連載小説
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前編
 北辺の小村は、丘陵のうねりに抱かれている。石を積んだ低い塀、藁葺きの屋根、風に磨かれた木戸。冬は長く、夏は短い。土は痩せ、畑は人の手でようやく実りを得る。ここでは「働く」ことが祈りのような意味を持っており、朝の鐘が鳴れば人々は同じ方向に体を傾け、同じやり方で手を動かす。

 ルークの家は、村はずれの小川に近い場所にあった。母は薬草をすり潰す仕事をしていて、指先は染み込んだ青や緑でいつも薄く色づいている。父は数年前の山崩れで亡くなった。家に残る父のものは、刃こぼれのある小刀と、獲物の癖を記した簡素な革のメモだけだ。

 彼の年齢は十三歳。背は村の同年代より少し低いが、筋は細く固い。膝と肘には常に小さな擦り傷がある。指は器用で、紐や蔓で結び目を作るのが得意。ほどけにくい輪や、指一本で解ける結び方などを独りで試すのが好きだ。歩く時はつい爪先から音を殺して進む。自分でも理由は分からないが、気配を消して物の近くに寄ると、世界の密度が少し増す気がするのだ。

 だからだろうか、彼の目はよく動く。鳥の影、草の揺れ、獣道の乱れ――細かい変化に敏い。耳は雨の前の空気の張りを拾い、鼻は湿った土と腐葉の匂いの違いを嗅ぎ分ける。身体が先に察し、頭が遅れて名前を付ける。そんな勘の良さが、彼に「危なっかしい子だ」という評判と同じくらい「物を見つけるのがうまい」という評判も与えていた。

 そんな彼は、親方に付いて羊を追うのが日課だ。仕事ぶりは悪くない。だが、境界の杭の向こう――森の縁に目が吸い寄せられる癖が祟って「おい、気を抜くな」とよく叱られる。友達も少ない。彼の口は早く、考えを言葉に変えるのが速すぎて、相手を置き去りにすることがあるからだ。無用な喧嘩を避けるため、彼はいつの間にか独りで過ごす時間を好むようになった。
 それでも孤独ではない。市場の日に年老いた行商の男から遠い土地の話を聞くのが楽しみだ。大河、城塞、石畳、砂漠――見たことのない模様が、頭の中に地図のように描かれていく。その“内側の地図”が、彼を時々現実から連れ出す。

 性格として、ルークは「怒り」が薄い。理屈で押されると簡単に折れる。代わりに「諦め」も薄い。誰かが「無理だ」と言うと、証拠を見つけるまで落ち着かない。母にはその性分を心配されている。「好奇心は道具にも刃にもなる」と。彼自身にも小さな怖れはある。――この村で、自分は“ただの誰か”のまま終わるのではないか。父のように名前を置いていくことさえなく。言葉にしない怖れが、足の裏をじわじわと熱くする。

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 森は境界であり、誘惑だ。木立の向こうは昼でも薄暗い。鳥の声は減り、音は吸い込まれる。子どもの頃、境界杭の手前で母に首根っこを掴まれた記憶がある。あの時の母の手の強さは、恐怖の強さだと今なら分かる。村では古くから「霧の帯より向こうには魔物がいる」と言い伝える。名は様々でも、最近はひとつの名がよく囁かれる――マンティコア。尾に毒を持ち、人を襲う獣。

 先週、若い狩人が一人、帰らなかった。血の跡はなく、足跡だけが霧の深い方へ続いて消えた。夜の火の周りで、大人たちは囁く。「魔物だ」「喰われた」。子どもたちは怯え、夜明け前に目を覚まして泣いた。ルークは炎を見つめながら考えた。――喰われたなら骨が要る。骨がないなら、別の理由がある。“分からない”という言葉の上に、怖れが重なっているだけだ。

 そんなことを考えていたルークは翌朝まで眠れなかった。枕木のきしみ、母の寝息、外で鳴く遅い虫の声。すべてが薄い膜の向こうにあるみたいだ。とうとう起き上がり、棚から父の小刀を取り、油を布に落として拭った。革紐と、火打ち石、乾いたパンの端、母に見つからない程度の薬草包み――必要だと思うものを、古い肩掛け袋に押し込む。出発の儀式のような所作が、心の震えを整える。

家を出る前、母の寝顔を見た。目尻の皺に疲れが溜まっている。胸の奥が僅かに痛む。「見るだけ」と心で言った。戻ってきて、昼には羊の群れに合流する。そう決めれば、それは約束になる。彼は約束を破りたくない性格だった。

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 夜明け前の森は静かだ。霧は低いところに溜まり、草の穂先に冷たい露をつける。土は柔らかく、足音はすぐに吸われる。ルークは無意識に息を整え、音を消して歩いた。鳥が鳴かない帯に入ると、空気が少し重くなる。体温が霧に奪われ、肌の上に細かい粒が集まる感じがする。彼は不意に立ち止まった。匂いが変わったからだ。土と腐葉の匂いの層に、どこか甘い、温かいものが微かに混じる。

 目の前の木々が緩み、岩の割れ目が現れる。口を開いたような黒。洞穴。近づくほど、内側から吐き出される空気が肌を撫でる。生き物の呼吸に似た周期で、僅かに温度が上下する。ランタンの炎が揺れた。

「……ここ、かな」

 声は自分のものなのに、少し遠くで響いた。ルークはしゃがみ、入口の縁に指を触れた。岩は冷たい。指先に残るのは水の膜と、ほんのわずかな――毛の感触のような、説明できないざらりとしたモノ。彼は息を呑み、立ち上がって視線を闇に沈めた。見えない。だが“いる”。理屈ではなく、背骨の奥が頷くのだ。

――入るな。
頭のどこかがそう叫んでいるのに、
足は勝手に闇の中へ踏み込んでいた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



中はしんと静まり返っていた。
滴る水音が時折響き、何故かランタンの炎がゆらゆらと揺れる。
ルークは息を殺し、奥へと歩いた。

――その時。

「だれだ、うるせぇな」

背後から声。
鋭く、冷たく、耳の奥を掠めるような声だった。

ルークは反射的に振り返る。
炎が揺れ、闇が裂けた。

そこにいたのは――女。

艶のある赤髪と、黄金の瞳。
背中には獣のような黒い翼。
腰の後ろには、大きな尾。先端に鋭い棘。

月の光が洞の隙間から差し込み、
その姿を銀に染めた。

「な、なに……」

「質問するのはあたしの方だろ」

女は、爪のついた指でルークの顎を軽く持ち上げる。
その仕草が、あまりに自然で――捕食者のそれに似ていた。

「村のガキか?」
「……っ」
「答えろ」
「……そ、そうです」

「“そうです”?」
女は薄く笑った。
「丁寧な口調だな。あたしが怖いか?」

「……ちょっと」
「“ちょっと”ねぇ。
 それでこんなとこまでのこのこ来たわけ?」

「……消えた狩人のことが、気になって」
「気になって、食われに来たってか」

彼女が一歩近づく。
その度に、獣のような匂いと熱気が漂った。
息が詰まる。

「……ほぉ」
金の瞳が細められた。
「ガキにしちゃ、度胸があるな」

「……きみ、なの? 狩人を……」
「さぁね。覚えちゃいねぇ。あたしか、それとも他の魔物かもなぁ」

尾の先が床を叩く。
乾いた音がこだまする。

「で? 次はお前が狩られに来たのか?」

「そ、そんなつもりじゃ……」

「つもりじゃねぇ? へぇ」
彼女はしゃがみ込み、目線を合わせた。
「じゃあ、なんのつもりだ。ガキ」

「……ただ、見たくて」
「何を?」
「……あなたを」

「“あなた”?」

女はくつくつと笑った。
「人間が、あたしを“あなた”呼びねぇ……面白ぇ」

ルークの頬が熱くなる。
視線を逸らすが、すぐに彼女の金の瞳に引き戻される。

「名前は?」
「ル、ルーク……」
「ルークね。
 ……呼んでもいいか?」

「え? う、うん」

「ルーク」
その名が舌の上で転がされる。
どこか甘く、掠れた声。
それだけで、心臓が跳ねた。

「……あなたは?」
「何が」
「名前……」
「知ってどうすんだ」

「……言ってみたくて」

女は、口角を少しだけ上げた。
「レアだ」

「……レア」
「うん、よく言えたな」

からかうような声。
だがその笑みの裏に、何か熱がある気がした。

「……帰りな」
「えっ」
「今なら間に合う。
 あたしの気が変わらねぇうちにな」

レアは少しだけ寂しそうにルークへ帰るように促す。
そんな彼女を見て、

「……また、来てもいい?」

彼女は魔物で怖いはずなのに、何故か口から出たのはまた会いたいという言葉。
本能的にだろうか、それとも彼女に惹かれてしまったからだろうか。

レアの眉がぴくりと動いた。
「なんだって?」

「……また、話がしたい」
「話?」

沈黙。
レアは笑った。
低く、喉で笑う。

「ほんっと、頭どうかしてんなガキ。
 そんなこと言われたの、初めてだ」

「……だめ?」

「ふん……好きにしろよ。
 その代わり――命の保証はしねぇ」

「……っ」
「ビビってんのか?」
「……ちょっと」
「ちょっと、ね。……その割には逃げねぇな」

レアは立ち上がると、
尾の先で軽くルークの肩を突いた。

「いい度胸してるじゃねぇか。
 お前の顔、覚えといてやるよ」

そう言って、レアは踵を返す。
暗闇に消える寸前、
ちらりと振り返り、にやりと笑った。

「……次は夜に来い」

その声が、耳に残る。
ルークはその場で立ち尽くしたまま、息を呑んだ。

怖かった。
でも――
それ以上に、胸の奥が熱く、疼いて仕方がなかった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 森の奥は、昼と夜の境目がない。
どこまで歩いても、光は枝葉に吸い込まれ、足元だけがわずかに月に照らされていた。

 ルークは、夜の森歩いていた。冷たい風が吹くたびにランタンが揺れ、小さな炎が彼の影を大きく伸ばす。

(どうして……また来てるんだろ)

怖い。
それでも――
あの時の瞳を、もう一度見たかった。

“夜に来い”
あのレアが、耳から離れない。

足音が静寂を破り、
やがて洞窟が見えた。

冷たい空気。
湿った岩の匂い。
火を掲げて中へ入る。

――その時。

「遅いな」

声が闇の中から響いた。

心臓が跳ねた。
振り返る前に、
ランタンの灯がゆらぎ、影が動いた。

「……来ると思ったけどな」

そこにいたのは、やっぱりあの女――レア。

岩の上に腰を掛け、
片脚を組んでこちらを見ている。
光を反射する黄金の瞳。
黒い翼が背中に折りたたまれ、
尾の先が、静かに床を叩いていた。

「また来やがったな、ガキ」

ルークは喉がひりつくような感覚に耐えながら、
小さく頷いた。

「……はい」

「返事だけは素直だな。
 で、何の用だ?」

レアは腕を組み、
軽く顎を上げてルークを見下ろす。
光と影が彼女の顔をなぞる。
整いすぎている――それが怖いけど引き込まれてしまう。

ルークは無意識に息を詰めた。

「……きれい」

思わず、小さくこぼれた。
レアの眉がぴくりと動く。

「……は?」

「な、なんでもない……っ」

「...ふん、嘘が下手だな」

レアはゆっくりと立ち上がり、
ルークの前に歩み寄る。

爪のある指先で、
彼の顎を軽く上げた。

「“きれい”って、今言ったろ」
「……」
「そんなこと言って、怖くねぇのか」

「……怖いよ」
「ほぉ」

「でも……」

ルークは目を逸らさずに言った。
「怖いけど、目を逸らせない」

沈黙。

レアは笑うでもなく、
ただその瞳をじっと見つめた。

「……で、何しに来た」

「……わからない」

「わからない?」
「うん……でも……来なくちゃいけない気がした」

レアは一瞬、息を止める。
そして、低く笑った。

「……ほんと、変なガキ」

ルークは言葉を失う。
けれど、レアの声は怒っていなかった。
どこか、興味を抑えきれないような響きを帯びていた。

「いいか、ルーク。
 お前がここに来るってことは、
 “食われるかもしれねぇ”ってことだ」

「……うん」
「それでも来たいのか?」

ルークは小さく頷いた。

レアはわずかに口角を上げ、
息を吐くように笑った。

「……ま、好きにすりゃいいさ」

そう言って、レアは背を向ける。
翼の影が月明かりに揺れ、
その輪郭が洞の壁を撫でた。

「ただし――」

振り返ったレアの瞳が、月光を映す。

「次も来るなら、
 あたしの“気分”次第でどうなるか、覚悟しとけ」

ルークは震える声で、
それでもはっきりと言った。

「……うん」

レアは肩をすくめ、
静かに笑った。

「ほんっと、妙なガキ」

彼女が歩き去ると、
洞窟には静寂だけが残った。

ルークはその場でしばらく動けずにいた。

怖くて。
でも、心の奥は温かくて。
なぜか泣きそうだった。

「……レア」

名を呼ぶと、
月光の欠片が揺れ、
どこか遠くで、尾が床を叩く音が聞こえた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ーーーそれから、少しの月日が経ったある日。



 夜の森は、霧のような白い息を吐く。
ルークの足跡が、湿った落ち葉の上で小さく音を立てた。

 彼は手にしたランタンの光を頼りに、何度も通った獣道を進んでいく。
その灯りの明滅が、胸の鼓動と同じ速さで揺れていた。

 洞窟の前に着くと、冷たい空気が頬を撫でた。
中から、低く、少しだけだるそうな声が響いた。

「……また来たのかよ、ルーク」

その声を聞くだけで、
胸の奥が熱くなる。

「うん、お姉ちゃん」

暗がりの奥で、金の光がひとつ、瞬いた。
そしてゆっくりと姿が現れる。

レア。
黒い翼を背に、腰までの尾をわずかに揺らしながら歩いてくる。
褐色の肌が月光を受けて光り、冷たい岩肌の空気が一瞬で変わったような気がした。

「お姉ちゃん言うな。……誰がそんな呼び方許した」
「でも、お姉ちゃんだよ」
「ガキが。ほんっと、口だけは減らねぇな」

そう言いながら、レアは腕を組んだまま、ゆっくり尾を地面に叩いた。
トン、トン、と一定のリズムで。
怒っているのか、呆れているのか、ルークには分からない。

「寒くなってきたのに、よくこんなとこまで来るよな」
「……お姉ちゃんに会いたかったから」
「……は?」

レアのまぶたが、わずかに動いた気がした。
けれど何も言わず、翼を軽く鳴らして背中を伸ばした。

ルークは笑って、洞窟の中に一歩入る。
「ほら、お姉ちゃんの方こそ風邪ひかないでね」
「……誰が風邪なんかひくかよ」

言いながら、レアの尾の先がルークの足元をかすめた。
ふわり、と。
軽い感触だった。偶然のようでいて、優しい。

「おい、ルーク」
「なに?」
「その、ランタン、消せ。
 今日のあたしは光るもん見ると痛ぇ」
「……ごめん」

ルークが火を吹き消すと、暗闇に月明かりが溶けた。
静かで、息の音まで聞こえるほど。

その中で、レアの金の瞳がこちらを見ていた。
まっすぐに。
怒っているようにも、困っているようにも見える。

「……なに見てんだ」
「お姉ちゃん、きれいだなって」

「……」

レアは少しだけ、顔を背けた。
しばらく無言のまま、
尾で床をゆっくり擦るように動かした。
その音が、洞窟の奥に小さく響く。

「バカが」
「え?」
「何でもねぇ。黙って座っとけ」

ルークは岩の上に腰を下ろす。
寒いのに、不思議と身体の芯があたたかかった。

しばらく、
二人の間に会話はなかった。
風が洞窟の奥を抜けていく音だけが続く。

けれどその静けさは、嫌ではなかった。
居心地がいい――そう思えた。

「ねぇ、お姉ちゃん」
「ん」
「また来てもいい?」

レアは腕を組んだまま、顔を動かさなかった。
ただ、翼がわずかに開いて、
尾の先がふっとルークの方を向いた。

「……勝手にしろ」

その声は、洞窟の石壁に反響して消えた。

ルークは立ち上がり、
「ありがとう、お姉ちゃん」と小さく言った。

レアはそれに返事をしなかった。
けれど、背を向けたまま尾がもう一度だけ動いた。
今度は、軽く、やさしく。
ルークの手の甲に触れるように。

「またね」

「……勝手にしろ、ガキ」

ルークが洞窟を出ると、夜風が頬を撫でた。
振り返ると、洞窟から月光に照らされた翼が見えた。
レアは動かず、こちらを見ているようだった。

その光景を胸に焼き付け、
ルークは静かに森へ歩き出した。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



森の奥は、夜になると音が消える。
風の通り道だけが生きていて、枝の隙間で小さく鳴った。

今日の僕は腕いっぱいに薪を抱えて、いつもの洞窟の前に立った。
中から、かすかに息を吐くような気配が漂ってくる。

「入るよ……お姉ちゃん」

「勝手に入ってんじゃねぇ、ガキ」

少しだるそうな声。
でも、もう怖くはなかった。

「今日はね、焚き火しようと思って。薪、集めてきたんだ」
「焚き火?」
「うん。あったかいし、光がきれいでしょ」

レアは腕を組んだまま僕を見ていた。
目の奥が月の光を反射して、ちらりと光る。
そのまま無言で翼を動かし、
洞窟の天井を一振りでなぞった。
ぱらぱらと黒い煤が落ちる。

「……煙、抜けるようにしてやった」
「ほんと? ありがとう!」
「礼なんかいらねぇ。火ぃつけろ」

僕は火打石を叩いた。
ぱち、ぱち、と音がして、小さな火が広がる。
橙の光がレアの輪郭を照らす。
褐色の肌と翼の影が、揺らぐ火に飲み込まれる。

「きれいだね」
「火のことか?」
「うん。お姉ちゃんも」

レアは顔をそらした。
尾の先が、ゆっくり床を叩いた。
とん、とん、と、少し強く、でも優しい音。

「バカ。何見てんだ」
「見たくなるんだもん」
「ガキが……」

レアはため息をついて、火のそばに腰を下ろした。
僕もその隣に座る。
焚き火の熱が頬に当たって、心臓の鼓動が早くなった。

「お姉ちゃん、寒くないの?」
「寒くねぇ。……風がうるさいだけだ」
「ふふ、そうなんだ」

炎がはぜて、レアの髪の先が光った。
僕は、ぼうっと見とれていた。

「なに、じろじろ見てんだ」
「お姉ちゃん、きれいだなって」
「……黙れ」

レアは羽を少し広げて、火に背を向けた。
けれど尾の先が、僕の膝の前にゆるく伸びてきた。
偶然みたいに、優しく触れてくる。

「お姉ちゃんは、昔どんなだったの?」
「さぁな。どうでもいい」
「でも気になるよ」
「しつけぇガキだな」

そう言いながらも、
レアは火を見つめたまま、
指先で岩を軽く叩いていた。

沈黙。
焚き火の音が、ゆっくりと響く。

「僕ね、昔は怖がりだったんだ」
「だろうな」
「でも最近、ちょっと平気になった」
「ほう?」
「お姉ちゃんのとこに来るから、かな」

レアの耳が、わずかに動いた気がした。
でも、何も言わなかった。
尾だけが、火の明かりを受けてゆらゆら揺れていた。

「また明日も来ていい?」
「勝手にしろ」
「うん、ありがと」

立ち上がった僕の手の甲に、
レアの尾がふわりと触れた。

「またね、お姉ちゃん」
「……勝手にしろ、ガキ」

外の風が吹いて、火が小さく揺れた。
振り返ると、レアは翼を少しだけ広げたまま、
この日もこちらを見ているように見えた。

僕は胸の奥が温かくなるのを感じながら、村へと帰った。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー





森の奥も、もう春の匂いが混じり始めていた。
雪が溶けて、足元の苔がやわらかい。
僕は、枝の先についた白い花をそっと摘んだ。

このあたりに咲くのは珍しい。
冷たい風が通るたび、花弁がひらりと揺れた。

──これをレアに。

そう思った。
いつも迷惑かけてばかりだから、たまには僕の方から何か気持ちのこもった物を渡したかった。

花を集めて、紐でつないで、小さな輪にした。
指で触れるとすぐ崩れそうで、それでも大事に胸の中に抱えたまま洞窟へ向かった。

「……入るよ。お姉ちゃん」

「また来やがったな、ガキ」

いつもの声。
だけど、その声を聞くと胸が少し熱くなる。

「今日はね、これ、作ってきたんだ」

僕は小さな花の輪を取り出した。
レアの前で両手を広げて見せる。

「……なんだ、それ」
「花の輪。村じゃ子どもがよく作るんだ。
 あげたい人に渡すの。幸せになれるって」

レアは眉をひそめて、花をじっと見た。
長い沈黙。
僕の心臓の音が、静かな洞窟の中でやけに大きく聞こえる。

「……そんなもんで幸せになれんのか?」
「うん。きっとなれるよ」

そう言うと、レアは小さくため息をついた。
それから、僕の手から花の輪を取った。
大きな指の間で壊れてしまわないか心配だったけど、レアは驚くほど丁寧に触っていた。

「……バカみてぇなもんだな」
「でも、似合うと思う」
「は?」
「お姉ちゃんに」

レアの肩がぴくりと動いた。
尾の先が床をひとつ叩く。

「……ガキのくせに、何言ってやがんだ」
「ほんとだよ」

僕が笑うと、レアは何も言わなかった。
でも、手に持った花の輪をゆっくりと頭にのせた。

それは少し小さすぎたけれど、
赤い髪と金の瞳に白い花が映えて、思わず息を呑んだ。

「……似合ってる」

「……うるせぇ」

顔をそむけるレアの頬に、
火の光が当たってわずかに赤く見えた。

「お姉ちゃん、嬉しい?」
「……別に」

言葉とは裏腹に、
尾がゆっくりと揺れていた。
その動きが、なぜか優しく見えた。

「ありがとな」

小さく、それだけ。
レアは僕の方を見ずに呟いた。

僕は笑ってうなずいた。

「ううん、僕こそ、いつもありがとう」

その一言に、
レアはふっと視線を落とした。

火の明かりに照らされて、
唇がわずかに動く。

「……あたしも礼くらい、してやるよ」

「え?」

その声には、少しだけ熱があった。
レアはゆっくり立ち上がる。
金の瞳が僕をとらえる。
尾の先が、ゆらりと動いた。

「ちょっと座ってろ、ルーク。
 ……お姉ちゃんが、お礼してやる」

「お、お礼?」
「...もう無理だ...我慢できない...いいよな...あたし我慢したよな?」

その声はいつもより低く、よく分からないことを口にし続けている。
けれど、とても甘い。

レアの尾が、僕の膝の上で静かに揺れた。
彼女の目の奥に灯る光は、
洞穴の松明よりずっと熱かった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


レアの尾が、松明の光を受けながらゆっくりと揺れる。
「……お礼してやるよ、ルーク」
その低い声に、僕の喉がひくりと鳴った。

レアが尻尾をこちらに向け、くちゃぁ...と淫猥な音を立てながら中を見せつけてくる。
とろとろと尻尾から液が流れ、尻尾の内部は細やかな肉がぐちゅぐちゅと蠢いている。
一目見ただけで男を興奮させてしまう。中の感触を想像させてしまう尻尾。

「あ...ぁ...お、おねえちゃん...」
「んー?どうしたルークぅ...?おちんちんかたくなっちゃったか...ぁ♡」

そんな、いきなりの出来事で動けない僕の服を脱がせながら、嬉しそうな顔で耳元で囁くレア。

「な、なにするの...?こ、こわいよ...」

いつもと違う甘い雰囲気、恍惚とした表情で見つめてくるレア。その姿に、僕は強い興奮と少しの恐怖が入り混じる。

「今から、この尻尾でルークのおちんちんをぐちゅぐちゅにしてやるんだよ...♡」

ぬめぬめの液が僕のモノに垂れ、どんどん熱が帯びていく。

「それじゃぁ、お礼受け取れよルークぅ♡」
「や、やめ...ぇぁぁぁあああああ!」

ぬちゅぬちゅぬちゅぅぅぅぅっ♡

一気に尻尾の中へ入れられる僕のモノ。
ぬるぬるの尻尾の中で、襞の一つ一つがぐちゅぐちゅと蠢きながら竿全体を擦り上げる。

「ぁぁぁぁぁ!とめて、とめてぇぇぇ!」
「ほらほら、気持ち良いよなぁ...♡」

ぐちゅぐちゅぅぅぅぬちゅぅぅ♡

あまりの暴力的な快楽から逃げようと、尻尾を掴んで引き離そうとするも、カリ首も甘く締め上げられながら肉襞で擦り上げられて一瞬で力が抜けてしまう。

ぬちゅっぬちゅっ...と尻尾と肉襞が艶かしく動き、その度に頭が真っ白になる。

「ぁ...ぁっ...ぁぁ...ぉ...ねぇ...」
「おっ...ビクビクしてきたな...ぁ♡」

ちゅぅっ...ぬちゅ...ちゅぅ...っ
鈴口には柔らかな肉襞が吸い付き、早く出せと催促する。

ぬちゅぬちゅぬちゅぅぅ...っ
ぢゅぅぅっぬちゅぅっ...♡

そして、ぬめった肉壺に締め付けられながら肉襞で虐められた僕のモノはびくびくと大きく震えーーーー

どくん...っ...どくん...っ
びゅるぅ...ぅぅ...っ...♡

「ぁぁ...あぁぁぁ...♡」
「っ...く...はぁ...ぁぁぁ...おいしぃ...んぅ...♡」

ぼくは、頭が真っ白になりながら、まるで全身のすべてを持っていかれるような、そんな快楽におそわれた。
おねえちゃんが、ぼくの出したものを尻尾でごくごくと飲みながら、うれしそうにわらう。

「ぁぁ...♡...お前はあたしのモノだ...もっと...もっと...♡」

じゅるじゅるじゅるぅぅっ...♡

そんなことをいいながらおねえちゃんは尻尾でぼくをさらにいじめる。
きもちよすぎて、おねえちゃんはきれいで...
そのままぼくのいしきはおちて...

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
25/10/13 21:33更新 /
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