読切小説
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夜釣りにて
その日、俺は友人と海に夜釣りに来ていた。
久しぶりの夜釣りだってことで、最初の1時間くらいは酒も入ってないのにテンションがやたら高かった。
けれど、釣糸を垂らしていくら待ち続けても魚の一匹もかからない。
それは友人も同じようで、彼の表情に苛立ちが見え始めていた。
…今日はもう諦めようか。
そう俺が声をかけようとした、その時だ。

「助けてー!!」

と、助けを求める声とばしゃばしゃと水が跳ねる音が聞こえてきた。
ぱっと2人でほぼ同時に海の方を見ると、女性が1人溺れている…!
苦しそうな表情から、もう余裕が無いと思った俺は、溺れている女性を助けるために海へ…!?

「おい馬鹿!何やってんだ!!」

俺は、いつの間にか地面に倒れていた。
すぐそばには、息を荒くして拳を握りしめている友人。
…殴られたと気付くのに少し時間がかかった。

「何すんだよ!人が溺れてるんだぞ!?早く助けないと!!」

「馬鹿野郎!こんな時間に女が1人で海にいるわけないだろ!?それに、夜なのになんではっきりと表情が見えるんだよ!?」

「あ……」

そこまで言われて、ようやく俺は気がついた。
確かに、友人の言う通りだ…
そう言えば、彼女はいつの間に現れた?
場所も時間も、何もかもが不自然だ…
ゆっくりと振り返り、もう一度女の方を見る。
そこには、さっきまで溺れていたはずの女が悔しそうな表情で友人を睨んで…

「「掛かったわね!?そっちはフェイクよ!!」」

「「!?」」

突然、背後からタコの足のようなものが巻き付いてきた!?

「な、なんだこれ!?」

「畜生!話しやがれ!!」

「やっと捕まえた男…離しはしない!!」

「「げえっ、スキュラ!!」」

「ありがとー♪助かったわ、メロウさん!」

「ふふふ、報酬の3P忘れないでよ?」

「「勿論!」」

どうやら、釣りに来たはずの俺達が釣られてしまったらしい…
抵抗も虚しく、ズルズルと海に引きずり込まれていきながら、俺はそう思った…



「はい、これでこの話はおしまい。」

「えー、もうおわりー?」

「ぱぱー、つづきはー?」

妻と出会った時の話を娘達に聞かれたので話したけど…
さすが魔物と言うべきか、妻の友人のメロウの影響か、「本番」を話していないことが不満なようだ。

「続きって…」

「こら、パパが困ってるでしょ。」

「「ままー!」」

ペタペタと歩いて(?)きた妻に抱きつく娘達。
…それにしても、足は絡まないのだろうか?

「私が続きを話してあげるから。」

「「ほんと!?」」

「ちょっと!?」

「ん〜、でも話だけっていうのもねぇ…そうだ♪せっかくだし、実演しましょうか♪」

イタズラを思い付いたような笑みをこちらに向けつつ妻が言う。

「お、おい!?馬鹿な真似はよんぐっ!?」

「それじゃ、しっかり見ておきなさい♪」

「「はーい♪」」

口を塞がれ、妻に襲われながら、心のどこかで俺は幸せを感じていた。
12/01/16 09:59更新 / ゴミナント

■作者メッセージ
皆様、こんにちはこんばんは、お久しぶり始めまして、ゴミナントです。

久しぶりの作品ですが、いかがだったでしょうか?
…それより、私を憶えている人がいるのかどうか……
まぁ、楽しんでいただければ嬉しいです。
後、よろしければ感想をお願いします。
作者のやる気に繋がりますので。

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