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13歳 旅の始まり |
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数日前、俺の両親が死んだ。原因は流行病だった。
「あの子、他に身寄りがないんだそうよ」 「可哀想ね、これからどうするのかしら」 道ばたのおばさん達が俺の方を見て話してる。どうせ話すんなら聞こえないように話してくれればいいのに。 (ま、いいさ。俺は明日には出ていくんだから…) 俺は今買い物の帰りだ。買ってきたのは傷薬や、旅用のマント、それから保存魔法のかけられた食料。これだけ見れば分かるだろう、そう、俺は明日の朝この村を発つ。 俺は今日すでに売り払った自分の家に帰ると、身の回りの必要な物だけをまとめ、荷造りを済ませた。 この家は長く暮らしていたが、その割には小綺麗で壁にはヒビ一つ無かった。この村の村長にこの村を出る事を言うと、村長は残った家を彼が買い取り、移住してきた者にまた売るので、と昨日旅には十分な金額で買い取ってくれた。 旅に出る時というのは普通は名残惜しいものみたいだけど、俺にとってはそんなことはなかった。村の殆どの奴は俺を気味悪がっている。 俺の名前「ワイト」は両親が俺がまだお袋の腹の中にいる時から決めた名前だ。だが生まれてきた俺は、その名前に少し沿うような姿で生まれてきた。俺の髪の毛は「生まれながらの銀髪、生まれながらの紅い瞳」。 銀髪の髪の毛はこの世界ではいてもおかしくない髪の色だ、けれどもそれは遺伝ならの話。俺の両親は母親は黒髪、父親は赤みがかった茶色、常識では絶対に銀髪が生まれることはないのである。 そして赤い目はサキュバスやヴァンパイアの目の色。故に周りの友達からも影では忌み嫌われていた。ただ、両親と家族以外ではこの村の村長だけは俺のことを嫌わないでくれていた。 ある時、その村長がケンタウロスの博士を喚び、俺の身体を調べさせた。 −−−−−−−−−− 「この子がそうですじゃ」 幼い俺の前には金髪のケンタウロスが堂々と立っていた。彼女は俺を見つめるなり、少し驚いたように 「…確かに銀髪、赤目…普通とは思えないな。それに」 と言った。彼女にもすぐには原因が分からなくてもおかしくは無かった。 だがその後の言葉が思いもしないものだった。 「それに、なんです?」 「この子から『魔力』を感じる…」 「なんですと!?」 人間から魔力を感じる。本来あり得ないことだ。人間と魔物は同じようなエネルギーを持っている。人間の男が作り出すものを『精』、魔物が持つものが『魔力』とされ、互いに+−の存在だ。人間は本来+のエネルギー『精』しか持っていないはずである。 「だがこの子からは魔力だけでなく精、いや、失礼した。陽の魔力も感じる。このこの中には陽と陰の魔力が混在している」 村長も、黙って聞いていた俺の両親も驚きの色を隠せなかった。彼女は尚かつ、その量も半端ではないことを告げた。 彼女の推測では、何かが原因で母胎に魔王の魔力が流れ込み、身体に影響することなく胎児だった俺の身体に流れ込んだのではないかという。 俺は幼い頃から力が強く、それは魔力を無意識に使い筋力を強化した結果だという。 俺は旅に出ることの強みとしてそれを捉えた。人間として生まれ、魔力を携えたことには何ら悩んだことはない。 −−−−−−−−−− 俺はベッドに横になり、そのまま寝てしまった。 翌朝、目を覚ました俺は荷物を持って村を出た。当たりにはうっすらと霞がかかり、日はまだその光をわずかにしか地に届かせていなかった。 旅には特に目的はなかった、ただ、村を出て世界を回りたいと思っただけだった。だがその為には最初に向かわなければならない場所がある。そう思い、今はそこを目指すことにした。 次の日、森の近くを歩いていた。森まで手の届くほど近い道だ。魔物が出てきてもおかしくないな、と思っていた矢先だった。 森の中から何かが飛んできた。俺は荷物を放り投げ避けようとしたが、それは俺の右腕に絡み付いた。白い粘着性のある糸。 「あらあら、ちゃんと狙ったのにねぇ…よく反応したじゃないかっ!」 女の声、森の中から姿を現したのはアラクネだった。あいつに捕まると厄介なことぐらい俺にも分かっている。 「坊や、大人しくおし」 おいおい、全く。初っぱなの相手がこんな厄介な魔物とはねぇ…ま、観念なんてしないけど。 「嫌だって言ったら?」 「ぐるぐる巻きにしてやるよっ―」 アラクネはその八本の足で飛び上がると俺目掛けて…というより俺を逃げられなくするために俺の付近に糸を乱射した。 俺は思いきり前に飛んで、糸を回避した。 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 私の目の前に活きのいい男がいる。まだ子供だけどそんなものは関係ない。目を付けた時はすぐに捕まえられると思ったんだけどねぇ。 (そんな…!全部かわした…?…それよりあの跳躍力、こいつ本当に人間の子供か!?) そう、私が乱射した糸を全部すり抜けた。信じられないほどの跳躍力。ゾクゾクするわねぇ、こんなにいい抵抗を見せた獲物、いつぶりかしら… 獲物は確かに人間みたいよ。でもどこか違和感を覚える。私が着地した時、彼はもう私の身近に迫っていた。そして腰の後ろの短剣で斬りつけに来たわ。 私は後ろに飛び退いて、その刃をかわした。 「なかなかやるわね…ほんとに人間かしら?」 「さぁな、だといいんだけどさ…」 意味深な言い方をする子ね…どっちにしても捕まえちゃえば一緒。 「でぇ?見逃してくれる気は?」 そんなの 「ある分けないじゃない。坊やこそ捕まる気は?」 「ないよっ!」 まあ、なんていう子かしら。私相手に強気で来るなんて、ますます気に入っちゃったわ。 彼は短剣を構えて小走りに近づいて、私の針みたいな足の突きを防ぎながら、隙を見れば切り込んでくるから大したものよ。けどそれじゃ私は倒せないわよ。 私は後ろにまた飛び退いた。私は彼を狙う振りをして糸を吐いて、彼は思惑通り後ろに退いて、糸は道の上に落ちた。 坊やはまた小走りで近づこうとした。まんまとはまった。 「なっ…」 「んふふふ、かかったね、坊や…」 坊やは私の糸の固まりを踏んで、足が地に張り付いて動けないんだね。私は彼に詰め寄った。 「さぁ、もう諦めなよ」 私は彼を押し倒そうとした。押し倒して糸で絡め取ってしまえば私のモノだ。私が押し倒そうと出した両手を坊やが握った。 「だから嫌だっつってんだろ、しつこいねぇちゃんだな」 「…っ!」 (なんだ、この力…!私を押し返して―) −−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 俺は彼女の手を握り、押し返すと奴の腹に頭突きを喰らわしてやった。 (こいつは…火か) 俺は虚空の一点を見つめて魔力を集めた。過去に「魔力を扱う訓練をしておけ、おまえのそれは生きる上での強みになる」とケンタウロスに言われなければ、今ここで俺はこいつの糧になっていただろう。 見つめた一点に火の玉が浮かんだ。そして火の玉から火流が足下の糸に引火した。 「貴様…その火はっ―」 俺は自分に引火する前に抜け出した。俺は脇の荷物を持とうとした、その時だ。 「このっ、バカにしてっ!」 アラクネが糸を大量に放射した。 「…やめろっ!」 遅かった。彼女の放った火はまだ燻って燃えていた火に引火した。そしてあっと言う間に炎はアラクネ自身にまで達した。 「やあぁぁっ―!熱いっ、熱いぃっ!」 彼女は赤々と燃える炎に包まれ、藻掻き苦しんでいる。 (あのバカがっ!) 俺は魔力を水に変えると彼女にぶっ掛けた。火はたちまち消え、そこにはアラクネが倒れていた。魔物だけあって、まだ息はあるし、目立った火傷もなかった。 「なんで…助けた…」 「見逃してくれればそれでいい…俺は命を奪うことが目的じゃない」 そよ風が吹いて、彼女の髪の毛が淡くなびいた。俺はその場をあとにした。 村を出てから一ヶ月が経った。今までに数回魔物に襲われたが、俺は事ある毎に退けた。が、持っていた短剣は戦いの最中折れてしまい、刃もボロボロで使い物にはもうならない。だから今は必死で逃げ回っている。 まだ最初の目的は果たせていない。場所には辿り着きはしたが、当てがはずれた。 俺の目的は噂に聞く『サイクロプス製の武器』だ。強力且つ丈夫な武器で、旅をするにはこれ以上の心強い味方はいないだろう。あとは使う側の力量次第だ。 だが全然サイクロプスに出会わない。住処を訪ねても既に引っ越した後だった。いつになったら会えるのか。 そんなある日、俺は暗くなった道を歩いていた。どこか野宿できそうな場所を探していたのだが、原っぱの道端じゃあ何もない。せめて木が一本でも生えていてくれれば、その下で休めるのだけどな… そんなとき、俺はちょうど良さそうな木を見つけた。しかしよく見るとその下にだれかいる。 (だれだ…?女の人みたいだけど…) 近づくと顔が見えた。そして大きな一つ目が月明かりを反射した。 (サイクロプス!?) 「あ、あの…」 彼女が話しかけてきた。額には一本角、そして赤い髪のロングヘアがそよ風になびいていた。 「なんだ?」 「その…欲しい武器はありませんか?差し上げます」 「本当か?」 「ええ、でも、その代わり…私と交わってくださいませんか?」 彼女は恥じらいながら目を伏せて言った。 「………」 「ダメ…ですか?」 「…分かった。いいよ」 「あ、ありがとうございます」 彼女は俺の手を引っ張り木の反対側に連れて行くと、自分の服のホックを外し、ショートパンツを脱いだ。 「そ、そこに寝てください」 俺は彼女の言う通りに草原に寝そべった。彼女はズボンの発句とジッパーを外すと、俺の一物を取り出した。 ゆっくりと手で刺激し始めた。徐々に固く大きくなり、彼女の顔は月明かりに照らされて少し赤くなっているのが分かった。 「おっきい…」 彼女が俺に跨り、ゆっくりと挿入した。 「あっ…」 初めて味わう感触と、気持ちのいい感覚。女性の喘ぎ声も初めてだ。 彼女はゆっくりと腰を動かし始めた。 「んあっ…んっ…」 快感が俺の身体を駆け抜ける。なんだろう、息が荒くなってきたな。 「あ、あの…んっ…」 「はぁ…何…?」 「もしかして…は、初めて…ですか…?」 「そう…だけど…」 「…ごめん…なさい…初めてが…わた…し…みたいなの…で…」 「いいよ…」 「でも…んっ…私…一つ目で…あぁっ」 サイクロプスは一つ目であることにコンプレックスを抱いているらしいが、俺はそうとは思わない。 「だから何だって言うの?…それでも君は綺麗じゃないか…」 「…えっ…そんなこと言われたの初めて…」 彼女は腰の動きを止めた。俺の言ったことがそんなに意外だったのか? 「…私、これまでにも何人かと身を重ねました…けどそんなこと言ってくれたのはあなたか初めてで…」 「そう。今言ったのは嘘なんかじゃないよ…外見はどうだっていいじゃないか。人間の中には魔物が好きな人もいる、ラミアが好きな人もいる、それと同じで君が好きな人もいるんじゃないか?」 「そう…でしょうか」 「ああ。ただ人間は基本的に魔物を恐れるから、出会うのは大変かもしれないけどね」 「いいえ、それでもどこかに私を好きだと言ってくれる人がいるかもしれない、そう思えたのは初めてです。ありがとう」 彼女はにっこりと笑った。そして「止めちゃってごめんなさい」と言って続きを始めた。 「んっ…あんっ…やんっ」 さっきより激しくなって、俺を起こすとギュッと抱きしめて腰を振った。 耳元で彼女が喘ぎ声を上げている、柔らかい胸の感触も俺は初めて味わった。雲が晴れて、隠れていた月に辺りは綺麗に照らされた。 翌朝、目が覚めると俺の横には同じ形の短剣が置き手紙と一緒に残されていた。 俺は置き手紙を開いて読んだ。置き手紙には 『ありがとうございました。約束通り武器を置いていきます。 昨日、あなたに言われたことを思いながら鍛冶を続けます。 そこにある剣はカタールという剣で、小回りの利く扱いやすい 物になっていると思います。私はジパングの方で新しい武器を 創作しようと思います。剣が壊れた時にはいらしてください。』 と書かれていた。そうか、彼女はジパングの方に行ったのか。そのうち行ってみよう。 『カタール』と記された剣は変わった形で、刀身とは垂直に、鍔とは平行に持ち手があり、手に持つと拳の先に刀身が来る様な造りになっている。そして前腕を覆うように籠手の様な物も付いている。 剣技があまり得意でない俺にとっては、使いやすい剣だと思う。俺はホルスターの様な鞘を身につけると、太陽の右手に歩き出した。 山林に入ってすぐワーウルフの群れに襲われた…。五対一ってかなり不利っぽくないかなぁ〜。 と言っても「じゃあ一対一でやりましょう」なーんて言ってくれるわけもないわけで、彼女たちはグルルルルと声を出して、キバをむき出しにして今にも襲って……来ちゃった。つか、捕まっちゃったし… 俺は5体だと思っていたが、実は後ろもう2体隠れていて、俺は腕を羽交い締めにされた。 そこに前の一体が飛びかかって来て、俺はそいつを正面から蹴り飛ばした。彼女は「うぐっ…」と声を出して転げた。 腕に思いっきり力を入れて彼女たちを振り飛ばして、あの娘にもらったカタールを構えた。 俺は飛びかかってきた二人のワーウルフの頭ギリギリをカタールで突き、それを避けて俺と横一線に並んだ二人の後頭部をカタールの柄側面で強めに殴った。二人はその場に崩れた。 目の前には五人が並んで俺を睨んでいる。俺は真ん中の一人の左右に目掛けて、カタールを投げた。左右の4人は攻撃だと思ったのかそれぞれ飛び退いたが、俺はそれを狙っていた。 孤立した真ん中のワーウルフに素早く近づき腹部にボディブローを入れると、自分でも驚くほどズドッといういい音がした。 「お前、ガキの癖しやがって…!」 後ろからまた一人飛びかかってきた。俺は木に突き刺さっているカタールを片方抜き、振り返りざまに薙ぎ払った。 「ひっ…」 刃は彼女には届かず薄皮を切れればいい距離の顔の前を一閃した。俺は怯んだ彼女を体当たりで突き飛ばし、大きく飛び上がるとその後ろに並んだ三人を目掛けて斬りかかった。 「うっ…」 俺は背後に木をおいて追いつめられたワーウルフの首元に、カタールの刃を向けていた。彼女以外は既に気を失って倒れている。 「あんた以外はもう寝てるぜ?…このまま見逃してくれれば何もしない。もし退かないというなら…」 「わ、わかった、わかったっ………見逃す、だから…」 俺がカタールの刃をどけると彼女は気が抜けたように涙を浮かべてへたり込んだ。 (そんなに怖かったかな…?) 俺はカタールを鞘に収めると荷物を拾ってまた彼女のところに向かった。 「ひっ…な、何…?」 「そんなに怯えなくても…ほれ、傷薬だ。怪我してる奴に使ってやれ」 俺は傷薬を彼女の前に置いた。彼女はそれを少し凝視して俺に目線を戻した。 「それから、この先に町はあるか?」 「こ、ここから道をまっすぐ行って山を下りれば…」 「そうか。ありがとう」 俺は礼を言ってそこをあとにした。 ちなみに今まで一度も魔物を殺していない。やむを得ず怪我をさせることはあったが魔物なら大丈夫なはずだ。 まだ旅にでて一ヶ月だが、ほぼ毎日魔物に襲われていれば戦いも、逃走も嫌が応でも上手くなる。 とりあえずさっさと町に辿りつかねぇとなぁ。また襲われるのは厄介だ― 10/01/09 18:56 アバロン
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出だしにしてはハードだなーと思います。いきなりアラクネ相手ですもんねぇ
俺だったらさっさと帰ります。笑 |
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