキちゃんと自分の体の境目に指を潜り込ませようとするが、ヤチガサキちゃんはぴったりと肌に吸い付いてはがすことはできない。
「せんせぇ、とって、とってぇぇ……。」
「安心したまえ。射精できないこと以外健康に影響はない。ヤチガサキちゃんに離れてもらうこと自体は私が命令すればいいのだが……。」
先生の顔がにんまりと笑う。
「先ほど言った通り、私は君の精液が欲しいのでねぇ。残念だが諦めてくれたまえ。それと言っては何だが、射精するまで毎日楽しませてあげようじゃないか。」
先生は僕の体をひょいと抱え上げ、近くのソファに対面座位の形で座る。視覚は大きく重量感のある乳肉、嗅覚は甘い石鹸の匂い、触覚は全身に伝わる女性の感触に支配されてしまった。
「まあ、君の精液が欲しいといったがただの精液じゃあない。5日ほど禁欲生活……俗に言うオナ禁をした後の精液が欲しいんだ。」
「それならそうと言ってくれれば……。ふぁぁぁ、きもちいい……。」
呼吸とともに揺れる柔らかそうな肉体に抗えず、僕は顔を胸にうずめてしまう。息を吸うと肺一杯に先生の匂いが充満し、暖かく優しい感触に充血したペニスが脈動する。
「そういって何とかなりそうならやっているさ。君はこのあたりでも珍しい、匂いのしない男子。つまりは童貞少年だからね。せっかく貯めたのに射精されるのはもったいない。そうだね?」
「はぅぅぅ……。駄目、また出ちゃいますぅ……。」
先生の豊満な肉体にしがみつき、射精を求めて腰を擦り付けてしまう。その痴態を先生はくすくすと笑い、僕の頭をなでる。その優しさを感じるしぐさに耐えられなくなってしまう。
「あっ、イく、イく……っ。せんせい、せんせい……っ。」
勝手に腰がへこへこと震えながら絶頂を味わおうとするが、射精感が訪れることはない。ヤチガサキちゃんが僕の感覚を自らの食事としているのだろう。
「あ——―—!!イかせて、イかせてぇぇぇ!!」
不完全燃焼の快感と、自分を包み込んでいる女性に性器を支配された屈辱感が沸き上がり、僕はくぐもった絶叫を上げながら先生の体に腰を擦り付ける。
かくかくと情けなく腰を動かす僕を眺め、先生はけらけらと笑った。
「ははは、健康で何より。ヤチガサキちゃんも喜んでいる。いままで合成フードだけだったからねぇ。これだけでも君を呼んだ価値があるというものだが……。」
先生の手が僕の髪の毛を掴み、ぐい、と上を向かせる。抗うこともできずに眼鏡のレンズ越しに先生と目が合う。黒い瞳が僕の痴態を観察していることを意識し、少しでも止めようとしてしまう。
それを知ってか知らずか、先生はゆるゆると足を動かして僕の股間に優しい刺激を送ってくる。
「ほしいのは精液なんだ。たっぷりと寸止めされて、熟成しきった君の精液なんだ。それをほかの魔物娘に取られてしまっては面白くない……。」
「あっあっあっ……。やめて、やめて下さい……。駄目です、駄目ですぅぅっ……。」
性器に与えられる刺激に耐えられず、僕は先生の体にしがみついてへこへこと腰を振る。どういうわけかヤチガサキちゃんの感触ではなく先生の衣服と体温をダイレクトにペニスで味わう。
何もなければ射精ができたはずなのに、ヤチガサキちゃんのおかげでただ痴態を曝しただけに終わってしまい、先生に憫笑されてしまった。
にやにやと笑う先生は僕の頭をなでながら話す。
「そこでだ。ほかの魔物のちょっかいを防ぐために君はわたしの物だと示す必要がある。それにはどうしたらいいと思う?」
「せんせっ、せんせぇ……。すき、好きです。だからイかせて、射精させてください……。」
「そう。ほかの魔物に言い寄られてもそう言えるように君の体に刻み込む必要があるわけだ。一番いいのはよからぬ考えを以て君に近づいた魔物が君の主人に自ら気づくことだがねぇ。」
「はぅぅぅ……。せんせい、せんせい、気持ちいいです……。だから、だからぁぁぁっ……っ。」
先生の柔らかな乳房に顔をうずめながらすべすべとした服の感触を男根で楽しむ。先走りが潤滑油の役割を果たしてびくびくと肉棒が震える。
やはり射精はしない。先生は呆れたように笑った。
「おやおや、私は何もしていないのだけれど……。もう4度目のオモラシかな?まぁ、ヤチガサキちゃんのおかげで射精はできないがねぇ。ふふ、君が気持ちよくなるたびに私の匂いが染みついて、熟成していくな?」
「うあああ……。イヤだ、イヤだぁ……。イかせて、イかせてください……。お願いします、お願いしますぅ……っ。」
「ふふ、これ以上は酷かな?さ、起きてズボンを穿きたまえ。」
先生はそう言いながら僕のズボンを上げ、ベルトを締めてくれた。限界まで張り詰めたペニスはズボンに収まったが、萎えることはなくテントを張ったままだった。
白く細長い指が硬くなったままの性器をからかうように撫でる。制服越しに先生の指先を感じ、腰が引けてしまう。
「まだ硬いままだねぇ。若いのは悪いことじゃあないけど、ほかの魔物に射精させられないように。」
「あ、ふぁぁ、わかりました、頑張って我慢しますぅぅ……。」
こうして僕は欲情を抑えながら帰路についたのだった―――。
はっ、はっ、がああああ!ひィ、ひああああ―――!!
開けられた窓からいつも通りに父親の嬌声が届く。ある程度僕が成長したからなのか、父さんと母さんは毎日のように性交をしている。
両親の仲が良いのは良いことだけれど、流石にうるさい。だからと言って窓を閉めると何となくむっとした感じがしてイヤだ。
そんなわけで僕は、天気が良い日は窓をいつも開けている。
蛍光灯の白い光の中で僕はパンツを脱ぎ、ヤチガサキちゃんを見る。薄い橙色の生物は性器を守るようにまとわりついている。
その生物は僕の視線を感じたのか、触角を揺らし、黒い点のような目をこちらに向ける。
「うーん、ヤチガサキちゃんかぁ。」
つぶやきながら指先でヤチガサキちゃんに生えた2対の触角の間を撫でる。一緒に風呂に入った際に粘液が落ちたのか、ぬめった感触はない。
力をこめれば柔らかく、ぐにぐにとした奇妙な感触が指に伝わった。催促するようにヤチガサキちゃんの触角が指に触れる。
「短い間だけどよろしく。すこし手加減してくれるとありがたいけど、してくれなさそうだなぁ。」
当然だ、とでも言いたげにヤチガサキちゃんの触手が反った。
僕はパンツを穿くと電気を消した。今日は宿題もなく、テストも近くない。先生にたくさんいじめられて疲れたし早めに寝よう。
ベッドに入ると即座に睡魔がやってきた。射精していなくてもこんなに疲れるのか……。僕はこれからも先生に耐えられるだろうか?
「さて、これはどういうことかな。」
僕は先生の前で全裸になり、正座をしていた。
優しさと胡散臭さが同居していた先生の雰囲気はどこへいったのか。無表情に僕を睨みつけている。
「ごめんなさい。」
僕は素直に謝罪の言葉を口にした。何に怒っているのかがわからないので取り合えず謝ったのだ。
先生は膝をつき、僕に目線を合わせる。瞳の奥には怒りの炎が燃えていた。
「謝罪の言葉が欲しいんじゃあない。どういうことか、説明が欲しいんだ。ヤチガサキちゃんはどうしてこうなっているのかな。」
「え……。」
その言葉を受けて僕は初めて自分のペニスを見た。小さく縮こまっているモノは外気に曝されており、ヤチガサキちゃんの姿はない。
視線を動かすと付近の床にヤチガサキちゃんは潰れてしまっており、ぴくぴくと触手が痙攣している。
「し、知らないです。僕がヤチガサキちゃんを外せないのは知ってるじゃないですか……!」
「しかしだ、現に君の体から離れてそこで潰れている。大方、君が何かやったのだろう?答えたくないのなら答えたくなるようにしてあげようか。」
「へ……。」
先生は僕を押し倒すと両手を押さえつける。この時に先生の体と密着し、素肌に衣服がしゅるしゅると擦れ、成熟した女性の柔らかさに襲われる。
「わ、ふぁぁ……。気持ちいい……。」
「変態め。押さえつけられただけで欲情するとはね。」
先生の指先が内腿をなぞり、ゆっくりと性器に近づいてくる。たったそれだけの動作なのに、海綿体に血流が集中して僕のペニスはむくむくと鎌首をもたげていく。
「あ―――、ふふ、あはははは!ふふ、ははははは!」
不意に脇を筆でなぞられるような感覚に襲われ、笑いだしてしまう。
「ふん、ヤチガサキちゃんを潰しておいて笑うのかい。ほら、窒息するまでしてあげよう。」
「あははは、ははは、はーっははは!やめ、ふふ、ひあああはははは!」
先生は僕に馬乗りになって脇を両手で、足の裏はふわふわの尻尾でくすぐってくる。
身をよじって指から逃れようとしても先生の重量感のある肉体から這い出ることができずびくびくと震えるだけだった。
「おや、虐待されているのに気持ちよくなってしまうとはね。情けない、恥ずかしいと思わないのかな?」
完全に勃起したペニスが先生のお尻に圧迫され、先走り汁が衣服を湿らせていた。嘲るように笑うと先生は腰をくねらせ、さらなる快感をペニスに与えてくる。
「あっ、駄目ッ、それ、気持ちいい……。」
ペニスをすりつぶすようにして先生は腰をグラインドさせ、激しい圧迫刺激に我慢ができなくなり―――。
「おっと、残念だったねぇ。」
あと2秒もあればたっぷりと射精できたはずなのに―――。
先生はすっと立ち上がり、心地よい重量感と激しい快楽は消えてしまう。
刺激を取り上げられたペニスは震える腰に合わせ、ぴょこぴょこと揺れた。
「な、なんでぇ……?」
「射精したいのかい?なら、なぜヤチガサキちゃんをひどい目に合わせたのか、しっかり話してもらおうか。」
「だ、だから知らないですって……、ははははは!あはっ、あははは!」
先生は再度僕に馬乗りになると脇をくすぐってくる。先生に見下ろされて支配される感覚に溺れてしまい、何も触れられていないはずのペニスが脈動する。
「あッあっあ……!だめだめだめ、でちゃう、でちゃうよぉ……!」
押さえつけている掌を握り返し、射精に備えて身体を固くすると―――。
「はっ?」
目を開けると朝日が部屋に射しこみ、雀が鳴いていた。
……夢?僕はおそるおそるパンツをずらすとヤチガサキちゃんは健在だった。差し込む朝日がまぶしいのか、触手を縮めて丸まるように隠れてしまう。
いいか悪いかはわからないけれど夢精もしていない。ヤチガサキちゃんのおかげだろう。ありがとうをこめて撫でると、触手が指にすり寄ってきてなんだか可愛く思えてしまった。
朝、いつもより早く登校して理科準備室へ向かい扉を開く。
すると先生が椅子に腰かけながら煙草を吸っていた。先生は顔を背けてふ、と煙を吐くと灰皿に煙草を押し付けてもみ消す。
「うん?早いねぇ、こちらから会いに行かなくてもいいのは楽だ。」
「おはようございます。質問いいですか?」
「私の好みの男かい?それとも禁欲生活のことかい?」
先生の好みの男も気になるけど。
「ヤチガサキちゃんです。その、何か気を付けた方がいいこととかありますか?よく考えると常時ペットと一緒にいるものじゃないですか。急に不安になってしまって。」
「優しいねぇ。それじゃソファに座ってくれないか。」
言われたとおりにソファに座ると、少しへたったスプリングがきしんだ音を立てた。表面は日焼けして劣化しており、色落ちしている。
「さて……。」
先生は僕に密着するように座ると、僕の肩に手をまわして抱き寄せてきた。石鹸と煙草の混ざった先生の匂いにどきりとして体を固くしてしまう。
「ふふ、そう緊張しなくても良い……。リラックスするには深呼吸するといい。ほら、すー、はー。すー……、はー……。」
言われたとおりに息を吸い込むと先生の匂いに包まれ、恍惚に浸ってしまう。一緒に上下する先生の胸がかすかに腕に当たり、先生の肉体と自らの痴態を思い出してしまう。
先生のたっぷりとした双丘に顔をうずめて太ももに股間を擦り付けた感触、夢の中で先生にくすぐられながら射精しかけたこと―――。
すでにペニスはズボンを押し上げて自己主張をしていた。隣から先生の押し殺したような笑い声が聞こえ、羞恥心に震えてしまう。
「っく、ふふふ。ほら、腰を上げてくれ。ズボンを下すから。」
先生は器用に片手でベルトを外して尻尾と片手で僕のパンツとズボンを下ろすと、パンツに引っ掛かったペニスがバネ仕掛けのように飛び出す。
その様を見た先生がくすくすと笑いながら、ふんわりとペニスを握った。ヤチガサキちゃんに包まれているはずなのに、先生の掌に握られている感触がペニスに伝わる。
「あっ、んん……。うああああ……。」
「ほら、喘ぐのも良いがしっかり見たまえ。ヤチガサキちゃんは撫でられるのも好きでねぇ。優しく撫でてあげると喜ぶ。」
そういいながら先生は小動物を慈しむような手つきで僕のペニスを撫でさする。
先生の手は僕のペニスをすっかり包み込んでしまっており、微妙な力加減で扱かれると指でできた凹凸が蕩けそうな感触を生み出していた。
「それと、ヤチガサキちゃんはかなり丈夫でねぇ。例えば……。」
先生の手の力が徐々に増していき、万力でつぶされそうなほどの力になるが痛みはない。
それどころか強力な圧迫刺激となり、たまらず僕は両手で先生にしがみついて腰を動かしてしまう。
「あっ、ふああああ……。せんせい、せんせい……。」
「こんな風に強く握ってもヤチガサキちゃんは問題ない。受けた刺激をペニスが受けても大丈夫なくらいに落としてペニスに与えてくれる。
人間が死ぬくらいの衝撃を受ければ、傷つくだろうけれどねぇ。事故には気を付けて生活したまえ。」
「だったら……。刺激をなくすようにしてください……。あっ、これ、だめぇ……。イけないのに、イけないのにぃぃ……。」
先生の衣服を強く握り、布に包まれた胸に顔をうずめるようにして射精に備えるも―――。
分かっていた通り射精はできず、ただ不発のもどかしさだけが下腹に残った。
「うぅぅぅ……。イヤだ、イヤだぁ……。出したいよぉ……。せんせえ、せんせえ……。あっ、やっ、ああああぁ……。」
先生は人差し指と親指で輪を作り、カリ首をこすりあげてきた。その刺激に情けなく喘いでしまう。
「ふふふ、ヤチガサキちゃんはここを撫でられるのが好きなのだよ。ほら、しっかり覚えたまえ。位置がずれるから腰は動かさないように」
先生は肉棒から手を離すと僕の手を取ってペニスにあてがう。
「ほら、このあたり。今は君のおちんちんのくびれのところだ。ここをわっかで撫でてあげる。」
「はうぅぅぅ……。気持ちいい、気持ちいいですぅ……。」
僕は先生に動かされるまま、自分のペニスのカリ首を二本の指で撫でる。
絶頂を抑え込まれたペニスはぴくぴくと震え、まとわりついているヤチガサキちゃんはどこか気持ちよさげに触手を揺らしていた。
僕はと言えば密着する先生の肉体、肺を満たす香りに酔いしれ、重ねられた先生の手の感触を味わっていた。
「こうしておちんちんを刺激していると、なんだか君の自慰を手伝っているみたいだねぇ。」
おちんちんと聞いた瞬間に僕のペニスがぴくりと震えた。
「おや。今、君のおちんちんが震えたねぇ。ふふふ、なんでかなぁ?」
「ああああ……。わからないです……。」
「ふむ……。わからないかぁ……。君はヤチガサキちゃんを撫でていたまえ。さて、この辺を撫でていた時だったかな?」
先生の滑らかな指が肉棒の根元を包み、甘やかすように圧迫しながら僕の指に触れるまで動き、また下がる。
この動作の繰り返しで僕はすっかり蕩けてしまい、ヤチガサキちゃんを撫でるのを放棄して先生にしがみついて甘えてしまう。
「はい。しこ、しこ、しこ……。おちんちん気持ちよさそうだねぇ。っふふ。」
「あああぁぁぁ……。気持ちいい、気持ちいい……。せんせえ、せんせえ、すき、好きですぅ……。」
「はは、おませさんだねぇ。ほら、ここが一番効くんだろう?」
先ほどと同じようにカリ首を二本の指が優しく包み、慈しむようにゆっくりと上下する。
「ふあぁぁぁ……。もっと、もっとぉ……。あぅっ、それ、だめぇっ……!」
ゆっくりと動いていた指のリングは素早く細かい動きに変わり、激しい摩擦刺激を与えてくる。
「ほら、ほら、ほぉら……。ふふふ、ずいぶん可愛く喘ぐねぇ。」
「だめだめだめぇ……っ!やめて、やめて……っ!」
先生の胸に顔をうずめながら快楽から逃げようと腰を引こうとするも、ふかふかとした毛におおわれた脚に押さえつけられてしまう。
「ほら、おちんちんびくびく我慢したらキスしてあげるからねえ。できるかなぁ?我慢。」
「ふ、ううぅぅぅ……っ!ぐうぅぅ……っ!」
僕は何とか下腹部に力をこめて絶頂を我慢しようとする。すると、先生は馬乗りになり、僕の頭部をぎゅっと抱き締めてきた。
「あっあ、ふあぁぁぁ……。おっぱい、気持ちいい……。」
「ふふ、もうオモラシしていいよ。気持ちいいと思うなあ、おちんちんからぴゅるる〜って射精するのはねぇ。」
「え……。」
僕は思わず先生の顔を見た。彼女はにっこりと優しく微笑み、肉厚な唇をキスの形にして誘惑する。
「あ、出ちゃう……。せんせ、せんせぇ……っ!」
僕が射精のために身体を固くすると、先生はぱっと僕から離れてしまった。体を包んでいた温もりと柔らかさがなくなり、途端に心細くなってしまう。
「えっえっえっ。やだ、やだっ。せんせい、せんせ……っ!」
びくびくとペニスが震える。射精は不発だった。
先生は意地悪そうな笑みを浮かべており、笑いながら再度僕を抱き締め、僕の頭を撫でてくれる。
「っく、ふふふ、オモラシできなくて残念だったねぇ。でももう行かないと遅刻になってしまうから。」
「え―――。」
僕が時計を見ると、もう行かないといけない時間だった。とても長い間先生にいじめられていた気がするのに、これしか時間が立っていないのか。
「また放課後に来たまえ。君に余計な魔物が寄り付かないようにしないといけないからねぇ。」
「またいじめられるんです?僕。」
先生は面白そうに笑った。
「おや、甘やかしているつもりなのだがね。」
「じゃあ今日はもっと甘やかしてください。ありがとうございました。」
僕はズボンを穿くと教室に向かった。
ユーシェンは部屋に一人たたずむ。
手持無沙汰になったらしく、机の上に置いてある煙草を手に取り、火をつけた。
この煙草は昂った精神を落ち着け、リラックスさせる効果がある。彼女はたっぷりと煙を吸い込むと肺に落とし、ふ、と吐き出した。
思い出すのはナツキの痴態。
精液確保のため、昨日から協力してもらっている少年だ。小柄で華奢な体つき、顔はまずくない。マゾヒストで甘え好き。ペニスは可愛らしいサイズ。
昨日から彼の喘ぎ声が忘れられないのだ。
「ふ。」
ユーシェンは薄く笑った。彼が言った、好きという言葉に心臓が跳ね上がる思いがしたのだ。
射精させてやらなかったからか、捨て台詞は拗ねたような可愛らしいもので、思い出すたびに頬が緩む。
禁欲は上手くいくように今日の放課後は甘えさせてやろう。
彼女は吸い切った煙草を灰皿に置き、新しい煙草に火をつけた。
昼休み。僕はツムギとウミの3人で机をくっつけ、食事をしている。
僕のお弁当は母親が作ったものだ。母さんは大百足だからか、僕のお弁当も肉が多くてうれしい。
ウミはお弁当どころか重箱に米と魚、野菜、肉、ポットに味噌汁と一人だけ定食屋を開き、ものすごい勢いで食べている。
パイロゥとか精を主食にする魔物と付き合うと大変なんだろうな、と思う。運動しなくてはいけないから。
ツムギは何も食べないで水を飲んでいる。ふつうの食事もとれるけど、ウミがいるのでその精を主食にしたいと言っていた。
ツムギが一心不乱に食事をするウミを愛しそうに眺めた後、こちらを向いて好色そうな笑みを浮かべた。
「なー、ナツキさあ、誰かとヤった?」
「ッ!?ごほ、げほっ!」
「エネルギィ!」
僕の口から飛んだ唐揚げは空中でウミがキャッチし、自分の口に運ぶ。器用だ。大きな重箱では足りないのだろうか?ツムギも手加減してあげたらいいのに。
「なんかさあ、昨日と匂いが違うんだよねー。昨日まで童貞男子です☆みたいなかわいい匂いだったのに。」
「え、僕そんな匂いしてたの?」
何となく気になって自分の匂いを嗅ぐがわからない。なにせ食事時なのだ。
カップ麺や仕出し弁当、菓子パン、我慢できずに彼氏を襲っているサキュバスなど、様々な食事の香りが混ざっている。
多少変なにおいがするが、これはこれでお腹が減る匂いだ。
「わからん。ご飯の匂いしかしない。ウミはどう?」
「はぐ、もぐ。もががが。ごく。ずずずず、んぐ。ふー。あぐ。むぐむぐ。」
ウミは口の中にものを詰め込みながらしゃべる。咀嚼と嚥下、会話を同時に行おうとしているが、単純に行儀が悪いだけだ。
しかも口内の様子が見えないように手で隠している。そこまでやるなら身振り手振りもあるだろうに、バカなのだろうか。
ツムギが頬杖をついて呆れたように言う。
「落ち着いて食べて飲み込んでから喋りなよ……。」
うん。話がそれていってるな。僕は一口サイズのとんかつを飲み込んで話す。
「ツムギが搾り取りすぎるからでしょ。手加減してあげな?」
「ナツキも相手に手加減してっていいな?」
「や、甘やかしてるって言ってたけど。……あっ?」
「もぐ、ずるずる!がばばば、がつがつ!」
「へぇ〜、やっぱ相手できたんだぁ〜!」
しまった。僕はバカか?そしてウミは口内の物を飲み込んで喋れ。
「ね、だれだれ?クラスの子じゃないよね。他校の子?それとも大人の魔物?」
「もぐもぐ!」
飲み込め。
「いや……。秘密にしてとは言われてないけど、言ったらまずい気がするから秘密。」
ツムギが目を細めた。
「言ったらまずいんだぁ……。年上でそれなりに社会的な地位がある魔物だよね。」
「はぐ、もぐもぐ!ずばばば、ごくごく!」
「うん。ちょっと集中するね。匂いがあるから知ってる魔物だったらわかるはず……。」
このバカの言ってることがわかるのか……。僕はウミと親友だと思っていたけど、自称親友なのかも……。
ツムギは僕に抱き着くようにして鼻をすんすんとさせる。ツムギもサキュバス種なのにここまで密着されてもドキドキしない。
前まではこんなに近づくと心臓がうるさいほどだったのに。
「なんか失礼な匂い、あたしのことバカにしてない?」
「言いがかりだよ……。」
「ふーん、前まではあたしに抱き着かれてちんちん固くしてドキドキしてたのに?」
バレてた!ウミの方を見ると頷きながら食事を詰め込んでいる。
「もぐ。んぐ。ふーふー、ずずず。」
動揺する僕を無視してツムギは匂いを嗅ぎ続ける。何となく気恥ずかしく、周りを見るとホムラと目があった。彼女の机の上には容器に入った生肉がおいてある。
ホムラは机の中からノートを取り出すと、さらさらと字を書いてこちらに見せてくる。
『彼氏の目前でそれはレベルが高い』
赤く染まった歯を剥き出しにして笑った。なかなかに怖い。
ツムギが僕の肩を叩き、耳元で囁く。
「これ、わからないって言った方がいいよね?イエスならあたしの左手を掴んで。」
僕は彼女の左手を掴んだ。
「わかった。言ってよくなったら教えてね。」
ツムギは僕からぱっと離れるとウミの耳を借りて何かを囁いた。
「もぐ、ごくん!」
ウミは一際力強く咀嚼し、飲み込んだ。
いや、飲み込んだんだから喋れよ。
はぁぁぁ〜〜〜。
重い足取りで僕は理科準備室へ向かう。
またいじめられるのだろうか?いや、朝になんか捨て台詞みたいなこと言っちゃったし、ぎすぎすしたら嫌だなぁ。
いや、もしかしたら滅茶苦茶に甘やかしてもらえるかもしれない。
緊張と期待で胸が膨らむ。僕は扉の前で深呼吸し、ノックをした。
「入りたまえ。」
「失礼します。」
がたがたと引き戸を開けると先生が煙草を吸っていた。今まで先生の匂いは甘い匂いだったが、辛みのある刺激的な匂いになっている。
「煙草変えたんですか?」
「ん、ああ。よく気づいたねぇ。」
先生が顔を背けて煙を吐く。角につけられた鈴が揺れ、風鈴のような夏の音が鳴った。
僕は先生の白い手に見とれてしまう。朝、この手が僕のペニスを撫で擦っていたことを思い出し、甘い感触と自らの痴態がよみがえる。
「君も吸ってみるかい?」
「え、じゃあ吸ってみます。」
「ふ、悪い子め。秘密だ、二人きりのな。」
煙草を受け取ろうとして手を差し出すが、ソファに座った先生は両手を広げるだけだった。
「さ、膝の上に座りたまえ。」
「え……。いや、それは……。」
「さ。」
催促するように先生は両手を揺らした。にやにやと笑っており、揶揄おうとしているのだろう。
ここで引くとなんだか負けたような気がするので、近くに鞄を置くと先生の膝上に座る。
すると先生は片手で抱きすくめてきた。背中には先生のぬくもりを感じ、ペニスに妖しく響く。
「よしよし。さ、煙草をくわえて息を吸ってみてくれ。」
煙草をくわえて口から大きく息を吸うと、じじ、と音を立てながら煙草の灰が広がる。
同時に大量の煙が肺に流れ込み、スパイスのような香りが広がる。僕はたまらずむせてしまった。
「っ!?ごほ、げっほ!」
「ふふ、ナツキには少し早かったねぇ?ま、吸わないほうがいい。」
先生はくすくす笑いながら自分の口に煙草を戻した。
「げほ、なんで先生は吸ってるんですか?」
「つまらない話だよ。昔、仲の良かった男が煙草好きでねぇ。」
男……。なんだか聞いてはいけないことだったような気がする。胸が締め付けられるような感覚を覚えながらその男について聞いた。
「な、仲の良かった男の人って、どんな人だったんです。」
「さてねぇ。女の過去を根掘り葉掘り聞くのは良くないが、それでも聞きたいかい?」
「いえ……。前の煙草は甘い匂いだったですけど、この煙草はスパイスの匂いがしますね。」
僕は強引に話題を変えた。この話は良くない。今でもその人と付き合いがあるのかとか、どんな人だったのかとかいろいろ聞きたいことはたくさんある。
でも僕と先生は恋人でも何でもないのだ。聞くのは良くないし、聞いたところでいいこともないだろう。
「ああ、匂いは気にするかい?」
「今日友達に匂いが違うって言われたんです。なんか女の匂いがするって。それで、とりあえず秘密にしてってお願いしたんですけど。」
「ああ、ツムギか。まあ、バレたところで私と一緒に小言を言われるくらいだろう。特に秘密にする必要はないが、知らせて回るものでもないねぇ。」
そういうと先生は煙草を灰皿に押し付け、火をもみ消した。
そういえば、昨日も今日の朝も煙草を消した後に始まったんだよな……。
僕は急に先生の体を意識してしまう。下腹に回った手や背中に密着する先生の肉体、後ろから感じる吐息。
血流が下腹部に集中するのがわかる。目線を下に向けると僕のズボンはしっかりとテントを張っており、頂点を先生の手が艶かしく撫でる。
「あっ、はぅぅぅ……。」
「さて、朝言われた通り、今日は君を甘やかそうじゃないか。」
いたずらっぽく笑い、先生は背後から僕をぎゅうっと抱き締める。頭の上に顎が乗っており、体中に先生を感じて何となく安心する。
そして安心と同じくらいに恥ずかしい。なんだか自分がぬいぐるみかペットになったような気がするからだ。
「やっ、せんせい、もっとなでてぇ……。」
僕は撫でられた快楽を忘れられずに先生の手を取り、ズボン越しに擦りつける。
「きもちいい、気持ちいいですぅ……。」
「やれやれ、今日は甘やかしてあげるだけだよ。」
先生は僕の体をくるりと回転させて向かい合わせにする。顔にかかる髪から沸き立つ甘い匂いが体にしみこむ。
「あ、先生の髪、きれい……。いいにおいする……。」
「うん。たくさん甘えると良い。まあ、男を甘やかした経験などないがねぇ。朝もたっぷり寸止めしたからね。ヤチガサキちゃんも満足しただろう。」
「はああぁぁぁ……。せんせい、せんせい……。」
すっかり蕩けてしまった僕は先生の下腹にゆるゆると股間を擦り付け、鼻孔を支配する匂いに酔いしれる。
下半身に熱いものがこみ上げ、僕は先生の体を一際強く抱きしめる。
「あっ、せんせい、せんせい……っ!」
「ちょっと、コラ……。」
先生の体を味わいながら腰をかくかくと擦り付けても射精はできず、ただ燃え切らない感覚がのこる。
しかし僕は構わずに先生に腰を擦り付ける。
「せんせい、せんせい、気持ちいいです……。せんせい……。」
「まったく……。発情した犬みたいだねぇ。今日は甘やかすだけのはずだったのに……。」
先生の手が僕の後頭部を撫でる。それが嬉しくて僕は先生の手に甘えてしまう。
「まだ2日目なのに調教しきってしまったな。こんなに悦んで……。」
白い手が僕の頬を撫でる。絹のような肌がするするとくすぐる感触は僕の脳をどろどろに溶かし、薔薇色に染め上げた。
「はぅぅぅ……。せんせぇ……。」
「ほら、私に体重を預けたまえ。後ろに倒れると危ないからねぇ。」
言われるがままに僕は体重を先生に預ける。両手を先生の体の後ろに回し、まるで抱き合うような体勢だ。
プチプチと先生が僕の制服のボタンを外し、シャツの中に手を入れてくる。素肌に先生の指先を感じながら今朝の夢を思い出してしまう。
「変態め。押さえつけられただけで欲情するとはね。」
「へ―――、せんせ、なんで……?」
先生の口からは今朝見た夢の台詞が飛び出した。目を丸くする僕を押し殺すように笑う声が聞こえた。
「ふふ、図鑑、教科書通りか。私たちは見たり触れたりしたものの情報を読み取れる。君に使う気はなかったが―――。」
先生の指が熱っぽく僕の脇腹をくすぐる。
「ちょっ、せんせい、ははははは!ふっ、くくくううぅぅぅ!」
「まあ、気が緩んでいたのだな。私は意外と君が気に入っているようだ。喜んでくれ。」
「あはははは!あはっ、はーっはははは!あははは、あはあは!ひひひ、せんせ、ちょっと、やめてぇぇ……!」
「おっと。この体勢は危ないな。密着できて好きなのだが。」
先生は体勢を崩した僕を尻尾で支えながらソファへ押し倒した。体にかかる、大人の女性の重みを感じてしまう。
僕を見下ろした先生は唇を舐めてにっこりと笑った。眼鏡の奥の瞳が嗜虐の炎を宿して細くなる。
その視線に射抜かれ、僕の肉棒は固さを増してしまった。先生はゆっくりと眼鏡を外し、ひじ掛けに置いた。
その時、たっぷりとした乳房が僕の顔に当たり、欲情を誘う。
「ふふ。君、私にこうしてほしかったんだろう?」
剥き出しになった僕の胸を先生の指が滑る。
「あっ、ううう……。」
ぞくぞくとした感触が胸から体中を駆け巡る。体を動かして悶えようにも体を先生に押さえつけられて動かせない。
僕は先生の体の下で情けなく震えるだけだった。
「可愛いねぇ……。ほら、押さえつけられているのに、君のおちんちんは固くなっているな……?」
先生が腰をグラインドさせると僕のペニスが甘く圧迫され、蕩けた腰から漏れ出そうになってしまう。
「はぅぅ……。せんせい、それ、すきぃ……。」
「ははは、よっぽど今朝の夢が良かったんだねぇ。ほら、これも好きだろう……。」
ふわふわとした尻尾が僕の顔をくすぐり、しっとり柔らかく滑らかな感触に酔いしれる。
「さて、夢の中では足だったが―――。」
先生は僕を組み伏せたまま器用にズボンだけを下した。顔をくすぐっていた尻尾は離れ、僕の内腿のあたりをなぞる。
「あっ、ああぁぁぁ……。」
たったそれだけの刺激で僕の腰は期待に震え、先生の下での射精を心待ちにしてしまう。
下で悶える僕の姿を見て先生はくすくすと笑い、僕の耳に顔を近づけた。優しい声がささやき、吐息とともに脳を犯していく。
「おちんちん直接触ってあげてないのに気持ちいいねぇ。私の下でオモラシしたいよぉーってぴくぴくしてるよ。ほら、こうしてあげると……。」
先生は腰を小さくひねって微弱な刺激を肉棒に与えた瞬間―――。
「はぅぅぅ……。だめですぅ……。イけないのに、イけないのにぃぃぃ……っ。」
何枚かの布越しに先生の臀部の感触を味わいながら僕は絶頂してしまう。
先生は笑いをかみ殺せず、耳元で小さな笑い声をあげた。
「っくふふふ、おちんちん気持ち良かったねぇ。ヤチガサキちゃんがいるの、わかってるはずなのにねぇ……。」
「うぅぅ……。」
先生に嘲笑され、あまりの羞恥に顔を背けようとする。しかし、先生の手がそれを許さない。
片手で僕の両手を抑えながらもう片方の手で、ぐい、と僕の顎を掴む。
上気した頬に、眼鏡の奥で濡れた瞳と目が合った。
男とセックスしている魔物の瞳だ。僕は先生とセックスしているのだ。意識した瞬間に耐えられなくなってしまった。
「あっ、あああぁぁっ……。また、だめっだめっ……。」
「ほぉら、オモラシするときの顔、私に見せたまえ……。」
ヤチガサキちゃんに射精感を奪われながら先生の臀部に腰を擦り付ける。その感触を楽しむように先生は腰を甘く動かし、強烈な快感を僕に与える。
奪われる快感よりも得られる快感の方が多くなったのか、放出感のないまま2日ぶりに満足感を得ることができた僕は指先が動かないほどに脱力した。
「あ、はぁぁぁ……。」
「ああ、蕩けた君はとても可愛かったよ、ナツキ。」
先生は動けない僕の頬を舐める。温かくぬめった舌が顔を這う感触に恍惚とする。
「ふふ、甘やかすつもりがたっぷりと調教してしまったな。」
しゅるしゅると尻尾がペニスに柔らかく巻き付く。ふわふわとした感触がペニスをくすぐり、極上の喜びを伝えてくる。
「はうぅぅぅ……。気持ちいい……。」
「ヤチガサキちゃんも満足したようだ。もう遅いし今日はこれで終わりだ。家まで送ってあげよう。」
先生は手際よく僕に服を着せていく。なんだか自分が幼児になったような気がして、恥ずかしさと嬉しさがこみ上げた。
「玄関で待っていたまえ。」
ぽふぽふと頭を撫でられる。性感を高めるのではなく、気安さを感じるような撫で方だった。
僕は頭上に置かれた先生の手を取り、頬ずりする。
「ん……。先生の手、すべすべしてて好きです。玄関で待ってますね。」
こうして僕は先生に家まで送ってもらうことになった。
先生が運転するバンの助手席に僕は座っていた。わずかばかり開けられた窓の隙間からは先生が吸う煙草の煙が連なって出ている。
疲れからか僕はシートに深く体を沈ませ、先生の匂いを堪能していた。
「何か食べるかい?」
「あ、お金ないですけど……。」
先生はくすりと笑って灰皿に灰を落とした。
「子供一人くらい、奢ってあげるさ。食べたいものがないのならその辺のレストランに入るけれどねぇ。」
「あ、えーっと。……魚食べたいです。」
「ふむ。食べられないものは?」
「昆虫はダメでした。母親が虫食べる地域の生まれなんですけど、そこの料理でセミとかを煮付けたのが駄目でした。うえーってなっちゃいまして。」
車が赤信号で止まる。先生は煙草の煙を、ふ、と吐き出して笑う。
「虫は嫌いかな?私が子供のころはよく食べたものだけれど。」
「姿が見えなかったら大丈夫なんですよね。触るのは大丈夫なんですけど、食べるとなると。むっ!ってなっちゃいます。先生は虫食べるの平気なんですか?」
「うん。あたりにいるのを捕まえて食べるのはイヤだけどね。」
「あ、やっぱりそうですよね。僕はどうも虫が不衛生に見えてしまって。ほんとはそうじゃないのはわかってるんですけど。」
「ふふ、それで君のお母さんはどうしたのかな。君が煮付けを食べられなくて。」
「笑って虫以外のおかずをくれました。僕が残した虫はお父さんが食べてました。」
先生は笑いながらアクセルを踏んだ。車は穏やかに加速し、ゆったりと走り始める。
「先生は食べられないのあるんですか?霧の大陸だと立つものは親以外、四つ足は机以外とか聞きますけど。」
「ふふ、それは人間の食文化だね。君たちは様々な文化を作り上げる。素晴らしい。」
とん、と煙草を灰皿に落とす。
「もちろん、私たち魔物もその文化を味わったが……。牛はダメだったね。味じゃなくてどうも種族的に食べられないのだと思う。見た瞬間に食べられないとわかったよ。」
「ほかの肉は食べられるんですか?鶏とか豚とか、ワニとか。」
「ああ、ほかの肉は大丈夫だよ。肉自体あまり食べないけどね。普段は野菜を多く食べるねぇ。」
基本は野菜なのにこの体つきなのか。僕はつい胸を凝視してしまう。
その視線に気づいたのか、先生が自分の胸を撫でる。
「これかい?男の子たちの夢が詰まっているのさ。」
「……。」
「……。何か言ってくれないと恥ずかしいんだけどね。」
車が左折し、ファミレスに駐車する。夕飯時なのでなかなか混んでいるが、先生は危なげなく車を止めた。
「わ、すごいですね。父さんだったらやめてますよ。」
「年の功かな。私、君のお父さんの10倍近く生きてるんじゃないか?多分。」
「え……。」
僕は父さんの年齢から先生の年齢を逆算するが、数字と僕の脳の相性が悪いことを痛感した。
「計算の結果、先生が年齢不詳の美女だということがわかりました。」
おかしなことを言うよりもこっちの方がいいだろう。僕の気遣いと裏腹に先生は厳しい一言。
「私の用事が終わったらいつでも来たまえ。算数……、いや、勉強の方法から教えてあげよう。」
しまった。適当なことを言うんじゃなかった。
車から降り、看板を見ると味のある文体で鯖戸亭と書かれている。
さばとてい。バフォメットが立ち上げた、サバトの資金集めを行うためのレストランだ。
いつからか本業よりもうまくいってしまったため、社長のバフォメット達はサバトを投げ捨ててこちらの営業に注力しているという。
「先生、噂知ってます?」
「ん?バフォメット達が本業を放り投げて運営しているという話?あれはホントさ。」
「マジですかぁ〜……。」
バフォメットってもっとカッコいいイメージがあったなぁ〜……。なんだかな〜……。
「味は本物だ。サービスは雑だけど、そこまで求めているわけでもない。ま、従業員たちの生活が成り立ち、サバトの資金が集まるなら彼女らもいいんじゃないか?」
まあ、それもそうか。僕は先生に連れられて店内に入ると、愛想のいい男性店員が出迎えた。
先生は手早く人数と喫煙することを伝え、店員の案内で窓際の席に着く。外を眺めるとオウルメイジが若そうな男を連れて駐車場を飛び立つのが見えた。
周りでは少なめの人数が紫煙をくゆらせており、換気扇が低い音を鳴らしている。
「ふふ、あの部屋はほんとは禁煙なんだ。ばれたら減給だろうな。」
先生はくっくっと笑いながら煙草に火をつけ、僕にメニューを渡した。
「さ、好きなのを頼みたまえ。」
「えっと……。焼きサバ定食で行きます。」
僕がそう伝えると、先生はうなずいて卓上のベルを鳴らした。店の奥からは怒号のような低い声で卓の番号が叫ばれ、呼応する店員たちの絶叫するような返事が響く。
どうもこの店は若い男性店員が多いらしく、変なノリになっているようだ。
「あれ、先生はもう決まったんですか?」
「手を出してみたまえ。」
手を?僕は不思議に思いながら先生に向けて手を差し出すと、先生の白い手が優しく包み込むように握った。温かく滑らかな感触に心臓が跳ね上がる。
「数字を思い浮かべて。当てて見せようか。」
数字。46。理由はなく、おぼろげながら浮かんできた数字だ。
「46、理由はない。どうかな?」
「え、白澤って触ってればそこまでわかるんですか?」
「触っていればね。手を握ったときに君がドキッとしたのもわかったよ。初心な反応を返すねえ。おっと。」
先生がぱっと手を離し、通路側を見る。長身で筋肉質の男性店員が爽やかに笑った。色黒の肌に白い歯がまぶしい。
「お待たせしました、ご注文をどうぞ。」
先生は二人分の食事を注文し、礼を伝えると店員は一礼して去っていった。
「ま、君の心を読むのと同じように、紙に書かれたものなんかもは触るだけで把握できるということさ。」
「それって足でもわかるんですか?」
僕がそう聞くと先生は笑った。
「そうだねぇ。試してみるかい?」
先生の蹄が脛から膝の内側をなぞり内股まで入り込む。
「う……。」
僕が腰を引きながら先生の顔を見ると、レンズ越しに見える瞳が嗜虐的に笑った。
「さ、何か考えてみたまえ。」
「な、何かって……。」
内股を蹄でくすぐられ、店内だというのにペニスは甘く勃起してしまう。口が渇いて視覚は先生の体を凝視し、魅惑的な肉体しか見えなくなる。
僕の物欲しそうな視線に先生はくすりと笑う。
「やれやれ、わかりやすいねぇ。うん?」
先生が怪訝そうな顔を向けた時、通路にはバフォメットが立っていた。あどけなさそうな顔に深いしわが刻まれている。胸元の名札には達筆な平仮名でおーなーと書かれていた。
ぱっと見は山羊の角の生えた幼女なのだが、強烈な威圧感を覚えて総毛立つ。
「失礼、それ以上は個室で行っていただきたいのだが。個室は追加料金が発生するが、宜しいかね?」
先生は足を戻し、おーなーの方を向いた。こちらから見える耳が赤く染まっているのがわかる。
「申し訳ありませんでした。すこし、はしゃいでしまって。」
おーなーは鷹揚にうなずいた。顔に刻まれたしわはなくなり、柔和な笑みに変わる。
「私も夫とデートをするとはしゃぐ。年長者同士、気をつけねばなりませんな。自分の男の痴態をほかの魔物に見せるのも癪ですから。」
彼女はゆっくりと歩きながら僕らに背を向けて歩き始めたが、店員とすれ違うごとに声をかけている。ひょっとして店員すべての名前を憶えているのだろうか?
歩いている彼女の近くでサキュバスが男を押し倒し、逆レイプを試みた。おーなーは虚空から鎌を取り出すとサキュバスを殴り飛ばし、男性に頭を下げる。
床に倒れたサキュバスは魔女たちに抱え上げられ、バックヤードに消えていく。
「ち、ちょっと!私じゃなくてあの男が誘惑したんだって……!サキュバスの近くでウナギ料理なんて!襲われても仕方ないじゃない……!」
サキュバスの悲痛な声がバックヤードに飲み込まれた。
なんだかすごいものを見た気がする。実はこの町は治安が悪いのだろうか?
「びっくりしました。バフォメットって初めて見ましたけど、すーごい威圧感でした。」
先生は煙草をくわえ、ゆっくりと煙を吐いた。
「やれやれ、はしゃぎすぎてしまったねぇ。怒られてしまったよ。」
ぽ、と口をすぼめて吐いた煙は輪の形になり、換気扇に吸い込まれてく。
「サキュバスってウナギ料理駄目なんですか?なんか食べてたお兄ちゃん襲われてましたけど。」
「うん?ウナギは精が付くからね、そこからの連想だよ。ま、ウナギについては俗説だがね。」
「あ、そうなんですか。なんかサキュバスだともっと根拠があるのかなって思っちゃいますよね。性的な事柄についてはすごく信憑性高そうです。」
先生はくっくっと笑った。
「鰻女郎の粘液は精力がつく、であればウナギも同じ。それだけさ。」
ええ……。
僕が困惑していると近くに店員が来た。でっぷりと太って眼鏡をかけた髪の薄い男性店員だ。彼は通りの良い声で品名を読み上げながらこちらに置く。
焼きサバ定食は僕、魚と野菜の餡かけを先生の前に置き、一礼して去っていく。頭を下げた時、薄い髪の中で日に焼けた頭皮がライトに照らされて光った。
「じゃ、いただきます。」
僕は鯖に箸を入れ、米と一緒に口に入れる。いたって普通の食事だろうが、疲れた体に食事が滲みる。
湯気を立てる米と焼き立ての鯖、大根おろしを口に放り込んで飲み込む。豆腐の味噌汁を啜り、喉を流れ落ちる感覚を楽しむ。
隅の小鉢に置かれた漬物のポリポリとした食感が口の中を飽きさせない。
疲れた体での食事はやはりたまらない。ウミをバカにしていたが、僕も同類だ。
「ずいぶんおいしそうに食べるねぇ。」
先生の方を見ると愉快そうな表情で僕を眺めていた。とりあえず口内の物を飲み込んでから口を開く。
「……?美味しいですよ?」
「いや、大盛りの方が良かったかなと思ってね。普通盛りじゃ足りないんじゃないかな?」
「まあ、そうですね……。でも家に帰ってから夜ご飯食べるので。」
「この後に夜ご飯食べるのかい?」
「そうですけど……。えっ?」
先生は心底おかしそうに笑うと卓上ベルを鳴らす。男たちの怒号。食事を進める間に店員が来る。
「追加で杏仁豆腐を2つ。君も食べるだろ?ええ、食後に。ありがとうございます。」
店員が去っていく。
「いいんですか?いただきますですけど。ありがとうございます。」
「ああ、たっぷり食べたまえ。」
僕が食べ終わるまで先生はにこにこと僕の食事姿を眺めていたのだった。
次の日。いつものように僕は理科準備室に向かう。
階段を上がり、準備室に近づくたびに心臓の動きが速くなる。唇が渇き、喉のひりつきが抑えられない。
僕は唇を舌で舐めて生唾を飲み込むと、深呼吸をして何とか心を落ち着けようとする。
期待に震える手でノックをするしようとした瞬間、内部から声がした。
「君か。開いているよ。」
「し、失礼します。」
上ずった声が何となく恥ずかしい。
ドアを開けるといつもと違い、私服姿の先生がいた。惜しげもなくさらされた二の腕や開けられた胸元がまぶしい。
町を歩けばもっと露出度の高い魔物を見るが、普段はきっちりとした服装の先生がラフな姿をしているのはなんとも魅力的だった。
「……?珍しいカッコですね?新鮮です。」
「ああ、これかい?」
先生はその場でくるりと回って前かがみになると服の襟を引き下げる。重量感のある胸の谷間が露出し、僕の股間が充血していくのを感じる。
盛り上がったテントを見た先生はくすくすと笑う。恥ずかしいけど今更隠しても仕方がないのでそのままだ。
「ふふ、君はおっぱいが好きだねぇ。ほら、来たまえ。」
両手を広げる先生に誘われ、胸の谷間に顔をうずめながら先生に抱き着く。
昨日の刺激のある匂いではなく、清涼感のあるスッキリした匂い。柔らかく暖かい胸に溺れてしまう。
「ふあぁぁぁ……。気持ちいい……。」
「私は急用で2、3日いなくなるからねぇ。今日は資料を取りに来ただけさ。」
「え……。」
困惑する僕の頭をなでながら、先生は僕を押し倒す。背中に衝撃はない。いつの間にかソファに移動していたようだ。
「ま、というのは建前さ。目的はこちらだねぇ。」
先生は僕の目を見ながらにんまりと笑った。
「私がいない間、ほかの魔物に襲われないようにしっかりしておくれよ?」
「うぅぅぅ……。わ、わかりましたぁ……。」
脳髄は先生に包まれ、桃色の霞がかかったようにぼんやりとする。血液が送り込まれた肉棒は限界まで張り詰めていた。
「うん。蕩けたいい返事だね。じゃあご褒美をあげようか。」
先生の手がベルトを外してパンツの中に潜り込み、僕の勃起を優しく握った。
「ふっ、くうぅぅ……っ。」
情けなくもそれだけで僕の腰はかくかくと動いてしまう。その様を見た先生は甘く笑いながらペニスを扱き上げる。
「はは。すっかりクセになってしまったようだねぇ。ほら、しこしこしこ〜。っく、ふふ。」
「あっ、あああぁぁ……。せんせぇぇぇ……。」
すっかり骨抜きになってしまった僕は先生から与えられる快楽に酔いしれ、脱力した口からよだれが垂れた。
「おや。キスもしてほしいかい?ほしがりさんだねぇ。」
「んっ……っ!んむむ……ッ!」
先生の肉厚な唇が僕の唇を塞ぐ。侵入した舌がねっとりと這い回り、歯の裏や頬肉を舐め、唾液を交換する。
妖しい水音が体内に反響し、鼓膜を揺らした。
甘美な感覚が下腹部に押し寄せ―――。
「ん、んんん……ッ!」
僕は先生にしがみつきながら絶頂を迎えた。視界の隅でペニスがびくびくと震え、ヤチガサキちゃんは満足そうに触手を揺らした。
先生は唇を離すと少し困ったような、照れたような顔をして僕を撫でた。僕と先生の唇の間には透明な橋ができている。それがなんとも艶かしい。
「君、初めてだっただろう?キスの時は目を瞑った方がいいね。」
「ふあぁぁぁ……。わかりましたぁ……。」
言われたとおりに目を瞑ると、暗闇の中で先生の柔らかさや吐息、衣服が体をくすぐる感触がはっきりと伝わる。
「ん……。」
柔らかく熱い花弁が僕の唇を甘噛みする。ぬるぬると湿った舌が唇をなぞる。舌を迎えようと口を開けると、唇の裏側を舌が舐めとっていった。
焦らされ、揶揄われてるような感覚と羞恥に襲われ、僕は身を固くしてしまう。間近から先生の優しい声がすると同時に頬を温かな吐息が触れた。
「ほら、こっちも忘れていないよ?」
さらさらとした新品の筆のような感触がペニスをくるむ。突然与えられた感触に僕は上ずった声を出してしまう。
「ああっ……。や、んむっ……ッ。」
すべすべとした感触が僕の側頭部を覆うと同時、唇が塞がれる。
口内から甘美な水音が響き、ペニスには繊細な刺激。体には豊満な感触が与えられる。
背筋にぞわぞわとした感覚が湧き出て、僕はそれに耐えようと先生を抱き締めてしまう。
「ん……。んふふ……。れろ、ちゅっ……。」
さらに熱を帯びた舌が僕の口内を蹂躙し、舌同士が絡み合う。
ねっとりとぬめった感覚に耐え切れず、僕は力を緩めてしまう。
「ん、んんん……っ!んんっ、ん……。」
「ん、んふ……。ちゅっ……。ふふふ……。」
目を開けると、先生が潤んだ瞳でにっこりと笑っている。互いの口は唾液でべたべたになっており、なんだかとても気恥ずかしい。
「ふふふ、これでしばらくは大丈夫だろう。ああ、ヤチガサキちゃんは十分に栄養を取っているからもうご飯はいらなさそうだねぇ……。」
「あっ、やぁっ……っ。」
先生のしっとりとした手が僕の肉棒の先を撫でる。鋭い快楽が襲うも逃げることができず、びくびくと震えてしまう。
「じゃあ、ヤチガサキちゃん、この子をよろしく。」
ヤチガサキちゃんは任せろと言いたげに触手をゆらゆらと揺らした。
僕は自分のベッドの上に寝ころんだ。シーツのひんやりとした感覚が風呂上がりの火照った体に心地よい。
先生が急用でいなくなってから性欲処理ができていない。それがなかなかに苦痛だった。
何しろ、目に映る魔物娘はほとんど露出度の高い服装をしている。右を向いても左を向いても胸や尻、腰のくびれが目に付いてしまう。
ツムギが近づいてきただけで勃起した時はどうしようかと思った。ばれていたのでけらけらと笑われ、その声が耳にこびりついて離れない。
ウミも事情は知っているはずなのだが、あの放任主義の適当バカ男はツムギと一緒になってからかってきた。くそっ。いつも放課後にツムギの下で叫んでいるくせに。
ペニスに巻き付いたヤチガサキちゃんを撫でると、触手が指に巻き付き、柔らかく圧迫する。何となく励まされているような気がして嬉しい。
先生はいつ帰ってくるのだろう?2〜3日って言ってたし明日明後日くらいなのだろうか。それまでヤチガサキちゃんと頑張ろう。
明日も明後日も学校はないし、ゆっくり休もう。そう思っていたところ――。
「あれ、なんだろ。」
携帯の画面に通知が映る。先生からメールが送られてきたようだ。僕は片手でヤチガサキちゃんを撫でながらメールを開く。
メールには何も書かれていない。画像だけだ。
「わ……。く、ううぅっ……。」
そこには目元を隠してにっこりと笑う先生が写っていた。
大胆に開けられた胸元から深い谷間がのぞき、ライムグリーンのブラが見える。
その画像を見ただけで僕のペニスはむくむくと勃起し、ヤチガサキちゃんも合わせて伸びていく。
追加で受信したメールを興奮に震える指で開く。
『明日帰る。家に迎えに行くから待っているように。』
明日。明日、先生に会える!
僕は携帯の画面を見ながら、ヤチガサキちゃんごと自分のペニスを握りしめ、上下させる。
「は――。せんせい、せんせい……ッ!会いたい、すき……!」
ヤチガサキちゃんの軟体の感触が手に伝わり、まるで自分の物じゃないようなペニスを扱く。ヤチガサキちゃんの触手が制止するように手首に巻き付くが止められない。
「せんせ、でる、でちゃうっ、ふ……ッ、くっ……!」
出ない。不完全な絶頂でもそれなりに性欲を発散することはできた。この感覚に慣れてしまっているのか、寸止めされていても快楽を得ることができるようになっていた。
ヤチガサキちゃんは先を尖らせた触手で下腹をつつき、抗議してくる。
「ごめんね、ヤチガサキちゃん……。痛かったかな……。」
僕はヤチガサキちゃんを労わろうと撫でた。すると触手は収縮して撫でやすいように短くなる。思い込みかもしれないけど、なんだか連帯感や友情のようなものを感じる。
「明日先生来るし、叱られないように早めに寝ようか。おやすみ、ヤチガサキちゃん。」
僕は電気を消してベッドに入り込む。開けたままの窓からは父さんと母さんの嬌声が響いていた。
「おはよー。」
僕はあくびをしながら階段を下りた。すると、母さんの真向かいに民族衣装を着た先生が座り談笑している。
あくびをしている僕に気づいた母さんの口から声が飛んだ。
「ほら、あんた今日先生の家で勉強するんでしょ!前から言っておいてくれればよかったのに!早く顔洗って準備しなさい!」
「は〜い。」
僕は言われたとおりに準備を進める。頭の中は先生でいっぱいだった。
準備を終えた僕と先生を、母さんは玄関先で見送る。
「あんたしっかり勉強してきなさい。この間のテスト最低点数だったんだから!」
「誰かが最低点数になるところを僕が守った。これは名誉じゃあないか?そう考えてほしい。」
頭をはたかれる。
「ふふ、ナツキ君は素直な子ですから、教えればすぐにできますよ。では、借りていきますね。」
先生は一礼して車に乗り込む。続いて僕も乗り込む。
家が見えなくなってから先生は口を開いた。
「なかなか面白いお母さんじゃないか?」
「そうですか?いつもあんな感じです。肝っ玉母さん!って感じですね。」
赤信号。車はブレーキを繰り返して減速し、慣性を殺しながら止まる。先生は煙草を取り出すと火をつける。
肉厚な唇が煙草をくわえると、白い紙の筒は先端が灰になっていく。
「楽しみかい?」
「え……?」
先生の手が僕の太ももを撫でる。細く繊細な指がズボンの上から僕の輪郭をなぞる。
僕は緊張しながら先生の顔を見る。目は細くなり、口の端は薄く上がって微笑んでいた。
先ほどまで車内に満ちていた、教師と生徒の雰囲気はもうない。
四方を鉄で囲われたここは、聖獣の食卓と化していた。
「な、にが、ですか……?」
カラカラに乾いた口を動かして、上ずった声を出す。
「今日だよ。よく我慢したねぇ。」
優しい魅惑的な声が鼓膜を揺らす。その振動に呼応して僕のペニスがテントを張った。
すう、と指が離れてハンドルを握る。
「もう少しだね。ふふ、ゆっくり待っていたまえ。」
視野が狭まる。先生を見ると、足が、手が、胸が口が髪が唇が思考を埋める。脳は先生に溺れ、呼吸は早く、手が震える。
瞬きの間に先生の家につく。本来は2〜30分ほどかかるはずなのに。
先生は簡単に車から降りた。僕は緊張と欲情で手が震え、うまくシートベルトが外せない。扉が開く。
「やれやれ、少し煽っただけなのにね。少し待ちたまえ。」
白い手がシートベルトを外し、僕に差し出される。
「そのままだと転びそうだねぇ。ほら。」
「あ、りがとう、ございます……。」
僕はその手を握る。高級な辞典の紙のようにしっとりと手に馴染み、滑らかな感触が伝わる。先生はにっこりと微笑み、僕が転ばないように支えてくれた。
「ふふ、あんよがじょーず、あんよがじょーず……。」
「ううぅ……。」
くすくすと笑われながら僕は先生にエスコートされる。
玄関先で僕ははたと気づく。
今握っている手は先生の肉体。これから先生に射精させてもらえる。手だろうか?脚だろうか?何であれ久しぶりの射精だ。
この滑らかでしっとりとした手に自分のペニスを擦り付け、先生の豊満な肢体にしがみつきながら射精する。
深いスリットからのぞく太ももに勃起を埋め、頭を撫でられながら腰を振って射精する。そういったシーンを夢想した。
下半身に集中した血流が脈動し、先生から香る煙草の匂いが鼻孔を埋める。
「あっ、だめ、だめ……。せんせい、せんせっ……っ。」
「おっと……?」
僕は先生の手を強く握りしめながら絶頂を味わった。先生の体の柔らかさや服のスリットからのぞく太ももを覆う毛皮、煙草とは違う甘い匂い。射精の誘惑。性交の予感。
それらを浴びながら味わうオーガズムは、今までとは全く違う快感を生み出した。ペニスには何も触れていないのに。
先生は僕の頭を撫でて柔らかく笑う。
「ん……。そこまで心待ちにしていたのかい?嬉しいねぇ。ヤチガサキちゃんも満足しただろうし、今日は蕩けさせてあげようか。」
「あ、ふぁぁぁ……。」
僕は先生に連れられて家に入る。僕は震える手で何とか靴を脱ぐと、先生は上がりかまちに座り込んで僕に布を差し出してくる。
「拭いてくれないか?このままでは家の中を汚してしまうから。」
「は、い……。わかりました。」
布を受け取ろうと手を差し出すと、柔らかな手が僕の手を包みこみ、落とさないようにしっかりと握らせた。
「先生、足、こっちに……。」
正座した僕がそう言うと、先生はお尻を支点に回転して僕の太ももに足を乗せる。丁度、蹄が勃起に当たってしまい、僕は喘ぎ声を出してしまう。
「あっ……。んぅ……っ。」
「ほぉら、早く拭かないといけないねぇ。ふふふ、ほら、ほら、ほら……!」
僕は先生の足を掴んで蹄を拭こうとするが、ペニスに与えられる振動に快楽を感じて正常な動作がままならない。
「あっあっあっ……!ぐ、うううぅぅ……。」
拭いて綺麗にしないと……。綺麗にしないといけないのに……。体が勝手に動く……。
僕は先生の蹄を舌で舐め、泥を落とそうと試みる。砂や泥のじゃりじゃりとした感触が舌に伝わる。まるで砂抜きしていない貝類を食べた時のようだ。僕の鼓膜を先生の声が揺らした。
「あっ!コラ、やめたまえ!」
先生は足を僕の口から離し、口に手を入れた。なよやかな指が口内を滑り、口内の砂をさらっていく。同時に口内という性感帯を撫でられ、僕は蕩けてしまう。
「ん……。せんせ、ゆび、すきです。おいしい……。」
「まったく……。ほら、悪戯しないからちゃんと拭いてくれないか。土は意外と不衛生なんだ。」
「ちゅぷ……。はい……。」
僕は先生の指が口から出ていくのを名残惜しく思いながら、先生の足を拭く。光を吸い込むような黒さを湛えた爪を拭いていると、美術品を拭いているような気持になる。
「先生、蹄、綺麗です。キスしてもいいですか?」
「ああ、拭いた後ならね。」
両足とも拭き終わっていたので、許可をもらった瞬間に蹄に口づけをした。
つるつるとした滑らかで硬い感触が唇に伝わる。人間でいう足首のあたりから柔らかな毛が生えており、そこに顔を埋めるのはたまらない。
僕は蹄から足首、膝にかけて思いのままにキスをする。柔らかな毛側に覆われた脚はふっくらとして均整がとれた美しさだった。
むっちりとした太ももに差し掛かった時、先生の手が僕の唇に触れる。
「もう少し楽しみたいけれど……。玄関先じゃあ落ち着かないだろう?ほら、立って。」
先生は僕を制して立ち上がると僕の手を握り、家の奥へ歩く。
通された部屋はよく整理されており、植物の鉢がたくさん置いてある。そのどれもが青々としているが、僕が知っているものはサボテンや食虫植物しかなかった。
「お茶を淹れてこよう。いい子で待っていたまえ。」
「は、い、待ってます……。」
先生は僕をソファに座らせると頬に口づける。そして台所であろう場所に消えていった。
興奮の置き所がなく、近くにあるハエトリグサを眺める。先ほどハエを捕まえたばかりなのか、ドロドロに溶けた黒いものが2枚の葉に咥え込まれていた。
しばらく近くの植物を眺めていると、先生がお茶を目の前において隣に座る。
ふわりと良い香りが漂い、隣からは先生の肉感と体温が伝わった。
「……あ、ありがとうございます。あちち。」
「熱いからね。ゆっくり飲みたまえ。ふふふ……。」
先生は穏やかに微笑みながら湯呑を傾ける。舌が火傷しそうなほど熱いお茶なのだが、なんともないのだろうか?
息を吹きかけて冷ましながらお茶を口に含む。熱く、濃い色の液体が喉を滑り落ちるたびに体がぽかぽかと暖かくなり、ソファに沈むような感覚を覚える。
「どうだい?これを買いにしばらく空けていたのだけれど。」
「……?知らない味です。美味しい……んでしょうか?なんだか素朴な感じの味です。」
「そうだろう?特殊な薬膳茶でねぇ。久しぶりに作ったけどなかなか上手くいって良かったよ。」
「薬なんですか?どんな効き目があるんです?このお茶。」
「リラックス効果が大きいね。それに精力増強作用もある。利尿作用もあるけど……。コーヒー程度だね。ま、そっちは気にしなくていいだろう。」
リラックスと精力増強。なんだか正反対な気もするけど、そういうものなのだろう。
僕は不思議に思いながら熱いお茶を飲みほす。熱いお茶が胃まで到達し、体の中心から末端までを熱で包まれているように感じる。
「さて、本題に入ろうか。ナツキ。」
先生は近くにあった小箱を開けると、片手で収まる円柱型の物体を取り出した。
それが何かを悟り、僕の股間は血流を集めてしまう。
「お察しの通り、オナホールだ。コレは特別製でね、精液採取に使われているものだよ。少し内部をいじっているがね。気に入ってくれると良いが……。」
僕のペニスは期待に震え、情けなくもテントを作ってしまった。それを見た先生は楽しそうに笑う。
「ふふ、ではズボンを脱いでもらおうか……。」
「は、はい。ううぅ……。」
僕は先生に言われた通り、自分からズボンとパンツを下す。
服を着ている魔物の前で自分の性器を曝すという行為に僕はひどく興奮している。ヤチガサキちゃんは触手を伸ばし、下腹を艶かしく愛撫していた。
「あ、ううぅ……。ヤチガサキちゃん、なんでぇ……?」
「ヤチガサキちゃんもよく頑張ってくれたねぇ。さ、どいてくれたまえ。」
先生がそう言って彼女の頭部?を撫でる。
ヤチガサキちゃんはするすると僕のペニスから離れ、太もものあたりにぴったりと張り付く。下腹を愛撫していた触手は鼠径部のあたりをさまよい、くすぐる。
僕のペニスは喜びと期待に打ち震え、鈴口から我慢汁が垂れた。全神経が隣の先生に集中する。
甘い匂い。温かな肉体。柔らかな乳房。ふかふかとした尻尾。
「まだだ。我慢したまえ。」
「ぐ、……っ、うう……っ。」
先生は僕を抱き寄せ、きつめの口調でそう囁いた。耳元にこそこそと吐息がかかり、脳髄が蕩けそうになるのを必死に押し留める。
「持たなそうだねぇ。楽しんでもらう余裕はないか。」
ペニスの先端部にひんやりとした感触。オナホールが亀頭にあてがわれたのだろう、ぞくぞくとした感覚が背筋を走る。
「さ、もう我慢しなくていい。たっぷりと吐き出してしまえ。」
耳元の吐息がそう言うと一気にペニスが未知の感触に飲み込まれた。
穴の中は潤滑液で満たされ、ヌメヌメとした感触がペニスを襲う。にっちりとした塊を僕の勃起が掻き分けるたび、複雑なヒダが亀頭からカリ首、幹までを刺激する。
最奥部まで到達すると、きゅぽきゅぽと吸い付くような感触が亀頭を襲い、射精を促してくる。
この間もヤチガサキちゃんは愛撫を止めず、鼠径部や睾丸を妖しく撫でていた。
「ああぁ―――!!だめですこれだめだめッ……あっうああ――――!!」
あまりの快楽に数秒と耐えられず、僕は絶叫しながら腰を浮かし、無機的な穴の中にどぷどぷと漏らしてしまう。
久しぶりの射精は落雷のように脳から足先までを迸り、全身で快楽を味わうことができた。
「よし。ここまで出してくれれば十分だろう。ふふ、いままでよく我慢してくれたねぇ、私のために。ありがとう。」
先生はオナホールの穴に封をして精液を閉じ込めると、小箱の中にしまった。
強烈な脱力感に襲われた僕は先生に体を預け、柔らかな体を楽しむ。
「ふあぁぁぁ……。せんせい、気持ちよかったです……。」
すりすりと顔を横乳に擦り付ける。さらさらとした衣服の奥には下着だろうか、固くしっとりとした感触が伝わり、安らぎをもたらしてくれる。
その感触を楽しんでいると、不意にペニスがねっとりとした何かに覆われる。その感覚に僕は腰をはね上げてしまう。
「おや、ヤチガサキちゃん。どうしたんだい?ふんふん、なるほど。」
先生はヤチガサキちゃんに触れると、こくこくと頷く。そのたびに艶やかな髪が僕の体をくすぐった。
「ナツキ。ヤチガサキちゃんと仲良くやっていたようだねぇ、お礼がしたいらしい。楽しんでくれたまえ。」
「え……。この感じ、ヤチガサキちゃんなんですか……あぁっ……っ!これ、だめ……気持ちよすぎです……ッ!」
暖かくぬめった肉がペニスを包み、ヤチガサキちゃんが蠢くたびににゅるにゅると擦れる。
ローションに浸ったガーゼのような感触がペニスを包み、根元からカリ首まで上下する。亀頭は潤った唇にキスされるようにちゅっちゅっと吸われる。
僕はヤチガサキちゃんが与える快感に虜になってしまった。しかし、先生の前でヤチガサキちゃんに絶頂させられることに羞恥を感じ、腰をくねらせてしまう。
「ああっ……。ダメ、イく、イっちゃう……!せんせい、みないで、だめっだめぇっ……!」
「ふふ、腰をくねらせて……。気持ちよさそうだねぇ、情けなくてかわいいよ……。さ、みじめにオモラシしたまえ……。」
「あっ……、あぁぁ……っ、ふ、……っ!くううぅ……っ!」
くすくすと笑う先生に見られながら、僕は腰を浮かしてヤチガサキちゃんの中に射精した。
どくどくと精液を漏らすたびにヤチガサキちゃんは収縮する。亀頭に接した部分は精液を吸い取るかのような刺激が与えられ、腰が蕩けそうになるほどの快楽を味わう。
ちゅぽん、とヤチガサキちゃんが離れたころ、僕は涙目になりながら先生の手を握り、汗だくになった顔を胸に顔をうずめていた。
僕のペニスから離れたヤチガサキちゃんはほかの部屋に向かっていく。視界から外れるとき、彼女は触手を僕に向けて振ったような気がした。
「は、は……っ。せんせい、せんせいぃ……。」
「すっかり汗だくになってしまったねぇ。ふ、シャワーでも浴びようか。んっ。んふ……。」
先生は僕の膝に乗って口づけをしながら、僕の服を脱がす。口内に伝わる甘美な感覚に酔っているうちに僕は全裸となってしまった。
「……ちゅ、ッぷは。さ、ブラを外してくれないか?」
先生はネクタイを外して上衣をはだけると、軽く抱くように僕の肩の上に肘をかける。明るい緑の下着に包まれた胸とその間にある深い渓谷がのぞいた。
「は、はい。あ、えっと……。これ、どうやって……?」
僕はおそるおそると手を彼女の胸に当てる。ずっしりとした重みと細かい装飾が心地よく手に伝わる。
たしかブラは背中のホックで留めていたはずだ。震える手を背中に回し、どうにかホックを外そうとするが、うまく外れない。
「先生、これ、どう……?」
「んー?いろいろ試してみたまえ。ほら、しっかりくっついて……。ふふ。」
ぐい、と先生は僕を抱き締めた。深い胸の谷間に僕の顔が埋まり、蒸れて汗ばんだ甘い匂いが鼻孔を埋める。勃起したペニスが下着に擦れ、刺繍が繊細な刺激を与える。
はやく、外さないと射精してしまう……。僕は先生の体に溺れながらブラのベルトをつまんで緩め、ホックを外す。
「おや、思ったよりも早かったね。よしよし。」
「あ……っ!だめ、でちゃう……っ!」
「おや……?」
先生が僕を胸に埋めて頭を撫でた瞬間、僕は射精していた。
ペニスからびゅるびゅると精液が飛び出し、先生の下着と太ももを汚してしまう。先生は楽しそうにくすりと笑った。
「やれやれ、これで漏らしてしまうとはねぇ。ほら、残りの服も脱がしてくれたまえ。あとは簡単に脱がせられるはずだよ。」
「ううう……。」
僕は先生の背中に回した手で上衣を掴み、ゆっくりと引き下げる。まるで果物の皮でも剥くように先生の裸体が露わになる。
剥き出しになった首筋に僕は唇をつけた。白い肌に血液が通い、ほんのりと色づいている。長い黒髪が垂れ、僕の顔をくすぐった。
「ん……。せんせ、肌綺麗です。白くて、すべすべで……。」
「ふふ、すっかり虜だね。ほら、さっき出したばかりなのに……。」
伸ばされた人差し指がくるくると亀頭を弄ぶ。ぞくぞくとした感覚が背筋を走り、腰を突き上げてしまう。そのたびに先生の柔らかい感触がペニスに伝わった。
「ん、んんん……ッ!っは、せんせい、また、だめ……っ!」
「おっと。ふふ、ガマンは慣れてるだろう?」
射精に備えて先生の体を強く抱きしめるも、亀頭から指が離れてしまう。最後まで刺激が与えられず、僕の分身は情けなく震えた。
発情した僕の手を先生は優しく握る。それだけで脳髄を蕩かすような電流が走った。
「さ、立ちたまえ。シャワーを浴びなければねぇ……。」
僕は先生の手を掴んで立ち上がる。窓から日光が射しこみ、全裸の先生を照らした。翻る長い黒髪が煌めき、揺れる腰から伸びる尻尾が白い光を反射する。
魅惑的な肉体に見惚れるのもつかの間、僕はシャワールームに連れ込まれた。
先生はヘアゴムで長い髪を簡単にまとめる。長い髪が後頭部にまとまり、うなじと生え際が露出した。手を伸ばして撫でると、先生はくすぐったそうに笑う。
「髪、まとめるのも可愛いです。いつものも好きですけど、こっちの方が雰囲気が軽く見えます。」
「まあ、雰囲気を変えようと思ったわけじゃないけどね……。さ、来たまえ。」
僕は言われたとおりに先生の正面に立つ。僕が小柄であることを差し引いても先生は長身だ。こうして並ぶとなんだか子供と大人みたいでどきりとする。実際にはそれ以上の年齢差があるのだろうけど。
「逆だねぇ。ふふ、私に抱かれたいのは知っているけれど。」
先生はそう言うと僕の周りをくるりと回り、後ろから僕を抱き締める。その手はボディソープでぬるぬるとぬめっており、その指先が乳首を転がすたびに僕は悶えてしまう。
「あぅ……。んっ……。せんせい、気持ちいいです……。」
「ほら、女の子みたいに乳首を立たせて……。いやらしいね……。ふふ、ほら、ほら……。」
僕は立っていられず、壁に手をついてしまう。傍から見るとバックで性交を行うカップルのようだろう。男女逆だが。
「ああ、そっちの方がいいねぇ。立てなくなったら尻尾で支えてあげようと思ったけど……。」
「あーたてなくなりましたーしっぽでささえてくださいー。」
わざとへたり込んだ僕のペニスに泡だった尻尾が巻きつく。シャワーのお湯とボディソープで温かくぬめったそれは極上の快楽をもたらし、へたり込んだのが冗談ではなくなった。
射精感に腰を突き上げるも射精することはなく、ただ快感だけが上書きされていく感覚に僕は泣き叫んでしまう。
「あ……っ!だめ、だめぇ……っ!ごめんなさい、冗談です……ッ!」
「んー?聞こえないな、冗談を言う悪い子の声は……くくっ。」
先生はくすくすと笑いながら僕のペニスを責め立てる。優しく幹をなぞったかと思えば、ふわふわとした毛先が亀頭をくすぐる。カリ首に尻尾が巻き付き、擦られながらほどけるのは天にも昇るほど気持ちいい。
しかし、どのような快楽が与えられようとも射精することはない。さらさらと頭を撫でる手が僕の状態を把握しているのだろう。振り解けば射精できるかもしれないが、それよりもこの甘い愛撫に浸かっていたい。
愛撫に浸っていたい気持ちと振り払って射精したい欲望の板挟みにあい、僕は叫びながら腰を振ってしまう。
「あ―――ッ!ごめんなさい、ごめんなさい!イかせて、イかせてください―――!」
「ん……?いぢめ過ぎたかな……。さ、たっぷりと射精したまえ。」
尻尾が僕のペニスを優しく包み込む。たったそれだけで僕は限界を迎え、精液を放出した。どくどくとペニスが脈動する感触が股間から伝わり、先生の尻尾の中にたっぷりと精液を流し込んでしまう。
「ふふ、尻尾で支えてあげようか?」
「い、え。自分で、立てます……。」
僕は立ち上がると壁に手をついた。背中も尻も先生にさらけ出した形になり、ペニスに血液が降りる。
「いいかい、動かないように。周りはぬめって危ないからねぇ。」
「う……。わかりました……。」
そう言うと先生は僕の指先から洗い始めた。
背中には柔らかな乳房、指先を撫でる先生の掌。体にその感触が走るたび、びくびくとペニスが震える。とろりと鈴口からカウパーが漏れ、耐え切れずに腰を振ってしまう。
「ふ、う……っ。せん、せい……っ。」
「ふふ、こっちも綺麗にしないとねぇ……。」
ぬるりとした指が肛門のあたりを這い回る。ぞくぞくとした快感と羞恥で喘いでしまう。
「あ……、せんせい、そこ、はずかしいです……。」
「ふふふ、なかなか綺麗なものだね。毎日お風呂に入っているようだ。感心感心。」
肛門から蟻の門渡りを経て、陰嚢が先生の手に包まれる。泡に隠れた皴の一本一本を愛しそうに指がなぞり、腰の力が抜けた。
「あ……。ふ、うう……っ。」
「はい、気持ちいいねぇ。しこしこしこ……。」
「あっあっあっ……。せんせ、せんせぇ……。」
勃起したペニスが先生の手にきゅっと握られ、腰の動きに合わせて上下運動を与えられる。親指と人差し指のリングがカリ首に引っ掛かり、亀頭がわしゃわしゃとくすぐられもみくちゃにされる。
僕は快楽の証を先生の手の中に放出する。かくかくと腰を動かしながら、温かくぬめった手筒にペニスを擦り付ける感覚に僕の脳は天国を見た。
「こら、まだ終わってないよ。しっかり喘ぎたまえ。しこしこしこ〜。」
「ああ……っ!せんせ、くすぐったいです、やめて、やめて……っ!」
「ん〜?ふふふ、ほらほらほら……!」
熱っぽい刺激が射精直後の男根に与えられた。恍惚に浸った僕は現実に戻り、快楽地獄を味わう。
射精直後で敏感になったペニスは容赦なく亀頭責めが行われ、下腹部は柔らかく押すようなマッサージが行われる。
「あ―――!せんせい、やめて、だめ、なにかでちゃう……っ!」
「はい、オモラシ……。」
ぐっ、と下腹部を押された瞬間だった。僕のペニスから黄色い液体が漏れ出し、じょぼじょぼと放尿を始めたのだ。
「あああ……ッ。ごめんなさい、ごめんなさい……。だめ、だめっ……。止まらない……。」
「ふふっ、しーしー、気持ちよさそうでちゅね……。くす、はずかしいでちゅね……。」
「せんせい、やだ、みないでぇ……、イヤだぁ……。」
あまりの羞恥と申し訳なさ、屈辱感。それらに隠れた快感の中、僕は失禁しながら泣いてしまう。
「ふふ、おしっこ、気持ちよかったねぇ。さ、洗ってあげようか……。」
「う、うああ……。」
ぐすぐすと泣いている僕を後ろから抱きしめ、先生は慈しむような手つきでペニスを洗ってくれる。
ふんわりとした泡が放尿したばかりのペニスを包み、にゅくにゅくと扱くようにして泡を塗り付けていく。
それは射精させるための動きではなく、洗うためだけの手つきだ。しかし、それだけでも僕は高まってしまい、腰を振ってしまう。
「ああ……っ。」
「こら、洗ってるんだから動かないでくれ。ふふ、泣いていても男の子だねぇ。ほら、おちんちんが硬くなってきたよ……。」
指先ががつうっと幹をなぞり、くるくると優しく亀頭をくすぐる。からかうだけの手つきで僕は射精してしまう。
「ふ、ううぅ……っ!」
「ははは、こっちのオモラシも気持ちよかったねぇ。いまキレイにしてあげまちゅよー、っふふ。」
先生の楽しそうな声が鼓膜を揺らすと同時、艶かしい吐息が耳をくすぐり、脳の奥を犯すような感覚に襲われる。
射精して萎えたペニスにシャワーが当てられる。刺激が強くならないように柔らかな雨程度の強さで温水流がペニスに当たり、精液と尿が混じった泡をさらっていく。
身体の汚れを取りさった後、バスタオルが体に当てられて丁寧に水気を拭きとられる。大きく柔らかな布を挟んで先生に抱かれ、甘やかな感覚を浴びた脳は桃色に染まった。
「さ、私の体も拭いてくれないか?」
「あ……、わかりました。」
いつの間に洗ったのか、先生の体も湯が光っており、水滴が内腿から滑り落ちて白い毛皮に吸い込まれていった。その様は異様なほど艶かしい。
僕は先生からバスタオルを受け取り、拭いていく。ふかふかの体に生唾を飲む。
胸、柔らかくくびれた腰、張りのある尻。濡れた尻尾。ぴったりと体に張りついた毛並み……。
背中を拭こうとして先生を抱き締める。背中に回した手が先生の肌を布越しに撫でる。顔は胸の谷間に埋まり、勃起したペニスは太ももに当たっていた。
拭き終わると同時、この至福の時間は終わった。
「先生、拭き終わっちゃいました。柔らかくて気持ちよかったです。」
「ふふ。では、ベッドに行こうか……。」
先生と手をつなぎ、浴室を出る。部屋には日が射しこんでいた。昼間に全裸で先生に手を引かれて歩くというシチュエーションに恥ずかしくなってしまう。
「あの、せんせい、はずかしい……です。」
「だれもいな……いや、そうだねぇ。誰かに見られるかもしれないね。ほら、隠さなくていいのかい。君の勃起したおちんちん……。」
先生は裸体を惜しげなくさらけ出し、くすくすと笑った。白い肌と影のコントラストが美しく、起伏にとんだ体が強調される。
情けなく勃起したペニスを隠したいが、片手では少しはみ出てしまう。
「ほら、体が冷えてしまうだろ?」
くいくいと先生に手を引かれ、窓際を歩く。
日光が暖かく、日向ぼっこにはちょうどいいだろう。隠すことのできない性器が歩く動きに合わせ、ぴこぴこと揺れる。
「うん?友達がいるな?おーい!」
「えっ!ちょっ、せんせ……!」
僕はペニスを隠そうとへたり込んでしまう。先生は僕の姿を見てくすりと笑った。先生の視線の先ではカラスが飛び立つところだった。
「ふふ、ごめんね。見間違いだったよ。」
「ううう……。」
僕はそのまま先生に手を引かれ、寝室に向かう。
カーテンが閉められた薄暗い部屋にはベッドがおいてある。僕は先生に手を引かれるままに座ると、寄り添うように先生が隣に座る。
太ももを先生の手がなぞり、さわさわとくすぐった。甘い感触がぞわぞわと伝わり息は荒く、心臓は激しく鼓動する。
優しい手が僕の肩を掴み、ゆっくりと後ろに押し倒していく。僕は抗えずにされるがままで、ふかふかの布団に押し倒される。
「君はどんな初めてがいい?激しく?それとも優しく?」
「あ……。その、優しく、して、ください……。」
先生はにっこりと微笑むと僕の唇にキスをした。舌は入ってこない、唇だけのキスだ。
「ん……。ふふ、ちゅっ。んむ、ふ、ん……。」
「ん、んんん……!ふ、は。んん……っ!」
先生が繰り出すキスに翻弄される。唇を受けようとすれば少しずらした位置に口づけされる。頬、首筋、鼻、額。
ふわりとした感触の口づけに溺れ、僕の力は抜けてしまう。すでにペニスは限界まで張り詰めており、先生の手が慈しむように握った。
「ちゅ、ふふ。準備万端だねぇ……。」
先生は眼鏡を外し、ベッドの頭についている棚の上に置く。眼鏡を外した先生の瞳がにんまりと笑う。
仰向けに寝ている僕の体にまたがり、見せつけるように秘所を撫でる。陰毛におおわれた割れ目はしっとりと濡れており、まるで匂い立つようだった。
「さ、童貞卒業だね。」
優しく撫でている手がペニスを固定し、先生は一気に腰を下ろした。
僕の脳は桃色に染まり、蕩け、踊る。体全体が溶解し、ペニスから放出するような感覚に襲われる。
浮遊感と恍惚感に包まれる中、先生の微笑みと頬を撫でる感触だけが明瞭だった。
「ふふ、手加減したのだけれど……。耐えられなかったかな。」
ぼんやりとした視界の中で先生の顔が見えた。安心感に包まれ、頬を撫でる手を握る。
「せんせい、せんせい……。」
「ふふ、楽しむ暇もなかったな……。ゆっくり休みたまえ、ナツキ。」
僕の意識はそこで途切れ、甘い闇の中に沈んでいった。
「んぅ……。」
僕はゆっくりと目を開けた。視界に最初に入ったのは白い肌、次に桜色の頂点。先生のおっぱいだ。
「ん……。」
僕は胸の谷間に顔を埋め、至福の感触を楽しむ。頭上から声。
「おはよう。ゆっくり眠っていたね。」
「せんせい……。すごく気持ちよかったです。気絶しちゃいました。」
「ああ、そういってもらえると助かるよ。手加減したつもりだったんだけど。ふふ、熱くなってしまってね。」
先生の手が僕の頭を撫でる。お返しに僕は先生の髪を撫でる。
「先生、髪、長くてきれいです。さらさらで気持ちいいです。」
「君の髪は少し硬いな。これからしっかりケアしてあげよう。」
髪を弄ぶ手を握り、頬ずりをする。
「気絶する前、先生の手を握ったの覚えてます。柔らかくて、あったかくて。すごく安心しました。」
先生の手が僕の指を絡ませながら握る。俗に言う恋人繋ぎだ。
「君は華奢だけど、手は骨ばっているね。男の子の手だよ。安心感はないけれど、愛しいね。」
僕は手を離し、先生の胸を優しく撫でた。ずっしりとした柔肉の感触は吸い付きそうなほどで、しっとりと潤っている。
「えっと、おっぱい、好きです。」
バカみたいな感想に先生は噴き出した。にっこりと笑いながら僕の乳首を弄ぶ。
「君の乳首は私も好きだねぇ。ふふ、感度がいいからね。」
胸を撫でられてくすぐったい。先生と僕は互いに抱き合いながらくすくすと笑い合う。
「その、先生。お風呂のことだったんですけど、本当にごめんなさい。まさかおしっこを漏らしちゃうなんて思ってませんでした。」
「ああ、お茶を飲んでいたからだろうね。ふふ、とっても可愛かったよ。またやりたいかい?」
「え……っと、その、はい……。」
羞恥心を抑えながら僕は答えた。正直なところ、クセになりそうなほど気持ちが良かったのだ。
先生は僕の頬に口づけをした。
「じゃ、また次もやろうか。ふふ、君のおちんちんはもう期待しているねぇ。ほら……。」
「あ……っ。」
今の会話で甘く勃起したペニスが先生の太ももに刺激される。
「ふふ、またセックスしたいかい?」
「したい、……ですけど。いまはこうやっていちゃいちゃしてたいです。」
先生は小さく笑い、僕を抱き締める。温かな肉体に抱かれ、体から力が抜けていく。
「私もだよ。抱き合っていると気持ちがいいねぇ……。」
「僕もです。なんだか僕ばっかり気持ちよくなっちゃってますけど……。」
「ん……。相手を気持ちよくする方法は今度また教えてあげるよ。ほかの魔物に使われちゃイヤだけどね。」
「……?ほかの魔物?先生がいいです。気持ちよくしてもらったのでお返ししたいです。」
くすくすと笑われる。訝しく思い、先生の顔を見ると白い頬がほんのりと朱に染まっているような気がした。
「やれやれ。すっかり私の虜だねぇ。ほら、もう少し上においで、キスしてあげるよ。」
体を動かして先生と向かい合う。きめ細かい肌に長い睫毛、すっと伸びた鼻筋。優しそうな瞳が瞼に隠される。
「ん……。」
僕は先生と口づけを交わした。
水をなみなみと注いだバケツを振り回すようにして水をぶちまける。透明な液体が土に当たってはじけ、しみこんでいく。
本来、このような水の与え方はすべきではない。植物の根に不要なダメージを与えるからだ。
しかし、彼女が育てている花は皆丈夫で果てしなく手荒に扱っても全く問題ない。
それどころか多少ストレスを与えることでより強く美しく育つのだ。
「ふん?」
水でびしゃびしゃになった植物に浮かんだ白い斑点に気づく。70年ほど育ててきた経験からこのようなものは病気以外にないとわかった。
「珍しいねぇ……。治すのは面倒なのだけれど、手を打たなければ全滅してしまう……。さてさて。」
どうしたものか。特効薬は材料の性質上市販しておらず、自作するしかない。方法は確立されているうえに何度か作ったことはある。しかし……。
「若い男の精液……。それもしばらく禁欲生活をさせた男のか……。しまったねぇ、バイトの子はこの間やめちゃったし、どうしようかねぇ。」
彼女のもとでアルバイトをしていた少年がいたが、一身上の都合で退職してしまったのだ。何か問題のあることをしてしまっただろうかと悩んだが、街で見かけて得心した。
白蛇と手をつないで歩いている姿を見たからだ。大方、少年が気を遣って退職したのだろう。彼との間には何もないのだが、ラミアの嫉妬深さは尋常ではない。
自らの伴侶のためにほかの仕事を探す。なかなかできないことだ。ナイスガイである。
そこまで思い返して彼女は思い浮かんだ。
一人いるじゃないか。もう一つの仕事先に。
「さて、テストは全員もらったな。」
僕の周りで友達たちが数字に一喜一憂している。何のことはない、点数などただの数字であり、極論すればインクの染みなのだ。何も気にすることはない。
誰にも見られないように鞄の中に答案用紙をしまおうとすると、隣からキャンキャンとした高い声が聞こえてきた。パイロゥのツムギだ。
「42点んん!?ヤバくない?バカじゃんか!」
「語呂合わせならヤバいかもしれない。死につながるから。でもこれはただのインクの染みだから大丈夫。赤いのはインクだけ。多分君の彼氏もそう言う。そうだよね。」
後ろからふざけたトーンの声がした。ツムギの彼氏、ウミだ。
「つまり俺は彼氏じゃなかった……!?ナツキ、彼女いない同志で海に行こう。海のヒト達はおおらかで優しいしな!こんな紙切れじゃ人生は左右できないって教えてくれるさ!」
「ほらね。去年まで彼女いない同盟だった男たちの友情は固い。……ん?」
ツムギがウミの答案を奪い、僕に渡してくる。84点。
「友情はもろいな、ウミ。ツムギにエナジードレインされて死ね。」
「キャハハハハ!ありがと、ヒビキ!ウミ、今日は天国見せてあげる!」
ツムギはウミの顔に手を当てるとエナジードレインを行う。ウミはエナジーを吸い取られながら嬌声を上げる。その隙に僕はツムギの答案を奪い、点数を確認した。
98点。失点は誤字によるものだった。なぜ……。
「さ、静かにしたまえ。エナジードレインはするなとは言わないがバレないようにやるように。これから授業を始めるが最低点数だった42点は放課後、
すべての用事が終わった後に理科準備室に来るように。」
おやおや。
教室の掃除中、ヘルハウンドのホムラが声をかけてきた。ウルフ族は狂暴だと思っていたが、話してみると意外と気さくで親しみやすいので僕は結構好きだ。
「ナツキ、何かやったのか?ユーシェン先生に呼ばれるなんて。」
「ん……、記憶にないかな。逆ナンかも。いやそれはない。」
「42点だもんなぁ。あたしならイヤだな。」
このアマぁ……!
「あたしたちの感覚だと頭の悪い男はイヤだ。友達ならともかく、彼氏はなー。」
「なーんでー?養ってくんないから?」
「あはは、違う違う。あたしたちにとって人間の男なんて弱っちいんだ、頭良くないと生きてけないくらい。しかもバカな男に振り回されて群れが死んじゃう話はたくさんある。」
「ふうん。あ、掃き掃除終わったよ。」
「よし、ごみ捨てに行ってくれ、机は片付けとく。すぐ終わるだろうし、捨てたらユーシェン先生の所に行っていいぞ。」
「はーい、ママありがとー!」
「うん、お前があたしの子供だったら42点なんて情けない点数はとらせないな。」
そんなに悪いか……?赤点じゃないし……。先生に呼ばれたけど。
廊下に出ると隅に小柄な生徒が寝そべって勉強していた。雑巾で床掃除をしたばかりなので制服が濡れてしまっている。
名前は知らないがホムラとキスしているのを見たことがある。多分彼氏くんだろう。彼は頭が良いのだろうか?
「もう一人になったよ。ホムラさん待ちでしょ?」
声をかけるとわたわたとした様子で本を片付けた。背表紙はなんだか読めない文字で書いており、
ちらりと見えたノートはよくわからない図形と計算式らしきものが書かれていた。やはり頭がよさそうということしかわからない。我ながらバカな感想だ。
「あっ、先輩。教えてくれてありがとうございます!」
びし、と袖余りの手が敬礼をしてちょこちょことホムラのもとに走っていった。眼鏡と童顔が可愛らしい。
先輩、中等部か……ショタコンなのかな?まあ、見た目は犯罪的だが通報はされないんじゃなかろうか。
理科準備室は2階の最奥にある。日当たりは良いがあまり掃除されていないのか、表札に蜘蛛の巣がかかっている。
くすんだ色のドアをノックすると穏やかで優しげな声がドアの向こうから聞こえた。
「開いてるよ。入りたまえ。」
「失礼します。」
古びた引き戸は手入れされていないのか、がたがたと揺れながら開いた。視界の隅で垂れて来た蜘蛛が慌てたように床を這ってどこかへと消えていく。
入ってすぐに白澤のユーシェン先生がいた。先生がこちらを振り向いたとき、角から下げられた魔除けの鈴が揺れる。
りん。
涼やかな音が鳴った。
ユーシェン先生は煙草を灰皿に押し付けて消し、穏やかに微笑む。
「うん、よく来たねぇ。もうすこし遅れるんじゃあないかと思ったんだけど。」
「せんせーによばれたので早く来ました!」
「感心、感心。だからと言ってテストの点数には手心は加えないけれど。」
ちっ。
僕は近くにある椅子を引き寄せて先生の体面に座る。正面を見るとたっぷりとした乳房があるのでなんだか気恥ずかしく、口もとのあたりを見る。
肉厚で柔らかそうな唇が動いた。それ自体は人も魔物も行う動作だが、やけに扇情的に感じてしまう。
「さて、君は彼女やパートナーといった存在はいないね?」
はて?そんなことはみればわかるはずだけど。
先生の言ったとおり、僕にそういった相手はいない。何しろ、友人の魔物娘全員が誰かしらといい仲になっているのだ。
今までも何となくあぶれてしまって恵まれていない。進学したらそれなりに出会いもあると思っていたのに。僕は事実を答えた。
「いないです。もしかしたらいるかもですけど見たことはないですね。」
その言葉を聞き、先生の笑みはさらに深くなったような気がした。
「うん。実は君にしかできないことがあってね。手伝ってはくれないかな?」
「……?できることならなんでもやりますけど……。」
先生は立ち上がるとゆっくりと僕に近づき、白く細い指が僕の顎を包む。
「わ……。」
心臓が跳ね上がる。なにせ女性に触れられるのは慣れていない。直近で思い出せるのは春の体育祭でツムギと手をつないで走ったことだった。
種目は借り物競争。お題は彼氏の親友。
その時はこんな感情はなく、仲の良い友人と触れ合う喜びしかなかった。しかし、先生の手はその感触とは明らかに違う。
先生の瞳が眼鏡越しに笑う。
「嬉しいよ。実はだねぇ、ちょっとした用事で君の精液が欲しいんだ。」
精液。
サキュバスの主食であり、先生の主食ではないはずだけど……。
なぜかを問いただそうとするも先生の艶やかな唇とふくよかな乳房、ハリのある肌が目に入った瞬間に僕は問う言葉を失った。
「……わかり、ました……。」
「ふふふ、じゃあ目をつむってくれるかな……?」
先生が耳に顔を近づけてひそやかに話すと、吐息が耳にかかり鳥肌が立つ。息を吸うと甘い匂いが鼻に飛び込んでくる。
年上の女性の魅力をふんだんに味わい、僕の肉棒は痛いほどに張り詰めていた。
名残惜しい気持ちを残しながら瞼を閉じるとかちゃかちゃとベルトが外され、ズボンと一緒に下着が降ろされる。
硬くなった肉棒はズボンの中から初夏の涼しい空気の中に開放される。それは先生の目の前に僕の性器が晒されることであり、気持ちよさと同時に恥ずかしさに襲われた。
「ふ〜っ。」
先生の吐息が僕のペニスに吹きかけられ、優しい刺激に僕は腰を振ってしまう。
「あっ、やあっあっ。」
「っく、ふふ。息を吹きかけただけで気持ちいいのかな?」
「あっあっ、そんなこと、ないですっ。」
震える腰に何かが巻き付いてくると、柔らかくペニスを包んでしまう。暖かくぬめったそれは悩ましくペニスを刺激する。
「駄目、駄目、せんせい、だめですぅ……っ。」
かくかくと腰が震えるが、射精した時の放出感はない。それどころか下半身に熱いものがたまるばかりで、快感はあるが射精の満足感はない。
「ふふ、だいぶ早かったな。さ、目を開けたまえ。」
「え……?」
僕の腰には薄いナメクジのようなものが巻き付き、ペニスを覆っていた。
「こ、これ、なんです?ナメクジみたいな……。」
「貞操守護生命体のヤチガサキちゃんだ。知能は賢い犬くらいで私の命令には従い、ほかのヒトとも簡単な意思相通ができる。
ご飯はなんでも食べるが接触している人間男性の射精しそうな感覚を食べるのを一番好む。この時、人間男性は射精せずに寸止めされた感覚を味わう。」
「は、はあ……。」
「ヤチガサキちゃんは君の射精を止めることで美味しいご飯を食べることができ、たっぷり寸止めされた精液は私が必要としている。わかったかい?」
「それって、つまり……。」
「そう、君にはこれから強制射精禁止生活を送ってもらう。もちろん終わった後には満足するまでオモラシさせてあげようか。」
「や、やだぁ……。すぐイきたいですよぉ……。」
僕はヤチガサキちゃんと自分の体の境目に指を潜り込ませようとするが、ヤチガサキちゃんはぴったりと肌に吸い付いてはがすことはできない。
「せんせぇ、とって、とってぇぇ……。」
「安心したまえ。射精できないこと以外健康に影響はない。ヤチガサキちゃんに離れてもらうこと自体は私が命令すればいいのだが……。」
先生の顔がにんまりと笑う。
「先ほど言った通り、私は君の精液が欲しいのでねぇ。残念だが諦めてくれたまえ。それと言っては何だが、射精するまで毎日楽しませてあげようじゃないか。」
先生は僕の体をひょいと抱え上げ、近くのソファに対面座位の形で座る。視覚は大きく重量感のある乳肉、嗅覚は甘い石鹸の匂い、触覚は全身に伝わる女性の感触に支配されてしまった。
「まあ、君の精液が欲しいといったがただの精液じゃあない。5日ほど禁欲生活……俗に言うオナ禁をした後の精液が欲しいんだ。」
「それならそうと言ってくれれば……。ふぁぁぁ、きもちいい……。」
呼吸とともに揺れる柔らかそうな肉体に抗えず、僕は顔を胸にうずめてしまう。息を吸うと肺一杯に先生の匂いが充満し、暖かく優しい感触に充血したペニスが脈動する。
「そういって何とかなりそうならやっているさ。君はこのあたりでも珍しい、匂いのしない男子。つまりは童貞少年だからね。せっかく貯めたのに射精されるのはもったいない。そうだね?」
「はぅぅぅ……。駄目、また出ちゃいますぅ……。」
先生の豊満な肉体にしがみつき、射精を求めて腰を擦り付けてしまう。その痴態を先生はくすくすと笑い、僕の頭をなでる。その優しさを感じるしぐさに耐えられなくなってしまう。
「あっ、イく、イく……っ。せんせい、せんせい……っ。」
勝手に腰がへこへこと震えながら絶頂を味わおうとするが、射精感が訪れることはない。ヤチガサキちゃんが僕の感覚を自らの食事としているのだろう。
「あ——―—!!イかせて、イかせてぇぇぇ!!」
不完全燃焼の快感と、自分を包み込んでいる女性に性器を支配された屈辱感が沸き上がり、僕はくぐもった絶叫を上げながら先生の体に腰を擦り付ける。
かくかくと情けなく腰を動かす僕を眺め、先生はけらけらと笑った。
「ははは、健康で何より。ヤチガサキちゃんも喜んでいる。いままで合成フードだけだったからねぇ。これだけでも君を呼んだ価値があるというものだが……。」
先生の手が僕の髪の毛を掴み、ぐい、と上を向かせる。抗うこともできずに眼鏡のレンズ越しに先生と目が合う。黒い瞳が僕の痴態を観察していることを意識し、少しでも止めようとしてしまう。
それを知ってか知らずか、先生はゆるゆると足を動かして僕の股間に優しい刺激を送ってくる。
「ほしいのは精液なんだ。たっぷりと寸止めされて、熟成しきった君の精液なんだ。それをほかの魔物娘に取られてしまっては面白くない……。」
「あっあっあっ……。やめて、やめて下さい……。駄目です、駄目ですぅぅっ……。」
性器に与えられる刺激に耐えられず、僕は先生の体にしがみついてへこへこと腰を振る。どういうわけかヤチガサキちゃんの感触ではなく先生の衣服と体温をダイレクトにペニスで味わう。
何もなければ射精ができたはずなのに、ヤチガサキちゃんのおかげでただ痴態を曝しただけに終わってしまい、先生に憫笑されてしまった。
にやにやと笑う先生は僕の頭をなでながら話す。
「そこでだ。ほかの魔物のちょっかいを防ぐために君はわたしの物だと示す必要がある。それにはどうしたらいいと思う?」
「せんせっ、せんせぇ……。すき、好きです。だからイかせて、射精させてください……。」
「そう。ほかの魔物に言い寄られてもそう言えるように君の体に刻み込む必要があるわけだ。一番いいのはよからぬ考えを以て君に近づいた魔物が君の主人に自ら気づくことだがねぇ。」
「はぅぅぅ……。せんせい、せんせい、気持ちいいです……。だから、だからぁぁぁっ……っ。」
先生の柔らかな乳房に顔をうずめながらすべすべとした服の感触を男根で楽しむ。先走りが潤滑油の役割を果たしてびくびくと肉棒が震える。
やはり射精はしない。先生は呆れたように笑った。
「おやおや、私は何もしていないのだけれど……。もう4度目のオモラシかな?まぁ、ヤチガサキちゃんのおかげで射精はできないがねぇ。ふふ、君が気持ちよくなるたびに私の匂いが染みついて、熟成していくな?」
「うあああ……。イヤだ、イヤだぁ……。イかせて、イかせてください……。お願いします、お願いしますぅ……っ。」
「ふふ、これ以上は酷かな?さ、起きてズボンを穿きたまえ。」
先生はそう言いながら僕のズボンを上げ、ベルトを締めてくれた。限界まで張り詰めたペニスはズボンに収まったが、萎えることはなくテントを張ったままだった。
白く細長い指が硬くなったままの性器をからかうように撫でる。制服越しに先生の指先を感じ、腰が引けてしまう。
「まだ硬いままだねぇ。若いのは悪いことじゃあないけど、ほかの魔物に射精させられないように。」
「あ、ふぁぁ、わかりました、頑張って我慢しますぅぅ……。」
こうして僕は欲情を抑えながら帰路についたのだった―――。
はっ、はっ、がああああ!ひィ、ひああああ―――!!
開けられた窓からいつも通りに父親の嬌声が届く。ある程度僕が成長したからなのか、父さんと母さんは毎日のように性交をしている。
両親の仲が良いのは良いことだけれど、流石にうるさい。だからと言って窓を閉めると何となくむっとした感じがしてイヤだ。
そんなわけで僕は、天気が良い日は窓をいつも開けている。
蛍光灯の白い光の中で僕はパンツを脱ぎ、ヤチガサキちゃんを見る。薄い橙色の生物は性器を守るようにまとわりついている。
その生物は僕の視線を感じたのか、触角を揺らし、黒い点のような目をこちらに向ける。
「うーん、ヤチガサキちゃんかぁ。」
つぶやきながら指先でヤチガサキちゃんに生えた2対の触角の間を撫でる。一緒に風呂に入った際に粘液が落ちたのか、ぬめった感触はない。
力をこめれば柔らかく、ぐにぐにとした奇妙な感触が指に伝わった。催促するようにヤチガサキちゃんの触角が指に触れる。
「短い間だけどよろしく。すこし手加減してくれるとありがたいけど、してくれなさそうだなぁ。」
当然だ、とでも言いたげにヤチガサキちゃんの触手が反った。
僕はパンツを穿くと電気を消した。今日は宿題もなく、テストも近くない。先生にたくさんいじめられて疲れたし早めに寝よう。
ベッドに入ると即座に睡魔がやってきた。射精していなくてもこんなに疲れるのか……。僕はこれからも先生に耐えられるだろうか?
「さて、これはどういうことかな。」
僕は先生の前で全裸になり、正座をしていた。
優しさと胡散臭さが同居していた先生の雰囲気はどこへいったのか。無表情に僕を睨みつけている。
「ごめんなさい。」
僕は素直に謝罪の言葉を口にした。何に怒っているのかがわからないので取り合えず謝ったのだ。
先生は膝をつき、僕に目線を合わせる。瞳の奥には怒りの炎が燃えていた。
「謝罪の言葉が欲しいんじゃあない。どういうことか、説明が欲しいんだ。ヤチガサキちゃんはどうしてこうなっているのかな。」
「え……。」
その言葉を受けて僕は初めて自分のペニスを見た。小さく縮こまっているモノは外気に曝されており、ヤチガサキちゃんの姿はない。
視線を動かすと付近の床にヤチガサキちゃんは潰れてしまっており、ぴくぴくと触手が痙攣している。
「し、知らないです。僕がヤチガサキちゃんを外せないのは知ってるじゃないですか……!」
「しかしだ、現に君の体から離れてそこで潰れている。大方、君が何かやったのだろう?答えたくないのなら答えたくなるようにしてあげようか。」
「へ……。」
先生は僕を押し倒すと両手を押さえつける。この時に先生の体と密着し、素肌に衣服がしゅるしゅると擦れ、成熟した女性の柔らかさに襲われる。
「わ、ふぁぁ……。気持ちいい……。」
「変態め。押さえつけられただけで欲情するとはね。」
先生の指先が内腿をなぞり、ゆっくりと性器に近づいてくる。たったそれだけの動作なのに、海綿体に血流が集中して僕のペニスはむくむくと鎌首をもたげていく。
「あ―――、ふふ、あはははは!ふふ、ははははは!」
不意に脇を筆でなぞられるような感覚に襲われ、笑いだしてしまう。
「ふん、ヤチガサキちゃんを潰しておいて笑うのかい。ほら、窒息するまでしてあげよう。」
「あははは、ははは、はーっははは!やめ、ふふ、ひあああはははは!」
先生は僕に馬乗りになって脇を両手で、足の裏はふわふわの尻尾でくすぐってくる。
身をよじって指から逃れようとしても先生の重量感のある肉体から這い出ることができずびくびくと震えるだけだった。
「おや、虐待されているのに気持ちよくなってしまうとはね。情けない、恥ずかしいと思わないのかな?」
完全に勃起したペニスが先生のお尻に圧迫され、先走り汁が衣服を湿らせていた。嘲るように笑うと先生は腰をくねらせ、さらなる快感をペニスに与えてくる。
「あっ、駄目ッ、それ、気持ちいい……。」
ペニスをすりつぶすようにして先生は腰をグラインドさせ、激しい圧迫刺激に我慢ができなくなり―――。
「おっと、残念だったねぇ。」
あと2秒もあればたっぷりと射精できたはずなのに―――。
先生はすっと立ち上がり、心地よい重量感と激しい快楽は消えてしまう。
刺激を取り上げられたペニスは震える腰に合わせ、ぴょこぴょこと揺れた。
「な、なんでぇ……?」
「射精したいのかい?なら、なぜヤチガサキちゃんをひどい目に合わせたのか、しっかり話してもらおうか。」
「だ、だから知らないですって……、ははははは!あはっ、あははは!」
先生は再度僕に馬乗りになると脇をくすぐってくる。先生に見下ろされて支配される感覚に溺れてしまい、何も触れられていないはずのペニスが脈動する。
「あッあっあ……!だめだめだめ、でちゃう、でちゃうよぉ……!」
押さえつけている掌を握り返し、射精に備えて身体を固くすると―――。
「はっ?」
目を開けると朝日が部屋に射しこみ、雀が鳴いていた。
……夢?僕はおそるおそるパンツをずらすとヤチガサキちゃんは健在だった。差し込む朝日がまぶしいのか、触手を縮めて丸まるように隠れてしまう。
いいか悪いかはわからないけれど夢精もしていない。ヤチガサキちゃんのおかげだろう。ありがとうをこめて撫でると、触手が指にすり寄ってきてなんだか可愛く思えてしまった。
朝、いつもより早く登校して理科準備室へ向かい扉を開く。
すると先生が椅子に腰かけながら煙草を吸っていた。先生は顔を背けてふ、と煙を吐くと灰皿に煙草を押し付けてもみ消す。
「うん?早いねぇ、こちらから会いに行かなくてもいいのは楽だ。」
「おはようございます。質問いいですか?」
「私の好みの男かい?それとも禁欲生活のことかい?」
先生の好みの男も気になるけど。
「ヤチガサキちゃんです。その、何か気を付けた方がいいこととかありますか?よく考えると常時ペットと一緒にいるものじゃないですか。急に不安になってしまって。」
「優しいねぇ。それじゃソファに座ってくれないか。」
言われたとおりにソファに座ると、少しへたったスプリングがきしんだ音を立てた。表面は日焼けして劣化しており、色落ちしている。
「さて……。」
先生は僕に密着するように座ると、僕の肩に手をまわして抱き寄せてきた。石鹸と煙草の混ざった先生の匂いにどきりとして体を固くしてしまう。
「ふふ、そう緊張しなくても良い……。リラックスするには深呼吸するといい。ほら、すー、はー。すー……、はー……。」
言われたとおりに息を吸い込むと先生の匂いに包まれ、恍惚に浸ってしまう。一緒に上下する先生の胸がかすかに腕に当たり、先生の肉体と自らの痴態を思い出してしまう。
先生のたっぷりとした双丘に顔をうずめて太ももに股間を擦り付けた感触、夢の中で先生にくすぐられながら射精しかけたこと―――。
すでにペニスはズボンを押し上げて自己主張をしていた。隣から先生の押し殺したような笑い声が聞こえ、羞恥心に震えてしまう。
「っく、ふふふ。ほら、腰を上げてくれ。ズボンを下すから。」
先生は器用に片手でベルトを外して尻尾と片手で僕のパンツとズボンを下ろすと、パンツに引っ掛かったペニスがバネ仕掛けのように飛び出す。
その様を見た先生がくすくすと笑いながら、ふんわりとペニスを握った。ヤチガサキちゃんに包まれているはずなのに、先生の掌に握られている感触がペニスに伝わる。
「あっ、んん……。うああああ……。」
「ほら、喘ぐのも良いがしっかり見たまえ。ヤチガサキちゃんは撫でられるのも好きでねぇ。優しく撫でてあげると喜ぶ。」
そういいながら先生は小動物を慈しむような手つきで僕のペニスを撫でさする。
先生の手は僕のペニスをすっかり包み込んでしまっており、微妙な力加減で扱かれると指でできた凹凸が蕩けそうな感触を生み出していた。
「それと、ヤチガサキちゃんはかなり丈夫でねぇ。例えば……。」
先生の手の力が徐々に増していき、万力でつぶされそうなほどの力になるが痛みはない。
それどころか強力な圧迫刺激となり、たまらず僕は両手で先生にしがみついて腰を動かしてしまう。
「あっ、ふああああ……。せんせい、せんせい……。」
「こんな風に強く握ってもヤチガサキちゃんは問題ない。受けた刺激をペニスが受けても大丈夫なくらいに落としてペニスに与えてくれる。
人間が死ぬくらいの衝撃を受ければ、傷つくだろうけれどねぇ。事故には気を付けて生活したまえ。」
「だったら……。刺激をなくすようにしてください……。あっ、これ、だめぇ……。イけないのに、イけないのにぃぃ……。」
先生の衣服を強く握り、布に包まれた胸に顔をうずめるようにして射精に備えるも―――。
分かっていた通り射精はできず、ただ不発のもどかしさだけが下腹に残った。
「うぅぅぅ……。イヤだ、イヤだぁ……。出したいよぉ……。せんせえ、せんせえ……。あっ、やっ、ああああぁ……。」
先生は人差し指と親指で輪を作り、カリ首をこすりあげてきた。その刺激に情けなく喘いでしまう。
「ふふふ、ヤチガサキちゃんはここを撫でられるのが好きなのだよ。ほら、しっかり覚えたまえ。位置がずれるから腰は動かさないように」
先生は肉棒から手を離すと僕の手を取ってペニスにあてがう。
「ほら、このあたり。今は君のおちんちんのくびれのところだ。ここをわっかで撫でてあげる。」
「はうぅぅぅ……。気持ちいい、気持ちいいですぅ……。」
僕は先生に動かされるまま、自分のペニスのカリ首を二本の指で撫でる。
絶頂を抑え込まれたペニスはぴくぴくと震え、まとわりついているヤチガサキちゃんはどこか気持ちよさげに触手を揺らしていた。
僕はと言えば密着する先生の肉体、肺を満たす香りに酔いしれ、重ねられた先生の手の感触を味わっていた。
「こうしておちんちんを刺激していると、なんだか君の自慰を手伝っているみたいだねぇ。」
おちんちんと聞いた瞬間に僕のペニスがぴくりと震えた。
「おや。今、君のおちんちんが震えたねぇ。ふふふ、なんでかなぁ?」
「ああああ……。わからないです……。」
「ふむ……。わからないかぁ……。君はヤチガサキちゃんを撫でていたまえ。さて、この辺を撫でていた時だったかな?」
先生の滑らかな指が肉棒の根元を包み、甘やかすように圧迫しながら僕の指に触れるまで動き、また下がる。
この動作の繰り返しで僕はすっかり蕩けてしまい、ヤチガサキちゃんを撫でるのを放棄して先生にしがみついて甘えてしまう。
「はい。しこ、しこ、しこ……。おちんちん気持ちよさそうだねぇ。っふふ。」
「あああぁぁぁ……。気持ちいい、気持ちいい……。せんせえ、せんせえ、すき、好きですぅ……。」
「はは、おませさんだねぇ。ほら、ここが一番効くんだろう?」
先ほどと同じようにカリ首を二本の指が優しく包み、慈しむようにゆっくりと上下する。
「ふあぁぁぁ……。もっと、もっとぉ……。あぅっ、それ、だめぇっ……!」
ゆっくりと動いていた指のリングは素早く細かい動きに変わり、激しい摩擦刺激を与えてくる。
「ほら、ほら、ほぉら……。ふふふ、ずいぶん可愛く喘ぐねぇ。」
「だめだめだめぇ……っ!やめて、やめて……っ!」
先生の胸に顔をうずめながら快楽から逃げようと腰を引こうとするも、ふかふかとした毛におおわれた脚に押さえつけられてしまう。
「ほら、おちんちんびくびく我慢したらキスしてあげるからねえ。できるかなぁ?我慢。」
「ふ、ううぅぅぅ……っ!ぐうぅぅ……っ!」
僕は何とか下腹部に力をこめて絶頂を我慢しようとする。すると、先生は馬乗りになり、僕の頭部をぎゅっと抱き締めてきた。
「あっあ、ふあぁぁぁ……。おっぱい、気持ちいい……。」
「ふふ、もうオモラシしていいよ。気持ちいいと思うなあ、おちんちんからぴゅるる〜って射精するのはねぇ。」
「え……。」
僕は思わず先生の顔を見た。彼女はにっこりと優しく微笑み、肉厚な唇をキスの形にして誘惑する。
「あ、出ちゃう……。せんせ、せんせぇ……っ!」
僕が射精のために身体を固くすると、先生はぱっと僕から離れてしまった。体を包んでいた温もりと柔らかさがなくなり、途端に心細くなってしまう。
「えっえっえっ。やだ、やだっ。せんせい、せんせ……っ!」
びくびくとペニスが震える。射精は不発だった。
先生は意地悪そうな笑みを浮かべており、笑いながら再度僕を抱き締め、僕の頭を撫でてくれる。
「っく、ふふふ、オモラシできなくて残念だったねぇ。でももう行かないと遅刻になってしまうから。」
「え―――。」
僕が時計を見ると、もう行かないといけない時間だった。とても長い間先生にいじめられていた気がするのに、これしか時間が立っていないのか。
「また放課後に来たまえ。君に余計な魔物が寄り付かないようにしないといけないからねぇ。」
「またいじめられるんです?僕。」
先生は面白そうに笑った。
「おや、甘やかしているつもりなのだがね。」
「じゃあ今日はもっと甘やかしてください。ありがとうございました。」
僕はズボンを穿くと教室に向かった。
ユーシェンは部屋に一人たたずむ。
手持無沙汰になったらしく、机の上に置いてある煙草を手に取り、火をつけた。
この煙草は昂った精神を落ち着け、リラックスさせる効果がある。彼女はたっぷりと煙を吸い込むと肺に落とし、ふ、と吐き出した。
思い出すのはナツキの痴態。
精液確保のため、昨日から協力してもらっている少年だ。小柄で華奢な体つき、顔はまずくない。マゾヒストで甘え好き。ペニスは可愛らしいサイズ。
昨日から彼の喘ぎ声が忘れられないのだ。
「ふ。」
ユーシェンは薄く笑った。彼が言った、好きという言葉に心臓が跳ね上がる思いがしたのだ。
射精させてやらなかったからか、捨て台詞は拗ねたような可愛らしいもので、思い出すたびに頬が緩む。
禁欲は上手くいくように今日の放課後は甘えさせてやろう。
彼女は吸い切った煙草を灰皿に置き、新しい煙草に火をつけた。
昼休み。僕はツムギとウミの3人で机をくっつけ、食事をしている。
僕のお弁当は母親が作ったものだ。母さんは大百足だからか、僕のお弁当も肉が多くてうれしい。
ウミはお弁当どころか重箱に米と魚、野菜、肉、ポットに味噌汁と一人だけ定食屋を開き、ものすごい勢いで食べている。
パイロゥとか精を主食にする魔物と付き合うと大変なんだろうな、と思う。運動しなくてはいけないから。
ツムギは何も食べないで水を飲んでいる。ふつうの食事もとれるけど、ウミがいるのでその精を主食にしたいと言っていた。
ツムギが一心不乱に食事をするウミを愛しそうに眺めた後、こちらを向いて好色そうな笑みを浮かべた。
「なー、ナツキさあ、誰かとヤった?」
「ッ!?ごほ、げほっ!」
「エネルギィ!」
僕の口から飛んだ唐揚げは空中でウミがキャッチし、自分の口に運ぶ。器用だ。大きな重箱では足りないのだろうか?ツムギも手加減してあげたらいいのに。
「なんかさあ、昨日と匂いが違うんだよねー。昨日まで童貞男子です☆みたいなかわいい匂いだったのに。」
「え、僕そんな匂いしてたの?」
何となく気になって自分の匂いを嗅ぐがわからない。なにせ食事時なのだ。
カップ麺や仕出し弁当、菓子パン、我慢できずに彼氏を襲っているサキュバスなど、様々な食事の香りが混ざっている。
多少変なにおいがするが、これはこれでお腹が減る匂いだ。
「わからん。ご飯の匂いしかしない。ウミはどう?」
「はぐ、もぐ。もががが。ごく。ずずずず、んぐ。ふー。あぐ。むぐむぐ。」
ウミは口の中にものを詰め込みながらしゃべる。咀嚼と嚥下、会話を同時に行おうとしているが、単純に行儀が悪いだけだ。
しかも口内の様子が見えないように手で隠している。そこまでやるなら身振り手振りもあるだろうに、バカなのだろうか。
ツムギが頬杖をついて呆れたように言う。
「落ち着いて食べて飲み込んでから喋りなよ……。」
うん。話がそれていってるな。僕は一口サイズのとんかつを飲み込んで話す。
「ツムギが搾り取りすぎるからでしょ。手加減してあげな?」
「ナツキも相手に手加減してっていいな?」
「や、甘やかしてるって言ってたけど。……あっ?」
「もぐ、ずるずる!がばばば、がつがつ!」
「へぇ〜、やっぱ相手できたんだぁ〜!」
しまった。僕はバカか?そしてウミは口内の物を飲み込んで喋れ。
「ね、だれだれ?クラスの子じゃないよね。他校の子?それとも大人の魔物?」
「もぐもぐ!」
飲み込め。
「いや……。秘密にしてとは言われてないけど、言ったらまずい気がするから秘密。」
ツムギが目を細めた。
「言ったらまずいんだぁ……。年上でそれなりに社会的な地位がある魔物だよね。」
「はぐ、もぐもぐ!ずばばば、ごくごく!」
「うん。ちょっと集中するね。匂いがあるから知ってる魔物だったらわかるはず……。」
このバカの言ってることがわかるのか……。僕はウミと親友だと思っていたけど、自称親友なのかも……。
ツムギは僕に抱き着くようにして鼻をすんすんとさせる。ツムギもサキュバス種なのにここまで密着されてもドキドキしない。
前まではこんなに近づくと心臓がうるさいほどだったのに。
「なんか失礼な匂い、あたしのことバカにしてない?」
「言いがかりだよ……。」
「ふーん、前まではあたしに抱き着かれてちんちん固くしてドキドキしてたのに?」
バレてた!ウミの方を見ると頷きながら食事を詰め込んでいる。
「もぐ。んぐ。ふーふー、ずずず。」
動揺する僕を無視してツムギは匂いを嗅ぎ続ける。何となく気恥ずかしく、周りを見るとホムラと目があった。彼女の机の上には容器に入った生肉がおいてある。
ホムラは机の中からノートを取り出すと、さらさらと字を書いてこちらに見せてくる。
『彼氏の目前でそれはレベルが高い』
赤く染まった歯を剥き出しにして笑った。なかなかに怖い。
ツムギが僕の肩を叩き、耳元で囁く。
「これ、わからないって言った方がいいよね?イエスならあたしの左手を掴んで。」
僕は彼女の左手を掴んだ。
「わかった。言ってよくなったら教えてね。」
ツムギは僕からぱっと離れるとウミの耳を借りて何かを囁いた。
「もぐ、ごくん!」
ウミは一際力強く咀嚼し、飲み込んだ。
いや、飲み込んだんだから喋れよ。
はぁぁぁ〜〜〜。
重い足取りで僕は理科準備室へ向かう。
またいじめられるのだろうか?いや、朝になんか捨て台詞みたいなこと言っちゃったし、ぎすぎすしたら嫌だなぁ。
いや、もしかしたら滅茶苦茶に甘やかしてもらえるかもしれない。
緊張と期待で胸が膨らむ。僕は扉の前で深呼吸し、ノックをした。
「入りたまえ。」
「失礼します。」
がたがたと引き戸を開けると先生が煙草を吸っていた。今まで先生の匂いは甘い匂いだったが、辛みのある刺激的な匂いになっている。
「煙草変えたんですか?」
「ん、ああ。よく気づいたねぇ。」
先生が顔を背けて煙を吐く。角につけられた鈴が揺れ、風鈴のような夏の音が鳴った。
僕は先生の白い手に見とれてしまう。朝、この手が僕のペニスを撫で擦っていたことを思い出し、甘い感触と自らの痴態がよみがえる。
「君も吸ってみるかい?」
「え、じゃあ吸ってみます。」
「ふ、悪い子め。秘密だ、二人きりのな。」
煙草を受け取ろうとして手を差し出すが、ソファに座った先生は両手を広げるだけだった。
「さ、膝の上に座りたまえ。」
「え……。いや、それは……。」
「さ。」
催促するように先生は両手を揺らした。にやにやと笑っており、揶揄おうとしているのだろう。
ここで引くとなんだか負けたような気がするので、近くに鞄を置くと先生の膝上に座る。
すると先生は片手で抱きすくめてきた。背中には先生のぬくもりを感じ、ペニスに妖しく響く。
「よしよし。さ、煙草をくわえて息を吸ってみてくれ。」
煙草をくわえて口から大きく息を吸うと、じじ、と音を立てながら煙草の灰が広がる。
同時に大量の煙が肺に流れ込み、スパイスのような香りが広がる。僕はたまらずむせてしまった。
「っ!?ごほ、げっほ!」
「ふふ、ナツキには少し早かったねぇ?ま、吸わないほうがいい。」
先生はくすくす笑いながら自分の口に煙草を戻した。
「げほ、なんで先生は吸ってるんですか?」
「つまらない話だよ。昔、仲の良かった男が煙草好きでねぇ。」
男……。なんだか聞いてはいけないことだったような気がする。胸が締め付けられるような感覚を覚えながらその男について聞いた。
「な、仲の良かった男の人って、どんな人だったんです。」
「さてねぇ。女の過去を根掘り葉掘り聞くのは良くないが、それでも聞きたいかい?」
「いえ……。前の煙草は甘い匂いだったですけど、この煙草はスパイスの匂いがしますね。」
僕は強引に話題を変えた。この話は良くない。今でもその人と付き合いがあるのかとか、どんな人だったのかとかいろいろ聞きたいことはたくさんある。
でも僕と先生は恋人でも何でもないのだ。聞くのは良くないし、聞いたところでいいこともないだろう。
「ああ、匂いは気にするかい?」
「今日友達に匂いが違うって言われたんです。なんか女の匂いがするって。それで、とりあえず秘密にしてってお願いしたんですけど。」
「ああ、ツムギか。まあ、バレたところで私と一緒に小言を言われるくらいだろう。特に秘密にする必要はないが、知らせて回るものでもないねぇ。」
そういうと先生は煙草を灰皿に押し付け、火をもみ消した。
そういえば、昨日も今日の朝も煙草を消した後に始まったんだよな……。
僕は急に先生の体を意識してしまう。下腹に回った手や背中に密着する先生の肉体、後ろから感じる吐息。
血流が下腹部に集中するのがわかる。目線を下に向けると僕のズボンはしっかりとテントを張っており、頂点を先生の手が艶かしく撫でる。
「あっ、はぅぅぅ……。」
「さて、朝言われた通り、今日は君を甘やかそうじゃないか。」
いたずらっぽく笑い、先生は背後から僕をぎゅうっと抱き締める。頭の上に顎が乗っており、体中に先生を感じて何となく安心する。
そして安心と同じくらいに恥ずかしい。なんだか自分がぬいぐるみかペットになったような気がするからだ。
「やっ、せんせい、もっとなでてぇ……。」
僕は撫でられた快楽を忘れられずに先生の手を取り、ズボン越しに擦りつける。
「きもちいい、気持ちいいですぅ……。」
「やれやれ、今日は甘やかしてあげるだけだよ。」
先生は僕の体をくるりと回転させて向かい合わせにする。顔にかかる髪から沸き立つ甘い匂いが体にしみこむ。
「あ、先生の髪、きれい……。いいにおいする……。」
「うん。たくさん甘えると良い。まあ、男を甘やかした経験などないがねぇ。朝もたっぷり寸止めしたからね。ヤチガサキちゃんも満足しただろう。」
「はああぁぁぁ……。せんせい、せんせい……。」
すっかり蕩けてしまった僕は先生の下腹にゆるゆると股間を擦り付け、鼻孔を支配する匂いに酔いしれる。
下半身に熱いものがこみ上げ、僕は先生の体を一際強く抱きしめる。
「あっ、せんせい、せんせい……っ!」
「ちょっと、コラ……。」
先生の体を味わいながら腰をかくかくと擦り付けても射精はできず、ただ燃え切らない感覚がのこる。
しかし僕は構わずに先生に腰を擦り付ける。
「せんせい、せんせい、気持ちいいです……。せんせい……。」
「まったく……。発情した犬みたいだねぇ。今日は甘やかすだけのはずだったのに……。」
先生の手が僕の後頭部を撫でる。それが嬉しくて僕は先生の手に甘えてしまう。
「まだ2日目なのに調教しきってしまったな。こんなに悦んで……。」
白い手が僕の頬を撫でる。絹のような肌がするするとくすぐる感触は僕の脳をどろどろに溶かし、薔薇色に染め上げた。
「はぅぅぅ……。せんせぇ……。」
「ほら、私に体重を預けたまえ。後ろに倒れると危ないからねぇ。」
言われるがままに僕は体重を先生に預ける。両手を先生の体の後ろに回し、まるで抱き合うような体勢だ。
プチプチと先生が僕の制服のボタンを外し、シャツの中に手を入れてくる。素肌に先生の指先を感じながら今朝の夢を思い出してしまう。
「変態め。押さえつけられただけで欲情するとはね。」
「へ―――、せんせ、なんで……?」
先生の口からは今朝見た夢の台詞が飛び出した。目を丸くする僕を押し殺すように笑う声が聞こえた。
「ふふ、図鑑、教科書通りか。私たちは見たり触れたりしたものの情報を読み取れる。君に使う気はなかったが―――。」
先生の指が熱っぽく僕の脇腹をくすぐる。
「ちょっ、せんせい、ははははは!ふっ、くくくううぅぅぅ!」
「まあ、気が緩んでいたのだな。私は意外と君が気に入っているようだ。喜んでくれ。」
「あはははは!あはっ、はーっはははは!あははは、あはあは!ひひひ、せんせ、ちょっと、やめてぇぇ……!」
「おっと。この体勢は危ないな。密着できて好きなのだが。」
先生は体勢を崩した僕を尻尾で支えながらソファへ押し倒した。体にかかる、大人の女性の重みを感じてしまう。
僕を見下ろした先生は唇を舐めてにっこりと笑った。眼鏡の奥の瞳が嗜虐の炎を宿して細くなる。
その視線に射抜かれ、僕の肉棒は固さを増してしまった。先生はゆっくりと眼鏡を外し、ひじ掛けに置いた。
その時、たっぷりとした乳房が僕の顔に当たり、欲情を誘う。
「ふふ。君、私にこうしてほしかったんだろう?」
剥き出しになった僕の胸を先生の指が滑る。
「あっ、ううう……。」
ぞくぞくとした感触が胸から体中を駆け巡る。体を動かして悶えようにも体を先生に押さえつけられて動かせない。
僕は先生の体の下で情けなく震えるだけだった。
「可愛いねぇ……。ほら、押さえつけられているのに、君のおちんちんは固くなっているな……?」
先生が腰をグラインドさせると僕のペニスが甘く圧迫され、蕩けた腰から漏れ出そうになってしまう。
「はぅぅ……。せんせい、それ、すきぃ……。」
「ははは、よっぽど今朝の夢が良かったんだねぇ。ほら、これも好きだろう……。」
ふわふわとした尻尾が僕の顔をくすぐり、しっとり柔らかく滑らかな感触に酔いしれる。
「さて、夢の中では足だったが―――。」
先生は僕を組み伏せたまま器用にズボンだけを下した。顔をくすぐっていた尻尾は離れ、僕の内腿のあたりをなぞる。
「あっ、ああぁぁぁ……。」
たったそれだけの刺激で僕の腰は期待に震え、先生の下での射精を心待ちにしてしまう。
下で悶える僕の姿を見て先生はくすくすと笑い、僕の耳に顔を近づけた。優しい声がささやき、吐息とともに脳を犯していく。
「おちんちん直接触ってあげてないのに気持ちいいねぇ。私の下でオモラシしたいよぉーってぴくぴくしてるよ。ほら、こうしてあげると……。」
先生は腰を小さくひねって微弱な刺激を肉棒に与えた瞬間―――。
「はぅぅぅ……。だめですぅ……。イけないのに、イけないのにぃぃぃ……っ。」
何枚かの布越しに先生の臀部の感触を味わいながら僕は絶頂してしまう。
先生は笑いをかみ殺せず、耳元で小さな笑い声をあげた。
「っくふふふ、おちんちん気持ち良かったねぇ。ヤチガサキちゃんがいるの、わかってるはずなのにねぇ……。」
「うぅぅ……。」
先生に嘲笑され、あまりの羞恥に顔を背けようとする。しかし、先生の手がそれを許さない。
片手で僕の両手を抑えながらもう片方の手で、ぐい、と僕の顎を掴む。
上気した頬に、眼鏡の奥で濡れた瞳と目が合った。
男とセックスしている魔物の瞳だ。僕は先生とセックスしているのだ。意識した瞬間に耐えられなくなってしまった。
「あっ、あああぁぁっ……。また、だめっだめっ……。」
「ほぉら、オモラシするときの顔、私に見せたまえ……。」
ヤチガサキちゃんに射精感を奪われながら先生の臀部に腰を擦り付ける。その感触を楽しむように先生は腰を甘く動かし、強烈な快感を僕に与える。
奪われる快感よりも得られる快感の方が多くなったのか、放出感のないまま2日ぶりに満足感を得ることができた僕は指先が動かないほどに脱力した。
「あ、はぁぁぁ……。」
「ああ、蕩けた君はとても可愛かったよ、ナツキ。」
先生は動けない僕の頬を舐める。温かくぬめった舌が顔を這う感触に恍惚とする。
「ふふ、甘やかすつもりがたっぷりと調教してしまったな。」
しゅるしゅると尻尾がペニスに柔らかく巻き付く。ふわふわとした感触がペニスをくすぐり、極上の喜びを伝えてくる。
「はうぅぅぅ……。気持ちいい……。」
「ヤチガサキちゃんも満足したようだ。もう遅いし今日はこれで終わりだ。家まで送ってあげよう。」
先生は手際よく僕に服を着せていく。なんだか自分が幼児になったような気がして、恥ずかしさと嬉しさがこみ上げた。
「玄関で待っていたまえ。」
ぽふぽふと頭を撫でられる。性感を高めるのではなく、気安さを感じるような撫で方だった。
僕は頭上に置かれた先生の手を取り、頬ずりする。
「ん……。先生の手、すべすべしてて好きです。玄関で待ってますね。」
こうして僕は先生に家まで送ってもらうことになった。
先生が運転するバンの助手席に僕は座っていた。わずかばかり開けられた窓の隙間からは先生が吸う煙草の煙が連なって出ている。
疲れからか僕はシートに深く体を沈ませ、先生の匂いを堪能していた。
「何か食べるかい?」
「あ、お金ないですけど……。」
先生はくすりと笑って灰皿に灰を落とした。
「子供一人くらい、奢ってあげるさ。食べたいものがないのならその辺のレストランに入るけれどねぇ。」
「あ、えーっと。……魚食べたいです。」
「ふむ。食べられないものは?」
「昆虫はダメでした。母親が虫食べる地域の生まれなんですけど、そこの料理でセミとかを煮付けたのが駄目でした。うえーってなっちゃいまして。」
車が赤信号で止まる。先生は煙草の煙を、ふ、と吐き出して笑う。
「虫は嫌いかな?私が子供のころはよく食べたものだけれど。」
「姿が見えなかったら大丈夫なんですよね。触るのは大丈夫なんですけど、食べるとなると。むっ!ってなっちゃいます。先生は虫食べるの平気なんですか?」
「うん。あたりにいるのを捕まえて食べるのはイヤだけどね。」
「あ、やっぱりそうですよね。僕はどうも虫が不衛生に見えてしまって。ほんとはそうじゃないのはわかってるんですけど。」
「ふふ、それで君のお母さんはどうしたのかな。君が煮付けを食べられなくて。」
「笑って虫以外のおかずをくれました。僕が残した虫はお父さんが食べてました。」
先生は笑いながらアクセルを踏んだ。車は穏やかに加速し、ゆったりと走り始める。
「先生は食べられないのあるんですか?霧の大陸だと立つものは親以外、四つ足は机以外とか聞きますけど。」
「ふふ、それは人間の食文化だね。君たちは様々な文化を作り上げる。素晴らしい。」
とん、と煙草を灰皿に落とす。
「もちろん、私たち魔物もその文化を味わったが……。牛はダメだったね。味じゃなくてどうも種族的に食べられないのだと思う。見た瞬間に食べられないとわかったよ。」
「ほかの肉は食べられるんですか?鶏とか豚とか、ワニとか。」
「ああ、ほかの肉は大丈夫だよ。肉自体あまり食べないけどね。普段は野菜を多く食べるねぇ。」
基本は野菜なのにこの体つきなのか。僕はつい胸を凝視してしまう。
その視線に気づいたのか、先生が自分の胸を撫でる。
「これかい?男の子たちの夢が詰まっているのさ。」
「……。」
「……。何か言ってくれないと恥ずかしいんだけどね。」
車が左折し、ファミレスに駐車する。夕飯時なのでなかなか混んでいるが、先生は危なげなく車を止めた。
「わ、すごいですね。父さんだったらやめてますよ。」
「年の功かな。私、君のお父さんの10倍近く生きてるんじゃないか?多分。」
「え……。」
僕は父さんの年齢から先生の年齢を逆算するが、数字と僕の脳の相性が悪いことを痛感した。
「計算の結果、先生が年齢不詳の美女だということがわかりました。」
おかしなことを言うよりもこっちの方がいいだろう。僕の気遣いと裏腹に先生は厳しい一言。
「私の用事が終わったらいつでも来たまえ。算数……、いや、勉強の方法から教えてあげよう。」
しまった。適当なことを言うんじゃなかった。
車から降り、看板を見ると味のある文体で鯖戸亭と書かれている。
さばとてい。バフォメットが立ち上げた、サバトの資金集めを行うためのレストランだ。
いつからか本業よりもうまくいってしまったため、社長のバフォメット達はサバトを投げ捨ててこちらの営業に注力しているという。
「先生、噂知ってます?」
「ん?バフォメット達が本業を放り投げて運営しているという話?あれはホントさ。」
「マジですかぁ〜……。」
バフォメットってもっとカッコいいイメージがあったなぁ〜……。なんだかな〜……。
「味は本物だ。サービスは雑だけど、そこまで求めているわけでもない。ま、従業員たちの生活が成り立ち、サバトの資金が集まるなら彼女らもいいんじゃないか?」
まあ、それもそうか。僕は先生に連れられて店内に入ると、愛想のいい男性店員が出迎えた。
先生は手早く人数と喫煙することを伝え、店員の案内で窓際の席に着く。外を眺めるとオウルメイジが若そうな男を連れて駐車場を飛び立つのが見えた。
周りでは少なめの人数が紫煙をくゆらせており、換気扇が低い音を鳴らしている。
「ふふ、あの部屋はほんとは禁煙なんだ。ばれたら減給だろうな。」
先生はくっくっと笑いながら煙草に火をつけ、僕にメニューを渡した。
「さ、好きなのを頼みたまえ。」
「えっと……。焼きサバ定食で行きます。」
僕がそう伝えると、先生はうなずいて卓上のベルを鳴らした。店の奥からは怒号のような低い声で卓の番号が叫ばれ、呼応する店員たちの絶叫するような返事が響く。
どうもこの店は若い男性店員が多いらしく、変なノリになっているようだ。
「あれ、先生はもう決まったんですか?」
「手を出してみたまえ。」
手を?僕は不思議に思いながら先生に向けて手を差し出すと、先生の白い手が優しく包み込むように握った。温かく滑らかな感触に心臓が跳ね上がる。
「数字を思い浮かべて。当てて見せようか。」
数字。46。理由はなく、おぼろげながら浮かんできた数字だ。
「46、理由はない。どうかな?」
「え、白澤って触ってればそこまでわかるんですか?」
「触っていればね。手を握ったときに君がドキッとしたのもわかったよ。初心な反応を返すねえ。おっと。」
先生がぱっと手を離し、通路側を見る。長身で筋肉質の男性店員が爽やかに笑った。色黒の肌に白い歯がまぶしい。
「お待たせしました、ご注文をどうぞ。」
先生は二人分の食事を注文し、礼を伝えると店員は一礼して去っていった。
「ま、君の心を読むのと同じように、紙に書かれたものなんかもは触るだけで把握できるということさ。」
「それって足でもわかるんですか?」
僕がそう聞くと先生は笑った。
「そうだねぇ。試してみるかい?」
先生の蹄が脛から膝の内側をなぞり内股まで入り込む。
「う……。」
僕が腰を引きながら先生の顔を見ると、レンズ越しに見える瞳が嗜虐的に笑った。
「さ、何か考えてみたまえ。」
「な、何かって……。」
内股を蹄でくすぐられ、店内だというのにペニスは甘く勃起してしまう。口が渇いて視覚は先生の体を凝視し、魅惑的な肉体しか見えなくなる。
僕の物欲しそうな視線に先生はくすりと笑う。
「やれやれ、わかりやすいねぇ。うん?」
先生が怪訝そうな顔を向けた時、通路にはバフォメットが立っていた。あどけなさそうな顔に深いしわが刻まれている。胸元の名札には達筆な平仮名でおーなーと書かれていた。
ぱっと見は山羊の角の生えた幼女なのだが、強烈な威圧感を覚えて総毛立つ。
「失礼、それ以上は個室で行っていただきたいのだが。個室は追加料金が発生するが、宜しいかね?」
先生は足を戻し、おーなーの方を向いた。こちらから見える耳が赤く染まっているのがわかる。
「申し訳ありませんでした。すこし、はしゃいでしまって。」
おーなーは鷹揚にうなずいた。顔に刻まれたしわはなくなり、柔和な笑みに変わる。
「私も夫とデートをするとはしゃぐ。年長者同士、気をつけねばなりませんな。自分の男の痴態をほかの魔物に見せるのも癪ですから。」
彼女はゆっくりと歩きながら僕らに背を向けて歩き始めたが、店員とすれ違うごとに声をかけている。ひょっとして店員すべての名前を憶えているのだろうか?
歩いている彼女の近くでサキュバスが男を押し倒し、逆レイプを試みた。おーなーは虚空から鎌を取り出すとサキュバスを殴り飛ばし、男性に頭を下げる。
床に倒れたサキュバスは魔女たちに抱え上げられ、バックヤードに消えていく。
「ち、ちょっと!私じゃなくてあの男が誘惑したんだって……!サキュバスの近くでウナギ料理なんて!襲われても仕方ないじゃない……!」
サキュバスの悲痛な声がバックヤードに飲み込まれた。
なんだかすごいものを見た気がする。実はこの町は治安が悪いのだろうか?
「びっくりしました。バフォメットって初めて見ましたけど、すーごい威圧感でした。」
先生は煙草をくわえ、ゆっくりと煙を吐いた。
「やれやれ、はしゃぎすぎてしまったねぇ。怒られてしまったよ。」
ぽ、と口をすぼめて吐いた煙は輪の形になり、換気扇に吸い込まれてく。
「サキュバスってウナギ料理駄目なんですか?なんか食べてたお兄ちゃん襲われてましたけど。」
「うん?ウナギは精が付くからね、そこからの連想だよ。ま、ウナギについては俗説だがね。」
「あ、そうなんですか。なんかサキュバスだともっと根拠があるのかなって思っちゃいますよね。性的な事柄についてはすごく信憑性高そうです。」
先生はくっくっと笑った。
「鰻女郎の粘液は精力がつく、であればウナギも同じ。それだけさ。」
ええ……。
僕が困惑していると近くに店員が来た。でっぷりと太って眼鏡をかけた髪の薄い男性店員だ。彼は通りの良い声で品名を読み上げながらこちらに置く。
焼きサバ定食は僕、魚と野菜の餡かけを先生の前に置き、一礼して去っていく。頭を下げた時、薄い髪の中で日に焼けた頭皮がライトに照らされて光った。
「じゃ、いただきます。」
僕は鯖に箸を入れ、米と一緒に口に入れる。いたって普通の食事だろうが、疲れた体に食事が滲みる。
湯気を立てる米と焼き立ての鯖、大根おろしを口に放り込んで飲み込む。豆腐の味噌汁を啜り、喉を流れ落ちる感覚を楽しむ。
隅の小鉢に置かれた漬物のポリポリとした食感が口の中を飽きさせない。
疲れた体での食事はやはりたまらない。ウミをバカにしていたが、僕も同類だ。
「ずいぶんおいしそうに食べるねぇ。」
先生の方を見ると愉快そうな表情で僕を眺めていた。とりあえず口内の物を飲み込んでから口を開く。
「……?美味しいですよ?」
「いや、大盛りの方が良かったかなと思ってね。普通盛りじゃ足りないんじゃないかな?」
「まあ、そうですね……。でも家に帰ってから夜ご飯食べるので。」
「この後に夜ご飯食べるのかい?」
「そうですけど……。えっ?」
先生は心底おかしそうに笑うと卓上ベルを鳴らす。男たちの怒号。食事を進める間に店員が来る。
「追加で杏仁豆腐を2つ。君も食べるだろ?ええ、食後に。ありがとうございます。」
店員が去っていく。
「いいんですか?いただきますですけど。ありがとうございます。」
「ああ、たっぷり食べたまえ。」
僕が食べ終わるまで先生はにこにこと僕の食事姿を眺めていたのだった。
次の日。いつものように僕は理科準備室に向かう。
階段を上がり、準備室に近づくたびに心臓の動きが速くなる。唇が渇き、喉のひりつきが抑えられない。
僕は唇を舌で舐めて生唾を飲み込むと、深呼吸をして何とか心を落ち着けようとする。
期待に震える手でノックをするしようとした瞬間、内部から声がした。
「君か。開いているよ。」
「し、失礼します。」
上ずった声が何となく恥ずかしい。
ドアを開けるといつもと違い、私服姿の先生がいた。惜しげもなくさらされた二の腕や開けられた胸元がまぶしい。
町を歩けばもっと露出度の高い魔物を見るが、普段はきっちりとした服装の先生がラフな姿をしているのはなんとも魅力的だった。
「……?珍しいカッコですね?新鮮です。」
「ああ、これかい?」
先生はその場でくるりと回って前かがみになると服の襟を引き下げる。重量感のある胸の谷間が露出し、僕の股間が充血していくのを感じる。
盛り上がったテントを見た先生はくすくすと笑う。恥ずかしいけど今更隠しても仕方がないのでそのままだ。
「ふふ、君はおっぱいが好きだねぇ。ほら、来たまえ。」
両手を広げる先生に誘われ、胸の谷間に顔をうずめながら先生に抱き着く。
昨日の刺激のある匂いではなく、清涼感のあるスッキリした匂い。柔らかく暖かい胸に溺れてしまう。
「ふあぁぁぁ……。気持ちいい……。」
「私は急用で2、3日いなくなるからねぇ。今日は資料を取りに来ただけさ。」
「え……。」
困惑する僕の頭をなでながら、先生は僕を押し倒す。背中に衝撃はない。いつの間にかソファに移動していたようだ。
「ま、というのは建前さ。目的はこちらだねぇ。」
先生は僕の目を見ながらにんまりと笑った。
「私がいない間、ほかの魔物に襲われないようにしっかりしておくれよ?」
「うぅぅぅ……。わ、わかりましたぁ……。」
脳髄は先生に包まれ、桃色の霞がかかったようにぼんやりとする。血液が送り込まれた肉棒は限界まで張り詰めていた。
「うん。蕩けたいい返事だね。じゃあご褒美をあげようか。」
先生の手がベルトを外してパンツの中に潜り込み、僕の勃起を優しく握った。
「ふっ、くうぅぅ……っ。」
情けなくもそれだけで僕の腰はかくかくと動いてしまう。その様を見た先生は甘く笑いながらペニスを扱き上げる。
「はは。すっかりクセになってしまったようだねぇ。ほら、しこしこしこ〜。っく、ふふ。」
「あっ、あああぁぁ……。せんせぇぇぇ……。」
すっかり骨抜きになってしまった僕は先生から与えられる快楽に酔いしれ、脱力した口からよだれが垂れた。
「おや。キスもしてほしいかい?ほしがりさんだねぇ。」
「んっ……っ!んむむ……ッ!」
先生の肉厚な唇が僕の唇を塞ぐ。侵入した舌がねっとりと這い回り、歯の裏や頬肉を舐め、唾液を交換する。
妖しい水音が体内に反響し、鼓膜を揺らした。
甘美な感覚が下腹部に押し寄せ―――。
「ん、んんん……ッ!」
僕は先生にしがみつきながら絶頂を迎えた。視界の隅でペニスがびくびくと震え、ヤチガサキちゃんは満足そうに触手を揺らした。
先生は唇を離すと少し困ったような、照れたような顔をして僕を撫でた。僕と先生の唇の間には透明な橋ができている。それがなんとも艶かしい。
「君、初めてだっただろう?キスの時は目を瞑った方がいいね。」
「ふあぁぁぁ……。わかりましたぁ……。」
言われたとおりに目を瞑ると、暗闇の中で先生の柔らかさや吐息、衣服が体をくすぐる感触がはっきりと伝わる。
「ん……。」
柔らかく熱い花弁が僕の唇を甘噛みする。ぬるぬると湿った舌が唇をなぞる。舌を迎えようと口を開けると、唇の裏側を舌が舐めとっていった。
焦らされ、揶揄われてるような感覚と羞恥に襲われ、僕は身を固くしてしまう。間近から先生の優しい声がすると同時に頬を温かな吐息が触れた。
「ほら、こっちも忘れていないよ?」
さらさらとした新品の筆のような感触がペニスをくるむ。突然与えられた感触に僕は上ずった声を出してしまう。
「ああっ……。や、んむっ……ッ。」
すべすべとした感触が僕の側頭部を覆うと同時、唇が塞がれる。
口内から甘美な水音が響き、ペニスには繊細な刺激。体には豊満な感触が与えられる。
背筋にぞわぞわとした感覚が湧き出て、僕はそれに耐えようと先生を抱き締めてしまう。
「ん……。んふふ……。れろ、ちゅっ……。」
さらに熱を帯びた舌が僕の口内を蹂躙し、舌同士が絡み合う。
ねっとりとぬめった感覚に耐え切れず、僕は力を緩めてしまう。
「ん、んんん……っ!んんっ、ん……。」
「ん、んふ……。ちゅっ……。ふふふ……。」
目を開けると、先生が潤んだ瞳でにっこりと笑っている。互いの口は唾液でべたべたになっており、なんだかとても気恥ずかしい。
「ふふふ、これでしばらくは大丈夫だろう。ああ、ヤチガサキちゃんは十分に栄養を取っているからもうご飯はいらなさそうだねぇ……。」
「あっ、やぁっ……っ。」
先生のしっとりとした手が僕の肉棒の先を撫でる。鋭い快楽が襲うも逃げることができず、びくびくと震えてしまう。
「じゃあ、ヤチガサキちゃん、この子をよろしく。」
ヤチガサキちゃんは任せろと言いたげに触手をゆらゆらと揺らした。
僕は自分のベッドの上に寝ころんだ。シーツのひんやりとした感覚が風呂上がりの火照った体に心地よい。
先生が急用でいなくなってから性欲処理ができていない。それがなかなかに苦痛だった。
何しろ、目に映る魔物娘はほとんど露出度の高い服装をしている。右を向いても左を向いても胸や尻、腰のくびれが目に付いてしまう。
ツムギが近づいてきただけで勃起した時はどうしようかと思った。ばれていたのでけらけらと笑われ、その声が耳にこびりついて離れない。
ウミも事情は知っているはずなのだが、あの放任主義の適当バカ男はツムギと一緒になってからかってきた。くそっ。いつも放課後にツムギの下で叫んでいるくせに。
ペニスに巻き付いたヤチガサキちゃんを撫でると、触手が指に巻き付き、柔らかく圧迫する。何となく励まされているような気がして嬉しい。
先生はいつ帰ってくるのだろう?2〜3日って言ってたし明日明後日くらいなのだろうか。それまでヤチガサキちゃんと頑張ろう。
明日も明後日も学校はないし、ゆっくり休もう。そう思っていたところ――。
「あれ、なんだろ。」
携帯の画面に通知が映る。先生からメールが送られてきたようだ。僕は片手でヤチガサキちゃんを撫でながらメールを開く。
メールには何も書かれていない。画像だけだ。
「わ……。く、ううぅっ……。」
そこには目元を隠してにっこりと笑う先生が写っていた。
大胆に開けられた胸元から深い谷間がのぞき、ライムグリーンのブラが見える。
その画像を見ただけで僕のペニスはむくむくと勃起し、ヤチガサキちゃんも合わせて伸びていく。
追加で受信したメールを興奮に震える指で開く。
『明日帰る。家に迎えに行くから待っているように。』
明日。明日、先生に会える!
僕は携帯の画面を見ながら、ヤチガサキちゃんごと自分のペニスを握りしめ、上下させる。
「は――。せんせい、せんせい……ッ!会いたい、すき……!」
ヤチガサキちゃんの軟体の感触が手に伝わり、まるで自分の物じゃないようなペニスを扱く。ヤチガサキちゃんの触手が制止するように手首に巻き付くが止められない。
「せんせ、でる、でちゃうっ、ふ……ッ、くっ……!」
出ない。不完全な絶頂でもそれなりに性欲を発散することはできた。この感覚に慣れてしまっているのか、寸止めされていても快楽を得ることができるようになっていた。
ヤチガサキちゃんは先を尖らせた触手で下腹をつつき、抗議してくる。
「ごめんね、ヤチガサキちゃん……。痛かったかな……。」
僕はヤチガサキちゃんを労わろうと撫でた。すると触手は収縮して撫でやすいように短くなる。思い込みかもしれないけど、なんだか連帯感や友情のようなものを感じる。
「明日先生来るし、叱られないように早めに寝ようか。おやすみ、ヤチガサキちゃん。」
僕は電気を消してベッドに入り込む。開けたままの窓からは父さんと母さんの嬌声が響いていた。
「おはよー。」
僕はあくびをしながら階段を下りた。すると、母さんの真向かいに民族衣装を着た先生が座り談笑している。
あくびをしている僕に気づいた母さんの口から声が飛んだ。
「ほら、あんた今日先生の家で勉強するんでしょ!前から言っておいてくれればよかったのに!早く顔洗って準備しなさい!」
「は〜い。」
僕は言われたとおりに準備を進める。頭の中は先生でいっぱいだった。
準備を終えた僕と先生を、母さんは玄関先で見送る。
「あんたしっかり勉強してきなさい。この間のテスト最低点数だったんだから!」
「誰かが最低点数になるところを僕が守った。これは名誉じゃあないか?そう考えてほしい。」
頭をはたかれる。
「ふふ、ナツキ君は素直な子ですから、教えればすぐにできますよ。では、借りていきますね。」
先生は一礼して車に乗り込む。続いて僕も乗り込む。
家が見えなくなってから先生は口を開いた。
「なかなか面白いお母さんじゃないか?」
「そうですか?いつもあんな感じです。肝っ玉母さん!って感じですね。」
赤信号。車はブレーキを繰り返して減速し、慣性を殺しながら止まる。先生は煙草を取り出すと火をつける。
肉厚な唇が煙草をくわえると、白い紙の筒は先端が灰になっていく。
「楽しみかい?」
「え……?」
先生の手が僕の太ももを撫でる。細く繊細な指がズボンの上から僕の輪郭をなぞる。
僕は緊張しながら先生の顔を見る。目は細くなり、口の端は薄く上がって微笑んでいた。
先ほどまで車内に満ちていた、教師と生徒の雰囲気はもうない。
四方を鉄で囲われたここは、聖獣の食卓と化していた。
「な、にが、ですか……?」
カラカラに乾いた口を動かして、上ずった声を出す。
「今日だよ。よく我慢したねぇ。」
優しい魅惑的な声が鼓膜を揺らす。その振動に呼応して僕のペニスがテントを張った。
すう、と指が離れてハンドルを握る。
「もう少しだね。ふふ、ゆっくり待っていたまえ。」
視野が狭まる。先生を見ると、足が、手が、胸が口が髪が唇が思考を埋める。脳は先生に溺れ、呼吸は早く、手が震える。
瞬きの間に先生の家につく。本来は2〜30分ほどかかるはずなのに。
先生は簡単に車から降りた。僕は緊張と欲情で手が震え、うまくシートベルトが外せない。扉が開く。
「やれやれ、少し煽っただけなのにね。少し待ちたまえ。」
白い手がシートベルトを外し、僕に差し出される。
「そのままだと転びそうだねぇ。ほら。」
「あ、りがとう、ございます……。」
僕はその手を握る。高級な辞典の紙のようにしっとりと手に馴染み、滑らかな感触が伝わる。先生はにっこりと微笑み、僕が転ばないように支えてくれた。
「ふふ、あんよがじょーず、あんよがじょーず……。」
「ううぅ……。」
くすくすと笑われながら僕は先生にエスコートされる。
玄関先で僕ははたと気づく。
今握っている手は先生の肉体。これから先生に射精させてもらえる。手だろうか?脚だろうか?何であれ久しぶりの射精だ。
この滑らかでしっとりとした手に自分のペニスを擦り付け、先生の豊満な肢体にしがみつきながら射精する。
深いスリットからのぞく太ももに勃起を埋め、頭を撫でられながら腰を振って射精する。そういったシーンを夢想した。
下半身に集中した血流が脈動し、先生から香る煙草の匂いが鼻孔を埋める。
「あっ、だめ、だめ……。せんせい、せんせっ……っ。」
「おっと……?」
僕は先生の手を強く握りしめながら絶頂を味わった。先生の体の柔らかさや服のスリットからのぞく太ももを覆う毛皮、煙草とは違う甘い匂い。射精の誘惑。性交の予感。
それらを浴びながら味わうオーガズムは、今までとは全く違う快感を生み出した。ペニスには何も触れていないのに。
先生は僕の頭を撫でて柔らかく笑う。
「ん……。そこまで心待ちにしていたのかい?嬉しいねぇ。ヤチガサキちゃんも満足しただろうし、今日は蕩けさせてあげようか。」
「あ、ふぁぁぁ……。」
僕は先生に連れられて家に入る。僕は震える手で何とか靴を脱ぐと、先生は上がりかまちに座り込んで僕に布を差し出してくる。
「拭いてくれないか?このままでは家の中を汚してしまうから。」
「は、い……。わかりました。」
布を受け取ろうと手を差し出すと、柔らかな手が僕の手を包みこみ、落とさないようにしっかりと握らせた。
「先生、足、こっちに……。」
正座した僕がそう言うと、先生はお尻を支点に回転して僕の太ももに足を乗せる。丁度、蹄が勃起に当たってしまい、僕は喘ぎ声を出してしまう。
「あっ……。んぅ……っ。」
「ほぉら、早く拭かないといけないねぇ。ふふふ、ほら、ほら、ほら……!」
僕は先生の足を掴んで蹄を拭こうとするが、ペニスに与えられる振動に快楽を感じて正常な動作がままならない。
「あっあっあっ……!ぐ、うううぅぅ……。」
拭いて綺麗にしないと……。綺麗にしないといけないのに……。体が勝手に動く……。
僕は先生の蹄を舌で舐め、泥を落とそうと試みる。砂や泥のじゃりじゃりとした感触が舌に伝わる。まるで砂抜きしていない貝類を食べた時のようだ。僕の鼓膜を先生の声が揺らした。
「あっ!コラ、やめたまえ!」
先生は足を僕の口から離し、口に手を入れた。なよやかな指が口内を滑り、口内の砂をさらっていく。同時に口内という性感帯を撫でられ、僕は蕩けてしまう。
「ん……。せんせ、ゆび、すきです。おいしい……。」
「まったく……。ほら、悪戯しないからちゃんと拭いてくれないか。土は意外と不衛生なんだ。」
「ちゅぷ……。はい……。」
僕は先生の指が口から出ていくのを名残惜しく思いながら、先生の足を拭く。光を吸い込むような黒さを湛えた爪を拭いていると、美術品を拭いているような気持になる。
「先生、蹄、綺麗です。キスしてもいいですか?」
「ああ、拭いた後ならね。」
両足とも拭き終わっていたので、許可をもらった瞬間に蹄に口づけをした。
つるつるとした滑らかで硬い感触が唇に伝わる。人間でいう足首のあたりから柔らかな毛が生えており、そこに顔を埋めるのはたまらない。
僕は蹄から足首、膝にかけて思いのままにキスをする。柔らかな毛側に覆われた脚はふっくらとして均整がとれた美しさだった。
むっちりとした太ももに差し掛かった時、先生の手が僕の唇に触れる。
「もう少し楽しみたいけれど……。玄関先じゃあ落ち着かないだろう?ほら、立って。」
先生は僕を制して立ち上がると僕の手を握り、家の奥へ歩く。
通された部屋はよく整理されており、植物の鉢がたくさん置いてある。そのどれもが青々としているが、僕が知っているものはサボテンや食虫植物しかなかった。
「お茶を淹れてこよう。いい子で待っていたまえ。」
「は、い、待ってます……。」
先生は僕をソファに座らせると頬に口づける。そして台所であろう場所に消えていった。
興奮の置き所がなく、近くにあるハエトリグサを眺める。先ほどハエを捕まえたばかりなのか、ドロドロに溶けた黒いものが2枚の葉に咥え込まれていた。
しばらく近くの植物を眺めていると、先生がお茶を目の前において隣に座る。
ふわりと良い香りが漂い、隣からは先生の肉感と体温が伝わった。
「……あ、ありがとうございます。あちち。」
「熱いからね。ゆっくり飲みたまえ。ふふふ……。」
先生は穏やかに微笑みながら湯呑を傾ける。舌が火傷しそうなほど熱いお茶なのだが、なんともないのだろうか?
息を吹きかけて冷ましながらお茶を口に含む。熱く、濃い色の液体が喉を滑り落ちるたびに体がぽかぽかと暖かくなり、ソファに沈むような感覚を覚える。
「どうだい?これを買いにしばらく空けていたのだけれど。」
「……?知らない味です。美味しい……んでしょうか?なんだか素朴な感じの味です。」
「そうだろう?特殊な薬膳茶でねぇ。久しぶりに作ったけどなかなか上手くいって良かったよ。」
「薬なんですか?どんな効き目があるんです?このお茶。」
「リラックス効果が大きいね。それに精力増強作用もある。利尿作用もあるけど……。コーヒー程度だね。ま、そっちは気にしなくていいだろう。」
リラックスと精力増強。なんだか正反対な気もするけど、そういうものなのだろう。
僕は不思議に思いながら熱いお茶を飲みほす。熱いお茶が胃まで到達し、体の中心から末端までを熱で包まれているように感じる。
「さて、本題に入ろうか。ナツキ。」
先生は近くにあった小箱を開けると、片手で収まる円柱型の物体を取り出した。
それが何かを悟り、僕の股間は血流を集めてしまう。
「お察しの通り、オナホールだ。コレは特別製でね、精液採取に使われているものだよ。少し内部をいじっているがね。気に入ってくれると良いが……。」
僕のペニスは期待に震え、情けなくもテントを作ってしまった。それを見た先生は楽しそうに笑う。
「ふふ、ではズボンを脱いでもらおうか……。」
「は、はい。ううぅ……。」
僕は先生に言われた通り、自分からズボンとパンツを下す。
服を着ている魔物の前で自分の性器を曝すという行為に僕はひどく興奮している。ヤチガサキちゃんは触手を伸ばし、下腹を艶かしく愛撫していた。
「あ、ううぅ……。ヤチガサキちゃん、なんでぇ……?」
「ヤチガサキちゃんもよく頑張ってくれたねぇ。さ、どいてくれたまえ。」
先生がそう言って彼女の頭部?を撫でる。
ヤチガサキちゃんはするすると僕のペニスから離れ、太もものあたりにぴったりと張り付く。下腹を愛撫していた触手は鼠径部のあたりをさまよい、くすぐる。
僕のペニスは喜びと期待に打ち震え、鈴口から我慢汁が垂れた。全神経が隣の先生に集中する。
甘い匂い。温かな肉体。柔らかな乳房。ふかふかとした尻尾。
「まだだ。我慢したまえ。」
「ぐ、……っ、うう……っ。」
先生は僕を抱き寄せ、きつめの口調でそう囁いた。耳元にこそこそと吐息がかかり、脳髄が蕩けそうになるのを必死に押し留める。
「持たなそうだねぇ。楽しんでもらう余裕はないか。」
ペニスの先端部にひんやりとした感触。オナホールが亀頭にあてがわれたのだろう、ぞくぞくとした感覚が背筋を走る。
「さ、もう我慢しなくていい。たっぷりと吐き出してしまえ。」
耳元の吐息がそう言うと一気にペニスが未知の感触に飲み込まれた。
穴の中は潤滑液で満たされ、ヌメヌメとした感触がペニスを襲う。にっちりとした塊を僕の勃起が掻き分けるたび、複雑なヒダが亀頭からカリ首、幹までを刺激する。
最奥部まで到達すると、きゅぽきゅぽと吸い付くような感触が亀頭を襲い、射精を促してくる。
この間もヤチガサキちゃんは愛撫を止めず、鼠径部や睾丸を妖しく撫でていた。
「ああぁ―――!!だめですこれだめだめッ……あっうああ――――!!」
あまりの快楽に数秒と耐えられず、僕は絶叫しながら腰を浮かし、無機的な穴の中にどぷどぷと漏らしてしまう。
久しぶりの射精は落雷のように脳から足先までを迸り、全身で快楽を味わうことができた。
「よし。ここまで出してくれれば十分だろう。ふふ、いままでよく我慢してくれたねぇ、私のために。ありがとう。」
先生はオナホールの穴に封をして精液を閉じ込めると、小箱の中にしまった。
強烈な脱力感に襲われた僕は先生に体を預け、柔らかな体を楽しむ。
「ふあぁぁぁ……。せんせい、気持ちよかったです……。」
すりすりと顔を横乳に擦り付ける。さらさらとした衣服の奥には下着だろうか、固くしっとりとした感触が伝わり、安らぎをもたらしてくれる。
その感触を楽しんでいると、不意にペニスがねっとりとした何かに覆われる。その感覚に僕は腰をはね上げてしまう。
「おや、ヤチガサキちゃん。どうしたんだい?ふんふん、なるほど。」
先生はヤチガサキちゃんに触れると、こくこくと頷く。そのたびに艶やかな髪が僕の体をくすぐった。
「ナツキ。ヤチガサキちゃんと仲良くやっていたようだねぇ、お礼がしたいらしい。楽しんでくれたまえ。」
「え……。この感じ、ヤチガサキちゃんなんですか……あぁっ……っ!これ、だめ……気持ちよすぎです……ッ!」
暖かくぬめった肉がペニスを包み、ヤチガサキちゃんが蠢くたびににゅるにゅると擦れる。
ローションに浸ったガーゼのような感触がペニスを包み、根元からカリ首まで上下する。亀頭は潤った唇にキスされるようにちゅっちゅっと吸われる。
僕はヤチガサキちゃんが与える快感に虜になってしまった。しかし、先生の前でヤチガサキちゃんに絶頂させられることに羞恥を感じ、腰をくねらせてしまう。
「ああっ……。ダメ、イく、イっちゃう……!せんせい、みないで、だめっだめぇっ……!」
「ふふ、腰をくねらせて……。気持ちよさそうだねぇ、情けなくてかわいいよ……。さ、みじめにオモラシしたまえ……。」
「あっ……、あぁぁ……っ、ふ、……っ!くううぅ……っ!」
くすくすと笑う先生に見られながら、僕は腰を浮かしてヤチガサキちゃんの中に射精した。
どくどくと精液を漏らすたびにヤチガサキちゃんは収縮する。亀頭に接した部分は精液を吸い取るかのような刺激が与えられ、腰が蕩けそうになるほどの快楽を味わう。
ちゅぽん、とヤチガサキちゃんが離れたころ、僕は涙目になりながら先生の手を握り、汗だくになった顔を胸に顔をうずめていた。
僕のペニスから離れたヤチガサキちゃんはほかの部屋に向かっていく。視界から外れるとき、彼女は触手を僕に向けて振ったような気がした。
「は、は……っ。せんせい、せんせいぃ……。」
「すっかり汗だくになってしまったねぇ。ふ、シャワーでも浴びようか。んっ。んふ……。」
先生は僕の膝に乗って口づけをしながら、僕の服を脱がす。口内に伝わる甘美な感覚に酔っているうちに僕は全裸となってしまった。
「……ちゅ、ッぷは。さ、ブラを外してくれないか?」
先生はネクタイを外して上衣をはだけると、軽く抱くように僕の肩の上に肘をかける。明るい緑の下着に包まれた胸とその間にある深い渓谷がのぞいた。
「は、はい。あ、えっと……。これ、どうやって……?」
僕はおそるおそると手を彼女の胸に当てる。ずっしりとした重みと細かい装飾が心地よく手に伝わる。
たしかブラは背中のホックで留めていたはずだ。震える手を背中に回し、どうにかホックを外そうとするが、うまく外れない。
「先生、これ、どう……?」
「んー?いろいろ試してみたまえ。ほら、しっかりくっついて……。ふふ。」
ぐい、と先生は僕を抱き締めた。深い胸の谷間に僕の顔が埋まり、蒸れて汗ばんだ甘い匂いが鼻孔を埋める。勃起したペニスが下着に擦れ、刺繍が繊細な刺激を与える。
はやく、外さないと射精してしまう……。僕は先生の体に溺れながらブラのベルトをつまんで緩め、ホックを外す。
「おや、思ったよりも早かったね。よしよし。」
「あ……っ!だめ、でちゃう……っ!」
「おや……?」
先生が僕を胸に埋めて頭を撫でた瞬間、僕は射精していた。
ペニスからびゅるびゅると精液が飛び出し、先生の下着と太ももを汚してしまう。先生は楽しそうにくすりと笑った。
「やれやれ、これで漏らしてしまうとはねぇ。ほら、残りの服も脱がしてくれたまえ。あとは簡単に脱がせられるはずだよ。」
「ううう……。」
僕は先生の背中に回した手で上衣を掴み、ゆっくりと引き下げる。まるで果物の皮でも剥くように先生の裸体が露わになる。
剥き出しになった首筋に僕は唇をつけた。白い肌に血液が通い、ほんのりと色づいている。長い黒髪が垂れ、僕の顔をくすぐった。
「ん……。せんせ、肌綺麗です。白くて、すべすべで……。」
「ふふ、すっかり虜だね。ほら、さっき出したばかりなのに……。」
伸ばされた人差し指がくるくると亀頭を弄ぶ。ぞくぞくとした感覚が背筋を走り、腰を突き上げてしまう。そのたびに先生の柔らかい感触がペニスに伝わった。
「ん、んんん……ッ!っは、せんせい、また、だめ……っ!」
「おっと。ふふ、ガマンは慣れてるだろう?」
射精に備えて先生の体を強く抱きしめるも、亀頭から指が離れてしまう。最後まで刺激が与えられず、僕の分身は情けなく震えた。
発情した僕の手を先生は優しく握る。それだけで脳髄を蕩かすような電流が走った。
「さ、立ちたまえ。シャワーを浴びなければねぇ……。」
僕は先生の手を掴んで立ち上がる。窓から日光が射しこみ、全裸の先生を照らした。翻る長い黒髪が煌めき、揺れる腰から伸びる尻尾が白い光を反射する。
魅惑的な肉体に見惚れるのもつかの間、僕はシャワールームに連れ込まれた。
先生はヘアゴムで長い髪を簡単にまとめる。長い髪が後頭部にまとまり、うなじと生え際が露出した。手を伸ばして撫でると、先生はくすぐったそうに笑う。
「髪、まとめるのも可愛いです。いつものも好きですけど、こっちの方が雰囲気が軽く見えます。」
「まあ、雰囲気を変えようと思ったわけじゃないけどね……。さ、来たまえ。」
僕は言われたとおりに先生の正面に立つ。僕が小柄であることを差し引いても先生は長身だ。こうして並ぶとなんだか子供と大人みたいでどきりとする。実際にはそれ以上の年齢差があるのだろうけど。
「逆だねぇ。ふふ、私に抱かれたいのは知っているけれど。」
先生はそう言うと僕の周りをくるりと回り、後ろから僕を抱き締める。その手はボディソープでぬるぬるとぬめっており、その指先が乳首を転がすたびに僕は悶えてしまう。
「あぅ……。んっ……。せんせい、気持ちいいです……。」
「ほら、女の子みたいに乳首を立たせて……。いやらしいね……。ふふ、ほら、ほら……。」
僕は立っていられず、壁に手をついてしまう。傍から見るとバックで性交を行うカップルのようだろう。男女逆だが。
「ああ、そっちの方がいいねぇ。立てなくなったら尻尾で支えてあげようと思ったけど……。」
「あーたてなくなりましたーしっぽでささえてくださいー。」
わざとへたり込んだ僕のペニスに泡だった尻尾が巻きつく。シャワーのお湯とボディソープで温かくぬめったそれは極上の快楽をもたらし、へたり込んだのが冗談ではなくなった。
射精感に腰を突き上げるも射精することはなく、ただ快感だけが上書きされていく感覚に僕は泣き叫んでしまう。
「あ……っ!だめ、だめぇ……っ!ごめんなさい、冗談です……ッ!」
「んー?聞こえないな、冗談を言う悪い子の声は……くくっ。」
先生はくすくすと笑いながら僕のペニスを責め立てる。優しく幹をなぞったかと思えば、ふわふわとした毛先が亀頭をくすぐる。カリ首に尻尾が巻き付き、擦られながらほどけるのは天にも昇るほど気持ちいい。
しかし、どのような快楽が与えられようとも射精することはない。さらさらと頭を撫でる手が僕の状態を把握しているのだろう。振り解けば射精できるかもしれないが、それよりもこの甘い愛撫に浸かっていたい。
愛撫に浸っていたい気持ちと振り払って射精したい欲望の板挟みにあい、僕は叫びながら腰を振ってしまう。
「あ―――ッ!ごめんなさい、ごめんなさい!イかせて、イかせてください―――!」
「ん……?いぢめ過ぎたかな……。さ、たっぷりと射精したまえ。」
尻尾が僕のペニスを優しく包み込む。たったそれだけで僕は限界を迎え、精液を放出した。どくどくとペニスが脈動する感触が股間から伝わり、先生の尻尾の中にたっぷりと精液を流し込んでしまう。
「ふふ、尻尾で支えてあげようか?」
「い、え。自分で、立てます……。」
僕は立ち上がると壁に手をついた。背中も尻も先生にさらけ出した形になり、ペニスに血液が降りる。
「いいかい、動かないように。周りはぬめって危ないからねぇ。」
「う……。わかりました……。」
そう言うと先生は僕の指先から洗い始めた。
背中には柔らかな乳房、指先を撫でる先生の掌。体にその感触が走るたび、びくびくとペニスが震える。とろりと鈴口からカウパーが漏れ、耐え切れずに腰を振ってしまう。
「ふ、う……っ。せん、せい……っ。」
「ふふ、こっちも綺麗にしないとねぇ……。」
ぬるりとした指が肛門のあたりを這い回る。ぞくぞくとした快感と羞恥で喘いでしまう。
「あ……、せんせい、そこ、はずかしいです……。」
「ふふふ、なかなか綺麗なものだね。毎日お風呂に入っているようだ。感心感心。」
肛門から蟻の門渡りを経て、陰嚢が先生の手に包まれる。泡に隠れた皴の一本一本を愛しそうに指がなぞり、腰の力が抜けた。
「あ……。ふ、うう……っ。」
「はい、気持ちいいねぇ。しこしこしこ……。」
「あっあっあっ……。せんせ、せんせぇ……。」
勃起したペニスが先生の手にきゅっと握られ、腰の動きに合わせて上下運動を与えられる。親指と人差し指のリングがカリ首に引っ掛かり、亀頭がわしゃわしゃとくすぐられもみくちゃにされる。
僕は快楽の証を先生の手の中に放出する。かくかくと腰を動かしながら、温かくぬめった手筒にペニスを擦り付ける感覚に僕の脳は天国を見た。
「こら、まだ終わってないよ。しっかり喘ぎたまえ。しこしこしこ〜。」
「ああ……っ!せんせ、くすぐったいです、やめて、やめて……っ!」
「ん〜?ふふふ、ほらほらほら……!」
熱っぽい刺激が射精直後の男根に与えられた。恍惚に浸った僕は現実に戻り、快楽地獄を味わう。
射精直後で敏感になったペニスは容赦なく亀頭責めが行われ、下腹部は柔らかく押すようなマッサージが行われる。
「あ―――!せんせい、やめて、だめ、なにかでちゃう……っ!」
「はい、オモラシ……。」
ぐっ、と下腹部を押された瞬間だった。僕のペニスから黄色い液体が漏れ出し、じょぼじょぼと放尿を始めたのだ。
「あああ……ッ。ごめんなさい、ごめんなさい……。だめ、だめっ……。止まらない……。」
「ふふっ、しーしー、気持ちよさそうでちゅね……。くす、はずかしいでちゅね……。」
「せんせい、やだ、みないでぇ……、イヤだぁ……。」
あまりの羞恥と申し訳なさ、屈辱感。それらに隠れた快感の中、僕は失禁しながら泣いてしまう。
「ふふ、おしっこ、気持ちよかったねぇ。さ、洗ってあげようか……。」
「う、うああ……。」
ぐすぐすと泣いている僕を後ろから抱きしめ、先生は慈しむような手つきでペニスを洗ってくれる。
ふんわりとした泡が放尿したばかりのペニスを包み、にゅくにゅくと扱くようにして泡を塗り付けていく。
それは射精させるための動きではなく、洗うためだけの手つきだ。しかし、それだけでも僕は高まってしまい、腰を振ってしまう。
「ああ……っ。」
「こら、洗ってるんだから動かないでくれ。ふふ、泣いていても男の子だねぇ。ほら、おちんちんが硬くなってきたよ……。」
指先ががつうっと幹をなぞり、くるくると優しく亀頭をくすぐる。からかうだけの手つきで僕は射精してしまう。
「ふ、ううぅ……っ!」
「ははは、こっちのオモラシも気持ちよかったねぇ。いまキレイにしてあげまちゅよー、っふふ。」
先生の楽しそうな声が鼓膜を揺らすと同時、艶かしい吐息が耳をくすぐり、脳の奥を犯すような感覚に襲われる。
射精して萎えたペニスにシャワーが当てられる。刺激が強くならないように柔らかな雨程度の強さで温水流がペニスに当たり、精液と尿が混じった泡をさらっていく。
身体の汚れを取りさった後、バスタオルが体に当てられて丁寧に水気を拭きとられる。大きく柔らかな布を挟んで先生に抱かれ、甘やかな感覚を浴びた脳は桃色に染まった。
「さ、私の体も拭いてくれないか?」
「あ……、わかりました。」
いつの間に洗ったのか、先生の体も湯が光っており、水滴が内腿から滑り落ちて白い毛皮に吸い込まれていった。その様は異様なほど艶かしい。
僕は先生からバスタオルを受け取り、拭いていく。ふかふかの体に生唾を飲む。
胸、柔らかくくびれた腰、張りのある尻。濡れた尻尾。ぴったりと体に張りついた毛並み……。
背中を拭こうとして先生を抱き締める。背中に回した手が先生の肌を布越しに撫でる。顔は胸の谷間に埋まり、勃起したペニスは太ももに当たっていた。
拭き終わると同時、この至福の時間は終わった。
「先生、拭き終わっちゃいました。柔らかくて気持ちよかったです。」
「ふふ。では、ベッドに行こうか……。」
先生と手をつなぎ、浴室を出る。部屋には日が射しこんでいた。昼間に全裸で先生に手を引かれて歩くというシチュエーションに恥ずかしくなってしまう。
「あの、せんせい、はずかしい……です。」
「だれもいな……いや、そうだねぇ。誰かに見られるかもしれないね。ほら、隠さなくていいのかい。君の勃起したおちんちん……。」
先生は裸体を惜しげなくさらけ出し、くすくすと笑った。白い肌と影のコントラストが美しく、起伏にとんだ体が強調される。
情けなく勃起したペニスを隠したいが、片手では少しはみ出てしまう。
「ほら、体が冷えてしまうだろ?」
くいくいと先生に手を引かれ、窓際を歩く。
日光が暖かく、日向ぼっこにはちょうどいいだろう。隠すことのできない性器が歩く動きに合わせ、ぴこぴこと揺れる。
「うん?友達がいるな?おーい!」
「えっ!ちょっ、せんせ……!」
僕はペニスを隠そうとへたり込んでしまう。先生は僕の姿を見てくすりと笑った。先生の視線の先ではカラスが飛び立つところだった。
「ふふ、ごめんね。見間違いだったよ。」
「ううう……。」
僕はそのまま先生に手を引かれ、寝室に向かう。
カーテンが閉められた薄暗い部屋にはベッドがおいてある。僕は先生に手を引かれるままに座ると、寄り添うように先生が隣に座る。
太ももを先生の手がなぞり、さわさわとくすぐった。甘い感触がぞわぞわと伝わり息は荒く、心臓は激しく鼓動する。
優しい手が僕の肩を掴み、ゆっくりと後ろに押し倒していく。僕は抗えずにされるがままで、ふかふかの布団に押し倒される。
「君はどんな初めてがいい?激しく?それとも優しく?」
「あ……。その、優しく、して、ください……。」
先生はにっこりと微笑むと僕の唇にキスをした。舌は入ってこない、唇だけのキスだ。
「ん……。ふふ、ちゅっ。んむ、ふ、ん……。」
「ん、んんん……!ふ、は。んん……っ!」
先生が繰り出すキスに翻弄される。唇を受けようとすれば少しずらした位置に口づけされる。頬、首筋、鼻、額。
ふわりとした感触の口づけに溺れ、僕の力は抜けてしまう。すでにペニスは限界まで張り詰めており、先生の手が慈しむように握った。
「ちゅ、ふふ。準備万端だねぇ……。」
先生は眼鏡を外し、ベッドの頭についている棚の上に置く。眼鏡を外した先生の瞳がにんまりと笑う。
仰向けに寝ている僕の体にまたがり、見せつけるように秘所を撫でる。陰毛におおわれた割れ目はしっとりと濡れており、まるで匂い立つようだった。
「さ、童貞卒業だね。」
優しく撫でている手がペニスを固定し、先生は一気に腰を下ろした。
僕の脳は桃色に染まり、蕩け、踊る。体全体が溶解し、ペニスから放出するような感覚に襲われる。
浮遊感と恍惚感に包まれる中、先生の微笑みと頬を撫でる感触だけが明瞭だった。
「ふふ、手加減したのだけれど……。耐えられなかったかな。」
ぼんやりとした視界の中で先生の顔が見えた。安心感に包まれ、頬を撫でる手を握る。
「せんせい、せんせい……。」
「ふふ、楽しむ暇もなかったな……。ゆっくり休みたまえ、ナツキ。」
僕の意識はそこで途切れ、甘い闇の中に沈んでいった。
「んぅ……。」
僕はゆっくりと目を開けた。視界に最初に入ったのは白い肌、次に桜色の頂点。先生のおっぱいだ。
「ん……。」
僕は胸の谷間に顔を埋め、至福の感触を楽しむ。頭上から声。
「おはよう。ゆっくり眠っていたね。」
「せんせい……。すごく気持ちよかったです。気絶しちゃいました。」
「ああ、そういってもらえると助かるよ。手加減したつもりだったんだけど。ふふ、熱くなってしまってね。」
先生の手が僕の頭を撫でる。お返しに僕は先生の髪を撫でる。
「先生、髪、長くてきれいです。さらさらで気持ちいいです。」
「君の髪は少し硬いな。これからしっかりケアしてあげよう。」
髪を弄ぶ手を握り、頬ずりをする。
「気絶する前、先生の手を握ったの覚えてます。柔らかくて、あったかくて。すごく安心しました。」
先生の手が僕の指を絡ませながら握る。俗に言う恋人繋ぎだ。
「君は華奢だけど、手は骨ばっているね。男の子の手だよ。安心感はないけれど、愛しいね。」
僕は手を離し、先生の胸を優しく撫でた。ずっしりとした柔肉の感触は吸い付きそうなほどで、しっとりと潤っている。
「えっと、おっぱい、好きです。」
バカみたいな感想に先生は噴き出した。にっこりと笑いながら僕の乳首を弄ぶ。
「君の乳首は私も好きだねぇ。ふふ、感度がいいからね。」
胸を撫でられてくすぐったい。先生と僕は互いに抱き合いながらくすくすと笑い合う。
「その、先生。お風呂のことだったんですけど、本当にごめんなさい。まさかおしっこを漏らしちゃうなんて思ってませんでした。」
「ああ、お茶を飲んでいたからだろうね。ふふ、とっても可愛かったよ。またやりたいかい?」
「え……っと、その、はい……。」
羞恥心を抑えながら僕は答えた。正直なところ、クセになりそうなほど気持ちが良かったのだ。
先生は僕の頬に口づけをした。
「じゃ、また次もやろうか。ふふ、君のおちんちんはもう期待しているねぇ。ほら……。」
「あ……っ。」
今の会話で甘く勃起したペニスが先生の太ももに刺激される。
「ふふ、またセックスしたいかい?」
「したい、……ですけど。いまはこうやっていちゃいちゃしてたいです。」
先生は小さく笑い、僕を抱き締める。温かな肉体に抱かれ、体から力が抜けていく。
「私もだよ。抱き合っていると気持ちがいいねぇ……。」
「僕もです。なんだか僕ばっかり気持ちよくなっちゃってますけど……。」
「ん……。相手を気持ちよくする方法は今度また教えてあげるよ。ほかの魔物に使われちゃイヤだけどね。」
「……?ほかの魔物?先生がいいです。気持ちよくしてもらったのでお返ししたいです。」
くすくすと笑われる。訝しく思い、先生の顔を見ると白い頬がほんのりと朱に染まっているような気がした。
「やれやれ。すっかり私の虜だねぇ。ほら、もう少し上においで、キスしてあげるよ。」
体を動かして先生と向かい合う。きめ細かい肌に長い睫毛、すっと伸びた鼻筋。優しそうな瞳が瞼に隠される。
「ん……。」
僕は先生と口づけを交わした。
23/10/25 06:15更新 / ほのの