放課後の教室は、いつもより眩しく見えた。西日が差し込んで、机の上に黄金の帯を伸ばしている。その真ん中で笑っているのは、僕の幼なじみ――エル。

　彼女の髪は光を吸い込んでしまうんじゃないかと思うくらい、きらきらと輝いていた。肩まで流れる黄金色の髪がふわりと揺れるたび、教室のあちこちから視線が集まる。
　宝石みたいに澄んだ青い瞳は、見つめられると自分の奥まで透かされてしまうようで、まともに視線を合わせるのが難しい。
　そして何より目を引くのは、彼女の背中に生えた白い羽だった。大きく広げれば人ひとりをすっぽりと包み込めるほどで、光を受けると柔らかくきらめく。それだけで、教室の空気が変わったように思えてしまう。

　ーーエルは、まるで物語の天使さまみたいだった。

　いつだって周りの中心にいて、男女を問わず誰とでも分け隔てなく接する。困っている子を見つければ、誰よりも早く声をかけて手を差し伸べる。自然に人を笑顔にすることができる。だからみんながエルを慕い、彼女のまわりにはいつも輪ができていた。
　教室の中で、エルは特別な存在。
　「天使さま」なんて言葉は、誰もが口にするほど当たり前になっていた。

　――でも。僕は知っている。

　「しゅーくん」
　僕の名前を呼ぶときだけ、彼女の声がほんの少し甘くなることを。
　みんなに向ける微笑みとは違って、僕に向ける笑顔はどこか安心しきったように柔らかいことを。

　窓際の席からその姿を見ているだけで、胸の奥がじわりと熱を帯びる。

　エルと僕の付き合いは、もう六年になる。
　小学一年のとき、エルはまだ人見知りが強くて、教室の隅で小さくなっていた。羽を広げることもできず、からかわれることも多かった。涙目で下を向いていた彼女に、僕はただ思ったことを口にしたんだ。

　『エルちゃんの羽、すごく綺麗だね！』

　たった一言だったのに、エルははっとして顔を上げ、耳まで赤く染めながら笑った。
　その笑顔を見て、胸の奥が妙に高鳴ったのを今でも覚えている。
　あの日を境に、彼女は少しずつ変わっていった。羽を広げる勇気を持ち、周りの人に手を差し伸べるようになり、いつしかみんなの人気者になった。

　けれど僕にとってのエルは――。
　ただの“みんなの天使さま”なんかじゃない。
　小さな頃から一緒に帰って、一緒に遊んで、誰よりも近くにいた幼なじみで。
　そして最近は、気づけば見ているだけで胸が苦しくなる存在になっていた。

　「しゅーくん、帰ろ？」
　放課後のざわめきの中で、不意に声をかけられる。顔を上げると、エルが僕の席のすぐ横に立っていた。
　ふわっと石鹸の匂いが香る。僕にしか聞こえないような小さな声。
　その表情は、友達と笑い合っていたときよりもずっと優しくて、少しだけ甘えるような雰囲気を含んでいた。

　「う、うん」
　上手く返せない自分が情けない。でも、エルはそんな僕を見てくすりと笑った。

　二人並んで廊下を歩く。ガラス窓から差し込む夕陽が彼女の髪をさらに輝かせて、横顔を見るたびに胸がざわめく。
　「今日ね、図工でみんな困ってたから手伝ったの。そしたら“ありがとう”って言われて……すっごく嬉しかった！」
　無邪気に話すエルを見て、僕の胸はさらに苦しくなる。
　――やっぱりエルはすごい。
　でも同時に、みんなのために頑張る彼女を見ていると、不思議と独り占めしたい気持ちが湧いてくる。

　家の近くまで来ると、エルはふと足を止めて僕の袖をつまんだ。
　「ねえ、しゅーくん」
　「な、なに？」
　「わたしね……しゅーくんが褒めてくれたから、今のわたしがあるんだよ」
　青い瞳がまっすぐ僕を射抜く。
　「だから、しゅーくんは特別。ずっと一緒にいてね」

　胸が跳ねて、呼吸が詰まる。言葉にできないまま、僕は頷くことしかできなかった。

　エルは満足そうに笑って、羽を小さく広げて僕を包むように寄り添ってくる。
　夕暮れの風が頬を撫でる中、彼女の体温がすぐ隣にあるのを感じながら、僕はひとつの確信を胸に刻んだ。

　――エルは天使さまなんかじゃない。
　僕にとってのエルは、誰よりも可愛くて愛しい、ひとりの女の子なんだ。


―――――――――――――――――

　放課後になると、どうしても心がそわそわしてしまう。
　みんなに笑顔を見せるのは好きだし、困っている人を助けるのも嬉しい。でも、それ以上に――いや、本当の理由はただひとつ。

　「しゅーくんと、二人きりになりたい」

　声には出せないけれど、胸の奥ではいつもそう叫んでいる。

　小学校に上がったばかりのころ、わたしは自分の羽を広げるのが怖かった。
　大きすぎる、変わってるって言われて、泣きたくなる日ばかりだった。
　そんなとき、しゅーくんが言ってくれた。

　『エルちゃんの羽、すごく綺麗だね！』

　あの言葉が、わたしを変えてくれた。
　胸が温かくて、苦しくて、でも幸せで。
　それ以来、わたしはたくさんみんなを助けて“天使さま”って呼ばれるようになった。
　……でも、本当は違う。わたしは天使さまじゃない。ただの、しゅーくんを好きで好きでたまらない女の子。

　「しゅーくん、今日はね……奉仕の練習、付き合ってくれる？」
　放課後の帰り道、袖をつまみながら甘えるように言うと、しゅーくんは少し照れたように目を逸らした。
　「ほ、奉仕って……またか」
　「だって、天使なんだから練習しなきゃ」
　わざと首をかしげて言うと、彼は観念したみたいにため息をついてうなずいた。

　本当は“練習”なんて嘘。
　わたしはただ、しゅーくんを独り占めして、触れたいだけ。

　家に着くと、ドアを閉めてからすぐに羽を広げて彼を包み込む。
　「わっ……エル、近いって」
　「ふふ、これも練習だよ？　困ってる人を安心させる抱きしめ方」
　そう言いながら、腕にぎゅっと力を込める。首筋に顔を埋めると、しゅーくんの匂いが一気に押し寄せて、頭がくらくらした。

　「あ……いい匂い」
　思わず声が漏れる。自分でも恥ずかしいくらい、だらしない声。
　でも止められない。胸が高鳴って、心臓が暴れるみたいに速くなる。

　「エル……？」
　しゅーくんが戸惑った声で呼ぶ。その響きに、ますます独占欲が膨らむ。
　――他の誰にも呼ばせたくない。
　わたしだけが、この声を独り占めしたい。

　「しゅーくん、もっと甘えていいよ？」
　わざと耳元に囁いて、彼の背中を撫でる。
　「わたし、しゅーくんを喜ばせる練習してるの。……だから、遠慮しないで」
　少しいじわるに、でも甘やかすように言葉を重ねる。

　彼が「練習だろ……」と小さくつぶやくのを聞いて、思わず笑みがこぼれた。
　「うん。練習。……でもね、本当はね」
　顔をさらに首筋にうずめて、息を吸い込む。
　「本当は“ご褒美”なの。わたしが一番幸せになれる、しゅーくんの匂い」

　だらしなく蕩けた顔になっている自覚がある。
　でも、もう隠せない。
　しゅーくんがいないと生きていけないくらい、わたしの心は彼でいっぱいなのだから。

　「しゅーくん……わたし、みんなには天使さまって言われるけどね」
　彼の胸に額を押し当てながら、囁く。
　「本当は、天使さまじゃない。ただの女の子。しゅーくんだけを愛して、しゅーくんだけに触れてほしい、わがままな女の子なの」

　腕の力をさらに強めて、逃がさないように抱きしめる。
　「だから……お願い。これからもずっと、わたしのそばにいて」

　その瞬間、しゅーくんの腕が恐る恐るだけど優しく背中に回った。
　胸が一気に熱くなって、涙がこぼれそうになる。
　――やっぱり、わたしは天使さまなんかじゃない。
　ただひとりの男の子に、どうしようもなく恋をしているだけなんだ。

学校でのわたしは、みんなの前では笑顔の天使さま。
　「エルちゃん、すごいね」
　「天使さまって優しいよね」
　そんな言葉を浴びて、にこにこと返す。
　みんなが望む“天使さま”を演じるのは、もう慣れっこだ。

　でもね――。

　本当のわたしは、そんなものじゃない。
　胸の奥ではずっと、ひとりの男の子のことばかりを考えている。
　――しゅーくん。
　彼が誰かと話して笑っているのを見るだけで、胸の奥がざらついて、苛立ちでいっぱいになる。

　今日もそうだった。
　教室の隅で友達と話しているしゅーくんの姿を見て、笑顔を貼りつけたまま、心の中では必死に叫んでいた。
　「わたしを見て。わたしだけを見て」
　でも彼は無邪気に笑っていて、その笑顔をわたしだけのものにできないことが悔しくてたまらなかった。

　放課後になってやっと二人きりになれたとき、胸の奥の黒いもやは一気に溢れ出す。
　「しゅーくん、今日も“練習”だからね」
　彼の手を握って、自宅まで連れ込む。
　抵抗する間も与えず、羽で包んでベッドに座らせる。
　「エル、近すぎ……」
　「だめ。これくらい近くなきゃ練習にならないもん」

　―練習なんて嘘。
　――これはご褒美。
　わたしが欲しくて仕方ないご褒美なんだ。

　羽を広げて、彼を完全に覆い隠す。
　薄暗い羽の内側で、しゅーくんの匂いだけが満ちていく。
　「ん……やっぱり、しゅーくんの匂い……大好き」
　思わず声が蕩ける。首筋に顔を埋めて、深く呼吸する。
　「え、エル……」
　戸惑った声。けれど、その声さえも甘くて、胸を締めつける。

　「ねえ、しゅーくん」
　耳元で囁くと、彼の肩がびくっと震えた。
　「わたしがどれだけ我慢してるか、わかる？」
　「え……？」
　「みんなの前では“天使さま”でいなきゃいけない。でも、本当はね……」
　ぐっと抱きしめる腕に力を込める。
　「わたし、しゅーくんのことしか考えられないの」

　彼の髪を撫でながら、少し意地悪に続ける。
　「しゅーくんは、わたしがいないと何もできないでしょ？」
　「そ、そんなこと……」
　「ふふ。強がらなくていいよ。わたしが全部甘やかしてあげるから」

　わざと強引に、彼の手を自分の頬に押し当てる。
　「ほら、しゅーくんの手……あったかい。もっと撫でて」
　抵抗できない彼の表情を見て、胸がぞくぞくと震える。
　――いい、もっとわたしだけを見て。

　「しゅーくん」
　名前を呼ぶたびに、世界から色が消えていく。
　わたしの視界には、彼しか映らない。
　「わたしはね、天使さまじゃないの。しゅーくんを縛って、離さないで、甘やかして……そういうことをしたいだけの、ただの女の子」

　唇を震わせながら、彼の耳に囁く。
　「だから、逃げないで。わたしから離れないで」

　私の告白を聞いて、しゅーくんの表情が揺れた。
　恐る恐る、それでも確かに、彼の腕がわたしの背中に回る。


　―そして次の瞬間。
　しゅーくんが、わたしの胸元に顔をうずめてきた。

　「……エル」
　かすれた声と同時に、体温が直に伝わってくる。
　その瞬間、体の奥から甘い香りがあふれ出すのを自分でも感じた。
　花の蜜みたいに、濃くてとろけるような匂い。

　「ひゃ……ぁ、あっ……」
　堪えられなくて、声が漏れる。
　全身が震えて、羽がばさりと揺れた。
　胸の奥が熱くなって、呼吸が浅くなる。

　カチ、カチ、と無意識に歯が鳴った。
　恥ずかしいのに、止められない。
　だらしないほど恍惚の表情になっているのが自分でもわかる。

　「エル……？」
　しゅーくんの戸惑い混じりの声。
　それさえ甘くて、さらに震えが強くなる。

　「だ、だめ……しゅーくん……そんなことされたら……」
　言葉がまともに繋がらない。
　視界が揺れて、青い瞳が潤む。

　「わたし……もう……しゅーくんだけでいっぱいになっちゃう……」

　羽を必死で広げて、彼を抱きしめる。
　「ねえ、もっと……もっと……」
　自分から求めてしまう。
　彼の匂いと温もりで、心も体も溶けていく。

　震えは止まらず、歯の音も鳴り続ける。
　だらしない。
　でも、それを隠す気もなかった。

　「ふふ……見て、しゅーくん」
　涙でにじむ視界の中、彼を見下ろすように囁く。
　「わたし、こんなに乱れてる。全部、しゅーくんのせい」

　頬をすり寄せて、彼の髪に鼻を埋める。
　「ん……だめ……匂い……好きすぎておかしくなる……」
　甘い香りと彼の匂いが混じり合い、頭が真っ白になる。

　「しゅーくん」
　呼ぶ声はもう震えっぱなしだ。
　「わたしね、これからも毎日こうして欲しいの。ご褒美でも嘘でもなく……本気で、わたしに甘えて」

　彼の頭を撫でながら、言葉を刻み込む。
　「そして……わたしだけに甘やかされて。わたしだけを中毒にして」

　羽で彼を包み込みながら、再びだらしなく笑みをこぼす。
　震えも止まらない。
　けれど、それでいい。

　しゅーくんに顔をうずめられただけで、わたしはここまで壊れる。
　もう恥ずかしさも理性も全部どうでもいい。
　
　――しゅーくんを気持ちよくしてあげる。

　「しゅーくん…ごめんね。」
　「…え？ちょ、ちょっとエル！や、やめてよ！」

　わたしは、座ってる彼のズボンと下着を半ば無理やり脱がす。
　いきなりすぎて、しゅーくんは驚いてあわてて止めようとしたけど、わたしの力にはかなわない。

　「あ、あ…ご、ごめんエル…」

　ピンと大きくなったモノがわたしの前に現れると、顔を真っ赤にして申し訳なさそうに謝るしゅーくん。
　皮の先端から少し透明のつゆがとろとろと出て、びくびくとしている彼のモノ。


　―――しゅーくんがわたしで興奮してる…！

　彼がわたしに欲情してくれている。その事実で、わたしはおかしくなりそうだった。
　「ん…くぅ…はぁぁ…しゅーくん…いまから、楽にしてあげるね…」

　そうやって言いながら、わたしは手を組んでしゅーくんのおちんちんを包む。
　すると、彼はぴくんと少し震え、だらんと力が抜ける。
　「エル…それ、きもちい…」
　「ふふ、かわいいなぁ…しゅーくん…もっときもちよくしてあげるね」

　手の中でびくびくとおつゆを流しながら、もっと触ってと主張するおちんちんをわたしは優しく擦り上げる。
　しゅっ、しゅっ、ぬちゅ、ぬちゅ…
　「んっ、く、あっ、あ…」

　わたしが手を動かすたび、しゅーくんは甘い声を漏らしながらびくびくと震える。
　そんな彼の姿が可愛くて、嬉しくて、愛おしくて、胸がいっぱいになる。
　だから、どんどん手を早く動かして、気持ちよくなって目をとろんとさせている彼を目に焼き付ける。

　ぬちゅぬちゅぬちゅ、ぬちゅぬちゅぬちゅぬちゅ…
　「あっ、あっ、あ…え、エル...ぅ…」
　「えへへ、大好きだよしゅーくん」
　部屋にえっちな音が響くたび、しゅーくんは甘い声を出しながらわたしの名前を呼ぶ。

　ぬちゅぬちゅぬちゅぬちゅぬちゅぬちゅぅっ

　彼のおちんちんからはどんどんおしるが出て、さらにかたくなる。


　ぬちゅぬちゅぬちゅぬちゅぅぅっ！
　「える…っ！も…もう…で…ちゃ…」
　「いいよぉ、いっぱい出してね」

　性への知識があまり無いくせに、口からはえっちな言葉が溢れてくる。

　ぬちゅぬちゅぬちゅぬちゅ…っっ！

　しゅーくんが大きくびくんって震え、白い液が出る瞬間、気がつくとわたしはおちんちんを口に咥えていた。
　「あっ、あっああああああっ！えるぅぅぅ！」
　「は…む…んーんんん！」

　どぴゅぅぅ…っ、ぴくん、ぴくん、ぴくんっ
　ごきゅ、ごきゅ、ごきゅ…

　
　れるれるれる、ぬりゅぬりゅりゅ…

　魔物娘としての本能からだからかな？
　わたしは彼のえっちなつゆを飲みながら、皮の中に舌を入れてぐるぐるとおちんちんを舐め回していた。
　「へ、あぁぁあああ、いぃぃ！える...ぅ！そ、れやめ、てぇぇぇ！」
　あまりの刺激でびくびくと跳ねながら懇願する、しゅーくん。

　れるれるれるぅぅ…

　「もっ…と…らして…ぇ」
　「ぁ…ぁ…ぁ……」
　どんどん溢れるおつゆをわたしは飲み干す。
　ずーっとそうしているとしゅーくんはだらしなくも口をあけて気絶してしまった。



　「んぅ…やりすぎちゃった…」

　ちょっとやりすぎちゃったことを私は反省しながら、しゅーくんを羽で包む。
　「おやすみなさい、しゅーくん…これから毎日しようね…♪」

　そんなことを口にしながらしゅーくんの頭をなでる。
　わたしもそのまま一緒に眠たくなって、隣で目を瞑る。

　しゅーくんの寝息を心地よく感じながら、私も意識を手放していった。