少年が歩いている。誰もいない街中で雪をリズミカルに踏みしめていた。
　彼の住む地域は豪雪地帯で有名であった。去年などはあまりの豪雪に災害救助隊が国から派遣されるほどであり、それゆえに、多くの住人は雪がちらつく季節には苦々しく除雪道具の準備を行う。
　そういった雪の街を、少年は鼻歌を歌いながら進んでいった。
　（思ったより早く着きそうだ。今日はとんでもないほど降っていたからな。早く登校した甲斐がある）
　大粒の雪が大量に降る様は、雪の降らない地域の者には美しく映る。雪深い地域の住人にとっては重要な観光資源であると同時に、生活のあらゆるすべてを圧迫する存在であった。しかし、気楽な学生である少年にとっては幼いころより身近なものであり、むしろ親しみの持てるものだった。親しみの持てる存在に包まれながら早朝に登校する。これは、彼にとっての娯楽の一つであった。
　ほどなくして学校に到着した彼は、いつものように玄関を開けようとして、ドアを穏やかに引っ張った。
　「あれ、なんかに引っかかってるのかな」
　扉を押したり引いたりしてはみるが、金属同士がぶつかる音を立てながら前後に揺れるだけだった。
　彼は少し唇を曲げると肩をすくめ、職員玄関へと向かった。開かない扉に立ち向かうより、教師に怒られても校内に入ることの方が重要だ。
　「おはようございま〜す」
　少年は挨拶をしながら扉を開けた。靴を脱ぐと土間にたたきつけて雪を払い落とし、まとめて左手で持とうとしたが、その時であった。
　「どうした？今日は休みになったぞ。連絡網は行っていないのか？」
　「あ、おはようございます。ちょっと待ってくださいね」
　彼は厚手のコートの内ポケットから携帯端末を取り出すと通知を確認し、山羊の角をはやした教師に向かって頭を下げた。
　「ごめんなさい。家から出るのが早すぎました。いま連絡きたみたいです」
　「そうか、図書室の暖房はつけておく。雪が小降りになったら帰りなさい。帰る前には職員室に寄ること。暖房を消さなきゃならないからね」
　山羊の角を生やした小柄な女教師は手に持っていたビニール袋を少年に手渡し、連絡を続けた。
　「下駄箱につくまで靴はこの中に入れること。使い終わったら捨ててもいいから。それと、連絡網は君が最後だろう？委員長にも忘れずに連絡しておきなさい」
　無機質な対応と言葉遣いだが、気にしすぎなほどに指示を出してきた。この教師は旦那のこと以外に興味がなさそうだと思っていたが、案外周りのことを気にかけているのかもしれない。少年は角の教師のことを少し見直すと同時に叱られなかったことに感謝した。
　
「もしもし、委員長？連絡網行き渡ったよ。え？学校にいるけど。なんでって、早く来すぎちゃったから。じゃあそう言うことで。え？あっやべ、終ったと思って切っちゃった。委員長キレてないかな」
　連絡網が行き渡ったことを軽薄に報告すると、図書室の暖房前の席にどかりと座り込んだ。脇にはいくつかの本が抱えられている。かわいらしいイラストが描かれた文庫本や、文学賞に輝いた分厚い本。
　（せっかく休みに学校来たんだから、勉強なんぞしてられないぜ。まったく、学校の金で遊べるとは素晴しい）
　図書室に新しい人物が入ってきた。先ほどの角教師である。角にはめられた金属輪が電灯の光をまぶしく反射させていた。
　「さっき委員長から電話があった。君を迎えに来て家まで送るそうだ。吹雪がやむのを待たずに帰れるぞ。よかったな」
　連絡を終えた教師は踵を返し、図書室を後にした。残された少年は机に積んだ本のうち、２冊を残して本棚へと片付ける。迎えが来た時に本の片付けで待たせるのは気が引けた。
　備え付けられた暖房は、広い図書室を温めるにはいささか力不足であった。白い息を口から漏らしながらページをめくる。内容に目を通して情景を想像、またページをめくる。雪は古い校舎の窓を景色が見えないほどに染め上げていた。
　読書も中盤に差し掛かったころ、ぱかり、ぱかりと蹄が床を鳴らす音が響いてきた。音は部屋の前で止まり、ドアを開け放つ。ようやく暖かくなった部屋からは暖気が逃げ出し、外気温とさほど変わらない状態へ。
　「おはよう、委員長」
　彼はドアを開けた人物に朝の挨拶を行ったが、返事はすぐに返って来なかった。委員長と呼ばれた人物は紅潮した顔で、荒い息を吐いている。
　委員長はホワイトホーンだった。魔族には珍しく厚着をしている。学校指定のブレザーの上に特Ｌサイズのコートを着ているが、その体つきを隠すことはなく、呼吸に合わせて乳房が動いているのが見て取れる。頭部には角をよけるように防寒帽子をかぶり、柔らかなマフラーを首元に巻いている。下半身は長い毛で覆われているが、溶けた雪のせいかしっとりと湿り、蹄近くには細かな氷が付着していた。
　「おはよう、はあっ、迎えに来た、よ」
　息も完全に整わない中で、やっと挨拶を返して大きく息をついた。荒い呼吸を繰り返す唇は桜色に色づき、血色の良い口内と白い歯がのぞく。数秒おきに見える口は唾液でぬらぬらとひかっていた。
　「汗だくだけど大丈夫？疲れてるんなら少し休んでいった方がいいんじゃない？」
　彼の手は文庫本をまだ開いており、本心は明白だった。委員長は大きく息をつくと眉を八の字にしておずおずと話した。
　「私に乗ってもらうから、体温を上げておかなきゃいけなかったの。寒いのはイヤだよね？」
　少年はそれほど話したことのない少女を困らせることに小さな喜びと性悦を覚えると同時、申し訳なさを感じて勢いよく本を閉じた。彼は文庫本を２冊まとめて持つと、隅の本棚へ向かった。
　雪の量は変わらない。あたりの景色を覆わんばかりに降り続いていた。

　少年は困惑していた。確かに迎えに来て家まで送ると聞いていたが、予想と違ったのだ。
　「本当に跨るの？え、いいの？素肌だよ？」
　荒い息で紅潮した顔の少女はこくりと首を縦に振って彼をなだめた。
　「コートの上から乗ると体温が伝わらないの。凍えちゃうよ。恥ずかしいかもしれないけど、私も男の子を乗せるのは初めてだからおあいこ、ね？」
　彼は図書室の時と同じく、あやすような声音で語りかけられた。少年の瞳は彼女の毛で覆われた下半身から、あらわになった背中を往復し、ため息をついた。
　「わかったよ。でもブレザーの上からにしてほしい」
　その言葉を聞いた委員長はブレザーを着こみ、脚や馬体が汚れるのも構わずに土間に座り込んだ。彼が自分の背中にまたがるとコートをその上から羽織る。
　「きゃっ！ご、ごめんなさい。もっと下に手をまわして……」
　少女にまたがった彼はずり落ちたりしないようしっかりとつかまったが、柔らかな何かをつかんだ。悲鳴を上げられた彼は舌を噛みながら謝罪の言葉を口にし、人間でいう腹部のあたりで手をまわした。
　「ほっ、と。大丈夫？揺れるとか、高くて怖いとかあったら言ってね」
　少女は四つの足を器用に操り、力強く立ち上がった。視点は高く、多少は揺れるが恐怖を覚えるほどではない。小柄な彼にとっては身長が高くなった気分を味わうことができ、爽快感を楽しめるものだった。
　「風はおさまったが、雪はひどくなっている。気を付けて帰りなさい。何かあったらすぐに連絡すること」
　「はい、ありがとうございます。先生も帰りは気を付けてください。道路凍ってましたから」
　「ああ、気を付けるよ。さよなら」
　大きな声で少年も挨拶したが、角教師は彼の方を向いて片目を瞑って見せるだけだった。
　扉の外は成人男性の腰のあたりまで雪が積もり、迎えがなければ帰ることは困難な状況であった。

　少年はホワイトホーンに背負われながら帰宅していたが、心中穏やかではいられなかった。同年代の少女の瑞々しい体に密着するだけでなく、先ほどはやわらかな丘に無遠慮にも触れてしまったのだ。穏やかでいる方が難しい。
　意識しないよう努めたが、無駄な努力であった。ホワイトホーンは背中に乗せた友人に寒い思いをさせまいと体温を高くしている。その結果、彼がしがみついている女体は甘く芳醇に香り、歩く振動は彼の股間に飽きさせない刺激を与え続けた。少年の若々しい情欲は主の意思に反して、血液を海綿体に送り込み続ける。
　彼は自らの肉体反応に気づき、気恥ずかしさから身を離し始めた。相手は同年代の少女であり、硬化した性器を押し付けることは彼にとって羞恥を覚えることであった。腰を少しずつずらしていき、多少バランスを崩してしまっても、硬化したペニスが委員長の背中に当たらないように調整。あとはこのまま目的地まで耐えるだけだ。
　「よっ……と。ごめんね、バランス崩すと落っこちちゃうかもしれないから。鞍があると乗りやすいかもだけど、密着した方が温かいの」
　（これは……ばれたかもしれない。僕の勃起が明らかに当たってしまっている）
　ある種の諦めの境地に達した彼は、少女の肉体を堪能することとした。吹雪の中で同年代の少年を背負って歩くホワイトホーンはじっとりと汗ばみ、その体臭が鼻孔をくすぐる。体全体は柔らかく瑞々しい女体に埋もれ、時折こすれるワイヤーの硬さが彼にさらなる興奮をもたらした。顔をうずめているうなじのあたりは体温を上昇させているためか赤く染まっており、顔を近づけると肌のキメが細かく、蜜の詰まった果実のうるおいを思わせた。そのうなじを一滴の汗が流れていく。
　「ごめんね。ちょっと雪がひどすぎるから私の家に行かない？これ以上は危ないかもしれないの」
　彼はその声で現実に引き戻された。もう少し声をかけられるのが遅かったら、委員長にしがみついたまま自らの劣情を擦り付けていた可能性がある。感謝の気持ちとわずかな下心を自覚しながら、彼は申し出を了承した。
　バランスを崩してしまいそうなほどの強風が吹き、地吹雪まで発生し始めた。いくらホワイトホーンとはいえ視界が確保できなくなる恐れがある。少女の対応は十分に正解といえた。彼は荒い息と熱く火照った肌の魔物に背負われて行った。

　「ん、ふ……れろ、ちゅ……」
　玄関先でコートを脱ぎ捨てたホワイトホーンは背中から降ろした少年に襲い掛かった。背中から降りてすぐに無防備な少年を真正面から抱きすくめ、抵抗しようとする唇を舐め上げ、吸い付き、力が緩んだところを長い舌が蹂躙していく。少年の視界いっぱいに瞼を閉じたホワイトホーンの顔が映っていた。溶けた雪が睫毛の上に水滴を作り、目じりから落ちていく。彼は少女の整った顔を間近で見るのは初めての経験だった。椀に注がれ張りつめた牛乳のように白い肌は情熱を秘めて薄赤く染まる。清浄な沢から溢れる雪解け水に浸された髪は湿りながら顔をくすぐった。ブレザー越しに彼の体に当たり、自在に形を変える柔らかく豊かな胸。確かな感触を伴った肉の体は、天上の美姫に勝るほどの快楽を感じさせた。彼はその快楽を血液のめぐった欲のままに受け入れることにした。
　少年の腕はゆっくりと彼女の背中に回され、控えめな力で抱き返す。下着だろうか、手のひらには硬いワイヤーがふれ、彼に情交の実感をもたらした。ホワイトホーンは瞼を開けると、潤んだ紫水晶の視線が彼の黒く開いた瞳と交わった。それと同時に、離れた唇の間には濡れた橋が架かったが、すぐに切れた。少年を犯した唇がさらなる快楽への言葉を紡ぐ。
　「続き、部屋でしよっか」
彼はうつむきながら首を縦に振り、豊かな胸に埋もれた。下着とブレザーのせいか少し硬い感触。背中に回した手は少女の細く長い手が繋がれ、優しく引っ張られていった。
　暖房が効いている部屋に入ると、ホワイトホーンは座り込んで両手を広げた。紫に輝く瞳は細まり、口角は柔らかく上がっている。少年の喉仏は上下に動き、震える手つきでブレザーのボタンに手をかけた。彼は何度か失敗しながら、眼前で微笑む少女の服をはだけさせることに成功した。深い紺色のブレザーの下には、しわのない白ワイシャツ。人工的に作られた紺と白。それは血の通った肌の艶やかさと非現実を強調し、彼は深く息をついた。吐息がかかったのか少女は控えめに喘ぐ。
　彼はブレザーとシャツを肩から滑らせた時、少女は背中に手をまわして下着のホックを外す。そして肩ひもを一方ずつ落とした。露わになる乳房、その桃色の頂点が彼の視界に入り、臍の奥に熱が宿る。
　「どう、かな？君のおちんちんはよろこんでるみたいだけど、声に出してほしいな」
　「あ……えっと」
　彼は女性の裸体をほめる言葉を持っていなかった。酸素を求める魚のように口を動かしたが、何も言うことができずに口を閉じて視線を外す。ホワイトホーンは林檎の頬を緩ませた。
　「ごめんね、まだ味わってないからわからないよね？」
　長く細い指が彼の体を這い回り、器用に衣服を脱がしていく。彼の小柄な体格に合わせた肉棒は、つるりと可愛らしく自己主張していた。
　「ふふ、元気、元気」
　彼女の暖かな手が愛おしげにペニスを包み、優しくこすり始めた。他者に、それも同年代の少女に初めてペニスが触れられ、彼の脳内は薔薇色に染まった。
　彼女は口内から妖しくぬめった舌をたらした。唾液が伝い、手の中を濡らしていく。彼の肉棒を包んだ手が動くたびに水音が淫靡に響き、鼓膜を揺らした。耐え切れず、彼は自分から腰を振り始める。唾液でぬめった温かな肉穴にペニスを擦り付ける快感はほかの何にも代えがたいものだった。
　「あっ、だめ、出ちゃう……。んっ！」
　彼の肉棒は柔らかく熱を帯びた潤滑油にまみれたまま、少女の手の中で白濁の液体を漏らした。尿道内の精液がすべて出るまで脈動を繰り返し、彼は快楽のままに腰を押し付けた。
　「ん……気持ちよさそうだったね。ほら、べったり」
　ペニスが外気に触れる。彼女はにんまりと笑うと両手を広げ、白濁に染まった掌を少年に見せた。少年の性器が吐き出した液体は、１０本の花弁を白く彩っている。先ほどまで背にしがみつく自分を支えていた両手を汚したことに対し、彼はまるで甘えているかのような背徳感と快楽を覚えていた。初めて得る感覚に戸惑っているうちに、白濁液は彼女の舌に舐めとられていく。新雪色を這い回る鮮やかな深紅。口内に消えていく精液に釘付けになり、両手に吐き出されたものが綺麗に舐めとられた頃、彼のペニスはまた充血していた。
　「さっき、ずっと見てたよね。君のことなんかすぐにわかっちゃう」
　豊かに実った白い果実、先端は赤く色づいて少年の視線を引き寄せていた。それはおもむろに彼の唇に近づき、止まる。少年は彼女の顔を窺うと目が合った。少女は彼を見下ろしながら慈母の微笑みを見せる。乗せられていることに気づきながら、紅の誘惑に抗えずに彼は少女の乳首を口に含んだ。豪雪の中で雪や氷を掻き分け、分厚い衣服を脱いですら熱を生み出し続ける体はじっとりと汗ばむ。そのためか口に含んだ赤い花弁は、甘い匂いとともに薄く汗の味がついていた。少年は心地よい暖かさを求め、知らず知らずのうちに乳房に激しくしゃぶりつき、両手で彼女の体を抱き締めていた。
　自らの乳首を一心不乱にしゃぶり、両手で精いっぱいしがみついてくる少年に対し、ホワイトホーンは母性にも似た暖かな感情が沸き上がるのを感じた。また、それを自覚したことで涼やかな瞳は性の欲動に燃え上がる。彼をもっと喜ばせてあげたい。身も心もわたしの物にしたい。彼女は自らの唇をなめた。
　「ベッド、行くね」
　彼は一際強く抱き締められ、浮遊感を味わった。少女の胸にしゃぶりついたまま抱き上げられたのだ。はずみで口が離れ、そのままベッドへと横向きに倒れこむ。少年が思うよりも馬体は柔軟な動きであった。大きな胴体がマットレスに寝転び、白いシーツの上に灰茶色の毛並みが広がった。向かい合った彼の目には彼女の美しい裸体が映る。少年は目線を外すようにして再度、桜色の突起を口に含んだ。
　少年の鼓膜をくすくすと微かな笑い声が揺らした。同時に彼の頭、うなじから後頭部のあたりを撫でられる。さきほどペニスを甘やかした柔らかな感触、きっと彼女の手だろう。彼は安心感に身を任せて頭部を撫でる感触、口いっぱいに広がる甘さ、自らを抱く女体の柔らかさを楽しんだ。
　「ふ、ん……」
　彼の口から吐息が漏れた。下腹部を彼女の手がくすぐり、むず痒さを与えてくる。しばらくの間、少年の背中や足の付け根などを少女の指先が這い回り、期待に揺れるペニスをからかった。少年は彼女と視線を合わせる。その瞳は楽しむように揺れていたが、どこか窺うような色を帯びていた。
　「ん、ねえ…その……」
　彼はねだるようにペニスを馬体にこすりつける。充血した亀頭に細い毛が絡まり、鈴口から透明な液体がこぼれた。少女はにっこりと笑うと彼の額に口づけした。
　「場所、わかる？」
　「う……」
　慈母の笑みが微かな嗜虐の色を帯びた。場所がわからずにさまようペニスは優しく握られ、秘所に誘われた。少女がうなずくと、少年はぬめった洞窟に潜る。ペニスは肉穴を進むごとに熱く締め付けられ、わずかな隙間を広げるたびに天国の門をくぐるかのようであった。彼の動きが止まる。最奥部ではない。洞窟は彼を余さず飲み込んだのだ。あやすような、応援するような声が少年の耳朶をたたいた。それは嘲るように彼の脳を蕩かした。
　「おちついて、大丈夫だから。動けそう？」
　「だめ、だめ、また……やっ、ん。やすま、せて」
　吐息交じりの懇願を聴き、少女の耳は上機嫌そうに揺れる。彼女は少年の頭と背中を撫でながら、優しく声をかけ続けた。その声色には熱がこもっていた。その声が動きの止まった少年にとどめを刺した。
　彼は欲望のままに胸に顔をうずめようとするが、少女の手がそれを阻んだ。少年の顔は手で挟まれ、渓谷に顔をうずめて安らぎを得ることはおろか、射精している無防備な顔を隠すこともできない。彼は切なく潤んだ瞳でを彼女に見せた。口から快楽に震える声が小さく漏れる。
　「いや、だぁ……はずか、しいっ、みな…いで」
　歪んだ彼の視界には、唇をなめる同級生の顔が映っている。目じりからは涙をこぼれた。それが熱を帯びてぬめった肉になめとられると同時に、彼は温かな粘液を纏った肉壺の中を白濁に染め上げた。

　彼は深い谷間に鼻先を潜り込ませた。しっとりと湿り、汗と石鹸が混じった匂いが荒く体内に取り込まれ、吐き出される。少年の頭には少女の手が回され、しっかりと抱き締められた。
　「えっと、ごめんね？」
　「……？」
　　突然の謝罪に彼は首を傾げた。謝られるようなことをされただろうか？霞がかった頭で思い出そうとするも心当たりはない。
　「泣いちゃったから。やりすぎちゃったんだよね？わたし」
　「いや……。その、すごく楽しかったし、気持ちよかった。できれば、また……」
　「よかった。びっくりしちゃったんだよ。……次は、もっと優しくするから」
　彼は胸の中でうなずき、ゆっくりと目を閉じる。少女の熱を全身で感じながら眠りたかった。
　「そうだ、言ってないことがあったよな。コート、似合ってた。裸もきれいだと思ってる。僕の考えてることは大体わかってるだろうけど」
　彼の表情は乳房に隠れ、窺い知ることはできなかった。少女は穏やかに微笑むと、裸の少年に寄り添って同じように目を閉じる。
　月明かりが暗い部屋に差し込み、寄り添って眠る少年少女の顔を照らす。吹雪はすでに収まっていた。街灯の白い光は積もった雪をちらちらと輝かせていた。